説明

発光装置

【課題】 有機系の発光素子を用いた発光装置において、外部より侵入する水の影響を抑制し、また、信頼性を得ることができるような封止構造を提供する。
【解決手段】第一の基板上の外周に備えられたシール剤で第二の基板を固着させることにより、第一の基板上に形成された発光素子を封止する場合において、シール剤を発光素子の電極の外側に備え、シール剤が電極と重ならないように形成することで、外部からの水分の侵入を防ぐ封止構造を形成することを特徴とする。なお、本発明においては、シール剤が電極と重なる場合であっても、その接触幅が15μm以下である場合には外部からの水分の侵入を防ぐ封止構造を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極間に有機エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;以下、ELと略記する)材料などの有機化合物を含む層(発光層)を介在させた発光素子を有する発光装置に関し、特に発光素子の封止技術に関する。なお、上記発光装置をその一部に用いた電子機器も本発明に含むこととする。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子を用いた薄型軽量ディスプレイの開発が盛んに行われている。発光素子は、一対の電極間に電流を流すことで発光する材料を挟み込むことで作製されるが、液晶と異なりそれ自体が発光するのでバックライトなどの光源が不要なうえ、素子自体が非常に薄いため薄型軽量ディスプレイを作製するにあたり非常に有利である。
【0003】
しかし、このような大きな長所を備えながら実用化に至っていない背景の一つに、信頼性の問題がある。有機系の材料を用いた発光素子は湿気(水)により劣化を起こすものが多く、長期の信頼性を得にくいという欠点を有する。水により劣化を起こした発光素子は輝度低下を起こしたり、発光しなくなってしまったりする。これが発光素子を用いた発光装置におけるダークスポット(黒点)や発光装置周辺からの輝度劣化(発光装置端部から発光面積が徐々に減少していく輝度劣化)の原因になっていると考えられており、このような劣化を抑制するために様々な対策が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平9−148066号公報
【特許文献2】特開平7−169567号公報
【0004】
しかし、これらのような対策を適用したとしても未だ十分な信頼性を得るまでには至っておらず、さらなる信頼性の向上が望まれている。
【0005】
また、発光装置は、基板の上に発光素子を有する画素部(表示領域)があって、基板と対向基板とがシール材で固着された構造をしている。最近では、画素部以外の面積を減らす必要性が高いことから、シール材で固着する位置が画素部のごく近傍にくるようになっている。このため、様々な膜が積層されている部分にシール材が形成されることが多い。
【0006】
発光装置に用いられているシール材には透湿性の低いものが用いられているが、有機樹脂であるため無機膜に比べて水分をある程度通すことが知られている。このため、発光素子の一部に重ねてシール材が形成されると大気中に含まれる水分が、発光装置の端部からシール材を通して発光装置内部へ侵入してしまう。
【0007】
なお、有機系の材料を用いた発光素子は水により劣化を起こすものが多く、このように発光装置端部から侵入した水分により輝度低下を起こしたり、発光しなくなってしまう等の問題が生じている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明では、有機系の発光素子を用いた発光装置において、外部より侵入する水の影響を抑制し、また、信頼性を得ることができるような封止構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発光装置は、第一の基板上の外周に備えられたシール材で第二の基板を固着させることにより、第一の基板上に形成された発光素子を封止する場合において、シール材を発光素子の電極の外側に備え、シール材が電極と重ならないように形成することで、外部からの水分の侵入を防ぐ封止構造を形成することを特徴とする。なお、本発明においては、シール材が電極と重なる場合であっても、その接触幅が15μm以下である場合には外部からの水分の侵入を防ぐ封止構造を形成することができる。
【0010】
