説明

発光装置及び印刷装置

【課題】過熱を抑制し、露光に十分な光量を得ることができる発光装置及び印刷装置を提供すること。
【解決手段】所定の間隔でアレイ状に配置された複数の有機EL素子20Aを具備する発光装置であって、前記有機EL素子20Aは、素子基板21上に配置され且つ水密に封止された有機EL素子20Aと、前記有機EL素子20Aが発した光を反射集光し且つ所定の方向に放射する楔型導光路57が形成された導光部50と、を有し、前記素子基板21と前記導光部50とはギャップ剤を含むシール剤81によって接合され、前記有機EL素子20Aと前記楔型導光路57と前記シール剤81とで囲まれた領域には、流動性導光媒体58が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷等の露光等に用いられる発光装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機EL素子を具備する発光装置を露光に利用する印刷装置が知られている。これに関連する技術として、例えば特許文献1には、有機EL素子を具備する露光装置及び画像形成装置が開示されている。前記特許文献1に開示されている技術では、有機EL素子と感光体とがレンズを介して一定の距離をおいて設置され、前記有機EL素子からのフォーカスされた光によって前記感光体上に静電潜像が形成される。
【特許文献1】特開2004−327217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、印刷装置に利用される発光素子は高輝度で発光するために発熱してしまい劣化等の原因になっていた。
【0004】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、過熱を抑制し、印刷装置等における露光に十分な光量を得ることができる発光装置及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による発光装置は、
発光素子が配置された素子基板と、
前記素子基板に対向する対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間に設けられた導光部と、
前記発光素子を冷却するための流動性のある液体を含む流動性媒体と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
上記発光装置において、前記流動性媒体は、前記導光部に設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記発光装置において、前記導光部は、楔型導光路を備えていることを特徴とする。
【0008】
上記発光装置において、前記導光部は、前記発光素子から発する光を反射して前記素子基板から出射する反射膜を有することを特徴とする。
【0009】
上記発光装置において、前記素子基板及び前記対向基板は、シール材によって接合されていることを特徴とする。
【0010】
上記発光装置において、前記発光素子の発光制御を電気的に行う駆動回路部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
上記印刷装置において、上記発光装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、過熱を抑制し、印刷装置等における露光に十分な光量を得ることができる発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る発光装置及び印刷装置を説明する。
【0014】
図1は、本第1実施形態に係る発光装置を用いた印刷装置の構成の一例を示す図である。まず、図1に示すように、本第1実施形態に係る発光装置を用いた印刷装置は、感光体ドラム1と、本第1実施形態に係る発光装置2Aとロッドレンズアレイ2Bとから成る露光部2と、帯電ローラ3と、イレーサ光源感光体4と、クリーニング部材5と、現像ローラ6aを含む現像器6と、転写ローラ8と、定着ローラ9と、搬送ベルト11とを具備している。なお、参照符号7が付されているのは印刷用紙である。
【0015】
前記感光体ドラム1は負帯電型OPC(Organic Photo Conductor)感光体(有機感光体)である。このことに鑑みて、前記帯電ローラ3は負帯電器とされている。また、前記現像器6は負帯電トナーで現像を行う現像器である。また、前記発光装置2Aは、詳しくは後述するが、複数の有機EL素子(発光素子)がアレイ状に配列されて構成されている。
【0016】
