説明

発光装置及びそれに使用される装置

【課題】発光帯域が狭く色相に優れ、長寿命の有機EL装置を提供。
【解決手段】下記の化合物(IV)を含有する発光装置であって、


及びRは、3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)フェニルであり、R及びRはフェニル基である。また、化合物(IV)が、減圧下200〜400℃の範囲で蒸発又は昇華するインデン化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、特に、有機冷光放射装置及びこれに限定されないが主としてそれに使用される化合物に関する。これらの装置はフラットパネルディスプレイに利用することができる。
【背景技術】
【0002】
有機電子冷光放射(EL)装置(又は有機発光ダイオード(OLED))は、多くのフラットパネルディスプレイの応用において、液晶ディスプレイに対する潜在的な代替技術として大きな注目を与えてきた。概略的には、EL装置は、電極間に電流が流れるときに有機材料から発光するように、2つの電極間にはさまれた有機薄膜を有する。有機材料は、高分子又は低分子材料である。最も効率的な、装置においては典型的には、例えば、正孔輸送層、冷光放射層及び電子輸送層など電極間に多くの有機層が存在する。
【0003】
揮発性の低分子化合物は加熱蒸発によって蒸着できるという利点を有する。このため、画素表示の形成に使用される技術(例えば、シャドー・マスク)を利用することができる。
【0004】
OLEDは、1980年代の後半から開発されてきているが、発光及び電荷輸送材料の改良の余地がある。フルカラー・ディスプレイを製造するため、NIST又はPAL色調基準を満たす効率的な青色、赤色及び緑色発光材料並びに長い操作寿命を有する材料が求められている。現在の青色発光材料の寿命は多くの応用のために必要な時間より短い。
【0005】
有機薄膜の再結晶化は欠陥をもたらすため、長い寿命の装置のためには高いガラス転移温度が必要とされることが知られている。
【0006】
有機EL装置のために最も知られている青色発光化合物としては、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)のようなスチルベン及びトリアリールエチレンが知られている(出光興産US5130603及びApp.Phys.Lett.1995,67(26)、3853−3855)。DPVBi装置は、DPVBiに青色染料をドーピングすることにより効率的に製造できるが、これは装置の作製を複雑化する。結果の色は使用される青色染料に依存する。スピロ化合物であるスピロ−DPVBiは、フルカラー・ディスプレイに必要な青色には十分でないが、DPBBiに比較して改良されたTgを有する。発光最大値は470nmであり、FWHM(完全半分幅最大値)は80nm(SPIEVol4105(2001)p125−133)より大きい。
【0007】
特に、青色発光EL装置の色純度、効率及び寿命を向上させる利点がある。
【0008】
本発明の化合物の非平坦化構造は、高いTgを有する機会がより大きい大きな分子量の化合物を驚くほど揮発化することができる。これによって、熱蒸発による安定的な非晶質薄膜形成を可能にする。化合物のいくつかは、光学的に活性で、光学的異性体の混合物は多結晶薄膜よりガラス状薄膜を形成する傾向にあるという利点を有する。代替的に、非光学的活性化合物は純化しやすい。
【0009】
EL装置は濃青色を発光する新規な低分子を用いて作成されてきた。
【0010】
