説明

発光触媒活性を有する融合蛋白質

【課題】幅広い用途に利用できる発光触媒活性を有する物質の提供。
【解決手段】特定の配列で表されるガルシニアルシフェラーゼからなる領域と、特定の配列で表されるイクオリンからなる領域とを含有する、発光触媒活性を有する融合蛋白質、および、その製造方法。該融合蛋白質、または、イクオリン蛋白質とセレンテラジンのペルオキシド又はセレンテラジン誘導体のペルオキシドを用いた発光方法によるカルシウムイオンの検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの発光触媒活性を有する融合蛋白質、それをコードする遺伝子およびそれらの用途に関する。より詳しくは、本発明は、ガウシアルシフェラーゼとカルシウム結合発光蛋白質の変異体との融合蛋白質、それをコードする遺伝子およびそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウム結合発光蛋白質は、アポ蛋白質と、発光基質のペルオキシドとが複合体を形成した状態で存在する発光蛋白質である。カルシウム結合発光蛋白質は、カルシウムイオンと結合すると瞬間的に発光するという性質を有している。
【0003】
カルシウム結合発光蛋白質としては、イクオリン、オべリン、クライチィン、マイトロコミン、ミネオプシン、ベルボインなどが知られている。なかでもイクオリンはカルシウム結合発光蛋白質の代表的なものであり、その高次構造および発光メカニズムなどが詳細に報告されている(例えば、非特許文献1:Inouye et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 3154−3158、非特許文献2:Head et al. (2000) Nature 405, 372−376など参照)。イクオリンのカルシウムイオンに対する感受性は非常に高いので、微量カルシウムイオンの検出・定量や細胞内カルシウムイオンの濃度変化の測定などに利用されている。
【0004】
イクオリンは、アポ蛋白質であるアポイクオリンと、発光基質セレンテラジンのペルオキシドとが複合体を形成した状態で存在している。イクオリンにカルシウムイオンが結合すると、瞬間的な発光を示し、セレンテラジンの酸化物であるセレンテラミドと二酸化炭素を生成する。
【0005】
一方、ガウシアルシフェラーゼは、カイアシに属するガウシアに由来するルシフェラーゼであり、セレンテラジンを基質とする発光触媒活性を有する。ガウシアルシフェラーゼの遺伝子のアミノ酸配列(195アミノ酸)については、すでに報告されている(例えば、特許文献1:国際公開第99/49019号パンフレット)。また、ガウシアと同一種に含まれ、ガウシアルシフェラーゼと相同性を示すメトリデアルシフェラーゼ遺伝子およびアミノ酸配列(219アミノ酸)も、報告されている(例えば、非特許文献3:Markova, S. V. et al. (2004) J. Biol. Chem. 279, 3212−3217)。
【0006】
これらのカルシウム結合発光蛋白質、ルシフェラーゼなどの、発光触媒活性を有する蛋白質は、発光による検出マーカーやレポーター蛋白質などの用途に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/49019号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Inouye et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 3154−3158
【非特許文献2】Head et al. (2000) Nature 405, 372−376
【非特許文献3】Markova, S. V. et al. (2004) J. Biol. Chem. 279, 3212−3217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記状況において、幅広い用途に利用できる発光触媒活性を有する物質が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ガウシアルシフェラーゼと、組換えアポイクオリンとの融合蛋白質を作製し、該融合蛋白質が、ガウシアルシフェラーゼまたはイクオリンを単独で用いる場合よりも、幅広い用途に利用できる発光触媒活性を有する物質であることなどを見出した。これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の融合蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体等を提供する。
【0011】
[1] (1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1の領域:
(a)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および、
(d)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;と、
(2)以下の(e)および(f)からなる群から選択される第2の領域:
(e)配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域、および、
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換したシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域;と、
を含有する融合蛋白質。
[2] (1)第1の領域が、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および、
(d)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択され、
(2)第2の領域が、以下の(e)および(f)からなる群:
(e)配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域、および、
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換システインを除く1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域;
から選択される、上記[1]記載の融合蛋白質。
[3] 第2の領域が、以下の(e)および(f)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域、および、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において、第139番目のシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域;
から選択される、上記[1]記載の融合蛋白質。
[4] 第2の領域が、以下の(e)および(f)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域、および、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において、第139番目のシステインを除く1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域;
から選択される、上記[1]記載の融合蛋白質。
[5] (1)配列番号:2で表される第1のアミノ酸配列からなる領域と、
(2)配列番号:6で表される第2のアミノ酸配列からなる領域
とを含有する、上記[1]記載の融合蛋白質。
[6] さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列および/または精製のためのアミノ酸配列を含有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の融合蛋白質。
[7] 配列番号:8のアミノ酸配列からなる、上記[1]記載の融合蛋白質。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれかに記載の融合蛋白質と、セレンテラジンのペルオキシドまたはセレンテラジン誘導体のペルオキシドとからなるホロ蛋白質。
[9] 上記[1]〜[7]のいずれかに記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
[10] (1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1のコード配列:
(a)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(d)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;と、
(2)以下の(e)〜(g)からなる群から選択される第2のコード配列:
(e)配列番号:3の塩基配列において第1番目〜第3番目のACA、第4番目〜第6番目のTCA、第112番目〜第114番目のTCT、第142番目〜144番目のACA、第220〜第222番目のACT、第298番目〜第300番目のACG、第412番目〜第414番目のTCA、第415番目〜第417番目のTCAおよび第514番目〜第516番目のACCからなる群から選択される少なくとも1つの塩基がTGCまたはTGTと置換した塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(g)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換システインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
とを含有するポリヌクレオチド。
[11] (1)第1のコード配列が、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(d)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;から選択され、
(2)第2のコード配列が、以下の(e)〜(g)からなる群:
(e)配列番号:3の塩基配列において第1番目〜第3番目のACA、第4番目〜第6番目のTCA、第112番目〜第114番目のTCT、第142番目〜144番目のACA、第220〜第222番目のACT、第298番目〜第300番目のACG、第412番目〜第414番目のTCA、第415番目〜第417番目のTCAおよび第514番目〜第516番目のACCからなる群から選択される少なくとも1つの塩基がTGCまたはTGTと置換した塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(g)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換システインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
から選択される、上記[10]に記載のポリヌクレオチド。
[12] 第2のコード配列が、以下の(e)〜(g)からなる群:
(e)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列において第139番目のシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
から選択される、上記[10]記載のポリヌクレオチド。
[13] 配列番号:7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
[14] 上記[9]〜[13]のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
[15] 上記[14]記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
[16] 上記[15]記載の形質転換体を培養し、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の融合蛋白質を生成させる工程を含む、上記[1]〜上記[7]のいずれかに記載の融合蛋白質の製造方法。
[17] 上記[1]〜上記[7]のいずれかに記載の融合蛋白質または上記[8]に記載のホロ蛋白質を含むキット。
[18] 上記[1]〜上記[7]のいずれかに記載の融合蛋白質または上記[8]に記載のホロ蛋白質を含むイムノアッセイ用キット。
[19] 上記[1]〜上記[7]のいずれかに記載の融合蛋白質または上記[8]に記載のホロ蛋白質を使用してカルシウムイオンを検出または定量する方法。
[20] 上記[1]〜上記[7]のいずれかに記載の融合蛋白質または上記[8]に記載のホロ蛋白質を用いたイムノアッセイ法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ガウシアルシフェラーゼまたはイクオリンを単独で用いる場合よりも幅広い用途に利用できる発光触媒活性を有する融合蛋白質を提供する。本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、例えば、イムノアッセイにおいて標的物質を検出するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C発現ベクター(pCold−GL−AQ−S142C)および発現融合蛋白質を示す図である。図1(a)は発現ベクターの概略図であり、図1(b)は発現融合蛋白質のアミノ酸配列の概略図である。
