説明

発光装置

【課題】本発明は、交流駆動に適した新規な構造を有するEL素子を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、第1の電極と有機化合物を含む層との間と、有機化合物を含む層
と第2の電極との間の両方に材料層(電流値を横軸にとり、電圧値を縦軸にとったグラフ
表示においてゼロを中心としたほぼ点対称な電流−電圧特性を有する材料層)を設けて、
交流駆動に適した新規な構造を有する発光素子を特徴としている。具体的には、材料層は
、金属酸化物と有機化合物とを含む複合層であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極と、陰極と、電界を加えることで発光が得られる有機化合物を含む層(
以下、「電界発光層」と記す)と、を有する有機発光素子、およびそれを用いた発光装置
に関する。また、本発明は有機発光素子を有する発光装置を部品として搭載した電子機器
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型の発光素子としてEL素子を有した発光装置の研究が活発化している。
この発光装置は有機ELディスプレイ、又は有機発光ダイオードとも呼ばれている。これ
らの発光装置は、動画表示に適した速い応答速度、低電圧、低消費電力駆動などの特徴を
有しているため、新世代の携帯電話や携帯情報端末(PDA)をはじめ、次世代ディスプ
レイとして大きく注目されている。
【0003】
発光素子は、一対の電極(陽極と陰極)間に電界発光層を挟んでなり、その発光機構は
、両電極間に電界を印加した際に陽極から注入される正孔(ホール)と、陰極から注入さ
れる電子が、電界発光層において再結合することにより電界発光層中の発光中心で再結合
して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発
光するといわれている。
【0004】
発光素子を有する有機ELディスプレイは、バックライトを必要とする液晶表示装置と
異なり自発光型であるため視野角の問題がないという特徴がある。即ち、屋外に用いられ
るディスプレイとしては、液晶ディスプレイよりも適しており、様々な形での使用が提案
されている。
【0005】
また、有機ELディスプレイの駆動方法には、大きく分けて直流駆動と、交流駆動とが
ある。
【0006】
なお、本出願人は、EL素子を有するアクティブマトリクス型表示装置に交流駆動を用
いることを特許文献1で記載している。また、交流駆動するためのEL素子を特許文献2
で開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−222255
【特許文献2】特開2004−95546
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
交流駆動させる場合には、EL素子の一対の電極間に交流信号(一定周期毎に正負が反
転する信号)が印加されることになる。EL素子が、第1の電極と、第2の電極と、これ
らの一対の電極に挟まれる有機化合物を含む層との積層からなる単純な構造である場合、
整流作用のため、交流信号を印加すると、半周期しか発光しない。従って、直流電圧を印
加する直流駆動させた場合と同等の発光量を得るためには、消費電力が増大することとな
ってしまう。
【0009】
本発明は、交流駆動に適した新規な構造を有するEL素子を提供することを課題とする

【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、第1の電極と有機化合物を含む層との間と、有機化合物を含む層と
第2の電極との間の両方に材料層(電流値を横軸にとり、電圧値を縦軸にとったグラフ表
示においてゼロを中心としたほぼ点対称な電流−電圧特性を有する材料層)を設けて、交
流駆動に適した新規な構造を有する発光素子を特徴としている。
【0011】
また、上述した電流−電圧特性を有する材料層は、ホール注入(またはホール輸送)特
性と、電子注入(または電子輸送)特性との両方を合わせ持っており、印加される交流信
号に応じて一方の特性が発揮される。
【0012】
印加する交流信号において、図13にその波形の一例を示すように、電圧の絶対値が正
負で等しいため、正の電圧が印加された半周期のEL素子の輝度と、負の電圧が印加され
た半周期のEL素子の輝度とを同じにする必要がある。従って、本発明では、電流値を横
軸にとり、電圧値を縦軸にとったグラフ表示においてゼロを中心としたほぼ点対称な電流
−電圧特性を有する材料層を用いることによって正の信号と負の信号の両方でEL素子を
発光させることができ、さらに消費電力を増加させることなく、直流電圧を印加する直流
駆動させた場合と同等の発光量を得ることができる。
【0013】
本明細書で開示する発明の構成は、複数の発光素子を有する発光装置であり、発光素子
は、第1の電極と、該第1の電極上に、電流値を横軸にとり、電圧値を縦軸にとったグラ
フ表示においてゼロを中心としたほぼ点対称な電流−電圧特性を有する第1の材料層と、
該第1の材料層上に有機化合物を含む層と、該有機化合物を含む層上に、前記第1の材料
層と同じ電流−電圧特性を有する第2の材料層と、該第2の材料層上に第2の電極と、を
有することを特徴とする発光装置である。
【0014】
また、上記構成において、前記第1の材料層および前記第2の材料層は、有機化合物と
、該有機化合物に対して電子を授受できる無機化合物との複合層であり、具体的には、金
属酸化物と有機化合物とを含む複合層であることを特徴としている。
【0015】
また、上記構成において、前記金属酸化物は、酸化モリブデン、酸化タングステン、ま
たは酸化レニウムからなる群から選ばれる一種または複数種である。
【0016】
また、上述した第1材料層および第2材料層は、無機化合物を混合することによって得
られると考えられている効果(耐熱性の向上など)に加え、優れた導電性をも得ることが
できる。これらの効果は、従来のホール輸送層のように互いに電子的な相互作用を及ぼさ
ない有機化合物と無機化合物とを単に混合したものでは得られない効果である。
【0017】
また、上述した第1材料層および第2材料層は、駆動電圧の上昇を招くことなく、材料
層の膜厚を厚くすることができるため、EL素子形成プロセスにおけるゴミ等に起因する
素子の短絡も抑制することができ、歩留まりが向上する。
【0018】
また、上述した第1材料層と第2材料層とは、上述した電流−電圧特性を有する材料で
あれば、同じ組成の材料を用いなくともよいことはいうまでもない。また、上述した第1
材料層と第2材料層は、膜厚を同じにする必要は特にない。
【0019】
また、上述した電流−電圧特性を有する材料層は、ホール注入(またはホール輸送)特