なお、本発明の発光装置の構成は、第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール材で固着され、かつ前記シール材と前記第二の電極との接触幅が15μm以下であることを特徴とする発光装置である。
【0011】
本発明の発光装置の別の構成は、第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール材で固着され、かつ前記シール材は、前記第二の電極の外部に備えられていることを特徴とする発光装置である。
【0012】
また、本発明の発光装置の第二の電極上に無機絶縁膜が形成されている場合の本発明の構成は、第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第二の電極上に無機絶縁膜が形成され、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール材で固着され、前記シール材と前記第二の電極との接触幅が15μm以下であり、かつ前記シール材と前記無機絶縁膜との接触幅が15μm以下であることを特徴とする発光装置である。
【0013】
さらに本発明の発光装置の別の構成は、第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第二の電極上に無機絶縁膜が形成され、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール材で固着され、前記シール材は、前記第二の電極、および前記無機絶縁膜の外部に備えられていることを特徴とする発光装置である。
【0014】
また、上記各構成において、前記第1の電極の端部が有機絶縁膜で覆われている場合には前記有機絶縁膜はアクリル、ポリアミド、ポリイミド、レジスト、ベンゾシクロブテン、シロキサンポリマー、またはアルキル基を含む酸化珪素から選ばれた一種、または複数種からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、発光装置外部からの水分の侵入を防ぐことにより、周辺部からの輝度劣化の発生を抑制することができ、発光装置の信頼性を向上させることができる。また、本発明は発光装置を構成している物質の配置を変更することによるものであるため、工程数を増やすことなく、信頼性の高い発光装置を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の主な趣旨は、外部より侵入してきた水が画素部の発光層へ到達する経路を遮断することでその影響を抑えることにある。
【0017】
本発明者らは、無機膜と無機膜に有機樹脂膜が挟まれた構造では水の移動速度が速く、シール材など有機樹脂膜から発光装置内に侵入した水が、主に無機膜と無機膜の間に有機樹脂膜が挟まれた箇所(もしくは、有機樹脂膜上に無機膜が形成された構造)を通って画素部まで到達し発光装置周辺からの輝度劣化を引き起こすことを見いだした。
【0018】
このため、水の移動速度が速い構造である無機膜と無機膜に有機樹脂膜が挟まれた構造を大気と画素部の間で遮断することにより発光装置周辺からの輝度劣化の発生を抑制することが可能である。
【0019】
図1は本発明の発光装置の断面図(概略図)である。基板100上に下地絶縁膜101が形成されている。図1では下地絶縁膜101に無機絶縁膜を用いているが、有機絶縁膜を用いて形成してもよい。下地絶縁膜101は単層でもよいし複数の膜の積層からなっていてもよい。下地絶縁膜101上には電極(配線)102,103が形成されており、電極103に接して、第1の電極104が形成されており、その端部を覆うように隔壁105が形成されている。隔壁105は主にアクリルやポリイミド、シロキサンなどの有機絶縁膜で形成されている。
【0020】
また、第1の電極104に接して発光層106が形成されており、発光層106と隔壁105の一部を覆って第2の電極107が形成されている。発光素子108は第1の電極104と第2の電極107及びそれらに挟まれている発光層106からなっている。画素部109はこのような発光素子108がマトリクス状に配置されている。
【0021】
基板100はシール材110により対向基板111に固着されている。シール材110は第2の電極107から離して形成する。対向基板111には凹部を形成し、乾燥剤112を設けてもよい。
【0022】
発光装置周辺からの輝度劣化は、シール材110を通って侵入した水が、無機膜に有機樹脂膜が挟まれた構造を有する部分を通って、隔壁105側から画素部109へ侵入することによって発生する。