ところで、図1に示す印刷装置では、おおまかには以下のような工程により印刷が行われる。まず、前記帯電ローラ3が回転する感光体ドラム1の表面に接触することによって、感光体ドラム1の接触した表面が一様に負電位となるように帯電される。続いて、前記発光装置2Aによって、前記ロッドレンズアレイ2Bを介して前記感光体ドラム1に対して光照射が為され、前記感光体ドラム1上には静電潜像が形成される。その後、前記現像器6によって、前記静電潜像にトナーが付着される。そして、前記転写ローラ8によって、前記静電潜像に付着しているトナーが前記印刷用紙7に転写される。以下、このような印刷工程を詳細に説明する。
【0017】
まず、前記感光体ドラム1は、帯電用電源(不図示)から供給される負電位であって且つ後述する現像器6で出力される現像電圧に比較的近似している或いは等しい電位の初期化帯電電圧を、前記帯電ローラ3によって印加される。これにより、前記感光体ドラム1における周表面は一様に負帯電され、電位的に初期化される(初期化帯電状態となる)。
【0018】
そして、周表面が初期化帯電状態となった前記感光体ドラム1には、前記発光装置2Aによって、印字情報に従った光書き込み(露光)が行われる。これにより、露光が行われないために初期化帯電状態のままの前記初期化帯電部と、前記露光によって初期化帯電部より相対的に高い負電位である−50(V)程度の露光帯電電圧が印加されて帯電された露光帯電部とから成る静電潜像が、前記感光体ドラム1の周表面上に形成される。
【0019】
ここで、前記現像器6内に収容されている弱いマイナス電位に帯電したトナーが、前記現像ローラ6aによって、前記現像ローラ6aと前記感光体ドラム1との対向部に回転搬送される。このとき、前記現像ローラ6aは、不図示の電源から、露光帯電部よりもさらに低い−250(V)程度の現像電圧を印加される。したがって、前記感光体ドラム1における前記静電潜像の−50(V)程度の露光帯電部では、現像電圧よりも200(V)程度高電位となり、初期化帯電部では、現像電圧との差が200(V)よりも絶対値が十分小さい電圧になる。
【0020】
これらの静電潜像における現像電圧との電位差の違いにより、前記現像ローラ6aに対して相対的にプラス極性の電位となった前記静電潜像における露光帯電部には、マイナス極性に帯電しているトナーが付着してトナー像が形成されるのに対し、初期化帯電部には、トナーを静電的に吸引する程の電界が生じないのでトナーが付着しない。このトナー像は、前記感光体ドラム1の回転によって、前記感光体ドラム1と前記転写ローラ8とが対向している転写部へと搬送される。
【0021】
なお、上述したようにして形成されたトナー像におけるトナー付着量(現像された画像の濃度)は、前記発光装置2Aによる前記感光体ドラム1への露光量に応じて生じる前記感光体ドラム1の周表面上における電位、つまり現像電圧との電位差によって決定される。
【0022】
ところで、上述したように前記トナー像が前記転写部へ搬送されると、前記搬送ベルト11によって、前記印刷用紙7が前記転写部へ搬送される。そして、前記転写部においては、前記トナー像が前記印刷用紙7上に、前記転写ローラ8によって転写される。このようにして前記トナー像を転写された前記印刷用紙7は更に下流に搬送され、前記トナー像が前記定着ローラ9によって熱定着された後、前記印刷用紙7は当該印刷装置の外部へ排出される。
【0023】
以下、発光装置2Aの基本的な構造について、図2〜4を参照して説明する。ここで、発光装置2Aは、主として発光を放射する複数の有機EL素子20Aと、主として前記有機EL素子20Aが発した光の進行方向を所定の方向に設定し、出射させる導光部50と、主として前記有機EL素子20Aの発光制御を電気的に行う駆動回路部40Aを備える。
【0024】
有機EL素子20Aは、図2に示すようにガラス等の素子基板21上に形成され、素子基板21に対向して配置されたガラス等の対向基板28によって封止されている。具体的には、素子基板21上に有機EL素子20Aとして、光反射性の画素電極23、正孔輸送層(HTL)24、発光層25、電子輸送層(ETL)26、及び光透過性の対向電極27がこの順にて形成されている。ここで、正孔輸送層24、発光層25、電子輸送層(ETL)26が有機化合物を有する有機EL層となる。この有機EL層は、上記に限らず、例えば、正孔輸送層及び電子輸送性発光層でもよく、正孔輸送兼電子輸送性発光層のみでもよく、正孔輸送性発光層及び電子輸送層でもよく、また、間に適宜担体輸送層が介在してもよく、その他の担体輸送層の組合せであってもよい。
【0025】
また画素電極23は、アノードとして機能し、下層側に設けられたアルミニウム合金等の反射金属層と、上層側に設けられた錫ドープ酸化インジウム(Indium Thin Oxide;ITO)や亜鉛ドープ酸化インジウム等の透明電極材料を有する透明導電性酸化金属層と、の積層構造であってもよく、アルミニウム合金等の反射金属層の単層であってもよい。
