説明

発光装置

【課題】蛍光体による波長変換光を用いて、効率よく混合光を放出可能な発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、放出光を放出可能な光源10と、第1の蛍光体層14と、導光路50と、を有する。前記第1の蛍光体層は、少なくとも第1の面30aおよび前記第1の面とは反対側の第2の面30bを含み、導光方向に延在し、前記放出光を吸収し前記放出光の波長よりも長い波長を有する第1の波長変換光Gyを放出可能とされる。前記導光路は、反射体40を有し、前記放出光の入射面50aと、前記第1の蛍光体層の前記第1の面に接触し、前記反射体の表面に設けられた反射面と、前記第1の蛍光体層とは離間して設けられた出射面50bと、を含む。また、前記反射面および前記出射面は、前記導光方向に延在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外光〜可視光波長範囲の放出光と、この放出光を吸収した蛍光体粒子が放出する波長変換光と、を混合すると、例えば白色光や電球色を得ることができる。
【0003】
このような発光装置として、例えば、蛍光体粒子が混合され透明樹脂を含む封止層で窒化物系発光素子のチップを覆うSMD(Surface Mounted Device:表面実装デバイス)型構造がある。
【0004】
SMD型発光装置では、蛍光体含有封止層が発光素子を覆っている。発光素子からの青色光の一部は、蛍光体粒子を励起し波長変換光である黄色光を放出する。青色光の他の部分は、封止層中を透過するか、または散乱される。黄色光と、青色光と、が混合されると、擬似白色光となる。擬似白色光は、あらゆる方向に放出される。このうち、チップが接着された実装部材側へ向かう光を、光取り出し方向に向かって十分に反射することは困難である。この結果、発光装置の内部で生じた多重反射により光損失を生じる。このように、蛍光体含有封止層が発光素子を覆う構造では、光源の効率(efficacy:単位lm/W)を高めるのに限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3434726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光体による波長変換光を用いて、効率よく混合光を放出可能な発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態にかかる発光装置は、放出光を放出可能な光源と、第1の蛍光多層と、導光路と、を有する。前記第1の蛍光体層は、少なくとも第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を含み、導光方向に延在し、前記放出光を吸収し前記放出光の波長よりも長い波長を有する第1の波長変換光を放出可能である。前記導光路は、反射体を有し、前記放出光の入射面と、前記第1の蛍光体層の前記第1の面に接触し前記反射体の表面に設けられた反射面と、前記第1の蛍光体層とは離間して設けられた出射面と、を含む。また、前記反射面および前記出射面は、前記導光方向に延在する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は第1の実施形態にかかる発光装置の模式斜視図、図1(b)はA−A線に沿った模式断面図、である。
【図2】参考例にかかる発光装置の模式断面図である。
【図3】温度に対する黄色蛍光体の相対発光強度の依存性を表すグラフ図である。
【図4】第2の実施形態にかかる発光装置の模式斜視図である。
【図5】図5(a)は第2の実施形態にかかる発光装置のB−B線に沿った模式断面図、図5(b)はその変形例の模式断面図。である。
【図6】波長に対する青色蛍光体の相対励起強度を示すグラフ図である。
【図7】第3の実施形態にかかる発光装置の導光路の模式斜視図である。
【図8】第4の実施形態にかかる発光装置の模式図である。
【図9】図9(a)は第5の実施形態にかかる発光装置の模式平面図、図9(b)はD−D線に沿った模式断面図、である。
【図10】本実施形態の発光装置を用いたフォグランプの模式斜視図である。
【図11】本実施形態の発光装置を用いた電球の模式図である。
【図12】本実施形態の発光装置を用いた街路灯の模式断面図である。
【図13】図13(a)は第6の実施形態にかかる模式斜視図、図13(b)はE−線に沿った模式断面図、図13(c)は配光特性のグラフ図、である。
【図14】比較例にかかる発光装置の模式斜視図である。
