説明

発光装置

【課題】青色光を複数の蛍光体で波長変換して得られる照射光を照射する発光装置において、照射光の赤色の見え方を強調して、食品を鮮明に見せ、好ましく演出する。
【解決手段】発光装置1は、実装基板2上に青色光を発光する複数の固体発光素子3を備え、固体発光素子3は当該青色光により励起され、630nm〜680nmにピーク波長を有する光に変換する第1の蛍光体6を備えた第1の固体発光素子3aと、500nm〜550nmにピーク波長を有する光に変換する第2の蛍光体7を備えた第2の固体発光素子3bとを備える。第1及び第2の固体発光素子3a、3bはそれぞれ第1、第2の蛍光体6,7からの赤色光及び緑色光を被照射体に照射する。これにより、第1の蛍光体6による第2の蛍光体7からの光の再吸収を抑え、黄色光成分の増加を抑制でき、照射光の赤色の見え方を強調でき、食品を鮮明に見せることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDなどの固体発光素子の光により蛍光体を励起して発光する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発光装置として、ピーク発光波長の異なる複数の青色LEDと、一方の青色LEDの光を吸収して発光する黄色蛍光体と、他方の青色LEDの光を吸収して発光する緑色及び赤色蛍光体とを用いて、白色光を出力するものが知られている(特許文献1参照)。この発光装置は、2種の白色光を組み合わせることにより、自然光に近づけ色むらを無くすようにしたものである。また、発光素子と、近紫外領域から緑色光領域の光を赤色光領域の光に変換する蛍光変換膜を有した蛍光変換フィルタを用いる発光装置が知られている(特許文献2参照)。この種の発光装置は、従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合わせた白色光を出力するものに比べて、高い演色性を有する光を出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−34188号公報
【特許文献2】特開2000−91071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の発光装置の照射光には、赤色光成分の波長領域に近い黄色光成分が多く含まれている。黄色光成分が多く含まれる照明光で食品(特に食肉)を照射した場合には、食品がくすんで見え、食品を鮮明に、好ましく見せる演色効果が十分でなかった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、照射光に含まれる黄色光成分を低減し、特に赤色の見え方を強調することで、食品を鮮明に、好ましく見せる演出をすることができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の発光装置は、青色光を発光する複数の固体発光素子を備え、前記固体発光素子は、前記青色光により励起され、630nm〜680nmにピーク波長を有する光に変換する第1の蛍光体を有する第1の固体発光素子と、前記青色光により励起され、500nm〜550nmにピーク波長を有する光に変換する第2の蛍光体を有する第2の固体発光素子と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発光装置において、前記複数の固体発光素子のうち、前記第1の固体発光素子が相対的に中心寄りの位置に配置されることが好ましい。
【0008】
この発光装置において、前記固体発光素子は、青色光を投光する発光ダイオードを有することが好ましい。
【0009】
この発光装置において、前記固体発光素子は、青色光を投光する有機発光ダイオードを有することが好ましい。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の照明システムは、青色光を発光する固体発光素子を有する発光装置を複数備えた照明システムであって、前記発光装置は、前記青色光により励起されて630nm〜680nmにピーク波長を有する光に変換する第1の蛍光体を含む第1の固体発光素子を有する第1の発光装置と、前記青色光により励起されて500nm〜550nmにピーク波長を有する光に変換する第2の蛍光体を含む第2の固体発光素子を有する第2の発光装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の光照射方法は、固体発光素子が発光する青色光を、630nm〜680nmにピーク波長を有する光に変換する第1の蛍光体と、500nm〜550nmにピーク波長を有する光に変換する第2の蛍光体とによって、630nm〜680nmに最大ピーク波長を有する光に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光装置によれば、630nm〜680nmにピーク波長を有する光に変換する第1の蛍光体と、500nm〜550nmにピーク波長を有する光に変換する第2の蛍光体とをそれぞれ有する固体発光素子からの光を組み合わせて照射できる。これにより、照射光に含まれる黄色光成分を相対的に抑制でき、特に赤色の見え方を強調することで、食品(特に食肉)を鮮明に、好ましく見せる演出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の構成図。