性と、電子注入(または電子輸送)特性との両方を合わせ持っているため、EL素子の構
造をシンプルなものとすることができる。例えば、交流信号に合わせて半周期ごとに発光
させる層を一対の電極間に複数設けたりする複雑な構造とする必要がなくなり、製造プロ
セスも簡略化することができる。
【0020】
また、上記構成において、前記発光装置は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に交
流信号を印加する駆動回路を備えたことを特徴としている。なお、発光装置の前記第1の
電極と前記第2の電極との間に一定周期毎に正負が反転する映像信号を印加すれば、有機
ELディスプレイとして映像表示が可能となる。なお、ここでいう一定周期とは、映像信
号の垂直同期信号または水平同期信号毎である。例えば、一定周期は1/60秒、または
1/60秒より長くする。また、一定周期を1/60秒より短くすれば、さらに動画表示
に適したものとすることができる。
【0021】
なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは
光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible prin
ted circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrie
r Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設け
られたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が
直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、複雑な素子構造にすることなく、交流駆動に好適な発光装置を実現する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の発光素子の構成の一例を説明する図。
【図2】本発明の発光素子の動作機構を示す説明図である。
【図3】本発明の発光素子の動作機構を示す説明図である。
【図4】本発明の材料層の電流−電圧特性を示すグラフ。
【図5】パッシブ型表示装置の上面構造および断面構造を示す図である。
【図6】斜視図を示す図である。
【図7】発光モジュールの外観を示す上面図である。
【図8】発光モジュールの上面図を示す図である。
【図9】発光モジュールの断面図を示す図である。
【図10】断面構造の他の一例を示す図である。
【図11】電子機器の一例を示す図。
【図12】電子機器の一例を示す図。
【図13】交流信号を示す図である。
【図14】(A)は有機化合物単層での電流−電圧特性を示すグラフであり、(B)は酸化モリブデン単層での電流−電圧特性を示すグラフ。(比較例)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、以下に説明する。本発明の積層構造の一例を図1に示す。
【0025】
図1は、絶縁表面を有する基板10上に、第1の電極11と、第1の材料層12と、有
機化合物を含む層13と、第2の材料層14と、第2の電極15とを順次積層した構造を
示している。なお、第1の電極11と第2の電極15に交流電源16が接続され、有機化
合物を含む層13が発光する。
【0026】
第1の電極11および第2の電極15は、両方、もしくは一方が透光性を有する導電膜
を用いる。透光性を有する導電膜としては、ITO、IZO、ITSOを用いればよい。
第1の電極11および第2の電極15の膜厚は、10nm〜500nmの範囲とする。第
1の電極11および第2の電極15の膜厚は、10nm以下であると、電導性が著しく低
下するため電極として機能せず、500nmよりも厚くしてしまうと透光性が低下する。
【0027】
また、第1の電極11もしくは第2の電極15として金属膜を用いる場合には、Ag、
Al、Taなどを用いることができる。
【0028】
また、第1の材料層12および第2の材料層14は、電流値を横軸にとり、電圧値を縦
軸にとったグラフ表示においてゼロを中心としたほぼ点対称な電流−電圧特性を有する材
料を用いる。具体的には、第1の材料層12および第2の材料層14は、金属酸化物(酸
化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウムなど)と有機化合物(ホール輸送性を有
する材料(例えば4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]
ビフェニル(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルア
ミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m
−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)な
ど))とを含む複合層とする。
【0029】
また、第1の材料層12および第2の材料層14の膜厚は、3nm〜1000nmの範
囲とする。膜厚が3nm未満であると、膜として一面に形成することができず、1000
nmよりも厚くなると透光性が著しく低下してしまう。
【0030】
また、有機化合物を含む層13は、単層でも積層でもよく、一つの層の厚さは5nm〜
500nmとする。図1の発光素子の構造において、単層とした場合にはもっともシンプ
ルな積層構造となる。
【0031】
また、有機化合物を含む層13に用いる材料は、例えば、トリス(8−キノリノラト)
アルミニウム(略称:Alq3)や、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニ
ウム(略称:Almq3)や、α−NPDなどを用いることができる。また、有機化合物
を含む層13は、ドーパント材料を含ませてもよく、例えば、N,N’−ジメチルキナク
リドン(略称:DMQd)や、クマリン6や、ルブレンなどを用いることができる。
【0032】
なお、有機化合物を含む層13は、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO
)の準位が、第1の材料層12及び第2の材料層14に含まれる金属酸化物のバンドギャ
ップの範囲内にあるものを用いることが好ましい。
【0033】
また、第1の電極11および第2の電極15は、材料の仕事関数が、第1の材料層12
及び第2の材料層14に含まれる金属酸化物のバンドギャップの範囲内とすることが好ま
しい。
【0034】
図1に示す発光素子に交流電源16から交流信号を印加し、図2および図3に示すエネ
ルギー準位を用いて発光に至る動作機構を用いて説明する。なお、図2および図3におい