【図15】図15(a)は、第6の実施形態の変形例にかかる発光装置の模式斜視図、図15(b)はF−F線に沿った模式断面図、図15(c)は配光特性のグラフ図、である。
【図16】図16(a)は第7の実施形態にかかる発光装置の模式斜視図、図16(b)はH−H線に沿った模式断面図、図16(c)は配光特性のグラフ図、である。
【図17】図17(a)は第7の実施形態の発光装置をLCD−BLUに応用した輝度分布、図17(b)はCCFLをLCD−BLUに応用した輝度分布、を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1(a)は第1の実施形態にかかる発光装置の模式斜視図、図1(b)はA−A線に沿った模式断面図、である。
発光装置5は、光源10と、光源10から離間して設けられた導光路50と、第1の蛍光体層14と、を有する。
【0010】
光源10は、導光路50の入射面50aへ放出光10aを入射する。光源10として、例えば、紫外光〜可視光波長範囲の放出光10aを放出可能な窒化物系半導体材料からなるLED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)を用いることができる。LDの場合、発光点のサイズは10μm以下、放出光10aの垂直方向半値全角は30度、水平方向半値全角は10度などと狭くでき、鋭いビームとすることが容易である。このため、数mm径のレンズ18を用いて集光し、導光路50へ確実に入射することが容易となる。なお、本図では、LDチップをCAN型パッケージに実装した例を示しているが、パッケージはこれに限定されない。
【0011】
導光路50は、反射体40を有し、放出光10aの入射面50aと、反射体40の内面にそれぞれ設けられた反射面40a、40b、40cと、出射面50bと、を少なくとも含む。導光路50の反射面40a、40b、40cおよび出射面50bは導光方向60に延在する。また、導光路50が、少なくとも第1の面30aおよび第2の面30bを含む導光体30を有するものとすると、より確実に放出光10aを導光路50へ導入できる。導光体30は、透過性材料からなり、例えば、透明樹脂やガラスなどを用いる。または、空気層でもよい。なお、図1(a)では、反射体40のうち、反射面40bの側の下部は省略(破線の部分)してある。
【0012】
例えば、導光体30の幅Wは1.5mm、高さHは1.5mm、とすることができる。また、導光方向60に沿った導光路50の長さは、例えば60mmとすることができる。このように、第1の蛍光体層14を導光方向60に沿って延在させると、離間した光源10からの光密度が低下され、蛍光体が飽和することが抑制できる。導光路50の形状は直方体に限定されない。なお、入射面50aは、導光体30の光源10と対向する面と定義する。もし、導光体30が空気層の場合でもこれと同一の位置で表すものとする。
【0013】
反射体40をアルミニウムなどの金属材料とし、その表面を鏡面とすると反射面40a、40b、40cとなる。また、反射率が低い材料に反射シートを貼り付けて反射体40としてもよい。
【0014】
第1の蛍光体層14は、導光体30の入射面50aより入射し、導光体30内を入射面50aの対向面側に向けて、それぞれ異なる角度で導光する入射光G1〜G5を吸収し、放出光10aの波長よりも長い波長を有する第1の波長変換光Gyを放出可能なものとする。放出光10aの波長が、紫外光〜青色波長範囲にある場合、第1の蛍光体層14は、珪酸塩系の黄色蛍光体粒子を含むものとすることができる。第1の蛍光体層14の第1の面14aは、例えば反射面40a、40b、40cに接触または近接して導光方向60に沿って設けられる。第1の蛍光体層14は、蛍光体粒子を透明樹脂やガラスなどに分散して反射体40の内面に塗布し、硬化することにより形成することができる。
【0015】
また、蛍光体粒子を反射面40a、40b、40cに直接塗布または印刷により設けても良い。この場合、蛍光体粒子の間にわずかな隙間を生じ、反射面40a、40b、40cが隙間から露出していても第1の蛍光体層14と呼ぶことにする。
【0016】
なお、図1(b)では、出射面50bは、導光体30の第2の面30bを示すものとする。もし、導光体30が空気層の場合でも、反射体40の上端を含む面のうち、第1の蛍光体層14と接触せず、放出光10aや第1の波長変換光Gyが通過可能な面を出射面と呼ぶものとする。すなわち、第1の蛍光体層14は、出射面50bとは離間しつつ、導光方向60に延在するように設けられる。
【0017】