【図2】同上発光装置の断面図。
【図3】(a)は第1及び第2の蛍光体からの光の各分光分布と第1の蛍光体による光の再吸収を説明するための図、(b)は同第1及び第2の蛍光体からの光の合成分光分布図。
【図4】同上発光装置の変形例の構成図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る照明システムの構成図。
【図6】食肉の分光反射特性図。
【図7】実施例1における照射光の分光分布図。
【図8】実施例2における照射光の分光分布図。
【図9】比較例における照射光の分光分布図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る発光装置について、図1及び図2を参照して説明する。図1、2に示されるように、発光装置1は、実装基板2と、この実装基板2に実装され青色光を発光する複数の固体発光素子3とを備える。
【0015】
複数の固体発光素子3は、第1の固体発光素子3aと第2の固体発光素子3bとを備える。第1の固体発光素子3aは、青色光により励起され、630nm〜680nmにピーク波長を有する光に変換する第1の蛍光体6を有する。第2の固体発光素子3bは、青色光により励起され、500nm〜550nmにピーク波長を有する光に変換する第2の蛍光体7を有する。複数の固体発光素子3のうち、第1の固体発光素子3aはその全てに限定されるものではないが、相対的に中心寄りの位置に配置される。ここでは、第1、第2の固体発光素子3a、3bは、実装基板2の中心軸Cを中心とする2つの異なる同心円上に均等間隔にそれぞれ3個づつ配置され、第1の固体発光素子3aが小さい方の同心円上に位置される。なお、第1の固体発光素子3aの幾つかは、第2の固体発光素子3bと同心円上にあってもよい。また、実装基板2はプリント基板やセラミック基板等が使用され、その形状は図例の円形に限らず、多角形などでもよい。また、固体発光素子3は、その個数や配置が限定されるものではなく、例えば、実装基板2上で平行ライン状、十字状等に配置してもよい。また、第1、第2の固体発光素子3a、3bは、実装基板2上に形成された電源駆動回路(不図示)によりその実装基板2上の配線パターンを介して給電及び投光量制御される。
【0016】
第1の固体発光素子3aは、青色光を発光する発光ダイオード(LED)4と、このLED4を封止する透明部材5と、LED4からの青色光を波長変換する第1の蛍光体6とを有する。この第1の蛍光体6は透明部材5中に分散保持されている。第1の蛍光体6は、LED4から放射された430nm〜470nmの青色光の一部を吸収して波長変換した630nm〜680nmにピーク波長を持つ赤色光と、変換されなかった残りの青色光とを放射する。
【0017】
第2の固体発光素子3bは、第1の固体発光素子3aと同様の構成を成し、透明部材5中に分散保持された第2の蛍光体7を備える。この第2の蛍光体7は、LED4からのピーク波長が430nm〜470nmの青色光を吸収し、長波長側の500nm〜550nmにピーク波長を有する緑色光に波長変換する。
【0018】
LED4は、例えば、ピーク波長が430nm〜470nmの青色光を発光する。なお、LED4は半導体素子のチップ状態でもよい。また、固体発光素子としてLED以外に、青色光を発光する有機発光ダイオード(OLED)を用いてもよい。
【0019】
透明部材5は、蛍光体を保持するためのシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの透明材料から成るバインダを成し、第1の蛍光体6をバインダ中に分散保持する。透明部材5は実装基板2上のチップ状態のLED4を覆っている。なお、透明部材5は上記樹脂材料に限定されない。また、透明部材5でLED4を覆った状態の形状は特に限定されず、例えば砲弾型や半円球状等として集光レンズ機能を持たせてもよい。また、必要に応じてバインダ中に拡散材(酸化アルミニウム、シリカなどの無機材料、フッ素系樹脂などの有機材料からなる粒子)や顔料を分散させてもよい。なお、第1の蛍光体6が分散されたバインダで成形体を形成し、この成形体によりLED4を覆ってもよい。
【0020】