【0026】
対向電極27は、透明のカソードとして機能し、下層側に設けられたバリウム、マグネシウム、リチウム等の仕事関数の低い電子注入層と、上層側に設けられた上記と同様の透明な導電性酸化金属層と、の積層構造であってもよい。
【0027】
画素電極23をカソードとし、対向電極27をアノードとする場合、画素電極23に接している担体輸送層は電子輸送性の層となり、対向電極27に接している担体輸送層は正孔輸送性の層となる。
【0028】
そして、前記画素電極23と前記対向電極27との間に、所定の電圧が掛けられることで、前記画素電極23から正孔が、前記対向電極27から電子が、前記発光層25に注入され、前記発光層25にて正孔と電子とが再結合して発光する。この発光によって生じた光100は、ITOである前記対向電極27を通過して前記対向基板28の方向に完全拡散放射する。対向電極27は複数の有機EL素子20Aで共通する単一電極であってもよい。
【0029】
ところで、本第1実施形態においては、前記発光装置2Aと前記ロッドレンズアレイ2Bとから成る露光部2によって、該露光部2からミリオーダーの距離を隔てた前記感光体ドラム1上に小径の光スポットを形成し、各ドットを解像する光ビームを作る。以下、前記露光部2の詳細な構成を、前記露光部2の外観を示す図である図3を参照して説明する。
【0030】
前記発光装置2Aには、複数の有機EL素子20Aがアレイ状に配列されている。ここで、有機EL素子20Aは、前記素子基板21と前記対向基板28との間に挟まれて存在しており、導光部50によって進行方向を制御された光が、素子基板21の光出射領域33から素子基板21外へ放射する。したがって、有機EL素子20Aは図3においては不図示となっているが、有機EL素子20Aと光出射領域33とは一対一対応の関係であるので、有機EL素子20Aの配列は同図から容易に推測できる。このように、発光装置2Aにおいて、素子基板21の光出射領域33がロッドレンズアレイ2Bと対向するように、有機EL素子20Aが配列されている。
【0031】
前記発光装置2Aには、図1に示す前記感光体ドラム1への露光走査の主走査方向(前記感光体ドラム1の幅方向つまり前記印刷用紙7の幅方向)に並ぶように複数の有機EL素子20Aが配設され、有機ELアレイを形成している。この有機ELアレイは、当該印刷装置が、例えばA4サイズの印刷用紙を縦方向に用いてその幅一杯に印字密度1200dpi(ドット/インチ)で印字可能な印刷装置の場合であれば、およそ14000個の有機EL素子20Aを備えている。そして、これらの個々の有機EL素子20Aには、ホスト機器(不図示)から出力される印字情報に従ったパルス電圧が印加される。つまり、個々の有機EL素子20Aは、選択的に発光制御される。
【0032】
なお、前記光出射領域33は、有機EL素子20Aの発する光を前記素子基板21の外部へ出射させる為に、前記素子基板21に設けられた領域である。
【0033】
また、前記有機EL素子20Aは、図3に示すように制御ケーブル31A,31Bによって、前記ホスト機器(不図示)と電気的に接続されている。ここで、前記制御ケーブル31A,31Bと、前記有機EL素子20Aとの接続方法に関しては、前記有機EL素子20Aを駆動させることができる接続方法であればどのような接続方法であってもよい。
【0034】
ところで、前記素子基板21と前記対向基板28とは、封止樹脂70を介してシール剤81(詳しくは後述する)によって接着されている。なお、図6乃至図8に示すように、前記シール剤81は、有機EL素子20Aを囲むようにして塗布されている。
【0035】
以下、図4を参照して、本一実施形態に係る発光装置2Aの具備する有機EL素子20Aの詳細な構造を説明する。
【0036】
図4に示すように、有機EL素子20Aは、前記素子基板21上に形成され、前記対向基板28によって封止されている。ここで、前記対向基板28は、同図に示すように封止樹脂70でコーティングされている。そして、この封止樹脂70には、各有機EL素子20Aに対応するように複数の導光部50が形成されている。封止樹脂70は、後述する流動性導光媒体58が導光路として機能するような所定の形状になるような凹部を有している。また、前記素子基板21と前記導光部50との間には、有機EL素子20Aが形成されている。さらに、前記有機EL素子20Aには、駆動回路部40が電気的に接続して設けられている。以下、前記有機EL素子20Aと前記導光部50と前記駆動回路部40とを有する前記有機EL素子20Aの構造を詳細に説明する。
【0037】