【0023】
従って、本実施の形態で示したように画素部の外周部で第2の電極の端部からシール材を離して形成することにより、水の侵入経路となるシール材と画素部の間に有機樹脂膜である隔壁が無機膜に挟まれていない領域113ができるため、発光装置周辺からの輝度劣化の発生を抑制することが可能である。
【0024】
(実施の形態1)
図2は本発明の発光装置の断面図である。基板200上に下地絶縁膜201が形成されており、その上に半導体層202〜204が形成されている。下地絶縁膜201と半導体層202〜204はゲート絶縁膜228に覆われており、ゲート絶縁膜228上には半導体層202〜204と一部重なってゲート電極205〜207が形成されている。ゲート絶縁膜228とゲート電極205〜207は層間絶縁膜208で覆われており、層間絶縁膜208の上には絶縁膜209が成膜されている。
【0025】
基板200は薄膜トランジスタや発光素子を保持する為のものである。下地絶縁膜201は基板200から薄膜トランジスタに悪影響を及ぼす物質が拡散するのを抑える為に設けられているため、必要がなければ設ける必要はない。半導体層202〜204、ゲート絶縁膜228及びゲート電極205〜207により薄膜トランジスタが形成されている。薄膜トランジスタは駆動回路などに用いられる駆動回路部225に設けられたものと発光素子220を駆動する為に画素部226に設けられたものがある。駆動回路は本実施の形態のように一体形成しても良いし、別に作製しても良い。
【0026】
本実施の形態では、層間絶縁膜208は平坦性を持たせるため、アクリルやポリイミド、シロキサンなどの有機絶縁膜を用いて形成されている。また、絶縁膜209は窒化珪素や酸素を含む窒化珪素、窒素を含む酸化珪素、酸化珪素など無機膜で形成する。なお、図2のように層間絶縁膜208が窒化珪素や酸素を含む窒化珪素、窒素を含む酸化珪素、酸化珪素など無機膜で形成されていてもよいし、絶縁膜209が形成されていなくてもよい。また、層間絶縁膜208とゲート絶縁膜228、もしくは層間絶縁膜208とゲート電極205〜207との間に他の材料よりなる絶縁膜が設けられていても良い。
【0027】
絶縁膜209の上には絶縁膜209と層間絶縁膜208に開口されたコンタクトホールを介して半導体層202〜204に電気的に接続する電極(配線)210〜212が形成されている。半導体層202、ゲート絶縁膜228、ゲート電極205及び電極(配線)210から薄膜トランジスタ213が、半導体層203、ゲート絶縁膜228、ゲート電極206及び電極(配線)211から薄膜トランジスタ214が形成され、半導体層204、ゲート絶縁膜228、ゲート電極207及び電極(配線)212は薄膜トランジスタ215の一部である。なお、薄膜トランジスタ213、214は発光装置における駆動回路部225の薄膜トランジスタの一部を表しており、薄膜トランジスタ215は画素部226における薄膜トランジスタのうちの一つである。
【0028】
薄膜トランジスタ215の電極212に接して、第1の電極216が形成されており、その端部を覆うように隔壁217が形成されている。隔壁217は主にアクリルやポリイミド、シロキサンなどの有機絶縁膜で形成されている。
【0029】
また、第1の電極216に接して発光層218が形成されており、発光層218と隔壁217の一部を覆って第2の電極219が形成されている。なお、発光素子220は第1の電極216と第2の電極219、及びそれらに挟まれている発光層218とからなっている。画素部226はこのような発光素子220がマトリクス状に配置されている。
【0030】
基板100はシール材221により対向基板222に固着されている。対向基板222には凹部223を形成し、乾燥材224を設けても良い。
【0031】
発光装置周辺からの輝度劣化は、シール材を通して侵入した水が、隔壁217側から画素部226に侵入することによって発生する。水の移動速度は、無機膜間に挟まれた有機樹脂膜があると速いが、無機膜単独や有機樹脂膜と無機膜が積層されていても有機樹脂膜の上部が大気である場合には遅い。
【0032】
図2の発光装置は領域227に有機樹脂膜上に無機膜が積層していない部位を有するため、水の移動速度が遅い。このため、隔壁を通って画素部まで水が侵入することを抑制することが可能である。
【0033】
また、図2に示したように層間絶縁膜208の端面を無機膜229で覆うと層間絶縁膜208端部より侵入する水の量を更に減少させることができる為、好ましい構成である。無機膜229を電極(配線)210〜212と同じ材料で形成すれば、工程数を増やすことなく信頼性の高い発光装置を作製することができる。
