説明

発光装置の製造方法および発光装置の製造装置

【課題】発光特性が良好な発光装置を製造することができる製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】EL基板1と封止基板9を収容しているチャンバ60内の内圧を第1の気圧にした状態で、EL基板1及び封止基板9と接着剤枠15により、EL基板1の発光領域R1を密閉した密閉空間を形成し、チャンバ60内の内圧を第1の気圧より高い第2の気圧にすることで、EL基板1と封止基板9の周囲の圧力を接着剤枠15内の密閉空間よりも高くして、EL基板1と封止基板9に対して均等に圧力をかけて、EL基板1と封止基板9を略平行に貼り合わせることを可能とするとともに、貼り合わせにおいて接着剤枠15を一部押し潰すことで接着剤枠15内の密閉空間を圧縮して、密閉空間内の気圧を第1の気圧より高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法および発光装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などの電子機器の表示デバイスとして、自発光素子である複数のEL(Electro Luminescence)素子をマトリクス状に配列したEL発光パネルを適用したものが知られている。
EL素子は水分と接触すると発光特性が劣化してしまうので、EL素子を外気から遮断するように、複数のEL素子が形成されたガラス基板等の絶縁性基板からなるEL基板と、封止用の封止基板とを接着剤を用いて貼り合わせて、EL素子を封止してなるEL発光パネルを製造する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
EL発光パネルを製造する手法として、例えば、EL基板と封止基板を対向する一対の平板で支持し、一方の平板を他方の平板に向けて移動させていき、EL基板と封止基板の間に付与された接着剤を介してEL基板と封止基板を貼り合わせた後、その接着剤を硬化させる手法がある。
【0003】
また、EL基板と封止基板との間の空間に不活性ガスを封入することで、EL素子が水分と接触しないようにする技術も知られており、その不活性ガスを減圧した状態で封止することで、EL基板と封止基板との密着性を高めることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−196429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の場合、基板を支持する平板の表面に微小な凹凸があったり、一対の平板の各々の配置位置に機械的なずれが生じたりすることがあるため、一対の平板で支持しているEL基板と封止基板を完全な平行に保つことは困難であった。
そして、EL基板と封止基板とが互いに傾いた状態で接着剤を硬化させて固定してしまうと、EL基板と封止基板のギャップ(間隙)が不均一になり、そのギャップの乱れに起因して発光パネルに発光斑が生じるなどの不具合が生じてしまうことがあった。
【0006】
また、EL基板と封止基板との間の空間を減圧している場合、減圧された空間側に基板が撓んで基板同士が接近し過ぎてしまい規定のギャップを保てず、ギャップが乱れることがあった。また、減圧された空間には空気が引き込まれやすく、空気とともに水分が浸入してしまうことがあった。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み、発光特性が良好な発光装置を製造することができる製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様は、発光装置の製造方法であって、
前記発光装置は、複数の発光素子が配列されてなる少なくとも一つの発光領域を基板表面に有する第1基板と、前記発光領域に対応する領域を有する少なくとも一つの封止領域を基板表面に有する第2基板と、を備え、
前記第1基板又は前記第2基板の一方における基板表面の、前記第2基板の前記封止領域の周囲を囲う位置に接着剤を塗布して、該基板表面から隆起した接着剤枠を形成する接着剤枠形成工程と、
第1の気圧下で前記第1基板の前記発光領域と前記第2基板の前記封止領域とを対向させて離間して配置し、前記第1基板又は前記第2基板の少なくとも一方を、前記第1基板と前記第2基板との間隔を狭める方向に移動させ、前記第1基板又は前記第2基板の他方の基板表面に前記接着剤枠の上端を接触させて、対向する前記第1基板及び前記第2基板と前記接着剤枠による密閉空間を形成する密閉空間形成工程と、
前記密閉空間の周囲の気圧を前記第1の気圧より高い第2の気圧に設定して前記密閉空間を圧縮して、該密閉空間内の気圧を前記第1の気圧より高く前記第2の気圧より低い第3の気圧にする加圧工程と、
を含むことを特徴とする。
好ましくは、前記密閉空間形成工程において、前記第1の気圧は大気圧に設定されている。
好ましくは、前記密閉空間形成工程は、内圧が前記第1の気圧に設定されたチャンバ内に、前記第1基板及び前記第2基板を設置する設置工程と、前記チャンバ内に前記第1基板及び前記第2基板を設置した後、前記チャンバ内を不活性ガスで置換する置換工程と、前記チャンバ内を不活性ガスで置換した後に、前記第1基板及び前記第2基板の一方の上に、前記第1基板及び前記第2基板の他方を、前記接着剤枠を介して、その自重にて載置することにより前記密閉空間を形成する載置工程と、を含む。
好ましくは、前記加圧工程は、前記チャンバの内圧を前記第2の気圧にする圧力調整工程を含む。
好ましくは、前記加圧工程により前記密閉空間内の気圧を前記第3の気圧にした状態で、前記接着剤枠を硬化させる硬化工程を含む。
好ましくは、前記接着剤は光硬化性を有し、前記第2基板は光透過性を有しており、前記硬化工程は、前記第2基板を通過させて前記接着剤枠に、前記接着剤を硬化させるのに必要な波長を有する照射光の照射を行い、前記接着剤枠を硬化させる光照射工程を含む。
好ましくは、前記接着剤は、前記第1基板と前記第2基板の間に間隙を維持するギャップ材を含有しており、前記接着剤枠形成工程において形成する前記接着剤枠の上端の前記基板表面からの高さは前記ギャップ材の直径より大きく、前記密閉空間形成工程において形成する前記密閉空間における対向する前記第1基板の基板表面と前記第2基板の基板表面間の距離は前記ギャップ材の直径より大きい。
好ましくは、前記加圧工程は、前記密閉空間において対向する前記第1基板の基板表面と前記第2基板の基板表面間の距離を、前記密閉空間形成工程において形成した値から前記ギャップ材の直径に等しい値に近づけて、前記密閉空間を圧縮する工程を含む。
【0009】
また、本発明の他の態様は、発光装置の製造装置であって、
前記発光装置は、複数の発光素子が配列されてなる少なくとも一つの発光領域を基板表面に有する第1基板と、前記発光領域に対応する領域を有する少なくとも一つの封止領域を基板表面に有する第2基板と、有し、
前記第1基板と前記第2基板の一方を保持する第1平板と、
前記第1平板の上方に設けられて、前記第1基板と前記第2基板の他方を保持する第2平板と、