前記有機EL素子20Aは、前記画素電極23と、前記HTL24と、前記EL25と、前記ETL26と、前記対向電極27とから成る。前記有機EL素子20Aの詳細に関しては、図2を参照して説明した通りである。また、前記有機EL素子20Aに隣接して2つの絶縁性のバンク35が設けられている。このバンク35によって、前記有機EL素子20Aが積層方向に押圧されることによる破損や前記画素電極23と前記対向電極27との短絡を防いでいる。
【0038】
ここで、前記シール剤81と前記バンク35との間の領域には所定の径のギャップ剤(不図示)が設けられており、該ギャップ剤(不図示)によって前記素子基板21と前記対向基板28との間隔が所定の間隔に保たれている。なお、前記シール剤81にギャップ剤を含ませておいても勿論よい。ギャップ剤は絶縁性であれば、セラミック等の無機化合物や樹脂のいずれでもよく、形状は球形、円柱形等特に制限はないが、有機EL素子20A上に設けられていない。このように前記素子基板21と前記対向基板28との間には、空間が形成されているため、後述する製造プロセスにおいて、前記素子基板21と前記対向基板28とを貼り合わせて接合する際に、有機EL素子20Aは押し潰される恐れがない。
【0039】
さらに、前記駆動回路部40上には、図4に示すようにSiNx(屈折率1.8)等の絶縁材料を有する絶縁保護膜46が形成されている。前記シール剤81で囲まれた素子基板21と対向基板28との間の空間には、有機EL素子20A及び駆動回路部40を冷却するための流動性のある液体を含む流動性導光媒体58が充填されている。換言すれば、前記有機EL素子20A及び前記駆動回路部40は前記絶縁保護膜46及び流動性導光媒体58によって水密且つ気密に封止されている。駆動回路部40及び絶縁保護膜46は、素子基板21と対向基板28との間の厚さに比べて十分薄いので、駆動回路部40及び絶縁保護膜46がある領域でのギャップ剤の高さと、ない領域でのギャップ剤の高さはほとんど差がない。
【0040】
前記導光部50は、前記封止樹脂70に形成された楔型の凹部内面に設けられた反射膜59と、反射膜59に囲まれた凹部に設けられた空間となる楔型導光路57と、楔型導光路57内を伝搬する光を光出射領域33に導く空間となる出射路53と、楔型導光路57及び出射路53に充填される流動性導光媒体58と、を備える。このため、流動性導光媒体58は、有機EL素子20Aの発する光を伝搬する媒体となるため、良好な光透過性がなければならず、無色であることが好ましい。
【0041】
ここで、前記反射膜59は、集光反射面55と、下向き放射反射面56とが形成されている。集光反射面55は、有機EL素子20Aの上方に配置され、入射光が下向き放射反射面56側に向けて出射されるように傾いている。下向き放射反射面56は、光出射領域33に対応する位置に設けられ、入射された光を反射して光出射領域33から出射するように傾いている。
【0042】
したがって、前記有機EL素子20Aからの光線51は、図4に示すように楔型導光路57に充填された流動性導光媒体58内を進行して、前記楔型導光路57における前記集光反射面55及び有機EL素子20Aの画素電極の間で反射を繰り返して下向き放射反射面56に向けて集光し、前記下向き放射反射面56で反射され前記素子基板21に設けられた光出射領域33から出射する。また画素電極20が反射部材を有しておらず、入射光が透過してしまう場合、有機EL素子20Aの下方、例えば、ゲート絶縁層45の下方に反射膜を設ければよい。
【0043】
また、前記流動性導光媒体58としては、例えばフッ素系不活性液体のフロリナート(登録商標)やシリコーンオイル等を挙げることができる。
【0044】
より詳しくは、前記フロリナートとしては住友3M製のFC−3283を挙げることができ、前記シリコーンオイルとしては信越シリコーン製のKF−96L−1csを挙げることができる。
【0045】
なお、前記シリコーンオイルは、化学的に安定な物質である。したがって、前記シリコーンオイルは、有機EL素子20Aで生じる光を照射されることによる劣化や経時劣化があまりないという利点がある。また、有機EL素子は発光の際に熱を生じ、この熱によって劣化が促進してしまうが、流動性導光媒体58が冷媒として機能するので有機EL素子20Aの寿命を延ばすことができる。流動性導光媒体58は、冷却するという観点では、有機EL素子20Aに直接接触した方が好ましいが、流動性導光媒体58と有機EL素子20Aとの間に薄い封止絶縁膜があってもよい。流動性導光媒体58は隣接する部材の屈折率に近似または一致した屈折率であることが特に好ましく、フロリナートの場合、屈折率は1.25〜1.3程度となる。
【0046】
前記流動性導光媒体58は、図4に示すように導光部50内のみならず、前記駆動回路部40上の空間にまで充填されている。したがって素子基板21と対向基板28との間に十分量充填することができ、冷却効果を十分得ることができる。
