説明

発光装置

【課題】消費電力の低いトップエミッション構造の発光装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子を形成する基板上に凸状構造体を形成した後に、上部電極層を形成する。これにより、上部電極層は凸形状に追従した形状を有する構造となる。また、有機EL層を封止する基板上に導電層を形成する。そして、上部電極層形成面と導電層形成面が対向した状態で両者を封止することで、凸状構造体と重畳する電極層の少なくとも一部が導電層と接触し、上部電極層の抵抗率が大きく減少する。これにより、発光素子の消費電力を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで長い間用いられてきた白熱灯や蛍光灯などの発光装置に代わり、近年、電流を流すことにより発光する機能性有機薄膜層(以下、有機EL層と略記する)を電極間に挟んだ素子(以下、有機EL素子と略記する)を用いた発光装置の研究が盛んに行われている。有機EL素子を用いた発光装置は、従来の発光装置と比較して薄型化や軽量化が行いやすいという長所がある。また、これらの長所を生かし、湾曲を有する面に貼り付けるといった応用も検討されている。
【0003】
有機EL素子を用いた発光装置としては、例えば、特許文献1のような照明器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−130132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1における有機EL素子の構造は、透光性を有する基板上に、透明電極、有機発光層、金属反射電極を順に形成した後に封止層を用いて有機発光層を気密に封止した構造であり、有機発光層が形成された構造物側(特許文献1の透光性基板側)に光を射出する、所謂ボトムエミッション型の構造となっている。
【0006】
ボトムエミッション型構造は、透明電極の抵抗率を低減するため、透光性を有する基板と透明電極の間に、補助配線として抵抗率の低い金属膜を形成することが一般的である。透光性基板としては一般的にガラス基板が用いられており耐熱性が高いため、比較的容易に補助配線を形成できる。作成方法として、例えば、透光性基板上に導電性ペーストを印刷して適宜焼成処理を行うことにより、印刷電極を形成する方法などが挙げられる。
【0007】
このように、ボトムエミッション型構造は補助配線を形成し易いという長所を有している。
【0008】
また、有機EL素子の構造は、上記ボトムエミッション型構造以外に、有機発光層が形成されていない構造物側(特許文献1の封止層側)に光を射出するトップエミッション型構造が存在する。
【0009】
トップエミッション構造では、有機EL層を形成した後に透明電極を形成するため、透明電極に接して補助配線を形成する場合、加熱温度に制限があるだけでなく、エッチング処理などによりパターン形成を行うことも難しい。このため、補助配線を設けて透明電極の抵抗率を低くすることは非常に困難であり、また、大面積の透明電極を形成した場合、面内において抵抗値のバラツキが発生する。したがって、消費電力が高い、発光ムラが発生するといった問題が生じやすい。
【0010】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、本発明は、消費電力の低いトップエミッション構造の発光装置を提供することを課題の一とする。
【0011】
また、面内の発光ムラが抑制されたトップエミッション構造の発光装置を提供することを課題の一とする。
【0012】
また、良好な放熱性を有するトップエミッション構造の発光装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一態様では、第1の電極層、有機EL素子および第2の電極層を形成する基板(以下、第1の基板と略記する)上に構造体が形成されている(以下、第1の基板から第2の電極層までの積層構造を総称して「ベース基板」と略記する)。これにより、構造体と重畳する第2の電極層の少なくとも一部が、構造体と重畳しない第2の電極層部分よりも盛り上がった構造となる。
【0014】
また、有機EL層の封止に用いる基板(以下、第2の基板と略記する)上には導電層が形成されている(以下、導電層を形成した第2の基板を「封止基板」と総称して略記する)。そして、ベース基板の第2の電極層側と封止基板の導電層側を対向して封止することで、ベース基板側の構造体と重畳する第2の電極層部分と、封止基板に形成された導電層が接触し、第2の電極層の抵抗率は大きく減少する。したがって、トップエミッション構造の発光装置の消費電力を低減できると共に、発光ムラを抑制できる。
【0015】
また、第1の基板として熱伝導率の高い基板を用いることにより、有機EL層からの発熱は第1の基板を介して効率良く外部に放出される。したがって、トップエミッション構造の発光装置の放熱性を高めることができる。
【0016】
すなわち、本発明の一態様は、第1の基板上に第1の電極層と、第1の電極層上の有機EL層と、有機EL層上の第2の電極層と、第2の電極層を部分的に隆起させるように第1の電極層と有機EL層の間に設けられた凸状の構造体を備えるベース基板と、第2の基板上に導電層を備える封止基板が貼り合わされた構造であり、導電層は第2の電極層より抵抗率が低く、構造体と重畳する第2の電極層は少なくとも一部で導電層と接触して電気的に接続され、ベース基板の第2の電極層形成面と、封止基板の導電層形成面が対向状態に貼り合わされていることを特徴とする発光装置である。
【0017】
発光装置を上記本発明の一態様の構造とすることにより、第2の電極層と導電層が接触して第2の電極層の抵抗率を小さくできるため、消費電力が低く発光ムラの抑制されたトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【0018】
また、本発明の一態様は、第1の基板上に第1の電極層と、第1の電極層上の有機EL層と、有機EL層上の第2の電極層と、第2の電極層を部分的に隆起させるように第1の基板と第1の電極層の間に設けられた凸状の構造体を備えるベース基板と、第2の基板上に導電層を備える封止基板が貼り合わされた構造であり、導電層は第2の電極層より抵抗率が低く、構造体と重畳する第2の電極層は少なくとも一部で導電層と接触して電気的に接続され、ベース基板の第2の電極層形成面と、封止基板の導電層形成面が対向状態に貼り合わされていることを特徴とする発光装置である。
【0019】
発光装置を上記本発明の一態様の構造とすることにより、第2の電極層と導電層が接触して第2の電極層の抵抗率を小さくできる。また、構造体形成箇所も発光部分として機能するため、消費電力が低く発光ムラの抑制されたトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【0020】
