説明

発毛のための方法および組成物

真皮乳頭細胞を同定および単離するための方法および組成物について開示する。DP細胞はコリン発現に基づいて同定され得る。単離されたDP細胞は、例えば発毛を調節するために使用することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年2月27日に出願された米国特許出願第60/548,272号の優先権を主張するものであり、その内容は全体として参照により組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
毛包は、次の成長期に新たな毛幹が既存の毛包に生じるまで、毛の成長(成長期)、それに続く退行(退行期)、および休止(休止期)という周期を経る(Hardy et al. (1992) Trends Genet. 8:55-61(非特許文献1))。毛幹は毛包の基部にある上皮マトリックス細胞に由来するが、真皮乳頭(DP)として知られるマトリックス細胞の鞘で覆われた真皮細胞群が、毛の成長に必要な誘導シグナルを供給すると考えられている。
【0003】
【非特許文献1】Hardy et al. (1992) Trends Genet. 8:55-61
【発明の開示】
【0004】
概要
本発明は、コリン(corin)が皮膚の真皮乳頭(DP)において特異的に発現されるという発見に一部基づいている。したがって、コリンは、とりわけ、DP細胞を同定および単離するため、発毛を調節する物質を同定するため、ならびに発毛に関連した状態を診断および治療するための方法および組成物に有用な標的であると同定される。
【0005】
したがって、1つの局面において、本開示は(例えば皮膚において)DP細胞を同定する方法に関する。本方法は、皮膚における、例えば皮膚移植片または培養皮膚細胞におけるコリンの発現、レベル、または活性を評価する段階を含む。1つの態様において、本方法は、例えばインビトロまたはインビボで、皮膚細胞がコリンを発現するかどうかを決定する段階を含む。別の態様において、本方法は、参照値、例えば陰性または陽性DP細胞対照におけるコリン発現に対する、皮膚細胞におけるコリン発現の相対的レベルを評価する段階を含む。
【0006】
1つの態様において、皮膚細胞におけるコリン発現は、コリン結合剤、例えば抗コリン抗体、例えばポリクローナル抗体;モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片;キメラ抗体、再形成(reshaped)抗体、ヒト化抗体、もしくはそれらの断片(例えば、Fab'、Fab、F(ab')2)などの改変抗体;または生合成抗体、例えば一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、一本鎖Fv(scFv)などを用いて評価される。抗体は、例えば蛍光タグ(例えばGFP)、放射性タグ、mycタグ、またはhisタグでタグ化し得る。例えば免疫沈降、免疫組織化学、またはウェスタンブロットを行うことにより、抗体を用いてコリンタンパク質レベルを測定することができる。
【0007】
別の態様において、コリン発現は、コリンmRNAの代謝回転のレベルを評価する(例えば、インサイチューハイブリダイゼーションまたはノーザンブロットなどのハイブリダイゼーションアッセイを行う)ことによって評価される。
【0008】
別の態様では、コリン生物活性が評価され、例えば、コリンがpro-ANPまたは関連基質をプロセシングする能力を測定するpro-ANPアッセイを用いて、コリン活性を同定し得る(例えば、Wu et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:16900-16905)。
【0009】
1つの態様において、DP細胞はその同定後に単離される。例えばDP細胞の毛誘導能を維持する条件下において、単離されたDP細胞を培養して拡大することができる。細胞がコリンを発現し続ける必要はない。例えば、細胞は、(実際にはコリンを発現しなくてもよいが)コリンを発現する能力を維持する条件下で維持され得る。コリン発現は、例えばインビトロにおいてまたは対象内において、ケラチノサイトまたはそれに由来する物質(例えば、ケラチノサイトによって馴化された培地、ケラチノサイトに由来する膜、またはケラチノサイトの抽出物)と接触させることによって回復され得る。
【0010】
別の局面において、本開示は、DP細胞を同定する、例えば標識またはタグ化する方法に関する。本方法は、皮膚細胞(例えば、1つの細胞または皮膚細胞集団)をコリン(例えば、コリンタンパク質または核酸)について評価する段階を含む。評価段階は、(例えばレポーター遺伝子を用いて)細胞がコリンを発現し得るどうかまたは発現しているどうかを決定する段階を含み得る。例えば、本方法は、皮膚細胞をコリン結合剤と接触させる段階、およびコリン(例えば、コリンタンパク質または核酸)の存在またはレベルを評価する段階を含む。コリンの存在によって、細胞がDP細胞であると同定される。コリン結合剤は、例えば、核酸、ポリペプチド(例えば本明細書に記載の抗体)、ペプチド断片、ペプチド模倣物、または小分子であってよい。例示的な結合剤は、抗コリン抗体、、例えば本明細書に記載の抗体である。本方法は、例えば、DP細胞を単離するのに、または(例えば、DP細胞培養において)コリンレベルもしくはDP細胞をモニターするのに有用である。
【0011】
DP細胞は、例えば、DP細胞の毛誘導能および/またはコリンを発現する能力を維持する条件下で培養して拡大され得る。細胞の拡大は、成長および/または増殖、例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上の周期の細胞分裂を含み得る。いくつかの態様において、コリン発現細胞は、例えば、ケラチノサイトなどのコリン誘導細胞と共培養した後に、培養下の拡大細胞集団から選択される。この選択により、最初の選択に由来する拡大細胞集団からコリン発現細胞を再度選択することができる。
【0012】
DP細胞を対象に投与することができる。好ましい態様において、対象は、毛量が不十分であるかまたは発毛速度が不十分である。好ましい態様において、対象は、遺伝的禿頭症を患っている;発毛を減少させるホルモン障害を患っている;治療(例えば、放射線または化学療法)を受けたか、もしくは発毛を阻害する薬物を投与された;または発毛を必要とする外科的処置、例えば皮膚移植を受けたことがある。
【0013】
投与する細胞は自己細胞、同種細胞、または異種細胞であってよいが、好ましくは自己細胞である。自己細胞は好ましくは、脱毛を特徴とする対象に由来する。例えば、発毛は、対象の頭皮;対象の顔において促進され、例えば、顎髭および/または口髭の顔の発毛が促進される。
【0014】
投与する細胞は、毛包(例えば、既存の毛包または新規な毛包)に挿入され得るか、または新規な皮膚、例えば人工皮膚の移植片の成分として投与され得る。
【0015】
別の局面において、本開示は、コリン発現細胞を単離する方法に関する。本方法は、コリン結合剤、例えばコリン抗体を提供する段階、細胞を結合剤と接触させる段階、およびコリンを発現する細胞を単離する段階を含む。本方法を用いて、皮膚細胞、例えばDP細胞、例えば哺乳動物DP細胞、例えばヒトDP細胞、例えばヒト頭皮DP細胞を単離することができる。1つの態様において、細胞の開始集団は、実質的に心臓細胞、特に心筋細胞を含まない。例えば、細胞の開始集団は、皮膚に由来する細胞集団などの皮膚細胞を含む。
【0016】
1つの態様において、結合剤は、例えば蛍光タグ(例えばGFP)、放射性タグ、磁気タグ、mycタグ、またはhisタグでタグ化された抗コリン抗体(例えば、本明細書に記載する抗コリン抗体)である。結合剤が結合している皮膚細胞、例えばDP細胞は、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、磁気活性化セルソーティング(MACS)、クロマトグラフィー、またはカラムクロマトグラフィーを用いて、結合剤タグを介して単離することができる。1つの態様において、抗コリン結合剤(例えば、本明細書に記載する抗コリン抗体)は、不溶性担体、例えばビーズ、例えば磁気ビーズと直接または間接的に会合(例えば結合)されて、細胞は、例えば重力、遠心分離、または免疫磁気分離を用いて単離される。抗コリン結合剤は、皮膚細胞との接触前、接触中、または接触後に、不溶性支持体と会合され得る。
【0017】
単離された細胞は、DP細胞の毛誘導能および/またはコリンを発現する能力を維持する条件下で培養して拡大され得る。1つの態様では、細胞をケラチノサイトと接触させる。コリンを発現する能力のある細胞を、例えばケラチノサイトなどの他の上皮細胞と組み合わせて、対象に、例えば対象の毛包にまたは皮膚移植片として移植することができる。
【0018】
別の局面において、本開示は、コリン発現能のある皮膚細胞の集団に関する。細胞は、皮膚細胞を含む細胞集団から少なくとも1つのコリン発現細胞を分離する段階を含む方法によって単離される。本方法は、本明細書に記載する他の特徴も含み得る。集団は、少なくとも10、102、103、104、105、106、107、または108個の細胞を含み得る。
【0019】
別の局面において、本開示は、少なくとも102、103、104、105、106、107、または108個のコリン発現能のある皮膚細胞を含む哺乳動物細胞の集団に関する。コリン発現能のある細胞は、細胞集団の少なくとも30、60、70、80、90、95、98、99、または100%を構成する。集団は培養容器中に存在し得る。例えば、コリン発現能のある細胞は、容器中の細胞集団の少なくとも50、60、70、80、90、95、98、99%を構成する。
【0020】
また、1つまたは複数の細胞、例えばそのようなコリン発現能のある皮膚細胞の集団を含む治療組成物にも関する。
【0021】
治療組成物などの集団に由来する細胞は、例えば本明細書に記載の方法を用いて、コリン発現について評価することができる。細胞は、コリン結合剤と接触させ得る。細胞はまた、例えばコリン発現を評価する前に、ケラチノサイトと接触させ得るか、またはケラチノサイト細胞と情報交換させ得る。
【0022】
別の局面において、本開示は、対象において毛包形成を増加させる方法に関する。本方法は、コリン発現能のある皮膚細胞を対象に投与する段階を含む。本方法は、例えば投与する前に、そのような細胞のサブセット(例えば、分割量)をコリン発現について評価する段階を含み得る。投与される細胞は、コリン発現細胞であっても非コリン発現細胞であってもよい。細胞は毛包に移植され得る。細胞は、例えばコリン発現能のない皮膚細胞、例えばケラチノサイトまたは他のコリン発現誘導細胞と共に投与され得る。
【0023】
別の局面において、本開示は、発毛を調節する(例えば、阻害または促進する)物質を同定する方法に関する。本方法は、例えば皮膚細胞、例えばコリン発現DP細胞またはコリン非発現DP細胞などのDP細胞において、コリンの発現、活性、またはレベルを調節する、例えば増加または減少させる(例えば、永続的にまたは一時的に)物質を同定する段階を含む。本方法はまた、物質がコリンの発現、レベル、または活性を調節する能力を、発毛を調節する能力と関連づける段階を含み得る。本方法は、同定された物質、例えば発毛を調節する物質を選択する段階をさらに含み得る。
【0024】
1つの態様においては、被験物質がコリンと相互作用する、例えば結合する能力を評価することによって、物質が同定される。別の態様においては、被験物質がコリン制御領域、例えばプロモーター、例えばコリンプロモーター(例えば、Pan et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:38390-38398を参照のこと)と相互作用する作用を評価することによって、物質が同定される。別の態様においては、被験物質がDP細胞培養物または共培養物、例えばDP細胞および非DP細胞(例えばケラチノサイト)を含む培養物に及ぼす効果を評価することによって、物質が同定される。別の態様においては、コリンがpro-ANPをプロセシングする能力を試験するpro-ANPアッセイを用いて、コリンアゴニストおよびアンタゴニストを同定し得る(例えば、Wu et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:16900-16905を参照のこと)。別の態様においては、被験物質がコリントランスジェニック動物、例えば本明細書に記載するコリントランスジェニック動物の発毛を調節する能力を例えば定量的にまたは定性的に評価することによって、物質が同定される。
【0025】
被験物質は、例えば、核酸(例えば、アンチセンス、リボザイム)、ポリペプチド(例えば、抗体またはその抗原結合断片)、ペプチド断片、ペプチド模倣物、または小分子(例えば、分子量2000ダルトン未満の有機小分子)であってよい。別の態様において、被験物質は、コンビナトリアルライブラリー、例えばペプチドもしくは有機コンビナトリアルライブラリーまたは天然物ライブラリーのメンバーである。1つの態様においては、複数の被験物質、例えばライブラリーメンバーが試験される。例えば、ライブラリーなどの複数の被験物質は、構造特性または機能特性を共有する。被験物質はまた、粗製抽出物または半精製抽出物、例えば植物抽出物または藻類抽出物などの植物抽出物であってもよい。
【0026】
本方法は、例えば、物質の効果を哺乳動物、例えばヒトにおける物質の見込み効果または予想効果として同定する、物質またはその使用に関連した情報、販売、または教材用資料、例えば印刷物またはコンピュータ可読物(例えば、ラベル、電子メール)を(例えば、政府、医療提供者、保険会社、または患者に)提供することによって、物質がコリンの発現、レベル、または活性に及ぼす効果を、物質が哺乳動物、例えばヒトに及ぼす予測効果と関連づける段階を含み得る。本方法は、物質が参照に対してコリンの発現、レベル、または活性を増加させる場合に、この物質を例えばヒトにおける発毛調節剤として同定する段階を含み得る。同定は、本明細書に記載するような情報、販売、または教材用資料の形態であってよい。1つの態様において、本方法は、評価したパラメータの値を、発毛変化または発毛変化の可能性と関連づける段階、例えば、評価したパラメータの値を発毛変化または発毛変化の可能性と関連づけるデータセットを作製する段階を含む。
【0027】
1つの態様において、本方法は2つの評価段階を含み、例えば本方法は、第1の系、例えば無細胞系、細胞に基づく系、組織系、または動物モデルにおいて、被験物質を評価する第1段階、および、第2の系、例えば第2の細胞もしくは組織系または非ヒト動物において被験物質を評価する第2段階を含む。1つの態様において、評価段階のうちの一方は、物質が対象の皮膚または皮膚移植片に及ぼす効果を評価する段階、例えば、皮膚における発毛の存在、程度、または種類を評価する段階を含む。対象は、実験動物またはヒトであってよい。1つの態様において、第1評価は、レポーターポリペプチドなどの異種配列に連結されたコリンプロモーターに及ぼす被験物質の効果を試験する段階を含み、第2評価は、被験物質を系、例えば細胞に基づく系または動物系に投与する段階、および物質が発毛に及ぼす効果を評価する段階を含む。いくつかの態様において、本方法は同じ種類の系における2つの評価段階を含み、例えば、物質は、非ヒト動物における第1評価の後に、同じかまたは異なる非ヒト動物において再評価される。2つの評価は、任意の期間、例えば日単位、週単位、月単位、または年単位によって隔てられ得る。
【0028】
別の態様において、同定段階は:(a) 異種配列、例えばレポーターポリペプチド(例えば、比色により(例えば、LacZ)または蛍光により検出可能なレポーターポリペプチド(例えば、GFP、EGFP、BFP、RFP))をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結されたコリン遺伝子の制御領域、例えばコリンプロモーター(例えば、Pan et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:38390-38398を参照のこと)を含む外因性核酸をゲノムが含む細胞、組織、または非ヒト動物に物質を提供する段階;(b) 細胞、組織、または非ヒト動物において、被験物質がレポーターポリペプチドの発現を調節する能力を評価する段階;および(c) レポーターポリペプチドの発現を調節する被験物質を、発毛を調節する(例えば、コリンを調節する)物質として選択する段階を含む。
【0029】
1つの態様において、動物は実験動物である。動物は野生型であってもよいし、またはトランスジェニック実験動物、例えばコリントランスジェニック齧歯動物、例えば本明細書に記載のコリントランスジェニックマウス、例えばコリンの発現変化またはコリンを発現する能力を検出するためのレポーターを有する動物であってもよい。対象はヒトであってもよい。1つの態様において、評価段階は、物質を対象に投与する段階、および発毛を評価する段階を含む。別の態様において、細胞または組織は、皮膚細胞(例えば間葉細胞、例えばDP細胞);または組織(例えば皮膚移植片)である。さらに別の態様において、細胞(例えば皮膚細胞、例えばDP細胞)または組織(例えば皮膚移植片)は、トランスジェニック動物に由来する。
【0030】