【0047】
光は2つの隣接する透明媒体の屈折率差の大きいほど透明媒体の界面での屈折の程度が大きくなり、所定方向に導光するように設定することが難しくなるが、本実施形態においては、上述したように前記有機EL素子20Aと前記導光部50との境界領域を前記流動性導光媒体58で満たすことで、前記有機EL素子20Aと前記導光部50との境界領域に低屈折率の気体層が生じるのを防ぎ、導光部50での光の進行方向を制御しやすい。このため、前記有機EL素子20Aの発した光が前記導光部50に入射するまでの光路中に気体層が介在することによって生じる光のロスを防ぐことができる。
【0048】
前記駆動回路部40は、ドレイン電極41と、ソース電極42と、ゲート電極43と、半導体44と、ゲート絶縁層45と、を有する薄膜トランジスタを備え、絶縁層46によって覆われている。ソース電極42は、有機EL素子20Aの画素電極23に接続されている。薄膜トランジスタの数は、各有機EL素子20Aごとに複数あってもよい。なお、この駆動回路部40に関しては、図8を参照して後述する。
【0049】
ところで、一般的に有機EL素子は水分に弱い。したがって、水分による有機EL素子への悪影響を防ぐ為に、本一実施形態において前記有機EL素子20Aは、図4に示すように前記素子基板21と前記対向基板28との間に形成されている。これにより、前記有機EL素子20Aは、上下方向から水分及び外気に直接触れることが無くなる。そして、横方向からは、シール剤81及び流動性導光媒体58によって水分及び外気を遮断することができる。
【0050】
このような構造では、有機EL素子20Aの横方向での封止を良好にするために有機EL素子20Aからシール剤81までの距離を長くして流動性導光媒体58の横方向距離が長くなるように充填しても、横方向、つまり、発光装置2Aのシール剤81から光を出射していないので、有機EL素子20Aから光出射領域33までの距離が長くなるわけではないので、光線51の光路長が長くならなくてすむ。
【0051】
以下、前記有機EL素子20A及び前記導光部50を製造する主要な工程について説明する。
【0052】
駆動回路部40が形成された素子基板21上に、上述したように図1に示す前記感光体ドラム1への露光走査の主走査方向に並ぶように、複数の有機EL素子20Aを一列に形成して有機ELアレイを形成する。
【0053】
まず、前記素子基板21上に前記有機EL素子20Aを複数個形成する。各有機EL素子20Aは、前記素子基板21の下側から見たときの形状が、副走査方向(紙搬送方向)を長手方向とする長方形となるようにする。したがって複数の有機EL素子20Aは主走査方向(短手方向)に沿って配列している。これにより、主走査方向の有機EL素子20Aの間隔を狭くして高精細ピッチにしても比較的前記有機EL素子20Aにおける発光面積を大きくすることができる。
【0054】
また、前記素子基板21上に前記有機EL素子20A及び前記駆動回路部40をアレイ状に配置した後、素子基板21を対向基板28に貼り合わせて接合する直前に、UV硬化樹脂から成るシール剤81を、前記有機EL素子20A及び前記駆動回路部40のアレイを取り囲むようにして前記素子基板21に塗布する。なお、このシール剤81を前記素子基板21に塗布する際には、前記有機EL素子20A及び前記駆動回路部40を完全に取り囲むように塗布するのではなく、図7に示すように所定の一箇所は、前記シール剤81を塗布しない箇所であるシール剤開口部85を設けておく。素子基板21は、このように前記有機EL素子20A及び前記駆動回路部40のアレイを配置し且つ前記シール剤81によって有機EL素子20A及び前記駆動回路部40のアレイを封止している。
【0055】
ここで、前記導光部50の形成方法を説明する。まず、図5に示す楔型導光路57と同型の楔型形状を、前記対向基板28にコーティングされた前記封止樹脂70に対してアレイ状にインプリントする。このようにして前記封止樹脂70に凹にインプリントされた楔型導光路57に、金属から成る前記反射膜59を形成する。なお、図5に示す有機EL発光面61とは、前記有機EL素子20Aにおける上面(前記楔型導光路57と対向する面)である。反射膜59は、素子基板と対向基板とが接合されても、有機EL素子20Aや駆動回路部40と電気的に短絡せず、且つ流動性導光媒体58が充填できるように隙間があることが好ましい。
【0056】
続いて、前記素子基板と前記対向基板とを、所定のアライメントマークに合わせて、前記ギャップ剤(不図示)により保たれる所定の間隔を保持した状態で硬化前の前記シール剤81によって貼り合わす。そして、紫外線を照射して前記シール剤81を硬化させ、前記素子基板と前記対向基板とを接合する(該接合によって得られた基板を、以降、パネルと称する)。