【0034】
(実施の形態2)
本実施の形態では、図3を用いて本発明の他の実施の形態について説明する。尚、図2と同じ部分に関しては一部説明を省略する。
【0035】
本実施の形態では配線301〜305と画素電極(第1の電極)306が異なる層に形成されている場合の例を説明する。本実施の形態では、第1の層間絶縁膜307は酸化珪素や窒化珪素、窒素を含む酸化珪素及び酸素を含む窒化珪素などの材料でもって作製した例を示す。第1の層間絶縁膜307は単層でも良いし、複数層であっても良い。これらの材料は透湿性が低いため、外周部が外気に曝されていても水がほとんど侵入しないことから図2の229のように第1の層間絶縁膜の端面を無機膜で覆わずとも水は第1の層間絶縁膜307にほとんど侵入しない。
【0036】
第1の層間絶縁膜307と電極(配線)301〜305は第2の層間絶縁膜308で覆われており、第2の層間絶縁膜308上には、当該第2の層間絶縁膜308に設けられたコンタクトホールを介して薄膜トランジスタの電極である配線305に電気的に接続する第1の電極306が形成されている。第2の層間絶縁膜308上には第1の電極306のコンタクトホール部及び端部を覆って隔壁309が形成されている。なお、第2の層間絶縁膜308及び隔壁309の材料にはアクリル、ポリイミド、シロキサンなどの有機絶縁膜が多く用いられ、これらは比較的高い透湿性を有していることが知られている。
【0037】
また、第1の電極306に接して発光層310が形成されており、発光層310と隔壁309の一部を覆って第2の電極311が形成されている。
【0038】
このように素子が形成された基板312はシール材313により対向基板314に固着され、発光装置となる。シール材313は第2の電極311から離して形成する。
【0039】
発光装置周辺からの輝度劣化は、シール材を通して侵入した水が、隔壁側から画素部に侵入することによって発生する。水の移動速度は、無機膜間に挟まれた有機樹脂膜があると速いが、無機膜単独や有機樹脂膜と無機膜が積層されていても有機樹脂膜の上部が大気である場合には遅い。
【0040】
図3の発光装置は、領域315に有機樹脂膜上に無機膜が積層していないため、水の移動速度が遅い。このため、隔壁を通って画素部まで水が侵入することを抑制することが可能である。
【0041】
また、図3に示したように第2の層間絶縁膜308と隔壁309の端面をシールの内側に形成すると第2の層間絶縁膜308と隔壁309から侵入する水の量を更に減少させることができる為、好ましい構成である。
【0042】
(実施の形態3)
図4を用いて本発明の他の実施形態について説明する。尚、図2、図3と同じ部分に関しては一部説明を省略する。
【0043】
図4は、層間絶縁膜400を酸化珪素や窒化珪素、窒素を含む酸化珪素及び酸素を含む窒化珪素などの材料でもって作製し、第2の電極401上に絶縁膜402を積層して作製した例を示す。
【0044】
絶縁膜402は窒化珪素や酸素を含む窒化珪素、窒素を含む酸化珪素、酸化珪素など無機膜で形成する。絶縁膜402は単層であっても、複数層であってもよい。
【0045】
基板404はシール材405により対向基板406に固着され、発光装置となる。シール材405は第2の電極401と絶縁膜402から離して形成する。なお、その他の構成に関しては実施の形態2と同じであるため説明を省略する。なお、隔壁403は実施の形態における隔壁217に、領域407は領域227に相当する。
【0046】
発光装置周辺からの輝度劣化は、シール材を通して侵入した水が、隔壁側から画素部に侵入することによって発生する。
水の移動速度は、無機膜間に挟まれた有機樹脂膜があると速いが、無機膜単独や有機樹脂膜と無機膜が積層されていても有機樹脂膜の上部が大気である場合には遅い。
【0047】
図4の発光装置は、407に有機樹脂膜上に無機膜が積層していない部位を有するため、水の移動速度が遅い。このため、隔壁を通って画素部まで水が侵入することを抑制することが可能である。
【実施例1】
【0048】
本実施例では、本発明の発光装置を作製する方法について、図1を参照しながら説明する。
【0049】
