説明

発振装置及び電子機器

【課題】圧電素子を発振源として使用した発振装置において、出力を大きくする。
【解決手段】圧電素子20は振動部材10の上に設けられている。支持部材40は、振動部材10の外周に設けられている。第2振動部材30は、振動部材10を支持部材40に固定している。第2振動部材30は、振動部材10よりも低剛性である。補強部材32は、第2振動部材30のうち支持部材40に接続する側の端部と、支持部材40のそれぞれに固定されている。そして補強部材32は第2振動部材30よりも剛性が高い。このため、第2振動部材30のうち支持部材40に接続している部分の弾性力を大きくすることができ、その結果、その部分の振幅を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカの一つに、圧電素子を振動部材上に固定して発振源として利用するものがある。このタイプのスピーカは、ボイスコイル及び磁石を用いた動電型のスピーカと比較して、小型化しやすい、という特徴がある。圧電素子を利用したスピーカは、圧電素子を振動板上に搭載することにより、振動板を屈曲振動させるものである。
【0003】
特許文献1には、圧電素子を台座上に設け、さらにこの台座を振動膜上に搭載した上で、振動膜の縁を支持部材で支持することが開示されている。特許文献2には、圧電素子を金属製の圧電振動板上に設け、さらにこの圧電振動板を弾性体の上に搭載した上で、弾性体の縁を支持部材で支持することが開示されている。
【0004】
特許文献3には、シム材を挟んで2枚の圧電素子を貼り合わせることにより圧電振動子を形成すること、及びシム材の両端をホルダで保持することが記載されている。特許文献4には、一枚の金属板上に形状の異なる複数の圧電素子を設けることが記載されている。特許文献5には、圧電セラミックスで構成された振動板を弾性支持体で支持し、かつ圧電セラミックスに振動が入力したときに圧電セラミックスで生じた電力を外部で消費又は蓄積することが記載されている。特許文献6には、圧電素子を振動体の表面に設け、この振動体の裏面側を支持部材で支持した上で、重錘体を振動体の裏面に設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/083497号パンフレット
【特許文献2】特開2002−152888号公報
【特許文献3】国際公開第2008/146678号パンフレット
【特許文献4】特開2000−134697号公報
【特許文献5】特開2007−328347号公報
【特許文献6】特開平11−264731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電素子を用いた発振装置は、出力を大きくしにくい。
【0007】
本発明の目的は、圧電素子を発振源として使用しており、かつ出力を大きくすることができる発振装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、第1振動部材と、
前記第1振動部材の上に設けられた圧電素子と、
前記第1振動部材の外周に設けられた保持部材と、
前記第1振動部材を前記保持部材に固定し、前記第1振動部材よりも低剛性の第2振動部材と、
前記第2振動部材のうち前記保持部材に接続する側の端部と、前記保持部材のそれぞれに固定されており、前記第2振動部材よりも剛性の高い補強部材と、
を備える発振装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、圧電素子と、
一面に前記圧電素子が搭載された支持板と、
前記支持板の前記一面又は前記一面とは逆の反対面に対向している支持部材と、
前記支持部材上に前記支持板を支持し、前記支持板よりも内部損失が大きい材料から形成されている接続部材と、
を備える発振装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧電素子を発振源として使用した発振装置において、出力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した発振装置の平面図である。
【図3】図1及び図2に示した発振装置を電子機器の筐体内に収容した状態を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図5】第3の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図6】図5に示した発振装置を電子機器の筐体内に収容した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す断面図である。この発振装置は、振動部材10(第1振動部材)、圧電素子20、支持部材40、第2振動部材30、及び補強部材32を備えている。圧電素子20は振動部材10の上に設けられている。支持部材40は、振動部材10の外周に設けられている。第2振動部材30は、振動部材10を支持部材40に固定している。第2振動部材30は、振動部材10よりも低剛性である。補強部材32は、第2振動部材30のうち支持部材40に接続する側の端部と、支持部材40のそれぞれに固定されている。そして補強部材32は第2振動部材30よりも剛性が高い。このため、第2振動部材30のうち支持部材40に接続している部分の弾性力を大きくすることができ、その結果、その部分の振幅を大きくすることができる。以下、詳細に説明する。
【0014】
