説明

発光駆動装置、発光装置及びその駆動制御方法、並びに、電子機器

【課題】アクティブマトリクス型の駆動方式に対応した発光パネルにおいて、駆動信号の波形なまりに起因する輝度ムラや画面のちらつきの発生を抑制することができる発光駆動装置、発光装置及びその駆動制御方法、並びに、該発光装置を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】各行の書込動作期間Twrtには、第2信号電圧印加期間Twh2と、第1信号電圧印加期間Twh1とが設定されている。まず最初に、第2信号電圧印加期間Twh2において、選択ラインLsに対して、Hi電圧2に基づく第2信号電圧Vsh2(例えば+18V)の選択信号Sselが印加される。次いで、第1信号電圧印加期間Twh1において、選択ラインLsに対して、Hi電圧1に基づく第1信号電圧Vsh1(例えば+15V)の選択信号Sselが印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光駆動装置、発光装置及びその駆動制御方法、並びに、電子機器に関し、特に、アクティブマトリックス型の駆動方式に対応した発光パネル(表示パネルを含む)を駆動するための発光駆動装置、該発光駆動装置を備えた発光装置及びその駆動制御方法、並びに、該発光装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の表示デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)等の自発光素子をマトリクス状に配列した表示パネルを備えた発光素子型の表示装置(発光装置)が注目されている。このような表示装置は、現在では携帯電話やデジタルオーティオプレーヤー、カーナビゲーション用モニター等の比較的小型の表示デバイスとして実用化されている。
【0003】
ここで、発光素子型の表示装置においては、アクティブマトリクス型の駆動方式が広く採用されている。このような発光素子型の表示装置によれば、周知の液晶表示装置に比較して、表示応答速度が速く、また、視野角依存性もほとんどなく、さらに、高輝度・高コントラスト化や表示画質の高精細化が可能であるという優れた表示特性を有している。加えて、発光素子型の表示装置は、液晶表示装置のようにバックライトや導光板を必要としないので、装置構成をいっそう薄型軽量化できるという特長も有している。そのため、今後様々な電子機器への適用が期待されているとともに、表示画面の大型化に向けた研究開発が行われている。
【0004】
アクティブマトリクス型の表示装置における駆動制御方法は、一般に、各行の表示画素を順次選択状態に設定し、当該選択タイミングに同期して、表示データに応じた階調電圧を印加(表示データを書込み)することにより、各表示画素に保持される電圧成分に基づいて階調制御が行われる。このような発光素子型の表示装置(例えば、有機EL表示装置)においては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているように、各画素に2個以上の複数の薄膜トランジスタからなる画素回路(発光駆動回路)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−330600号公報
【特許文献2】特開2001−147659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発光素子型の表示装置に限らず、周知の液晶表示装置においても、表示画面を大型化した際には、画素を駆動するドライバから画素までの配線長が長くなるため、当該配線長に応じて負荷の大きさが異なり、駆動信号の波形なまりや遅延が生じることが一般に知られている。ここで、液晶表示装置においては、各画素に設けられるスイッチング素子は通常薄膜トランジスタ(TFT)が1個のみであるため、例えばゲートラインに生じる寄生容量(配線容量)は、比較的小さい。
【0007】
これに対して、アクティブマトリクス型の駆動方式を採用した発光素子型の表示装置(例えば、有機EL表示装置)においては、上述した特許文献1や特許文献2にも記載されているように、各画素に複数の薄膜トランジスタが設けられているため、走査ライン(ゲートライン;後述する実施形態では「選択ライン」と記す)等の配線に生じる寄生容量が大きくなって、配線抵抗と寄生容量に基づく時定数に応じて、走査信号(ゲート信号;後述する実施形態では「選択信号」と記す)等の駆動信号に生じる波形なまりが顕著になるという問題を有していた。そのため、各画素の実質的な選択期間が互いに異なって、画面内に輝度ムラが生じたり、実質的な選択期間が相対的に短くなって、画像データの書き込み不足が生じて、画面のちらつきが生じたりする、という問題を有していた。
【0008】
特に、大型の表示画面を有する表示装置において、倍速駆動(120Hz駆動)等の表示動作を行う場合に、このような駆動信号の波形なまりの影響がいっそう顕著になる傾向を有している。なお、有機EL表示装置における走査信号の波形なまりについては、後述する実施形態において、詳しく説明する。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、アクティブマトリクス型の駆動方式に対応した発光パネルにおいて、駆動信号の波形なまりに起因する輝度ムラや画面のちらつきの発生を抑制することができる発光駆動装置を提供し、以て、発光特性が良好かつ均一な発光装置及びその駆動制御方法、並びに、該発光装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、発光素子と前記発光素子に供給する電流を制御する駆動トランジスタと該駆動トランジスタの動作を制御するスイッチングトランジスタとを有する発光駆動回路とを有し、前記スイッチングトランジスタに接続される走査線に接続され、該走査線の延在方向に沿って配列された複数の画素を駆動して、前記各画素の前記発光素子の発光を制御する発光駆動装置であって、所定の信号印加期間に、前記走査線の一端に選択信号を印加して、前記各画素の前記スイッチングトランジスタを動作させる選択状態に設定する選択駆動回路を備え、前記選択信号は、前記信号印加期間中の第1の期間に第1信号電圧に設定され、前記信号印加期間中の前記第1の期間に先立つ第2の期間に前記第1信号より高い電位を有する第2信号電圧に設定され、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値は、前記選択信号が前記走査線の一端に印加されたときの、前記第1の期間の開始時点での、前記走査線の一端からの距離が最も短い位置にある第1の前記画素の近傍の前記走査線の電圧値からなる第1の電圧値と、前記走査線の一端からの距離が最も長い位置にある第2の前記画素の近傍の前記走査線の電圧値からなる第2の電圧値とが、許容範囲内の値となるように設定され、該許容範囲は前記第1信号電圧の電圧値の95%乃至110%の値であることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発光駆動装置において、前記選択信号の電圧は動作電圧に対応して設定され、前記選択信号を前記第1信号電圧に設定するときに前記動作電圧を第1設定電圧に設定し、前記選択信号を前記第2信号電圧に設定するときに前記動作電圧を前記第1信号電圧より高い電位の第2設定電圧に切り替える電圧切替回路を備えることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発光駆動装置において、前記走査線に接続されて、前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値を計測する電圧計測回路を備えることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発光駆動装置において、前記第2信号電圧の電圧値は固定値に設定され、前記第2の期間の時間が可変値に設定されて、前記電圧計測回路によって計測される前記第1の電圧値と前記第2の電圧値の比較に基づいて、前記第2の期間の時間を設定する制御回路を備えることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発光駆動装置において、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値が可変値に設定されて、前記電圧計測回路によって計測される前記第1の電圧値と前記第2の電圧値の比較に基づいて、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値を設定する制御回路を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明に係る発光装置は、発光素子と前記発光素子に供給する電流を制御する駆動トランジスタと該駆動トランジスタの動作を制御するスイッチングトランジスタとを有する発光駆動回路とを有する複数の画素と、該複数の画素の前記スイッチングトランジスタに接続される複数の走査線と、を有し、前記各画素が前記各走査線の延在方向に沿って配列された発光パネルと、前記発光パネルの、前記複数の画素の前記発光素子を駆動する発光駆動装置と、を備え、前記発光駆動装置は、画像データに基づく階調信号を前記各画素に書き込む書込動作期間に、前記各走査線の一端に選択信号を印加して、前記各画素の前記スイッチングトランジスタを動作させる選択状態に設定する選択駆動回路を備え、前記選択信号は、前記書込動作期間中の第1の期間に第1信号電圧に設定され、前記書込動作期間中の前記第1の期間に先立つ第2の期間に前記第1信号電圧より高い電位の第2信号電圧に設定され、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値は、前記選択信号が一つの前記走査線の一端に印加されたときの、前記第1の期間の開始時点での、当該走査線の一端からの距離が最も短い位置にある第1の前記画素の近傍の前記走査線の第1の電圧値と、前記走査線の一端からの距離が最も長い位置にある第2の前記画素の近傍の前記走査線の第2の電圧値とが、許容範囲内の値となるように設定され、該許容範囲は前記第1信号電圧の電圧値の95%乃至110%の値であることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発光装置において、前記選択信号の電圧は動作電圧に対応して設定され、前記選択信号を前記第1信号電圧に設定するときに前記動作電圧を第1設定電圧に設定し、前記選択信号を前記第2信号電圧に設定するときに前記動作電圧を前記第1信号電圧より高い電位の第2設定電圧に切り替える電圧切替回路を備えることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項6又は7記載の発光装置において、前記走査線に接続されて、前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値を計測する電圧計測回路を備えることを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発光装置において、前記第2信号電圧の電圧値は固定値に設定され、前記第2の期間の時間が可変値に設定されて、前記電圧計測回路によって計測される前記第1の電圧値と前記第2の電圧値の比較に基づいて、前記第2の期間の時間を設定する制御回路を備えることを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項8記載の発光装置において、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値が可変値に設定されて、前記電圧計測回路によって計測される前記第1の電圧値と前記第2の電圧値の比較に基づいて、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値を設定する制御回路を備えることを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項6乃至10のいずれかに記載の発光装置において、前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする。