次に、図1(a)において、導光路50の作用について説明する。光源10からの放出光10aが入射面50aから導入される。導光体30内に導入された入射光G1、G2、G3は、導光体30の第1の面30aに設けられたV溝31により反射され出射面50bから外部に出射する。この場合、V溝31の形状および間隔を適正に選択すると、出射される放出光の強度分布を制御できる。
【0018】
また、導入された入射光G4、G5は、反射を繰り返しながら導光方向60に沿って進行する。すなわち、第2の面30bでは導光体30と外部との界面において全反射などによりされる。また、第1の面30aでは導光体30により反射されるか、または反射面40a、40b、40cにより反射される。
【0019】
導光体30の屈折率と、第1の蛍光体層14と、の屈折率の差を低減すると、界面での反射が低減され入射光G4、G5が第1の蛍光体層14に入射しやすくなる。入射光G4、G5の一部は第1の蛍光体層14を励起し、第1の波長変換光Gyを生成する。第1の波長変換光Gyは、第1の蛍光体層14から放出され、反射体40を介さずに導光体30を通過し出射面50bから放出される成分と、反射体40により反射され第1の蛍光体層14および導光体30を通過し出射面50bから放出される成分と、を有する。これらの第1の波長変換光Gyは、合成され、出射面50b上では導光方向60沿って均一に分布するようにできる。
【0020】
入射光G4、G5のうち励起に寄与しない光は反射面40aで反射され、導光方向60に沿ってさらに進む。なお、放出光10aは、反射面40b、40cの間でも反射を繰り返しながら導光方向60に沿って進むことができ、直接出射するか、または第1の蛍光体層14を励起する。
【0021】
放出光10aが波長450nmの青色光、第1の蛍光体層14が珪酸塩系材料である黄色蛍光体、であるものとすると、第1の波長変換光Gyは波長が560nm近傍の黄色光とすることができる。この結果、発光装置5は、出射面50bから、青色光Gbと黄色光Gyを放出し、これらの混合光として、例えば擬似白色光を放出可能な線状光源となる。
【0022】
図2は、参考例にかかる発光装置の模式断面図である。
発光装置は、光源110と、黄色蛍光体層114と、導光路150と、導光体130と、を有する。導光路150は、反射体140を有し、放出光の入射面150aと、反射体140の表面にそれぞれ設けられた反射面140a、140b、140cと、出射面150bと、を含む。また、反射面140a、140b、140cおよび出射面150bは第1の方向160に延在する。
【0023】
導光体130の3つの面は、反射面140a、140b、140cにそれぞれ接触している。また、導光体130の他の1つの面には、黄色蛍光体層114が接触して設けられている。黄色蛍光体層114の上面は、出射面150bとされる。導光体130の下面にはV溝131が設けられ、光源110からの放出光を出射面150bへ向かって反射可能である。
【0024】
光源110からの放出光の照射により励起された黄色蛍光体層114は、波長変換光である黄色光を放出する。このうち、上方へ向かう光をgy1、下方へ向かう光をgy2とする。黄色光gy1、gy2は、光源10からの放出光よりも広がりやすい。蛍光体層114と、反射体140と、が離間しているため、下方に向かって広がった黄色光gy2は、反射面140aで反射されたのち上方に進みつつさらに広がる。
【0025】
このように、第1の方向160および第1の方向160と直交する面内で広がった光は、導光路150内で多重反射を生じやすくなる。例えば、導光体130と空気との界面において、フレネル反射を繰り返すにつれて光が減衰する。また、反射面140で反射された光も、多重反射を生じ光が減衰する。すなわち、フレネル反射を含む多重反射により、導光路150内で光損失が増大する。
【0026】
これに対して本実施形態では、第1の蛍光体層14の第1の面14aは、反射面40a、40b、40cに接触して設けられる。第1の蛍光体層14の厚さは、導光路50の高さHに比べて小さくすることができる。例えば、導光体30の高さHが1.5mmである場合、第1の蛍光体層14の厚さを0.2mmなどとすることができる。すなわち、薄い第1の蛍光体層14が、出射面50bとは反対の側となる反射面40a、40b、40cに接触して設けられている。このため、反射面40aに当たって反射された第1の波長変換光Gyの成分の広がりを低減し、直接放出される波長変換光Gyの成分の広がりに近づけることができる。このようにして、波長変換光Gyの広がりが抑制されるので、多重反射による光損失が低減され、擬似白色光を含む混合光が効率よく放出される。第1の蛍光体層14は、波長変換光Gyが反射面から放出されるように作用する本実施形態は、反射型の蛍光体励起方式と言うことができる。