なお、上述の本発明の一態様において、導電層が金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、コバルト、又はこれらの合金からなる微細金属線、カーボンナノチューブ、微細金属粒子又は微細金属粒子の結合体を有し、導電層が60%以上の可視光透過率を有することにより、有機EL層からの発光は、導電層による反射及び吸収の影響が少なく効率良く外部に射出されるため、消費電力の低いトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【0021】
また、上述の本発明の一態様において、導電層が金、白金、銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、コバルト、クロム、タングステン、モリブデン又はこれらを主成分とする合金材料のいずれか1以上の単層膜または積層膜であり、導電層が60%以上の可視光透過率を有することにより、有機EL層からの発光は、導電層による反射及び吸収の影響が少なく効率良く外部に射出されるため、消費電力の低いトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【0022】
また、上述の本発明の一態様において、導電層の抵抗率を3×10−4Ω・m以下とすることで、導電層の一部と第2の電極層の一部が接触することにより、第2の電極層の抵抗率を大きく低減できるため、消費電力の低いトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【0023】
また、上述の本発明の一態様において、第2の電極層と導電層の接触部分を線状に形成することにより、第2の電極層の抵抗率低減に加えて、面内の抵抗値バラツキを抑制できるため、発光ムラの抑制されたトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【0024】
また、上述の本発明の一態様において、第1の基板として熱伝導率が10W・m−1・K−1以上の材料で形成される基板を用いた構造とすることにより、有機EL層の発光により生じた熱を、第1の基板を介して外部に効率良く放熱できるため、放熱性の良好なトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【0025】
また、上述の本発明の一様態において、第1の基板の構造体形成面とは異なる面に凹凸が形成された構造とすることにより、有機EL層の発光により生じた熱を、更に効率良く外部に放熱できるため、放熱性の良好なトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【0026】
なお、本明細書等において、「Aの上にBが形成されている」、あるいは、「A上にBが形成されている」、と明示的に記載する場合は、Aの上にBが直接接して形成されていることに限定されない。直接接してはいない場合、つまり、AとBとの間に別の対象物が介在する場合も含むものとする。ここで、A、Bは、対象物(例えば装置、素子、回路、配線、電極、端子、膜、又は層など)であるとする。
【0027】
したがって、例えば、層Aの上又は層A上に層Bが形成されていると明示的に記載されている場合は、層Aの上に直接接して層Bが形成されている場合と、層Aの上に直接接して別の層(例えば層Cや層Dなど)が形成されていて、その上に直接接して層Bが形成されている場合とを含むものとする。なお、別の層(例えば層Cや層Dなど)は、単層でもよいし、複層でもよい。
【0028】
また、本明細書等において「第1」又は「第2」等の数詞の付く用語は、要素を区別するために便宜的に用いているものであり、数的に限定するものではなく、また配置及び段階の順序を限定するものでもない。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、消費電力が低く発光ムラの抑制されたトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【0030】
また、良好な放熱性を有するトップエミッション構造の発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1に記載の発光装置の構成を説明する図。
【図2】実施の形態1に記載の発光装置の作製方法を説明する図。
【図3】実施の形態1に記載の発光装置の作製方法を説明する図。
【図4】実施の形態1に記載の発光装置の作製方法を説明する図。
【図5】実施の形態2に記載の発光装置の構成を説明する図。
【図6】実施の形態2に記載の発光装置の作製方法を説明する図。
【図7】実施の形態3に記載の発光装置の構成を説明する図。
【図8】実施の形態3に記載の発光装置の作製方法を説明する図。
【図9】実施の形態3に記載の発光装置の作製方法を説明する図。
【図10】実施の形態3に記載の発光装置の作製方法を説明する図。
【図11】実施の形態3に記載の発光装置の特徴を説明する図。
【図12】本発明に係る発光装置を用いた、照明装置及び電子機器の形態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る発光装置の構成及び作製方法ついて、図1乃至図4を用いて説明する。
【0034】
<本実施の形態における発光装置の構成>
図1は、本実施の形態の方法を用いて作製された発光装置の構成の一例を示す図であり、図1(A)は発光装置150の上面図であり、図1(B)は図1(A)の一点鎖線部A−A’、B−B’、C−C’の断面図である。なお、明瞭化のため、図1(A)には第2の基板112及び導電層114は明示していない。
【0035】
図1に示す発光装置150は、第1の基板102と、第1の基板102上に形成された第1の電極層104と、第1の電極層104上に形成された構造体106及び絶縁物107と、第1の電極層104及び構造体106上に形成された有機EL層108と、有機EL層108上に形成された第2の電極層109とを有するベース基板110及び、第2の基板112と、第2の基板112上に形成された導電層114とを有する封止基板120を備えており、ベース基板110と封止基板120は封止材130により接着されている。
【0036】
構造体106の厚さは、絶縁物107の厚さより厚く形成されている。これにより、ベース基板110形成後において、第2の電極層109のうち構造体106と重畳する領域が、ベース基板110の中で最も高さのある部分となるため、封止基板120を接着した際に、導電層114は構造体106と重畳する領域の第2の電極層109部分に選択的に接触する。
【0037】