前記第1基板と前記第2基板との間隔を変える方向に、前記第1平板と前記第2平板の一方を他方に対して相対的に移動させる駆動機構部と、
前記第1平板、前記第2平板、前記第1基板、前記第2基板及び前記駆動機構部を収容するチャンバと、
前記チャンバの内圧を、第1の気圧から、該第1の気圧より高い第2の気圧に調整する圧力調整部と、
を備え、
前記第1平板及び前記第2平板は、前記第1基板と前記第2基板とを、前記発光領域と前記封止領域とが対向した位置に保持し、
前記第1基板又は前記第2基板の一方の、前記第2基板の前記封止領域の周囲を囲う位置に、当該基板の基板表面から隆起した、光硬化性を有する接着剤による接着剤枠が形成されており、
前記駆動機構部は、前記圧力調整部により前記チャンバの内圧が前記第1の気圧に設定された状態で、前記第1基板又は前記第2基板の他方の基板表面に前記接着剤枠の上端が接触するまで、前記第1平板と前記第2平板の一方を他方に対して相対的に移動させて、対向する前記第1基板及び前記第2基板と前記接着剤枠による密閉空間を形成した後に、前記第2平板による前記第1基板又は前記第2基板の一方の保持を解除させ、前記第1平板を移動させて、前記第2平板を前記第1基板又は前記第2基板の一方から離間させ、
前記圧力調整部により前記密閉空間の周囲の気圧を前記第1の気圧より高い第2の気圧に設定して、前記密閉空間を圧縮することを特徴とする。
好ましくは、前記圧力調整部は、前記第1の気圧を大気圧に設定する。
好ましくは、前記圧力調整部は、前記チャンバの気体を不活性ガスに置換する機能を有し、前記駆動機構部は、前記圧力調整部により前記チャンバの内圧が前記第1の気圧に設定されるとともに、前記チャンバの気体が不活性ガスに置換された状態で、前記第1平板と前記第2平板の一方を他方に対して相対的に移動させて、前記密閉空間を形成する。
好ましくは、少なくとも、前記第2基板を保持する前記第1平板と前記第2平板の一方は光透過性を有し、前記チャンバの、前記第1平板と前記第2平板の前記一方が設けられた側の外に設けられ、前記接着剤を硬化させるのに必要な波長を有する照射光を出射する光源と、前記光源と前記チャンバとの間に設けられて、前記チャンバ内への前記照射光の照射又は遮断を切り替えるように開閉可能に設けられたシャッターと、を備え、前記シャッターは、前記密閉空間の周囲の気圧を前記第2の気圧に設定して前記密閉空間を圧縮したときに開けられて、前記第1平板と前記第2平板の前記一方を介して前記接着剤枠に前記照射光を照射して、該接着剤枠を硬化させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発光特性が良好な発光装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】EL基板の画素の配置構成を示す平面図である。
【図2】EL基板の概略構成を示す平面図である。
【図3】EL基板の1画素に相当する回路の一例を示した回路図である。
【図4】EL基板の1画素を示した平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った面の矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿った面の矢視断面図である。
【図7】EL基板の発光領域と、封止基板の封止領域を示す説明図である。
【図8】ELパネル製造装置にセットされたEL基板と封止基板の配置構成を示す説明図である。
【図9】ELパネルの製造工程を示す説明図である。
【図10】ELパネルの製造工程を示す説明図である。
【図11】ELパネルの製造工程を示す説明図である。
【図12】ELパネルの製造工程を示す説明図である。
【図13】ELパネルの製造工程を示す説明図である。
【図14】ELパネルの製造工程を示す説明図である。
【図15】表示パネルにELパネルが適用された携帯電話機の一例を示す正面図である。
【図16】表示パネルにELパネルが適用されたデジタルカメラの一例を示す正面側斜視図(a)と、後面側斜視図(b)である。
【図17】表示パネルにELパネルが適用されたパーソナルコンピュータの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
ELパネルは、第1基板であるEL基板1と第2基板である封止基板9を張り合わせてなる発光装置である。
【0014】
図1は、ELパネルを構成するEL基板1における複数の画素Pの配置構成を示す平面図であり、図2は、EL基板1の概略構成を示す平面図である。
【0015】
図1、図2に示すように、EL基板1には、R(赤),G(緑),B(青)をそれぞれ発光する複数の画素Pが所定のパターンでマトリクス状に配置されている。
このEL基板1には、複数の走査線2が行方向に沿って互いに略平行となるよう配列され、複数の信号線3が平面視して走査線2と略直交するよう列方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。また、隣り合う走査線2の間において電圧供給線4が走査線2に沿って設けられている。そして、これら各走査線2と、互いに隣接する二本の信号線3と、各電圧供給線4とによって囲われる範囲が、画素Pに相当する。
また、EL基板1には、走査線2、信号線3、電圧供給線4の上方を覆うように、隔壁であるバンク13が設けられている。バンク13は例えば格子状に設けられ、バンク13によって囲われてなる略長方形状の複数の開口部13aが画素Pごとに形成されている。このバンク13の開口部13aにおいて画素電極8aが露出しており、その開口部13a内に所定のキャリア輸送層(後述する正孔注入層8b、発光層8c)と対向電極8dとが積層されて画素Pごとに発光素子であるEL素子8が設けられている(図5参照)。キャリア輸送層とは、電圧が印加されることによって正孔又は電子を輸送する層である。また、このバンク13で画素Pが区画されるように複数のEL素子8が配列された領域が発光領域R1である。なお、バンク13は、上述のように、画素Pごとに開口部13aを設けるものばかりでなく、信号線3上を覆い且つ列方向に沿って延在するとともに、列方向に並んだ後述する複数の画素Pの各画素電極8aの中央部をまとめて露出するようなストライプ状であってもよい。
【0016】
図3は、アクティブマトリクス駆動方式で動作するELパネル(EL基板1)の1画素に相当する回路の一例を示した回路図である。
【0017】
図3に示すように、EL基板1には、走査線2と、走査線2と交差する信号線3と、走査線2に沿う電圧供給線4とが設けられており、このEL基板1(ELパネル)の1画素Pにつき、薄膜トランジスタであるスイッチトランジスタ5と、薄膜トランジスタである駆動トランジスタ6と、キャパシタ7と、EL素子8とが設けられている。
【0018】