【図2】図2は、精製ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142CのSDS−PAGE分析の結果を示す図である。SDS−PAGE分析は、12%分離ゲルを用いて、95℃にて3分間熱処理後、電気泳動を行うことにより行った。各レーンの試料は次の通りである。レーン1:蛋白質分子量マーカー(テフコ社)としてβ−ガラクトシダーゼ(116,000)、ホスホリパーゼB(97,400)、ウシ血清アルブミン(69,000)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(55,000)、乳酸デヒドロゲナーゼ(36,500)、炭酸脱水素酵素(29,000)、トリプシンインヒビター(20,100)、レーン2:ニッケルキレートカラムからの溶出画分(蛋白質1.05μg)。
【図3】ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C融合蛋白質の、蛋白質量と発光量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
1.本発明の融合蛋白質
本発明の融合蛋白質とは、
配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域および配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を有する領域から選択される第1の領域と、
配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる第2の領域、または配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなり、かつ配列番号:4のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を有する第2の領域とを含有する融合蛋白質を意味する。
【0015】
本明細書中、配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域および配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を有する領域から選択される第1の領域を、「ガウシアルシフェラーゼ」または「GL」と称することがある。また、配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる第2の領域、または配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなり、かつ配列番号:4のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を有する第2の領域を、「組換えアポイクオリン」または「AQ」と称することがある。
【0016】
本発明の融合蛋白質において、第1の領域と第2の領域は、N末端−第1の領域−第2の領域−C末端の順に並んでいても良く、あるいは、N末端−第2の領域−第1の領域−C末端の順に並んでいても良い。好ましくは、N末端−第1の領域−第2の領域−C末端の順である。
【0017】
本発明の融合蛋白質はさらに他のペプチド配列をN末端および/またはC末端、好ましくはN末端に含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、抗体認識可能なエピトープ配列などからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。他のペプチド配列は、好ましくは、精製のためのペプチド配列および/または分泌シグナルペプチド配列である。精製のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、例えば、ヒスチジン残基が4残基以上、好ましくは6残基以上連続したアミノ酸配列を有するヒスチジンタグ配列、グルタチオン S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインのアミノ酸配列またはプロテインAのアミノ酸配列などが挙げられる。分泌シグナルペプチドとは、当該分泌シグナルペプチドに結合された蛋白質またはポリペプチドを、細胞膜透過させる役割を担うペプチド領域を意味する。このような分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列は、当技術分野において周知であり、報告されている(例えばvon Heijine G (1988) Biochim. Biohys. Acra 947: 307−333、von Heijine G (1990) J. Membr. Biol. 115: 195−201など参照)。分泌シグナルペプチドとしては、より具体的には、例えば、大腸菌の外膜蛋白質A由来の分泌シグナルペプチド(OmpA)(Ghrayeb, J. et al. (1984) EMBO J. 3:2437−2442)、コレラ菌由来コレラトキシン由来の分泌シグナルペプチドなどが挙げられる。
【0018】
本発明の融合蛋白質は、さらに、第1の領域と第2の領域の間を結ぶリンカーを含んでいても良い。リンカーの長さは、第1の領域の機能または活性および第2の領域の機能または活性を阻害しない限り特に制限されないが、例えば、アミノ酸1〜15個程度(例えば、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個)である。ここで、「第1の領域の機能または活性」とは、配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を意味する。また、「第2の領域の機能または活性」とは、配列番号:4のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を意味する。リンカーとしては、具体的には、−Leu−Glu−、-Gln−Phe−Met−、−Ser−Leu−Ser−Thr−Pro−Pro−Thr−Pro−Ser−Pro−Ser−Thr−Pro−Pro−、−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−などが挙げられる。好ましくは、−Leu−Glu−である。
【0019】
本発明の融合蛋白質の取得方法については特に制限はない。本発明の融合蛋白質としては、化学合成により合成した融合蛋白質でもよいし、遺伝子組換え技術により作製した組換え融合蛋白質であってもよい。本発明の融合蛋白質を化学合成する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等により合成することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。本発明の融合蛋白質を遺伝子組換え技術により作製する場合には、通常の遺伝子組換え手法により作製することができる。より具体的には、本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)を適当な発現系に導入することにより、本発明の融合蛋白質を作製することができる。本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド、本発明の融合蛋白質の発現系での発現などについては、後記する。
【0020】
(第1の領域)
第1の領域とは、配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域または配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を有する領域を意味する。
【0021】
配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能とは、例えば、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光触媒活性、すなわち、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)が酸素分子で酸化されてオキシルシフェリンが励起状態で生成する反応を触媒する活性、を意味する。なお、励起状態で生成したオキシルシフェリンは可視光を発して基底状態となる。
【0022】
本発明で用いられるルシフェリンとしては、本発明の融合蛋白質または本発明のホロ蛋白質の基質となりうるルシフェリンであればよい。本発明で用いられるルシフェリンとしては、具体的にはセレンテラジン類があげられる。
【0023】
本明細書において、セレンテラジン類とは、セレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体を意味する。セレンテラジン誘導体としては、例えば、h-セレンテラジン、hcp-セレンテラジン、cp-セレンテラジン、f-セレンテラジン、fcp-セレンテラジン、n-セレンテラジン、e-セレンテラジン、i-セレンテラジンch-セレンテラジンなどがあげられる。ルシフェリンを基質とする発光触媒活性もしくは機能は、例えば、後述の実施例に記載の方法などに従って測定することができる。尚、この時、第1の領域の発光触媒活性もしくは機能の測定は、第2の領域に由来する発光が生じるのを避けるため、カルシウムイオンと強く結合するキレート剤の存在下で行うのが好ましい。キレート剤の例として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)N,N,N′,N′−四酢酸(EGTA)、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサンN,N,N′,N′−四酢酸(CyDTA)、又はN−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)等を挙げることができる。
【0024】
第1の領域としては、より具体的には、例えば、
(a)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域;
(b)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつ配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同質の活性もしくは機能を有する領域;
などが挙げられる。
【0025】
本明細書において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997)”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0026】
また、第1の領域としては、例えば、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列と約70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同質の活性もしくは機能を有する領域、
も挙げられる。さらに、第1の領域としては、より具体的には、例えば、配列番号:2のアミノ酸配列と約70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性もしくは機能を有する領域が挙げられる。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)、など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0027】
さらに、第1の領域には、
(d)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同質の活性もしくは機能を有する領域、
も含まれる。
【0028】
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0029】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0030】
本明細書でいう「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0031】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0032】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0033】
(第2の領域)
第2の領域とは、配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域または配列番号:4において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなり、かつ配列番号:4のアミノ酸配列のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を有する領域を意味する。
【0034】
配列番号:4のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能とは、例えば、(i)第2の領域がセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合することができる機能、(ii)第2の領域がセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合して、カルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能、などを意味する。
【0035】
「第2の領域がセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してホロ蛋白質を形成する」とは、(iii)第2の領域が、セレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してホロ蛋白質を形成すること、だけではなく(iv)第2の領域が、酸素存在下に、セレンテラジンもしくはその誘導体と接触することにより、蛋白質とセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドとを含有するホロ蛋白質(複合体)を形成すること、をも意味する。