第2の電極層109と導電層114は一部において接触して電気的に接続されている。また、第1の電極層104及び第2の電極層109の一部は、封止材130より外側に引き回されており、第1の電極層104及び第2の電極層109に外部電源(図示していない)を接続して、有機EL層108に電子及び正孔を供給することにより有機EL層108を発光させることができる。
【0038】
第1の電極層104及び第2の電極層109のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極から注入される正孔及び陰極から注入される電子が有機EL層108内で再結合して発光する。本実施の形態では、第1の電極層104が陰極として機能し、第2の電極層109が陽極として機能する。
【0039】
有機EL層108は、少なくとも、電子と正孔が再結合することにより光を発する発光層を有している。さらに、有機EL層108の発光性能を向上させるため、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層が設けられている。正孔輸送層は、陽極と発光層の間に設けられる。また、正孔注入層は陽極と発光層との間、或いは陽極と正孔輸送層との間に設けられる。一方、電子輸送層は、陰極と発光層との間に設けられ、電子注入層は陰極と発光層との間、或いは陰極と電子輸送層との間に設けられる。なお、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層は、必ずしも全てを設ける必要はなく、適宜求める性能等に応じて選択して設ければよい。
【0040】
なお、図1(B)では第1の電極層104と第2の電極層109の間に、有機EL層108が単層で設けられた構造であるが、複数の有機EL層を積層した構造(所謂、タンデム構造)を適用することもできる。特に、2〜4層(特に3層)構造とすることにより、消費電力に対する発光効率のバランスが優れた発光装置を作製できる。
【0041】
絶縁物107(隔壁、障壁、絶縁体などと呼ばれる)は、第1の基板102上に形成された凹凸形状部分(例えば、図1(B)の点線で囲まれたX部分(丸部分)で示された、第1の電極層104の端部など)により有機EL層108の膜が切れることを抑制する効果がある。絶縁物107端部の角度をなだらかにすることで、有機EL層108の膜切れを効果的に抑制できる。また、絶縁物107は、第1の電極層104と第2の電極層109が接触することによる短絡発生を抑制する効果もある。
【0042】
なお、本実施の形態では絶縁物107を形成しているが、上述の有機EL層108の膜切れや、第1の電極層104と第2の電極層109の短絡が発生しない構造であれば、必ずしも必要とされるものではない。
【0043】
<本実施の形態における発光装置の作製方法>
発光装置150の作製方法について、図2及び図3を用いて以下の文章にて説明する。
【0044】
まず、第1の基板102上に、第1の電極層104を形成する(図2(A)参照)。
【0045】
第1の基板102としては、例えば、ステンレス鋼基板、アルミニウム基板、アルミニウム青銅基板、チタン基板、銅基板、鉄基板、炭素鋼基板、クロム鋼基板、ニッケル鋼基板、クロムニッケル鋼基板、珪素鋼基板、タングステン鋼基板、マンガン鋼基板等の金属基板や、窒化アルミニウム基板、アルミナ基板等のセラミック基板等の熱伝導率の高い基板を用いることができ、熱伝導率が10W・m−1・K−1以上の材料を用いることが好ましい。より望ましくは、熱伝導率が50W・m−1・K−1以上の材料を用いることが好ましい。
【0046】
このような熱伝導率の高い基板を第1の基板102として用いることにより、発光装置150を動作させた際に有機EL層108から生じる熱を、第1の基板102を介して外部に効率良く放熱できる。これにより、有機EL層108の劣化(例えば、有機EL層108中に含まれる有機材料が熱により結晶化する等)を抑制することができるため、発光装置150を長寿命化できる。
【0047】
第1の基板102としては、例えば、青板ガラス、白板ガラス、鉛ガラス、強化ガラス、セラミックガラス等の各種ガラス基板や、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板や、石英基板などを用いることもできる。
【0048】
このような透光性を有する基板を第1の基板102として用いることにより、両面に発光が可能な発光装置150を作製できるため、高い意匠性を有する付加価値の高い発光装置を作製できる。
【0049】
さらに、第1の基板102として、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ABS樹脂などの各種プラスチック基板を用いることもできる。
【0050】
このようなプラスチック基板を第1の基板102として用いることにより、発光装置150を薄型化、軽量化できるため、発光装置の付加価値を高めることができる。
【0051】
また、第1の基板102及び第2の基板112に上述のプラスチック基板を用いることにより、可撓性を有する発光装置150を形成できるため、発光装置の付加価値を高めることができる。
【0052】
なお、第1の基板102として上述の各種プラスチック基板を用いる場合は、表面に酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウムなどの水蒸気透過性の低い膜を単層又は積層にて形成するとよい。これにより、各種プラスチック基板には高い水蒸気バリア性が付与されるため、有機EL層108の劣化を抑制できる。
【0053】
第1の電極層104としては、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、コバルト、銅、マグネシウム、チタン、又はパラジウム等の金属材料の単層や積層、これらの材料を含む合金などを用いることができる。
【0054】
第1の電極層104は、後の工程で形成する有機EL層108の発光を反射する機能を担うため、400nm以上700nm以下の波長領域に対して70%以上の反射率を有することが好ましく、より望ましくは90%以上の反射率を有することが好ましい。
【0055】
第1の電極層104の形成方法としては特に限定されず、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティングなどを材料に合わせて用いることができる。なお、基板端部周辺など、一部の第1の電極層104を除去する場合は、ドライエッチング法やウェットエッチング法などの既知の方法を用いて除去すればよい。
【0056】
なお、第1の基板102上に第1の電極層104を形成する前に、第1の基板102上に平坦化層を設けてもよい。平坦化層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂を、スピンコート法、印刷法またはインクジェット法等により第1の基板102上に形成した後に、適宜硬化処理を行って形成すればよい。第1の基板102の表面に凹凸(具体的には最大高さRyが5μm以上の段差)が形成されている場合、後の工程にて有機EL層108を形成する際に表面凹凸に起因した膜厚のバラツキが発生する可能性があるため、表面凹凸のある基板に対して平坦化膜は特に有効である。