各画素Pにおいては、スイッチトランジスタ5のゲートが走査線2に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの一方が信号線3に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの他方がキャパシタ7の一方の電極及び駆動トランジスタ6のゲートに接続されている。駆動トランジスタ6のソースとドレインのうちの一方が電圧供給線4に接続され、駆動トランジスタ6のソースとドレインのうち他方がキャパシタ7の他方の電極及びEL素子8のアノードに接続されている。なお、全ての画素PのEL素子8のカソードは、一定電圧Vcomに保たれている(例えば、接地されている)。
【0019】
また、このEL基板1の周囲において各走査線2が走査ドライバに接続され、各電圧供給線4が一定電圧源又は適宜電圧信号を出力するドライバに接続され、各信号線3がデータドライバに接続され、これらドライバによってEL基板1(ELパネル)がアクティブマトリクス駆動方式で駆動される。電圧供給線4には、電圧源による一定電圧又は電圧ドライバによる電圧信号が供給される。
【0020】
次に、EL基板1と、その画素Pの回路構造について、図4〜図6を用いて説明する。ここで、図4は、EL基板1の1画素Pに相当する平面図であり、図5は、図4のV−V線に沿った面の矢視断面図、図6は、図4のVI−VI線に沿った面の矢視断面図である。なお、図4においては、電極及び配線を主に示す。
【0021】
図4に示すように、スイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6は、信号線3に沿うように配列され、スイッチトランジスタ5の近傍にキャパシタ7が配置され、駆動トランジスタ6の近傍にEL素子8が配置されている。また、各画素Pにおいて、走査線2と電圧供給線4の間に、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、キャパシタ7及びEL素子8が配置されている。
【0022】
図4〜図6に示すように、基板10上に信号線3とゲート電極5a、6aが設けられ、基板10上の一面にスイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6のゲート絶縁膜となる第一絶縁膜11が成膜されている。その第一絶縁膜11の上に走査線2及び電圧供給線4が形成され、そしてスイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6及び信号線3を覆うように第二絶縁膜12が成膜されている。このため、信号線3は第一絶縁膜11と基板10との間に形成され、走査線2及び電圧供給線4は第一絶縁膜11と第二絶縁膜12との間に形成されている。
【0023】
また、図4、図6に示すように、スイッチトランジスタ5は、逆スタガ構造の薄膜トランジスタである。このスイッチトランジスタ5は、ゲート電極5a、半導体膜5b、保護絶縁膜5d、不純物半導体膜5f,5g、ドレイン電極5h、ソース電極5i等を有するものである。
【0024】
ゲート電極5aは、基板10と第一絶縁膜11の間に形成されている。このゲート電極5aは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。また、ゲート電極5aの上に絶縁性の第一絶縁膜11が成膜されており、その第一絶縁膜11によってゲート電極5aが被覆されている。
第一絶縁膜11は、例えば、光透過性を有し、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。この第一絶縁膜11上であってゲート電極5aに対応する位置に真性な半導体膜5bが形成されており、半導体膜5bが第一絶縁膜11を挟んでゲート電極5aと相対している。
半導体膜5bは、例えば、アモルファスシリコン又は結晶性シリコンからなり、この半導体膜5bにチャネルが形成される。また、半導体膜5bの中央部上には、チャネルをエッチングから保護する絶縁性の保護絶縁膜5dが形成されている。この保護絶縁膜5dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜5bの一端部の上には、不純物半導体膜5fが一部保護絶縁膜5dに重なるようにして形成されており、半導体膜5bの他端部の上には、不純物半導体膜5gが一部保護絶縁膜5dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜5f,5gはそれぞれ半導体膜5bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜5f,5gはn型半導体であるが、これに限らず、スイッチトランジスタ5がp型トランジスタであれば、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜5fの上には、ドレイン電極5hが形成されている。不純物半導体膜5gの上には、ソース電極5iが形成されている。ドレイン電極5h,ソース電極5iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。
保護絶縁膜5d、ドレイン電極5h及びソース電極5iの上には、絶縁性の第二絶縁膜12が成膜され、保護絶縁膜5d、ドレイン電極5h及びソース電極5iが第二絶縁膜12によって被覆されている。そして、スイッチトランジスタ5は、第二絶縁膜12によって覆われるようになっている。第二絶縁膜12は、例えば、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0025】
また、図4、図5に示すように、駆動トランジスタ6は、逆スタガ構造の薄膜トランジスタである。この駆動トランジスタ6は、ゲート電極6a、半導体膜6b、保護絶縁膜6d、不純物半導体膜6f,6g、ドレイン電極6h、ソース電極6i等を有するものである。
【0026】
ゲート電極6aは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなり、ゲート電極5aと同様に基板10と第一絶縁膜11の間に形成されている。そして、ゲート電極6aは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる第一絶縁膜11によって被覆されている。
この第一絶縁膜11の上であって、ゲート電極6aに対応する位置に、チャネルが形成される半導体膜6bが設けられており、この半導体膜6bが第一絶縁膜11を挟んでゲート電極6aと相対している。半導体膜6bは、例えば、アモルファスシリコン又は結晶性シリコンからなる。
半導体膜6bの中央部上には、チャネルをエッチングから保護する保護絶縁膜6dが形成されている。この保護絶縁膜6dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜6bの一端部の上には、不純物半導体膜6fが一部保護絶縁膜6dに重なるようにして形成されており、半導体膜6bの他端部の上には、不純物半導体膜6gが一部保護絶縁膜6dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜6f,6gはそれぞれ半導体膜6bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜6f,6gはn型半導体であるが、これに限らず、駆動トランジスタ6がp型トランジスタであれば、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜6fの上には、ドレイン電極6hが形成されている。不純物半導体膜6gの上には、ソース電極6iが形成されている。ドレイン電極6h,ソース電極6iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。