基板100上に下地絶縁膜101を形成する。下地絶縁膜101は基板100中のアルカリ金属やアルカリ土類金属など、半導体層の特性に悪影響を及ぼすような元素が半導体層中に拡散するのを防ぐ為に設ける。材料としては酸化珪素、窒化珪素、窒素を含む酸化珪素、酸素を含む窒化珪素などを用いることができ、単層、または積層構造とすることにより形成する。なお、アルカリ金属やアルカリ土類金属の拡散が心配ないようであれば特に下地絶縁膜101は設ける必要がない。
【0050】
下地絶縁膜101を覆って導電層を形成する。当該導電層を所望の形状に加工し、配線(電極)103、引き回し配線102を形成する。これらはアルミニウム、銅等の単層でも良いが、本実施例では下からのチタン/アルミニウム/チタンの積層構造とする。積層配線としてはモリブデン/アルミニウム/モリブデンやチタン/アルミニウム/チタンやチタン/窒化チタン/アルミニウム/チタンといった構造でも良い。
【0051】
下地絶縁膜101と引き回し配線102,配線103を覆って、透光性を有する導電層を形成したのち、当該透光性を有する導電層を加工して第1の電極104を形成する。ここで第1の電極104は電極103と電気的に接触している。第1の電極104の材料としてはインジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)や酸化珪素を含有するITO、酸化インジウムに2〜20%の酸化亜鉛を含有したIZO(Indium Zinc Oxide)もしくは酸化亜鉛そのもの、そして酸化亜鉛にガリウムを含有したGZO(Galium Zinc Oxide)等を用いるとよい。
【0052】
次に下地絶縁膜101及び第1の電極104を覆って有機樹脂材料からなる絶縁膜を形成する。続いて当該絶縁膜は第1の電極の一部が露出するように加工し、隔壁105を形成する。隔壁105の材料としては、感光性を有する有機樹脂材料(アクリル、ポリイミドなど)が好適に用いられるが、感光性を有さない有機樹脂材料で形成してもかまわない。隔壁105の第1の電極に面した端面は曲率を有し、当該曲率が連続的に変化するテーパー形状をしていることが望ましい。なお、隔壁105に顔料やカーボンなど黒色の物質を混入し、ブラックマトリクスとして用いても良い。
【0053】
次に、隔壁105から露出した第1の電極104を覆う発光層106を形成する。発光層106は蒸着法やインクジェット法、スピンコート法などいずれの方法を用いて形成してもかまわない。
【0054】
続いて発光層106を覆う第2の電極107を形成する。これによって第1の電極104と発光層106と第2の電極107とからなる発光素子108を作製することができる。
【0055】
その後、プラズマCVD法により窒素を含む酸化珪素膜をパッシベーション膜として形成しても良い。窒素を含む酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でSiH4、N2O、NH3から作製される酸化窒化ケイ素膜、またはSiH4、N2Oから作製される酸化窒化ケイ素膜、あるいはSiH4、N2OをArで希釈したガスから形成される酸化窒化ケイ素膜を形成すれば良い。
【0056】
また、パッシベーション膜としてSiH4、N2O、H2から作製される酸化窒化水素化ケイ素膜を適用しても良い。もちろん、パッシベーション膜は単層構造に限定されるものではなく、他のケイ素を含む絶縁膜を単層構造、もしくは積層構造として用いても良い。また、窒化炭素膜と窒化ケイ素膜の多層膜やスチレンポリマーの多層膜、窒化ケイ素膜やダイヤモンドライクカーボン膜を窒素を含む酸化珪素膜の代わりに形成してもよい。
【0057】
続いて表示部の封止を行う。対向基板111を封止に用いる場合は、絶縁性のシール材110により貼り合わせる。シール材110は第2の電極107から離して形成する。対向基板111には凹部を作製して乾燥材112を貼り付けても良い。対向基板111と素子が形成された基板100との間の空間には乾燥した窒素などの不活性気体を充填しても良い。シール材には紫外線硬化樹脂などを用いると好適である。シール材には乾燥材やギャップを一定に保つための粒子を混入しておいても良い。
【0058】
発光装置周辺からの輝度劣化は、シール材を通して侵入した水が、隔壁側から画素部に侵入することによって発生する。水の移動速度は、無機膜間に挟まれた有機樹脂膜があると速いが、無機膜単独や有機樹脂膜と無機膜が積層されていても有機樹脂膜の上部が大気である場合には遅い。
【0059】
図1の発光装置は領域113に有機樹脂膜上に無機膜が積層していない部位を有するため、水の移動速度が遅い。このため、隔壁を通って画素部まで水が侵入することを抑制することが可能である。
【0060】