請求項12記載の発明に係る電子機器は、請求項6乃至11のいずれかに記載の発光装置が実装されてなることを特徴とする。
【0014】
請求項13記載の発明は、発光素子と前記発光素子に供給する電流を制御する駆動トランジスタと該駆動トランジスタの動作を制御するスイッチングトランジスタとを有する発光駆動回路とを備える複数の画素と、該複数の画素の前記スイッチングトランジスタに接続される複数の走査線と、を有し、前記各画素が前記走査線の延在方向に沿って配列された発光パネルを備え、画像データに応じた輝度階調で前記複数の画素の前記発光素子を発光動作させる発光装置の駆動制御方法であって、第1信号電圧の電圧値と、該第1信号電圧より高い電位の第2信号電圧の電圧値と、第2の期間の時間とを設定する設定ステップと、前記画像データに基づく階調信号を、前記各画素に書き込む書込動作期間中の第1の期間に、前記各走査線の一端に、前記各画素の前記スイッチングトランジスタを動作させるための選択信号の電圧値を前記第1信号電圧に設定して印加する第1信号電圧印加ステップと、前記書込動作期間中の前記第1の期間に先立つ前記第2の期間に、前記各走査線の一端に、前記選択信号の電圧値を前記第2信号電圧に設定して印加する第2信号電圧印加ステップと、を含み、前記設定ステップは、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値を、前記第2信号電圧ステップと前記第1信号電圧ステップとにより前記選択信号を一つの前記走査線の一端に印加したときの、前記第1の期間の開始時点での、当該走査線の一端からの距離が最も短い位置にある第1の前記画素の近傍の前記走査線の第1の電圧値と、前記走査線の一端からの距離が最も長い位置にある第2の前記画素の近傍の前記走査線の第2の電圧値とが、許容範囲内の値となるように設定し、該許容範囲は前記第1信号電圧の電圧値の95%乃至110%の値であることを特徴とする。
【0015】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発光装置の駆動制御方法において、前記設定ステップは、前記第2の期間の時間を所定の初期値に設定する初期化ステップと、前記選択信号を前記走査線の一端に印加する選択信号印加ステップと、前記第1の電圧値と前記第2の電圧値とを計測する電圧計測ステップと、計測した前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値と前記第1信号電圧とを比較する電圧比較ステップと、前記電圧比較ステップにおける比較結果に基づいて、前記第2の期間の時間を調整する印加時間調整ステップと、前記電圧比較ステップにおいて、前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値が前記許容範囲内の値となったときの前記第2の期間の時間を、前記第2信号電圧印加ステップにおける前記第2の期間の時間に設定する印加期間決定ステップと、を含むことを特徴とする。
請求項15記載の発明は、請求項13記載の発光装置の駆動制御方法において、前記設定ステップは、前記第2信号電圧の電圧値を所定の初期値に設定する電圧初期化ステップと、前記第2の期間の時間を所定の初期値に設定する印加時間初期化ステップと、前記選択信号を前記走査線の一端に印加する選択信号印加ステップと、前記第1の電圧値と前記第2の電圧値とを計測する電圧計測ステップと、計測した前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値と前記第1信号電圧とを比較する電圧比較ステップと、前記電圧比較ステップにおける比較結果に基づいて、前記第2の期間の時間を調整する印加時間調整ステップと、前記第2の期間の時間が前記書込動作期間より短いか否かを判定する印加時間判定ステップと、印加時間判定ステップにおける判定結果に基づいて、前記第2信号電圧の電圧値を調整する電圧値調整ステップと、前記電圧比較ステップにおいて、前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値が前記許容範囲内の値となったときの前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値を、前記第2信号電圧印加ステップにおける前記第2の期間の時間と前記第2信号電圧の電圧値に設定する印加期間・電圧決定ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アクティブマトリクス型の駆動方式に対応した発光パネルにおいて、駆動信号の波形なまりに起因する輝度ムラや画面のちらつきの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る発光装置を適用した表示装置の一例を示す概略ブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る表示装置に適用される表示パネル及びその周辺回路の一例を示す要部構成図である。
【図3】第1の実施形態に係る表示装置に適用される選択ドライバを含む電圧値設定機構の構成例を示す概略図である。
【図4】第1の実施形態に係る表示装置に適用されるデータドライバの構成例を示す概略図である。
【図5】第1の実施形態に係る表示パネルに適用される画素の一例を示す回路構成図である。
【図6】第1の実施形態に係る表示装置に適用される表示画素における基本動作を示すタイミングチャートである。
【図7】第1の実施形態に係る表示装置に適用される選択ドライバにおける選択信号の電圧値設定動作を示すタイミングチャートである。
【図8】第1の実施形態に係る表示画素における書込動作及び発光動作を示す概念図である。
【図9】第1の実施形態の比較対象にとなる表示装置の駆動制御方法の一例を示すタイミングチャートである。
【図10】比較対象となる駆動制御方法を適用した場合の選択ライン電圧の変化を示す図である。
【図11】第1の実施形態に係る駆動制御方法を適用した場合の選択ライン電圧の変化を示す図である。
【図12】第1の実施形態に係る表示装置に適用される選択ライン電圧の計測機構を示す概略構成図である。
【図13】第1の実施形態に係る表示装置に適用される第2信号電圧印加期間の設定方法の一例を示すフローチャートである。
【図14】第2の実施形態に係る表示装置の一例を示す概略ブロック図である。
【図15】第2の実施形態に係る表示装置に適用される選択ドライバにおける選択信号の電圧値設定動作を示すタイミングチャートである。
【図16】第3の実施形態に係る表示装置の構成例を示す概略ブロック図(その1)である。
【図17】第3の実施形態に係る表示装置の構成例を示す概略ブロック図(その2)である。
【図18】第3の実施形態に係る表示装置に適用される選択・データ1チップドライバの選択ドライバ機能部を含む電圧値設定機構の構成例を示す概略図である。
【図19】第3の実施形態に係る表示装置に適用される第2信号電圧印加期間及びその電圧の設定方法の一例を示すフローチャートである。
【図20】第3の実施形態に係る駆動制御方法により設定される選択信号を説明するための波形図である。
【図21】第1乃至第3の実施形態に係る表示装置(発光装置)を適用した薄型テレビジョンの構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る発光駆動装置、発光装置及びその駆動制御方法、並びに、電子機器について、実施の形態を示して詳しく説明する。
<第1の実施形態>
まず、本発明に係る発光駆動装置を備えた発光装置の概略構成について、図面を参照して説明する。ここでは、本発明に係る発光装置を表示装置として適用した場合について説明する。
【0019】
(表示装置)
図1は、本発明に係る発光装置を適用した表示装置の一例を示す概略ブロック図であり、図2は、第1の実施形態に係る表示装置に適用される表示パネル及びその周辺回路の一例を示す要部構成図である。また、図3は、本実施形態に係る表示装置に適用される選択ドライバを含む電圧値設定機構の構成例を示す概略図である。
【0020】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る表示装置(発光装置)100は、概略、表示パネル(発光パネル)110と、選択ドライバ(選択駆動回路)120と、電源ドライバ(電源駆動回路)130と、データドライバ(信号駆動回路)140と、コントローラ(制御回路)150と、を備えている。ここで、選択ドライバ120と電源ドライバ130とデータドライバ140とコントローラ150は、本発明における発光駆動装置に対応する。
【0021】
表示パネル110は、図1、図2に示すように、パネル基板上に、複数の画素PIXと、各画素PIXに接続された複数の選択ライン(走査線)Ls、複数の電源ラインLa、複数のデータライン(信号線)Ld及び共通電極Ecと、を有している。複数の画素PIXは、パネル基板上に行方向(図面左右方向)及び列方向(図面上下方向)に2次元配列(例えばn行×m列;n、mは正の整数)されている。各画素PIXは、後述するように、発光駆動回路と発光素子とを有している。また、複数の選択ラインLs及び複数の電源ラインLaは、各々、パネル基板の行方向に配列された画素PIXに、行ごとに接続するように配設されている。複数のデータラインLdは、パネル基板の列方向に配列された画素PIXに、列ごとに接続するように配設されている。共通電極Ecは、全画素PIXに共通に接続するように設けられている。
【0022】
選択ドライバ120は、上記の表示パネル110に配設された各選択ラインLsに接続されている。選択ドライバ120は、後述するコントローラ150から供給される選択制御信号に基づいて、各行の選択ラインLsに所定のタイミングで所定の電圧レベル(選択レベル又は非選択レベル)の選択信号Sselを印加することにより、各行の画素PIXを選択状態に設定する。具体的には、選択ドライバ120は、各行の選択ラインLsに対して選択信号Sselを所定のタイミングで順次ずらして印加することにより、表示パネル110に配列された各行の画素PIXを順次選択状態に設定する。
【0023】
選択ドライバ120は、例えば図2に示すように、コントローラ150から供給される選択制御信号(走査クロック信号SCK、走査スタート信号SST)に基づいて、各行の選択ラインLsに対応するシフト信号を順次出力するシフトレジスタ121と、該シフト信号を所定の信号レベル(選択レベル;ハイレベル)に変換して、コントローラ150から供給される選択制御信号(出力イネーブル信号SOE)に基づいて、各行の選択ラインLsに選択信号Sselとして順次出力する出力回路122と、を備えている。
【0024】
ここで、本実施形態に係る選択ドライバ120は、選択ラインLsに出力する選択信号Sselの選択レベル(ハイレベル)として、異なる電圧値を設定することができるように構成されている。具体的には、上述した出力回路122において、シフト信号の信号レベルを変換する際に用いられるハイレベル側の動作電圧(レベル変換電圧)として、異なる電圧値(便宜的に、「Hi電圧1(第1設定電圧)」、「Hi電圧2(第2設定電圧)」とする)を選択的に設定する(切り替え設定する)。これにより、選択ラインLsに出力される選択レベルの選択信号Sselの電圧が、任意のタイミングで上記Hi電圧1に基づく第1信号電圧Vsh1、又は、Hi電圧2に基づく第2信号電圧Vsh2に切り替えられる。