保護絶縁膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iの上には、絶縁性の第二絶縁膜12が成膜され、保護絶縁膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iが第二絶縁膜12によって被覆されている。そして、駆動トランジスタ6は、第二絶縁膜12によって覆われるようになっている。
【0027】
キャパシタ7は、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間に接続されている。具体的には、キャパシタ7の電極7aは、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに接続され、キャパシタ7の電極7bは、駆動トランジスタ6のソース電極6iに接続されている。そして、図4、図6に示すように、基板10と第一絶縁膜11との間にキャパシタ7の一方の電極7aが形成され、第一絶縁膜11と第二絶縁膜12との間にキャパシタ7の他方の電極7bが形成され、電極7aと電極7bが誘電体である第一絶縁膜11を挟んで相対している。
【0028】
なお、信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aは、基板10に一面に成膜された導電性膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで一括して形成されたものである。
また、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iは、第一絶縁膜11に一面に成膜された導電性膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで形成されたものである。
【0029】
また、第一絶縁膜11には、ゲート電極5aと走査線2とが重なる領域にコンタクトホール11aが形成され、ドレイン電極5hと信号線3とが重なる領域にコンタクトホール11bが形成され、ゲート電極6aとソース電極5iとが重なる領域にコンタクトホール11cが形成されており、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cがそれぞれ埋め込まれている。コンタクトプラグ20aによってスイッチトランジスタ5のゲート電極5aと走査線2が電気的に導通し、コンタクトプラグ20bによってスイッチトランジスタ5のドレイン電極5hと信号線3が電気的に導通し、コンタクトプラグ20cによってスイッチトランジスタ5のソース電極5iとキャパシタ7の電極7aが電気的に導通するとともにスイッチトランジスタ5のソース電極5iと駆動トランジスタ6のゲート電極6aが電気的に導通する。なお、コンタクトプラグ20a〜20cを介することなく、走査線2が直接ゲート電極5aと接触し、ドレイン電極5hが信号線3と接触し、ソース電極5iがゲート電極6aと接触してもよい。
また、駆動トランジスタ6のゲート電極6aがキャパシタ7の電極7aに一体に連なっており、駆動トランジスタ6のドレイン電極6hが電圧供給線4に一体に連なっており、駆動トランジスタ6のソース電極6iがキャパシタ7の電極7bに一体に連なっている。
【0030】
画素電極8aは、第一絶縁膜11を介して基板10上に設けられており、画素Pごとに独立して形成されている。画素電極8a側からEL素子8の光を出射するボトムエミッション構造であれば、この画素電極8aは透明電極であって、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)からなる。また、対向電極8d側からEL素子8の光を出射するトップエミッション構造の場合、画素電極8aは、高い光反射性のアルミ等の単体又は合金層を下層として光反射性層とし、上層として上述の透明電極の積層構造とすることが好ましい。なお、画素電極8aの一部が駆動トランジスタ6のソース電極6iに重なり、画素電極8aとソース電極6iとが接続されている。
そして、図4、図5に示すように、第二絶縁膜12が、走査線2、信号線3、電圧供給線4、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、画素電極8aの周縁部、キャパシタ7の電極7b及び第一絶縁膜11を覆うように形成されている。つまり第二絶縁膜12には、各画素電極8aの中央部が露出するように開口部12aが形成されている。そのため、第二絶縁膜12は平面視して格子状に形成されている。
【0031】
EL素子8は、図4、図5に示すように、アノードとなる第一電極としての画素電極8aと、画素電極8aの上に形成された化合物膜である正孔注入層8bと、正孔注入層8bの上に形成された化合物膜である発光層8cと、発光層8cの上に形成された第二電極としての対向電極8dとを備えている。対向電極8dは全画素Pに共通の単一電極であって、全画素Pに連続して形成されている。
なお、図5、図6に図示してはいないが、対向電極8d上には、電極を保護するための電極保護層が成膜されている。
【0032】
正孔注入層8bは、例えば、導電性高分子であるPEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)及びドーパントであるPSS(polystyrene sulfonate;ポリスチレンスルホン酸)からなる層であって、画素電極8aから発光層8cに向けて正孔を注入するキャリア注入層である。
発光層8cは、画素P毎にR(赤),G(緑),B(青)のいずれかを発光する材料を含み、例えば、ポリフルオレン系発光材料やポリフェニレンビニレン系発光材料からなる層であって、対向電極8dから供給される電子と、正孔注入層8bから注入される正孔との再結合に伴い発光する。このため、R(赤)を発光する画素P、G(緑)を発光する画素P、B(青)を発光する画素Pは互いに発光層8cの発光材料が異なる。なお、画素PのR(赤),G(緑),B(青)は、例えば縦方向に同色画素が配列されるストライプパターンで配列される。なお、この配列パターンはストライプパターンに限らず、デルタ配列であってもよい。配列パターンがストライプパターンの場合に、バンク13の開口部13aは、各画素Pの配列パターンに沿った格子状又は列方向に沿って複数の画素Pの画素電極8aの中央部をまとめて露出するストライプ状に設けられる。
【0033】