【0036】
なお、発光の測定は、例えば、Shimomura 0.et al (1988) Biochem. J.251,405-410 およびShimomura 0.et al. Biochem. J. (1989)261, 913-920などに記載の方法によって測定することができる。具体的には、例えば、酸素存在下、前記領域にセレンテラジンもしくはセレンテラジン誘導体を結合させ、ホロ蛋白質を形成する。このとき、第1の領域に由来する発光が生じるのを避けるために、第1の領域を不活性型に変換するのが好ましい。不活性型に変換する方法としては、例えば、還元剤(例えば、メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなど)を添加する方法などが挙げられる。このようにして形成したホロ蛋白質にカルシウム溶液を加えることにより、第2の領域に由来する発光反応を開始させることができる。さらに、発光測定装置を用いて発光活性または発光パターンを測定することができる。発光測定装置としては、市販されている装置、例えば、AB−2200(アトー社製)、Berthold960(ベルトール社製)などを使用することができる。
【0037】
第2の領域としては、より具体的には、例えば、
(e)配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域;
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換したシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ配列番号:4のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同質の活性もしくは機能を有する領域;
などが挙げられる。
【0038】
システインと置換する上記「第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸」の例を以下に示す。
【0039】
(1)第1番目のトレオニン;
(2)第2番目のセリン;
(3)第38番目のセリン;
(4)第48番目のトレオニン;
(5)第74番目のトレオニン;
(6)第100番目のトレオニン;
(7)第138番目のセリン;
(8)第139番目のセリン;
(9)第172番目のトレオニン;
(10)第74番目のトレオニンと第138番目のセリンの2つのアミノ酸;
(11)第48番目のトレオニンと第74番目のトレオニンと第138番目のセリンの3つのアミノ酸;または、
(12)第48番目のトレオニンと第74番目のトレオニンと第100番目のトレオニンと第138番目のセリンの4つのアミノ酸。
【0040】
システインと置換するアミノ酸は、好ましくは、(8)第139番目のセリンである。
【0041】
本発明のいくつかの態様によれば、上記(e)の領域は、配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域である。配列番号:6のアミノ酸配列は、配列番号:4のアミノ酸配列において第139番目のセリンがシステインに置換された配列である。
【0042】
また、本発明のいくつかの態様によれば、上記(f)の領域は、配列番号:6のアミノ酸配列において、第139番目のシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域である。
【0043】
上記「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加した」とは、同一配列中の任意かつ1若しくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味し、欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じても良い。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997)”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0044】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
【0045】
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、o-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸;
E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、トレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0046】
ここで、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。
【0047】
また、「配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換したシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」は、例えば、配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列と、約70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、アミノ酸配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)、など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0048】
(第1の領域と第2の領域の組み合わせ)
本発明の融合蛋白質において、第1の領域と第2の領域の組み合わせの例を以下に示す。
【0049】
(1)第1の領域:上記(a)、および第2の領域:上記(e);
(2)第1の領域:上記(a)、および第2の領域:上記(f);
(3)第1の領域:上記(b)、および第2の領域:上記(e);
(4)第1の領域:上記(b)、および第2の領域:上記(f);
(5)第1の領域:上記(c)、および第2の領域:上記(e);
(6)第1の領域:上記(c)、および第2の領域:上記(f);
(7)第1の領域:上記(d)、および第2の領域:上記(e);または、
(8)第1の領域:上記(d)、および第2の領域:上記(f)。
【0050】
上記組み合わせのうち、(1)第1の領域:上記(a)、および第2の領域:上記(e)の組み合わせが好ましい。
【0051】
本発明の融合蛋白質の具体例としては、例えば、配列番号:8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質などがあげられる。
【0052】
(第2の領域のシステイン)
本発明の融合蛋白質では、第2の領域の配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸に対応するアミノ酸が、システインである。これらのシステインは、第2の領域の分子の表面に位置する。本発明の好ましい態様によれば、この分子の表面に位置するシステインのスルフヒドリル基(−SH)を介して、本発明の融合蛋白質を標的物質に結合することができる。本発明の融合蛋白質と標的物質との結合は、前記システインのスルフヒドリル基を介して、直接的な結合でも良く、あるいは、間接的な結合でも良い。本発明の融合蛋白質を標的物質に間接的に結合する場合、結合は、例えば、ビオチン/ビオチン結合蛋白質(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンなど)系、抗体/抗原系、レセプター/リガンド系などを利用して行うことができる。好ましくは、結合は、ビオチン/ビオチン結合蛋白質系、より好ましくは、ビオチン/ストレプトアビジン系を利用するものである。
【0053】
結合に、ビオチン/ビオチン結合蛋白質系を利用する場合、例えば、本発明の融合蛋白質をビオチンで修飾し、標的物質をビオチン結合蛋白質で修飾し、ビオチン/ビオチン結合蛋白質の複合体を形成させることにより、本発明の融合蛋白質と標的物質を結合することができる。あるいは、本発明の融合蛋白質をビオチンで修飾し、標的物質を認識する抗体をビオチンで修飾し、ビオチン/ビオチン結合物質/ビオチン修飾抗体をリンカーとして、本発明の融合蛋白質と標的物質を結合することもできる。
【0054】
結合に、複合体形成による抗体/抗原系を利用する場合、例えば、本発明の融合蛋白質を抗体で修飾し、標的である抗原と複合体を形成させることにより、本発明の融合蛋白質と標的物質を結合することができる。
【0055】
結合に、複合体形成によるレセプター/リガンド系を利用する場合、例えば、本発明の融合蛋白質をレセプターまたはリガンドで修飾し、標的であるリがントまたはレセプターと複合体を形成させることにより、本発明の融合蛋白質と標的物質を結合することができる。
【0056】
2.本発明のポリヌクレオチド
本発明は、前述した本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明のポリヌクレオチドとしては、本発明の融合蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよいが、好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞・組織由来のcDNA、細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、特に制限はなく、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織からtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドには、
(1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1のコード配列:
(a)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(d)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;と、
(2)以下の(e)〜(j)からなる群から選択される第2のコード配列:
(e)配列番号:3の塩基配列において第1番目〜第3番目のACA、第4番目〜第6番目のTCA、第112番目〜第114番目のTCT、第142番目〜144番目のACA、第220〜第222番目のACT、第298番目〜第300番目のACG、第412番目〜第414番目のTCA、第415番目〜第417番目のTCAおよび第514番目〜第516番目のACCからなる群から選択される少なくとも1つの塩基がTGCまたはTGTと置換した塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(g)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換システインを除く第139番目のアミノ酸を除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
とを含有するポリヌクレオチドなどが含まれる。
【0058】
本発明の好ましい態様によれば、上記(e)のコード配列は、配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドである。配列番号:5の塩基配列は、第415番目〜第417番目のTCAをTGCと置換した塩基配列である。
【0059】
本発明の好ましい態様によれば、上記(f)のコード配列は、配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドである。
【0060】
本発明の好ましい態様によれば、上記(g)のコード配列は、配列番号:6のアミノ酸配列において第139番目のシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドである。
【0061】
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0062】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0063】
本明細書でいう「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0064】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0065】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0066】
あるアミノ酸配列に対して、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有する領域をコードするポリヌクレオチドは、部位特異的変異導入法(例えば、Gotoh, T. et al., Gene 152, 271-275 (1995)、Zoller, M.J., and Smith, M., Methods Enzymol. 100, 468-500 (1983)、Kramer, W. et al., Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、Kramer W, and Fritz H.J., Methods. Enzymol. 154, 350-367 (1987)、Kunkel,T.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488-492 (1985)、Kunkel, Methods Enzymol. 85, 2763-2766 (1988)、など参照)、アンバー変異を利用する方法(例えば、Gapped duplex法、Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、など参照)などを用いることにより得ることができる。