【0027】
図3は、温度に対する黄色蛍光体の相対発光強度の依存性を表すグラフ図である。
縦軸は0℃の発光強度を1とした相対発光強度、横軸は温度(℃)、である。黄色蛍光体は、珪酸塩系蛍光体であるものとする。相対発光強度は、100℃で略0.8、140℃で略0.4と低下する。すなわち、黄色蛍光体は、温度消光を生じている。例えば、SMD型発光装置の場合、蛍光体層は発光素子チップを覆うように設けられているので温度上昇が大きく、温度消光を生じる問題がある。
【0028】
これに対して、本実施形態では、第1の蛍光体層14は、発光素子10と離間しているので温度上昇が抑制される。さらに、第1の蛍光体層14が励起光を吸収しても、導光方向60に延在する反射体40を介して放熱が容易である。これらのために、温度消光が抑制され、高い発光強度を保つことが容易となる。
【0029】
図4は、第2の実施形態にかかる発光装置の模式斜視図である。
光源10として、波長が405nm近傍の青紫色の放出光10aを放出可能な窒化物系半導体材料からなるLEDやLDを用いる。
【0030】
なお、本明細書において、「青紫色」とは、365nm以上410nmよりも短い(未満の)波長範囲、「青色」とは、410nm以上480nm以下の波長範囲、「黄色」とは、540以上570nm以下の波長範囲、と定義する。
【0031】
発光装置5は、第1の蛍光体層14を覆うように設けられた第2の蛍光体層16をさらに有する。第2の蛍光体層16は、放出光10aを吸収し放出光10aの波長である青紫色よりも長く、かつ第1の波長変換光Gyの波長よりも短い第2の波長変換光Gbを放出可能な青色蛍光体を含む。
【0032】
図5(a)は第2の実施形態にかかる発光装置のB−B線に沿った模式断面図、図5(b)は変形例の模式断面図、である。
図5(a)では、第2の蛍光体層16は、導光体30の側面の全面にわたって設けられている。また、図5(b)では、第2の蛍光体層16は、導光体30の第2の面30bに接触した面を第1の面、第2の蛍光体層16の裏面を第2の面(出射面50b)、とする。さらに、出射面50bは、第1の蛍光体層14とは離間している領域(幅W)とする。
【0033】
図6は、波長に対する青色蛍光体の相対励起強度を示すグラフ図である。
縦軸は相対励起強度、横軸は波長(nm)を表す。発光波長が405nmの放出光により励起され、発光スペクトルのピークが450nm近傍にある青色蛍光体として、例えばアパタイトからなる材料を用いることができる。第1の波長変換光Gyの波長が560nm近傍の黄色光であると、波長560nmにおける青色蛍光体の相対励起強度は略0.05と低い。すなわち、黄色光は、青色蛍光体に吸収されにくく、その光損失が低減できる。
【0034】
図4において、導光体30の入射面50aより入射し、導光体30内をそれぞれ異なる方向に進行する入射光G1〜G5のうち、入射光G1、G2、G3は、導光体30内を進行する過程において、到達した第2の蛍光体層16の一部を照射し、照射領域の蛍光体を励起する。このため、出射面50bから、第2の波長変換光Gbが放出される。
【0035】
他方、入射光の一部(G4、G5)は蛍光体層16の照射領域において、蛍光体の励起に寄与せず反射して蛍光体層16の異なる領域に到達し、到達した入射光G4、G5は、蛍光体を励起もしくは、励起に寄与せず更なる反射の繰り返しにより励起発光領域を増しながら導光方向60に沿って進行する。また、入射光G4、G5の一部は、第1の蛍光体層14を励起し、生じた第1の波長変換光Gyは反射面40aから出射面50bに向かって広がりつつ放出される。もし、第1の蛍光体層14が黄色蛍光体を含み、第2の蛍光体層16が青色蛍光体を含むものとすると、図6に示すように、黄色光が第2の蛍光体層16により吸収される量は少ない。このため、光損失が低減され、効率よく擬似白色光を含む混合光を得ることができる。
【0036】
図7は、第3の実施形態にかかる発光装置の導光路の模式斜視図である。
発光装置は、複数の放出光を導光可能な複数の導光路を含む導光板52を有し、面状光源として用いることができる。導光板52の側面52aへの入射光は、LEDの放出光をレンズで集光してもよいが、LDとすると集光が容易である。
【0037】
図8は第4の実施形態にかかる発光装置の模式図である。