【0057】
第1の基板102として各種金属基板等の高い導電性を有する基板を用いる場合、第1の基板102上に平坦化層を設けることにより、後の工程にて形成する第1の電極層104と第2の電極層109が、第1の基板102を介して導通することを防止する効果があるため、形成することが好ましい。
【0058】
また、第1の基板102上に第1の電極層104を形成する前に下地膜を設けてもよい。下地膜を設けることにより、有機EL層108の劣化を抑制することができ、発光装置150の信頼性を高めることが出来る。下地膜としては、例えば、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウムなどの水蒸気透過性の低い膜を単層又は積層にて形成するとよい。
【0059】
次に、第1の基板102及び第1の電極層104上の一部に、絶縁物107を形成する(図2(B)参照)。
【0060】
絶縁物107としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂を用いることができる。なお、絶縁物107と第1の基板102の接する角度及び絶縁物107と第1の電極層104の接する角度は60°以下、より好ましくは40°以下とすることが好ましい。絶縁物107上には、後の工程で有機EL層108を形成するため、前述のように角度を低角度とすることにより、有機EL層108を形成する際の段切れを抑制できる。
【0061】
図2(A)の第1の電極層104の端部のうち、後の工程にて有機EL層108及び第2の電極層109を形成する部分(図2(C)のXで示される点線丸部分)は、有機EL層108が薄くなり第2の電極層109との間で短絡が発生しやすいため、端部を覆う状態に絶縁物107を形成することが好ましい。
【0062】
絶縁物107の形成方法としては、スピンコート法、印刷法又はインクジェット法等により上記材料を形成した後に、加熱やエッチング処理などを材料に合わせて適宜行えばよい。なお、第1の基板102として各種プラスチック基板を用いた場合は、第1の基板102に変形が生じない条件範囲(つまり、基板の歪み点より低い温度)で硬化処理を行う必要がある。
【0063】
次に、第1の電極層104上に構造体106を形成する(図2(C)参照)。
【0064】
構造体106としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂を用いることができる。なお、構造体106と第1の電極層104の接する角度は60°以下、より好ましくは40°以下とすることが好ましい。構造体106上には、後の工程で有機EL層108を形成するため、構造体106と第1の電極層104の接する角度を前述のように低角度とすることにより、有機EL層108を形成する際の段切れを抑制できる。
【0065】
なお、構造体106は、絶縁物107よりも厚く形成する必要がある。具体的には、5μm以上の厚さであることが好ましく、望ましくは10μm以上の厚さであることが好ましい。
【0066】
構造体106の形成方法としては、印刷法またはインクジェット法等により第1の基板102上に上記材料を形成した後に、加熱などの硬化処理を材料に合わせて適宜行えばよい。なお、第1の基板102として各種プラスチック基板を用いた場合は、第1の基板102に変形が生じない条件範囲(つまり、基板の歪み点より低い温度)で硬化処理を行う必要がある。
【0067】
構造体106を図4(A)のように線状に形成することにより、後の工程でベース基板110と封止基板120を貼り合わせた際に、第2の電極層109と導電層114は線状に接触する。これにより、第2の電極層109の面内抵抗値バラツキを低減することができるため、有機EL層108を発光させた際において発光ムラを低減できる。また、構造体106は図4(B)のような碁盤の目状や、図4(C)のような島状に形成してもよい。構造体の形成レイアウトについては、基板面内での偏り(例えば、第1の基板102右側のみに構造体106を集中させる等)を少なくすることが重要である。これにより、面内抵抗値バラツキを効果的に低減でき、発光ムラ抑制効果が高くなる。
【0068】
次に、第1の電極層104、構造体106及び絶縁物107の上に有機EL層108を形成する(図2(D)参照)。
【0069】
有機EL層108として形成される発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層には、既知の有機材料を用いればよく、発光装置の使用目的により使用材料を適宜選択すればよい。例えば、発光装置を白熱灯や蛍光灯などの室内照明用途として用いる場合は、昼光色、昼白色などの白色系の発光を呈するように、有機EL層108を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)を発光する3層構造として、各層を形成する際に微調整を行い発光色を調整すればよい。また、補色関係にある2色を発光する層を積層し、各層を形成する際に微調整を行い発光色を調整してもよい。勿論、有機EL層108の構造は、これに限定されるものではない。
【0070】
有機EL層108の形成方法としては、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などの真空蒸着法を用いればよい。なお、有機EL層108は、大気中の水や酸素などにより著しく劣化するため、後の工程にて形成する封止材130より内側(封止材130より基板中央側)に形成することが好ましい。このように決まった場所に有機EL層108を形成する方法としては、例えば、メタルマスク等を用いればよい。
【0071】
次に、第1の基板102、絶縁物107及び有機EL層108の上に第2の電極層109を形成する(図3(A)参照)。
【0072】
第2の電極層109としては、例えば、インジウム錫酸化物、珪素を含むインジウム錫酸化物、亜鉛またはタングステンを含む酸化インジウムなどの導電性金属酸化膜を用いることが好ましい。これらの材料は可視光領域において高い透過率を有しており、有機EL層108からの発光を高い割合で透過する。
【0073】
第2の電極層109の形成方法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、クラスタービーム蒸着法、レーザー蒸着法などを用いればよい。ただし、有機EL層108にダメージを与えない温度範囲にて形成する必要がある。スパッタリング法により第2の電極層109を形成する場合は、対向ターゲット式スパッタ法(ミラートロンスパッタ法とも言われる)などにより、有機EL層108へのダメージを少なくすることが好ましい。