【0067】
また目的の変異(欠失、付加、置換および/または挿入)を導入した配列をそれぞれの5’端に持つ1組のプライマーを用いたPCR(例えば、Ho S. N. et al., Gene 77, 51 (1989)、など参照)によっても、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
【0068】
本発明のポリヌクレオチドにおいて、第1のコード配列と第2のコード配列の組み合わせの例を以下に示す。
(1)第1のコード配列:上記(a)、および第2のコード配列:上記(e);
(2)第1のコード配列:上記(a)、および第2のコード配列:上記(f);
(3)第1のコード配列:上記(a)、および第2のコード配列:上記(g);
(4)第1のコード配列:上記(b)、および第2のコード配列:上記(e);
(5)第1のコード配列:上記(b)、および第2のコード配列:上記(f);
(6)第1のコード配列:上記(b)、および第2のコード配列:上記(g);
(7)第1のコード配列:上記(c)、および第2のコード配列:上記(e);
(8)第1のコード配列:上記(c)、および第2のコード配列:上記(f);
(9)第1のコード配列:上記(c)、および第2のコード配列:上記(g);
(10)第1のコード配列:上記(d)、および第2のコード配列:上記(e);
(11)第1のコード配列:上記(d)、および第2のコード配列:上記(f);または、
(12)第1のコード配列:上記(d)、および第2のコード配列:上記(g)。
【0069】
上記組み合わせのうち、(1)第1のコード配列:上記(a)、および第2のコード配列:上記(e)の組み合わせが好ましい。
【0070】
本発明のポリヌクレオチドは、翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドおよび/または精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを含んでいてもよい。翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。翻訳促進のためのアミノ酸配列としては、前記したものなどが挙げられる。精製のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0071】
本発明のポリヌクレオチドの具体例としては、例えば、配列番号:8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどがあげられる。配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0072】
3.本発明の組換えベクターおよび形質転換体
さらに、本発明は、上述した本発明のポリヌクレオチドを含有する組換えベクターおよび形質転換体を提供する。
【0073】
(1)組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明のポリヌクレオチド(DNA)を連結(挿入)することにより得ることができる。より具体的には、精製されたポリヌクレオチド(DNA)を適当な制限酵素で切断し、適当なベクターの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入して、ベクターに連結することにより得ることができる。本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、動物ウイルス等が挙げられる。プラスミドとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322, pBR325, pUC118, pUC119等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)などがあげられる。バクテリオファージとしては、例えば、λファージなどがあげられる。動物ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルスなど)などがあげられる。
【0074】
また、本発明においては、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)なども好適に使用することができる。これらのベクターを使用して、原核細胞を宿主として発現させた場合、本発明の融合蛋白質を宿主細胞の細胞質中に可溶性タンパク質として産生させることができる。
【0075】
本発明のポリヌクレオチドは、通常、適当なベクター中のプロモーターの下流に、発現可能なように連結される。用いられるプロモーターとしては、形質転換する際の宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、Trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0076】
また、低温で発現誘導可能なプロモーターも好適に使用することができる。低温で発現誘導可能なプロモーター配列とは、宿主細胞を増殖させる培養条件から、温度を下げることによって蛋白質の発現を誘導可能なプロモーター配列を意味する。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、例えば、コールドショック遺伝子のプロモーター配列などが挙げられる。コールドショック遺伝子としては、例えば、大腸菌コールドショック遺伝子(例えば、cspA、cspB、cspG、cspI、csdAなど)、Bacillus caldolyticusコールドショック遺伝子(例えば、Bc−Cspなど)、Salmonella entericaコールドショック遺伝子(例えば、cspEなど)、Erwinia carotovoraコールドショック遺伝子(例えば、cspGなど)などが挙げられる。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、なかでも、例えば、cspAプロモーター、cspBプロモーター、cspGプロモーター、cspIプロモーター、csdAプロモーターなどを好適に使用することができる。
【0077】
低温で発現誘導可能なプロモーターが蛋白質の発現を誘導しうる温度としては、通常30℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、特に好ましくは15℃以下である。ただし、低温にしすぎると発現効率が低下するので、通常は5℃以上、好ましくは10℃以上、特に好ましくは約15℃で発現誘導させる。
【0078】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを作製する場合、本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターとしては、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)などを好適に使用することができる。これらのベクターを使用して、原核細胞を宿主として発現させた場合、本発明の融合蛋白質を宿主細胞の細胞質中に可溶性蛋白質として産生させることができる。
【0079】
本発明の組換えベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、選択マーカーなどを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子などがあげられる。
【0080】
また、本発明の組換えベクターは、翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドおよび/または精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを含んでいてもよい。翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。翻訳促進のためのアミノ酸配列としては、前記したものなどが挙げられる。精製のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0081】
(2)形質転換体の作成
このようにして得られた、本発明のポリヌクレオチド(すなわち、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターを、適当な宿主中に導入することによって、形質転換体を作成することができる。宿主としては、本発明のポリヌクレオチド(DNA)を発現できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、シュードモナス属菌、リゾビウム属菌、酵母、動物細胞または昆虫細胞などがあげられる。エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia
coli)などがあげられる。バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などがあげられる。シュードモナス属菌としては、例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などがあげられる。リゾビウム属菌としては、例えば、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)などがあげられる。酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などがあげられる。動物細胞としては、例えば、COS細胞、CHO細胞などがあげられる。昆虫細胞としては、例えば、Sf9、Sf21などがあげられる。
【0082】
また、低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを用いる場合、該発現ベクターを導入する宿主としては、原核細胞が好ましく、さらに大腸菌が好ましく、特にBL21株、JM109株が好ましく、なかでもBL21株が好ましい。
【0083】
組換えベクターの宿主への導入方法およびこれによる形質転換方法は、一般的な各種方法によって行うことができる。組換えベクターの宿主細胞への導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(Virology, 52, 456-457 (1973))、リポフェクション法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987))、エレクトロポレーション法(EMBO J., 1, 841-845 (1982))などがあげられる。エシェリヒア属菌の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)などに記載の方法などがあげられる。バチルス属菌の形質転換方法としては、例えば、Molecular & General Genetics,168, 111 (1979)に記載の方法などがあげられる。酵母の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75,1929 (1978)に記載の方法などがあげられる。動物細胞の形質転換方法としては、例えば、Virology,52, 456 (1973)に記載の方法などがあげられる。昆虫細胞の形質転換方法としては、例えば、Bio/Technology, 6, 47-55 (1988)に記載の方法などがあげられる。このようにして、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
【0084】
4.本発明の融合蛋白質の製造
また、本発明は、前記形質転換体を培養し、本発明の融合蛋白質を生成させる工程を含む、本発明の融合蛋白質の製造方法を提供する。本発明の融合蛋白質は、前記形質転換体を本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)が発現可能な条件下で培養し、本発明の融合蛋白質を生成・蓄積させ、分離・精製することによって製造することができる。
【0085】
(形質転換体の培養)
本発明の形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。該培養によって、形質転換体によって本発明の融合蛋白質が生成され、形質転換体内または培養液中などに本発明の融合蛋白質が蓄積される。
【0086】
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する培地としては、該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプンなどの炭水化物、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーなどが用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどが用いられる。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)などを、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)などを培地に添加してもよい。
【0087】
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加える。
【0088】