て、図1と対応する部分には同じ符号を用いる。
【0035】
図2において、発光素子の第1の電極11はITOとし、第2の電極15はAlとした
エネルギー準位の様子を一例として示している。
【0036】
第1の電極11と第2の電極15との間に電圧を印加すると、第1の材料層12および
第2の材料層14で電荷が発生する。第1の電極11に接する第1の材料層12では、発
生した電荷のうち、電子が第1の電極11へ移動し、正孔は有機化合物を含む層13へ注
入される。
【0037】
一方、第2の電極15に接する第2の材料層14では、発生した電荷のうち、電子が有
機化合物を含む層13へ注入され、正孔は第2の電極15へ移動する。
【0038】
こうして、第1の材料層12から注入された正孔と、第2の材料層14から注入された
電子とが再結合して有機化合物を含む層13で発光する。
【0039】
また、図3は、図2に示した信号とは逆極性の信号が印加されたエネルギー準位の様子
を示している。逆極性の信号が印加されても、同じ素子構成であるため、同様に有機化合
物を含む層13で発光する。
【0040】
以上に示したように本発明の発光素子に交流信号を印加すると、ある極性の電圧が印加
された半周期だけでなく、逆極性の電圧を印加しても発光させることができる。
【0041】
また、以下に示す実験を行い、得られた結果を図4に示す。
【0042】
ガラス基板上にITSO膜と、酸化モリブデンとDNTPDとルブレンとを3つ同時に任
意の割合で蒸着させた複合膜と、アルミニウム膜とを積層したサンプル1と、ガラス基板
上にITSO膜と、酸化モリブデンとBBPBとルブレンとを3つ同時に任意の割合で蒸
着させた複合膜と、アルミニウム膜とを積層したサンプル2をそれぞれ作製した。
【0043】
そして、サンプル1とサンプル2に対して電流および電圧を印加して、電流値を横軸にと
り、電圧値を縦軸にとってそれぞれグラフ表示させた。
【0044】
サンプル1の一対の電極(ITSO膜とアルミニウム膜)に挟まれた材料は、図4に示
すように、ゼロを中心としたほぼ点対称な電流−電圧特性を有する材料層であることが読
み取れる。また、サンプル2も同様に、ゼロを中心としたほぼ点対称な電流−電圧特性を
有する材料層である。
【0045】
また、比較例1として、ガラス基板上にITSO膜と、DNTPD膜と、アルミニウム
膜とを積層して、電流−電圧特性を測定した結果を図14(A)に示す。また、比較例1
として、ガラス基板上にITSO膜と、BBPB膜と、アルミニウム膜とを積層して、電
流−電圧特性を測定した結果も図14(A)に示す。図14(A)に示すように、一対の
電極に有機化合物膜を単層として挟んだ場合には、正の電圧を印加した時にしか電流は流
れない。
【0046】
また、比較例3として、ガラス基板上にITSO膜と、酸化モリブデン膜と、アルミニ
ウム膜とを積層して、電流−電圧特性を測定した結果を図14(B)に示す。図14(B
)に示すように、一対の電極に酸化モリブデン膜を単層として挟んだ場合には、対称な電
流−電圧特性を示さない。
【0047】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行う
こととする。
【実施例1】
【0048】
本実施例ではパッシブ型の表示装置の発光素子として本発明の発光素子の構造を用いた
例を図5(A)〜図5(C)に示す。
【0049】
図5(A)は、封止前における画素部の上面図を示す図であり、図5(A)中の鎖線A
−A’で切断した断面図が図5(B)であり、鎖線B−B’で切断した断面図が図5(C
)である。
【0050】
第1の基板110上には、ストライプ状に複数の第1の電極113が等間隔で配置され
ている。また、第1の電極113上には、各画素に対応する開口部を有する隔壁114が
設けられ、開口部を有する隔壁114は感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、
アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、また
はSOG膜(例えば、アルキル基を含むSiOx膜))で構成されている。なお、各画素
に対応する開口部が発光領域121となる。
【0051】
開口部を有する隔壁114上に、第1の電極113と交差する互いに平行な複数の逆テー
パ状の隔壁122が設けられる。逆テーパ状の隔壁122はフォトリソグラフィ法に従い
、未露光部分がパターンとしてポジ型感光性樹脂を用い、パターンの下部がより多くエッ
チングされるように露光量または現像時間を調節することによって形成する。
【0052】
また、平行な複数の逆テーパ状の隔壁122を形成した直後における斜視図を図6に示
す。なお、図5(A)〜図5(C)と同一の部分には同一の符号を用いている。
【0053】
逆テーパ状の隔壁122の高さは、有機化合物を含む膜及び導電膜の膜厚より大きく設
定する。図6に示す構成を有する第1の基板に対して有機化合物を含む膜と、導電膜とを
積層形成すると、図5に示すように電気的に独立した複数の領域に分離され、有機化合物
を含む層115R、115G、115Bと、第2の電極116とが形成される。第2の電
極116は、第1の電極113と交差する方向に伸長する互いに平行なストライプ状の電
極である。なお、逆テーパ状の隔壁122上にも有機化合物を含む膜及び導電膜が形成さ
れるが、有機化合物を含む層115R、115G、115B及び第2の電極116とは分
断されている。
【0054】
本実施例では、第1の電極上に、金属酸化物と有機化合物とを含む第1の複合層と、有
機化合物を含む層と、金属酸化物と有機化合物とを含む第2の複合層の積層115R、1
15G、115Bを選択的に形成し、3種類(赤色、緑色、青色)の発光が得られるフル
カラー表示可能な発光装置を形成する例を示している。積層115R、115G、115
Bはそれぞれ互いに平行なストライプパターンで形成されている。ここでは、積層を同じ
パターンとしたが、第1の複合層と第2の複合層とを各発光素子に共通な層とし、発光層
となる有機化合物を含む層のみを蒸着マスクを用いて選択的に蒸着させてもよい。
【0055】
金属酸化物と有機化合物とを含む第1の複合層の成膜例を示す。まず、NPBと酸化モリ
ブデンとをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に収納し、真空に引かれた蒸着装置内に設置
された第1の電極を有する基板に対して蒸着する。蒸着時において、NPBは0.4nm
/sの成膜レートで蒸着させ、酸化モリブデンはNPBに対して1/4の量(重量比)を
蒸発させる。この場合、モル比では、NPB:酸化モリブデン=1:1となっている。金
属酸化物と有機化合物とを含む第1の複合層の膜厚は50nmとする。
【0056】