【0074】
なお、第2の電極層109を形成後に第2の電極層109を覆う保護膜を設けてもよい。保護膜を設けることにより、有機EL層108の劣化を抑制することができ、発光装置150の信頼性を高めることが出来る。保護膜としては、例えば、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウムなどの水蒸気透過性の低い膜を単層又は積層にて形成するとよい。
【0075】
以上の工程により、第1の基板102上に、第1の電極層104、構造体106、絶縁物107、有機EL層108、第2の電極層109を有する、ベース基板110が形成される。
【0076】
なお、第1の基板102は、構造体106形成面とは異なる面に凹凸を形成する、または凹凸の形成された第1の基板102を用いることにより、凹凸部がヒートシンクとして役割を果たすため、有機EL層108から生じる熱を、より効率的に外部に放熱できる。なお、凹凸を形成する方法は既知の技術を用いればよく特に限定は無い。例えば、刃物加工、ウォータージェット加工、マイクロブラスト加工、レーザー加工などを用いることができる。
【0077】
次に、第2の基板112上に、導電層114を形成して、封止基板120を形成する(図3(B)参照)。
【0078】
第2の基板112としては、例えば、青板ガラス、白板ガラス、鉛ガラス、強化ガラス、セラミックガラス等の各種ガラス基板や、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板や、石英基板などを用いることもできる。本願では、有機EL層108の発光は第2の基板112側に射出されるため、第2の基板112は、400nm以上700nm以下の波長領域に対して70%以上の透過率を、より望ましくは85%以上の透過率を有することが好ましい。
【0079】
また、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ABS樹脂などの各種プラスチック基板を用いることもできる。
【0080】
このようなプラスチック基板を第2の基板112として用いることにより、発光装置150を薄型化、軽量化できるため、発光装置の付加価値を高めることができる。
【0081】
なお、第2の基板112として上述の各種プラスチック基板を用いる場合は、表面に酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウムなどの水蒸気透過性の低い膜を単層又は積層にて形成するとよい。これにより、各種プラスチック基板には高い水蒸気バリア性が付与されるため、有機EL層108の劣化が抑制され、発光装置150の信頼性を高めることができる。
【0082】
導電層114としては、例えば、金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、コバルト、又はこれらの合金からなる微細金属線を含有する溶媒や樹脂材料などを用い、スピンコート法、印刷法、ディスペンス法及びインクジェット法などにより第2の基板112上に塗布、焼成(溶液の種類により、焼成工程は必ずしも必要ではない)することで形成すればよい。
【0083】
微細金属線としては、例えばナノワイヤーと呼ばれる直径がナノメートルサイズ(具体的には100nm以下)の金属線を用いることができる。微細金属線を含有する材料を上述の方法にて形成すると、微細金属線が平面的に広く設けられ、且つ微細金属線の一部が重なり合うことにより、面全体に対して高い導電性が確保された導電層114を得ることができる。さらに微細金属線自体のサイズは前述の通り非常に細く小さいため、形成される導電層114は高い可視光透過率を有している。
【0084】
なお、有機EL層108からの発光は第2の電極層109側に射出されるため、導電層114には高い可視光透過性が求められる。具体的には、400nm以上700nm以下の波長領域の光に対して60%以上、より望ましくは80%以上の透過率を有することが好ましい。このような高い透過率を有する導電層114を形成するため、溶媒や樹脂材料中の微細金属線の含有率は40vol%以下、望ましくは20vol%以下が好ましい。
【0085】
このように、高い可視光透過率を有する導電層114を用いることにより、有機EL層108からの発光は、導電層114での反射及び吸収によるロスが少ないため、効率良く外部に射出される。
【0086】
なお、導電層114は、上述の材料以外として、金、白金、銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、コバルト、クロム、タングステン、モリブデン又はこれらを主成分とする合金材料(例えば、上述の金属材料にベリリウム、ロジウム、ネオジム、インジウム、ジルコニウム、マンガン、鉄または珪素などが混合された合金など)のいずれか一以上が単層または積層に成膜された金属薄膜を用いてもよい。金属薄膜を導電層114として用いる場合、導電層114は400nm以上700nm以下の波長領域の光に対して60%以上、より望ましくは80%以上の透過率を有するように薄い膜厚とすることが好ましい。
【0087】
また、導電層114は、後の工程にて第2の電極層109の一部と接触して第2の電極層109の抵抗を低減する役割を担うため、低い抵抗率が求められる。具体的には、3×10−4Ω・m以下、より望ましくは1×10−4Ω・m以下、更に望ましくは、5×10−5Ω・m以下の抵抗率であることが好ましい。
【0088】
このように、抵抗率の低い導電層114を第2の基板112側に形成することにより、有機EL層108へのエッチング処理や加熱処理による影響を考慮することなく、導電層114を形成できる。このため、導電層114を第1の基板102側に形成(つまり、第2の電極層109に接して形成)する場合と比較して、より抵抗率の低い良質な導電層114を形成できるだけでなく、処理時間の短縮や歩留まりの向上といった効果も見込める。
【0089】
なお、図1(B)では、導電層114は封止材130より内側のみに形成されているが、封止材130の外側まで繋がっていてもよい。
【0090】
以上の工程により、第2の基板112上に導電層114を有する、封止基板120が形成される。
【0091】
次に、ベース基板110上の、有機EL層108が形成された領域よりも基板端部側に、有機EL層108を囲む状態に封止材130を形成する(図3(C)参照)。なお、本実施の形態では、ベース基板110に封止材130を形成したが、封止基板120に封止材130を形成する、又はベース基板110と封止基板120両側に形成してもよい。また、本実施の形態では、有機EL層108を囲む封止材130は1本であるが、複数本形成してもよい。複数本形成することにより、外部からの水分や酸素の侵入を効果的に抑制できるため、長寿命な発光素子を作製できる。
【0092】