対向電極8dは、画素電極8aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、カソードとして適用される場合、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金の下層及びシート抵抗を下げるための上層の積層体で形成されている。上層は、対向電極8d側からEL素子8の光を出射するトップエミッション構造の場合、透明電極であって、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)からなり、画素電極8a側からEL素子8の光を出射するボトムエミッションであれば、高い光反射性のアルミ等の単体又は合金層が好ましい。
この対向電極8dは全ての画素Pに共通した電極であり、発光層8cなどの化合物膜とともに後述するバンク13を被覆している。
【0034】
このように、第二絶縁膜12及びバンク13によって発光部位となる発光層8cが画素Pごとに仕切られている。
そして、開口部13a内において、キャリア輸送層としての正孔注入層8b及び発光層8cが、画素電極8a上に積層されている。なお、正孔注入層8bは、複数の画素Pに跨るように連続して形成されていてもよい。この場合、正孔注入性のある酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0035】
具体的には、バンク13は、正孔注入層8bや発光層8cを湿式法により画素Pのバンク13で囲まれた所定の領域に形成するに際して、正孔注入層8bや発光層8cとなる材料が溶媒に溶解または分散された液状体が、バンク13を介して隣接する画素Pに流出しないように堰き止める隔壁として機能する。
例えば、図5に示すように、第二絶縁膜12の上に設けられたバンク13には、第二絶縁膜12の開口部12aより内側に開口部13aが形成されている。なお、第二絶縁膜12をバンク13よりも幅広とした構造にすることによって、開口部13aが開口部12aより幅広となるようにしてもよい。
そして、各開口部13aに囲まれた各画素電極8a上に、正孔注入層8bとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第1のキャリア輸送層である正孔注入層8bとなる。
さらに、各開口部13aに囲まれた各正孔注入層8b上に、発光層8cとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第2のキャリア輸送層である発光層8cとなる。
なお、この発光層8cとバンク13を被覆するように対向電極8dが設けられている。
【0036】
そして、このEL基板1(ELパネル)においては、ボトムエミッション構造の場合、画素電極8a、基板10及び第一絶縁膜11が透明であり、発光層8cから発した光が画素電極8a、第一絶縁膜11及び基板10を透過して出射する。そのため、基板10の裏面が表示面となる。
なお、基板10側ではなく、反対側が表示面となるトップエミッション構造でもよい。この場合、上述したように対向電極8dを透明電極とし、画素電極8aを反射電極として、発光層8cから発した光が対向電極8dを透過して出射する。
【0037】
このEL基板1(ELパネル)は、次のように駆動されて発光する。
全ての電圧供給線4に所定レベルの電圧が印加された状態で、走査ドライバによって走査線2に順次電圧が印加されることで、これら走査線2が順次選択される。選択された走査線2に対応する各画素Pのスイッチトランジスタ5はオンになる。
各走査線2が選択されている時に、データドライバによって階調に応じたレベルの電圧が全ての信号線3に印加されると、その選択されている走査線2に対応する各画素Pのスイッチトランジスタ5がオンになっていることから、その信号線3における電圧が駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加される。
この駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された所定の階調に対応するレベルの電圧に応じて、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間の電位差が定まって、駆動トランジスタ6におけるドレイン−ソース電流の大きさが定まり、EL素子8がそのドレイン−ソース電流に応じた明るさで発光する。その後、その走査線2の選択が解除されると、スイッチトランジスタ5がオフとなるので、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧にしたがった電荷がキャパシタ7に蓄えられ、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6i間の電位差は保持される。このため、駆動トランジスタ6は選択時と同じ電流値のドレイン−ソース電流を流し続け、EL素子8の輝度を維持するようになっている。
つまり、スイッチトランジスタ5によって、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加される電圧が、信号線3に印加された所定階調レベルの電圧に切り替えられ、駆動トランジスタ6は、そのゲート電極6aに印加された電圧のレベルに応じた電流値のドレイン−ソース電流(駆動電流)を電圧供給線4からEL素子8に向けて流し、EL素子8を電流値(電流密度)にしたがった所定の階調で発光させる。
【0038】
次に、第1基板であるEL基板1と、第2基板である封止基板9とを接着剤で貼り合わせて、発光装置であるELパネル100を製造する装置および製造する方法について説明する。
なお、ここでは、一例として、EL素子が形成されたガラス基板等の絶縁性基板からなるEL基板1が2つの発光領域R1を備え、封止基板9が2つの封止領域R9を備えて、EL基板1と封止基板9とを張り合わせる場合について、図示して説明する。なお、EL基板1及び封止基板9が、3つ以上の複数の発光領域及び封止領域を有するものであってもよいことは言うまでもない。
【0039】
EL基板1は、例えば、図7に示すように、基板表面F1に複数の発光素子8(画素P)が配列されてなる2つの発光領域R1を備えている。
封止基板9は、例えば、図7に示すように、基板表面F9にEL基板1の発光領域R1を封止可能とする凹部空間9aが形成されてなる2つの封止領域R9を備えている。この封止領域R9は、封止基板9とEL基板1を対向配置した際に、EL基板1の発光領域R1に対抗する側の基板表面F9の、発光領域R1に対応する位置に設けられている。
封止基板9は、例えば、ガラスなど光透過性を有する材料からなる。凹部空間9aは、例えば、その深さが封止基板9の厚みを超えないように基板表面F9側が掘り込まれて形成された凹部である。その凹部空間9aの開口サイズに相当する封止領域R9のサイズは、発光領域R1と同等のサイズ或いはそれ以上広いサイズを有している。なお、封止基板9は、凹部空間9aを有する構成に限るものではなく、凹部空間9aを有しないものであってもよい。
【0040】