第1の(黄色)蛍光体層14は、反射体40の反射面の上に設けられ、その上に導光板52が設けられている。導光板52の両側の側面52a、52bには、8つの青色LDからなる光源70、71がそれぞれ配置されている。それぞれの放出光は、レンズにより集光され、側面52a、52bに導入される。
【0038】
光源10をLDであると、側面52aから導入された青色光は広がり過ぎず、導光板52の上面に設けられた光学フィルム53により拡散しつつ帯状に進む。下面に向かった青色光の一部は、第1の蛍光体層14により第1の波長変換光である黄色光となり、光学フィルム53の上面から出射する。励起に寄与しない残りの青色光Gbも光学フィルム53の上面から出射し、黄色光との混合光として擬似白色光となる。
【0039】
この場合、光源70aの光軸と、光源71aの光軸と、をC−C線に平行な線と略一致させると、同時点灯により、導光方向60に平行な帯状の擬似白色発光パターンを得ることができる。また70a、71aの側から順次同時点灯を行うことにより、帯状領域M、Nの発光パターンをスキャン点灯することができる。他方、一方の側のLDを点灯すると、左右に2分割され、縦に8分割されたローカルディミング(local dimming:領域別点灯)が可能である。例えば、光源70aを点灯すれば、左上の領域Kのみが点灯される。
【0040】
このようなスキャン点灯やローカルディミングが容易な帯状発光パターンは、配光が広いLED光源では実現困難である。すなわち、LEDの発光面積は、0.5mm×0.5mmと大きいため、集光レンズのサイズが大きくなる。また、光の広がりを抑制するた導光板の形状を加工することが必要になり、価格が上昇する。
【0041】
これに対して、本実施形態では、発光点のサイズが小さいLDを用いることにより、2mm程度の薄い導光板を用いても、高い結合効率でかつ容易に光結合が可能である。すなわち、発光装置の生産性が高く、結果として価格低減が容易となる。
【0042】
図9(a)は第5の実施形態にかかる発光装置の模式平面図、図9(b)はD−D線に沿った模式断面図、である。
導光板52の下面側には第1の蛍光体層が設けられておらず、反射体40のみが配置されている。また、導光板52の側面52aには8つの青色LDからなる光源70、側面52bには8つの光源71、がそれぞれ配置されている。光源70からの青色光は、図9(b)の断面内で集光され、図9(a)の平面内で配光を広げるレンズを通過したのち、側面52aから導入される。8つの光源70がアレイ状に設けられている反射体41aにおいて、光源70の接着領域以外には第1の蛍光体層15aが設けられている。
【0043】
また、8つの光源71がアレイ状に設けられている反射体41bにおいて、光源71の接着領域以外には第1の蛍光体層15bが設けられている。さらに、第1の蛍光体層15cが設けられた反射体41cが側面52c、第1の蛍光体層15dが設けられた反射体41dが側面52d、に近接してそれぞれ設けられている。
【0044】
光源70から放出された青色光は、側面52aから入射し、導光板52内を広がりながら、導光板52の上面から均一に出射し、かつ側面52bからも出射する。側面52bから出射した青色光は、反射体41bに設けられた第1の蛍光体層15bを励起し、波長変換された黄色光が側面52bから導光板52へ入射する。この結果、側面52b側の広い領域で、擬似白色光を生じ、面発光に寄与する。側面52a側でも同様に擬似白色光を得ることができる。
【0045】
もし、光源としてエッジライト型のLEDアレイ光源を用いると、その光出力はLDよりも遙かに小さいために、さらに多数の数を配置することが必要である。このため、反対側からの青色光の吸収損失が増大すると共に、第1の蛍光体層を設ける面積が減少し黄色光を十分には放出できない。
【0046】
これに対して、本実施形態のように青色LDを用いると、反射体41の全面積に対して青色LDの接着面積は小さいので、青色LDによる吸収損失を低減し、第1の蛍光体層の塗布面積を増大することが容易となる。
【0047】
導光板52内を伝搬し側面52cに到達した青色光は、第1の蛍光体層15cを励起し黄色光を生じ、側面52cの側の広い領域に擬似白色光を生じる。また、導光板52内を伝搬し側面52dに到達した青色光は、第1の蛍光体層15dを励起し黄色光を生じ、側面52dの側の広い領域に擬似白色光を生じる。反射体41c、41dには、光源が設けられないので光損失は少ない。
【0048】