次いで、第1の複合層上に、青色の発光素子を形成しようとする領域に青色の発光層と
してCBP(4,4'−ビス(N−カルバゾリル)−ビフェニル)が添加されたPPD(
4,4'−ビス(N−(9−フェナントリル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル)を膜
厚30nmで蒸着する。
【0057】
また、赤色の発光素子を形成しようとする領域に赤色の発光層としてDCMが添加され
たAlq3を膜厚40nmで成膜する。
【0058】
また、緑色の発光素子を形成しようとする領域に緑色の発光層としてDMQDが添加さ
れたAlq3を膜厚40nmで成膜する。
【0059】
そして、青色の発光層、赤色の発光層、および緑色の発光層上に金属酸化物と有機化合
物とを含む第2の複合層を形成する。第2の複合層は、第1の複合層と同様にしてNPB
と酸化モリブデンとを蒸着して得る。第2の複合層の膜厚も50nmとする。なお、発光
色毎に第1の複合層や第2の複合層の膜厚を適宜変更して発光効率を向上させてもよい。
【0060】
また、4種類(赤色、緑色、青色、白色)の発光が得られるフルカラー表示可能な発光
装置を形成してもよい。また、4種類(赤色、緑色、青色、エメラルドグリーン)の発光
が得られるフルカラー表示可能な発光装置を形成してもよい。さらに、5種類(赤色、緑
色、青色、白色、エメラルドグリーン)の発光が得られるフルカラー表示可能な発光装置
を形成してもよい。また、5種類(赤色、緑色、青色、エメラルドグリーン、朱黄色)の
発光が得られるフルカラー表示可能な発光装置を形成してもよい。
【0061】
また、全面に積層を形成し、単色の発光素子を設けてもよく、モノクロ表示可能な発光
装置、或いはエリアカラー表示可能な発光装置としてもよい。また、白色発光が得られる
発光装置として、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光
装置としてもよい。
【0062】
また、発光素子の封止は、シール材を用いて第2の基板を貼り合わせることによって行
う。必要があれば、第2の電極116を覆う保護膜を形成してもよい。なお、第2の基板
としては、水分に対するバリア性の高い基板が好ましい。また、必要であれば、シール材
で囲まれた領域に乾燥剤を配置してもよい。
【0063】
また、第1の電極113を光反射性を有する導電材料とし、第2の電極116を透光性
を有する導電材料とした場合には、発光素子からの発光を第2の基板を通過させて取り出
すトップエミッション型の発光装置とすることができる。第1の電極113として、炭素
及びニッケルを含むアルミニウム合金(Al(C+Ni))膜を単層、或いは透明導電膜
との積層の下層に用いると、通電、或いは熱処理後もITOやITSOとのコンタクト抵
抗値に大きな変動がない材料であるため好ましい。
【0064】
また、第1の電極113を透光性を有する導電材料とし、第2の電極116を光反射性を
有する導電材料とした場合には、発光素子からの発光を第1の基板110を通過させて取
り出すボトムエミッション型の発光装置とすることができる。
【0065】
また、第1の電極113および第2の電極116をともに透光性を有する導電材料とした
場合には、発光素子からの発光を第2の基板を通過させることと、発光素子からの発光を
第1の基板を通過させることを両方行うことが可能な発光装置とすることができる。
【0066】
また、封止を行った後、FPCなどを実装した発光モジュールの上面図を図7に示す。
【0067】
第1の基板301と第2の基板310とが対向するようにシール材311で貼り付けられ
ている。シール材311としては光硬化樹脂を用いれば良く、脱ガスが少なく、吸湿性の
低い材料が好ましい。また、シール材311は基板間隔を一定に保つため、フィラー(棒
状またはファイバー状のスペーサ)や球状のスペーサを添加したものであっても良い。な
お、第2の基板310としては第1の基板401と熱膨張係数が同一の材料が好ましく、
ガラス(石英ガラスを含む)もしくはプラスチックを用いることができる。
【0068】
図7に示すように画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交する
ように交差している。
【0069】
図5(B)における第1の電極113が図6の走査線302に相当し、第2の電極11
6がデータ線303に相当し、逆テーパ状の隔壁122が隔壁304に相当する。データ
線302と走査線303の間には有機化合物を含む積層が挟まれており、305で示され
る交差部が画素1つ分となる。
【0070】
なお、走査線303は配線端で接続配線308と電気的に接続され、接続配線308が
入力端子307を介してFPC309bに接続される。また、データ線は入力端子306
を介してFPC309aに接続される。
【0071】
また、必要であれば、出射面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板
(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また
、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を
拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。また偏光板、又は
円偏光板に加熱処理を施すアンチリフレクション処理を施してもよい。その後さらに、外
部衝撃から保護するためハードコート処理を施すとよい。ただし、偏光板、又は円偏光板
を用いると、偏光板、又は円偏光板により光の取り出し効率が低下してしまう。また、偏
光板、又は円偏光板自体のコストが高く、且つ、劣化しやすい。
【0072】
こうして得られた図7に示す発光モジュールを交流駆動させる。本発明の発光素子は交
流駆動させても、正の信号と負の信号の両方で発光素子を発光させることができ、さらに
消費電力を増加させることなく、直流電圧を印加する直流駆動させた場合と同等の発光量
を得ることができる。
【0073】
また、本実施例は、最良の形態と自由に組み合わせることができる。
【実施例2】
【0074】
本実施例では、ICチップを実装する発光モジュールの作製例を以下に示す。
【0075】
まず、絶縁表面を有する第1の基板401上に、下層は反射性を有する金属膜、上層は
透明な酸化物導電膜とした積層構造を有するデータ線(陽極)402を形成する。同時に
接続配線408、409a、409b、および入力端子も形成する。
【0076】
次いで、各画素405に対応する開口部を有する隔壁を設ける。次いで、開口部を有す
る隔壁上に、データ線402と交差する互いに平行な複数の逆テーパ状の隔壁404を設
ける。
【0077】