宿主が酵母である形質転換体を培養する培地としては、たとえばバークホールダー(Burkholder)最小培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4505 (1980))や0.5%(w/v)カザミノ酸を含有するSD培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5330 (1984))があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0089】
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する培地としては、たとえば約5〜20%(v/v)の胎児牛血清を含むMEM培地(Science, 122, 501 (1952)),DMEM培地(Virology, 8, 396 (1959))などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0090】
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する培地としては、Grace's Insect Medium(Nature,195,788(1962))に非働化した10%(v/v)ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0091】
また、低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを用いた場合、該ベクターが導入された形質転換体を細胞増殖させる培養温度は、通常25〜40℃、好ましくは30〜37℃である。発現誘導させる温度は、通常4〜25℃、好ましくは10〜20℃、より好ましくは12〜18℃、特に好ましくは15℃である。
【0092】
(本発明の融合蛋白質の分離・精製)
上記培養物から、本発明の融合蛋白質を分離・精製することによって、本発明の融合蛋白質を得ることができる。ここで、培養物とは、培養液、培養菌体もしくは培養細胞、または培養菌体もしくは培養細胞の破砕物のいずれをも意味する。本発明の融合蛋白質の分離・精製は、通常の方法に従って行うことができる。
【0093】
具体的には、本発明の融合蛋白質が培養菌体内もしくは培養細胞内に蓄積される場合には、培養後、通常の方法(例えば、超音波、リゾチーム、凍結融解など)で菌体もしくは細胞を破砕した後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により本発明の融合蛋白質の粗抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質がペリプラズムスペース中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば浸透圧ショック法など)により本発明の融合蛋白質を含む抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質が培養液中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により菌体もしくは細胞と培養上清とを分離することにより、本発明の融合蛋白質を含む培養上清を得ることができる。
【0094】
このようにして得られた抽出液もしくは培養上清中に含まれる本発明の融合蛋白質の精製は、通常の分離・精製方法に従って行うことができる。分離・精製方法としては、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、透析法、限外ろ過法などを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。本発明の融合蛋白質が上述した精製のためのペプチド配列を含有する場合、これを用いて精製するのが好ましい。具体的には、本発明の融合蛋白質がヒスチジンタグ配列を含有する場合にはニッケルキレートアフィニティークロマト法、S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインを含有する場合にはグルタチオン結合ゲルによるアフィニティークロマト法、プロテインAのアミノ酸の配列を含有する場合には抗体アフィニティークロマト法を用いることができる。
【0095】
5.発光方法
5.1.第1の領域による発光方法
本発明の融合蛋白質の第1の領域による発光方法について、以下に説明する。
第1の領域は、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を酸素分子で酸化して励起状態のオキシルシフェリンを生成させる反応を触媒する活性を有する。励起状態のオキシルシフェリンは、基底状態となる際に可視光を発する。すなわち、第1の領域は、ルシフェリンを基質とする発光反応を触媒し、発光を生じさせる活性を有する。
【0096】
第1の領域における、ルシフェリンを基質とする発光反応は、本発明の融合蛋白質とルシフェリンとを接触させることにより行うことができる。反応条件としては、ガウシアルシフェラーゼを用いた発光反応に通常用いられる条件またはそれに準じた条件で行うことができる(例えば、WO99/49019、J. Biol. Chem. 279, 3212-3217 (2004)、およびそれらの引用文献など参照)。
【0097】
具体的には、反応溶媒としては、例えば、Tris−HCl緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液、水、などが用いられる。
【0098】
反応温度は、通常約10℃〜約40℃、好ましくは約20℃〜約40℃である。
【0099】
反応溶液のpHは、通常約5〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約7〜約8、特に好ましくは約7.5である。
【0100】
ルシフェリンとしては、セレンテラジン類が好ましく、特にセレンテラジンが好ましい。
【0101】
ルシフェリンは、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド等の極性溶媒や、メタンール、エタノール、ブタノール等のアルコール溶液として反応系に加えてもよい。
【0102】
尚、第1の領域の発光反応と第2の領域の発光反応が同時に生じるのを避けたい場合には、第1の領域の発光反応を、カルシウムイオンと強く結合するキレート剤の存在下で行うのが好ましい。キレート剤の例として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)N,N,N′,N′−四酢酸(EGTA)、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサンN,N,N′,N′−四酢酸(CyDTA)、又はN−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)等を挙げることができる。このとき反応系に加えるキレート剤の量は、例えば、1 mMから10 mMである。
【0103】
5.2.第2の領域による発光方法
また、本発明の融合蛋白質の第2の領域による発光方法について、以下に説明する。
本発明の融合蛋白質は、第2の領域により、セレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合して、カルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる。
【0104】
本発明のホロ蛋白質は、本発明の融合蛋白質とセレンテラジンまたはその誘導体とから、公知のカルシウム結合発光蛋白質(例えば、イクオリンなど)と同様にして製造することができる。すなわち、本発明のホロ蛋白質は、例えば、Shimomura 0.et al (1988) Biochem. J.251,405-410およびShimomura 0.et al. Biochem. J. (1989)261, 913-920などに記載の方法によって調製できる。より具体的には、例えば、本発明のホロ蛋白質は、精製した本発明の融合蛋白質を、還元剤(たとえばメルカプトエタノール、ジチオスレイトールなど)および酸素の存在下、発光基質であるセレンテラジンもしくはその誘導体と低温でインキュベーションすることにより、カルシウムイオン濃度依存的に発光するホロ蛋白質(発光蛋白質)を調製することができる。還元剤を加えることで、ホロ蛋白質の調製の間に第1の領域に由来する発光が生じるのを避けることができる。
【0105】
セレンテラジンまたはその誘導体としては、例えば、セレンテラジン、h-セレンテラジン、e-セレンテラジン、i-セレンテラジン、ch-セレンテラジン、hcp-セレンテラジンなどが挙げられ、好ましくは、セレンテラジンである。
【0106】
本発明のホロ蛋白質としては、例えば、本発明の融合蛋白質とh-セレンテラジンのペルオキシドとからなるホロ蛋白質、本発明の融合蛋白質とe-セレンテラジンのペルオキシドとからなるホロ蛋白質、本発明の融合蛋白質とi-セレンテラジンのペルオキシドとからなるホロ蛋白質、本発明の融合蛋白質とch-セレンテラジンのペルオキシドとからなるホロ蛋白質、本発明の融合蛋白質とhcp-セレンテラジンのペルオキシドとからなるホロ蛋白質などが挙げられる。
【0107】
本発明のホロ蛋白質にカルシウムイオンが結合すると、瞬間的な発光を示し、セレンテラジンまたはその類縁体の酸化物であるセレンテラミドまたはその類縁体と二酸化炭素を生成する。
【0108】
カルシウムイオンが結合することにより生じる発光反応は、本発明のホロ蛋白質とカルシウムイオンとを接触させることにより行うことができる。反応条件としては、イクオリンを用いた発光反応に通常用いられる条件またはそれに準じた条件で行うことができる(例えば、文献Shimomura 0.et al (1988) Biochem. J.251,405-410およびShimomura 0.et al. Biochem. J. (1989)261など参照)。
【0109】
具体的には、反応溶媒としては、例えば、Tris−HCl緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液、水、などが用いられる。
【0110】
反応温度は、通常約10℃〜約40℃、好ましくは約20℃〜約40℃である。
【0111】
反応溶液のpHは、通常約6.5〜約9.0、好ましくは約7.0〜約7.5である。
【0112】
カルシウムイオンは、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどとして、反応系に加えることができ、特に塩化カルシウムとして反応系に加えるのが好ましい。反応系に加えるカルシウムイオンの量は、例えば、最終濃度が10mM 以上である。
【0113】
6.本発明の融合蛋白質またはホロ蛋白質の利用
(発光による検出マーカーとしての利用)
本発明の融合蛋白質またはホロ蛋白質(以下、本発明の融合蛋白質等と記載する。)は、発光による検出マーカーとして利用することができる。本発明の検出マーカーは、例えば、イムノアッセイまたはハイブリダイゼーションアッセイなどにおける目的物質の検出に利用することができる。本発明の融合蛋白質等を化学修飾法など通常用いられる方法により目的物質(例えば、目的蛋白質、目的核酸など)と結合させて使用することができる。この場合、本発明の融合蛋白質が、第1の領域に由来する発光と第2の領域に由来する発光の2つの発光を生じることができることから、次のように利用することができる。イムノアッセイ系において、本発明の融合蛋白質と目的物質との複合体を形成させた後、最初に、瞬間発光する発光蛋白質の発光活性(第2の領域の発光活性)をカルシウム水溶液添加により測定する。発光反応終了後、ルシフェラーゼの発光基質セレンテラジン溶液を添加することにより、ルシフェラーゼ(第1の領域)の発光活性を測定する。このことにより、目的物質を2つの方法で評価測定することができる。また、逆にルシフェラーゼの発光活性を測定した後に発光蛋白質活性を測定することも可能である。イムノアッセイ法において、目的物質を2つの方法で評価測定することにより、1つの方法で評価測定したときと比較して精度の高い測定結果を得ることができるなどといった利点がある。
【0114】
また、本発明の検出マーカーは、例えば、本発明の融合蛋白質自身として、または目的蛋白質との複合体を形成可能なリガンドをもつ本発明の融合蛋白質として調製し、調製した融合蛋白質をマイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入することによって、前記目的蛋白質の分布を測定するために利用することもできる。このような目的蛋白質などの分布の測定は、発光イメージング等の検出法などを利用して行うこともできる。なお、本発明の融合蛋白質は、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入する以外に、細胞内で発現させて用いることもできる。
【0115】
この場合、本発明の融合蛋白質が、第1の領域に由来する発光と第2の領域に由来する発光の2つの発光を生じることができることから、例えば、次のように利用することができる。
【0116】
G−蛋白質共役レセプターに対するアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングする創薬スクリーニングにおいて、細胞内のカルシウムイオン分布の変化を、細胞内に導入した本発明のホロ蛋白質による瞬間発光を利用することにより検出することができ、さらに、ホロ蛋白質(融合蛋白質)の細胞内分布を、細胞外より発光基質(例えば、セレンテラジン)を添加することによるルシフェラーゼ発光を利用することにより可視化することが可能である。このように、カルシウムイオンの細胞内分布の変化に加え、ホロ蛋白質(融合蛋白質)の細胞内分布も検出することができるので、G−蛋白質共役レセプターに関連する疾患の創薬スクリーニングにおいて、レポーター分子の細胞内の測定部位を特定できるという利点がある。