本発明に含まれるインデンは、より一般的なスチルベン基を含む化合物に対して優れた長所を提供することが企画された。多くのスチルベン含有化合物は、電子冷光放射装置において優れた発光特性を示してきた。しかしながら、スチルベン系には2つの重要な欠点がある。第1に、アキシアル結合周辺でねじれが生じるが、低分子化合物は比較的平坦である。これは、隣の分子は一緒に密着され得ること、すなわち、分子間電子軌道の導入、電子波帯の拡張、及び冷光放射効率の減少をもたらすことが知られている。分子の密着は分子間電気化学反応を促進し、これは、電子冷光放射寿命の損失の原因となりやすい。
【0011】
スチルベン系の第2の問題は、スチルベンのわずかにねじれる性質と関連する。軸に沿ったねじれ振動は、分子の軌道より大きな区分を意味し、これによって材料の電子波帯が拡張される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の化合物はこれらの問題を解決するために開発された。特に、電子冷光放射波帯において、より狭い電子波帯を有し、より長いEL寿命を提供する改善された電気化学安定性を有する分子系の製造の目的のために開発された。
【0013】
インデンは、2基置換のブリッジ炭素原子を含むことによって、スチルベンと異なる。第1に、従来のスチルベンの半分は5員環に囲まれるため、インデン分子は十分堅い、つまり、分子の自由度ははるかに少なく、電子波帯を狭くしている。第2に、2つの置換基がインデンの表面を覆うため、インデンの主要な分子軌道は他の分子の接近から防御されており、したがって、分子間効果も大幅に減少されている。
【0014】
分子の密着を防止するために大きな基を使用するという考えはずっと前から知られていた。より関係する場合はフルオレンである。フルオレンも、分子表面が密着するのを防止する覆い基を有する。しかしながら、ビフェニルの代わりにフルオレンを使用することは複数の分子を含むスチルベン、これは、OLEDに使用される材料の極めて重要な独立した分類であるが、これをパフォーマンスを向上させるために使用することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
スチルベン誘導体の改良版の開発を可能にすることによって、本発明は電子冷光放射用途の化合物の開発のために重要で革新的な可能性を開く。
【0016】
US5840217は、電子冷光放射装置として、スピロ化合物の使用を開示している。この化合物は、通常の有機溶媒に対する良好な溶解性、改良された薄膜形成特性及び十分に結晶化傾向が減少していると言われている。これによって、上記化合物を含む電子冷光放射装置の稼動寿命を増加することができる。
【0017】
US7077142は、置換されていないインデンを含む芳香族ベンゼン環を含む多様な化合物を有する電子冷光放射装置を開示している。
【0018】
JP3−168294は、縮合環状系が4面体系炭素原子を有する5員環に結合している。
【0019】
OLEDに使用されるスピロ化合物は、Spreitzel et al,Organic Light−Emitting Materials and Devices Vol 4105 (2001) pp125−133にも開示されている。
【0020】
US5085946は、OLEDにおける多様なシクロペンタジエン誘導体の使用を開示している。置換基は、環を形成するために結合されておらず、開示されている装置の稼動電圧は望ましくないほど高い。
【0021】
JP2001−307880はOLEDに使用されるスピロ化合物を開示する。前記化合物は合成するのが困難であり、4面体角炭素位置に使用できる置換基を限定する。
【0022】
したがって、本発明によれば、化合物(I)、(II)又は(III)の少なくとも1つを含有する発光装置が提供される。
【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】