このような構造により、導光板52の4つの側面52a、52b、52c、52dから入射した青色光および黄色光が、光学フィルム53を介して出射し、高い効率で擬似白色光を得ることができる。擬似白色光の色度は、導光板52から直接出射する青色成分と、側面の近傍で波長変換された黄色成分と、青色の反射成分と、の混合として求められる。青色LD近傍の色ムラは、その部分の導光板52のパターンを少なくすることで緩和できる。本実施形態では、第1の蛍光体層15は、導光板52の側面だけに塗布するので、その量を低減でき低価格とできる。
【0049】
図10は、本実施形態の発光装置を用いたフォグランプの模式斜視図である。
第1および第2の実施形態のいずれかの線状光源である発光装置5を用いたフォグランプへの応用例である。離間したLEDによるアレイ光源と比較して、粒々感のない効率の良い線状光源とできる。発光装置5は、ランプ灯体80内に配置され、その放出光をレフ82を介してスムーズにビームを照射することができる。前面を透明キャップ81でカバーしたこの構造は、高輝度ヘッドランプにも応用可能である。また、複数の線状光源の配置を変化させることにより、多様な用途のスポットライトに応用可能である。
【0050】
図11は、本実施形態の発光装置を用いた電球の模式図である。
電球は、光源10と、第1の蛍光体層14と、反射体42と、導光体30と、を有する。導光体30は、円筒状の先端を封止したガラス管などからなるものとする。導光体(ガラス管)30の内縁とされる第1の面30aには、第1の(黄色)蛍光体層14が塗布される。第1の蛍光体層14の内側となる第1の面14aは白色の反射体42と接触している。光源10は、青色LDとされる。青色光は、ガラス管の円環状の断面部分に導入され、その中心軸である導光方向61に沿って導光される。
【0051】
この場合、反射面は内側に充填された円柱状の反射体42の表面であり、その表面を取り囲むように第1の蛍光体層14が設けられている。このため、擬似白色光は、導光路30の外縁とされる第2の面30bから、その径方向(360度の全方位)に向かって放射される。このような線状光源を包むように、バルブ87と、口金86と、を設け、フィラメント電球と外形が同一の電球とできる。なお、光源10に青紫色LDを用いる場合、ガラス管の外縁に青色蛍光体を設ければよい。光源にLEDを用い、バルブの内側全面に蛍光体を塗布する構造と比較すると、蛍光体の使用量が低減され、効率を高めることが容易である。
【0052】
図12は、本実施形態の発光装置を用いた街路灯の模式断面図である。
街路灯は、励起用LDアレイなどからなる光源10と、光ファイバ95と、導光板52と、第1の蛍光体層14と、反射体40と、光源10と、放熱部91と、電源94と、を有する。第1の蛍光体層14と接触する反射体40と、導光板52と、からなる光学部は、街路灯の支柱93の上部に設けられる。このため、街路灯の上部は軽量とすることができる。
【0053】
他方、光源10と、放熱部91と、電源94と、は支柱93の下部の内部に設けられる。このため、光源10および電源94の保守が容易である。光源10からの放出光は、レフ92で集光され、レンズおよび光ファイバ95などを介して、導光板52の側面へ導入され、擬似白色光を放出できる。なお、光源10は、LEDアレイやOLED(Organic LED: 有機EL)としてもよい。さらに、支柱93の下部に設けられた光源10からの放出光は、光ファイバを介さず、空中伝搬してもよい。
【0054】
第1〜第5の実施形態において、効率よく、蛍光体を用いて波長変換を行うことが容易な発光装置が提供される。これらの発光装置は、照明装置、表示装置、フォグランプ、電球、街路灯などに用いることができる。
【0055】
図13(a)は第6の実施形態にかかる発光装置の模式斜視図、図13(b)はE−E線に沿った模式断面図、図13(c)は配光特性のグラフ図、である。
発光装置は、青紫〜青色波長範囲からなる光源10と、光源10から離間して設けられた導光路50と、黄色蛍光体からなる第1の蛍光体層14と、を有する。導光路50は、反射体40と導光体30とを含む。また、光源10は、LEDやLDとすることができる。光源10をLDとすると、鋭いビームのために細い線状の導光体30への光結合が容易となる。
【0056】
例えば、導光体30は、直径が2mmの円形断面を有し、長さが600mmのガラス棒とする。導光体30の下面側または側面側となる第1の面30aには、導光体30の幅(直径である2mm)よりも小さい幅である0.2mmの第1の蛍光体層14が設けられ、さらに第1の蛍光体層14の下面には、例えば、第1の蛍光体層14と同じ幅を有する反射体40が設けられている。