以上より、本実施例で示すような封止構造を形成することにより、発光装置外部からの水分の侵入を防ぐことができるため、周辺部からの輝度劣化の発生を抑制することができ、発光装置の信頼性を向上させることができる。
【実施例2】
【0061】
本実施例では実施例1の方法で作製した発光装置を65℃、95%に保った雰囲気にさらし、一定時間おきに発光装置の表示状態を顕微鏡で観察した結果について説明する。
【0062】
図5(a)には、発光装置を65℃、95%雰囲気に50時間保存した後の顕微鏡写真を示す。また、図5(b)には、図5(a)の写真において、領域500に示す部分の具体的な構造を示す。
【0063】
図5(a)において、領域500の部分にシール材が備えられており、基板上に形成された発光素子を含む画素部501が封止されている。
【0064】
なお、領域500においては、図5(b)に示すように基板502上に形成された発光素子503は、第一の基板上に備えられたシール材505により第二の基板との間に封止されている。さらに、この場合、シール材505と発光素子の第二の電極(陰極)506とが接しない領域507を有している。
【0065】
一方、図6には、従来の封止構造を有する発光装置を65℃、95%雰囲気に50時間保存した後の顕微鏡写真を示す。図6(a)には、発光装置を65℃、95%雰囲気に50時間保存した後の顕微鏡写真を示す。また、図6(b)には、図6(a)の写真において、領域500に示す部分の具体的な構造を示す。
【0066】
図6(a)において、領域600の部分にシール材が備えられており、基板上に形成された発光素子を含む画素部601が対向基板504によって封止されている。
【0067】
なお、領域600においては、図6(b)に示すように基板602上に形成された発光素子603は、第一の基板上に備えられたシール材605により第二の基板604との間に封止されている。さらに、この場合、シール材605が発光素子の第二の電極(陰極)606上に形成されている。
【0068】
なお、図5、図6の顕微鏡写真を比較すると、図6に示すシール材605と第二の電極606が接触した構造を有する発光装置では65℃、95%雰囲気に50時間保存した後、発光装置周辺からの輝度劣化が図6(a)中の矢印(a)の方向に発生しているが、図5に示すシール材505と第二の電極506の間に領域507を有する構造の発光装置では、65℃、95%雰囲気に50時間保存した後で発光装置周辺からの輝度劣化が発生していないことが分かる。なお、正常に発光しているエリアの輝度が約100cd/Aであるときに、非発光エリアの輝度は約1cd/Aである。
【実施例3】
【0069】
本実施例では、発光素子の第二の電極(陰極)とシール材が部分的に接触している発光装置を用いて、第二の電極とシール材の接触幅(ここでは、第二の電極端部からシール材端部までの距離を示す)に対する、65℃、95%雰囲気に170時間保存した後の発光装置の輝度劣化を示す劣化率(ここでは、画素全体の面積に対する輝度劣化した画素の面積比率を示す)について測定した結果を示す。図7(a)にグラフを示す。なお、図7(a)グラフでは、図7(b)に示す発光装置における第二の電極702の端部を横軸の中心(0)とし、シール材が第二の電極702と重なる領域にある場合(領域704を有する場合)を矢印(a)の方向に接触幅(μm)で示し、シール材701と第二の電極702が接触しないように形成されている場合(領域703を有する場合)は、矢印(b)の方向に非接触幅(μm)で示している。
【0070】
図7(a)より、第二の電極とシール材が離れているときには劣化率は0%であることが分かる。一方、第二の電極とシール材がある程度以上接触すると(接触幅がある程度以上大きくなると)周辺劣化が発生し、第二の電極とシール材の接触幅が大きいほど劣化率も高くなることが分かる。第二の電極とシール材が接触する領域のデータを直線で近似し、劣化率が0%である点の第二の電極とシール材の接触幅を求めたところ、約15μmであった。このことから、第二の電極とシール材が接触する場合であっても、シール材と第二の電極の接触幅が15μm以下であれば65℃、95%雰囲気に170時間保存しても発光装置周辺からの輝度劣化が発生しないことが分かる。もちろん、第二の電極とシール材が離れていれば発光装置周辺からの輝度劣化は発生しない。
【0071】
本発明により、発光装置周辺からの輝度劣化の発生を抑制することができる。また、本発明は発光装置を構成している物質の配置を変更することによるものであるため、工程数を増やすことなく、信頼性の高い発光装置を作製することができる。