ここで、R1及びR2は、同じか異なり、Hを含まない有機置換基である。
【0026】
ここで、R3及びR5は、ハロゲン及びHを含まない有機置換基から選択される。
【0027】
ここで、R4、R6、R7、R8、R9及びR10は、H、ハロゲン及び有機置換基からそれぞれ独立して選択される。
【0028】
ここで、R1、R2、R3、R4、R5,R6、R7、R8、R9、及びR10が還系を形成するために選択的に縮合される。ただし、R3及びR5の1つが縮合環の一部ではなく、また、R1及びR2が環を形成するために縮合しない。
【0029】
ここで、R3及びR4の両方ではなくどちらか、並びに、R5及びR6は、環を形成するために互いに縮合される。
【0030】
このように、R1、R2,R3、R4、R5、R6、R7、R8,R9及びR10は、上述したように選択され、2又はそれ以上が環を形成するとき、それは有機物である。
【0031】
4面角体炭素原子上のR1及びR2の存在は共役領域の表面を妨げ、πスタッキングの防止を助け、発光色の純度を改良する。さらに、スピロ化合物を除去することによって、化合物の合成は単純化され、4面角体角位置により多種類の置換基が得られ、これは特性の最適化を可能にする。例えば、R1及びR2は電荷輸送基である。
【0032】
それぞれ、5、6又は7員環にはただ1つの4面体角炭素位置があり、2重結合は共役されている。
【0033】
例として、(II)式においては、R4及びR7,又はR3、R4及びR7、又はR6及びR8が環を形成するために互いに縮合し、また、(III)式においては、R9及びR10は環を形成するために互いに縮合する。
【0034】
好ましくは、発光装置は式(I)の化合物を含む。
【0035】
好ましくは、R3、R4、R5及びR6は有機置換基である。R7、R8、R9及びR10は、
好ましくは独立してH又は有機置換基である。
【0036】
有機置換基は適当な基であり得、例としては、アルキル、アリール及びヘテロアリールがあり、これらはそれぞれ置換され又は置換されない。例えば、置換基がアリール又はヘテロアリールであるときは、これらは適当な基によって置換され、例としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミン、アルキル、シクロアルキル、縮合環、ハロゲン又はハロアルキル基である。本発明を通じて、置換基自体が選択的に置換されえる。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10が環を形成するために縮合するとき類似の基が形成され得る。その環は、好ましくは、ヘテロ原子を含む縮合芳香族環である。
【0037】
アルキル置換基は、好ましくは、C1-6アルキルであり、直鎖又は分岐鎖であり、例としては、メチル、エチル、t−ブチル又はその類似基である。
【0038】
アリール基は、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、フルオレン又はその類似基である。
【0039】
縮合環を形成しない他のR3及びR4、又はR5及びR6は、1つの実施例としては(置換され又はされない)アリール、例えば、フェニルである。
【0040】
縮合環は、縮合芳香族環、例えば、ベンゼン環を含む。したがって、好ましい実施例においては、発光装置は次の化合物の少なくとも1つを含む。
【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
【化15】