【0057】
光源10からの放出光は、導光体30へ入射される。入射光の一部は、第1の蛍光体層14を照射し、第1の波長変換光として黄色光Gyを放出する。放出光および第1の波長変換光は、直接に出射面から出射するか、または第1の蛍光体層14の表面および反射体40で反射されたのち導光体30から出射する。この結果、擬似白色光を放出可能な線状光源を得ることができる。なお、導光体の下面側にV溝を設けてもよい。但し、細い第1の蛍光体層14からの第1の波長変換光と、細い反射体40による反射光と、は広がりながら導光体30の側面で全反射される成分を多く含む。このため、V溝を設けなくとも導光方向60に沿って伝搬することが容易となる。
【0058】
この構造は、第1の蛍光体層14と、反射体40と、の近傍に光吸収体が存在しないので波長変換効率を高くすることが容易である。すなわち、薄い第1の蛍光体層14および反射体40におけるそれぞれの反射率および吸収係数と、蛍光体層の波長変換効率により、発光装置の効率が決まる。
【0059】
図13(b)のように、幅が狭い第1の蛍光体層14から放出された第1の波長変換光は、直接、または反射面で反射されたのち、導光体30の第2の面30bから放出される。第2の面30bは、導光体30となる破線MMよりも上の領域とされる。導光体30は、擬似白色光を放出する細い発光領域に対して、円形の断面形状がコリメートレンズとして機能する。第1の蛍光体層14および反射体40の形状を変化させると、導光方向60に沿って発光分布を制御することができる。また、光軸63から角度θ傾いた方向から見える光度の相対値を表す配光特性は、図13(c)のように急峻となる。
【0060】
図14は、比較例にかかる発光装置の模式斜視図である。
比較例にかかる発光装置は、光源110と、導光体130と、導光体130に沿って設けられた蛍光体層114と、反射体141と、を有する。この場合、配光特性は一方の側に広がったランバート分布したものとなる。配光特性を狭くするには、例えば出射側とは反対の側に、反射体141の表面の凹面鏡141aを含む新たな光学系を設けることが必要となる。例えば、凹面鏡141aの断面を放物線とし、その焦点に発光点を配置すると、集光が容易となる。または、出射面側に集光レンズを含む新たな光学系を設けてもよい。しかしながら、これらの光学系の幅は、導光体130の幅よりも大きくなり、発光装置のサイズが増大する。
【0061】
これに対して、第6の実施形態では、導光体30と集光レンズとを一体化した構造により、発光装置の小型化が容易となる。例えば、導光板の厚さを2.5mmのように薄くしつつ高い入射効率とできる。このような線状光源は、LCD−BLU(液晶ディスプレイ装置のバックライトユニット)などに用いることができる。また、導光体30の幅を狭くすると、導光板の厚さをさらに小さくできる。
【0062】
図15(a)は、第6の実施形態の変形例にかかる発光装置の模式斜視図、図15(b)はF−F線に沿った模式断面図、図15(c)は配光特性のグラフ図、である。
第1の波長変換光は、導光体30の下面側に設けられた放物線断面の曲面により全反射されたのち、上面側の曲面により集光され、導光体30の第2の面30bから放出される。このため、図15(c)のように急峻な配光特性が得られる。
【0063】
図16(a)は第7の実施形態にかかる発光装置の模式斜視図、図16(b)はH−H線に沿った模式断面図、図16(c)は配光特性のグラフ図、である。
第1の蛍光体層14は、2つの領域14a、14bを有している。また、反射体40は、2つの領域40d、40eを有している。導光体30が円形断面を有するものとすると、2つの領域からの第1の波長変換光は、互いに異なる方向にそれぞれ集光される。すなわち、斜め上方などに向かって、導光体30の破線MMよりも上の領域となる第2の面30bからそれぞれ出射する。このため、図16(c)のように、例えば双峰性の配光特性とすることができる。
【0064】
図17(a)は第7の実施形態の発光装置をLCD−BLUに応用した輝度分布、図17(b)はCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp:冷陰極蛍光ランプ)をLCD−BLUに応用した輝度分布、を説明する模式図である。