【0025】
このような選択信号Sselの電圧切り替え機能を実現するために、選択ドライバ120は、例えば図3(a)、(b)に示すような構成(電圧値設定機構)を有している。図3(a)に示す電圧値設定機構は、選択ドライバ120(具体的には、出力回路122)に供給されるハイレベル側の動作電圧(Hi電圧;図中「Hi電源」と表記)を切り替え設定するためのスイッチ(電圧切替回路)161を備えている。スイッチ161は、Hi電源1(Hi電圧1;例えば+15V)及びHi電源2(Hi電圧2;例えば+18V)に接続され、コントローラ150から供給される選択制御信号の一種であるスイッチ制御信号により、Hi電源1又はHi電源2のいずれかをHi電源として選択ドライバ120に接続するように切り替え制御される。なお、選択ドライバ120には、Lo電源が接続され、ローレベル側の動作電圧として常時Lo電圧(例えば−15V)が供給されている。
【0026】
また、電圧値設定機構は、図3(b)に示すような構成を適用することもできる。図3(b)に示す電圧値設定機構は、図3(a)に示したスイッチ161が選択ドライバ120の内部にスイッチ(電圧切替回路)162として設けられた構成を有している。すなわち、選択ドライバ120には、Hi電源1及びHi電源2が接続され、ハイレベル側の動作電圧としてHi電圧1(例えば+15V)及びHi電圧2(例えば+18V)が供給されている。そして、コントローラ150から供給されるスイッチ制御信号によりスイッチ162を切り替え制御して、Hi電圧1又はHi電圧2のいずれかをハイレベル側の動作電圧(図中「内部Hi電源」と表記)として利用する。
【0027】
このような構成を有する電圧値設定機構により、後述する表示駆動動作(駆動制御方法)において、各行の画素PIXを選択状態に設定して画像データに応じた階調信号(階調電圧Vdata)を書き込む書込動作期間に、コントローラ150からの選択制御信号(スイッチ制御信号)に基づいて、選択ドライバ120が、まず通常(設計値)よりも高い電位の第2信号電圧Vsh2(例えば+18V)の選択信号Sselを選択ラインLsに印加し、次いで通常の第1信号電圧Vsh1(例えば+15V)の選択信号Sselを印加する。
【0028】
電源ドライバ130は、表示パネル110に配設された各電源ラインLaに接続されている。電源ドライバ130は、後述するコントローラ150から供給される電源制御信号に基づいて、各行の電源ラインLaに所定のタイミングで所定の電圧値(発光レベル又は非発光レベル)の電源電圧Vsaを印加する。具体的には、電源ドライバ130は、後述する表示駆動動作(駆動制御方法)において、発光動作時(発光動作期間)のみ、各行の画素PIXの電源ラインLaに対して、ハイレベルの電源電圧Vsaを印加する。一方、電源ドライバ130は、各行の画素PIXへの書込動作期間を含む非発光動作時には、各行の画素PIXの電源ラインLaに対して、ローレベルの電源電圧Vsaを印加する。
【0029】
データドライバ140は、表示パネル110の各データラインLdに接続され、後述するコントローラ150から供給されるデータ制御信号に基づいて、画像データに応じた階調信号(階調電圧Vdata)を生成して、各データラインLdを介して画素PIXへ供給する。
【0030】
図4は、本実施形態に係る表示装置に適用されるデータドライバの構成例を示す概略図である。なお、図4に示すデータドライバの構成については、表示データに応じた電圧値の階調電圧Vdataを生成することができる一例を示したものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
データドライバ140は、例えば図4に示すように、シフトレジスタ回路141と、データレジスタ回路142と、データラッチ回路143と、デジタル−アナログ変換回路(図中、「D/Aコンバータ」と表記)144と、バッファ回路145と、を備えている。
【0032】
シフトレジスタ回路141は、コントローラ150から供給されるデータ制御信号(シフトクロック信号CLK、サンプリングスタート信号STR)に基づいて、順次シフト信号を生成、出力する。データレジスタ回路142は、該シフト信号の入力タイミングに基づいて、コントローラ150から供給される1行分の表示データD0〜Dmを順次取り込む。データラッチ回路143は、データ制御信号(データラッチ信号STB)に基づいて、データレジスタ回路142により取り込まれた1行分のデジタルデータからなる表示データD0〜Dmを保持する。D/Aコンバータ144は、図示を省略した電源供給手段から供給される階調基準電圧V0〜VPに基づいて、上記保持された表示データD0〜Dmを、所定のアナログ信号電圧(階調電圧Vpix)に変換する。バッファ回路145は、階調電圧Vpixに対応する階調電圧Vdataを生成する。そして、バッファ回路145は、コントローラ150から供給されるデータ制御信号(出力イネ−ブル信号OE)に基づくタイミングで、当該表示データに対応する列のデータラインLdに階調電圧Vdataを一斉に出力する。
【0033】
コントローラ150は、表示装置100の外部から供給される画像データに基づいて、輝度階調データを含むデジタルデータからなる表示データを生成してデータドライバ140に供給する。また、コントローラ150は、画像データに基づいて生成又は抽出されるタイミング信号に基づいて、上述した選択ドライバ120及び電源ドライバ130、データドライバ140の動作状態を制御して、表示パネル110における所定の駆動制御動作を実行するための選択制御信号及び電源制御信号、データ制御信号を生成して出力する。
【0034】
加えて、本実施形態に係るコントローラ150においては、上述した選択ドライバ120(厳密には、スイッチ161又は162を含む電圧値設定機構)に対して、スイッチ制御信号を含む選択制御信号を供給することにより、画像データに応じた階調信号(階調電圧Vdata)を書き込む書込動作期間に、選択ドライバ120から選択ラインLsに印加される選択信号Sselの電圧を所定のタイミングで切り替えるように制御する。具体的には、コントローラ150は、選択ラインLsの寄生容量が大きくなく、上述した選択信号Sselの波形なまりが生じていない、又は、顕著でない状態(通常状態)における選択信号Sselの電圧を通常電圧(設計値)として、当該通常電圧よりも高い電位の第2信号電圧Vsh2の選択信号Sselを、最初に選択ラインLsに印加するように制御する。その後、コントローラ150は、通常電圧(第1信号電圧Vsh1)の選択信号Sselを選択ラインLsに印加するように制御する。
【0035】
(画素)
次に、本実施形態に係る表示パネル110に配列される画素PIXの構成例について具体的に説明する。
【0036】
図5は、本実施形態に係る表示パネルに適用される画素の一例を示す回路構成図である。なお、図5に示す画素の構成については、アクティブマトリクス型の駆動方式に適用可能な画素回路(発光駆動回路)の一例を示したものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、画素回路に複数の薄膜トランジスタを備えるものであれば、上述した特許文献1、2に示したものであってもよい。また、本実施形態においては、画素の一例として、表示データに応じた電圧値の階調電圧を印加することにより、各画素に設けられた発光素子に表示データに応じた発光駆動電流を流して、所望の輝度階調で発光動作(表示動作)させる電圧指定型の階調制御方式に対応した回路構成を備えた場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施形態に適用可能な画素は、例えば、表示データに応じた電流値の階調電流を供給することにより、各画素の発光素子に表示データに応じた発光駆動電流を流して、所望の輝度階調で発光動作させる電流指定型の階調制御方式に対応した回路構成を備えたものであってもよい。
【0037】
本実施形態に係る表示パネル110に適用される画素PIXは、図5に示すように、選択ドライバ120に接続された選択ラインLsとデータドライバ140に接続されたデータラインLdとの各交点近傍に配置されている。各画素PIXは、電流駆動型の発光素子である有機EL素子OELと、該有機EL素子OELを発光駆動するための電流を生成する発光駆動回路(画素回路)DCと、を備えている。
【0038】
ここで、発光駆動回路DCは、後述する表示駆動動作において、書込動作時には、選択ドライバ120から印加される選択信号Sselに基づいて画素PIXを選択状態に設定し、データドライバ140から供給される階調信号(階調電圧Vdata)を取り込む。また、発光駆動回路DCは、発光動作時には、上記取り込まれた階調信号に応じた発光駆動電流を生成して、有機EL素子OELに供給する。
【0039】
図5に示す発光駆動回路DCは、3個のトランジスタ(薄膜トランジスタ)Tr11〜Tr13と、キャパシタCsと、を備えた回路構成を有している。トランジスタ(スイッチングトランジスタ)Tr11は、ゲート端子が選択ラインLsに接続され、また、ドレイン端子が電源ラインLaに接続され、また、ソース端子が接点N11に接続されている。トランジスタ(スイッチングトランジスタ)Tr12は、ゲート端子が選択ラインLsに接続され、また、ソース端子がデータラインLdに接続され、また、ドレイン端子が接点N12に接続されている。トランジスタ(駆動トランジスタ)Tr13は、ゲート端子が接点N11に接続され、ドレイン端子が電源ラインLaに接続され、ソース端子が接点N12に接続されている。また、キャパシタ(容量素子)Csは、トランジスタTr13のゲート端子(接点N11)及びソース端子(接点N12)間に接続されている。キャパシタCsは、トランジスタTr13のゲート・ソース端子間に形成される寄生容量であってもよいし、該寄生容量に加えて接点N11及び接点N12間に別個の容量素子を並列に接続したものであってもよい。
【0040】
また、有機EL素子OELは、アノード(アノード電極)が上記発光駆動回路DCの接点N12に接続され、カソード(カソード電極)が共通電極Ecに接続されている。共通電極Ecは、図示を省略した定電圧源に接続され、所定の低電位の共通電圧Vcom(例えば接地電位Vgnd)が印加されている。
【0041】
なお、図5において、トランジスタTr11〜Tr13については、特に限定するものではないが、例えば全て同一のチャネル型を有する薄膜トランジスタを適用することができる。トランジスタTr11〜Tr13は、アモルファスシリコン薄膜トランジスタであっても、ポリシリコン薄膜トランジスタであってもよい。
【0042】
特に、トランジスタTr11〜Tr13としてnチャネル型の薄膜トランジスタを適用し、かつ、トランジスタTr11〜Tr13としてアモルファスシリコン薄膜トランジスタを適用した場合には、すでに確立されたアモルファスシリコン製造技術を適用して、多結晶型や単結晶型のシリコン薄膜トランジスタに比較して、簡易な製造プロセスで動作特性(電子移動度等)が均一で安定したトランジスタを実現することができる。
【0043】
(表示装置の駆動制御方法)
次に、本実施形態に係る表示装置における駆動制御方法(画像表示動作)について、図面を参照して説明する。
【0044】