別の局面において、本開示は、コリン遺伝子プロモーターまたはその一部(例えば、Pan et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:38390-38398を参照のこと)、例えば、ヒトコリン遺伝子の-405〜-15、または-900〜-15、-900〜+60、-700〜+60、もしくは-500〜+60に機能的に連結されたレポーターポリペプチド(例えば、比色により(例えば、LacZ)または蛍光により検出可能なレポーターポリペプチド(例えば、GFP、EGFP、BFP、RFP))をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む単離された皮膚細胞に関する。皮膚細胞は、例えば哺乳動物皮膚細胞、例えばヒトまたはマウス皮膚細胞であってよい。1つの態様において、皮膚細胞はDP細胞である。
【0031】
別の局面において、本開示は、皮膚において特異的に発現されるコリン導入遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト動物に関する。いくつかの態様は、皮膚細胞、例えばDP細胞または他の毛包細胞においてコリン発現を指示するのに十分なプロモーター配列に機能的に連結されたコリン導入遺伝子を含むトランスジェニック細胞(例えばDP細胞);組織(例えば皮膚または毛包);または非ヒト哺乳動物、例えば齧歯動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、またはウサギ)に関する。トランスジェニック細胞、例えばトランスジェニックDP細胞は、発毛を調節し得る。トランスジェニック組織またはトランスジェニック動物は、発毛変化を有し得る。コリン導入遺伝子は、生殖細胞および/または体細胞に含まれ得る;または、コリン導入遺伝子は、特定の細胞種、例えばDP細胞にのみ含まれ得る・
【0032】
本開示の別の局面は、特定の細胞種、例えば皮膚細胞、例えばDP細胞においてコリン発現を指示するのに十分な発現調節配列、例えばコリンプロモーターに機能的に連結された、コリンポリペプチドまたはその機能断面もしくは変種をコードする単離された核酸配列に関する。核酸は、線状構築物またはベクター、例えばプラスミド(例えば、発現プラスミドまたは複製プラスミド)またはウイルスベクター(例えばλZAP)の組込み部分であってよい。ベクターは、宿主、例えば大腸菌(E. coli)またはバクテリオファージ中に保有され得る。本明細書に記載の核酸および/またはベクターを含む宿主細胞、例えば哺乳動物宿主細胞、例えば皮膚細胞もまた含まれる。1つの態様において、皮膚細胞(例えばDP細胞)は、コリンのアミノ酸配列変種、例えばドミナントネガティブコリン変種または機能亢進コリン変種をコードする核酸を含む。
【0033】
別の局面において、本開示は、対照を治療する方法に関する。本方法は、(a) 対象、例えば発毛変化を望むかまたは必要とする対象を同定する段階;および(b) 対象においてコリンを調節する物質を対象に投与する段階、例えば、コリンの活性、レベル、または発現を増加または減少させる物質、例えば本明細書に記載の物質の有効量を対象に投与する段階を含む。好ましくは、物質は対象の皮膚に、例えば局所的に投与される。
【0034】
1つの態様において、物質は、リポソーム担体、例えばレシチンリポソームまたはアルキルリン脂質リポソームを介して投与される。物質は、顔、胸部、首、手、または身体の他の部位に投与され得る。治療は、物質の2回以上の投与、例えば、少なくとも2回、3回、または4回の投与を含み得る。治療はまた、物質の連日投与を含み得る。
【0035】
1つの態様において、本方法は、第2の治療物、例えば発毛のための第2の治療物、例えば、ミノキシジル(ミシガン州、カラマンズーのUpjohn Co.から入手可能)、シクロスポリン、および天然または合成ステロイドホルモン、ならびにそれらの増強剤およびアンタゴニスト、例えば抗アンドロゲンと併用して物質を投与する段階を含む。
【0036】
いくつかの態様において、本方法は、対象を発毛に関して評価する段階を含む。評価は、物質の投与前、投与中、および/または投与後に行われ得る。例えば、評価は、投与の少なくとも1日、2日、4、7、14、21、30日、またはそれ以上前および/または後に行われ得る。
【0037】
別の態様において、物質の投与は、対象が発毛関連疾患症状を示し始めた時点で;発毛関連疾患(例えば脱毛症)が診断された時点で;発毛関連疾患の治療が開始されるか、またはその効果を発揮し始めた時点で;または一般に発毛の調節が必要とされる時点で開始され得る。
【0038】
物質が投与される期間、または臨床的に有効なレベルが対象において維持される期間は、長期、例えば6ヶ月もしくはそれ以上または1年もしくはそれ以上であっても、あるいは短期、例えば1年、6ヶ月、1ヶ月、2週間、またはそれ以下未満であってもよい。
【0039】
発毛変化を必要とする対象の同定は、例えば、対象によって、医療提供者によって、発毛治療の提供者によって、脱毛治療の提供者、または別の団体によって行われ得る。物質は、例えば、対象によって、医療提供者によって、発毛治療の提供者によって、脱毛治療の提供者、または別の団体によって投与され得る。同様に、発毛への効果の評価も、例えば、対象によって、医療提供者によって、発毛治療の提供者によって、脱毛治療の提供者、または別の団体によって行われ得る。適切な対象には、脱毛を有するかまたは脱毛の危険性がある対象が含まれる。
【0040】
コリンを増加させ、ひいては発毛を増加させる物質は、例えば;コリンポリペプチド、またはその機能断片もしくは変種;コリンの発現、レベル、または活性を調節する、コリンのペプチドまたはタンパク質アゴニストまたはアンタゴニスト;例えば、コリン遺伝子のプロモーター領域に結合することによって、コリンの発現を調節する小分子;コリンの発現を調節する化合物、例えば有機化合物、例えば天然に存在するまたは合成有機化合物;コリンポリペプチドまたはその断片もしくは類似体をコードするヌクレオチド配列;抗体、例えばコリンに結合する、およびコリンの結合パートナーに対する結合を安定化するかもしくは補助する抗体;あるいは粗製抽出物または半精製抽出物、例えば植物抽出物または藻類抽出物などの植物抽出物であってよい。ヌクレオチド配列は、ゲノム配列であってもcDNA配列であってもよい。ヌクレオチド配列には;コリンコード領域;プロモーター配列、例えば、コリン遺伝子または別の遺伝子のプロモーター配列;エンハンサー配列;非翻訳制御配列、例えば5'非翻訳領域(UTR)(例えば、コリン遺伝子または別の遺伝子の5'UTR)、3'UTR(例えば、コリン遺伝子または別の遺伝子の3'UTR);ポリアデニル化部位;またはインスレーター配列が含まれる。別の態様において、コリンのレベルは、内因性コリンの発現レベルを増加させることによって、例えば、コリン遺伝子の転写を増加させるかまたはコリンmRNA安定性を増加させることによって増加させる。さらに別の態様においては、内因性コリン遺伝子の制御配列を例えば体細胞において変化させ、例えば正の制御エレメント(エンハンサーまたは転写活性化因子のDNA結合部位)を付加し;負の制御エレメント(転写抑制因子のDNA結合部位など)を欠失させ;および/または内因性制御配列もしくはその中のエレメントを別の遺伝子のそれらと置換し、それによってコリン遺伝子のコード領域をより効率的に転写させることによって、コリン遺伝子の転写を増加させる。
【0041】
コリンを減少させ、ひいては発毛を減少させる物質は、例えば;コリン結合タンパク質、例えばコリンに結合してコリン活性を阻害するか、もしくはコリンが結合パートナーと相互作用する能力を阻害する可溶性コリン結合タンパク質;コリンタンパク質を特異的に結合する抗体、例えば、コリンが結合パートナーと結合する能力を破壊する抗体;コリンと結合するがコリン活性を破壊する変異型不活性コリンもしくはその断片;細胞のコリン核酸配列、例えばmRNAと結合し得り、かつタンパク質の発現を抑制し得るコリン核酸分子、例えば、アンチセンス、siRNA分子、もしくはコリンリボザイム;コリン遺伝子の発現を減少させる物質、例えばコリンのプロモーターと結合する小分子;または粗製抽出物もしくは半精製抽出物、例えば植物抽出物もしくは藻類抽出物などの植物抽出物であってよい。別の態様において、コリンは、内因性コリン遺伝子の発現レベルを減少させることによって、例えばコリン遺伝子の転写を減少させることによって抑制される。さらに別の態様においては、内因性コリン遺伝子の制御配列を変化させることにより、例えば、負の制御配列(転写抑制因子のDNA結合部位など)を付加することにより、または正の制御配列(エンハンサーまたは転写活性化因子のDNA結合部位)を除去することにより、コリン遺伝子の転写を減少させ得る。別の態様において、コリンに結合する抗体はモノクローナル抗体、例えば、ヒト化キメラモノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体である。
【0042】
別の局面において、本開示は、コリンの発現、活性、またはレベルを調節する物質、例えば本明細書に記載する物質、例えば本明細書に記載のスクリーニング方法によって同定される物質を含む、発毛を調節するための組成物に関する。別の態様において、組成物は、例えば局所投与用に製剤化された化粧品組成物である。組成物は、皮膚に適用した場合、例えば少なくとも1日、例えば少なくとも7日、例えば14、30、60、90日にわたって発毛を調節するのに有効であるか、または組成物は、より長期間、例えば6〜9ヶ月もしくはそれ以上の期間にわたって発毛を調節するのに有効であり得る。1つの態様において、組成物はまた、香料、保存剤、または他の化粧品成分、例えば保湿剤または日焼け防止剤(例えば、オクチルメトキシ桂皮酸、アミノ安息香酸、オキシベンゾン、パディメートO、ホモサラート、または二酸化チタン)を有する。組成物は、シャンプー、オイル、クリーム、ローション、石鹸、フォーム、ジェル、または他の化粧品調製物として提供され得る。別の態様において、組成物はまた、例えば香料または保湿剤などの化粧品成分を有する。
【0043】
別の局面において、本開示は、対象において発毛を調節する方法に関する。本方法は、コリンの成分の発現、活性、またはレベルに影響を及ぼす物質、例えば本明細書に記載の物質、例えば本明細書に記載のスクリーニング方法によって同定される物質を含む組成物を対象に提供する段階、および発毛に関する適用説明書を対象に提供する段階を含む。
【0044】
別の局面において、本開示は、本明細書に記載の組成物、例えばコリンの成分の発現、活性、またはレベルに影響を及ぼす物質を含む組成物;および使用説明書、例えば発毛の必要な身体の部位に組成物を適用するための説明書を含む、対象の発毛を調節するためのキットに関する。好ましい態様において、組成物はまた、例えば香料または保湿剤などの化粧品成分を有する。
【0045】
本発明の物質の有効量は、対象への投与に際して、対象における発毛を調節する組成物の量と定義される。対象に投与すべき有効量は、典型的に、年齢、性別、表面積、体重、および皮膚の状態を含む様々な要因に基づく。体表面積は、患者の身長および体重から概算的に決定し得る。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardley, New York, 1970, 537を参照されたい。有効な用量は、当業者によって認識されるように、投与経路、賦形剤の使用、および他の発毛調節化合物の使用などのその他の治療との共使用の可能性に応じて変動する。
【0046】
別の局面において、本開示は、対象が発毛関連疾患(例えば脱毛症)の危険性があるかどうかまたはそのような疾患を有するかどうかを決定する方法を提供する。本方法は:(a) 対象において、例えば対象の生物試料において、コリンのレベル、活性、発現、および/または遺伝子型を評価する段階、および(b) コリンの変化、例えばコリンの非野生型レベル、活性、発現、および/または遺伝子型を、発毛関連疾患(例えば脱毛症)の危険性またはその存在と関連づける段階を含む。関連づけ段階は、変化を、発毛関連疾患の危険または診断因子として同定する段階、例えば、変化を発毛関連疾患の危険または診断因子と同定する印刷物またはコンピュータ可読媒体(例えば、情報、診断、販売、または教材用の印刷物またはコンピュータ可読媒体)を例えば対象または医療提供者に提供する段階を含む。
【0047】
1つの態様において、本方法は、対象を発毛関連疾患(例えば脱毛症)の危険性があるかまたはそのような疾患を有すると診断する段階を含む。別の態様において、本方法は、対象において発毛関連疾患(例えば脱毛症)の治療を処方するまたは開始する段階を含む。いくつかの態様において、本方法は、発毛関連疾患(例えば脱毛症)について第2の診断試験を実施する段階を含む。第2の診断試験は、例えば、対象におけるコリンのレベル、活性、発現、および/または遺伝子型の評価を繰り返す段階を含み得る。
【0048】
対象は、ヒト、例えば発毛関連疾患(例えば脱毛症)の家族歴があるヒトであってよい。生物試料は、細胞試料、組織試料、または少なくとも部分的に単離された分子、例えば対象に由来する核酸(例えば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA)および/またはタンパク質であってよい。このような方法は、例えば、発毛関連疾患(例えば脱毛症)または発毛関連疾患(例えば脱毛症)の危険性の診断に有用である。
【0049】
1つの態様において、本方法は以下の段階の1つまたは複数を含む:
(1) 対象の生物試料において、コリンの発現に影響を及ぼす変異の有無を検出する段階、または遺伝子の発現を調節する領域における変異、例えば5'調節領域における変異の有無を検出する段階であり、変異の存在は危険性を示す;
(2) 対象の生物試料において、コリンの構造を変更する変異の有無を検出する段階であり、変異の存在は危険性を示す;
(3) 対象の生物試料において、mRNAレベルでコリンの誤発現を検出する段階、例えばコリンmRNAの非野生型レベルを検出する段階であり、コリンmRNAの非野生型レベルは危険性と関連する。誤発現を検出する段階は、以下の少なくとも1つの存在を確認する段階を含み得る:参照と比較した、例えば基礎値もしくは発毛関連疾患の危険性がない対象のレベルと比較した場合の、コリンのmRNA転写産物のレベルの変化;遺伝子のmRNA転写産物の非野生型スプライシングパターンの存在;または、例えば参照と比較した場合の、例えば基礎値もしくは発毛関連疾患の危険性がない対象のレベルと比較した、コリンタンパク質の非野生型レベル;
(4) 対象の生物試料において、タンパク質レベルでコリンの誤発現を検出する段階、例えばコリンポリペプチドの非野生型レベルを検出する段階であり、(例えば、対照に対する)コリンタンパク質のレベルの減少または増加は危険性を示す。例えば、本方法は、対象由来の試料をコリンタンパク質に対する抗体と接触させる段階を含む;
(5) 対象の生物試料において、発毛関連疾患と関連する、コリン遺伝子における多型、例えばSNPを検出する段階。別の態様において、本方法は以下の少なくとも1つの存在を確認する段階を含む:コリン遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチドの挿入または欠失;点突然変異、例えば遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチドの置換;遺伝子の全体的な染色体再配置、例えば逆位、重複、または欠失。さらに別の態様においては、発毛関連疾患に関連するSNPまたはハプロタイプを検出する。
【0050】
1つの態様において、変異または多型を検出する段階は:(i) コリン遺伝子もしく天然に存在するその変異体、またはコリン遺伝子と天然で会合している5'もしくは3'隣接配列のセンスまたはアンチセンス配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含むプローブまたはプライマー、例えば標識プローブまたはプライマーを提供する段階;(ii) プローブ/プライマーを対象の核酸に曝露する段階、および(iii) 例えばハイブリダイゼーション(例えば、核酸に対するインサイチューハイブリダイゼーション);または核酸の増幅によって、変異または多型の有無を検出する段階を含み得る。
【0051】
別の局面において、本開示は、(a) 対象識別子、例えば患者識別子、(b) 対象の評価、例えば本明細書に記載の診断評価による1つまたは複数の結果、例えば対象におけるコリンの発現、レベル、または活性のレベル、および任意に(c) 疾患または健康状態に関連する値、例えば、発毛関連疾患(例えば脱毛症)に関する疾患状態または危険性と関連する値がコード化されたコンピュータ可読記録に関する。1つの態様において、本開示は、複数のデジタルコード化された記録を有するコンピュータ媒体に関する。各データ記録は、試料中のコリンの発現、レベル、または活性のレベルを表す値、および試料の記述子を含む。試料の記述子は、試料の識別子;試料の由来元である対象、例えば患者;診断;または治療、例えば本明細書に記載の治療であってよい。1つの態様において、データ記録は、コリン以外の遺伝子、例えば発毛に関連する他の遺伝子またはアレイ上の他の遺伝子の発現、レベル、または活性のレベルを表す値をさらに含む。データ記録は、表、例えばリレーショナルデータベース(例えば、OracleまたはSybaseデータベース環境のSQLデータベース)などのデータベースの一部である表として構造化され得る。本開示はまた、例えば、情報を例えばコンピュータネットワークを介して伝達する(例えば本明細書に記載のコンピュータ可読記録を伝達する)ことにより、対象についての情報を伝達する方法を含む。
【0052】