振動部材10はシート状であり、端部は拘束されていない。また振動部材10は、圧電素子20の基本共振周波数を調整する。機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。コンプライアンスは振動子の機械剛性であるため、振動部材10の剛性を制御することで、圧電素子20の基本共振周波数を制御できる。なお、振動部材10の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、振動部材10は、剛性を示す指標である縦弾性係数が1GPa以上500GPa以下であることが好ましい。振動部材10の剛性が低すぎる場合や、高すぎる場合は、機械振動子としての特性や信頼性を損なう可能性が出てくる。なお、振動部材10を構成する材料は、金属や樹脂など、脆性材料である圧電素子20に対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。
【0015】
圧電素子20は、PZTなどの圧電セラミックスにより形成されている。ただし、圧電素子20は、圧電特性を示す高分子材料、例えばポリフッ化ビニリデンにより形成されていてもよい。
【0016】
第2振動部材30は、例えばポリエチレン、ウレタン、又はポリエチレンテレフタレートなどの樹脂により形成されている。第2振動部材30は、支持部材40から振動部材10の外周部までの間にのみ形成されており、振動部材10の中心部までは延伸していない。ただし、第2振動部材30は、振動部材10の中心部まで延伸していても良い。第2振動部材30は、リング状の形状を有している。
【0017】
補強部材32は、第2振動部材30のうち支持部材40に取り付けられている部分に剛基礎を与えるために設けられる。本実施形態において補強部材32は、第2振動部材30の一面のみに設けられている。補強部材32の剛性は、例えば第2振動部材30の剛性の3倍以上50倍以下である。また本図に示す例では、平面視で補強部材32のうち支持部材40に接続していない側の端部は、振動部材10と重なっている。ただしこの端部は、平面視で振動部材10から離れていても良い。
【0018】
本実施形態において、発振装置は制御部50を有している。制御部50は、外部から入力された音声信号に基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を圧電素子20に入力する。発振装置を、可聴音を直接出力するスピーカとして機能させる場合、制御部50は音声信号を増幅することにより駆動信号を生成する。また発振装置をパラメトリックスピーカとして機能させる場合、制御部50は、外部から入力された音声データ(原信号)を変調してパラメトリックスピーカ用の変調データを生成し、このデータに基づいて駆動信号を生成する。この駆動信号の周波数は、圧電素子20のn次の共振周波数である。
【0019】
図2は、図1に示した発振装置の平面図である。圧電素子20及び振動部材10の平面形状は円形であり、互いに同心となるように配置されている。振動部材10は圧電素子20よりも大きい。また支持部材40も円周に沿った形状を有しており、振動部材10及び圧電素子20と同心となるように配置されている。
【0020】
また上記したように、第2振動部材30は、リング状の形状を有している。ただし第2振動部材30は、複数の梁により形成されていてもよい。この場合、これらの梁は、振動部材10の中心から放射状に延びた直線上に位置しており、円周方向において等間隔、例えば90°間隔に配置される。
【0021】
図3は、図1及び図2に示した発振装置を電子機器の筐体60内に収容した状態を示す断面図である。本図に示す例において、発振装置は、支持部材40の上端が筐体60の内面に取り付けられている。筐体60には音孔62が設けられている。平面視において、音孔62は支持部材40の内側に位置している。そして振動部材10は音孔62に対向している。このため、振動部材10が発振した音波は、音孔62を介して外部に放射される。
【0022】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、振動部材は、振動部材10及び第2振動部材30により形成されている。第2振動部材30は、振動部材10と支持部材40とを接続しており、振動部材10よりも低剛性である。このため、振動部材のうち支持部材40に接続する部分は、第2振動部材30を設けない場合と比較して振動しやすくなる。
【0023】
また、第2振動部材30には補強部材32が設けられている。補強部材32は第2振動部材30よりも高剛性であり、第2振動部材30のうち支持部材40に取り付けられている部分に剛基礎を与える。従って、第2振動部材30は、補強部材32を設けない場合と比較して復元しやすくなる。
【0024】
従って、振動部材10の体積排除量は大きくなり、その結果、発振装置の出力は大きくなる。
【0025】
また、第2振動部材30が樹脂で形成されている場合、発振装置を有する電子機器が落下した場合でも、落下による衝撃は第2振動部材30によって吸収される。従って、電子機器の耐衝撃性が向上する。
【0026】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る発振装置の構成を示す図であり、第1の実施形態における図1に対応している。本実施形態に係る発振装置は、補強部材32が第2振動部材30の両面に設けられている点を除いて、第1の実施形態に係る発振装置と同様の構成である。2つの補強部材32の構成は互いに同じである。