図6は、本実施形態に係る表示装置に適用される表示画素における基本動作を示すタイミングチャートである。図7は、本実施形態に係る表示装置に適用される選択ドライバにおける選択信号の電圧値設定動作を示すタイミングチャートである。なお、図6においては、表示パネル110に2次元配列された画素PIXのうち、特定の行の画素PIXに着目して動作を説明する。図7においては、表示パネル110に2次元配列された画素PIXのうち、便宜的に1〜3行目の選択ラインに着目して選択信号の電圧値設定動作を説明する。また、図8は、本実施形態に係る表示画素における書込動作及び発光動作を示す概念図である。
【0045】
本実施形態に係る表示装置100の駆動制御方法(画像表示動作)は、概略、図6に示すように、所定の1処理サイクル期間Tcyc内に、各行の画素PIXに表示データを書き込む書込動作期間(信号印加期間)Twrtと、該表示データに応じた輝度階調で、全ての画素PIXを一斉に発光動作させる発光動作期間(表示動作期間)Temと、を含むように設定されている(Tcyc≧Twrt+Tem)。ここで、書込動作期間Twrtにおいては、全ての画素PIXの有機EL素子OELが発光動作しない非発光状態に設定される。
【0046】
(書込動作)
書込動作期間Twrtにおいては、図6に示すように、選択ドライバ120から各選択ラインLsに対して、所定の選択レベル(ハイレベル)に設定された選択信号Sselが順次印加されることにより、当該選択ラインLsに接続された画素PIXが選択状態に設定される。また、このとき、電源ドライバ130から各行の電源ラインLaに対して、非発光レベル(ローレベル;共通電圧Vcom以下の電位)の電源電圧Vsaが印加される。
【0047】
ここで、図6、図7に示すように、各行の書込動作期間Twrtには、第2信号電圧印加期間(第2の期間)Twh2と、第1信号電圧印加期間(第1の期間)Twh1とが設定されている。そして、選択ドライバ120から選択ラインLsに印加される選択信号Sselは、第2信号電圧印加期間Twh2と、第1信号電圧印加期間Twh1とで、その電圧値が異なるように設定される。また、第2信号電圧印加期間Twh2と第1信号電圧印加期間Twh1との切り替えタイミングは、予め設定されている。
【0048】
具体的には、第2信号電圧印加期間Twh2においては、上述したコントローラ150から選択ドライバ120に供給される選択制御信号(スイッチ制御信号)に基づいて、選択ドライバ120の出力回路122に対して、Hi電源2からHi電圧2(例えば+18V)の動作電圧が供給される。これにより、選択ドライバ120から選択ラインLsに対して、選択レベルとしてHi電圧2(第2設定電圧)に基づく第2信号電圧Vsh2(例えば+18V)の選択信号Sselが印加される。ここで、第2信号電圧印加期間Twh2の時間幅は、図7に示すように、コントローラ150から供給されるスイッチ制御信号の信号幅に基づいて規定される。
【0049】
次いで、第1信号電圧印加期間Twh1においては、選択ドライバ120に供給される上記選択制御信号(スイッチ制御信号)に基づいて、選択ドライバ120の出力回路122に対して、Hi電源1からHi電圧1(例えば+15V)の動作電圧が供給される。これにより、選択ドライバ120から選択ラインLsに対して、選択レベルとしてHi電圧1(第1設定電圧)に基づく第1信号電圧Vsh1(例えば+15V)の選択信号Sselが印加される。
【0050】
このように、各ドライバから所定の駆動信号を印加することにより、選択状態に設定された行の各画素PIXの発光駆動回路DCに設けられたトランジスタTr11及びTr12がオン動作して、トランジスタTr13は、ゲート・ドレイン端子間が短絡してダイオード接続状態に設定される。
【0051】
そして、図6に示すように、このタイミングに同期して、データドライバ140から各データラインLdに対して、表示データに応じた電圧値の階調電圧Vdataが供給される。ここで、階調電圧Vdataは、各画素PIXに書き込まれる表示データに含まれる輝度階調値に応じた負極性の電圧値に設定される。ここで、階調電圧Vdataは負電圧であり、後述する書込電流Iaは負電流であるが、図6においては、便宜上、絶対値で記載している。
【0052】
このように、データラインLdに負極性の階調電圧Vdataが供給されることにより、ローレベルの電源電圧Vsaよりもさらに低電位の電圧がトランジスタTr13のソース端子(接点N12;キャパシタCsの他端側)に印加される。
【0053】
したがって、接点N11及びN12間(トランジスタTr13のゲート・ソース間)に電位差が生じることによりトランジスタTr13がオン動作して、図8(a)に示すように、電源ラインLaからトランジスタTr13、接点N12、トランジスタTr12、データラインLdを介してデータドライバ140方向に、階調電圧Vdataに対応した書込電流Iaが流れる。
【0054】
このとき、キャパシタCsには、接点N11及びN12間(薄膜トランジスタのTr13のゲート・ソース間)に生じた電位差に対応する電荷が蓄積され、電圧成分として保持される。また、有機EL素子OELのアノード(接点N12)に印加される電位はカソードの電位(共通電圧Vcom)よりも低くなるため、有機EL素子OELには電流が流れず発光動作は行われない(非発光動作)。
【0055】
そして、上述したような各行の画素PIXへの書込動作を、相互に時間的に重ならないように繰り返し実行する。具体的には、図7に示すように、1行目の選択ラインLsに対して、上述したような異なる電圧(第1信号電圧Vsh1、第2信号電圧Vsh2)に切り替え設定される選択信号Sselを印加して画素PIXを選択状態に設定し、各データラインLdに対して、階調電圧Vdataを供給して表示データに応じた電圧成分を書き込む一連の動作を、2行目以降の画素PIXに対してもタイミングをずらして順次実行する。ここで、各行の画素PIXに対して書込動作を繰り返し実行している期間においては、電源ドライバ130から各行の電源ラインLaに対して、非発光レベルの電源電圧Vsaが印加されているため、各画素PIXの有機EL素子OELが発光動作しない非発光状態に設定される。
【0056】
(発光動作)
次いで、書込動作期間Twrt終了後の発光動作期間(表示動作期間)Temにおいては、図6に示すように、選択ドライバ120から各選択ラインLsに対して、非選択レベル(ローレベル)としてLo電圧に基づく電圧Vsl(例えば−15V)の選択信号Sselが印加されることにより、各画素PIXが非選択状態に設定される。これにより、各画素PIXの発光駆動回路DCに設けられたトランジスタTr11及びTr12がオフ動作して、データラインLdと各画素PIXとの接続が遮断される。このとき、キャパシタCsには、上述した書込動作期間Twrtにおいて蓄積された電荷が保持される。
【0057】
そして、この状態で電源ドライバ130から各行の電源ラインLaに対して、発光レベル(ハイレベル;共通電圧Vcomよりも高い電位)の電源電圧Vsaが印加される。これにより、各画素PIXに設けられたトランジスタのTr13のゲート・ソース間(キャパシタCsの両端)の電位差が保持されることになり、トランジスタTr13はオン状態を維持し、また、有機EL素子OELのアノード(接点N12)に印加される電位はカソードの電位(接地電位)よりも高くなる。
【0058】
したがって、図8(b)に示すように、各画素PIXにおいて、電源ラインLaからトランジスタTr13、接点N12を介して、有機EL素子OELに順バイアス方向に、上記書込電流Iaと略同等の電流値の発光駆動電流Ibが流れ、有機EL素子OELが発光動作する。これにより、各画素PIXの有機EL素子OELは、書込動作期間Twrtに書き込まれた表示データ(階調電圧Vdata)に応じた輝度階調で発光する動作を継続する。
【0059】
(比較検証)
次に、本実施形態に係る表示装置(発光装置)及びその駆動制御方法における作用効果について、比較対象を示して詳しく説明する。
【0060】
図9は、本実施形態の比較対象にとなる表示装置の駆動制御方法の一例を示すタイミングチャートである。また、図10は、比較対象となる駆動制御方法を適用した場合の選択ライン電圧の変化を示す図である。
【0061】
まず、比較対象として、図5に示したような画素PIXを備えた表示装置100において、図9に示すように、書込動作時に、ハイレベル側の電圧値を一定に設定した選択信号Sselを選択ラインLsに印加する場合について説明する。この場合、選択ドライバ120から選択ラインLsに印加される選択信号Sselは、選択レベルとして単一の電圧Vsh(例えば+15V)に設定されている。この選択レベルは、上述した第1の実施形態における通常電圧である選択信号Sselの第1信号電圧Vsh1に対応する。また、選択信号Sselは、非選択レベルとして、例えば−15Vに設定されている。この非選択レベルは、上述した第1の実施形態におけるLo電源の電圧Vslに対応する。
【0062】
このような駆動制御方法を用いた場合において、選択ラインLsに選択信号Sselを印加した際の選択ライン電圧の変化についてシミュレーション実験を行った。それによれば、図10に示すように、選択ドライバ120からの距離が最も短い1列目の画素PIX近傍における選択ライン電圧(図中では、規格化した検出電圧)は、図中特性線SPX(1)に示すように、選択ドライバ120から出力される選択信号Sselに対して、比較的短い時間(0〜概ね2.0μsec)で選択信号Sselの電圧値(図中では、規格化値1.0)に漸近し、その後(概ね2.0μsec〜)、時間経過とともに徐々に選択信号Sselの電圧値に収束していく傾向を示した。
【0063】
これに対して、選択ドライバ120からの距離が最も長いm列目の画素PIX近傍における選択ライン電圧は、図中特性線SPX(m)に示すように、選択ドライバ120からの選択信号Sselの印加直後から緩やかに上昇し、十分に時間(概ね15.0μsec以上)をかけて選択信号Sselの電圧値(規格化値1.0)に収束していく傾向を示した。つまり、選択ドライバ120からの距離が長くなるにしたがって、選択信号Sselに対する選択ライン電圧(検出電圧)の波形なまりが大きくなることがわかる。なお、選択ラインLsに接続された画素PIXのうち、上記1列目とm列目の中間のj列(1<j<mとなる正の整数)に配設された画素PIX近傍における選択ライン電圧は、図中特性線SPX(j)に示すように、上述した特性線SPX(1)とSPX(m)との間の変化傾向を示した。
【0064】
図10に示したように、列ごとに選択信号Sselの波形形状(波形なまり)が異なる原因は、選択信号Sselの出力源である選択ドライバ120から各画素PIXまでの、選択ラインLsの距離に起因する配線抵抗と、各画素PIXの発光駆動回路DCに設けられるトランジスタ素子の数に起因する寄生容量と、に基づく時定数によるものである。ここで、この時定数は、還元すれば、各列の画素PIXの負荷の大きさに相当する。
【0065】
ここで、表示パネルを大画面化した際の表示特性の向上のため、動作周波数を例えば120Hzとした倍速駆動を行った場合、各行の画素PIXに許容される書込動作期間Twrtの長さは、概ね10μsec程度の短い時間に設定されることになる。この観点で、図10に示したシミュレーション結果を検証すると、概ね10μsec程度の時間では、1列目から選択ドライバ120からの距離が最も長いm列目のいずれの画素PIXの位置においても、選択ライン電圧は選択信号Sselの電圧値(規格化値1.0)に到達せず、安定した選択状態に設定されないことがわかる。特に、中間のj列からm列目の画素PIXの位置においては、選択状態が極めて不安定になる可能性がある。すなわち、比較対象となる駆動制御方法においては、画素PIXの選択状態への移行が大幅に遅延することになり、書込動作期間Twrtにおける実質的な選択状態となる期間が相対的に短くなる。そのため、表示データの書き込み不足に起因する輝度ムラや画面のちらつきが生じて、画質の劣化を招くという問題を有している。