別の局面において、本開示は、例えば本明細書に記載の疾患を有するかまたはそのような疾患の危険性がある対象の治療に関して決定を下すための情報を提供する方法に関する。本方法は、(a) コリンの発現、レベル、または活性を評価する段階;任意に(b) コリンの発現、レベル、または活性の値を提供する段階;任意に(c) 提供値を、参照値、例えば対照もしくは非疾患状態参照または疾患状態参照と比較する段階;および任意に(d) 例えば提供値と参照値の関係に基づき、情報、例えば対象の治療に対してまたは関連して決定を下すための情報を提供する段階を含む。
【0053】
1つの態様において、提供値は、本明細書に記載の活性、例えば本明細書に記載のコリン活性に関する。
【0054】
1つの態様において、決定は、事前に選択された治療を施すかどうかである。
【0055】
別の態様において、決定は、団体、例えば保険会社、保険維持機構(HMO)、または他の団体が、事前に選択された治療のすべてまたは一部の代金を支払うかどうかである。
【0056】
試料を評価する方法にもまた関する。本方法は、例えば対象に由来する試料を提供する段階、および試料の遺伝子発現プロファイルを決定する段階を含み、プロファイルはコリンの発現レベルを表す値を含む。本方法は、値またはプロファイル(すなわち複数の値)を参照値または参照プロファイルと比較する段階をさらに含み得る。試料の遺伝子発現プロファイルは、当技術分野で周知の方法により、例えば試料に由来する核酸を提供し、その核酸をアレイと接触させることにより得られ得る。本方法を用いて、対象において発毛関連疾患、例えば発毛の減少または非至適発毛、例えば脱毛症を診断することができ、コリンの誤発現、例えばコリンの発現の減少は、対象が脱毛(例えば脱毛症)を有するかまたはそれを有する傾向がある徴候である。本方法を用いて、対象において治療をモニターすることができる。例えば、遺伝子発現プロファイルは、治療を受けている対象の試料について決定され得る。プロファイルは、参照プロファイルと、または治療前もしくは疾患の発症前に対象から得られたプロファイルと比較され得る(例えば、Golub et al. (1999) Science 286:531を参照のこと)。
【0057】
本明細書で使用する「DP細胞」または「真皮乳頭細胞」という用語は、対象において見出されるDP細胞、または例えば適切な環境に存在する場合に、コリンを発現するかもしくはコリンを発現する能力を有する、皮膚に由来する細胞を指す。DP細胞はまた、毛包の形成および/または増殖を誘導し得る。皮膚から単離されたDP細胞は、コリンの発現を減少し得るかまたは停止し得るが、例えば適切な環境に存在する場合に、コリンを発現する能力を維持する。例えば、コリン発現は、ケラチノサイトとの接触(ケラチノサイト細胞またはそのような細胞に由来する物質(例えば、そのような細胞とDP細胞の間の誘導シグナル)との直接的接触を含む)により回復され得る。
【0058】
本明細書で使用する「コリン発現能を有する細胞」という用語は、コリンを発現してもしなくてもよいが、適切な環境にある場合に、例えばケラチノサイトまたはそのような細胞に由来する物質(例えば、ケラチノサイトに由来する誘導シグナル)と接触させた場合に、コリンを発現し得る細胞を指す。1つの例示的な方法においては、皮膚細胞のコリン能は、そのような細胞をケラチノサイトと共培養することによって評価され得る。
【0059】
毛髪の回復法は大きな市場を意味する。毛髪回復療法の従来のアプローチは、
身体の他の部分から回収した無傷の毛包を、頭皮の薄い部分に移植することを伴う。毛包移植は、移植のために利用できる毛包の数、および個々のヘアプラグ(hair plug)を手作業で移植することに伴う費用によって制限される。
【0060】
インビボのDP細胞は無傷の毛包において発毛を促進し得り、DP細胞移植片は毛包の形成を誘導し得る。移植および他の工程にDP細胞を日常的に使用するためには、毛誘導特性を有する相当な数のDP細胞または関連細胞を得る方法を有することが有用であると考えられる。
【0061】
DP器官からDP細胞を単離する周知の技法は、毛包からDPを外植する段階、外植片を培養する段階、およびDP外植片から培養液中にDP細胞を遊出させる段階を含む(例えば、Messenger (1984) British J. of Dermatol. 110:685-689;Magerl et al. (2002) Exp. Dermatol. 11:381-385を参照されたい)。または、DP細胞はDPから手作業で解離され得る。これらの技法は、少数のDP細胞を単離するのに適している。このような細胞は、例えば本明細書に記載する方法によって拡大され、例えばコリン発現に関して評価され得る。
【0062】
本明細書に記載の方法は、例えば、例えば毛の形成を増加させるために、同じまたは異なる対象から得られたDP細胞を対象に移植することをはじめとする臨床適用のために、多数のDP細胞を単離する手段を提供する。移植する細胞は自己細胞、同種細胞、または異種細胞であってよいが、好ましくは自己細胞である。自己細胞は好ましくは、脱毛を特徴とする対象に由来する。例えば、発毛は、対象の頭皮;対象の顔において促進され、例えば、顎髭および/または口髭の顔の発毛が促進される。
【0063】
好ましい態様において、対象は、毛量が不十分であるかまたは発毛速度が不十分である。好ましい態様において、対象は、遺伝的禿頭症を患っている;発毛を減少させるホルモン障害を患っている;治療(例えば、放射線または化学療法)を受けたか、もしくは発毛を阻害する薬物を投与された;または発毛を必要とする外科的処置、例えば皮膚移植を受けたことがある。
【0064】
1つまたは複数の態様の詳細を、添付の図面および以下の説明に記載する。他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになると考えられる。
【0065】
詳細な説明
コリンタンパク質
コリンは、プロテアーゼ、LDL受容体、frizzled、およびスカベンジャー受容体ドメインを含む細胞外ドメインを有するII型膜貫通タンパク質である。ヒトコリン遺伝子は心筋細胞で発現され、コリンタンパク質は、血圧の制御に関与するホルモンであるプロ心房性ナトリウムナトリウム利尿ペプチド(proANP)を切断し得ることが報告されている(Yan (1999) J. Biol. Cehm. 274:14926-14935;Yan et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:8525-8529;Pan et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:38390-38398;Wu et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:16900-16905)。マウスコリン(LRP4)は、心臓で発現されることが示されている(Tomita et al. (1998) J. Biochem. 124:784-789)。
【0066】
本発明者らは、とりわけ、コリンが非心臓組織の特殊化した細胞、例えば皮膚の特殊化した細胞においても発現されることを発見した。したがって、コリン発現を用いて、非心臓組織における特殊化細胞の分布を評価し特徴づけること、およびそのような細胞を単離すること、またはそのような細胞の機能を調節する物質を同定することができる。例えば、皮膚から真皮乳頭細胞を単離するためのマーカーとして、コリン発現を使用することができる。
【0067】
例示的なヒトコリンアミノ酸配列は以下の通りである(配列番号:1;Yan et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:14926-14935)。

【0068】
コリンは多くの異なるドメインを含む。そのN末端において、コリンは細胞質ドメインおよび内在性膜貫通ドメインを有する。その後にC末端には、2つのfrizzled様システインリッチモチーフ、8つの低密度リポタンパク質受容体反復、マクロファージスカベンジャー受容体様ドメイン、およびトリプシン様プロテアーゼドメインを含む細胞外ドメインが続く(Yan et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:14926-14935;Hooper et al. (2000) Eur. J. Biochem. 267:6931-6937)。コリンの全体的なトポロジーは、ヘプシン(Leytus et al. (1988) Biocehm. 27:1067-1074;Wu (2001) Front. Biosci. 6:D192-D200)およびエンテロキナーゼ(Kitamoto (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:7588-7592)などの、トリプシンスーパーファミリーの他のII型膜貫通セリンプロテアーゼ(Hooper et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:857-860)のトポロジーと類似している。
【0069】
(表1)コリンの特徴(配列番号:1を参照)


【0070】
ヒトコリンをコードする遺伝子は、ゲノムの位置としては、第4染色体の47436946〜47680987 bpまたは47436846:47681987(47.4 Mb)に位置している。この遺伝子は、配列AC107068.3.1.181804内に位置している。制御配列を含み得るこの領域の例示的な部分は、(非翻訳領域および太字の第1エキソンを含む)以下を含む。

【0071】
DP細胞の同定
コリンは皮膚のDP細胞において発現される。DP細胞は、コリン発現をマーカーとして使用して同定され得る。コリン発現を検出するには、様々な方法を用いることができる。例えば、コリンタンパク質またはコリン核酸を評価し得る。コリン発現はまた、コリンタンパク質またはコリン核酸を直接評価することなく、検出することも可能である。例えば、細胞はレポーター遺伝子またはコリン発現の他の指標を含み得る。
【0072】
1つの態様においては、例えばコリン結合剤、例えばコリンタンパク質結合剤、特にコリンタンパク質の細胞外領域を認識する物質を用いて、皮膚細胞におけるコリンの存在、レベル、または非存在を決定し得る。適切なコリン結合剤には、例えば、核酸、ポリペプチド(例えば抗体)、ペプチド断片、ペプチド模倣物、または小分子が含まれ得る。
【0073】
抗コリン抗体は、例えば、例えばポリクローナル抗体;モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片;キメラ抗体、再形成抗体、ヒト化抗体、もしくはそれらの断片(例えば、Fab'、Fab、F(ab')2)などの改変抗体;または生合成抗体、例えば一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、一本鎖Fv(scFv)などであってよい。
【0074】
特定の標的を検出するためのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製および使用する方法は、例えば、Harlow et al., Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol I. Cold Spring Harbor Laboratory (December 1, 1998)に記載されている。改変抗体および抗体断片(例えば、キメラ抗体、再形成抗体、ヒト化抗体、またはそれらの断片(例えば、Fab'、Fab、F(ab')2断片);または生合成抗体(例えば、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、一本鎖Fv(scFv)など)を作製する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、Zola, Monoclonal Antibodies: Preparation and Use of Monoclonal Antibodies and Engineered Antibody Derivatives, Springer Verlag (December 15, 2000; 1st edition)に見出すことができる。
【0075】
1つの態様において、コリン結合剤(抗体など)は、検出可能な「標識」と会合している。プローブまたは抗体に関する「標識された」という用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合する(例えば、物理的に連結する)ことによるプローブまたは抗体の直接的標識、および検出可能な物質との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含することが意図される。コリン結合剤は、例えば蛍光タグ(例えばGFP)、放射性タグ、mycタグ、またはhisタグで標識され得る。コリン結合剤は、ビーズ(例えば磁気ビーズ)などの不溶性支持体と例えば直接または間接的に会合され得る。例えば、コリン結合剤は不溶性支持体と結合され得る。
【0076】
検出方法を用いて、生物試料、例えば皮膚、例えば皮膚細胞中のコリンをインビトロおよびインビボで検出することができる。インビトロ検出法には、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫沈降法、免疫蛍光法、酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、およびウェスタンブロット解析法が含まれる。コリンを検出するためのインビボ技法には、標識コリン結合剤(例えば抗体)の対象への導入が含まれる。例えば、対象中のコリン結合剤の存在および位置の、標準的な画像処理技術による検出を可能にする放射性マーカーで、コリン結合剤を標識することができる。別の態様においては、対象から得られた試料を標識し(例えばビオチン化し)、次いでコリン結合剤、例えば抗体アレイ上に位置する抗体と接触させる。試料は、例えば蛍光標識に結合されたアビジンを用いて検出され得る。
【0077】
皮膚細胞におけるコリンの存在、レベル、または非存在は、コリンをコードするコリン核酸(例えば、mRNAまたはゲノムDNA)の存在が検出されるように、皮膚細胞をそのような核酸を検出し得る化合物または物質と接触させることによって評価し得る。細胞中のコリンに相当するmRNAのレベルは、インサイチュー法およびインビトロ法の両方で決定することができる。
【0078】
単離されたmRNAは、サザンまたはノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応解析、およびプローブアレイを含むがこれらに限定されないハイブリダイゼーションアッセイまたは増幅アッセイで使用され得る。mRNAレベルを検出するための例示的な診断方法は、単離されたmRNAを、検出される遺伝子によってコードされるmRNAにハイブリダイズし得る核酸分子(プローブ)と接触させる段階を含む。核酸プローブは、例えば全長核酸またはその一部、例えば少なくとも7、15、30、50、100、250、または500ヌクレオチド長であり、かつコリンをコードするmRNA、cDNA、またはゲノムDNAとストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドなどであってよい。ハイブリダイゼーション反応を行うための手引きは、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見出すことができる。この参考文献では水性法および非水性法について記載されており、どちらも使用可能である。特異的ハイブリダイゼーション条件の例には、以下のものが含まれる:1) 低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃での6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、およびその後の少なくとも50℃での0.2X SSC、0.1% SDSによる2回の洗浄(低ストリンジェンシー条件では、洗浄温度は55℃まで上昇させることができる);2) 中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃での6X SSC、およびその後の60℃での0.2X SSC、0.1% SDSによる1回またはそれ以上の洗浄;3) 高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃での6X SSC、およびその後の65℃での0.2X SSC、0.1% SDSによる1回またはそれ以上の洗浄;ならびに好ましくは4) 非常に高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件:約65℃での0.5 Mリン酸ナトリウム、7% SDS、およびその後の65℃での0.2X SSC、1% SDSによる1回またはそれ以上の洗浄。
【0079】
プローブは、アレイ、例えば以下に記載するアレイのアドレス上に配置され得る。診断アッセイにおいて使用するための他の適切なプローブについては、本明細書中で説明する。
【0080】
1つの型式では、例えば単離されたmRNAをアガロースゲル上で泳動し、ゲルからニトロセルロースなどの膜に転写することによって、mRNAまたはcDNAを表面上に固定化し、これをプローブと接触させる。別の型式では、例えば以下に記載する二次元ジーンチップアレイにおいて、プローブを表面上に固定化し、mRNAまたはcDNAをプローブと接触させる。当業者は、周知のmRNA検出法を、遺伝子によってコードされるmRNAのレベルの検出に使用するために適合化することができる。遺伝子によってコードされる試料中のmRNAのレベルは、核酸増幅によって、例えばrtPCRによって評価することができる。