以上に示す工程を終えた段階での上面図を図8(A)に示す。
【0078】
次いで、金属酸化物と有機化合物とを含む第1の複合層と、有機化合物を含む膜と、金
属酸化物と有機化合物とを含む第2の複合層と、透明導電膜とを順次積層形成すると、図
8(B)に示すように電気的に独立した複数の領域に分離され、有機化合物を含む層と、
透明導電膜からなる走査線403とが形成される。透明導電膜からなる走査線403は、
データ線402と交差する方向に伸長する互いに平行なストライプ状の電極である。
【0079】
次いで、シール材413で透光性を有する第2の基板414を貼り付ける。
次いで、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成され
たデータ線側IC406、走査線側IC407をCOG方式によりそれぞれ実装する。C
OG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装してもよい
。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の
配線に接続してICを実装する。データ線側IC406、および走査線側IC407は、
シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチッ
ク基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。また、片側に一つのICを
設けた例を示しているが、片側に複数個に分割して設けても構わない。
【0080】
なお、走査線403は配線端で接続配線408と電気的に接続され、接続配線408が
走査線側IC407と接続される。これは走査線側IC407を逆テーパ状の隔壁404
上に設けることが困難だからである。
【0081】
以上のような構成で設けられたデータ線側IC406は接続配線409aおよび入力端
子410を介してFPC411に接続される。また、走査線側IC407は接続配線40
9bおよび入力端子を介してFPCに接続される。
【0082】
さらに、ICチップ412(メモリチップ、CPUチップ、電源回路チップなど)を実
装して集積化を図っている。
【0083】
また、図8(B)中、鎖線C−Dで切断した断面構造の一例を図9に示す。
【0084】
基板510上には下地絶縁膜511が設けられ、その上には積層からなるデータ線が形成
されている。下層512は反射性を有する金属膜であり、上層513は透明な酸化物導電
膜である。上層513は仕事関数の高い導電膜を用いることが好ましく、インジウム錫酸
化物(ITO)の他、例えば、Si元素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)や酸化イ
ンジウムに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(Indium Zinc
Oxide)などの透明導電材料、もしくはこれらを組み合わせた化合物を含む膜を用
いることができる。中でもITSOは、ベークを行ってもITOのように結晶化せず、ア
モルファス状態のままである。従って、ITSOは、ITOよりも平坦性が高く、有機化
合物を含む積層が薄くとも陰極とのショートが生じにくく、発光素子の陽極として適して
いる。
【0085】
また、下層512は、Ag、Al、またはAl(C+Ni)合金膜を用いる。中でもA
l(C+Ni)膜(炭素及びニッケル(1〜20wt%)を含むアルミニウム合金膜)は
、通電、或いは熱処理後もITOやITSOとのコンタクト抵抗値に大きな変動がない材
料であり、好ましい。
【0086】
隔壁514は、隣り合うデータ線同士を絶縁化するための樹脂であり、異なる着色層(
封止基板側に設けられる)との境界、或いは隙間と重なる。隔壁で囲まれた領域が発光領
域と対応して同一面積になっている。
【0087】
有機化合物を含む層515はデータ線(陽極)側から順に、第1の複合層、EML(発
光層)、第2の複合層、の順に積層されている。
【0088】
第1の複合層および第2の複合層は、金属酸化物と有機化合物とを含む複合層であり、
本実施例では、酸化タングステンとTPDとの複合層とする。また、EML(発光層)は
、発光物質を用いて形成する。この時、発光層は、発光物質の有するエネルギーギャップ
よりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に発光物質が分散して含まれ
るように形成してもよい。発光物質を分散させることで、濃度に起因した消光が生じるこ
とを防ぐことができる。ここで、発光物質について特に限定はなく、赤色系の発光を得た
い場合は、例えば、4−ジシアノメチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7
,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJ
TI)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチ
ルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシア
ノメチレン−2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロ
リジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTB)やペリフランテン、
2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチ
ルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン等、600nmから680nmに発光ス
ペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いればよい。また、緑色
系の発光を得たいときは、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリ
ン6やクマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3
等、500nmから550nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発
光物質として用いればよい。また、青色系の発光を得たいときは、9,10−ビス(2−
ナフチル)−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビア
ントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)、9,10−ビス(2−
ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4
−フェニルフェノラト−ガリウム(略称:BGaq)、ビス(2−メチル−8−キノリノ
ラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等、420nmから
500nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いれ
ばよい。また、発光物質を分散させるために発光物質と共に用いる物質についても特に限
定はなく、例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン
(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、または4,4’−ビス(N−カルバ
ゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体の他、ビス[2−(2−ヒ
ドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキ
シフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)等の金属錯体等を用いるこ
とができる。
【0089】
なお、EMLは、単層構造以外に、積層構造又は混合構造をとることができる。
【0090】
走査線516(陰極)は、データ線(陽極)と交差するように形成されている。走査線5
16(陰極)は、ITOや、Si元素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)や、酸化イ
ンジウムに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZOなどの透明導電膜を用いる
。本実施例では、発光が封止基板520を通過する上方出射型の発光装置の例であるので
走査線516は透明であることが重要である。
【0091】
また、水分や脱ガスによるダメージから発光素子を保護するため、走査線516を覆う
透明な保護膜を設けてもよい。透明な保護膜としては、PCVD法による緻密な無機絶縁
膜(SiN、SiNO膜など)、スパッタ法による緻密な無機絶縁膜(SiN、SiNO
膜など)、炭素を主成分とする薄膜(DLC膜、CN膜、アモルファスカーボン膜)、金
属酸化物膜(WO2、CaF2、Al23など)などを用いることが好ましい。透明とは、
可視光の透過率が80〜100%であることを指す。
【0092】
また、発光素子を含む画素部は、シール材519及び封止基板520で封止され、囲まれ
た空間を密閉なものとしている。
【0093】
シール材519としては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂
、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)、
PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いること
が可能である。また、シール材はフィラー(棒状またはファイバー状のスペーサ)や球状
のスペーサを添加したものであっても良い。
【0094】
また、封止基板520としてガラス基板またはプラスチック基板を用いる。プラスチック
基板としては、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、PES(ポリエ
チレンサルファイル)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレー
ト)もしくはPEN(ポリエチレンナフタレート)を板状もしくはフィルム状にして用い
ることができる。
【0095】
なお、密閉空間518には乾燥した不活性ガスが充填されている。シール材519で囲
まれた内側の密閉空間518は乾燥剤517によって微量な水分が除去され、十分乾燥さ
れている。また、乾燥剤517としては、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのようなア
ルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることが可
能である。なお、他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等の物理吸着によって水分
を吸着する物質を用いてもよい。
【0096】
一方、基板510の端部には端子電極が形成され、この部分で外部回路と接続するFP
C(フレキシブルプリント配線板)532を貼り合わせる。端子電極は、反射性を有する
金属膜530と、透明な酸化物導電膜529と、第2の電極から延在した酸化導電膜との
積層で構成しているが、特に限定されない。
【0097】
FPC532を実装する方法は異方導電性材料もしくはメタルバンプを用いた接続方法ま
たはワイヤボンディング方式を採用することができる。図9では異方性導電接着材531
を用いて接続を行っている。
【0098】
また、画素部の周辺には、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたICチップ
523を異方導電性材料524、525により電気的に接続している。また、カラー表示
に対応した画素部を形成するためには、XGAクラスでデータ線の本数が3072本であ
り走査線側が768本必要となる。このような数で形成されたデータ線及び走査線は画素
部の端部で数ブロック毎に区分して引出線を形成し、ICの出力端子のピッチに合わせて
集める。
【0099】
また、本実施例は、最良の形態または実施例1と自由に組み合わせることができる。
【実施例3】
【0100】
本実施例では、光学フィルムを設けた例を図10(A)を用いて説明する。
【0101】
第1の基板610に対向して設けられた第2の基板620に光学フィルム621を設け
ている。本実施例では、図10(A)中に矢印で示した方向に発光する例、即ち発光素子
からの発光が第2の基板620を通過してから光学フィルム621を通過する例を示して
いるが、特に限定されず、光学フィルムを第1の基板側に設けて、発光素子からの発光が
光学フィルム621を通過してから第2の基板620を通過する構成としてもよい。
【0102】
光学フィルム621は、偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/
4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを指している。
【0103】
パッシブマトリクス型発光装置の画素における発光素子は、実施例1と同様に、下層6