【実施例4】
【0072】
本実施例では、実施例1にその一例を示したようなモジュールを搭載した本発明の電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それらの電子機器の具体例を図8に示す。
【0073】
図8(A)は発光表示装置でありテレビ受像器などがこれに当たる。筐体2001、表示部2003、スピーカー部2004等を含む。本発明の発光表示装置は、表示部2003における発光素子の劣化が抑制され、信頼性が向上する。画素部にはコントラストを高めるため、偏光板、又は円偏光板を備えるとよい。例えば、封止基板へ1/4λ板、1/2λ板、偏光板の順にフィルムを設けるとよい。さらに偏光板上に反射防止膜を設けてもよい。
【0074】
図8(B)は携帯電話であり、本体2101、筐体2102、表示部2103、音声入力部2104、音声出力部2105、操作キー2106、アンテナ2108等を含む。本発明の携帯電話は、表示部2103における発光素子の劣化が抑制され、信頼性が向上する。
【0075】
図8(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明のノート型パーソナルコンピュータは、表示部2203における発光素子の劣化が抑制され、信頼性が向上する。
【0076】
図8(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明のモバイルコンピュータは、表示部2302における発光素子の劣化が抑制され、信頼性が向上する。
【0077】
図8(E)は携帯型のゲーム機であり、筐体2401、表示部2402、スピーカー部2403、操作キー2404、記録媒体挿入部2405等を含む。本発明の携帯型ゲーム機は表示部2402における発光素子の劣化が抑制され、信頼性が向上する。
【0078】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の発光装置の断面図。
【図2】本発明の発光装置の断面図。
【図3】本発明の発光装置の断面図。
【図4】本発明の発光装置の断面図。
【図5】本発明の発光装置の顕微鏡写真および断面図。
【図6】従来の発光装置の顕微鏡写真および断面図。
【図7】本発明の発光装置の特性を示すグラフ。
【図8】本発明を用いて作製される電子機器について説明する図。
【符号の説明】
【0080】
100 基板
101 下地絶縁膜
102 電極
103 電極
104 電極
105 隔壁
106 発光層
107 電極
108 発光素子
109 画素部
110 シール材
111 対向基板
112 乾燥剤
113 領域
200 基板
201 下地絶縁膜
202 半導体層
203 半導体層
204 半導体層
205 ゲート電極
206 ゲート電極
207 ゲート電極
208 層間絶縁膜
209 絶縁膜
210 電極
211 電極
212 電極
213 薄膜トランジスタ
214 薄膜トランジスタ
215 薄膜トランジスタ
216 電極
217 隔壁
218 発光層
219 電極
220 発光素子
221 シール材
222 対向基板
223 凹部
224 乾燥材
225 駆動回路部
226 画素部
227 領域
228 ゲート絶縁膜
229 無機膜
301 配線
302 配線
303 配線
304 配線
305 配線
306 画素電極
307 層間絶縁膜
308 層間絶縁膜
309 隔壁
310 発光層
311 電極
312 基板
313 シール材
314 対向基板
315 領域
400 層間絶縁膜
401 電極
402 絶縁膜
403 隔壁
404 基板
405 シール材
406 対向基板
407 領域
500 領域
501 画素部
502 基板
503 発光素子
504 対向基板
505 シール材
506 電極
507 領域
600 領域
601 画素部
602 基板
603 発光素子
604 第2の基板
605 シール材
606 電極
701 シール材
702 電極
703 領域
704 領域
2001 筐体
2003 表示部
2004 スピーカー部
2101 本体
2102 筐体
2103 表示部
2104 音声入力部
2105 音声出力部
2106 操作キー
2108 アンテナ
2201 本体
2202 筐体
2203 表示部
2204 キーボード
2205 外部接続ポート
2206 ポインティングマウス
2301 本体
2302 表示部
2303 スイッチ
2304 操作キー