【0066】
これに対して、本実施形態に係る表示装置100の駆動制御方法においては、上述したように、書込動作期間Twrtに選択ドライバ120から選択ラインLsに印加される選択信号Sselが、まず最初に、通常電圧である第1信号電圧Vsh1よりも高い電位の第2信号電圧Vsh2に設定される。そして、第2信号電圧印加期間Twh2終了後に通常電圧である第1信号電圧Vsh1に切り替え設定される。このような選択信号Sselを選択ラインLsに印加することにより、当該選択ラインLsに接続された各列の画素PIXに印加される選択信号Sselの遅延の差をなくすことができる。
【0067】
図11は、本実施形態に係る駆動制御方法を適用した場合の選択ライン電圧の変化を示す図である。ここで、上述したように、大画面の表示パネルにおいて、例えば120Hzの動作周波数で倍速駆動を行う場合の書込動作期間Twrtは概ね10.0μsecである。図11は、この書込動作期間Twrt中に、選択信号Sselとして上記通常電圧よりも高い第2信号電圧Vsh2(例えば+18V)を6.0μsecまで印加した後、通常電圧である第1信号電圧Vsh1(例えば+15V)に切り替えて印加した場合のシミュレーション結果である。
【0068】
それによれば、図11に示すように、選択ドライバ120から最も近い1列目の画素PIX近傍における選択ライン電圧(図中では、規格化した検出電圧)は、図中特性線SP(1)に示すように、選択信号Sselの印加開始後、比較的短い時間(0〜概ね2.0μsec)で急峻に上昇して、その後、通常電圧に相当する規格化値1.0を超えて、選択信号Sselを切り替えるタイミング(6.0μsec)で概ね1.1に達する変化傾向を示した。その後、選択信号Sselの電圧値が通常電圧である第1信号電圧Vsh1に切り替わることにより、選択ライン電圧は、急速に通常電圧に相当する規格化値1.0に収束する変化傾向を示した。
【0069】
一方、選択ドライバ120から最も遠いm列目の画素PIX近傍における選択ライン電圧は、図中特性線SP(m)に示すように、選択信号Sselの印加後、比較的緩やかに上昇して、選択信号Sselが第1信号電圧Vsh1に切り替わった直後のタイミング(6.0μsec)で概ね1.0に収束する変化傾向を示した。なお、これらの中間のj列に配設された画素PIX近傍における選択ライン電圧は、図中特性線SP(j)に示すように、上述した特性線SP(1)とSP(m)との間の変化傾向を示した。
【0070】
したがって、本実施形態に係る駆動制御方法によれば、選択信号Sselが切り替わった直後のタイミング(第1信号電圧印加期間Twh1の開始時点)で、選択ラインLsのいずれの位置に接続された画素PIXに対しても略均一な電圧値(第1信号電圧Vsh1)の選択信号Sselが印加されることがわかった。すなわち、各列の画素PIXに対する選択信号Sselの波形なまりが改善されるとともに、選択信号Sselが第1信号電圧Vsh1に切り替わったタイミング以降では信号遅延の差がほとんどない状態が実現される。
【0071】
ここで、選択信号Sselの電圧値を一定値にすることの意味について説明する。上述のように、書込動作期間Twrtにおいて選択信号Sselが印加されたとき、選択信号Sselが発光駆動回路DCのトランジスタTr11、Tr12のゲートに印加され、トランジスタTr11、Tr12がオン動作して、トランジスタTr13はダイオード接続状態に設定され、このときデータラインLdに階調電圧Vdataが供給され、電源ラインLaからトランジスタTr13、接点N12、トランジスタTr12、データラインLdを介して、階調電圧Vdataに応じた書込電流Iaが流れる。このとき、トランジスタTr12が理想的な特性を有している場合には、そのゲートに印加される電圧の電圧値が、トランジスタTr12が飽和領域で動作するのに必要な所定の電圧値以上であれば、ソース・ドレイン間の電圧が一定電圧であるとき、ソース・ドレイン間に流れる電流の電流値はゲート電圧に依らずに一定となる。
【0072】
しかし、実際には、トランジスタTr12の特性が理想的な特性でなく、飽和領域においてソース・ドレイン間の電圧が一定電圧であるときにソース・ドレイン間に流れる電流の電流値が、ゲート電圧によって多少変化するような特性を有していることがある。このような場合には、書込動作期間Twrt中の選択ラインLsの電圧によって、階調電圧Vdataが同じでも書込電流Iaの電流値が異なることになる。その結果、キャパシタCsに蓄積される電荷量が異なることになり、ひいては、有機EL素子OELに供給される発光駆動電流Ibの電流値が異なり、発光輝度のバラツキ等をもたらすことになる。このような発光輝度のバラツキの発生を抑えて良好な表示品位を得るためには、階調電圧Vdataに対する書込電流Iaの電流値が一定値となるようにしなければならない。このために、選択信号Sselの電圧値をできるだけ一定値にすることが好ましいのである。
【0073】
このように、本実施形態に係る表示装置100の駆動制御方法においては、書込動作期間Twrtに選択ラインLsに対して異なる電圧の選択信号Sselを順次印加し、かつ、最初に印加する選択信号Sselの電圧(第2信号電圧Vsh2)を通常電圧(第1信号電圧Vsh1)よりも高い電位となるように設定する。これにより、本実施形態によれば、選択ドライバ120からの距離(還元すれば、各列の画素PIXの負荷の大きさ)に関わりなく、各列の画素PIXに対して信号遅延の差がない選択信号Sselを印加することができるので、表示データの書き込み不足に起因する輝度ムラや画面のちらつきの発生を抑制して、良好な画質を実現することができる。
【0074】
このような選択信号Sselの電圧値の切り替え制御は、上述したようなシミュレーション実験等に基づいて、第2信号電圧印加期間Twh2の長さを設定することができるが、次のような選択ライン電圧の計測機構を備える構成を用いて設定することもできる。
【0075】
図12は、本実施形態に係る表示装置に適用される選択ライン電圧の計測機構を示す概略構成図である。
本実施形態に係る表示装置100に適用される選択ライン電圧の計測機構は、例えば図12に示すように、選択ラインLsに接続された計測用配線Lms(1)及びLms(m)と、当該計測用配線Lms(1)及びLms(m)に接続された選択ライン電圧計測回路170と、を有している。
【0076】
計測用配線Lms(1)は、特定の行の選択ラインLsにおいて、1列目の画素PIXが接続された位置の近傍に接続されている。また、計測用配線Lms(m)は、選択ラインLsの、選択ドライバ120からの距離が最も長い最終列のm列目の画素PIXが接続された位置の近傍に接続されている。これにより、実質的に選択ラインLsを介して1列目及び最終列であるm列目の画素PIXに印加される選択信号Sselが切り替わった直後のタイミング(第1信号電圧印加期間Twh1の開始時点)の電圧値が、選択ライン電圧計測回路170により計測される。
【0077】
選択ライン電圧計測回路170は、例えば計測された選択ライン電圧の大小関係を比較して、その結果をコントローラ150に検出結果として出力する。コントローラ150は、この検出結果に基づいて、上述した書込動作期間Twrtにおける第2信号電圧印加期間Twh2の長さを設定する。
【0078】
ここで、第2信号電圧印加期間Twh2が長過ぎると、図11に示した特性線SP(1)のように、選択ラインLs(すなわち画素PIX)に印加される電圧が通常電圧である第1信号電圧Vsh1よりも高くなり過ぎる可能性がある。そこで、第2信号電圧印加期間Twh2の設定動作として、次のようなフィードバック制御を用いることができる。
【0079】
図13は、本実施形態に係る表示装置に適用される第2信号電圧印加期間Twh2の設定方法の一例を示すフローチャートである。
第2信号電圧印加期間Twh2の設定動作は、図13に示すように、まず、コントローラ150からの選択制御信号により、選択ドライバ120において、書込動作期間Twrt中に設定される第2信号電圧印加期間Twh2の長さを「0」(初期値)に設定する(初期化ステップS101)。そして、この状態で、選択ドライバ120から選択ラインLsに選択信号Sselを印加する(選択信号印加ステップS102)。ここで、初期状態では、第2信号電圧印加期間Twh2の時間はゼロに設定されるため(Twh2=0)、実質的に通常電圧である第1信号電圧Vsh1のみが選択ラインLsに印加される。
【0080】
次いで、選択信号Ssel印加後の所定のタイミング(具体的には、書込動作期間Twrt内の任意のタイミング)で、選択ライン電圧計測回路170により1列目とm列目の画素PIXの位置における選択ライン電圧の電圧値を、計測用配線Lms(1)及びLms(m)を介して個別に計測する(電圧計測ステップS103)。
【0081】
次いで、選択ライン電圧計測回路170は、計測された電圧値の大小関係を比較して、その結果をコントローラ150に出力する(電圧比較ステップS104)。ここで、電圧値の比較処理は、アナログ電圧の状態のまま実行するものであってもよいし、図示を省略したアナログ−デジタル変換回路(以下、「ADC」と記す)によりデジタル信号に変換した後に実行するものであってもよい。また、この電圧値の比較処理は、選択ライン電圧計測回路170内で実行するものであってもよいし、コントローラ150内で実行するものであってもよい。コントローラ150内で電圧値の比較処理を実行する場合には、選択ライン電圧計測回路170は、例えば内部に備えるADCによりアナログ電圧からなる計測電圧をデジタル信号に変換して、コントローラ150に出力する。
【0082】
次いで、コントローラ150は、測定電圧の比較結果に差がある場合(具体的には、図10に示したように、1列目の計測電圧がm列目の計測電圧よりも高い場合、電圧比較ステップS104:No)には、第2信号電圧印加期間Twh2に一定の単位時間Taを加算する(印加期間調整ステップS106)。そして、コントローラ150は、単位時間Taが加算された第2信号電圧印加期間Twh2に対応するように信号幅が設定されたスイッチ制御信号を生成して、図3に示したスイッチ161又は選択ドライバ120内のスイッチ162に出力する。これにより、再び選択信号印加ステップS102に戻り、まず最初に、単位時間Taが加算された時間幅を有する第2信号電圧印加期間Twh2にHi電圧2が選択ラインLsに印加され、続いて、書込動作期間Twrtの終了時点までの第1信号電圧印加期間Twh1に第1信号電圧が選択ラインLsに印加される。
【0083】
このように、選択信号印加ステップ、電圧計測ステップ、電圧比較ステップ及び印加期間調整ステップからなる一連の処理動作を繰り返し実行し、電圧比較ステップS104において、1列目の計測電圧とm列目の計測電圧とが第1信号電圧Vsh1に近似又は等しく、所定の許容範囲内の値であるとき(電圧比較ステップS104:Yes)の時間幅(信号幅)を、第2信号電圧印加期間Twh2の長さとして決定し、メモリに記憶する(印加期間決定ステップS105)。ここで、許容範囲は、第1信号電圧Vsh1の電圧値の95%〜110%の値に設定される。
【0084】
これにより、図7に示したように、書込動作期間Twrtにおいて、コントローラ150からスイッチ161又は162に対して、上記メモリに記憶された信号幅のスイッチ制御信号を供給することにより、最初に、所定の第2信号電圧印加期間Twh2中、Hi電圧2が選択ラインLsに印加され、続いて、書込動作期間Twrtの終了時点までの第1信号電圧印加期間Twh1中、第1信号電圧が選択ラインLsに印加される。
【0085】