12は反射性を有する金属膜、上層613は透明な酸化物導電膜とした積層構造を有する
データ線(陽極)と、第1の材料層615aと、有機化合物を含む層615b、第2の材
料層615cと、透明導電膜からなる走査線616とで構成している。また、隔壁614
は樹脂材料で構成されている。
【0104】
なお、第1の材料層615aおよび第2の材料層615cは、金属酸化物(酸化モリブデ
ン、酸化タングステン、酸化レニウムなど)と有機化合物(ホール輸送性を有する材料)
の複合層である。このような発光素子の積層構造とすることで交流駆動に適した発光素子
としている。
【0105】
光学フィルム621として円偏光板を用いれば、下層612に外光が反射して画像の視
認性が低下することを防ぐことができる。なお、円偏光板とは、具体的にはλ/4、λ/
4+λ/2の位相差特性を有する位相差板、位相差フィルム、或いは位相差膜と、偏光板
、偏光フィルム、或いは直線偏光膜との組み合わせからなる円偏光板(楕円偏光板を含む
)を指している。ここでいう広帯域λ/4板は、可視光の範囲で一定の位相差(90度)を
与えるものである。具体的には、偏光板の透過軸と、位相差フィルムの遅相軸とのなす角
が45°になるように設置したものを円偏光板と呼んでいる。なお、本明細書において、
円偏光板とは、円偏光フィルムをも含むものとする。
【0106】
また、発光素子を白色発光素子とし、光学フィルム621としてカラーフィルタを用い
れば、フルカラー表示を可能とすることもできる。
【0107】
また、複数種類の光学フィルムを適宜、組み合わせてもよい。
【0108】
また、本実施例は、最良の形態、実施例1、または実施例2と自由に組み合わせること
ができる。
【実施例4】
【0109】
本実施例では、ボトムエミッション型発光装置とする例を図10(B)を用いて説明する

【0110】
本実施例における発光素子は、透明な酸化物導電膜からなるデータ線(陽極)713と
、第1の材料層715aと、有機化合物を含む層715b、第2の材料層715cと、反
射性を有する導電膜からなる走査線716とで構成している。また、隔壁714は実施例
3と同様に樹脂材料で構成されている。
【0111】
なお、第1の材料層715aおよび第2の材料層715cは、金属酸化物(酸化モリブデ
ン、酸化タングステン、酸化レニウムなど)と有機化合物(ホール輸送性を有する材料)
の複合層である。このような発光素子の積層構造とすることで交流駆動に適した発光素子
としている。
【0112】
発光素子からの発光は図6(B)中の矢印に示す方向、即ち、第1の基板710を通過
する方向に取り出される。従って、第2の基板721は特に光透過性を有する必要はなく
、金属板でもよい。また、発光素子の信頼性を向上させるために膜厚の厚い保護膜717
を形成しても光の取り出し効率が低下しないので好ましい。
【0113】
また、本実施例は、最良の形態、実施例1、実施例2、または実施例3と自由に組み合
わせることができる。例えば、本実施例と実施例3と組み合わせ、光学フィルムを設ける
場合には、第1の基板710に光学フィルムを設ければよい。
【実施例5】
【0114】
本実施例では、実施例1、実施例2、実施例3、および実施例4とは異なる発光装置とす
る例を図10(C)を用いて説明する。
【0115】
本実施例における発光素子は、透明な酸化物導電膜からなるデータ線(陽極)813と
、第1の材料層815aと、有機化合物を含む層815b、第2の材料層815cと、透
明な酸化物導電膜からなる走査線816とで構成している。また、隔壁814は実施例1
と同様に樹脂材料で構成されている。
【0116】
なお、第1の材料層815aおよび第2の材料層815cは、金属酸化物(酸化モリブデ
ン、酸化タングステン、酸化レニウムなど)と有機化合物(ホール輸送性を有する材料)
の複合層である。このような発光素子の積層構造とすることで交流駆動に適した発光素子
としている。
【0117】
発光素子からの発光は図10(C)中の矢印に示す方向、即ち、第1の基板810を通
過する方向と、第2の基板820を通過する方向との両方で取り出される。従って、第1
の基板810および第2の基板820は、ともに光透過性を有する基板を用いる。
【0118】
また、本実施例は、最良の形態、実施例1、実施例2、または実施例3と自由に組み合
わせることができる。例えば、本実施例と実施例3と組み合わせ、光学フィルムを設ける
場合には、第1の基板810および第2の基板820の両方に光学フィルムを設ければよ
い。
【実施例6】
【0119】
本発明の発光装置、及び電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーシ
ョンシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型コンピ
ュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機
又は電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc
(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)な
どが挙げられる。それら電子機器の具体例を図11、および図12に示す。
【0120】
図11で示す携帯電話機は、操作スイッチ類904、マイクロフォン905などが備え
られた本体(A)901と、表示パネル(A)908、表示パネル(B)909、スピー
カ906などが備えられた本体(B)902とが、蝶番910で開閉可能に連結されてい
る。表示パネル(A)908と表示パネル(B)909は、回路基板907と共に本体(
B)902の筐体903の中に収納される。表示パネル(A)908及び表示パネル(B
)909の画素部は筐体903に形成された開口窓から視認できように配置される。
【0121】
表示パネル(A)908と表示パネル(B)909は、その携帯電話機900の機能に
応じて画素数などの仕様を適宜設定することができる。例えば、表示パネル(A)908
を主画面とし、表示パネル(B)909を副画面として組み合わせることができる。
【0122】
表示パネル(A)908は、実施例1乃至5のいずれか一に示した交流駆動可能な構成
を具備している。本発明により、表示パネル(A)908を交流駆動としても駆動電圧の
上昇を招くことなく、携帯電話機の合計の消費電力を抑えることができる。同様に、表示
パネル(B)909も交流駆動としてもよく、駆動電圧の上昇を招くことなく、携帯電話
機の合計の消費電力を抑えることができる。
【0123】
本実施例に係る携帯電話機は、その機能や用途に応じてさまざまな態様に変容し得る。
例えば、蝶番910の部位に撮像素子を組み込んで、カメラ付きの携帯電話機としても良