好ましくは、発光装置は次の式(IV)の化合物を含む。
【0044】
【化16】


1、R2、R5及びR6は、上記に定義される。これは、上述した好ましい特徴を有する。1つの実施例において、R1、R2、R5及びR6は、置換され又は置換されないアリール、ベンジル又はアルキルから独立して選択され、アルキルである場合はC1-6アルキルであることが好ましい。R1及びR2は、好ましくは、それぞれ(置換され又は置換されない)アリールである。R5及びR6は、好ましくは、それぞれ(置換され又は置換されない)アリール、例えば、フェニルである。
【0045】
化合物は、減圧下、例えば、10-6mbarにおいて、200〜400℃の範囲で、蒸発又は昇華する。
【0046】
好ましくは、化合物のガラス転移温度は80℃より大きく、融点は、好ましくは100℃を超える、例えば、130℃より大きい。
【0047】
発光装置は、一般的に、有機電子冷光放射装置であり、その他にアノード及びカソードを含み、ここで、化合物はこの間にはさまれる。
【0048】
本発明のさらなる側面によれば、発光装置の電子冷光放射材料として、一般式(I)、(II)又は(III)の化合物の使用が提供される。
【0049】
本発明のさらなる側面によれば、発光装置の電子輸送材料として、一般式(I)、(II)又は(III)の化合物の使用が提供される。
【0050】
本発明のさらなる側面によれば、発光装置の正孔輸送材料として、一般式(I)、(II)又は(III)の化合物の使用が提供される。
【0051】
本発明のさらなる側面によれば、一般式(V)の化合物が提供される。
【0052】
【化17】


ここで、R3及びR4は置換又は置換されない芳香族環を形成するために互いに縮合し、R1、R2、R5及びR6は、同じか異なり、アリール又はヘテロアリールから独立して選択され、これらは、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミン、アルキル、シクロアルキル、縮合環、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ及びアルキロキシ基であり、ただし、R1とR2は環を形成するために互いに縮合されておらず、R5とR6は環を形成するために互いに縮合しておらず、R1、R2、R5及びR6は全てがフェニルではない。
【0053】
これらの化合物は、他の用途が排除されるわけではないが、発光装置に使用されるときに特に有用である。
【0054】
それぞれの置換基は、それ自体必要に応じて置換され得る。
【0055】
好ましい実施例において、アリールはC6-15アリールであり、特定の例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル及びフルオレンである。ヘテロアリールは、好ましくは、オキサジアゾール、カルバゾール、チアゾール、オキサゾール、チアゾール又はベンゾチアゾールから選択され、一般的には、アリール基はヘテロアリール基より好ましい。
【0056】
アルキル置換基は、好ましくは、C1-6直鎖、又は分岐鎖アルキル基であり、特定の例
はメチル、エチル及びt−ブチルである。
【0057】
好ましい実施例においては、縮合環は炭化水素環である。好ましくは、縮合環の少なくとも1つの環は芳香族ではなく、例えば、インデン、ペリナフテン、テトラヒドロナフタレンである。
【0058】
好ましい実施例においては、R3及びR4は6員芳香族(ベンゼン)環を形成するために、互いに縮合される。環は適当な置換基によって置換され、1又は2以上の更なる環が縮合されるものも含む。
【0059】
次の化合物は、本発明において特に有用であることがわかった。
【0060】
【化18】