第7の実施形態の発光装置は、双峰性の配光特性を有しており、バックライトユニット57の厚さT57を小さくしても、拡散板54の上方における輝度分布BD1を均一にできる。他方、CCFL156を用いると、図17(b)のように、発光領域の上方の輝度分布BD2にピークを生じ、拡散板154をCCFL156から離さないと、輝度分布BD2を均一とすることが困難である。すなわち、バックライトユニット157の厚さT157が大きくなる。
【0065】
以上、第6および第7の実施形態およびこれらに付随する変形例によれば、配光制御機能を有し、極めて細い線状光源が実現できる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
5 発光装置、10、70、71 光源、14、14a、14b、15 第1の蛍光体層、16 第2の蛍光体層、30 導光体、31 V溝、40、40d、40e、41、42 反射体、50 導光路、52 導光板、60、61 導光方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出光を放出可能な光源と、
少なくとも第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を含み、導光方向に延在し、前記放出光を吸収し前記放出光の波長よりも長い波長を有する第1の波長変換光を放出可能な第1の蛍光体層と、
反射体を有し、前記放出光の入射面と、前記第1の蛍光体層の前記第1の面に接触し、前記反射体の表面に設けられた反射面と、前記第1の蛍光体層とは離間して設けられた出射面と、を含む導光路であって、前記反射面および前記出射面は前記導光方向に延在した導光路と、
を備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第1の面および第2の面が前記導光方向に延在し、矩形断面を有する導光体をさらに備え、
前記導光体の前記第1の面は、前記第1の蛍光体層の前記第2の面と接触し、
前記導光体の前記第2の面は、前記出射面の側とされたことを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
内縁となる第1の面および外縁となる第2の面が前記導光方向に延在する筒状の導光体をさらに備え、
前記導光体の前記第1の面は、前記第1の蛍光体層の前記第2の面と接触し、
前記導光体の前記第2の面は、前記出射面の側とされ、
前記反射体は、前記第1の蛍光体層の前記第1の面に接触して設けられたことを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項4】
前記放出光の波長は、青色光波長範囲にあり、
前記第1の波長変換光の波長は、黄色光波長範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項5】
第1の面と第2の面とを有する第2の蛍光体層であって、前記放出光を吸収し前記放出光の波長よりも長く前記第1の波長変換光の波長よりも短い波長を有する第2の波長変換光を放出可能な第2の蛍光体層をさらに備え、
前記第2の蛍光体層の前記第1の面は、前記導光体の前記第2の面に接触して設けられ、
前記第2の蛍光体層の前記第2の面は、前記出射面とされ、
前記放出光の波長は、青紫色波長範囲であり、
前記第1の波長変換光の波長は、黄色光波長範囲にあり、
前記第2の波長変換光の波長は、青色光波長範囲にあることを特徴とする請求項2または3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記導光方向に対して直交する断面においてレンズ曲線を有しかつ前記第1の蛍光体層の幅よりも広い幅を有し、前記導光方向に延在する導光体をさらに備え、
前記導光体は、前記第1の波長変換光および前記放出光を集光して前記出射面から放出することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項7】
記第1の蛍光体層は、離間した第1および第2の領域を含み、
前記第1および第2の領域の幅は、前記導光体の前記幅よりもそれぞれ狭く、
前記第1の領域からの波長変換光と、前記第2の領域からの波長変換光と、は前記導光体により、それぞれの方向に集光されることを特徴とする請求項6記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−99362(P2012−99362A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246692(P2010−246692)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】