い。また、操作スイッチ類904、表示パネル(A)908、表示パネル(B)909を
一つの筐体内に納め、一体化させた構成としても、上記した作用効果を奏することができ
る。また、表示部を複数個そなえた情報表示端末に本実施例の構成を適用しても、同様な
効果を得ることができる。
【0124】
図12(A)はテレビであり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピー
カー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明はテレビに内蔵している表示
部2003を交流駆動とし、消費電力が低減されたテレビを実現することができる。なお
、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用のテ
レビが含まれる。
【0125】
図12(B)はデジタルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部210
3、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。本発明
は、デジタルカメラに内蔵されている表示部2102を交流駆動とし、消費電力が低減さ
れたデジタルカメラとすることができる。
【0126】
図12(C)はパーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部
2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス220
6等を含む。本発明は、パーソナルコンピュータに内蔵されている表示部2203に適用
し、表示部を交流駆動とし、消費電力が低減されたパーソナルコンピュータを実現するこ
とができる。
【0127】
図12(D)は電子書籍であり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、
操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明は、電子書籍に内蔵されてい
る表示部2302を交流駆動とし、消費電力が低減された電子書籍を実現することができ
る。
【0128】
図12(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)
であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体
(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。
表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を
表示する。本発明は画像再生装置に内蔵されている表示部A2403、表示部B2404
を交流駆動とし、消費電力が低減された画像再生装置を実現することができる。
【0129】
図12(F)は携帯型のゲーム機器であり、本体2501、表示部2503、2505
、操作スイッチ2504等を含む。ゲーム機器に内蔵されている半導体集積回路(メモリ
やCPUなど)、および表示部2503、2505を交流駆動とし、消費電力が低減され
た携帯型のゲーム機器を実現することができる。
【0130】
図12(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、
外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー260
7、音声入力部2608、操作キー2609等を含む。本発明は、ビデオカメラに内蔵さ
れている半導体集積回路(メモリやCPUなど)、および表示部2602を交流駆動とし
、消費電力が低減されたビデオカメラを実現することができる。
【0131】
また、本実施例は実施の形態、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、または実施
例5と自由に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明により、交流駆動法を用いたEL素子の構造をシンプルなものとすることができ
、製造プロセスも簡略化することができる。また、本発明により、駆動電圧の上昇を招く
ことなく、一対の電極間の厚さを厚くすることができるため、EL素子形成プロセスにお
けるゴミ等に起因する素子の短絡も抑制することができ、歩留まりが向上する。
【符号の説明】
【0133】
10:絶縁表面を有する基板
11:第1の電極
12:第1の材料層
13:有機化合物を含む層
14:第2の材料層
15:第2の電極
16:交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を有する発光装置であって、
前記発光素子は、
第1の電極と、
前記第1の電極上に、酸化モリブデンとDNTPDとルブレンとを同時に任意の割合で蒸着させた膜、または酸化モリブデンとBBPBとルブレンとを同時に任意の割合で蒸着させた膜でなる第1の複合膜と、
前記第1の複合膜上に有機化合物を含む層と、
前記有機化合物を含む層上に、酸化モリブデンとDNTPDとルブレンとを同時に任意の割合で蒸着させた膜、または酸化モリブデンとBBPBとルブレンとを同時に任意の割合で蒸着させた膜でなる第2の複合膜と、
前記第2の複合膜上に第2の電極と、
を有し、
前記第1及び第2の複合膜は、それぞれ、電流値を横軸にとり、電圧値を縦軸にとったグラフ表示において、ゼロを中心とした点対称な電流−電圧特性を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、交流信号を印加する駆動回路を有することを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記第1の複合膜は、前記第2の複合膜とは異なる材料でなることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記第1の複合膜は、前記第2の複合膜と同じ材料でなることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−176373(P2011−176373A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129716(P2011−129716)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【分割の表示】特願2004−353427(P2004−353427)の分割
【原出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】