【0081】
インサイチュー法では、細胞(例えば皮膚細胞)または組織(例えば皮膚試料)を調製/処理し、支持体、典型的にはスライドガラス上に固定化し、次いで解析される遺伝子をコードするmRNAにハイブリダイズし得るプローブと接触させ得る。
【0082】
別の態様では、本方法は、対照試料、例えば皮膚にも心臓にも由来しない細胞、例えば脾臓、胸腺、骨格筋、肝臓、結腸、脳、腎臓、肺、胃、精巣、または結腸に由来する細胞を、mRNAまたはゲノムDNAを検出し得る化合物または物質と接触させる段階、および対照試料中のmRNAまたはゲノムDNAの存在を被験試料中のmRNAまたはゲノムDNAの存在と比較する段階をさらに含む。さらに別の態様においては、米国特許第5,695,937号に記載されている遺伝子発現の連続解析を用いて、コリンの転写産物レベルを検出する。
【0083】
別の態様においては、本方法は、対照試料をコリンを検出し得る化合物または物質と接触させる段階、および対照試料中のコリンタンパク質の存在を被験試料中のタンパク質の存在と比較する段階をさらに含む。
【0084】
本開示はまた、生物試料中のコリンの存在を検出するためのキットを含む。例えば、キットは、コリンタンパク質を検出し得る化合物または物質(例えば抗体)またはコリンmRNAを検出し得る化合物または物質(例えば核酸プローブ)および標準物質を含み得る。化合物または物質は、適切な容器中に包装され得る。キットは、例えば発毛関連疾患の危険性または素因に関して対象を評価するためにキットを使用するための使用説明書をさらに含み得る。
【0085】
DP細胞の同定を確実にするために、DP細胞の他のマーカーを評価することもまた可能である。例えば、成長期のDP細胞はベリスキャン(veriscan)を発現する。例えば、Kishimoto et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci USA 96:7336-7341に記載されているように、ベリスキャンプロモーターの調節下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を特異的に発現するトランスジェニックマウス系統を作製することができる。単離されたトランスジェニック成長期毛包は、DP細胞においてベリスキャンレポーターからのGFP蛍光を示す。ベリスキャン-GFP導入遺伝子は発毛の成長期において活性を有するが、退行期および休止期には遮断される。特定の態様において、細胞は、例えば1つもしくは複数の抗体および/または1つもしくは複数のレポーター遺伝子を用いて、コリン発現およびベリスキャン発現の両方について評価される。
【0086】
DP細胞の単離
DP細胞は、様々な日常的技法を用いて単離され得る。例えば、DP細胞はコリンタンパク質結合剤(例えば抗コリン抗体)を用いて単離される。
【0087】
例えば、例えばフローサイトメトリー(例えば、Herzenberg et al. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:1453-1455;Iverson et al. (1981) Prenatal Diagnosis 1:61-73;およびBianchi et al. (1991) Prenatal Diagnosis 11:523-528を参照のこと)、顕微操作、または不溶性支持体への付着による、非DP細胞からのDP細胞の分離を容易にするために、本明細書で記載する抗コリン抗体を用いてDP細胞を標識することができる。
【0088】
フローサイトメトリーは、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)(例えば、Herzenberg et al. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:1453参を照のこと)、磁気活性化セルソーティング(MACS)(例えば、Ganshirt-Ahlert et al. (1992) Am. J. Obstet. Gynecol. 166:1350を参照のこと)、または両手順の組み合わせ(Ganshirt-Ahlert et al. (1992) Am. J. Hum. Genet. 51:A48)を利用し得る。さらに、勾配遠心分離法およびフローサイトメトリー法の組み合わせを用いて、単離または選別効率を増大させることも可能である。他の日常的な細胞分離法、例えば免疫クロマトグラフィー(例えば、米国特許第6,069,014号を参照のこと)を用いることも可能である。
【0089】
これらおよび他の細胞分離法を用いて、細胞集団、例えばコリン発現細胞および非発現細胞の両方を含む集団から少なくとも1つのコリン発現細胞を分離することができる。例えば、集団は、例えばそのような細胞をトリプシン処理することによって天然または人工皮膚から得られ得る。
【0090】
DP細胞の培養
DP細胞は、単離後に、日常的な方法を用いて培地中で維持することができる。適切な培地は、例えばハムF10(Sigma)、最小必須培地([MEM]、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、およびダルベッコ改変イーグル培地([DMEM]、Sigma)などの市販の培地であってよい。さらに、Ham and Wallace (1979) Meth. Enz. 58:44;Barnes and Sato (1980) Anal. Biochem. 102:255;米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;第4,560,655号;もしくは第5,122,469号;国際公開公報第90/03430号;国際公開公報第87/00195号;または米国再発行特許第30,985号に記載されている培地のいずれもが、細胞の培地として使用することができる。本明細書に記載の方法では、DMEMが好ましく用いられる。培地には、血清(ウシ胎児血清、ウシ血清、またはウマ血清など)、ホルモンおよび/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子など)、イオン(ナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウム、およびリンなど)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオシド(アデノシンおよびチミジンなど)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物と定義される)、およびグルコースまたは同等のエネルギー源を必要に応じて添加し得る。本明細書に記載する方法では、培地には好ましくはウシ胎児血清を添加する。
【0091】
単離された細胞は、細胞の毛誘導能またはコリンを発現する能力を維持する様式で培養し得る。場合によっては、コリン発現細胞は、特定の培養条件下でコリンの発現を減少または停止する。しかし、そのような細胞は、例えばケラチノサイトと接触させた場合に、コリンを発現する能力を有したままである。そのような細胞を培養で拡大し、次いで例えば発毛を促進するために使用することができる。
【0092】
1つの態様においては、これらを使用する前に、分割量中の細胞がコリンを発現しているかどうかおよび/または例えばケラチノサイトと接触させた場合にコリンを発現する能力を有するかどうかを決定する例えば品質管理の目的で、1つまたは複数の細胞の分割量を評価する。
【0093】
1つの態様において、単離された細胞は、少なくとも1つの因子(ホルモンまたは増殖因子など)、例えばDP細胞の毛誘導能を維持し得る因子、例えばWntポリペプチド(例えば、Wnt3、Wnt4、またはWnt7)またはWnt促進性シグナル伝達を誘導するかもしくはそのようなシグナル伝達の効果を模倣する物質の存在下で培養する(US2004-0170611)。Wnt促進性シグナル伝達の効果を摸倣するかまたはそのようなシグナル伝達を誘導する物質には、β-カテニンリン酸化を阻害する物質、GSK3βキナーゼを阻害する物質(塩化リチウム)、β-カテニンの細胞質蓄積を増加させる物質、またはFrizzled受容体と相互作用する物質が含まれる。
【0094】
Wntポリペプチドは、Wntの単離または遺伝子操作法によるWntをコードする配列の発現を含む、いくつかの方法で得ることができる。様々な種に由来する様々なWntタンパク質のヌクレオチド配列が周知である。例えば、Gavin et al. (1990) Genes Dev. 4:2319-2332;Lee et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:2268-2272;およびChristiansen et al. (1995) Mech. Dev. 51:341-350(例えば、マウスWnt1、Wnt2、Wnt3a、Wnt3b、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt10b、Wnt11、Wnt12について記載している)ならびにVant Veer et al. (1984) Mol. Cell Biol. 4:2532-2534;Wainwright et al. (1988) EMBO J. 7:1743-1748;および国際公開公報第95/17416号(例えば、ヒトWnt1、Wnt2、Wnt3、Wnt4、Wnt5a、Wnt7a、およびWnt7bについて記載している)を参照されたい。
【0095】
細胞は、精製したまたは部分精製したWntタンパク質(例えばその成熟型)と共に、またはWntを発現するフィーダー細胞、例えばWnt 3a、4、5a、または7aを発現するフィーダー細胞と共に培養し得る。例えば、細胞は、Wntと共に少なくとも1日、2日、3日、4日、または5日間、例えば1週間培養し得る。
【0096】
Wntシグナル経路において、可溶性分子であるWntは、様々な種類の細胞上に見出される細胞表面受容体Frizzled(Frz)と結合する。disshelvedの存在下において、WntがFrzに結合すると、GSK3βを介したβ-カテニンリン酸化、およびその後のリン酸化依存性β-カテニン分解が阻害される。したがって、Wntの結合は細胞β-カテニンを安定化する。Wnt結合の存在下では、細胞質においてβ-カテニンが蓄積して、Lef1に結合する。次いで、β-カテニン-Lef1複合体は核に移行し、そこで転写活性化を媒介する。
【0097】
「Wnt促進性シグナル伝達の効果」という用語は、Wntシグナル伝達によって、例えばFrizzledへのWnt結合によって開始される、細胞、例えばDP細胞もしくは他のコリン発現細胞またはコリン発現能を有する細胞における生化学的効果(例えば、例えばタンパク質結合相互作用、リン酸化、または転写の調節)の1つまたは複数を指す。Wnt促進性シグナル伝達の効果には、FrizzledへのWnt結合;GSK3βを介したリン酸化の阻害;リン酸化依存性β-カテニン分解の阻害;細胞質におけるβ-カテニンタンパク質の蓄積;細胞β-カテニンの安定化;細胞質におけるβ-カテニン蓄積;Lef1へのβ-カテニン結合;核へのβ-カテニン-Lef1複合体の移行;および関連遺伝子からの転写の促進が含まれ得る。Wnt促進性シグナル伝達の成分には、Frizzledタンパク質(例えば、Frizzled-7(frz-7))、disheveledタンパク質(例えば、disheveled-2(dsh-2))、GSK3、βカテニン、Lef1、およびLef/TFCが含まれ得る。Wntシグナル経路の他の効果および成分は、Arias et al. (1999) Curr. Opin. Genet. & Dev. 9:447-454に記載されている。
【0098】
発毛の促進
本開示はまた、毛誘導能を有する培養真皮乳頭細胞を対象に、例えば対象の皮膚に、例えば毛包に移植する、発毛を促進する方法を提供する。例えば、コリン発現能を有する皮膚細胞を、例えば新たな皮膚の成分として、または毛包、例えば既存のもしくは新たな毛包に挿入することによって対象に投与し得る。そのようなコリン発現能を有する皮膚細胞は、例えば投与後に、例えばケラチノサイトまたはケラチノサイトからのシグナルと接触させた場合に、コリンを発現し得る。
【0099】
いくつかの態様においては、移植部位内の培養DP細胞の凝集を誘導および/または維持するために、本明細書に記載の培養DP細胞を、物理的および/または生化学的凝集に供する。例えば、培養物を遠心分離することで、培養DP細胞を凝集させることができる。さらに、対象への移植前または移植時に、培養DP細胞に適切な凝集増強物質、例えばフィブロネクチンまたはグリコサミノグリカンなどの糖タンパク質(例えば、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカン、ヘパラン硫酸);DP細胞と結合することが知られている他の細胞外基質成分(例えばコラーゲン);ホルモン;および凝集を誘導することが知られている増殖因子を添加し得る。
【0100】
培養DP細胞は、日常的な方法、例えば、Jahoda et al. (1984) Nature 311:560-562に記載されている方法を用いて対象に移植し得る。種々の投与経路および種々の部位を使用することができる。例えば、培養DP細胞は、処置部位の外皮層の真皮と表皮の間に直接導入することができる。これは、処置部位の皮膚に水泡を形成し、培養DP細胞を水泡内に、すなわち水泡液が占める空洞内に導入することによって達成され得る。水泡は、日常的な技法によって、例えば皮膚に減圧吸引を適用するなど機械的手段によって、または化学的手段によって形成し得る。
【0101】
培養DP細胞はまた、表皮を介して真皮に及ぶ適切な切開部に導入することも可能である。切開部は、日常的な技法を用いて、例えばメスまたは皮下注射針を用いて形成し得る。切開部は、一般に切開部の両側において表皮に直接近接するレベルまで、培養DP細胞で満たし得る。
【0102】
または、培養DP細胞は毛包に導入し得る。培養DP細胞を導入する前に、適切に切開することにより最初に毛包を露出させ得る。または、最初に露出させることなく、例えば皮下注射針または他の適切な送達装置を用いて、毛包を培養DP細胞で満たし得る。
【0103】
培養DP細胞はまた、異なる種類の細胞、例えば培養上皮細胞と共に対象に導入することもできる。上皮細胞は、対象、別の対象、または市販の供給源に由来し得る。培養上皮細胞は、遊離の上皮細胞の形態であっても、またはシート状の上皮細胞の形態であってもよい。後者の場合、培養DP細胞は上皮細胞のシートで形成されるポケット中に封入され得る。培養DP細胞が上皮細胞で形成されたポケット内に導入される場合、処置部位の皮膚の切開部は、その下に培養真皮乳頭細胞のポケットが導入され得る皮膚のフラップが実際に形成されて、次いでフラップがポケットの上部でそれを密封するように元の位置に戻り、外部汚染からポケットを保護するように、皮膚表面に対しておおむね浅い角度で斜めに伸びるように形成され得る。
【0104】
別の態様においては、培養DP細胞を移植する皮膚に、複数の密集した小さな開口部を形成する。例えば、複数には、少なくとも10、50、100、500、または1000個の開口部が含まれ得る。各開口部は、多数の培養DP細胞で満たされ得る。開口部の大きさおよび深さは様々であってよい。個々の開口部の横の長さは最小限に抑えられ得り、例えば約5 mm、例えば約2 mmに制限され得る。開口部の深さは、表皮の全深度よりも大きくてよく、例えば真皮の少なくとも1 mm、例えば少なくとも3 mmまで及んでよい。皮膚の開口部は日常的な技法で形成され得り、皮膚切断器具、例えばメスまたは皮下注射針またはレーザー(例えば低出力レーザー)の使用が含まれ得る。または、間隔を開けた複数の開口部が皮膚に同時に形成されるように、間隔を開けた複数の刃先が形成および配列された多孔穿孔装置を用いることも可能である。培養DP細胞は、皮膚の複数の開口部、例えば少なくともいくつかの開口部に同時に導入され得る。
【0105】
各開口部に導入される細胞数は、種々の要因、例えば開口部の大きさおよび深さならびに細胞の全体的な生存度および活性に応じて変動し得る。導入される細胞数は、開口部当たり、例えば0.5〜50μL量中、例えば1000〜1,000,000細胞、例えば10,000〜200,000細胞であってよい。
【0106】
いくつかの態様においては、発毛を増強するために、培養DP細胞の移植前、移植時、および/または移植後に、対象を発毛促進物質で局所的におよび/または体系的に治療する。適切な発毛促進物質には、例えば、ミノキシジル(ミシガン州、カラマンズーのUpjohn Co.から入手可能)、シクロスポリン、および天然または合成ステロイドホルモン、ならびにそれらの増強剤およびアンタゴニスト、例えば抗アンドロゲンが含まれ得る。
【0107】
対象に移植される培養DP細胞は、対象から採取されたDP細胞に由来し得る。いくつかの態様において、DP細胞は、同じ種の別の対象から、または異なる種から取得される。別の対象に由来する培養DP細胞を使用するには、免疫抑制剤の投与、組織適合性抗原の改変、または移植細胞の拒絶を妨げるための障壁装置の使用を必要とし得る。
【0108】
培養DP細胞は、単独で、またはレシピエント対象における移植DP細胞に対する免疫応答を阻害するための障壁もしくは薬剤と併用して投与することができる。例えば、対象における正常な応答を阻害または妨害するために、免疫抑制剤を対象に投与し得る。免疫抑制剤は、対象におけるT細胞活性/またはB細胞活性を阻害する免疫抑制薬であってよい。免疫抑制薬の例は市販されている(例えば、Sandoz Corp.、ニュージャージー州、イーストハノーバーによるシクロスポリンA)。