【0057】
その後、製造装置内を大気圧よりも低い圧力下(以降、減圧下と称する)にして、シール剤81で囲まれた内部とその周囲の外部を減圧下と同じ圧力にする。引き続き、図7に示すように前記パネル82における前記シール剤開口部85を、前記流動性導光媒体58で満たされた流動性導光媒体槽86に浸して、流動性導光媒体注入工程を開始する。以下、流動性導光媒体注入工程について説明する。
【0058】
まず、前記シール剤開口部85を、減圧下において前記流動性導光媒体槽86に浸して前記流動性導光媒体58に接触させる。続いて、製造装置内の圧力を減圧下より高い気圧、例えば大気圧にする。これにより、前記シール剤81にて囲まれた空間内の圧力が空間外の圧力より低くなり、前記シール剤開口部85から前記流動性導光媒体58が充填される。
【0059】
前記流動性導光媒体58が前記シール剤81にて囲まれた空間内に充填された後、当該パネル82を前記流動性導光媒体槽86から取り出し、前記シール剤開口部85に対してUV硬化樹脂を塗布し且つ紫外線を照射して硬化させた封止硬化樹脂83によって封止する。このようにして、前記素子基板と前記対向基板との間に、前記流動性導光媒体58を封入し、図6(a)、図6(b)に示すような構造とすることができる。
【0060】
なお、前記素子基板と前記対向基板との間隔は、封止樹脂70及び前記ギャップ剤(不図示)により制御したが、バンク35を対向する封止樹脂70に当接して、前記ギャップ剤の代わりに、前記バンク35の高さにより制御しても勿論良い。また、シール剤81は、封止樹脂70の縁上に設けたが、封止樹脂70の周縁を対向基板28の内側にずらして、シール剤81が封止樹脂70の周囲を囲むようにしてもよい。
【0061】
以下、アクティブマトリクス駆動にて前記有機EL素子20Aを駆動させる場合の前記駆動回路部40の一構成例を、図8(A),(B)を参照して説明する。なお、前記駆動回路部40に関しては本発明の特徴部ではないので簡単に説明する。
【0062】
図8(A)は、前記パネル82の側面断面図を示している。同図に示すように、駆動回路部40は、画素ごとに、選択トランジスタ101と、選択トランジスタ103及び有機EL素子20Aに接続された駆動トランジスタ103と、データ記憶の為のキャパシタ105と、を備え、選択トランジスタ及び駆動トランジスタを制御して個々の有機EL素子20Aを適宜発光または無発光させる。選択トランジスタ101のソースと駆動トランジスタ103のゲートは、コンタクトホール110を介して接続されている。前記対向電極27は例えば0(V)に固定され、前記画素電極23は駆動トランジスタのソース電極42に電気的に接続される。なお、前記HTL24、前記EL25、及び前記ETL26に関しては、紙面の大きさの都合上、図8においては発光層200としてまとめて1つの層として表現されている。
【0063】
また、図8(B)は、前記パネル82の上面断面図を示している。同図に示すように、前記対向電極27は全画素に共通した単一のコモン電極であり、主走査方向に延在している。
【0064】
ところで、一般に有機EL素子は駆動の為に大きな電流を要するので、発光画素を選択するデータ線107、走査線109の他に、前記駆動トランジスタ103に大きな電流を供給する為の電流供給線111を要する。
【0065】
このような構造にて、前記対向電極27と前記画素電極23との間に挟まれた領域における薄膜層である前記発光層が、発光層に流れる電流により発光する。
【0066】
以上説明したように、本一実施形態によれば、流動性導光媒体によって有機EL素子の過熱を抑制し、印刷装置等における露光に十分な光量を得ることができる。
【0067】
また流動性導光媒体は導光路として兼用した機能を有するので、発光部自体を小型することができる。
【0068】
また従来、素子基板に形成された発光素子の劣化を抑制するために発光素子を封止樹脂で覆われたりするが、素子基板を対向基板で貼り合わせる場合、貼り合わせ面となる封止樹脂の表面や封止用基板の貼り合わせ面に凹凸があると、凸部に押圧力が集中してしまい、特に有機EL素子は薄膜が積層された構造であるので、過重によって有機EL層が押し潰されてその上下に位置するアノードとカソードが短絡してしまう恐れがあった。
【0069】
これに対して本実施形態の構造及び製造方法によれば、そして、素子基板21と対向基板28の貼り合わせによる接合においても、有機EL素子上には空間があるため、押し潰される恐れがない。そして、この後の流動性導光媒体注入工程では、パネル内外の圧力差によって隙間なく流動性導光媒体が充填されるため、仮に素子基板及び対向基板のそれぞれ対向する面に凹凸があっても凸部で有機EL素子が圧迫されることない。