封止材130としては、例えば、紫外線硬化型接着剤など光硬化型の接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、または嫌気型接着剤など各種硬化型接着剤を用いればよい。発光装置150に使用される各種材料への影響や生産性を考慮すると、高温状態での硬化処理が不要であり、短時間にて接着剤が硬化する光硬化型接着剤を用いることが好ましい。また、封止材130は、スペーサ材料を含んでいてもよい。
【0093】
封止材130は、例えば、フレキソ印刷装置、オフセット印刷装置、グラビア印刷装置、スクリーン印刷装置、インクジェット装置、ディスペンサー装置などの各種印刷装置を用いた印刷法により形成すればよい。
【0094】
次に、ベース基板110の第2の電極層109形成面と封止基板120の導電層114形成面を対向状態に貼り合わせた後、封止材130に対して使用材料に応じた最適な硬化処理を行い、有機EL層108を封止する(図3(D)参照)。
【0095】
なお、上記封止処理は、減圧状態又は窒素などの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。これにより、ベース基板110、封止基板120及び封止材130により囲まれた空間は、減圧状態又は不活性ガスに満たされた状態となるため、有機EL層108の劣化が抑制できる。
【0096】
以上の工程により、開示する発明の一態様に係るトップエミッション構造の発光装置150を形成できる。
【0097】
<本実施の形態における発光装置の効果>
上述の工程により形成されたトップエミッション構造の発光装置150は、図3(D)のY部分(点線丸部分)において、第2の電極層109と導電層114が接触している。このため、外部電源(図示しない)を第1の電極層104及び第2の電極層109に接続して電流を流した場合、Y部分を介して導電層114にも電流が流れ、導電層114は補助配線としての機能を果たす。このため、発光装置150の消費電力を低減できる。
【0098】
なお、Y部分は、図4に示すように第1の基板102上に形成する構造体106のレイアウトを変更することにより、形状を自由に変更できる。このため、例えば図4(B)のように構造体106を配することにより、第2の電極層109と導電層114は碁盤の目状に接触し、基板面内における抵抗値のバラツキを低減できる。このため、発光装置150の発光ムラを抑制できる。
【0099】
また、有機EL層108の発光の際に生じた熱は、第1の電極層104及び構造体106を介して第1の基板102に伝導されるため、第1の基板102として熱伝導率の高い基板を用いることにより、発光の際に生じた熱を効率良く外部に放出することができる。このため、熱による有機EL層108の劣化が抑制され、発光装置150を長寿命化できる。
【0100】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1にて作製した発光装置の構造において、構造体106の形成場所が異なる構成について、図5乃至図6を用いて説明する。なお、以下に説明する発明の構成において、実施の形態1と同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0101】
<本実施の形態における発光装置の構成>
図5は、本実施の形態の方法を用いて作製された発光装置の構成の一例を示す図であり、図5(A)は発光装置550の上面概略図であり、図5(B)は図5(A)の一点鎖線部A−A’、B−B’、C−C’の断面概略図である。なお、明瞭化のため、図5(A)には第2の基板112及び導電層114は明示していない。
【0102】
図5に示す発光装置550は、第1の基板102と、第1の基板102上に形成された構造体106と、第1の基板102上及び構造体106上に形成された第1の電極層104と、第1の電極層104上に形成された有機EL層108と、有機EL層108上に形成された第2の電極層109とを有するベース基板110及び、第2の基板112と、第2の基板112上に形成された導電層114とを有する封止基板120を備え、ベース基板110と封止基板120は封止材130により接着されている。
【0103】
<本実施の形態における発光装置の作製方法>
発光装置550の作製方法について、図6を用いて以下の文章にて説明する。
【0104】
まず、第1の基板102上に、構造体106を形成する(図6(A)参照)。
【0105】
第1の基板102及び構造体106の材質、形成方法及び特徴については、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0106】
次に、第1の基板102上及び構造体106上に、第1の電極層104を形成する。(図6(B)参照)。
【0107】
第1の電極層104の材質、形成方法及び特徴については、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0108】
以降の工程については、実施の形態1の記載と同様に、第1の基板102上及び第1の電極層104上に絶縁物107を形成し、第1の電極層104上及び絶縁物107上に有機EL層108を形成し、第1の基板102、絶縁物107及び有機EL層108上に第2の電極層109を形成してベース基板110を作製し、第2の基板112上に導電層114を形成して封止基板120を形成し、ベース基板110と封止基板120を封止材130で封止することにより、開示する発明の一態様に係るトップエミッション構造の発光装置550を形成できる(図6(C)参照)。
【0109】
なお、各構成要素の詳細な説明については、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0110】
<本実施の形態における発光装置の効果>
上述の工程により形成されたトップエミッション構造の発光装置550は、実施の形態1にて説明した発光装置150と同様に、消費電力の低減、発光ムラの抑制、熱による有機EL層108の劣化を抑制といった効果がある。また、構造体106が第1の電極層104の下に形成された構造であるため、発光装置150と比較して有機EL層108の発光面積が広くなるという利点を有している。したがって、発光装置550は発光装置150と比較して更に消費電力を低減できる。加えて、構造体106は第1の電極層104に覆われており、その上に有機EL層108が形成されるため、仮に、構造体106に有機EL層108を劣化させる不純物(例えば水分など)が含まれていても、有機EL層108への不純物の侵入を第1の電極層104により防止することができる。したがって、長期間に渡って輝度劣化の少なく信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0111】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1にて作製した発光装置の構造において、構造体106の形状が異なる構成について、図7乃至図9を用いて説明する。なお、以下に説明する発明の構成において、実施の形態1と同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0112】