なお、本実施形態において、図13のフローチャートに示した駆動制御方法を実現するための構成(選択ライン電圧の計測機構)は、図12に示したものに限定されない。本実施形態(図12)と同等の構成、及びさらに別の構成については、後述する第3の実施形態(図16、図17参照)においても詳しく説明する。
【0086】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る表示装置(発光装置)及びその駆動制御方法の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0087】
上述した第1の実施形態においては、表示パネル110の端部から選択ドライバ120までの距離は、各行で同一であるものとして、書込動作期間Twrt中の第2信号電圧印加期間Twh2の長さを設定する場合について説明した。すなわち、第1の実施形態においては、図7に示したように、1行目からn行目までの各行における第2信号電圧印加期間Twh2の長さは全て同一に設定されている。これに対し、第2の実施形態においては、表示パネル110の端部から選択ドライバ120までの接続配線(引き回し配線)の長さが異なる場合に対応した表示装置の駆動制御方法を有していることを特徴とする。
【0088】
図14は、第2の実施形態に係る表示装置の一例を示す概略ブロック図である。ここでは、図1に示した表示装置の全体構成のうち、本実施形態に特有の構成のみを示し、他の構成を省略した。図15は、本実施形態に係る表示装置に適用される選択ドライバにおける選択信号の電圧値設定動作を示すタイミングチャートである。
【0089】
大画面の表示パネルを備える表示装置においては、一般に、表示パネルの画面サイズに比較してドライバ機能を搭載したICチップ(ドライバチップ)のサイズの方が小さくなる。このような場合、表示パネルの各行に配設された選択ラインの端部から選択ドライバまでの距離は、均一にはならない。例えば図14に示すように、表示パネル110の行方向(図面左右方向)の外方下部(最終行側)に偏って選択ドライバ120が配置された構成においては、選択ドライバ120と1行目の選択ラインLs(1)とを接続する引き回し配線Lrt(1)の長さが、n行目の選択ラインLs(n)に接続される引き回し配線Lrt(n)の長さに比較して顕著に長くなる。すなわち、選択ドライバ120から選択ラインLsに接続された画素PIXまでの距離が行ごとに異なることになる。
【0090】
上述した第1の実施形態において説明したように、選択信号Sselの波形なまりは、選択ラインLsの配線長に起因する配線抵抗と、画素PIXに設けられるトランジスタ素子の数に起因する寄生容量に基づく時定数に影響される。図14に示したように、引き回し配線を含む選択ラインLsの配線長が行ごとに異なる場合においても同様に、各行の選択ラインLsにおける時定数が異なることになる。そのため、1行目の選択ラインLs(1)に印加される選択信号Sselの波形なまりが、n行目の選択ラインLs(n)に比較して顕著になり、1行目の選択ラインLs(1)に接続された画素PIXにおける書き込み不足が生じやすくなる。
【0091】
そこで、本実施形態においては、図15に示すように、各行の書込動作期間Twrtにおいて、選択ラインLsにHi電圧2を印加する第2信号電圧印加期間Twh2の長さを、引き回し配線を含む選択ラインLsの配線長(すなわち、負荷の大きさ)に応じて異ならせるように設定する。具体的には、図15に示すように、引き回し配線Lrt(1)を含む配線長が最も長い1行目の選択ラインLs(1)に印加される選択信号Sselにおける第2信号電圧印加期間Twh2(1)の長さが最も長く設定される。そして、2行目の選択ラインLs(2)以降のi行目の第2信号電圧印加期間Twh2(i)の長さは徐々に短くなるように設定されて、引き回し配線Lrt(n)を含む配線長が最も短いn行目の選択ラインLs(n)に印加される選択信号Sselにおける第2信号電圧印加期間Twh2(n)の長さが最も短く設定される。また、これに応じて、1行目の選択ラインLs(1)に印加される選択信号Sselにおける第1信号電圧印加期間Twh1(1)の長さが最も短く設定され、n行目の選択ラインLs(n)に印加される選択信号Sselにおける第1信号電圧印加期間Twh1(n)の長さが最も長く設定される。
【0092】
このような第2信号電圧印加期間Twh2及び第1信号電圧印加期間Twh1の設定方法としては、例えば、上述した第1の実施形態に示した駆動制御方法(図13のフローチャート参照)を用いて、1列目の計測電圧とm列目の計測電圧とが等しくなり、双方の差がなくなる(0となる)状態のときの時間幅を、第2信号電圧印加期間Twh2の長さとして決定する一連の処理動作(ステップS101〜S106)を、各行ごとに実行することによって設定する。
【0093】
このように、本実施形態に係る表示装置の駆動制御方法によれば、書込動作期間に選択ラインに対して異なる電圧値の選択信号を順次印加し、かつ、最初に印加する選択信号の印加期間を調整する。これにより、本実施形態によれば、各行の選択ラインにおいて、選択ドライバからの距離に関わりなく、各列の画素PIXに対して信号遅延の差がない選択信号を印加することができるので、表示データの書き込み不足に起因する輝度ムラや画面のちらつきの発生を抑制して、良好な画質を実現することができる。
【0094】
なお、本実施形態は、図13に示した一連の処理動作からなる駆動制御方法を、表示パネル110の全ての行について実行して、各行ごとに異なる長さの第2信号電圧印加期間Twh2を設定するものに限定されない。本実施形態は、例えば、1行目とn行目の選択ラインLs(1)、Ls(n)についてのみ、図13に示した一連の処理動作を実行し、当該1行目とn行目の選択ラインLs(1)、Ls(n)に設定される第2信号電圧印加期間Twh2の長さに基づいて(例えば比例配分により)、他の行の選択ラインLsの第2信号電圧印加期間Twh2の長さを算出して決定するものであってもよい。
【0095】
また、本実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様に、図13のフローチャートに示した駆動制御方法を実現するための構成(選択ライン電圧の計測機構)として、第1の実施形態(図12参照)と同等の構成、又は、後述する第3の実施形態(図16、図17参照)に示す構成を適用することができる。
【0096】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る表示装置(発光装置)及びその駆動制御方法の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0097】
上述した第1及び第2の実施形態においては、図13のフローチャートに示した一連の処理動作(ステップS201〜S206)からなる駆動制御方法により、各行の書込動作期間Twrtに含まれる第2信号電圧印加期間Twh2の長さを設定する手法について説明した。すなわち、第1及び第2の実施形態においては、上述した選択信号Sselの波形なまりを抑制する手法として、第2信号電圧印加期間Twh2の長さのみを制御する手法を示した。これに対し、第3の実施形態においては、第2信号電圧印加期間Twh2の長さに加えて、当該第2信号電圧印加期間Twh2に印加する選択信号Sselの電圧値Vsh2も適宜変化させて制御する手法を有していることを特徴とする。
【0098】
また、上述した第1及び第2の実施形態においては、選択ドライバ120が単体のICチップとして形成され、表示パネル110の周辺に独立して配置された構成を示した。ところで、近年、表示装置の周辺回路が有する異なるドライバ機能を単一のICチップに搭載して、表示パネルの近傍に配置することが一般的に行われている。以下に示す第3の実施形態においては、選択ドライバ及びデータドライバの機能を備えた単一のICチップ(1チップドライバ)を、表示パネルの周辺に配置した場合の構成についても説明する。加えて、第3の実施形態においては、選択ラインの電圧値を計測するための選択ライン電圧の計測機構についても、第1及び第2の実施形態(図12参照)と同等の構成及びさらに別の構成を示して説明する。
【0099】
(表示装置)
まず、本実施形態に係る表示装置(発光装置)の概略構成について、図面を参照して説明する。
【0100】
図16、図17は、第3の実施形態に係る表示装置の構成例を示す概略ブロック図である。ここでは、図1に示した表示装置の全体構成のうち、本実施形態に特有の構成のみを示し、他の構成を省略した。
【0101】
(表示装置)
図16(a)に示す第3の実施形態に係る表示装置100は、表示パネル110の列方向の外方(図面下方側)に配置された選択・データ1チップドライバ180と、引き回し配線Lrt(Lrt(1)〜Lrt(n))と、計測用配線Lms(1)、Lms(m)と、ADC171と、を有している。選択・データ1チップドライバ180は、上述した第1の実施形態に示した選択ドライバ120とデータドライバ140の両方の機能を単一のチップに搭載している。引き回し配線Lrtは、表示パネル110に配設された選択ラインLs(Ls(1)〜Ls(n))と選択・データ1チップドライバ180とを接続する。計測用配線Lms(1)、Lms(m)は、第1の実施形態に示した構成(図12参照)と同様に、選択ラインの所定の位置の選択ライン電圧を計測するためのものである。ADC171は、計測用配線Lms(1)、Lms(m)を介して個別に計測されたアナログ電圧からなる選択ライン電圧をデジタル信号に変換して、検出結果としてコントローラ150に出力する。
【0102】
なお、本実施形態に係るADC171は、選択・データ1チップドライバ180と別個の構成として独立して設けられるものであってもよいし、図16(b)に示すように、ADC171が選択・データ1チップドライバ180の内部に設けられているものであってもよい。ここで、図16(a)、(b)に示すADC171は、上述した第1の実施形態に示した選択ライン電圧計測回路170に相当する。
【0103】
また、図17に示す表示装置100は、図16に示したように計測用配線Lms(1)、Lms(m)及びADC171が予め接続され、一体的に組み込まれた構成ではなく、表示装置100の外部から選択ラインLsの電圧を検出可能なように形成された計測用端子パッドPms(1)及びPms(m)のみを備えている。計測用端子パッドPms(1)及びPms(m)には、選択ラインLsの電圧の検出を行うときに、ADC172に接続されたプローブ針が接触する。これにより、ADC172は、計測用端子パッドPms(1)及びPms(m)を介して計測されたアナログ電圧からなる選択ライン電圧をデジタル信号に変換してコントローラ150に出力する。ここで、図17に示すADC172は、上述した第1の実施形態に示した選択ライン電圧計測回路170に相当し、例えばプローブ針を備えたプローバ内に設けられる。
【0104】
図16(a)、(b)に示したADC171を備えた表示装置100においては、選択ライン電圧の計測機構が一体的に組み込まれているので、後述する駆動制御方法(第2信号電圧印加期間Twh2及びその電圧値の設定動作)を任意のタイミングで実行して、選択信号Sselの波形を任意のタイミングで再調整することができる。したがって、この構成の表示装置は、表示画質の経時劣化が見込まれる場合に有効である。一方、図17に示した表示装置においては、選択ライン電圧の計測機構が表示装置に組み込まれていないので、表示装置の装置構成や駆動制御を簡略化することができる。したがって、この構成の表示装置は、後述する駆動制御方法(第2信号電圧印加期間Twh2及びその電圧値の設定動作)を、表示装置の出荷前に1回のみ実行すればよい場合に有効である。
【0105】