この化合物は、2つのキラル中心を有し、したがって、(S,S)、(R,R)及び(S,R)において立体異性体が存在する。両方の分子は明るい青色の蛍光色を示す。結晶は、349℃の融点及び149℃のTgを有する。
【0061】
本発明において有用であるとわかった代替的な化合物は次のものである。
【0062】
【化19】

【0063】
【化20】


テトラヒドラル炭素位置におけるR1及びR2置換基は、第1世代デンドロン型の3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)フェニル基である。これらの位置におけるデンドロンの付着は化合物を溶解性にし、溶液プロセスに適合させる方法を提供し、発光特性を十分に変えることなくプロセス特性を制御するためにデンドロンの特徴は変形される。この特別な化合物は良質な薄膜を形成するためにスピンコートすることができ、青色PL(冷光放射)発光波長を有する。
【0064】
本発明の化合物を製造するために多様な方法が使用されるが、次の例がある。
【0065】
i)
【化21】

【0066】
ii)インダノンに対するグリニャール反応
【化22】

【0067】
iii)ペンタアリールプロパノン(A)の環化
【化23】

【0068】
iv)ペンタアリールアリル・アルコール(B)の封鎖
【化24】


アリルアルコールの製造は、ブロモエチレンから立証される。
【0069】
v)o−ブロモアルデヒドへのPd触媒の添加
2−ブロモベンズアルデヒドとジフェニルアセチレンの反応は、高い収率で2,3−ジフェニルインデノンを与える(Larock et al,J.Org.Chem.1993、58、4579−4583)。この単純な反応は、より複雑な2,5−ジブロモテレフタアルデヒドを含む他の系と共に容易に進む。
【0070】
vi)塩化アシルのフリーデル−クラフト環化
類似の、しかし、より単純な反応は、塩化アシルとジフェニルアセチレンのフリーデル−クラフト反応を含む。
【0071】
一般に、有機電子冷光放射装置は、電極間に電圧が印加されるとき発光する少なくとも1つの冷光放射材料を含む有機層によって互いに分離されているアノード及びカソードを含む。
【0072】
有機層は、最も単純な形では、アノードに隣接する電子注入及び輸送領域、並びにカソードに隣接する電子注入及び輸送領域を有する。しかしながら、より一般的には、有機層はいくつかの層を含み、当業者に知られているように、各層は隣の領域とは異なる機能を果たしている。また、当業者に知られているように、冷光放射領域は均一な材料又は冷光放射性不純物元素を含むホスト材料を有する。これらの観点から、US4769292及びUS5061569に対して引用がなされる。本発明の化合物は、冷光放射領域において、正孔注入もしく若しくは母輸送、又は電子注入若しくは輸送領域において有用である。
【0073】
多くのOLED材料において、いくつかの一般的な問題が生じている。
【0074】
熱的安定性:低分子化合物は、単純な蒸発で十分に揮発性でありながら、130℃の温度まで非晶質薄膜として安定である。本発明で記載される低分子化合物は非常に熱的に安定であることが知られている。低分子化合物の非平坦化特性は、この低分子の大きいタイプでさえ驚くことに揮発性を有するが、高ガラス転移温度を有するより大きな分子の使用を可能にする。あるいは、光学的特性が導入される容易さは、全く結晶化しない完全に非晶質ガラスが合成される。
【0075】
色純度:多くの平坦化有機低分子は、互いに、又は隣接薄膜材料とπ−スタッキング集合体を形成できる。この結果は、発光波長を広げ(ときとしてかなりの程度)、減少した光強度を与える低いエネルギー励起状態をもたらす。本発明の化合物における4面体炭素原子は他の分子の接近を限定し、π−スタッキングを減少させ、より純度の高い色を発光させることを可能にする。低分子化合物はPLにおいて優れた青色放射を示す。他の色を与える最適化は比較的単純であると信じられている。
【0076】
輝度:トリアリールエチレン又はスチルベンと比較して、いくつかの例において、インデンはPL効率がより高いことを示している。これは、非放射性崩壊に導く回転を減少する強固な構造によって説明される。
【0077】
色の調整:効率的にトリアリールエチレン化合物を有することにより、同じ発光色が、既存の系で可能なものより小さな分子から得られるように十分な量の共役領域が比較的小さな容量に閉じ込められる。したがって、緑、オレンジ及び黄色のような色を得るための共役長の拡張の可能性は増加される。バンドギャップ及び発光色の正確な調整を可能にする結合角度及び置換基の正確な性質の微調整によって、発光色に対するより微妙な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
以下に、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
【0079】
[実施例1]
【化25】