【0117】
一方、目的蛋白質との複合体を形成可能なリガンドが結合をもつ本発明の融合蛋白質も同様に、リガンド結合目的蛋白質(標的レセプター等)の分布を上述の方法にて可視化することができる。本発明の融合蛋白質は、第1の領域に由来する発光と第2の領域に由来する発光の2つの発光を利用して検出することができるので、目的蛋白質の分布の検出において、2つの方法で評価できるという利点がある。
【0118】
本発明のいくつかの態様では、本発明の融合蛋白質の第1の領域は、ガウシアルシフェラーゼの活性を有する。ガウシアルシフェラーゼは、セレンテラジン誘導体がほとんど発光基質にならない。このガウシアルシフェラーゼの活性を利用して、発光蛋白質(イクオリン)再生の間に第1の領域から発光が生じるのを避けるため、発光蛋白質の再生にはセレンテラジン誘導体(例えば、h-セレンテラジン)を使用する。これにより、発光蛋白質の再生の間に第1の領域に由来する発光が生じるのを避けることができる上に、ガウシアルシフェラーゼ(第1の領域)の発光活性はセレンテラジンを使うことにより測定することができ、再生した発光蛋白質に由来する発光(第2の領域に由来する発光)はカルシウムを使うことに測定することができる。これにより、第1の領域に由来する発光と第2の領域に由来する発光の区別が可能となる。
【0119】
(レポーター蛋白質としての利用)
本発明の融合蛋白質は、レポーター蛋白質としてプロモーターなどの転写活性の測定に利用することもできる。本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチド)を、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列(例えば、エンハンサーなど)に融合したベクターを構築する。前記ベクターを宿主細胞に導入し、(i)本発明の融合蛋白質の第1の領域に由来する発光を検出することにより、および/または(ii)本発明の融合蛋白質の第2の領域に由来する発光を検出することにより、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列の活性を測定することができる。この場合、本発明の融合蛋白質が、第1の領域に由来する発光と第2の領域に由来する発光の2つの発光を生じることができることから、例えば、次のように利用することができる。
【0120】
遺伝子発現に関与する転写因子の下流に、本発明の融合蛋白質を挿入し、培養細胞へ導入後、カルシウム添加による発光蛋白質の瞬間発光(第2の領域に由来する発光)と、ルシフェラーゼによるグロー発光(第1の領域に由来する発光)の2つの方法で測定することにより、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列の活性をより正確に測定することができる。
【0121】
本発明のポリヌクレオチドは、上述のようにして、レポーター遺伝子として利用することができる。
【0122】
(カルシウムイオンの検出または定量)
上述したように、本発明の融合蛋白質の第2の領域は、セレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合して、カルシウムイオンの作用によって発光しうるホロ蛋白質(発光蛋白質)を形成することができる。また、本発明のホロ蛋白質は、酸素存在下、カルシウムイオンの作用によって発光しうる複合体として存在する。よって、本発明の融合蛋白質および本発明のホロ蛋白質は、カルシウムイオンの検出または定量に使用することができる。カルシウムイオンの検出または定量は、カルシウムイオンによる本発明の発光蛋白質の発光を、発光測定装置を用いて測定することにより行うことができる。より具体的には、カルシウムイオンの検出または定量は、例えば、次のように行う。本発明の融合蛋白質にセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を添加することにより発光蛋白質を再生させる。発光蛋白質を再生させた後、その発光蛋白質を検体中に添加することにより発光(第2の領域に由来する発光)を生成させ、生成する発光を測定することにより、カルシウムイオンの検出または定量を行うことができる。このとき、第2の領域である発光蛋白質の再生効率をもとめるために、同一分子にある第1の領域のルシフェラーゼ活性を内部標準物質として利用することも出来る。
【0123】
発光測定装置としては、市販されている装置、例えば、Centro LB960(ベルトール社製)などを使用することができる。カルシウムイオン濃度の定量は、ホロ蛋白質を用いて、既知のカルシウムイオン濃度に対する発光標準曲線を作成することにより、測定可能である。
【0124】
(アミューズメント用品の材料)
本発明の融合蛋白質とセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドとからなる複合体(本発明のホロ蛋白質)は、ルシフェリンを基質として発光することができ、また、カルシウムイオンと結合することでも発光することができる。よって、本発明の融合蛋白質等は、アミューズメント用品の材料の発光基材として好適に使用することができる。アミューズメント用品としては、たとえば、発光シャボン玉、発光アイス、発光飴、発光絵の具等があげられる。本発明のアミューズメント用品は、通常の方法によって製造することができる。
【0125】
7.本発明のキット
本発明は、本発明の蛋白質、本発明のホロ蛋白質、本発明のポリヌクレオチド、本発明の組換えベクターおよび本発明の形質転換体から選択されるいずれかを含むキットも提供する。本発明のキットには、さらにセレンテラジンもしくはその誘導体を含んでいてもよい。本発明のキットは、通常用いられる材料および方法で製造することができる。本発明のキットは、例えば、サンプルチューブ、プレート、キット使用者に対する指示書、溶液、バッファー、試薬、標準化のために好適なサンプルまたは対照サンプルを含んでもよい。
【0126】
本発明のキットは、上述した検出マーカー、レポーター蛋白質もしくはレポーター遺伝子を用いた測定などに利用することができる。本発明のいくつかの態様では、上記キットは、イムノアッセイ用キットとして、イムノアッセイ法に使用することができる。
【0127】
ここで、実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0128】
尚、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0129】
また、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0130】
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
[配列番号:1]ガウシアルシフェラーゼをコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:2]ガウシアルシフェラーゼのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:3]アポイクオリンの第4番目〜第189番目のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:4]アポイクオリンの第4番目〜第189番目のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:5]組換えアポイクオリンをコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:6]組換えアポイクオリンのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:7]実施例1で作製した発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cに挿入された、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C融合蛋白質をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:8]実施例1で作製した発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cに挿入された、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:9]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:10]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:11]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:12]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:13]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:14]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
【実施例】
【0131】
以下に実施例により本発明を説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。
【0132】
実施例1 ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C発現ベクターの構築
ガウシアルシフェラーゼ遺伝子とアポイクオリンの142番目のセリン残基をシステイン残基に置換したアポイクオリン−S142C遺伝子を有するガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C融合遺伝子発現ベクターの構築は以下の通りである。
【0133】
ガウシアルシフェラーゼ遺伝子(hGL遺伝子)は、ガウシアルシフェラーゼ遺伝子を有するpcDNA3-hGL(LUX社製)から、PCR法により調製した。アポイクオリンの142番目のセリン残基をシステイン残基に置換したアポイクオリン−S142C遺伝子は、アポイクオリン遺伝子を有するpAQ440(特開昭61-135586号公開公報参照)のHindIII-EcoRI 領域をpUC9のベクターにサブクローニングして得たpAM-HEから、PCR法により調製した。発現ベクターとしては、pCold II(タカラバイオ社)を使用した。
【0134】
アポイクオリンの142番目のセリン残基のシステイン残基への置換は以下の手順で行った。pAM-HEを鋳型として2種類のPCRプライマー:AQ-20N/XhoI(5’ ccg CTC GAG ACA TCA GAC TTC GAC AAC CCA 3’(配列番号:9);XhoI制限酵素部位はアンダーライン)およびAQ-S142C-R(5’ ATC TTC GCA TGA TTG GAT GAT 3’(配列番号:10))を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。同様に2種類のPCRプライマー:AQ-S142C-F(5’ CAA TCA TGC GAA GAT TGC GAG 3’(配列番号:11))およびAEQ-C-PstI(5’ cgg CTG CAG TTA GGG GAC AGC TCC ACC GTA GAG CTT 3’(配列番号:12);PstI制限酵素部位はアンダーライン)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。得られた2種類のPCR産物を鋳型として、PCRプライマー:AQ-20N/XhoI(配列番号:9)およびAEQ-C-PstI(配列番号:12)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、142番目のセリン残基をシステイン残基に置換したアポイクオリン遺伝子を得た。得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素XhoI/PstIにて消化した後、pBluescript II SK (+)(Straragene社)の制限酵素XhoI/PstI部位に連結することによって、ベクターpBlue-AQ-S142Cを構築した。
【0135】
次いで、ガウシアの遺伝子はpcDNA3-hGL(プロルミ社製)を鋳型として2種類のPCRプライマー:GL-25N/Kpn-EcoRI(5’ ggc GGT ACC GAA TTC AAG CCC ACC GAG AAC AAC 3’(配列番号:13);Asp718I制限酵素部位はアンダーライン)およびGL-24N-TAA/XhoI(5’ ccg CTC GAG GTC ACC ACC GGC CCC CTT GAT3’(配列番号:14);XhoI制限酵素部位はアンダーライン)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、ガウシア遺伝子を増幅した。
【0136】
得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素Asp718I/XhoIにて消化した後、pBlue-AQ-S142Cの制限酵素Asp718I/XhoI部位に連結することによって、ベクターpBlue-GL-AQ-S142Cを構築した。
【0137】
このベクターpBlue-GL-AQ-S142Cを常法により制限酵素EcoRI/PstIにて消化した後、pColdIIの制限酵素EcoRI/PstI部位に連結することによって、発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cを構築した(図1)。なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。