【0109】
免疫抑制剤、例えば免疫抑制薬は、望ましい治療効果(例えば、細胞拒絶の阻害)を達成するのに十分な投与量で対象に投与され得る。免疫抑制薬の適切な投与量の範囲には、例えば、Freed et al. (1992) N. Engl. J. Med. 327:1549;Spencer et al. (1992) N. Engl. J. Med. 327:1541;およびWidner et al. (1992) N. Engl. J. Med. 327:1556に記載されているものが含まれ得る。投与量の値は、対象の年齢、性別、および体重などの要因に応じて異なり得る。
【0110】
免疫抑制剤はまた、対象におけるT細胞活性を阻害する抗体、抗体断片、または抗体誘導体であってよい。T細胞を枯渇させ得るまたは捕捉し得る抗体は、例えば、ポリクローナル抗血清(例えば、抗リンパ球血清)およびモノクローナル抗体(例えば、T細胞表面上のCD2、CD3、CD4、CD8、またはCD40に結合するモノクローナル抗体)であってよい。このような抗体は、例えばアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)から市販されており、例えばOKT3(ATCC CRL 8001)である。移植後の培養DP細胞の拒絶を抑制するために、抗体は適切な期間、例えば少なくとも7日、例えば少なくとも10日、例えば少なくとも30日間投与され得る。抗体は、薬学的に許容される担体、例えば生理食塩溶液に溶解して、静脈内投与され得る。
【0111】
例示的な再構成法は、Kishimoto et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci USA 96:7336-7341に記載されている。初代ケラチノサイトを移植片1個につき2匹の新生仔から調製し、移植チャンバー内で2 x 106 DP細胞と混合した。発毛を移植の2週間後から毎週モニターした。本方法は、他の動物、例えばヒトにも拡張することができる。
【0112】
コリン発現能を有する細胞はまた、他の細胞、例えばコリン発現能をもたない細胞、例えばケラチノサイトまたは線維芽細胞と共に投与され得る。例えば、このような細胞は、皮膚移植片、例えば天然または人工皮膚移植片の成分として投与され得る。コリン発現能を有する細胞は、移植片においてランダムにまたは規則的な位置に播種され得る。人工皮膚移植片の例は、例えば米国特許第5,460,939号に記載されている、ポリグラチンを用いて調製される人工真皮である。例えば、US 2004-0171145およびBannasch H et al. Clin Plast Surg. 2003 Oct;30(4):573-9もまた照されたい。
【0113】
トランスジェニック動物
非ヒトトランスジェニック動物を作製する方法は、関心対象の核酸、例えばコリン遺伝子を、トランスジェニック動物を作製すべき非ヒト動物の生殖細胞系列に導入する段階を含み得る。齧歯動物、例えばラット、マウス、ウサギ、およびモルモットが好ましいが、他の非ヒト動物を使用することもできる。例えば、関心対象の核酸の1つまたはいくつかのコピーを、標準的なトランスジェニック技法により、哺乳動物胚のDNAに組み入れ得る(例えば、Nagy et al. Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual (3rd ed. 2003)を参照のこと)。トランスジェニックラットを作製する手順は、Bader et al. (1996) Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. Suppl. 3:S81-87に見出すことができる。
【0114】
コリン遺伝子プロモーター-コリン遺伝子導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスは、確立した方法によって作製し得る。他の発現調節配列、例えば、Pan et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:38390-38398に記載されているプロモーターも、コリン遺伝子またはその機能断片もしくは変種の発現を、内因性コリンを実質的に欠く細胞種に指示し得る。例えば、発現調節配列はコリン遺伝子発現をDP細胞に指示する。
【0115】
コリン遺伝子発現またはコリン活性もしくはレベルを調節する物質の同定
物質がコリン遺伝子発現またはコリン活性もしくはレベルを変更するかどうかを評価するための多くの方法が存在する。1つの態様において、被験物質がコリン遺伝子プロモーターからの発現を例えば永続的にまたは一時的に調節する、例えば増加させるまたは減少させる能力は、例えば日常的なレポーター(例えば、LacZまたはGFP)転写アッセイによって評価される。例えば、そのゲノムがコリン遺伝子プロモーター(Pan et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:38390-38398)に機能的に連結されたレポーター遺伝子を含む細胞またはトランスジェニック動物を、被験物質と接触させることができ、被験物質がレポーター活性を増加または減少させる能力は、物質が発毛を調節する能力を示す。別の態様において、被験物質がコリン遺伝子発現またはコリン活性もしくはレベルを調節する能力は、トランスジェニック動物、例えば本明細書に記載のトランスジェニック動物において評価される。
【0116】
コリン遺伝子発現またはコリン活性もしくはレベルに及ぼす被験物質の効果はまた、細胞、細胞溶解物、DP細胞および非DP細胞を含む共培養物、または対象、好ましくは非ヒト実験動物、より好ましくは齧歯動物(例えば、ラット、マウス、またはウサギ)、もしくはそれらの外植片(例えば皮膚)において評価され得る。コリン遺伝子発現を評価する方法、例えばノーザン解析、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、またはRNAインサイチューハイブリダイゼーションが、当技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed. 2001)を参照のこと)。コリンのレベルは、例えばウェスタン解析、免疫測定法、またはインサイチューハイブリダイゼーションによってモニターされ得る。コリン活性、例えば、プロモーター結合活性および/または転写活性の変化は、例えば電気泳動移動度シフトアッセイ、DNAフットプリント法、またはレポーター遺伝子アッセイによって決定され得る。例えば、コリン遺伝子発現またはコリン活性もしくはレベルに及ぼす被験物質の効果は、細胞、例えばDP細胞、細胞抽出物、もしくは共培養物の発毛誘導能、外植片の発毛、または被験者における発毛における変化として観察される。例えば、コリン遺伝子発現またはコリン活性もしくはレベルに及ぼす被験物質の効果は、野生型細胞もしくは非ヒト動物、またはそれらに由来する外植片もしくは細胞と比較して変化した発毛能を有するトランスジェニック細胞もしくは非ヒト動物、またはそれらに由来する外植片もしくは細胞で評価される。
【0117】
被験物質は、lacZに融合されたコリン遺伝子プロモーターを含む導入遺伝子を発現する細胞、細胞抽出物、外植片、または対象に投与され得る(例えば、Pan et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:38390-38398を参照のこと)。コリン遺伝子プロモーターまたはコリン遺伝子プロモーターからの転写を制御する因子に及ぼす被験物質の影響の結果としての、導入遺伝子、例えばレポーター、例えばlacZまたはGFPの転写の増強または阻害は、色の変化として容易に観察され得る。レポーター転写産物レベルおよびしたがってコリン遺伝子プロモーター活性は、確立した方法、例えばノーザン解析、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、またはRNAインサイチューハイブリダイゼーションによってモニターされ得る(例えばCuncliffe et al.(2002) Mamm. Genome 13:245)。物質は、無細胞系、例えばコリン遺伝子プロモーター-レポーター導入遺伝子(例えば、コリン遺伝子プロモーター-lacZ)、コリン遺伝子プロモーターと結合する転写因子、粗製細胞溶解物または核抽出物、および被験物質(例えば、本明細書に記載の物質)を含む環境を用いて評価され得り、コリン遺伝子プロモーター活性に及ぼす物質の効果は色変化として検出される。
【0118】
発毛のアッセイ
例えば物質による発毛の調節は、例えばマウス感覚毛器官培養系アッセイを用いて測定することができる。この例示的なアッセイでは、頬髭パッドをマウスから単離し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の70%エタノール中に短時間浸漬し、その後400 U/mLペニシリン、400μg/mLストレプトマイシン、および1.0μg/mlファンギゾン(いずれもGibcoBRLによる)を含むウィリアムE培地中で10分間インキュベートする。成長増殖期にある感覚毛毛包を解剖顕微鏡下で単離し、上皮表面に伸びている感覚毛の毛幹部分を切り取る。感覚毛毛包を、ウィリアムE培地単独、または物質(例えば、本明細書に記載の物質)を含む培地中で、MILLIPORE(商標)膜上にて培養する。例えば2日後に培地を新鮮な培地に交換し、毛包を例えば4日間インキュベートする。インキュベーション期間後、伸長した毛の毛幹の長さを、例えば顕微鏡下で撮影したデジタル写真の画像解析により測定する。物質処理した感覚毛毛包の毛幹の長さを、対照、例えば物質未処理感覚毛毛包と比較し、対照と比較して発毛を調節する物質が同定される。
【0119】
発毛の調節を必要とする対象および治療方法
多くの対象が発毛の調節を必要としている。発毛関連疾患(脱毛症など)を有する対象は、発毛を促進する治療を必要とし得る。脱毛を起こしているかまたは脱毛が予想される正常対象、例えば男性型脱毛を起こしているかまたはそのような脱毛が予想される対象もまた、治療することができる。
【0120】
過剰な発毛を有する対象は、発毛を阻害する治療を必要とし得る。例えば、発毛を減少させるために、コリン発現DP細胞を標的とする、例えば抑制するまたは除去することができる。発毛の調節を必要とする対象の同定は、対象、医療提供者、または別の団体によって行われ得る。
【0121】
対象は、医療提供者、化粧品小売店、または別の団体によって、例えばコリン発現に影響する組成物を供給され得る。本明細書に記載の組成物を使用するための説明書も、医療提供者、化粧品小売店、または別の団体によって提供され得る。本明細書に記載の組成物および組成物を使用するための説明書を含むキットも、医療提供者、化粧品小売店、または別の団体によって提供され得る。
【0122】
投与
本明細書に記載の物質は、全身または限局(例えば局所)投与され得る。本明細書に記載の物質の局所投与は、好ましい投与経路である。局所適用するには、本開示の組成物は、細胞、外植片、または対象と適合する媒体を含み得る。そのような局所的薬学的組成物は、例えば溶液、クリーム、軟膏、ジェル、ローション、シャンプー、石鹸、またはエアロゾルなどの様々な形態で存在し得る。アルコール、アロエベラジェル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびEオイル、ならびにポリエチレングリコールなどの多種多様な担体物質を、本明細書に記載の発毛調節組成物中で使用することができる。他の添加物、例えば保存剤、香料、日焼け防止剤、または他の化粧品成分も組成物中に存在し得る。
【0123】
局所送達用の例示的な媒体はリポソームである。リポソームは、物質、例えば本明細書に記載の物質を細胞に輸送および送達するために使用し得る。詳細な手引きは、例えば、Yarosh et al. (2001) Lancet 357: 926およびBouwstra et al. (2002) Adv. Drug Deliv. Rev. 54 Suppl 1:S41に見出すことができる。
【0124】
全身投与の場合、物質は、経口経路、または皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、もしくは他の経路を含む非経口経路を介して投与され得る。限局投与の場合、物質は、局所、経皮、経粘膜、鼻腔内投与されるか、または他の経路で投与される。細胞は、例えばマイクロインジェクションまたはトランスフェクションにより、物質と細胞外または細胞内で接触させることができる。物質は適用して直ちに除去してもよいし、適用して除去しなくてもよいし、ならびに/または一定の頻度で、頻度を上げて、もしくは頻度を下げて、および/または用量もしくは濃度を上げてもしくは下げて繰り返し適用してもよい。例えば局所投与を経口投与と併用するなど、2つ以上の投与経路を同時に使用することも可能である。非経口剤形の例には、等張生理食塩水、5%グルコース、または薬学的に許容される他の周知の賦形剤に溶解した、活性物質の水溶液が含まれる。色素調節組成物を送達するための薬学的賦形剤として、シクロデキストリンまたは当業者に周知である他の可溶化剤などの可溶化剤を利用することができる。
【0125】
組成物は、例えば化粧品、医薬品、またはスキンケア製品として提供され得る。組成物はまた、従来の方法を利用して他の投与経路用の剤形に製剤化され得る。薬学的組成物は、賦形剤(例えば、デンプン、グルコース、果糖、スクロース、ゼラチンなど)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、崩壊剤(例えば、デンプンおよび結晶セルロース)、および結合剤(例えば、ラクトース、マンニトール、デンプン、およびアラビアゴム)などの、固体組成物の調製に適した任意の薬学的担体を用いて、例えば、粉剤もしくは顆粒剤として、またはカプセル剤、錠剤(それぞれ徐放および持続放出製剤を含む)、もしくはジェルシール剤の形態で、経口投与用剤形に製剤化することができる。組成物が注射剤である場合は、例えば、溶媒(例えば、注射用蒸留水)、安定剤(例えば、エデト酸ナトリウム)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、およびマンニトール)、pH調整剤(例えば、塩酸、クエン酸、および水酸化ナトリウム)、懸濁剤(例えば、メチルセルロース)などを使用し得る。
【0126】
発毛調節剤は、他の薬学的成分、例えば発毛のための第2の治療物、例えば、ミノキシジル(ミシガン州、カラマンズーのUpjohn Co.から入手可能)、シクロスポリン、および天然または合成ステロイドホルモン、ならびにそれらの増強剤およびアンタゴニスト、例えば抗アンドロゲンを含み得る。
【0127】
発毛の測定
発毛に及ぼす物質の影響は、例えば目視検査によって質的に評価され得る。質的徴候には、毛の密生または毛の長さの変化が含まれ得る。被験物質で処置した対象の部位のすべて、大部分、または一部が影響を受け得る。処置した対象を、非処置対象と比較することができる。例えば、同じ態様の処置部位と非処置部位が比較される。
【0128】
発毛に及ぼす物質の影響はまた、例えば、顕微鏡による発毛の測定またはコンピュータ支援による発毛の測定によって、定量的に評価され得る。所与の部位当たりの毛の数が決定され得る。評価は、評価に関する値、例えば発毛の変化の程度に関する値をデータベースまたは他の記録に入力する段階を含み得る。発毛を測定および/または記録する団体は、治療提供者、対象、または別の団体であってよい。
【0129】
遺伝子治療
本明細書に記載の核酸、例えばコリン制御配列に機能的に連結された、コリンポリペプチド、その断片、またはレポーター遺伝子をコードする核酸を、遺伝子治療の手順の一部として使用するための遺伝子構築物中に組み入れて、単離された細胞または器官の細胞に核酸を送達することができる。
【0130】
本開示は、インビトロまたはインビボトランスフェクション用の発現ベクター、および特定の細胞種、例えばDP細胞における本明細書に記載のコリンポリペプチドの発現に関する。そのような成分の発現構築物は、任意の生物学的に有効な担体、例えば成分遺伝子を細胞、例えばDP細胞にインビトロまたはインビボで効率的に送達し得る任意の製剤または組成物中に含めて投与することができる。アプローチは、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、および単純ヘルペスウイルス-1含むウイルスベクター、または組換え細菌プラスミドもしくは真核生物プラスミドへの対象遺伝子の挿入を含む。ウイルスベクターは細胞を直接トランスフェクションする;プラスミドDNAは、例えば、カチオン性リポソーム(リポフェクチン)もしくは誘導体化(例えば、抗体結合)ポリリジンコンジュゲート、グラミシジンS、人工ウイルスエンベロープ、または他のこのような細胞内担体を利用して送達することができ、ならびに遺伝子構築物の直接注射またはリン酸カルシウム沈殿がインビトロまたはインビボで行われる。
【0131】
核酸を細胞、例えばDP細胞にインビトロまたはインビボで導入する例示的なアプローチは、核酸、例えばcDNAを含むウイルスベクターの使用による。ウイルスベクターによる細胞の感染には、標的細胞の大部分が核酸を受け取ることができるという利点がある。さらに、ウイルスベクター内にコードされる分子が、例えばウイルスベクターに含まれるcDNAによって、ウイルスベクター核酸を取り込んだ細胞において効率的に発現される。
【0132】
レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターは、インビトロまたはインビボで外因性遺伝子を特にヒトに導入するための組換え遺伝子送達系として用いることができる。これらのベクターは細胞への効率的な遺伝子送達をもたらし、導入された核酸は宿主の染色体DNAに安定に組み込まれる。複製欠損レトロウイルスのみを産生する特殊な細胞株(「パッケージング細胞」と称される)の開発により、遺伝子治療のためのレトロウイルスの有用性が高まり、遺伝子治療目的で遺伝子導入に使用するための欠損レトロウイルスが特徴づけられている(総説については、Miller, A.D. (1990) Blood 76:271を参照のこと)。標準的な技法によってヘルパーウイルスを用いることで、複製欠損レトロウイルスを、標的細胞、例えばDP細胞に感染させるのに使用し得るビリオンにパッケージングすることができる。組換えレトロウイルスを産生させ、インビトロまたはインビボでこのようなウイルスを細胞に感染させる手順は、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M. et al. (eds.) Greene Publishing Associates, (1989), Sections 9.10-9.14および他の標準的な実験マニュアルに見出すことができる。適切なレトロウイルスの例として、当業者に周知であるpLJ、pZIP、pWE、およびpEMが挙げられる。同種指向性および両種指向性レトロウイルス系を調製するのに適したパッケージングウイルス株の例として、ψCrip、ψCre、ψ2、およびψAmが挙げられる。レトロウイルスは、種々の遺伝子を、上皮細胞を含む多くの異なる細胞種にインビトロおよび/またはインビボで導入するのに使用されている(例えば、

を参照されたい)。
【0133】
本明細書で開示した方法において有用な別のウイルス遺伝子送達系は、アデノウイルスに由来するベクターを利用する。アデノウイルスのゲノムは、関心対象の遺伝子産物をコードおよび発現するが、正常な溶菌ウイルス生活環において複製する能力が不活化されるように操作することができる。例えば、Berkner et al. (1988) BioTechniques 6:616;Rosenfeld et al. (1991) Science 252:431-434;およびRosenfeld et al. (1992) Cell 68:143-155を参照されたい。アデノウイルス株Ad 5型dl324または他のアデノウイルス株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する適切なアデノウイルスベクターが当業者に周知である。組換えアデノウイルスは、ある特定の状況において、非分裂細胞に感染することができず、上皮細胞を含む広範囲の細胞種に感染させるのに使用することができる点で有利な場合がある(Rosenfeld et al. (1992)、前記)。さらに、このウイルス粒子は比較的安定であり、精製および濃縮することができ、上記のように感染スペクトルに影響を及ぼすように改変することができる。さらに、導入されたアデノウイルスDNA(およびそれに含まれる外来DNA)は宿主細胞ゲノムに組み込まれなず、エピソームのまま存在し、それによって、導入されたDNAが宿主ゲノムに組み込まれる場合に(例えば、レトロウイルスDNA)、インサイチューでの挿入変異誘発の結果として起こり得る潜在的な問題が回避される。さらに、アデノウイルスゲノムの外来DNAの運搬能力は、他の遺伝子送達ベクターと比較して大きい(最大8キロベース)(Berkner et al.、前記;Haj-Ahmand and Graham (1986) J. Virol. 57:267)。
【0134】
対象遺伝子を送達するのに有用なさらに別のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。アデノ随伴ウイルスは、効率的な複製および増殖生活環のために、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどの別のウイルスをヘルパーウイルスとして必要とする天然の欠損ウイルスである(総説については、Muzyczka et al. (1992) Curr. Topics in Micro. and Immunol. 158:97-129を参照のこと)。アデノ随伴ウイルスはまた、自身のDNAを非分裂細胞に組み込むことができ、高頻度の安定な組み込みを示す、数少ないウイルスの1つである(例えば、Flotte et al. (1992) Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 7:349-356;Samulski et al. (1989) J. Virol. 63:3822-3828;およびMcLaughlin et al. (1989) J. Virol. 62:1963-1973を参照のこと)。わずか300塩基対ほどのAAVを含むベクターをパッケージングすることができ、このベクターは組込みが可能である。外因性DNAの空間は約4.5 kbに限られる。Tratschin et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260に記載されているようなAAVベクターを、DNAを細胞に導入するために使用することができる。AAVベクターを用いて、種々の核酸が様々な細胞種に導入されている(例えば、Hermonat et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470;Tratschin et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081;Wondisford et al. (1988) Mol. Endocrinol. 2:32-39;Tratschin et al. (1984) J. Virol. 51:611-619;およびFlotte et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:3781-3790を参照のこと)。
【0135】
対象の組織、例えば皮膚、例えばDP細胞において本明細書に記載の核酸物質(例えば、コリンポリペプチドをコードする核酸)の発現をもたらすには、上記のようなウイルス導入法に加えて、非ウイルス法も使用することができる。大部分の非ウイルス遺伝子導入法は、哺乳動物細胞が巨大分子を取り込み、細胞内輸送するために使用する通常の機構に依存している。1つの態様において、本明細書に記載の非ウイルス遺伝子送達系は、標的細胞が対象遺伝子を取り込むためのエンドサイトーシス経路に依存している。この種の例示的な遺伝子送達系には、リポソームに由来する系、ポリリジンコンジュゲート、および人工ウイルスエンベロープが含まれる。他の態様は、Meuli et al. (2001) J Invest Dermatol. 116(1):131-135;Cohen et al. (2000) Gene Ther. 7(22):1896-905;またはTam et al. (2000) Gene Ther. 7(21):1687-74に記載されているようなプラスミド注入系を含む。
【0136】
代表的な態様において、本明細書に記載の物質、例えばコリンをコードする遺伝子は、表面上に正電荷を有し(例えば、リポフェクチン)、(任意に)標的組織の細胞表面抗原に対する抗体でタグ化されたリポソーム中に封入することができる(Mizuno et al. (1992) No Shinkei Geka 20:547-551;国際公開公報第91/06309号;日本国特許出願第1047381号;および欧州特許出願第EP-A-43075号)。
【0137】
臨床設定において、治療遺伝子のための遺伝子送達系は、それぞれ当技術分野において周知である多くの方法のいずれかにより患者に導入することができる。例えば、遺伝子送達系の薬学的調製物は、例えば静脈内注射によって全身に導入することができ、標的細胞、例えばDP細胞におけるタンパク質の特異的形質導入は、主として、遺伝子送達媒体によって提供されるトランスフェクションの特異性、受容体遺伝子の発現を調節する転写制御配列に起因する細胞種発現もしくは組織種発現、またはその組み合わせから生じる。他の態様において、組換え遺伝子の最初の送達はかなり限定されており、動物への導入は極めて局所的である。例えば、遺伝子送達媒体は、カテーテルによって(米国特許第5,328,470号を参照)または定位注射によって(例えば、Chen et al. (1994) PNAS 91:3054-3057)導入することができる。
【0138】
遺伝子治療構築物の薬学的調製物は、本質的に、許容される希釈剤に溶解した遺伝子送達系からなってよく、遺伝子送達媒体が埋め込まれた徐放性マトリックスを含んでもよい。または、完全な遺伝子送達系が組換え細胞、例えばレトロウイルスベクターから無傷で産生され得る場合、薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する1つまたはそれ以上の細胞を含んでもよい。
【0139】
細胞治療
発毛はまた、細胞、例えばDP細胞などの皮膚細胞に、コリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を導入することによって、対象において調節することができる。ヌクレオチド配列は、コリンコード配列またはその活性断片、および以下のいずれかであってよい:プロモーター配列、例えば、コリン遺伝子または別の遺伝子のプロモーター配列;エンハンサー配列、例えば5'非翻訳領域(UTR)(例えば、コリン遺伝子または別の遺伝子の5'UTR)、3'UTR(例えば、コリン遺伝子または別の遺伝子の3'UTR);ポリアデニル化部位;インスレーター配列;またはコリンの発現を調節する別の配列。次いで、細胞、例えばDP細胞を対象に導入し得る。しかし、多くの他の態様は、DP細胞の遺伝子改変を必要としない。
【0140】
遺伝子操作しようとする初代細胞および二次細胞は様々な組織、例えば皮膚から得ることができ、これには、培養状態で維持および増殖することができる細胞種、例えばDP細胞が含まれる。例えば、初代細胞および二次細胞として、間葉細胞、例えばDP細胞;脂肪細胞;線維芽細胞;ケラチノサイト;上皮細胞、例えば乳房上皮細胞および腸上皮細胞;内皮細胞;グリア細胞;神経細胞;血液の有形成分、例えばリンパ球および骨髄細胞;筋細胞;およびこれらの体細胞種の前駆体が挙げられる。初代細胞は、遺伝子操作された初代細胞または二次細胞が投与される個体から得られ得る。しかし、初代細胞はドナーから得てもよい。本明細書に記載の方法で有用な初代細胞は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ヒツジ、イヌ、または霊長動物(例えば、ヒトまたはサル(例えばチンパンジー))に由来し得る。
【0141】
「初代細胞」という用語は、脊椎動物組織供給源から単離された細胞の懸濁液中に存在する細胞、組織から得られた外植片中に存在する細胞、初めてプレーティングされた前記細胞種の両方、およびこれらのプレーティングされた細胞から得られた細胞懸濁液を含む。「二次細胞」または「細胞株」という用語は、培養状態におけるその後のすべての段階にある細胞を意味する。
【0142】
脊椎動物起源、特に哺乳動物起源の初代細胞または二次細胞は、レポーターペプチドをコードする核酸配列および/または異種核酸配列、例えばコリンまたはそのアゴニストもしくはアンタゴニストをコードする核酸配列を含む外因性核酸配列をトランスクションされ、コードされる産物をインビトロおよびインビボで長期間にわたって安定かつ再現性よく産生し得る。異種核酸配列はまた、内因性配列の発現(例えば、誘導発現または上方制御)をもたらす制御配列、例えばプロモーターであってもよい。外因性核酸配列は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,641,670号に記載されているように、相同組換えによって初代細胞または二次細胞に導入され得る。トランスフェクションされた初代細胞または二次細胞は、選択可能な表現型をそれらに付与し、それら細胞の同定および単離を容易にする選択マーカーをコードするDNAもまた含み得る。
【0143】
脊椎動物組織は、パンチ生検または関心対象の初代細胞種の組織供給源を得る他の外科的方法などの標準的な方法によって得ることができる。例えば、間葉細胞(例えばDP細胞)、線維芽細胞、またはケラチノサイトの供給源として皮膚を採取するためににパンチ生検が用いられる。酵素消化または外植などの周知の方法を用いて、初代細胞の混合物が組織から得られる。酵素消化を用いる場合、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ディスパーゼ、プロナーゼ、トリプシン、エラスターゼ、およびキモトリプシンなどの酵素を使用することができる。DP細胞は、本明細書に記載の方法を用いてさらに単離され得る。
【0144】
得られた初代細胞、例えばDP細胞は直接トランスフェクションしてもよいし、または最初に培養し、培養プレートから取り出し、再懸濁した後にトランスフェクションを行ってもよい。初代細胞または二次細胞は、例えば細胞のゲノムに安定に組み込むように外因性核酸配列と混合し、トランスフェクションを達成するように処理する。本明細書で使用する「トランスフェクション」という用語は、すべて当技術分野において日常的技法である、リン酸カルシウム沈殿もしくは塩化カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、DEAE-デキストリン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションを含む、外因性核酸を細胞に導入するための様々な技法を含む。
【0145】
トランスフェクションされた細胞、例えば本明細書に記載のように作製された細胞は、その産物を送達しようとする個体に導入することができる。様々な投与経路および様々な部位(例えば、腎臓被膜下、皮下、中枢神経系(くも膜下腔内を含む)、血管内、肝臓内、内臓内、腹腔内(大網内を含む)、筋肉内移植)を使用することができる。個体に移植された時点で、トランスフェクションされた細胞は異種DNAによりコードされる産物を産生するか、または異種DNA自体の影響を受ける。例えば、(例えば頭皮における)さらなる発毛を望むかまたは発毛関連疾患(例えば脱毛症)を患う個体は、本明細書に記載の物質、例えばコリンポリペプチドまたはコリン発現を調節する物質を産生する細胞、例えばDP細胞を移植する候補である。
【0146】
診断アッセイ法
本明細書に記載の診断アッセイ法は、対象の、例えば皮膚のコリンレベルを評価する段階を含む。コリンの評価には、当技術分野において周知の種々の方法を利用できる。例えば、本方法は、コリンのレベルおよび/またはコリンの活性を評価する段階を含み得る。コリンを検出する技法は当技術分野において周知であり、これには、例えば酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、およびウェスタンブロット解析法などの抗体に基づくアッセイ法が含まれる。典型的に、対象におけるレベルは、対照におけるレベルおよび/または活性、例えば疾患のない対象の組織におけるレベルおよび/または活性と比較される。
【0147】
例えばコリンのコリン結合パートナーへの結合活性を評価する技法には、液相結合アッセイ法、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除またはゲルろ過、ELISA、免疫沈降(例えば、第1因子(例えばコリン)に特異的な抗体が、第1因子が天然で会合し得る第2因子または複合体を免疫共沈降させる能力)が含まれる。対象におけるコリンを評価する別の方法は、コリンをコードする遺伝子の損傷または誤発現の有無を決定することである。本方法は以下の段階の1つまたは複数を含み得る:対象の組織において、コリンをコードする遺伝子の発現に影響を及ぼす変異の有無を検出する段階、または同遺伝子の発現を調節する領域における変異、例えば5'調節領域における変異の有無を検出する段階;対象の組織において、コリンをコードする遺伝子の構造を変更する変異の有無を検出する段階;対象の組織において、コリンをコードする遺伝子の誤発現をmRNAレベルで検出する段階、例えばmRNAの非野生型レベルを検出する段階;および、対象の組織において、同遺伝子の誤発現をタンパク質レベルで検出する段階、例えばコリンポリペプチドの非野生型レベルを検出する段階。
【0148】
1つの態様において、本方法は以下の少なくとも1つの存在を確認する段階を含む:コリンをコードする遺伝子からの1つまたは複数のヌクレオチドの欠失;同遺伝子への1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、点突然変異(例えば同遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチドの置換)、同遺伝子の全体的な染色体再配置(例えば逆位、重複、または欠失)。
【0149】
例えば、遺伝子損傷を検出する段階は:(i) コリン遺伝子もしくは天然に存在するその変異体、または同遺伝子と天然で会合している5'もしくは3'隣接配列のセンスまたはアンチセンス配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含有するオリゴヌクレオチドを含むプローブ/プライマーを提供する段階;(ii) プローブ/プライマーを組織の核酸に曝露する段階;および、核酸に対するプローブ/プライマーのハイブリダイゼーション(例えばインサイチューハイブリダイゼーション)により、遺伝子損傷の有無を検出する段階を含み得る。