[JPB4aは(R,S)異性体、JPB4bは(S,S)及び(R,R)異性体の混合](R,S)−1,4−ビス(1,2,3−トリフェニル−1H−インデン−1yl)ベンゼン(コードJPB4a) ブロモトリフェニルエチレン(73.00g,218モル)、マグネシウムくず(5.292g,218モル)及び無水イソアミルエーテル(〜200cm3)が、ほとんど全てのマグネシウムが消えるまで還流器で90分間以上ゆっくりと加熱された。1,4−ジベンゾイルベンゼン(21.00g,73.3モル)が加えられ、反応混合物は油浴中で165℃、2時間加熱された。冷却後、水溶性塩化アンモニウム(1M,350cm3)及びジクロロメタン(350cm3)が加えられた。水溶層は分離され、ジクロロメタン(5×100cm3)で抽出され、結合有機層は水溶性塩化アンモニウム(2×100cm3)及び水(3×100cm3)で洗浄され、蒸発されてオレンジ色の油を得た。この油は、ジエチルエーテル(300cm3)と共に粉砕され、一夜放置され、ろ過され、ジエチルエーテルで洗浄され、吸引下で乾燥され、淡いピンク色の粉末を得た。粗生成物(15.36g)がジクロロメタン/ヘキサンから再結晶され、1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,2,3,3手トラフェニルプロプ−2−en−1−yl)ベンゼンの白い粉(10.01g)を得た。この白い粉はアセトン酸(250cm3)と混合され、還流器中で加熱された。次に、硫酸(濃硫酸、5cm3)が加えられ、反応混合物は還流器中でさらに80分間加熱され、次いで冷却される。白い沈殿物が、液体表面から除去された。その後、その液は、(S,S)及び(R,R)混合異性体の製造に使用された。その間、分離された白い沈殿物がアセトン酸/水(1:1)、水、エタノール及びジエチルエーテルで洗浄された後、吸引下で白い粉(6.02g)が得られた。これは、赤外線波長が、水酸化物の継続した存在に対応するといえる〜3600cm-1におけるピークを示さなかった。この白い固体はジクロロメタン/ヘキサンから再結晶化され、白い結晶(2.43g)が得られ、これらは5×10−8mbar、300℃で連続して2回昇華され、融点346−49℃の(R,S)−1,4−ビス(1,2,3−トリフェニル−1H−インデン−1−yl)ベンゼンの真正なサンプルに一致する波帯とクロマトグラフした白い結晶(1.40g,3%,m.p.346−347℃)が得られた。
(生成値:C,93.9;H,5.5、C6042、理論値:C,94.5;H,5.6%;δH(500MHz;CDCl3)6.7−7.3(42H,m,モル);ν最大(DATR)/cm-1694s、1028w、1443m、1489m、1598w、3057w;m/z(FAB)762.4(M+,25%);DSC(Tg=149℃、Tm=353℃);TGA(350℃を超える空気中で安定);固体PL(CIE X=0.16,y=0.10)。
【0080】
[実施例2]
(R,R;S,S)−1,4−ビス(1,2,3−トリフェニル−1H−インデン−1−yl)ベンゼン(コードJPB4b)
上記の手続きから得られるアセトン酸母液は水で希釈され、放出された沈殿物はろ過され、前の工程の再結晶から得られた母液と結合され、真空中で乾燥した。純化は、上記の(R,S)異性体に類似する態様で、再結晶化と蒸発の繰り返しの結合で行われ、(S,S)−1,4−ビス(1,2,3−トリフェニル−1H−インデンyl−1−)ベンゼン及び融点130−150℃の(R,R)−1,4−ビス(1,2,3−トリフェニル−1H−インデン−1−yl)ベンゼンのラセミ混合物の淡い黄色のガラス(2.173g,4%)が得られた。
(生成値:C,94.5;H,5.5、C6042、理論値:C,94.5;H,5.6%;δH(500MHz;CDCl3)6.6−7.5(42H,m,モル);ν最大(DATR)/cm-1695s、1029w、1422m、1490m、1597w、3056w;DSC(Tm=130−140℃);TGA(350℃を超える空気中で安定);固体PL(CIE X=0.15,y=0.10)。
【0081】
[実施例3]
実験
装置の形成と試験
インジウム錫酸化物で被覆されたガラス基板(いくつかの業者から購入可能、例えば、米国のアプライドフィルムス、台湾のメルクディスプレイテクノロジー)が、標準的な洗剤及び通常のリソグラフィープロセスによって、洗浄され、パターン形成された。次の例で使用された基板は、7.4m2の領域を照らす光を有し、4”×4”、厚さ0.7mmと測定され、ITOは120nmの厚さであり、各基板に4つの装置が形成されるようにITOがパターン形成された。リソグラフィープロセスの最終段階、すなわち、フォトレジストの剥離後、基板は洗剤(3vol.%、Decon 90)洗浄され、さらに、脱イオン水で洗浄され、乾燥され、要求されるまで105℃で焼成される。装置の形成の直前に、処理基板は酸化プラズマエッチング装置で酸化される。例として、エミテックK11050Xプラズマエッチング装置による100W、2分間の処理は適切である。基板及びシャドウマスクは、10-6mbarまで減圧された真空蒸着装置に直ちに移送される。有機層は0.5−1.5Å/sの速度で蒸発される。結合パッドを有し直短経路を有しないカソードを形成するためにマスクは交換される。カソードは、0.2Å/sの速度で1.5nmのLiFを蒸発することによって蒸着される。
【0082】
いくつかの装置は、この段階で放射領域の端部及び金属蓋の周辺にエポキシガスケットを使用して封止された。これは乾燥窒素雰囲気中で実行された。エポキシは日本のナガセ製のUV矯正エポキシである。
【0083】
電流/電圧、輝度/電圧測定は、キースレイ2400測定ユニット及びIBM互換性PCからプログラムされたキースレイマルチメータに通じた目盛付き光ダイオードを使用して実行された。EL放射波帯は、オリエルのCCDカメラを用いて測定された。
【0084】
結果
JPB4を用いた7つの装置が作成された。
【0085】
【表1】