上記のように構成された発光装置1の動作について説明する。第1の固体発光素子3aは、LED4からの青色光のうち、第1の蛍光体6で吸収されずに透過する青色光成分と、第1の蛍光体6で波長変換された630nm〜680nmを中心とする赤色光成分とが混色された光を出力する。第2の固体発光素子3bは、上記と同様に、LED4からの青色光のうち、第2の蛍光体7で吸収されずに透過する青色光成分と、第2の蛍光体7で波長変換された500nm〜550nmを中心とする緑色光成分とが混色された光を出力する。この結果、発光装置1は、赤色光及び緑色光と、それぞれのLED4からの青色光の一部とを含む白色の照射光により、被照射体を照射する。
【0021】
ここで、例えば第1及び第2の蛍光体が成形体内に混合して配置されていて、青色LEDからの光により共に励起されて発光する発光装置では、成形体内で第2の蛍光体で発光した緑色光の一部が第1の蛍光体で再吸収される(後述の比較例に相当)。このことを図3を参照して説明する。図3(a)において、符号21で示す曲線は第1の蛍光体からの分光スペクトル分布(分光分布という)であり、赤色光領域にピーク波長を有している。また、符号22で示す曲線は再吸収がないとしたときの第2の蛍光体からの分光分布であり、緑色光領域にピーク波長を有している。この分光分布22のレベルは、再吸収により分光分布23のように低下する。このとき、第1の蛍光体で再吸収された緑色光は、それよりも長波長側の光に変換される。その結果、照射光は、図3(b)に示すように、赤色の分光分布21と、低下した緑色の分光分布23とのスペクトルを足し合わせたような合成分光分布24を成す。ここで、領域Aで示されるように、黄色光成分が相対的に増加した照射光が形成されるため、黄色光によるくすみが強調されるようになる。
【0022】
本実施形態によれば、第1(赤色)と第2(緑色)の蛍光体6、7がそれぞれ異なる固体発光素子3a、3bに配され別々のLED4からの青色光によって励起されるので、第2の蛍光体7で波長変換して発光した緑色光の一部が第1の蛍光体6で再吸収されない。これにより、被照射物である食品がくすんで見える原因の、黄色光成分を相対的に抑えると共に、赤色光成分を際立たせることができる。その結果、被照射体である食品(特に食肉)の赤みを強調することができ、食品を鮮明に見せることができる。加えて、青、緑、及び赤の色光の組み合せによる自然な光色を実現することが可能となる。
【0023】
また、1つのLEDで複数の蛍光体を励起して異なる色を同時に発光するのではなく、1つのLEDに対し1つの蛍光体を配置するので、必要な色の光だけを発光し組み合わせることができ、不必要な光を発光して照射しないようにできるので演色効果が向上する。
【0024】
また、第1の固体発光素子3aを複数の固体発光素子3のうち、相対的に中心寄りの位置に配置したことにより、商品展示で照射面の中心に配置されることが多い照射対象を照射し易くなる。また、固体発光素子3に青色LEDを用いたことにより、省電力化が図れると共に、青色光を投光する有機発光ダイオードを用いれば、面発光により照射範囲を広くし易くなる。
【0025】
(変形例)
図4は、第1の実施形態の変形例を示す。この変形例においては、第1及び第2の固体発光素子3a、3bは、それぞれ透明部材5で覆われたLED4をさらに覆うキャップ型の成形体8を備える。第1、第2の蛍光体6、7は、透明部材5内ではなく、各々の成形体8内に各々分散して配置されている。なお、成形体8は透明部材5と同様の透明材料を用いることができる。また、実装基板2上のLED4を覆う成形体8の強度を上げることにより、透明部材5を省いてもよい。この変形例によれば、第1、第2の蛍光体6、7を取替えるとき、LED4をそのままにして、成形体8のみを取替えればよいので、LED4を再利用し易くなる。
【0026】
本発明の他の実施形態に係る照明システムについて、図5を参照して説明する。本実施形態の照明システム10は、ピーク波長がそれぞれ異なる光により被照射体を照射する複数の発光装置、ここでは、第1の発光装置31、第2の発光装置32、及びそれらの発光を制御する制御部11を備える。
【0027】
第1及び第2の発光装置31、32は、実装基板上に形成され、それぞれ第1及び第2の固体発光素子3a、3bを有する。第1の固体発光素子3aは、青色LED4と、青色LED4の光により励起されて、630nm〜680nmにピーク波長を有する波長の光に変換する第1の蛍光体6とを備える。第2の固体発光素子3bは、青色LED4と、青色LED4の光により励起されて、500nm〜550nmにピーク波長を有する波長の光に変換する第2の蛍光体7とを備える。その上で、第1の発光装置31は、630nm〜680nmの赤色にピーク波長を有する照射光を発光し、第2の発光装置32は、500nm〜550nmの緑色にピーク波長を有する照射光を発光するように設定される。
【0028】