【0150】
別の態様において、誤発現を検出する段階は、以下の少なくとも1つの存在を確認する段階を含む:コリンをコードする遺伝子のmRNA転写産物のレベルの変化;同遺伝子のmRNA転写産物の非野生型スプライシングパターンの存在;または、コリンをコードする遺伝子の非野生型レベル。
【0151】
別の態様において、本方法は、コリンをコードする遺伝子の構造、疾患の危険性を示す異常な構造を決定する段階を含む。
【0152】
さらに別の態様において、本方法は、対象由来の試料を、コリンに対する抗体またはコリン遺伝子と特異的にハイブリダイズする核酸と接触させる段階を含む。
【0153】
抗体
本明細書で使用する「抗体」という用語は、少なくとも1本、好ましくは2本の重(H)鎖可変ドメイン(本明細書ではVHと略す)および少なくとも1本、好ましくは2本の軽(L)鎖可変ドメイン(本明細書ではVLと略す)を含むタンパク質を指す。したがって、この用語は、全長IgG抗体およびその断片を包含する。
【0154】
VHドメインおよびVLドメインは、「フレームワーク領域」(FR)と称されるより保存された領域が散在する、「相補性決定領域」(「CDR」)と称される超可変領域にさらに細分され得る。フレームワーク領域およびCDRの範囲は正確に定義されている(参照により本明細書に組み入れられる、Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242、およびChothia et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917を参照されたい)。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端方向に以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される3つのCDRおよび4つのFRから構成される。特許請求される抗体には、一本鎖可変免疫グロブリンドメインも含まれ得る。
【0155】
抗体は重鎖または軽鎖定常領域をさらに含み、それぞれ重鎖免疫グロブリンおよび軽鎖免疫グロブリンを形成し得る。1つの態様において、抗体は2本の重鎖免疫グロブリンおよび2本の軽鎖免疫グロブリンの4量体であり、重鎖免疫グロブリンおよび軽鎖免疫グロブリンは例えばジスルフィド結合によって相互に結合されている。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLからなる。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は典型的に、免疫系の種々の細胞(例えば、アゴニスト細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への抗体の結合を媒介する。
【0156】
本明細書で使用する「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン折りたたみを形成するドメインを有する1つまたは複数のポリペプチドを含むタンパク質を指す。
【0157】
免疫グロブリンは、免疫グロブリン遺伝子によってコードされる領域を含み得る。認識されているヒト免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α(IgA1およびIgA2)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン遺伝子および遺伝子断片が含まれる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25 kDaまたは214アミノ酸)は、NH2末端は可変領域遺伝子によってコードされ(約110アミノ酸)、およびCOOH末端はκまたはλ定常領域遺伝子によってコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50 kDaまたは446アミノ酸)も同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および上記したその他の定常領域遺伝子の1つ、例えばγ(約330アミノ酸をコードする)によってコードされる。本明細書で用いる「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)を指す。
【0158】
本明細書で用いる抗体の「抗原結合断片」(または単に「抗体部分」または「断片」)という用語は、抗原(例えばIL-21R)と特異的に結合する能力を保持する、全長抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の「抗原結合断片」という用語内に含まれる結合断片の例としては、(i) Fab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片;(ii) F(ab')2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価断片;(iii) VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv) 抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v) VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);および(vi) 単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用いて合成リンカーにより連結することができ、これらは合成リンカーにより、VLおよびVHドメインが対形成して一価分子を形成する単一タンパク質鎖として作製され得る(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。このような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合断片」という用語内に含まれる。これらの抗体断片は当業者に周知である慣用的技法を用いて得られ、この断片は無傷の抗体と同様の様式で有用性に関してスクリーニングされる。「事実上のヒト」免疫グロブリン可変ドメインとは、免疫グロブリン可変ドメインが健常なヒトにおいて免疫応答を誘発しないように、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含む免疫グロブリン可変ドメインである。「事実上のヒト」抗体とは、抗体が健常なヒトにおいて免疫応答を誘発しないように、十分な数のヒトアミノ酸位置を含む抗体である。ヒトおよび事実上ヒトの免疫グロブリン可変ドメインおよび抗体を用いることができる。
【0159】
抗体は、関連抗原またはその断片で動物(例えば、非ヒト動物およびヒト免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒト動物)を免疫することによって作製され得る。このような抗体は、成熟タンパク質全体を免疫原として用いて、または断片(例えば、可溶性断片および小ペプチド)を用いることによって得られ得る。ペプチド免疫原はさらに、システイン残基をカルボキシル末端に含み得り、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などのハプテンと結合される。さらなるペプチド免疫原は、チロシン残基を硫酸化チロシン残基で置換することによって作製され得る。このようなペプチドを合成する方法は、例えば、Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85, 2149-2154 (1963);Krstenansky et al., FEBS Lett. 211, 10 (1987)に記載されているように、当技術分野において周知である。抗体はまた、タンパク質発現ライブラリー、例えばファージディスプレイライブラリーから抗体を選択することによって作製され得る。
【0160】
標的タンパク質に対するヒトモノクローナル抗体(mAb)は、マウス系ではなくヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを用いて作製することができる。関心対象の抗原で免疫化したこれらのトランスジェニックマウスの脾細胞を用いて、ヒトタンパク質のエピトープに対して特異的親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマが作製される(例えば、国際公開公報第91/00906号、国際公開公報第91/10741号;国際公開公報第92/03918号;国際公開公報第92/03917号;Lonberg et al. 1994 Nature 368:856-859;Green et al. 1994 Nature Genet. 7:13-2;Morrison et al. 1994 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855;Bruggeman et al. 1993 Year Immunol 7:33-40;Tuaillon et al. 1993 PNAS 90:3720-3724;Bruggeman et al. 1991 Eur J Immunol 21:1323-1326を参照されたい)。
【0161】
モノクローナル抗体はまた、他の方法によって作製することも可能である。「コンビナトリアル抗体ディスプレイ」法と称される例示的な別の方法が、特定の抗原特異性を有する抗体断片を同定および単離するために開発されており、この方法を用いてモノクローナル抗体を作製することができる(コンビナトリアル抗体ディスプレイの記述については、例えば、Sastry et al. 1989 PNAS 86:5728;Huse et al. 1989 Science 246:1275;およびOrlandi et al. 1989 PNAS 86:3833、ならびにファージディスプレイ法、例えばUS2002-0102613を参照されたい)。上記の免疫原で動物を免疫した後に、得られたB細胞プールの抗体レパートリーをクローニングする。オリゴマープラィマーの混合物およびPCRを用いることによる、免疫グロブリン分子の多様な集団の可変ドメインのDNA配列を取得する方法は周知である。例えば、5'リーダー(シグナルペプチド)配列および/またはフレームワーク1(FR1)配列に相当する混合オリゴヌクレオチドプライマー、ならびに保存された3'定常領域プライマーに対するプライマーを、多数のマウス抗体から重鎖および軽鎖可変ドメインをPCR増幅するために使用することができる(Larrick et al., 1991, Biotechniques 11:152-156)。ヒト抗体からヒト重鎖および軽鎖可変ドメインを増幅する場合にも、同様の戦略を用いることができる(Larrick et al., 1991, Methods: Companion to Methods in Enzymology 2:106-110)。
【0162】
キメラ免疫グロブリン鎖をはじめとするキメラ抗体は、当技術分野で周知の組換えDNA技法により作製することができる。例えば、マウス(または他の種)モノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子を制限酵素で消化してマウスFcをコードする領域を除去し、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の対応する部分で置換する(Robinson et al., PCT/US86/02269;EP 184 187;EP 171,496;EP 173,494;Neuberger et al.、国際公開公報第86/01533号;Cabilly et al.、米国特許第4,816,567号;Cabilly et al., EP 125,023;Better et al. (1988 Science 240:1041-1043);Liu et al. (1987) PNAS 84:3439-3443;Liu et al., 1987, J. Immunol. 139:3521-3526;Sun et al. (1987) PNAS 84:214-218;Nishimura et al., 1987, Canc. Res. 47:999-1005;Wood et al. (1985) Nature 314:446-449;およびShaw et al., 1988, J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559を参照されたい)。
【0163】
当技術分野で周知の方法によって、抗体または免疫グロブリン鎖をヒト化することが可能である。ヒト化免疫グロブリン鎖をはじめとするヒト化抗体は、抗原結合に直接関与しないFv可変ドメインの配列を、ヒトFv可変ドメインの同等の配列で置換することによって作製することができる。ヒト化抗体を作製するための一般的な方法は、Morrison, 1985, Scienc 229:1202-1207、Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214、ならびにQueen et al.、US 5,585,089、US 5,693,761、およびUS 5,693,762によって提供されており、これらすべての内容は参照により本明細書に組み入れられる。これらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つから、免疫グロブリンFv可変ドメインのすべてまたは一部をコードする核酸配列を単離し、操作し、さらに発現させる段階を含む。このような核酸の供給源は当業者に周知であり、例えば、所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマから得ることができる。次いで、ヒト化抗体またはその断片をコードする組換えDNAを、適切な発現ベクターにクローニングし得る。
【0164】
ヒト化またはCDR移植した抗体分子または免疫グロブリンは、免疫グロブリン鎖の1つ、2つ、またはすべてのCDRを置換し得るCDR移植またはCDR置換によって作製することができる。例えば、米国特許第5,225,539号;Jones et al. 1986 Nature 321:552-525;Verhoeyan et al. 1988 Science 239:1534;Beidler et al. 1988 J. Immunol. 141:4053-4060;Winter US 5,225,539を参照されたい。Winterは、ヒト化抗体を調製するのに使用し得るCDR移植法について記載している(1987年3月26日出願された英国特許出願第GB 2188638A号;Winter US 5,225,539)。特定のヒト抗体のCDRのすべてまたは一部を、非ヒトCDRの少なくとも一部と置換することも可能であるし、またはCDRのいくつかのみを非ヒトCDRと置換することも可能である。標的抗原、例えば本明細書に記載のタンパク質にに対するヒト化抗体の結合に必要な数のCDRまたはその部分を置換しさえすれば十分である。
【0165】
いくつかの実施においては、モノクローナル抗体、キメラ抗体、およびヒト化抗体は、例えば、抗体の他の部分、例えば定常領域を欠失、付加、または置換することによって修飾することができる。例えば、抗体は以下のように修飾することができる:(i) 定常領域を欠失させることによる;(ii) 定常領域を別の定常領域、例えば抗体の半減期、安定性、もしくは親和性の増加が意図される定常領域、または別の種もしくは別の抗体クラスに由来する定常領域と置換することによる;あるいは(iii) 例えば、とりわけグリコシル化部位の数、アゴニスト細胞機能、Fc受容体(FcR)結合、補体結合を改変するために、定常領域の1つまたは複数のアミノ酸を修飾することによる。
【0166】
抗体定常領域を改変する方法は周知である。機能が改変された、例えば細胞上のFcRまたは補体のC1成分などのアゴニストリガンドに対する親和性が改変された抗体は、抗体の定常領域の少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる残基と置換することによって作製することができる(例えば、EP 388,151、US 5,624,821、およびUS 5,648,260を参照されたい)。マウスまたは他の種の免疫グロブリンに適用した際に、これらの機能を減少させるかまたは除去する、同様の種類の改変も記載可能である。
【0167】
結合するだけでなく、特定の機能をも有する(例えば、阻害する)抗体を同定するには、抗体を機能アッセイで評価し得る。例えば、標的(例えば、本明細書に記載のタンパク質)と結合する複数の抗体をこの様式で評価し得る。本明細書に記載のタンパク質の活性、例えば酵素活性を阻害する抗体を選択することができる。
【0168】
キット
本明細書に記載の物質(例えば、コリンまたはコリンに結合するかもしくはコリンを調節する物質)は、キットの状態で提供され得る。キットは、(a) 物質、例えば物質を含む組成物;および(b) 情報資料を含む。情報資料は、本明細書に記載の方法および/または本明細書に記載の方法のためのコリンの使用に関連した、説明、教材、販売用の、またはその他の資料であってよい。例えば、情報資料は発毛に関する。
【0169】