【0138】
挿入DNAの塩基配列を、配列番号:7に、挿入DNAがコードする融合蛋白質のアミノ酸配列を、配列番号:8に示す。
また、挿入DNAの塩基配列中、第1のコード配列を、配列番号:1に、第1のコード配列がコードする第1の領域のアミノ酸配列を、配列番号:2に示す。
さらに、挿入DNAの塩基配列中、第2のコード配列の塩基配列を、配列番号:5に、第2のコード配列がコードする第2の領域のアミノ酸配列を、配列番号:6に示す。
尚、本実施例では、アポイクオリンの142番目のセリン残基をシステイン残基へと置換しているが、このシステイン残基は、第2の領域のアミノ酸配列(配列番号:6)では、第139番目のシステイン残基に対応する。
【0139】
実施例2 組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C融合蛋白質の精製法
組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C融合蛋白質は、以下に示すように、発現ベクター pCold-GL-AQ-S142Cを用いて、大腸菌にて組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを発現させ、ニッケルキレートカラムクロマトグラフ法にて精製を行い、アポイクオリン部分を再生することで、組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cを得た。
【0140】
1)組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリンS142Cの大腸菌での発現方法
大腸菌において組み換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを発現させるために、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C遺伝子発現ベクター pCold-GL-AQ-S142Cを用いた。このベクターを常法により大腸菌BL21株に導入し、得られた形質転換株をアンピシリン(50μg/ml)を含有する10mlのLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストイクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養物を新たなLB液体培地400ml x 5本(総量2L)に添加して37℃で5時間培養した後、氷水上で冷却して、イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.2mMになるように培養液に添加し、15℃でさらに17時間培養を行った。培養後、菌体を遠心回収(5,000rpm、5分)し、蛋白質抽出の出発材料とした。
【0141】
2)培養菌体からのガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cの抽出方法
集菌した培養菌体を100mlの50mM Tris-HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、Sonifier model cycle 250)を3分間、3回行い、その菌体破砕液を10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心し、不溶性沈殿画分を得た。得られた不溶性沈殿画分を、100mlの6M尿素を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)に懸濁し、この懸濁液を氷冷下で超音波破砕処理を行い、10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、10分間遠心した。得られた尿素可溶性画分をガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C精製の出発材料とした。
【0142】
3)尿素可溶性画分からの組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cの精製方法
組換え発現蛋白質は、アミノ末端に6個のヒスチジン配列を有するので、ニッケルキレートゲルによるアフィニティクロマト法により精製が可能である。
まず、6M尿素可溶性画分を、6M尿素を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)で平衡化したニッケルキレートカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6cm)に供し、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを吸着させた。ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C吸着カラムを、150mlの6M尿素を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)で洗浄後、6M尿素と0.1Mイミダゾール(和光純薬工業社製)を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)でガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを溶出した。蛋白量濃度は、Bradford法にもとづく市販のキット(バイオラッド社製)を用い、また、ウシ血清アルブミン(ピアス社製)を標準物質として用いて決定した。2Lの培養菌体より106mgのガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cが得られた。
【0143】
4)ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cからガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cへの調製法
ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cからのガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cへの再生は以下に示すように、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを、まず還元剤2−メルカプトエタノールで処理後、発光基質(セレンテラジン)と接触させることによりイクオリンを再生する。その後、透析処理にて還元剤を除去して、ガウシアルシフェラーゼをリフォールディングし活性型に変換させることにより、ガウシアルシフェラーゼ活性およびイクオリン活性を有するガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質を得た。
【0144】
具体的には、0.1M イミダゾールおよび6M尿素によりニッケルキレートカラムより溶出したガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリンS142C溶液(50μg/10μl)を10mM EDTAを含む30mM Tris-HCl (pH7.6) 990μl に溶解し、これを2-メルカプトエタノールと最終濃度が0.35%(v/v)になるように混合する。37℃で30分放置した後、ガウシアルシフェラーゼの発光活性が失活した事を確認し、エタノールに溶解した5μg基質セレンテラジン(1μg/μl)を添加して、4℃にて一晩イクオリンの再生反応を行った。次いで、得られたイクオリン再生溶液を4Lの10mM EDTAを含む100mM炭酸アンモニウム溶液(pH8.0)にて4℃で一晩透析を行い、組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質(40μg)を得た。
【0145】
それぞれの精製過程画分について、還元状態で12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGE分析を行った。得られた組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリンS142Cのアミノ末端配列は、Met-Asn-His-Lys-より始まり、378個のアミノ酸より構成されており、平均質量計算値は41335である。図2に示すように、精製画分は分子量41kDa蛋白質に相当する単一バンドが検出され、純度95%以上であることが明らかとなった。表1に、2Lの培養菌体からのガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cの各精製工程での分析結果をまとめた。
【0146】
【表1】

【0147】
実施例3 発光活性の測定法
ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cの発光活性は、ガウシアルシフェラーゼ活性とイクオリン活性をそれぞれ単独で測定することが可能である。
【0148】
1)ガウシアルシフェラーゼの発光測定
ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C 5μlを、0.1mlの0.01% Tween20 (バイオラッド社製)、10 mM EDTAと 137 mM 塩化ナトリウムと2.7mM 塩化カリウムを含む10 mM リン酸緩衝液(pH 7.4)(シグマ社製、以降PBSと表記)、およびエタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)に混合して発光反応を開始させ、発光測定装置Luminescencer- PSN AB2200(アトー社製)で30秒間発光活性を測定した。発光活性は、最大値(Imax)で示した。
【0149】
2)イクオリンの発光測定
1mlの10 mM EDTAを含む30mM Tris−HCl(pH7.6)に2-メルカプトエタノール(1μl)、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を混合した後、ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cを添加し、氷上(4℃)で2時間反応を行い、再生イクオリン溶液を得る。再生イクオリン溶液1μlへ、50mMカルシウム溶液を100μl加えることにより発光反応を開始させ、発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)にて10秒間発光活性を測定した。発光活性は、最大値(Imax)で示した。
【0150】
実施例4 ガウシアルシフェラーゼ−イクオリンS142Cの発光活性の蛋白質濃度依存性
再生ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C溶液を0.01% Tween20、10 mM EDTA、0.1%牛血清アルブミン(生化学工業社製、以下BSAと記載)を含むPBSにて希釈した。
【0151】
1)ガウシアルシフェラーゼ活性の蛋白質量と発光量の直線性
96穴マイクロプレート(Nunc、#236108)に0.01% Tween20、10 mM EDTAを含むPBSを50μl/ウェル分注し、上記のように作製したガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C希釈溶液を5μl/ウェル添加して、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(0.25 ng/μl)を含む0.01% Tween20、10 mM EDTAを含むPBSを50μl/ウェル注入することにより発光反応を開始させ、発光プレートリーダーCentro LB960(ベルトールド社製)にて30秒間発光活性を測定した。
【0152】
2)イクオリン活性の蛋白質量と発光量の直線性
96穴マイクロプレートに、ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C希釈溶液を5μl/ウェルに分注して、50mMカルシウム溶液を100μl/ウェル注入することにより発光反応を開始させ、発光プレートリーダーCentro LB960(ベルトールド社製)にて、10秒間発光活性を測定した。
【0153】
それぞれの発光活性の最大値(Imax)を、図3に示すグラフにまとめた。蛋白質濃度と発光活性には、相関があることがわかった。
【0154】
実施例5ビオチン化ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cの調製方法
ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cを100μl (430μg、10.4 nmol)取り、Maleimide-PEO-Biotin (1 nmol/ml、ピアス社製)を31.2μl (31.2 nmol)、PBSを68.8μl加え、全量を200μlとし、4℃にて一晩反応させた。反応後、10 mMシステインを10μl (100 nmol)加え、過剰なマレイミド基を除去した。反応液をAmicon Ultra-4 (M.W.=10,000)に移し、更にPBSを2.8 ml加えて、遠心機にて6,000rpm、20分間遠心し、ビオチン化試薬を除去した。ろ過膜状に残った反応液を約180μl回収し、ビオチン化ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cを得た。OD280nmの吸光度より、回収率は78%であった。
【0155】
実施例6 ビオチン化ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cを用いたα−フェトプロテインの検出
1)抗−AFP抗体のコーティング