ところで、図16、図17に示した構成を有する表示装置においては、表示パネル110の下方に選択・データ1チップドライバ180が配置されている。この場合、選択・データ1チップドライバ180と表示パネル110の端部間に接続される引き回し配線Lrtは、表示パネル110の上方の行の選択ラインLsに接続されるものほど、表示パネル110の側方に大きく迂回することになる。そのため、1行目の選択ラインLs(1)と最終行のn行目の選択ラインLs(n)との間で、配線長に大きな差が生じることになる。これにより、上述した第2の実施形態と同様に、行ごとに引き回し配線Lrtを含む選択ラインLsの配線長(すなわち、負荷の大きさ)が異なり、選択・データ1チップドライバ180に近いn行目の選択ラインLs(n)に比較して、選択・データ1チップドライバ180から遠い1行目の選択ラインLs(1)に印加される選択信号Sselの方が、波形なまりが大きくなり、信号遅延が顕著になる。
【0106】
そこで、本実施形態においては、選択信号Sselの波形なまりを抑制する手法として、第2信号電圧印加期間Twh2の長さに加えて、当該第2信号電圧印加期間Twh2に印加する選択信号Sselの電圧値Vsh2も適宜変化させて制御する。このような第2信号電圧印加期間Twh2の調整設定、及び、選択信号Sselの電圧値変更設定を実現するために、本実施形態は以下に示すような構成(電圧値設定機構)を有している。
【0107】
図18は、本実施形態に係る表示装置に適用される選択・データ1チップドライバの選択ドライバ機能部を含む電圧値設定機構の構成例を示す概略図である。
図18(a)に示す電圧値設定機構は、選択・データ1チップドライバの選択ドライバ機能部120Aに供給されるハイレベル側の動作電圧(Hi電圧;図中「Hi電源」と表記)を、外部に設けられたスイッチ161によりHi電源1(Hi電圧1;例えば+15V)、又は、DAC191により設定されるHi電源2(Hi電圧2)のうち、いずれかに設定する。ここで、DAC191は、例えばHi電源2として設定される最高電圧以上となる電圧値を有するHi電源3に接続され、コントローラ150から供給される選択制御信号の一種であるDAC制御信号により、任意の電圧値のHi電圧2を生成してスイッチ161に供給する。ここで、コントローラ150から供給されるDAC制御信号は、第2信号電圧印加期間Twh2に選択ラインLsに印加される選択信号Sselの電圧Vsh2を規定するためのデジタル値を含んでいる。このデジタル値は、後述する駆動制御方法(電圧値設定動作)において、第2信号電圧印加期間Twh2及び第2信号電圧の電圧Vsh2を決定する際に取得される。また、スイッチ161は、コントローラ150から供給される選択制御信号の一種であるスイッチ制御信号により、Hi電源1又はHi電源2のいずれかを選択ドライバ機能部120Aに接続するように切り替え制御される。なお、選択ドライバ機能部120Aには、Lo電源が接続され、ローレベル側の動作電圧として常時Lo電圧(例えば−15V)が供給されている。
【0108】
また、電圧値設定機構は、図18(b)に示すような構成を適用することもできる。図18(b)に示す電圧値設定機構は、図18(a)に示したスイッチ161及びDAC191が、スイッチ162及びDAC192として選択ドライバ機能部120Aの内部に設けられた構成を有している。すなわち、選択ドライバ機能部120Aには、Hi電源1及びHi電源3が接続され、ハイレベル側の動作電圧としてHi電圧1(例えば+15V)及びHi電圧3が供給されている。そして、DAC192は、コントローラ150から選択ドライバ機能部120Aに供給されるDAC制御信号に含まれる、電圧値を規定するためのデジタル値に基づいて、任意の電圧値のHi電圧2を生成してスイッチ162に供給する。また、スイッチ162は、コントローラ150から選択ドライバ120に供給されるスイッチ制御信号により切り替え制御されて、Hi電源1又はHi電源2のいずれかを選択して、内部Hi電源として利用する。
【0109】
このような構成を有する電圧値設定機構により、表示駆動動作(駆動制御方法)における書込動作期間Twrt中に、コントローラ150からの選択制御信号(スイッチ制御信号、DAC制御信号)に基づいて、選択ドライバ機能部120Aが、まず通常(設計値)よりも高い電位の任意の電圧(第2信号電圧Vsh2)の選択信号Sselを選択ラインLsに印加し、次いで通常の電圧(第1信号電圧Vsh1;例えば+15V)の選択信号Sselを印加する。
【0110】
(表示装置の駆動制御方法)
次に、本実施形態に係る表示装置における駆動制御方法について、図面を参照して説明する。
【0111】
図19は、本実施形態に係る表示装置に適用される第2信号電圧印加期間Twh2及びその電圧Vsh2の設定方法の一例を示すフローチャートである。ここで、上述した第1の実施形態(図13参照)と同等の処理動作については、その説明を簡略化する。また、図20は、本実施形態に係る駆動制御方法により設定される選択信号を説明するための波形図である。
【0112】
第2信号電圧印加期間Twh2及びその電圧の設定動作は、図19に示すように、まず、コントローラ150からのDAC制御信号により、DAC191又は192において、通常電圧であるHi電圧1(Hi電源1)よりも高い任意の電圧(初期値)に設定されたHi電圧2(Hi電源2)を生成する(電圧初期化ステップS201)。ここで、初期値となるHi電圧2の電圧は、例えば通常電圧であるHi電圧1よりも後述する単位電圧Vaだけ高い電圧値に設定する。そして、コントローラ150からのスイッチ制御信号により、スイッチ161又は162において、初期値に設定されたHi電圧2をHi電圧(Hi電源、内部Hi電源)として選択する。これにより、選択信号Sselの第2信号電圧Vsh2をHi電圧2に基づく初期電圧に設定する。
【0113】
次いで、コントローラ150からの選択制御信号により、選択ドライバ機能部120Aにおいて、書込動作期間Twrt中に設定される第2信号電圧印加期間Twh2の長さを「0」(初期値)に設定する(印加時間初期化ステップS202)。そして、この状態で、選択ドライバ機能部120Aから選択ラインLsに選択信号Sselを印加する(選択信号印加ステップS203)。ここで、初期状態では、第2信号電圧印加期間Twh2の時間はゼロに設定されるため(Twh2=0)、実質的に通常電圧である第1信号電圧のみが選択ラインLsに印加される。
【0114】
次いで、選択信号Ssel印加後の所定のタイミング(具体的には、書込動作期間Twrt内の任意のタイミング)で、任意の選択ラインLsに接続された1列目とm列目の画素PIXの位置における選択ラインの、選択信号Sselが切り替わった直後のタイミング(第2信号電圧印加期間Twh1の開始時点)での電圧値を、計測用配線Lms(1)及びLms(m)、又は、計測用端子パッドPms(1)及びPms(m)を介して個別に計測する。計測されたアナログ電圧からなる電圧値は、ADC171又は172によりデジタル信号に変換されて検出結果としてコントローラ150に出力される(電圧計測ステップS204)。
【0115】
次いで、コントローラ150は、ADC171又は172を介して取得した、選択ライン電圧に対応するデジタル信号の大小関係を比較する(電圧比較ステップS205)。この電圧比較ステップS205において、計測された電圧の比較結果に差がある場合(電圧比較ステップS205:No)には、コントローラ150は、第2信号電圧印加期間Twh2に一定の単位時間Taを加算する(印加期間調整ステップS207)。すなわち、図20に示した選択信号Sselの信号波形において、第2信号電圧印加期間Twh2の長さ(時間)が可変設定される。
【0116】
次いで、単位時間Taが加算された第2信号電圧印加期間Twh2が書込動作期間Twrtよりも短いか否かが判定される(印加期間判定ステップS208)。第2信号電圧印加期間Twh2が書込動作期間Twrtよりも短い場合(Twh2<Twrt、印加期間判定ステップS208:Yes)には、コントローラ150は、単位時間Taが加算された第2信号電圧印加期間Twh2に対応するように信号幅が設定されたスイッチ制御信号を生成して、スイッチ161又は162に出力する。これにより、再び選択信号印加ステップS203に戻り、まず最初に、単位時間Taが加算された時間幅を有する第2信号電圧印加期間Twh2に第2信号電圧Vsh2が選択ラインLsに印加され、続いて、書込動作期間Twrtの終了時点までの第1信号電圧印加期間Twh1に第1信号電圧が選択ラインLsに印加される。以下、上述したステップS204以降の処理動作が実行される。
【0117】
一方、印加期間判定ステップS208において、第2信号電圧印加期間Twh2が書込動作期間Twrtと同一、又は、書込動作期間Twrtよりも長い時間となった場合(印加期間判定ステップS208:No)には、コントローラ150は、Hi電圧2の電圧値に一定の単位電圧Vaを加算する(電圧値調整ステップS209)。すなわち、図20に示した選択信号Sselの信号波形において、Hi電圧2の電圧値が可変設定される。そして、コントローラ150は、単位電圧Vaが加算されたHi電圧2の電圧値に対応するようにデジタル値が設定されたDAC制御信号を生成して、DAC191又は192に出力する。これにより、再び印加時間初期化ステップS202に戻り、第2信号電圧印加期間Twh2の長さを「0」に設定した後、選択ドライバ機能部120Aから選択ラインLsに選択信号Sselが印加される。以下、上述したステップS203以降の処理動作が実行される。
【0118】
このように、上述した一連の処理動作を繰り返し実行し、電圧比較ステップS205において、1列目の計測電圧とm列目の計測電圧とが第1信号電圧Vsh1に近似又は等しく、所定の許容範囲内の値であるとき(電圧比較ステップS205:Yes)の時間幅(信号幅)を、第2信号電圧印加期間Twh2の長さとして決定し、このときのHi電圧2の電圧値に対応するデジタル値とともにメモリに記憶する(印加期間・電圧決定ステップS206)。ここで、許容範囲は、第1信号電圧Vsh1の電圧値の95%〜110%の値に設定される。
【0119】
これにより、書込動作期間Twrtにおいて、コントローラ150からスイッチ161又は162に対して、上記メモリに記憶された信号幅のスイッチ制御信号を供給するとともに、DAC191又は192に対して、メモリに記憶された電圧値に対応するデジタル値を含むDAC制御信号を供給することにより、図20に示すように、最初に、所定の第2信号電圧印加期間Twh2中、所定の電圧の第2信号電圧Vsh2が選択ラインLsに印加され、続いて、書込動作期間Twrtの終了時点までの第1信号電圧印加期間Twh1中、通常電圧である第1信号電圧が選択ラインLsに印加される。
【0120】
このように、本実施形態に係る表示装置の駆動制御方法によれば、書込動作期間に選択ラインに対して異なる電圧値の選択信号を順次印加し、かつ、最初に印加する選択信号の電圧値及び印加期間を調整する。これにより、本実施形態によれば、各行の選択ラインにおいて、選択ドライバ(選択・データ1チップドライバ)からの距離に関わりなく、各列の画素PIXに対して信号遅延の差がない選択信号を印加することができるので、表示データの書き込み不足に起因する輝度ムラや画面のちらつきの発生を抑制して、良好な画質を実現することができる。
【0121】
<電子機器の適用例>
次に、上述した各実施形態に係る表示装置及びその駆動制御方法を適用した電子機器について説明する。
【0122】
上述した第1乃至第3の実施形態に示したように、有機EL素子OELからなる発光素子を各画素PIXに有する表示パネル110を備える表示装置100は、薄型テレビジョンやモニター等の、大画面の表示デバイスを備える電子機器に適用することができる。