【0070】
そして、流動性導光媒体が介在しているので、低屈折の空気がないため、同光部の界面での屈折率の差が小さくなり、光を良好に伝導することができる。
【0071】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0072】
例えば発光素子として有機EL素子を適用したが、発熱するものであればそれ以外に適用してもよく、印刷装置は、高輝度で発光するために、例えば、比較的発熱が少ないガリウム化合物等の無機材料を有するLEDにおいても有効である。
【0073】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置を用いた印刷装置の構成例を示す図。
【図2】有機EL素子における発光装置の構造を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係る発光装置を用いた印刷装置の露光部の外観を示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係る発光装置における有機EL素子の構造を示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係る発光装置の有する有機EL素子の楔型導光路の形状を示す図。
【図6】素子基板と対向基板との貼り合わせ構造を示す図。
【図7】流動性導光媒体注入工程を示す図。
【図8】(A)は、パネルの側面断面図。(B)は、パネルの上面断面図。
【符号の説明】
【0075】
1…感光体ドラム、 2A…発光装置、 2B…ロッドレンズ、 2…露光部、 3…帯電ローラ、 4…イレーサ光源感光体、 5…クリーニング部材、 6a…現像ローラ、 6…現像器、 7…印刷用紙、 8…転写ローラ、 9…定着ローラ、 11…搬送ベルト、 20,20A…発光装置、 21…素子基板、 23…画素電極、 24…正孔輸送層、 25…発光層、 26…電子輸送層、 27…対向電極、 28…対向基板、 31A,31B…制御ケーブル、 33…光出射領域、 35…バンク、 40…駆動回路部、 41…ドレイン電極、 42…ソース電極、 43…ゲート電極、 44…半導体、 45…ゲート絶縁層、 46…絶縁層、 50…導光部、 51…光線、 55…集光反射面、 56…下向き放射反射面、 57…楔型導光路、 58…流動性導光媒体、 59…反射膜、 61…EL発光面、 70…封止樹脂、 81…シール剤、 82…パネル、 83…封止膜、 85…シール剤開口部、 86…流動性導光媒体槽、 100…EL素子ドライブ回路、 101…スイッチTFT、 103…駆動トランジスタ、 105…キャパシタ、 107…データ線、 109…走査線、 111…電流供給線、 200…発光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が配置された素子基板と、
前記素子基板に対向する対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間に設けられた導光部と、
前記発光素子を冷却するための流動性のある液体を含む流動性媒体と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記流動性媒体は、前記導光部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記導光部は、楔型導光路を備えていることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項4】
前記導光部は、前記発光素子から発する光を反射して前記素子基板から出射する反射膜を有することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項5】
前記素子基板及び前記対向基板は、シール材によって接合されていることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光素子の発光制御を電気的に行う駆動回路部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項7】
請求項1記載の発光装置を備えることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−153280(P2008−153280A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337117(P2006−337117)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】