<本実施の形態における発光装置の構成>
図7は、本実施の形態の方法を用いて作製された発光装置の構成の一例を示す図であり、図7(A)は発光装置750の上面概略図であり、図7(B)は図7(A)の一点鎖線部A−A’、B−B’、C−C’の断面概略図である。なお、明瞭化のため、図7(A)にはEL層108及び第2の電極層109は明示していない。
【0113】
図7に示す発光装置750は、第1の基板102と、第1の電極層104と、絶縁物107と、構造体106と、有機EL層108と、第2の電極層109とを有するベース基板110ならびに、第2の基板112と、導電層114とを有する封止基板120を備えている。
【0114】
構造体106は、絶縁性の材料で構成され、絶縁物107上の一部に形成される。本実施の形態における構造体106は、その上部がせり出した形状を有している。言い換えると、構造体106は、上面である有機EL層108との接触面よりも、底面である絶縁物107との接触面の方が面積が狭い状態になっており、上面側から見た際に、底面が上面に隠れる状態に形成されている。
【0115】
このような形状の構造体106を設けることにより、後に説明する方法で有機EL層108を形成した場合、有機EL層108は構造体106によって膜が分断された状態となる。
【0116】
図7(B)のB−B’部における有機EL層108は、構造体106により電気的に分断されている。また、第2の電極層109は、構造体106の側壁部に薄く形成されているため、電気的に繋がっている。
【0117】
<本実施の形態における発光装置の作製方法>
発光装置750の作製方法について、図8及び図9を用いて以下の文章にて説明する。
【0118】
まず、第1の基板102上に第1の電極層104を形成した後に、第1の基板102及び第1の電極層104上の一部に絶縁物107を形成する(図8(A)参照)。
【0119】
第1の基板102、第1の電極層104及び絶縁物107の材質、形成方法及び特徴などについては、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0120】
次に、第1の基板102、第1の電極層104及び絶縁物107上に絶縁材料140を形成した後、絶縁材料140上の一部にレジストマスク142を形成する(図8(B)参照)。
【0121】
絶縁材料140としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂を用いることができる。また、塗布後に熱処理を行うことにより無機膜を形成する、所謂塗布珪素酸化膜(Spin on Glass、以下「SOG」ともいう)や、熱処理によりシロキサン結合を形成するシロキサンポリマーなどの材料を用いてもよい。
【0122】
絶縁材料140の形成方法としては、スピンコート法、印刷法又はインクジェット法等により第1の基板102、第1の電極層104及び絶縁物107上に上記材料を形成した後に、加熱などの硬化処理を材料に合わせて適宜行えばよい。なお、第1の基板102として各種プラスチック基板を用いた場合は、第1の基板102に変形が生じない条件範囲で硬化処理を行う必要がある。
【0123】
レジストマスク142に使用する材料に特に限定はなく、後の工程にて行うエッチング処理に使用する溶剤の種類に合わせ、適宜市販のレジスト剤などを用いればよい。
【0124】
レジストマスク142の形成方法として、フォトマスクを用いるフォトリソグラフィー法や液滴吐出法を用いることができる。液滴吐出法を用いる場合、フォトマスクを設けることなく直接レジストマスクを形成できるため、工程数を削減できる。なお、液滴吐出法とは、流動体である構成物形成材料を含む組成物を、液滴として吐出(噴出)し、所望のパターン形状に形成する方法をいうものとする。構成物の被形成領域に、構成物形成材料を含む液滴を吐出し、焼成、乾燥等を行って固定化し所望なパターンの構成物を形成する。
【0125】
次に、絶縁材料140に対してエッチング処理を行い構造体106を形成した後に、レジストマスク142を除去する(図8(C)参照)。
【0126】
図8(C)のように絶縁材料140を逆テーパー型にエッチングするためには、例えば、ネガ型の感光性を有する有機樹脂を絶縁材料140として用い、光の強度が膜厚方向に第1の基板102に近い程弱くなるように露光した後に現像を行うことにより、該形状とすることができる。
【0127】
その他の方法としては、例えば図10に示すように、第1の基板102、第1の電極層104及び絶縁物107上に犠牲層144を形成した後に一部を除去し、構造体106を形成するための開口部146を形成し(図10(A)参照)、開口部146に構造体106を形成し(図10(B)参照)、犠牲層144を除去することにより構造体106が露出されればよい(図10(C)参照)。犠牲層144としては、例えばアルミニウムを用い、構造体106形成後に、酢酸、硝酸及び燐酸の混合液によりアルミニウムを溶解すればよい。構造体106の形成材料として、上述の混合液に対するエッチング耐性の高い材料(例えば、ポリイミドなど)を用いることにより、図10(C)のような逆テーパー状の構造体106を形成できる。
【0128】
次に、第1の電極層104、構造体106及び絶縁物107上に有機EL層108を形成する(図8(D)参照)。有機EL層108の材料や形成方法については実施の形態1と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0129】
有機EL層108は、実施の形態1にて記載したとおり、真空蒸着法を用いて形成すればよい。真空蒸着法は付き回りが悪く(回り込みが悪いとも表現される。)、有機EL層108は構造体106上及び第1の電極層104の表面にはよく成膜されるが、構造体106の側面には成膜されにくいため、図8(D)のように形成時において構造体106の端部にて有機EL層108に膜切れが生じる。特に、本実施の形態のように、構造体106の側面を逆テーパー型とすることにより、更に膜切れが生じやすくなる。
【0130】
次に、第1の基板102、絶縁物107及び有機EL層108上に第2の電極層109を形成する(図9(A)参照)。第2の電極層109の材料や形成方法については実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0131】