図1は、装置2、3及び5のEL発光波帯並びにJPB4a(固体粉末)の冷光放射波帯を示す。すべての装置は最適化さていない。次の特性に注目すべきである。
【0086】
比較的、効率的な青色発光は0.6lm/Wである(又は1.6cd/A)。JPB4aのEL青色放射(装置3及び5)はPL発光(共に固体状態)と一致している。
【0087】
CIE色調が(0.16、0.10)であるPL類似の優れたPAL青色が示される。
【0088】
狭い発光波帯(約75nm)半波長が示される。
【0089】
JPB4aの3D構造はπ−スタッキングを限定し、ここからエキシマを発生する。さらに、エキシマが除かれるとき、分子間反応もまた除かれ、したがって、装置の寿命の向上をもたらす。
【0090】
JPB4a又はJPB4bが発光層(それぞれ、装置6及び7)Alqと共に正電荷輸送層として使用されるとき、効率的なAlq発光が観察され、装置はNPBを正電荷輸送層として使用するものとほぼ等しい。
【0091】
[実施例]
【化26】


3,5,3’,5’−テトラブロモベンゾフェノン(1)の製造
乾燥エーテル中の1,3,5−トリブロモベンゼン(50.0g、160mmol)の溶液がトルエン/液体窒素浴における窒素下において−90℃まで冷却された。n−ブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M、100cm3、160mmol)が滴下された後、
冷却浴に1時間攪拌された。エチルピペリジン−1−カルボキシレート(10.061g,64.0mmol)が20分間滴下され、混合物はさらに20分間冷却浴で攪拌され、その後、混合物は室温まで加熱され、次いで、短時間還流するために加熱される。水溶性塩酸(20%,500cm3)がゆっくりと加えられ、反応物は激しく攪拌され、一晩継
続された。水溶層が分離され、ジクロロメタンによって抽出された。有機層が結合され、溶媒が除去された。残渣がジクロロメタンと共にシリカプラグを通過した。溶媒は除去され、固体はエーテルによって洗浄され、吸引下で乾燥された。粗い生成物が真空(220℃、4×10−7mbar)で昇華され、ジクロロメタン/ヘキサンから再結晶化され、融点208−209℃の結晶粉末として(18.40g,58%)が得られた。
2,3−ジフェニル−1,1−ビス(3,5−ジブロモフェニル)−1H−インデン(2)の製造
ブロモトリフェニルエチレン(14.143g,42.19mmol)、マグネシウム(903mg,37.2mmol)及びi−ペンチルエーテル(100cm3)が1.7
5時間還流するまで加熱された。熱は一時的に除去され(14.00g,28.12mmol)が加えられた。ヘキサン(100cm3)が加えられ、混合物は30分間維持さ
れた。残留沈殿物は回収され、ヘキサンで洗浄された。固体はジクロロメタン(200cm3)及び水溶性塩化アンモニウム(200cm3)と混合され、完全に溶解するまで攪
拌された。水溶層は分離され、ジクロロメタン(3×30cm3)及び結合された有機層
で抽出され、水溶性塩化アンモニウム(1M,100cm3)及び水(100cm3)で洗浄され、無水性硫化マグネシウム上で乾燥され、ろ過され、溶媒は除去された。残渣は、沸騰したエタノールで粉砕され、冷却され、ろ過されて、白い固体として(16.34g,79%)を得た。
2,3−ジフェニル−1,1−ビス[3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)フェニル]−1H−インデン(3)の製造
4−t−ブチルフェニルボロン酸(5.00g,28.08mmol)、2(3.45g,4.68mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.08g,0.937g)、トルエン(44cm3)、エアタノール(15cm3)及び水溶性ナトリウムカーボネート(2M,15cm3)が脱ガスされ、窒素ガス中で69時間100℃まで加熱され、冷却された。有機層は分離され、水溶性塩酸(3M,20cm3)、水(20cm3)及び塩水(20cm3)で洗浄され、溶媒が除去された。残渣はジクロロメタン(150cm3)に溶解され、黄色の不溶性材料が廃棄された。ろ過物は濃縮され、ジクロロメタン/エタノール混合物から再結晶化された。残りの固体は、溶離液としてジクロロメタン/ヘキサン(1:2)でシリカ上カラムクロマトグラフィーで純化され、ジクロロメタン/エタノール混合物から再結晶化され、白い結晶固体として3(3.69g,83%)が得られた。1H NMR(CDCl3,400MHz,ppm):1.28(36H,s,t−ブチル)、7.02−7.39(30H,m,芳香族H)、7.53(4H,d,J1.5,分岐フェニル2,6−H)及び7.63(2H,dd,J1.5,分岐フェニル4−H)。
【0092】
化合物3は冷光放射性であり、発光のCIE色調は、溶液(THF)で(0.154,104)であり、薄膜(クロロホルムからのスピンコート)で(0.16,0.17)であった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】装置2、3及び5のEL発光波帯並びにJPB4a(固体粉末)の冷光放射波帯を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化合物(IV)を含有する発光装置であって、
【化7】

1及びR2は、3,5−ビス(4-t-ブチルフェニル)フェニルであり、R5及びR6はフェニル基である発光装置。
【請求項2】
前記化合物(IV)が、減圧下200〜400℃の範囲で蒸発又は昇華する請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
減圧が10-6mbarである請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記化合物(IV)のガラス転移温度が80℃以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記化合物(IV)の融点が100℃以上である請求項1ないし4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記化合物(IV)の融点が130℃以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の発光装置。
【請求項7】
前記化合物(IV)がアノードとカソードの間に挟まれているアノード及びカソードを含む請求項1ないし6のいずれかに記載の発光装置。
【請求項8】
前記化合物(IV)を冷光放射材料として使用した請求項1ないし7のいずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
前記化合物(IV)を電子輸送材料として使用した請求項1ないし8のいずれかに記載の発光装置。
【請求項10】
前記(IV)を正孔輸送材料として使用した請求項1ないし9のいずれかに記載の発光装置。



【図1】
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【公開番号】特開2009−188412(P2009−188412A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53571(P2009−53571)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【分割の表示】特願2003−546416(P2003−546416)の分割
【原出願日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【出願人】(503419985)シーディーティー オックスフォード リミテッド (21)
【Fターム(参考)】