制御部11は、各青色LED4の発光を制御することにより、第1及び第2の発光装置31、32からの投光量を調整する。これにより、上記のような照射光を得ることができる。なお、第1及び第2の発光装置31、32は、各々の第1と第2の蛍光体6、7の分量比率を所定の値に予め設定しておくことにより、制御部11による投光量の調整の際に、各装置から所望のピーク波長特性を得易くなる。また、本例では、第1及び第2の発光装置31、32において、第1及び第2の固体発光素子3a、3bが1個ずつのものを示したが、これに限らない。例えば、第1の発光装置31において、第1の固体発光素子3aが2つ以上あって、第2の発光装置32において、第2の固体発光素子3bが2つ以上あってもよい。すなわち、第1及び第2の発光装置31、32がそれぞれ上述したピーク波長を有する照射光を発光するように構成されていればよい。例えば、第1の発光装置31が第2の蛍光体7を有さないものであってもよく、第2の発光装置32が第1の蛍光体6を有さないものであってもよい。
【0029】
本実施形態の照明システム10によれば、照射する食品が変更され、その分光反射率が変わった場合にも、それに対応して第1及び第2の発光装置31、32の投光量の比率をそれぞれ調整すればよく、それにより被照射体への演出効果をより高めることができる。なお、照明システム10は、制御部がない単純なシステムであってもよい。
【0030】
次に、上述した実施形態に係る実施例1〜3と、比較例(実施形態でない)とを対比して説明する。実施例1、2は、前記実施形態1と同様の構成を成し、実施例3は前記実施形態2と同様の構成を成す。比較例はLED4を覆う形成体に、第1、第2の蛍光体6、7が混合されて存在するものである。
【0031】
<光照射方法>
青色光を、赤色光にピーク波長を有する第1の蛍光体と緑色光にピーク波長を有する第2の蛍光体とによって、赤色光にピーク波長を有する波長分布になるようにそれぞれ変換して得られた照射光により被照射体を照射した。第1の蛍光体のピーク波長を630nm〜680nmとし、第2の蛍光体のピーク波長を500nm〜550nmとして、それらの蛍光体からの光による照射光の分光分布が、赤色光の630nm〜680nmでピーク波長を有するようにした。
【0032】
<照射光の評価>
発光装置からの光により食品を照射した際に、好ましく見えるかどうかの評価指標として、彩度評価に適したメトリッククロマ値(Cab)で評価した。メトリッククロマ値の評価では、被照射体への照明の際、その値が大きいほど、彩度が高くなり、被照射体をより好ましく演出できることになる。このメトリッククロマ値は、照射光の分光分布と被照射体である食肉の分光反射率から、CIEL色空間(CIE1976L表色系で表される均等色空間)の色度座標を算出し、a、bの値から下式により算出する。
(数1)
ab=(a*2十b*21/2
ここで、a、bはCIEL色空間における知覚色度指数である。また、上記食肉の分光反射特性の例を図6に示す。図6の特性グラフでは、縦軸は分光反射率(%)、横軸は波長(nm)を示す。この分光反射特性に示されるように、食肉の分光反射率のピークは、600nmより長い波長領域にあり、600nmより短い波長領域(例えば黄色光領域など)では、急激に分光反射率が低下するようになる。
【0033】
(実施例1)
実施例1による発光装置は、ピーク波長460nmの青色光を放射する複数のLEDの中心に配置されたLEDを第1の蛍光体を分散した成形体で覆い、他のLEDを第2の蛍光体を分散した成形体で覆ったものである。第1の蛍光体は青色光をピーク波長が650nmの赤色光に、第2の蛍光体は青色光をピーク波長が520nmの緑色光にそれぞれ波長変換する。
【0034】
図7は、実施例1による照射光の分光分布を示す。ピーク波長が650nmの赤色光の相対強度を最大1として正規化して表示した。560nmから600nm付近の黄色光成分は、ピーク波長が520nmの緑色光に比べ低くなっている。この照射光を用いて食肉を照射した際のメトリッククロマ値は46であった。
【0035】
(実施例2)
実施例2による発光装置は、第1の蛍光体をピーク波長が660nmの赤色を発光するものとし、第2の蛍光体をピーク波長が530nmで半値幅の狭い緑色を発光するものとし、他は実施例1と同様である。図8は、実施例2による照射光の分光分布を示す。560nmから600nm付近の黄色光成分が、ピーク波長が530nmの緑色光より低く、かつ、青色光、緑色光、及び黄色光がいずれも赤色光より相対的により低くなっている。この照射光で食肉を照射したとき、メトリッククロマ値は53であった。実施例2の評価結果は、被照射体である食肉をより良く見せ、演出性を維持しながら自然な光色にするには、蛍光体が放射する照射光のピーク波長の半値幅がより小さいことが好ましいことを示す。特に、緑色光成分の半値幅が小さくなるようにすれば、照射光が白色光に近くなって食肉の回りの色が自然に見えるようになる。例えば、赤色光が強い又は赤色光だけの場合、食肉を載せた白色トレーが赤く見えたりするが、緑色光を追加することにより、白色トレーは白く見え、その上の食肉の赤色が際立って見えることになる。その結果、彩度が高まり、メトリッククロマ値を大きくすることができる。なお、赤色光又は赤色及び緑色光の両方の半値幅を小さくし、赤色光を際立たせてもよく、半値幅は狭い方がよい。