そして、EL基板1と封止基板9を貼り合わせてELパネル100を組み立てる製造装置は、例えば、図8、図9に示すように、EL基板1を保持する上定盤30と、封止基板9を保持する下定盤40と、上定盤30を上下に移動させる駆動機構部50と、上定盤30と下定盤40とを内部に収容するチャンバ60と、チャンバ60内の圧力を調整する圧力調整部70と、UV光を出力するUVランプ80と、UVランプ80が出力したUV光をチャンバ60内に向けて照射するか否か(オン/オフ)を切り替えるシャッター90等を備えている。
【0041】
上定盤30は、例えば、真空吸着などによってEL基板1を保持し、EL基板1の基板表面F1を下に向けた状態で支持する平板である。
下定盤40は、例えば、その上面に封止基板9が載置されて、封止基板9の基板表面F9を上に向けた状態で支持する平板である。下定盤40は、例えば、石英ガラスからなり光透過性を有する。
駆動機構部50は、例えば、モータの駆動によって駆動軸50aを進退させて、駆動軸50aの先端に固定されている上定盤30を上下に移動させる。
【0042】
チャンバ60は、上定盤30、下定盤40、駆動機構部50を内部に収容している密閉容器である。また、チャンバ60は、その内部にEL基板1や封止基板9などを出し入れするために開閉できるドア部(図示省略)を備えている。
圧力調整部70は、チャンバ60の内部圧力を調整する機構を備えており、例えば、チャンバ60の内圧を、1気圧(大気圧、第1の気圧)から、それより高い例えば2気圧程度の気圧(第2の気圧)に加圧することができる。また、圧力調整部70は、チャンバ60内に不活性ガスである窒素ガスを充填する機能も有している。
【0043】
UVランプ80は、所定の波長域のUV光を出力する。具体的に、UVランプ80は、EL基板1と封止基板9とを貼り合わせる光硬化性の接着剤を硬化させるのに必要な波長を有するUV光を出力する。このUVランプ80は、ELパネル製造装置が稼働中、一定光量のUV光を出力し続けている。
シャッター90は、下定盤40とUVランプ80の間に開閉可能に設けられている。シャッター90が閉じている場合、UVランプ80が常時出力しているUV光の照射が遮断され、シャッター90が開いている場合にUVランプ80が常時出力しているUV光がチャンバ60内に向けて照射され、UV光が下定盤40を通じてEL基板1と封止基板9にあたる。
なお、UVランプ80がチャンバ60の外側に設けられている場合、UVランプ80が出力したUV光が下定盤40に入射可能となるように光透過性を有する窓部がチャンバ60の下部に設けられている。また、チャンバ60自体が光透過性を有していてもよい。
【0044】
次に、上記構成のELパネル製造装置で、ELパネル100を製造する製造方法について説明する。
【0045】
まず、図8、図9に示すように、EL基板1の基板表面F1と封止基板9の基板表面F9とを対向させるように、EL基板1を上定盤30で保持し、封止基板9を下定盤40で保持する。
この封止基板9の基板表面F9には、封止領域R9の周囲を囲うように接着剤を塗布してなる略矩形の枠形状を呈する接着剤枠15が形成されている。接着剤枠15は、基板表面F9から、例えば50〜60μmの高さに隆起した枠状に形成されている。なお、封止基板9を下定盤40に載置した後、封止基板9の基板表面F9に接着剤枠15を形成してもよく、また、基板表面F9に接着剤枠15を形成した封止基板9を下定盤40に載置してもよい。更に、接着剤枠15は、封止基板9の基板表面F9に形成される構成に限るものではなく、EL基板1の発光領域R1の周囲で、封止基板9の封止領域R9の周囲に対応する領域に、接着剤枠15を形成するものであってもよい。
【0046】
ここで、接着剤枠15の材料とした接着剤は光硬化性を有しており、UVランプ80が出力する所定の波長域のUV光が照射されることによって、接着剤および接着剤枠15は硬化するようになっている。
また、接着剤枠15の材料とした接着剤は、EL基板1と封止基板9との間に所定の間隙(ギャップ)を維持するためのギャップ材を含有している。ギャップ材は、例えば、10〜20μmの径を有して略球体を呈するガラスビーズであり、EL基板1と封止基板9との間のスペーサとして機能する。例えば、EL基板1と封止基板9の間隙の寸法(ギャップ値)を少なくとも15μmとするために、15μmの径を有するギャップ材を使用する。なお、所望するギャップ値よりも数倍高く接着剤を塗布して、接着剤枠15を形成している。
【0047】
そして、図9に示すように、EL基板1と封止基板9をチャンバ60内にセットした後、圧力調整部70を作動させてチャンバ60内の空気を窒素ガスで置換し、窒素ガス雰囲気下、チャンバ60内の内圧を1気圧(大気圧)に調整する。
なお、下定盤40に載置した封止基板9の凹部空間9aには、EL基板1と封止基板9との間に封入する乾燥剤を配しておくことが好ましい。
【0048】
次いで、図10に示すように、駆動機構部50を作動させて駆動軸50aを伸ばし、EL基板1の基板表面F1に接着剤枠15の上端側が接触するまで上定盤30を下降させる。そして、封止基板9に設けられている接着剤枠15は、EL基板1の基板表面F1における発光領域R1の周囲を囲う位置に接触し、EL基板1と封止基板9に介装された接着剤枠15内に発光領域R1を密閉するようになっている。
ここで、EL基板1と封止基板9と接着剤枠15とで囲われてなる、接着剤枠15内の空間には、1気圧の窒素ガスが閉じ込められて密閉されている。
【0049】
次いで、図11に示すように、EL基板1を封止基板9上の接着剤枠15に載せた状態で、上定盤30によるEL基板1の真空吸着等による保持を止めて、上定盤30からEL基板1を切り離す。そして、駆動機構部50を作動させ、駆動軸50aを縮めて上定盤30を上方に退避させる。
ここで、接着剤枠15がEL基板1の自重のみでは潰れない強度を有するように、接着剤枠15は比較的粘度の高い接着剤で形成されている。このとき、EL基板1と封止基板9とで挟まれた接着剤枠15の内側は、1気圧の窒素ガスが閉じ込められた密閉空間を保っている。
なお、EL基板1の基板表面F1に接着剤枠15の上端側が接触する直前に、上定盤30がEL基板1を切り離して、EL基板1を封止基板9上の接着剤枠15に載せるようにしてもよい。この場合でも、EL基板1と封止基板9の間隙における接着剤枠15の内側には、1気圧の窒素ガスが閉じ込められて密閉空間をなす。
【0050】
次いで、図12に示すように、圧力調整部70の出力を調整して、窒素ガス雰囲気のチャンバ60内の内圧を例えば2気圧に上昇させる。
このチャンバ60内の内圧を2気圧に上昇させることでEL基板1と封止基板9の周囲の圧力を2気圧にして、EL基板1と封止基板9の間隙における接着剤枠15内の密閉空間の圧力(1気圧)よりも高くする。そして、1気圧の窒素ガスが閉じ込められている密閉空間を支える接着剤枠15は、EL基板1にかかる2気圧の圧力に抗することができずに潰れて、EL基板1と封止基板9がギャップ材に応じた15μmの間隔で貼り合わされる。