第2の電極層109の形成方法として用いるスパッタリング法やイオンプレーティング法などの物理的蒸着法は、テーパー部分へも成膜されやすい(所謂、付き回り性が良い)ため、図9(A)のように、構造体106の側面にも第2の電極層109が形成される。これにより、第2の電極層109は形成面全体が電気的に繋がっている。
【0132】
以上の工程により、第1の基板102上に、第1の電極層104、構造体106、絶縁物107、有機EL層108、第2の電極層109を有する、ベース基板110が形成される。
【0133】
以降の工程については、実施の形態1の記載と同様に、第2の基板112上に導電層114を形成して封止基板120を形成し、ベース基板110と封止基板120を封止材130で封止することにより、開示する発明の一態様に係るトップエミッション構造の発光装置750を形成できる(図9(B)参照)。
【0134】
<本実施の形態における発光装置の効果>
上述の工程により形成されたトップエミッション構造の発光装置750は、第2の電極層109と導電層114の接触部に形成された有機EL層108が、第1の電極層104と第2の電極層109に挟まれた有機EL層108(つまり発光部分)とは切り離されているため、例えば図11(A)のように、ベース基板110と封止基板120の封止作業の際に発光部分に細かなパーティクル等の異物が付着し、当該箇所を起点として非発光領域の拡大(所謂、シュリンク現象)が生じた場合においても、非発光領域の拡大は構造体106部分で停止する。また、図11(B)のように第2の電極層109と導電層114の接触部にパーティクル等の異物が付着した場合は、異物が封止基板120に押されて第2の電極層109や有機EL層108にダメージを与えるが、この部分の有機EL層108は発光部分と分離されているため、異物を起点とした非発光領域の拡大を抑制できる。したがって、発光装置750は発光装置150と比較して長寿命化でき、信頼性を高めることができる。
【0135】
(実施の形態4)
本明細書に開示する発光装置は、照明機器や電子機器に適用することができる。一例として、本明細書に開示する発光装置を天井や壁に貼り付けて用いることにより、図12のように照明機器1200及び照明機器1202として用いることができる。また、本明細書に開示する発光装置を壁などに複数枚貼り付け、表示及び非表示を選択することにより、デジタルサイネージなどの表示装置1204として用いることができる。
【0136】
なお、表示装置1204として用いる場合、赤色、青色、緑色それぞれの発光を呈する発光装置を隣接して並べたものを1ユニットとして、該ユニットを隣接して複数並べることにより、フルカラーの表示装置として用いることもできる。
【0137】
本明細書に開示する発光装置を、上述の照明機器1200及び1202や、表示装置1204として用いることにより、低消費電力化及び長寿命化が可能となり、また、発光ムラの少ない綺麗な照射状態および表示画像を提供できる。
【符号の説明】
【0138】
102 第1の基板
104 第1の電極層
106 構造体
107 絶縁物
108 有機EL層
109 第2の電極層
110 ベース基板
112 第2の基板
114 導電層
120 封止基板
130 封止材
140 絶縁材料
142 レジストマスク
144 犠牲層
146 開口部
150 発光装置
550 発光装置
750 発光装置
1200 照明機器
1202 照明機器
1204 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に第1の電極層と、
前記第1の電極層上の有機EL層と、
前記有機EL層上の第2の電極層と、
前記第2の電極層を部分的に隆起させるように、前記第1の電極層と前記有機EL層の間に設けられた凸状の構造体を備えるベース基板と、
第2の基板上に導電層を備える封止基板が、貼り合わされた構造であり、
前記導電層は前記第2の電極層より抵抗率が低く、
前記構造体と重畳する前記第2の電極層は少なくとも一部で前記導電層と接触して電気的に接続され、
前記ベース基板の前記第2の電極層形成面と、前記封止基板の前記導電層形成面が対向状態に貼り合わされていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第1の基板上に第1の電極層と、
前記第1の電極層上の有機EL層と、
前記有機EL層上の第2の電極層と、
前記第2の電極層を部分的に隆起させるように、前記第1の基板と前記第1の電極層の間に設けられた凸状の構造体を備えるベース基板と、
第2の基板上に導電層を備える封止基板が、貼り合わされた構造であり、
前記導電層は前記第2の電極層より抵抗率が低く、
前記構造体と重畳する前記第2の電極層は少なくとも一部で前記導電層と接触して電気的に接続され、
前記ベース基板の前記第2の電極層形成面と、前記封止基板の前記導電層形成面が対向状態に貼り合わされていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記導電層は、金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、コバルト、又はこれらの合金からなる微細金属線、カーボンナノチューブ、微細金属粒子又は微細金属粒子の結合体を有し、
前記導電層が60%以上の可視光透過率を有している、請求項1また請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記導電層は、金、白金、銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、コバルト、クロム、タングステン、モリブデン又はこれらを主成分とする合金材料のいずれか一以上の単層膜または積層膜であり、
前記導電層が60%以上の可視光透過率を有している、請求項1また請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記導電層の抵抗率が3×10−4Ω・m以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2の電極層と前記導電層の接触部分が線状に形成される、請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1の基板として、熱伝導率が10W・m−1・K−1以上の材料で形成される、請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1の基板は、前記構造体形成面とは異なる面に凹凸が形成されている、請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−182129(P2012−182129A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25877(P2012−25877)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】