2305 赤外線ポート
2401 筐体
2402 表示部
2403 スピーカー部
2404 操作キー
2405 記録媒体挿入部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール剤で固着され、かつ前記シール剤と前記第二の電極との接触幅が15μm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール剤で固着され、かつ前記シール剤は、前記第二の電極の外部に備えられていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第二の電極上に無機絶縁膜が形成され、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール剤で固着され、前記シール剤と前記第二の電極との接触幅が15μm以下であり、かつ前記シール剤と前記無機絶縁膜との接触幅が15μm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第二の電極上に無機絶縁膜が形成され、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール剤で固着され、前記シール剤は、前記第二の電極、および前記無機絶縁膜の外部に備えられていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第一の電極は、その端部が有機絶縁膜で覆われており、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール剤で固着され、前記シール剤、前記発光層、および前記第二の電極の一部が前記有機樹脂膜と接しており、かつ前記シール剤と前記第二の電極との接触幅が15μm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第一の電極は、その端部が有機絶縁膜で覆われており、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール剤で固着され、前記シール剤、前記発光層、および前記第二の電極の一部が前記有機樹脂膜と接しており、かつ前記シール剤は、前記第二の電極の外部に備えられていることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第一の電極は、その端部が有機絶縁膜で覆われており、前記第二の電極上に無機絶縁膜が形成され、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール剤で固着され、前記シール剤、前記発光層、および前記第二の電極の一部が前記有機樹脂膜と接しており、前記シール剤と前記第二の電極との接触幅が15μm以下であり、かつ前記シール剤と前記無機絶縁膜との接触幅が15μm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
第一の基板上に形成された第一の電極と、前記第一の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第二の電極とからなる発光素子を有する発光装置であって、前記第一の電極は、その端部が有機絶縁膜で覆われており、前記第二の電極上に無機絶縁膜が形成され、前記第一の基板上に前記発光素子を挟んで備えられた第二の基板が、前記第一の基板の外周に備えられたシール剤で固着され、前記シール剤、前記発光層、および前記第二の電極の一部が前記有機樹脂膜と接しており、前記シール剤は、前記第二の電極、および前記無機絶縁膜の外部に備えられていることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項5乃至請求項8のいずれか一において、前記有機絶縁膜はアクリル、ポリアミド、ポリイミド、レジスト、ベンゾシクロブテン、シロキサンポリマー、またはアルキル基を含む酸化珪素から選ばれた一種、または複数種からなることを特徴とする発光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−86085(P2006−86085A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272076(P2004−272076)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】