ここで、EL基板1の裏面全面に均等に2気圧の圧力がかかり、EL基板1と封止基板9の間の接着剤枠15内の密閉空間を圧縮するように、EL基板1が封止基板9に向けて均等に押圧されるので、EL基板1と封止基板9は互いに平行な配置を維持しつつ接着剤枠15を潰して近接し、EL基板1と封止基板9が互いに平行な配置で貼り合わされるようになっている。つまり、接着剤枠15内の密閉空間が圧縮される際の反発力によって、フラットな密閉空間が維持されることに伴い、EL基板1と封止基板9との平行な配置が維持されるので、EL基板1と封止基板9を接着剤枠15で平行に貼り合わせることができるのである。なお、EL基板1と封止基板9の間の接着剤枠15内の密閉空間が圧縮されて、その容積が小さくなった分、密閉空間の内圧が微増しており、例えば、1.2気圧程度の気圧(第3の気圧)に増加している。
また、接着剤枠15はギャップ材を含有しているので、所望するギャップ値の間隙を維持するようにEL基板1と封止基板9を貼り合わせることができる。
【0051】
このように、EL基板1と封止基板9を収容しているチャンバ60内の内圧を上げることで、EL基板1と封止基板9の周囲の圧力を接着剤枠15内の密閉空間よりも高くして、EL基板1と封止基板9に対して均等に圧力をかけ、EL基板1と封止基板9の間の接着剤枠15を一部押し潰して、EL基板1と封止基板9との間隔を接着剤枠15中のギャップ材の直径に近づけて、EL基板1と封止基板9を略平行に貼り合わせることができる。
【0052】
次いで、図13に示すように、窒素ガス雰囲気のチャンバ60内の内圧を2気圧に調整した状態で、シャッター90を開き、UVランプ80が出力しているUV光をチャンバ60内に向けて照射する。そのUV光が下定盤40を通じてEL基板1と封止基板9にあたるように照射することで、EL基板1と封止基板9の間の接着剤枠15にUV光を照射して接着剤枠15を光硬化させる。例えば、積算光量が6000[mJ]となるUV光照射を行って、接着剤枠15を光硬化させる。
なお、接着剤枠15は、この光硬化処理によって80〜90%程度硬化した状態であるので、より完全に硬化させるため、例えば、90〜100℃程度の加熱処理を適宜行って熱硬化させる。
【0053】
次いで、図14に示すように、EL基板1と封止基板9を貼り合わせてなる大パネルをチャンバ60から取り出した後、所定のラインに沿って切り分けて、複数(本実施形態では2つ)のELパネル100が完成する。
【0054】
以上のように、ELパネル100を製造する過程で、EL基板1と封止基板9を貼り合わせる際、EL基板1と封止基板9を収容しているチャンバ60内の圧力を上げて、EL基板1と封止基板9に対して均等に圧力をかけ、EL基板1と封止基板9の間の接着剤枠15を一部押し潰すようにして、EL基板1と封止基板9を貼り合わせることができる。
特に、EL基板1と封止基板9の間隙を接着剤枠15中のギャップ材の直径に近づけるように接着剤枠15内の密閉空間を圧縮することで、EL基板1と封止基板9の配置を平行に保ちつつ、EL基板1と封止基板9を貼り合わせることができる。
【0055】
例えば、従来技術のように、EL基板1を保持した上定盤30を下降させるようにして、EL基板1を封止基板9に対して機械的に押し付けて、接着剤枠15を潰してEL基板1と封止基板9を貼り合わせる場合、上定盤30や下定盤40の表面凹凸や、上定盤30と下定盤40との配置のずれなどに起因し、EL基板1と封止基板9が互いに傾いた状態で貼り合わせてしまうことがあった。EL基板1と封止基板9が平行でないと、EL基板1における発光が封止基板9を通じて出射する際に、その出射方向に乱れが生じやすく、発光表示特性が劣るELパネルになってしまう。
これに対し、本実施形態のように、チャンバ60内に加圧気体を満たし、EL基板1と封止基板9に対して均等に圧力をかけて、接着剤枠15を一部押し潰すようにEL基板1と封止基板9を貼り合わせる手法は、EL基板1と封止基板9の配置を平行に保った状態で、EL基板1と封止基板9を貼り合わせることができるので、発光表示特性に優れるELパネルを形成できる。
【0056】
また、接着剤枠15は、ギャップ材を含有しているので、所望するギャップ値の間隙を維持するようにEL基板1と封止基板9を貼り合わせることができる。
特に、ELパネル100におけるEL基板1と封止基板9の間の接着剤枠15内の密閉空間の内圧は圧縮により、大気圧より僅かに高い1.2気圧程度の気圧になっているため、EL基板1と封止基板9とが内側に撓んで近接してしまうことが無いので、所望するギャップ値の間隙を適正に保つことができる。また、その密閉空間に外気が引き込まれることがないので、空気とともに水分が浸入してしまうことを防ぐことができる。
【0057】
また、封止基板9と、その封止基板9を保持する下定盤40とは、光透過性を有しているため、封止基板9とEL基板1とに介装されている接着剤枠15に、下定盤40と封止基板9を透過させた所定のUV光を効率的に照射することができ、その接着剤枠15を光硬化させることができるので、封止基板9とEL基板1との接着を良好に行うことができる。
【0058】
こうして、EL基板1と封止基板9に対して均等に圧力をかけて、EL基板1と封止基板9の平行な配置を維持しつつ接着剤枠15を一部押し潰すようにして、EL基板1と封止基板9を貼り合わせる手法によって形成されたELパネル100は、EL基板1と封止基板9が平行に接着されてなるフラットなELパネルであり、発光表示特性に優れる。
【0059】
そして、以上のように製造されたELパネル100は、各種電子機器の表示パネルとして用いられる。
例えば、図15に示す、携帯電話機200の表示パネル1aや、図16(a)(b)に示す、デジタルカメラ300の表示パネル1bや、図17に示す、パーソナルコンピュータ400の表示パネル1cに、ELパネル100を適用することができる。
【0060】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 EL基板(第1基板)
F1 基板表面
R1 発光領域
9 封止基板(第2基板)
9a 凹部空間
F9 基板表面
R9 封止領域
5 スイッチトランジスタ
6 駆動トランジスタ
5a、6a ゲート電極
5b、6b 半導体膜
5d、6d 保護絶縁膜
5f、6f 不純物半導体膜
5g、6g 不純物半導体膜
5h、6h ドレイン電極
5i、6i ソース電極
7 キャパシタ
8 EL素子(発光素子)
10 基板
11 第一絶縁膜
12 第二絶縁膜
13 バンク
15 接着剤枠
30 上定盤
40 下定盤
50 駆動機構部
60 チャンバ
70 圧力調整部
80 UVランプ
90 シャッター
100 ELパネル(発光装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光装置の製造方法であって、
前記発光装置は、複数の発光素子が配列されてなる少なくとも一つの発光領域を基板表面に有する第1基板と、前記発光領域に対応する領域を有する少なくとも一つの封止領域を基板表面に有する第2基板と、を備え、
前記第1基板又は前記第2基板の一方における基板表面の、前記第2基板の前記封止領域の周囲を囲う位置に接着剤を塗布して、該基板表面から隆起した接着剤枠を形成する接着剤枠形成工程と、