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。本実施形態に係る発振装置は、圧電素子20、保持板12、支持部材34、及び接続部材36を備えている。圧電素子20は第1の実施形態と同様の構成である。保持板12は一面に圧電素子20が搭載されている。支持部材34は、保持板12の一面、又は保持板12の一面とは逆側の面に対向している。そして接続部材36は、支持部材34上に保持板12を支持している。接続部材36は、保持板12よりも内部損失が大きい材料から構成されている。
【0028】
本実施形態において保持板12は振動板としては機能せず、圧電素子20が駆動した場合であっても、保持板12に生じる振動はわずかである。そして保持板12の厚さは一般的な振動板と比較して厚い。例えば保持板12は、ステンレスなどの金属により形成されているが、その厚さは5μm以上200μm以下である。
【0029】
接続部材36は、保持板12の縁に添って設けられている。平面視において、保持板12は圧電素子20よりも大きい。そして接続部材36は、平面視で圧電素子20と重ならない位置に設けられている。接続部材36は、例えばポリエチレン、ウレタン、又はポリエチレンテレフタレートなどの樹脂、又はゴムにより形成されている。
【0030】
本実施形態において、保持板12、圧電素子20、支持部材34、及び接続部材36は、筒状の支持枠42の内部に収容されている。支持枠42の内壁には凸部44が設けられている。そして支持部材34は、凸部44に固定されている。なお、支持部材34の端面は支持枠42の内壁に接合していても良いし、接合されていなくても良い。
【0031】
また本実施形態においても、発振装置は制御部50を有している。制御部50が有する機能は、第1の実施形態と同様である。
【0032】
図6は、図5に示した発振装置を電子機器の筐体60内に収容した状態を示す断面図である。本図に示す例において、発振装置は、支持枠42の上端が筐体60の内面に取り付けられている。また平面視において、支持枠42の内側に音孔62が位置している。そして圧電素子20は、筐体60に設けられた音孔62に対向している。このため、圧電素子20が発振した音波は、音孔62を介して外部に放射される。
【0033】
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、圧電素子20に駆動信号が入力すると、圧電素子20は発振する。このとき保持板12は振動板として機能せず、圧電素子20から保持板12に振動は伝播しにくい。そして支持部材34は、接続部材36を介して保持板12を支持している。接続部材36は、保持板12よりも内部損失が大きい材料によって形成されている。このため、保持板12に振動が伝播したとしても、この振動は大部分が接続部材36によって吸収される。従って、振動が支持部材34に伝播して異常音が発生することを抑制できる。
【0034】
また、支持部材34や、支持部材34を支持する支持枠42に振動が伝播すると、これによって発振装置の出力音圧が低下する可能性が出てくる。本実施形態では、支持部材34や、支持部材34を支持する支持枠42に振動が伝播することを抑制できるため、発振装置の出力音圧が低下することを抑制できる。
【0035】
また、発振装置を筐体60に取り付けるとき、発振装置と筐体60の間に減衰材料を設ける必要がない。従って、発振装置の実装面積が増大することを抑制できる。
【0036】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
10 振動部材
12 保持板
20 圧電素子
30 第2振動部材
32 補強部材
34 支持部材
36 接続部材
40 支持部材
42 支持枠
44 凸部
50 制御部
60 筐体
62 音孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1振動部材と、
前記第1振動部材の上に設けられた圧電素子と、
前記第1振動部材の外周に設けられた保持部材と、
前記第1振動部材を前記保持部材に固定し、前記第1振動部材よりも低剛性の第2振動部材と、
前記第2振動部材のうち前記保持部材に接続する側の端部と、前記保持部材のそれぞれに固定されており、前記第2振動部材よりも剛性の高い補強部材と、
を備える発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記補強部材の剛性は、前記第2振動部材の剛性の3倍以上50倍以下である発振装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発振装置において、
前記補強部材は、前記第2振動部材の両面に設けられている発振装置。
【請求項4】
圧電素子と、
一面に前記圧電素子が搭載された支持板と、
前記支持板の前記一面又は前記一面とは逆の反対面に対向している支持部材と、
前記支持部材上に前記支持板を支持し、前記支持板よりも内部損失が大きい材料から形成されている接続部材と、
を備える発振装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発振装置において、
前記支持板は厚さが5μm以上200μm以下の金属板である発振装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発振装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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