【0036】
(実施例3)
実施例3による第1と第2の発光装置は、それぞれ照射光のピーク波長が650nmの赤色とするもの、及び520nmの緑色とするものとし、それら照射光による総合の照射光の分光分布で最大レベルとなるピーク波長を650nmとした。この実施例3による照射光で、食肉を照射した際のメトリッククロマ値は46であった。
【0037】
(比較例)
比較例の発光装置は、ピーク波長460nmの青色光を発光する複数のLEDを、第1の蛍光体と第2の蛍光体とを混合した成形体により各々覆ったものである。第1の蛍光体のピーク波長は650nmとし、第2の蛍光体のピーク波長は520nmとした。
【0038】
この比較例では、図9に示すように、ピーク波長が560nmから600nm付近の黄色光成分は、ピーク波長が520nmの緑色光より相対的に高くなっている。これは成形体中に赤色光と緑色光との蛍光体とが混合され、緑色光の一部が赤色蛍光体で再吸収されることにより、黄色光成分が相対的に増加したことによる。この照射光で食肉を照射した際のメトリッククロマ値は43となり、実施例1〜3と比較し低い値となった。
【0039】
上記評価から分かるように、実施例1〜3によれば、比較例のように赤色及び緑色蛍光体が混合されている場合に比べ、大きいメトリッククロマ値が得られ、黄色光成分が相対的に抑制されて赤色光が強調される。これにより、食肉の彩度が高くなり、鮮明に見え、被照射体をより好ましく演出できることになる。
【0040】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態では、第1の蛍光体と第2の蛍光体を別々のLEDに分離して配置する構成としたが、第1の蛍光体による第2の蛍光体からの光の再吸収が生じない構成であればよい。また、照射光を食品(特に食肉)へ照射する場合について説明したが、食品以外の衣料品等の各種展示商品にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 発光装置
10 照明システム
2 実装基板(基板)
3 固体発光素子
3a 第1の固体発光素子
3b 第2の固体発光素子
31 第1の発光装置
32 第2の発光装置
4 LED(発光ダイオード)
6 第1の蛍光体
7 第2の蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色光を発光する複数の固体発光素子を備え、
前記固体発光素子は、前記青色光により励起され、630nm〜680nmにピーク波長を有する光に変換する第1の蛍光体を有する第1の固体発光素子と、前記青色光により励起され、500nm〜550nmにピーク波長を有する光に変換する第2の蛍光体を有する第2の固体発光素子と、を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記複数の固体発光素子のうち、前記第1の固体発光素子が相対的に中心寄りの位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記固体発光素子は、青色光を投光する発光ダイオードを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記固体発光素子は、青色光を投光する有機発光ダイオードを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
青色光を発光する固体発光素子を有する発光装置を複数備えた照明システムであって、
前記発光装置は、
前記青色光により励起されて630nm〜680nmにピーク波長を有する光に変換する第1の蛍光体を含む第1の固体発光素子を有する第1の発光装置と、
前記青色光により励起されて500nm〜550nmにピーク波長を有する光に変換する第2の蛍光体を含む第2の固体発光素子を有する第2の発光装置と、を備えることを特徴とする照明システム。
【請求項6】
固体発光素子が発光する青色光を、630nm〜680nmにピーク波長を有する光に変換する第1の蛍光体と、500nm〜550nmにピーク波長を有する光に変換する第2の蛍光体とによって、630nm〜680nmに最大ピーク波長を有する光に変換することを特徴とする光照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−109397(P2012−109397A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257069(P2010−257069)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】