第1の気圧下で前記第1基板の前記発光領域と前記第2基板の前記封止領域とを対向させて離間して配置し、前記第1基板又は前記第2基板の少なくとも一方を、前記第1基板と前記第2基板との間隔を狭める方向に移動させ、前記第1基板又は前記第2基板の他方の基板表面に前記接着剤枠の上端を接触させて、対向する前記第1基板及び前記第2基板と前記接着剤枠による密閉空間を形成する密閉空間形成工程と、
前記密閉空間の周囲の気圧を前記第1の気圧より高い第2の気圧に設定して前記密閉空間を圧縮して、該密閉空間内の気圧を前記第1の気圧より高く前記第2の気圧より低い第3の気圧にする加圧工程と、
を含むことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記密閉空間形成工程において、前記第1の気圧は大気圧に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記密閉空間形成工程は、
内圧が前記第1の気圧に設定されたチャンバ内に、前記第1基板及び前記第2基板を設置する設置工程と、
前記チャンバ内に前記第1基板及び前記第2基板を設置した後、前記チャンバ内を不活性ガスで置換する置換工程と、
前記チャンバ内を不活性ガスで置換した後に、前記第1基板及び前記第2基板の一方の上に、前記第1基板及び前記第2基板の他方を、前記接着剤枠を介して、その自重にて載置することにより前記密閉空間を形成する載置工程と、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記加圧工程は、前記チャンバの内圧を前記第2の気圧にする圧力調整工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記加圧工程により前記密閉空間内の気圧を前記第3の気圧にした状態で、前記接着剤枠を硬化させる硬化工程を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤は光硬化性を有し、前記第2基板は光透過性を有しており、
前記硬化工程は、前記第2基板を通過させて前記接着剤枠に、前記接着剤を硬化させるのに必要な波長を有する照射光の照射を行い、前記接着剤枠を硬化させる光照射工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤は、前記第1基板と前記第2基板の間に間隙を維持するギャップ材を含有しており、
前記接着剤枠形成工程において形成する前記接着剤枠の上端の前記基板表面からの高さは前記ギャップ材の直径より大きく、
前記密閉空間形成工程において形成する前記密閉空間における対向する前記第1基板の基板表面と前記第2基板の基板表面間の距離は前記ギャップ材の直径より大きいことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記加圧工程は、前記密閉空間において対向する前記第1基板の基板表面と前記第2基板の基板表面間の距離を、前記密閉空間形成工程において形成した値から前記ギャップ材の直径に等しい値に近づけて、前記密閉空間を圧縮する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
発光装置の製造装置であって、
前記発光装置は、複数の発光素子が配列されてなる少なくとも一つの発光領域を基板表面に有する第1基板と、前記発光領域に対応する領域を有する少なくとも一つの封止領域を基板表面に有する第2基板と、有し、
前記第1基板と前記第2基板の一方を保持する第1平板と、
前記第1平板の上方に設けられて、前記第1基板と前記第2基板の他方を保持する第2平板と、
前記第1基板と前記第2基板との間隔を変える方向に、前記第1平板と前記第2平板の一方を他方に対して相対的に移動させる駆動機構部と、
前記第1平板、前記第2平板、前記第1基板、前記第2基板及び前記駆動機構部を収容するチャンバと、
前記チャンバの内圧を、第1の気圧から、該第1の気圧より高い第2の気圧に調整する圧力調整部と、
を備え、
前記第1平板及び前記第2平板は、前記第1基板と前記第2基板とを、前記発光領域と前記封止領域とが対向した位置に保持し、
前記第1基板又は前記第2基板の一方の、前記第2基板の前記封止領域の周囲を囲う位置に、当該基板の基板表面から隆起した、光硬化性を有する接着剤による接着剤枠が形成されており、
前記駆動機構部は、前記圧力調整部により前記チャンバの内圧が前記第1の気圧に設定された状態で、前記第1基板又は前記第2基板の他方の基板表面に前記接着剤枠の上端が接触するまで、前記第1平板と前記第2平板の一方を他方に対して相対的に移動させて、対向する前記第1基板及び前記第2基板と前記接着剤枠による密閉空間を形成した後に、前記第2平板による前記第1基板又は前記第2基板の一方の保持を解除させ、前記第1平板を移動させて、前記第2平板を前記第1基板又は前記第2基板の一方から離間させ、
前記圧力調整部により前記密閉空間の周囲の気圧を前記第1の気圧より高い第2の気圧に設定して、前記密閉空間を圧縮することを特徴とする発光装置の製造装置。
【請求項10】
前記圧力調整部は、前記第1の気圧を大気圧に設定することを特徴とする請求項9に記載の発光装置の製造装置。
【請求項11】
前記圧力調整部は、前記チャンバの気体を不活性ガスに置換する機能を有し、
前記駆動機構部は、前記圧力調整部により前記チャンバの内圧が前記第1の気圧に設定されるとともに、前記チャンバの気体が不活性ガスに置換された状態で、前記第1平板と前記第2平板の一方を他方に対して相対的に移動させて、前記密閉空間を形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の発光装置の製造装置。
【請求項12】
少なくとも、前記第2基板を保持する前記第1平板と前記第2平板の一方は光透過性を有し、
前記チャンバの、前記第1平板と前記第2平板の前記一方が設けられた側の外に設けられ、前記接着剤を硬化させるのに必要な波長を有する照射光を出射する光源と、
前記光源と前記チャンバとの間に設けられて、前記チャンバ内への前記照射光の照射又は遮断を切り替えるように開閉可能に設けられたシャッターと、
を備え、
前記シャッターは、前記密閉空間の周囲の気圧を前記第2の気圧に設定して前記密閉空間を圧縮したときに開けられて、前記第1平板と前記第2平板の前記一方を介して前記接着剤枠に前記照射光を照射して、該接着剤枠を硬化させることを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の発光装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−14896(P2012−14896A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148628(P2010−148628)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】