【0123】
図21は、第1乃至第3の実施形態に係る表示装置(発光装置)を適用した薄型テレビジョンの構成例を示す斜視図である。
図21において、薄型テレビジョン200は、大別して、本体部201と、本実施形態の表示パネル110を備える表示装置100からなる表示部202と、操作用コントローラ(リモコン)203と、を備えている。この場合、表示部202において、表示パネル110の各画素の発光素子が画像データに応じた適切な輝度階調で発光動作して、良好かつ均質な画質を実現することができる。
【符号の説明】
【0124】
100 表示装置
110 表示パネル
120 選択ドライバ
120A 選択ドライバ機能部
130 電源ドライバ
140 データドライバ
150 コントローラ
161、162 スイッチ
170 選択ライン電圧計測回路
171、172 ADC
180 選択・データ1チップドライバ
191、192 DAC
PIX 画素
DC 発光駆動回路
OEL 有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と前記発光素子に供給する電流を制御する駆動トランジスタと該駆動トランジスタの動作を制御するスイッチングトランジスタとを有する発光駆動回路とを有し、前記スイッチングトランジスタに接続される走査線に接続され、該走査線の延在方向に沿って配列された複数の画素を駆動して、前記各画素の前記発光素子の発光を制御する発光駆動装置であって、
所定の信号印加期間に、前記走査線の一端に選択信号を印加して、前記各画素の前記スイッチングトランジスタを動作させる選択状態に設定する選択駆動回路を備え、
前記選択信号は、前記信号印加期間中の第1の期間に第1信号電圧に設定され、前記信号印加期間中の前記第1の期間に先立つ第2の期間に前記第1信号より高い電位を有する第2信号電圧に設定され、
前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値は、前記選択信号が前記走査線の一端に印加されたときの、前記第1の期間の開始時点での、前記走査線の一端からの距離が最も短い位置にある第1の前記画素の近傍の前記走査線の電圧値からなる第1の電圧値と、前記走査線の一端からの距離が最も長い位置にある第2の前記画素の近傍の前記走査線の電圧値からなる第2の電圧値とが、許容範囲内の値となるように設定され、該許容範囲は前記第1信号電圧の電圧値の95%乃至110%の値であることを特徴とする発光駆動装置。
【請求項2】
前記選択信号の電圧は動作電圧に対応して設定され、前記選択信号を前記第1信号電圧に設定するときに前記動作電圧を第1設定電圧に設定し、前記選択信号を前記第2信号電圧に設定するときに前記動作電圧を前記第1信号電圧より高い電位の第2設定電圧に切り替える電圧切替回路を備えることを特徴とする請求項1記載の発光駆動装置。
【請求項3】
前記走査線に接続されて、前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値を計測する電圧計測回路を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の発光駆動装置。
【請求項4】
前記第2信号電圧の電圧値は固定値に設定され、前記第2の期間の時間が可変値に設定されて、前記電圧計測回路によって計測される前記第1の電圧値と前記第2の電圧値の比較に基づいて、前記第2の期間の時間を設定する制御回路を備えることを特徴とする請求項3記載の発光駆動装置。
【請求項5】
前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値が可変値に設定されて、前記電圧計測回路によって計測される前記第1の電圧値と前記第2の電圧値の比較に基づいて、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値を設定する制御回路を備えることを特徴とする請求項3記載の発光駆動装置。
【請求項6】
発光素子と前記発光素子に供給する電流を制御する駆動トランジスタと該駆動トランジスタの動作を制御するスイッチングトランジスタとを有する発光駆動回路とを有する複数の画素と、該複数の画素の前記スイッチングトランジスタに接続される複数の走査線と、を有し、前記各画素が前記各走査線の延在方向に沿って配列された発光パネルと、
前記発光パネルの、前記複数の画素の前記発光素子を駆動する発光駆動装置と、
を備え、
前記発光駆動装置は、画像データに基づく階調信号を前記各画素に書き込む書込動作期間に、前記各走査線の一端に選択信号を印加して、前記各画素の前記スイッチングトランジスタを動作させる選択状態に設定する選択駆動回路を備え、
前記選択信号は、前記書込動作期間中の第1の期間に第1信号電圧に設定され、前記書込動作期間中の前記第1の期間に先立つ第2の期間に前記第1信号電圧より高い電位の第2信号電圧に設定され、
前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値は、前記選択信号が一つの前記走査線の一端に印加されたときの、前記第1の期間の開始時点での、当該走査線の一端からの距離が最も短い位置にある第1の前記画素の近傍の前記走査線の第1の電圧値と、前記走査線の一端からの距離が最も長い位置にある第2の前記画素の近傍の前記走査線の第2の電圧値とが、許容範囲内の値となるように設定され、該許容範囲は前記第1信号電圧の電圧値の95%乃至110%の値であることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
前記選択信号の電圧は動作電圧に対応して設定され、前記選択信号を前記第1信号電圧に設定するときに前記動作電圧を第1設定電圧に設定し、前記選択信号を前記第2信号電圧に設定するときに前記動作電圧を前記第1信号電圧より高い電位の第2設定電圧に切り替える電圧切替回路を備えることを特徴とする請求項6記載の発光装置。
【請求項8】
前記走査線に接続されて、前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値を計測する電圧計測回路を備えることを特徴とする請求項6又は7記載の発光装置。
【請求項9】
前記第2信号電圧の電圧値は固定値に設定され、前記第2の期間の時間が可変値に設定されて、前記電圧計測回路によって計測される前記第1の電圧値と前記第2の電圧値の比較に基づいて、前記第2の期間の時間を設定する制御回路を備えることを特徴とする請求項8記載の発光装置。
【請求項10】
前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値が可変値に設定されて、前記電圧計測回路によって計測される前記第1の電圧値と前記第2の電圧値の比較に基づいて、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値を設定する制御回路を備えることを特徴とする請求項8記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の発光装置。
【請求項12】
請求項6乃至11のいずれかに記載の発光装置が実装されてなることを特徴とする電子機器。
【請求項13】
発光素子と前記発光素子に供給する電流を制御する駆動トランジスタと該駆動トランジスタの動作を制御するスイッチングトランジスタとを有する発光駆動回路とを備える複数の画素と、該複数の画素の前記スイッチングトランジスタに接続される複数の走査線と、を有し、前記各画素が前記走査線の延在方向に沿って配列された発光パネルを備え、画像データに応じた輝度階調で前記複数の画素の前記発光素子を発光動作させる発光装置の駆動制御方法であって、
第1信号電圧の電圧値と、該第1信号電圧より高い電位の第2信号電圧の電圧値と、第2の期間の時間とを設定する設定ステップと、
前記画像データに基づく階調信号を、前記各画素に書き込む書込動作期間中の第1の期間に、前記各走査線の一端に、前記各画素の前記スイッチングトランジスタを動作させるための選択信号の電圧値を前記第1信号電圧に設定して印加する第1信号電圧印加ステップと、
前記書込動作期間中の前記第1の期間に先立つ前記第2の期間に、前記各走査線の一端に、前記選択信号の電圧値を前記第2信号電圧に設定して印加する第2信号電圧印加ステップと、
を含み、
前記設定ステップは、前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値を、前記第2信号電圧ステップと前記第1信号電圧ステップとにより前記選択信号を一つの前記走査線の一端に印加したときの、前記第1の期間の開始時点での、当該走査線の一端からの距離が最も短い位置にある第1の前記画素の近傍の前記走査線の第1の電圧値と、前記走査線の一端からの距離が最も長い位置にある第2の前記画素の近傍の前記走査線の第2の電圧値とが、許容範囲内の値となるように設定し、該許容範囲は前記第1信号電圧の電圧値の95%乃至110%の値であることを特徴とする発光装置の駆動制御方法。
【請求項14】
前記設定ステップは、
前記第2の期間の時間を所定の初期値に設定する初期化ステップと、
前記選択信号を前記走査線の一端に印加する選択信号印加ステップと、
前記第1の電圧値と前記第2の電圧値とを計測する電圧計測ステップと、
計測した前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値と前記第1信号電圧とを比較する電圧比較ステップと、
前記電圧比較ステップにおける比較結果に基づいて、前記第2の期間の時間を調整する印加時間調整ステップと、
前記電圧比較ステップにおいて、前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値が前記許容範囲内の値となったときの前記第2の期間の時間を、前記第2信号電圧印加ステップにおける前記第2の期間の時間に設定する印加期間決定ステップと、
を含むことを特徴とする請求項13記載の発光装置の駆動制御方法。
【請求項15】
前記設定ステップは、
前記第2信号電圧の電圧値を所定の初期値に設定する電圧初期化ステップと、
前記第2の期間の時間を所定の初期値に設定する印加時間初期化ステップと、
前記選択信号を前記走査線の一端に印加する選択信号印加ステップと、
前記第1の電圧値と前記第2の電圧値とを計測する電圧計測ステップと、
計測した前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値と前記第1信号電圧とを比較する電圧比較ステップと、
前記電圧比較ステップにおける比較結果に基づいて、前記第2の期間の時間を調整する印加時間調整ステップと、
前記第2の期間の時間が前記書込動作期間より短いか否かを判定する印加時間判定ステップと、
印加時間判定ステップにおける判定結果に基づいて、前記第2信号電圧の電圧値を調整する電圧値調整ステップと、
前記電圧比較ステップにおいて、前記第1の電圧値及び前記第2の電圧値が前記許容範囲内の値となったときの前記第2の期間の時間及び前記第2信号電圧の電圧値を、前記第2信号電圧印加ステップにおける前記第2の期間の時間と前記第2信号電圧の電圧値に設定する印加期間・電圧決定ステップと、
を含むことを特徴とする請求項13記載の発光装置の駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−158864(P2011−158864A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22900(P2010−22900)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】