抗−AFP抗体(日本医学臨床検査研究所製、クローンNo.6D2、サブクラスIgG2a−κ、以下「6D2」と記載)を、0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを含む50mM炭酸緩衝液(pH9.6)にて5μg/mlに調製し、96穴マイクロプレート(Nunc社製、#437796)に100μl/ウェル分注し、室温にて一晩静置してコートした。静置後、炭酸緩衝液を除去し、1%牛血清アルブミン(シグマ、以下BSAと記載)、2mM EDTA(EDAT・2Na、同仁化学研究所)、0.05%(w/v)アジ化ナトリウム(和光純薬工業)を含む150mM NaCl(和光純薬工業)、20mM Tris-HCl(和光純薬工業)(以降TBSと記載)(以降ポストコーティング溶液と記載)を200μl/ウェル分注し、4℃にて一晩静置した。
【0156】
2)ビオチン化ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cの発光測定
静置後、反応液を捨て洗浄した後、0.1% BSA、2mM EDTAを含有したTBSにて、0(Blank)、12.5及び62.5ng/mlに希釈調製したα-フェトプロテイン(Dako社製、以下AFPと記載)を96穴マイクロプレートに50μl/ウェル分注し、さらに74.9ng/mlに希釈調製したビオチン化抗-AFP抗体(日本医学臨床検査研究所製、クローンNo.1D5、サブクラスIgG1−κ、以下1D5と記載)を50μl/ウェル分注し、30℃にて1時間静置した。前記プレートから反応溶液を除去し、よく洗浄した。10%BlockAce(雪印乳業社製)、0.01%Tween20(バイオラッド社製)、10 mM EDTAを含有するPBS(以下PBSE−TBと記載)にて50pmol/mlに希釈調製したストレプトアビジン(以下STAと記載)15μlと、100pmol/mlに希釈調製したビオチン化ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C 15μlを混合し、室温にて30分反応させた後、PBSE−TBにて80倍希釈した溶液を前記プレートに100μl/ウェル分注し、30℃にて30分静置した。反応溶液を除去し、洗浄した後、発光プレートリーダーCentro LB960(ベルトール社製)にて、一方は、基質セレンテラジン(0.5 ng/μl)100μlを注入してガウシアルシフェラーゼの発光活性を0.1秒間隔で10秒間測定し、最大発光強度値(Imax)を算出した。他方、別の反応ウェルにおいては、50mM 塩化カルシウム溶液100μlを注入してイクオリンの発光活性を0.1秒間隔で5秒間測定し、Imaxを算出した。求めたガウシアルシフェラーゼとイクオリン活性の各AFP濃度に対するImaxと各AFP濃度に対するImax値とブランクに対するImaxの比(S/N比)とを表2に示した。
【0157】
ビオチン化ガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cを用いて、ガウシアルシフェラーゼ活性およびイクオリン活性により、イムノアッセイが可能であることが明らかとなった。
【0158】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の融合蛋白質、本発明のホロ蛋白質などは、カルシウムイオンの検出または測定に好適に利用することができる。また、本発明の融合蛋白質、ホロ蛋白質などは、レポーター蛋白質としてプロモーターなどの転写活性の測定に利用することもできる。さらに、本発明の融合蛋白質、ホロ蛋白質などは、検出マーカー、アミューズメント用品の材料などとして利用することもできる。
本発明のポリヌクレオチドは、上述した本発明の融合蛋白質をコードしているので、レポーター遺伝子として利用することができる。
また、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の形質転換体などは、本発明の融合蛋白質の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1の領域:
(a)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および、
(d)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;と、
(2)以下の(e)および(f)からなる群から選択される第2の領域:
(e)配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域、および、
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換したシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域;と、
を含有する融合蛋白質。
【請求項2】
(1)第1の領域が、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および、
(d)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択され、
(2)第2の領域が、以下の(e)および(f)からなる群:
(e)配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域、および、
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換システインを除く1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域;
から選択される、請求項1記載の融合蛋白質。
【請求項3】
第2の領域が、以下の(e)および(f)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域、および、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において、第139番目のシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域;
から選択される、請求項1記載の融合蛋白質。
【請求項4】
第2の領域が、以下の(e)および(f)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域、および、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において、第139番目のシステインを除く1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域;
から選択される、請求項1記載の融合蛋白質。
【請求項5】
(1)配列番号:2で表される第1のアミノ酸配列からなる領域と、
(2)配列番号:6で表される第2のアミノ酸配列からなる領域
とを含有する、請求項1記載の融合蛋白質。
【請求項6】
さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列および/または精製のためのアミノ酸配列を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の融合蛋白質。
【請求項7】
配列番号:8のアミノ酸配列からなる、請求項1記載の融合蛋白質。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の融合蛋白質と、セレンテラジンのペルオキシドまたはセレンテラジン誘導体のペルオキシドとからなるホロ蛋白質。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項10】
(1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1のコード配列:
(a)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(d)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;と、
(2)以下の(e)〜(g)からなる群から選択される第2のコード配列:
(e)配列番号:3の塩基配列において第1番目〜第3番目のACA、第4番目〜第6番目のTCA、第112番目〜第114番目のTCT、第142番目〜144番目のACA、第220〜第222番目のACT、第298番目〜第300番目のACG、第412番目〜第414番目のTCA、第415番目〜第417番目のTCAおよび第514番目〜第516番目のACCからなる群から選択される少なくとも1つの塩基がTGCまたはTGTと置換した塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(g)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換システインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
とを含有するポリヌクレオチド。
【請求項11】
(1)第1のコード配列が、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:1の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(d)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;から選択され、
(2)第2のコード配列が、以下の(e)〜(g)からなる群:
(e)配列番号:3の塩基配列において第1番目〜第3番目のACA、第4番目〜第6番目のTCA、第112番目〜第114番目のTCT、第142番目〜144番目のACA、第220〜第222番目のACT、第298番目〜第300番目のACG、第412番目〜第414番目のTCA、第415番目〜第417番目のTCAおよび第514番目〜第516番目のACCからなる群から選択される少なくとも1つの塩基がTGCまたはTGTと置換した塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:4のアミノ酸配列において第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換した配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(g)配列番号:4のアミノ酸配列において、第1番目のトレオニン、第2番目のセリン、第38番目のセリン、第48番目のトレオニン、第74番目のトレオニン、第100番目のトレオニン、第138番目のセリン、第139番目のセリン、および第172番目のトレオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸がシステインと置換し、該置換システインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
から選択される、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
第2のコード配列が、以下の(e)〜(g)からなる群:
(e)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列において第139番目のシステインを除く1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつセレンテラジンのペルオキシドもしくはセレンテラジン誘導体のペルオキシドと結合してカルシウムイオンの作用によって発光するホロ蛋白質を形成することができる機能を有する領域をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
から選択される、請求項10記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列番号:7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
【請求項15】
請求項14記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
【請求項16】
請求項15記載の形質転換体を培養し、請求項1〜7のいずれかに記載の融合蛋白質を生成させる工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の融合蛋白質の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれかに記載の融合蛋白質または請求項8に記載のホロ蛋白質を含むキット。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれかに記載の融合蛋白質または請求項8に記載のホロ蛋白質を含むイムノアッセイ用キット。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれかに記載の融合蛋白質または請求項8に記載のホロ蛋白質を使用してカルシウムイオンを検出または定量する方法。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれかに記載の融合蛋白質または請求項8に記載のホロ蛋白質を用いたイムノアッセイ法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−284131(P2010−284131A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142087(P2009−142087)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】