1つの態様において、情報資料は、本明細書に記載の方法を、例えば適切な用量、剤形、または投与方法(例えば、本明細書に記載されている用量、剤形、または投与方法)で実行するのに適した様式で、本明細書に記載の物質を投与するための説明書を含み得る。好ましい用量、剤形、または投与方法は、局所的および経皮的である。別の態様において、情報資料は、適切な対象、例えばヒト、例えば発毛関連疾患を有するかまたはその危険性があるヒトに、本明細書に記載の物質を投与するための説明書を含み得る。
【0170】
キットの情報資料はその形状において制限されない。多くの場合、情報資料、例えば説明書は、印刷物、例えば印刷された文章、図、および/または写真、例えばラベルまたは印刷されたシートの状態で提供される。しかし、情報資料はまた、その他の形状、例えば点字、コンピュータ可読物、ビデオ録画物、または録音物でも提供され得る。別の態様において、キットの情報資料は、キットの使用者がコリンおよび/または本明細書に記載の方法におけるその使用について実質的な情報を得ることができる連絡先、例えば実際の住所、電子メールアドレス、ウェブサイト、または電話番号である。当然のことながら、情報資料はまた、形状の任意の組み合わせで提供され得る。
【0171】
キットの組成物は、本明細書に記載の物質に加えて、溶媒もしくは緩衝液、安定剤、保存剤、香料、またはその他の化粧品成分、および/または本明細書に記載の状態もしくは疾患を治療するための第2の物質、例えばミノキシジル(ミシガン州、カラマンズーのUpjohn Co.から入手可能)、シクロスポリン、および天然または合成ステロイドホルモン、ならびにそれらの増強剤およびアンタゴニスト、例えば抗アンドロゲンなどのその他の成分も含み得る。または、その他の成分は、本明細書に記載の物質とは異なる組成物または容器中において、キットに含まれ得る。そのような態様において、キットは、本明細書に記載の物質とその他の成分を混合するための、または本明細書に記載の物質をその他の成分と共に使用するための説明書を含み得る。
【0172】
本明細書に記載の物質は、任意の形状、例えば液体、乾燥、または凍結乾燥形状で提供され得る。本明細書に記載の物質は、実質的に純粋および/または無菌であり得る。本明細書に記載の物質が溶液状態で提供される場合、溶液は水溶液、例えば無菌水溶液であってよい。本明細書に記載の物質が乾燥形状として提供される場合、再構成は一般に適切な溶媒の添加による。溶媒、例えば滅菌水または緩衝液は、任意にキット中に提供され得る。
【0173】
キットは、本明細書に記載の物質を含有する組成物のための1つまたは複数の容器を含み得る。いくつかの態様において、キットは、組成物および情報資料のための別個の容器、仕切り、または区画を含む。例えば、組成物は瓶、バイアル、または注射器に含まれ得り、情報資料はプラスチック製スリーブまたは小包に含まれ得る。他の態様において、キットの別個の成分は、単一の分割されていない容器中に含まれる。例えば、組成物は瓶、バイアル、または注射器に含まれ、底にラベル状の情報資料が添付されている。いくつかの態様において、キットは、それぞれが本明細書に記載の物質の1つまたは複数の単位剤形(例えば本明細書に記載の剤形)を含む、複数の(例えば一パックの)個々の容器を含む。例えば、キットは、それぞれが本明細書に記載の物質の単一単位用量を含む、複数の注射器、アンプル、ホイル小包、またはブリスターパックを含む。キットの容器は気密および/または防水であってよい。
【0174】
キットは任意に、組成物の投与に適した装置、例えば、注射器、吸入剤、ピペット、ピンセット、計測スプーン、スポイト(例えば点眼瓶)、スワブ(綿棒または木製スワブ)、または任意のそのような送達装置を含む。1つの態様において、装置はスワブである。
【0175】
変種の作製:ランダム法による改変DNA配列およびペプチド配列の作製
コリンポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列変種は、コリンまたはその領域をコードするDNAのランダム突然変異誘発など、数多くの技法によって調製することができる。有用な方法としてはまた、PCR突然変異誘発および飽和突然変異誘発が挙げられる。ランダムアミノ酸配列変種のライブラリーはまた、一組の縮重オリゴヌクレオチド配列の合成によって作製することができる
【0176】
コリンの例示的な変種には、ドミナントネガティブコリン配列または機能亢進コリン配列が含まれる。例えば、そのような変種は、コリンプロテアーゼドメイン、LDL受容体ドメイン、frizzledドメイン、およびスカベンジャー受容体ドメインの1つまたは複数を欠くコリン配列を含み得る。他の変種は、例えば余分なコリンプロテアーゼドメイン、LDL受容体ドメイン、frizzledドメイン、およびスカベンジャー受容体ドメインより選択される1つまたは複数の「余分な」ドメインを有し得る。
【0177】
PCR突然変異誘発
PCR突然変異誘発では、クローニングされたDNA断片にランダム変異を導入するために、Taqポリメラーゼ忠実度の低下が用いられる(Leung et al., 1989, Technique 1:11-15)。これは、ランダム変異を導入する非常に強力でかつ比較的迅速な方法である。例えば、dGTP/dATP比を5にして、PCR反応物にMn2+を添加することによる、Taq DNAポリメラーゼによるDNA合成の忠実度を低下させる条件下でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、突然変異誘発しようとするDNA領域を増幅する。増幅されたDNA断片のプールを適切なクローニングベクターに挿入して、ランダム変異体ライブラリーを得る。
【0178】
飽和突然変異誘発
飽和突然変異誘発により、クローニングされたDNA断片に多数の一塩基置換を迅速に導入することができる(Mayers et al., 1985, Science 229:242)。この技法は、例えばインビトロでの一本鎖DNAの化学処理または放射線照射による突然変異の生成、および相補DNA鎖の合成を含む。突然変異頻度は、処理の厳しさを調節することによって調節することができ、本質的にあらゆる塩基置換を得ることができる。この手順は変異断片の遺伝子選択を伴わないため、中立置換および機能を変える置換の両方が得られる。点突然変異の分布は保存配列エレメントに偏らない。
【0179】
縮重オリゴヌクレオチド
相同体ライブラリーはまた、一組の縮重オリゴヌクレオチド配列から作製することができる。自動DNA合成機で縮重配列の化学合成を行い、次いで合成遺伝子を適切な発現ベクターに連結し得る。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野において周知である(Narang, SA (1983) Tetrahedron 39:3;Itakura et al. (1981) Recombinant DNA, Proc 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. AG Walton, Amsterdam: Elsevier pp273-289;Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakura et al. (1984) Science 198:1056;Ike et al. (1983) Nucleic Acid Res. 11:477を参照のこと)。このような技法は、他のタンパク質の定方向進化にも用いられている(例えば、Scott et al. (1990) Science 249:386-390;Roberts et al. (1992) PNAS 89:2429-2433;Devlin et al. (1990) Science 249:404-406;Cwirla et al. (1990) PNAS 87:6378-6382;ならびに米国特許第5,223,409号、第5,198,346号、および第5,096,815号を参照のこと)。
【0180】
変種の作製:定方向突然変異誘発による改変DNA配列およびペプチド配列の作製
特定の領域において特定の配列または変異を生じるために、非ランダムまたは定方向突然変異誘発法を用いることができる。これらの方法は、例えば、タンパク質の既知アミノ酸配列の残基の欠失、挿入、または置換を含む変種を作製するのに使用することができる。例えば、(1) 第1のアミノ酸を保存アミノ酸で置換し、次いで得られた結果に応じてより過激な選択肢で置換することによって、(2) 標的残基を欠失させることによって、もしくは(3) 位置する部位に隣接して同じクラスもしくは異なるクラスの残基を挿入することによって、または選択肢1〜3の組み合わせによって、変異させる部位を個々にまたは連続して改変することができる。
【0181】
アラニンスキャニング突然変異誘発
アラニンスキャニング突然変異誘発は、突然変異誘発に好ましい位置またはドメインである、所望のタンパク質の特定の残基または領域を同定するのに有用な方法である(例えば、Cunningham and Wells (1989) Science 244:1081-1085を参照のこと)。アラニンスキャニングでは、1つの残基または標的残基群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluなどの荷電残基)が同定され、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置換される。アミノ酸の置換は、そのアミノ酸と細胞内または細胞外における周囲の水性環境との相互作用に影響を及ぼし得る。次いで、置換に対して機能的に感受性を示すドメインが、さらなる変種または他の変種を置換部位においてまたは置換部位の代わりに導入することによって精緻化される。したがって、アミノ酸配列変化を導入する部位は予め決定されるが、変異の性質それ自体が予め決定される必要はない。例えば、所定の部位での変異の性能を最適化するために、標的コドンまたは標的領域でアラニンスキャニングまたはランダム突然変異誘発を行うことができ、発現された望ましいタンパク質サブユニット変種が、所望の活性の最適な組み合わせについてスクリーニングされる。
【0182】
オリゴヌクレオチド媒介性突然変異誘発
オリゴヌクレオチド媒介性突然変異誘発は、DNAの置換、欠失、挿入変種を調製するのに有用な方法である(例えば、Adelman et al. (1983) DNA 2:183を参照のこと)。簡潔に説明すると、変異をコードするオリゴヌクレオチドをDNA鋳型とハイブリダイズさせることによって所望のDNAが改変され、この場合の鋳型は、所望のタンパク質の未改変または天然型DNA配列を含む一本鎖形態のプラスミドまたはバクテリオファージである。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼを使用して鋳型の第2相補鎖全体を合成するが、この相補鎖はしたがってオリゴヌクレオチドプライマーを組み込むことになり、所望のタンパク質DNAにおいて選択された変化をコードすることになる。一般に、少なくとも25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドが用いられる。最適なオリゴヌクレオチドは、突然変異をコードするヌクレオチドの両側に、鋳型と完全に相補的な12〜15ヌクレオチドを有する。これによって、オリゴヌクレオチドの一本鎖DNA鋳型分子への適切なハイブリダイズが確実になる。オリゴヌクレオチドは、当技術分野において周知の技法を用いて容易に合成される(例えば、Crea et al. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 5765を参照されたい)。
【0183】
カセット突然変異誘発
変種を調製する別の方法であるカセット突然変異誘発は、Wells et al. (1985) Gene 34:315によって記載される技法に基づいている。出発材料は、変異させようとするタンパク質サブユニットDNAを含むプラスミド(または他のベクター)である。変異させようとするタンパク質サブユニットDNAにおけるコドンが特定される。特定された変異部位の両側には、独特の制限エンドヌクレアーゼ部位が存在しなければならない。このような制限部位が存在しない場合には、所望のタンパク質サブユニットDNAの適切な位置に制限部位を導入するように、上記のオリゴヌクレオチド媒介性突然変異誘発法を用いて、制限部位を作製することができる。制限部位がプラスミドに導入された後、これらの部位でプラスミドを切断して線状化する。制限部位間のDNAの配列をコードするが、所望の変異を含む二本鎖オリゴヌクレオチドを、標準的な手順を用いて合成する。標準的な方法を用いて、2本の鎖を別々に合成し、次いでハイブリダイズさせる。この二本鎖オリゴヌクレオチドはカセットと称される。このカセットは、プラスミドに直接連結できるように、線状化プラスミドの末端と匹敵する3'末端および5'末端を有するように設計される。このプラスミドは、この時点で、変異した所望のタンパク質サブユニットDNA配列を含む。
【0184】
組み合わせ突然変異誘発
組み合わせ突然変異誘発もまた、変種を作製するのに用いられ得る。例えば、相同体または他の関連タンパク質の1群のアミノ酸配列を、例えば最も高い相同性が得られるように整列させる。整列させた配列の所定の位置に現れるアミノ酸のすべてが、組み合わせ配列の縮重セットを作製するために選択され得る。変種の多様なライブラリーは、核酸レベルにおける組み合わせ突然変異誘発によって作製され、多様な遺伝子ライブラリーによってコードされる。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物は、可能な配列の縮重セットが個々のペプチドとして、または縮重配列のセットを含むより大きな融合タンパク質のセットとして発現可能であるように、遺伝子配列に酵素的に連結され得る。
【0185】
ペプチド断片または相同体のライブラリーをスクリーニングするための一次ハイスループット法
ペプチド、例えば合成ペプチド、例えば低分子量ペプチド、例えば直鎖もしくは環状ペプチド、または作製された変異遺伝子産物をスクリーニングするための様々な技法が当技術分野において周知である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングする方法は、多くの場合、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングする段階、その結果得られたベクターライブラリーで適切な細胞を形質転換する段階、および所望の活性の検出、三量体分子への会合、天然リガンド(例えば、受容体または基質)への結合が、産物が検出される遺伝子をコードするベクターの比較的簡単な単離を容易にする条件下で、遺伝子を発現させる段階を含む。以下に記載の各技法が、例えばランダム突然変異誘発法によって作製された多数の配列をスクリーニングするためのハイスループット解析に適している。
【0186】
ツーハイブリッドシステム
コリンと相互作用するタンパク質を同定するために、ツーハイブリッド(相互作用トラップ)アッセイ法を使用することができる。このアッセイ法は、例えば、コリンのアゴニスト、スーパーアゴニスト、およびアンタゴニストを含み得る。(対象タンパク質および対象タンパク質が相互作用し得るタンパク質は、それぞれベイトタンパク質およびプレイタンパク質として用いられる。)このアッセイ法は、ベイトタンパク質とのタンパク質-タンパク質相互作用を介した機能的転写活性化因子の再構成を検出することに依存している。特に、このアッセイ法は、ハイブリッドタンパク質を発現するキメラ遺伝子を使用する。第1のハイブリッドは、ベイトタンパク質、例えばコリンまたはその活性断片に融合されたDNA結合ドメインを含む。第2のハイブリッドタンパク質は、「プレイ」タンパク質、例えば発現ライブラリーに融合された転写活性化ドメインを含む。プレイタンパク質とベイトタンパク質が相互作用し得る場合、それらによって、DNA結合ドメインと転写活性化ドメインが極めて近接することになる。この近接は、DNA結合ドメインが認識する転写制御部位に機能的に連結されたレポーター遺伝子の転写を引き起こすのに十分であり、マーカー遺伝子の発現を検出し、これを用いてベイトタンパク質と別の(プレイ)タンパク質との相互作用を評価することができる。
【0187】
ディスプレイライブラリー
スクリーニングアッセイの1つのアプローチでは、候補ペプチドを細胞またはウイルス粒子の表面上に提示し、提示された産物を介して特定の細胞またはウイルス粒子が適切な受容体タンパク質に結合する能力を「パンニングアッセイ」において検出する。例えば、遺伝子ライブラリーを細菌細胞の表面膜タンパク質遺伝子中にクローニングし、結果として生じる融合タンパク質をパンニングによって検出することができる(Ladner et al.、国際公開公報第88/06630号;Fuchs et al. (1991) Bio/Technology 9:1370-1371;およびGoward et al. (1992) TIBS 18:136-140)。この技法は、補体阻害剤を単離するために、Sahu et al. (1996) J. Immunology 157:884-891で用いられた。同様の様式で、検出可能に標識されたリガンドを用いて、潜在的に機能的なペプチド相同体を評価することができる。蛍光標識されたリガンド、例えば受容体を使用して、リガンド結合活性を保持する相同体を検出することができる。蛍光標識リガンドを使用することで、細胞を蛍光顕微鏡下で視覚的に検査および分離することができ、または細胞の形態が許容する場合、蛍光活性化セルソーターによって分離することができる。
【0188】
遺伝子ライブラリーは、ウイルス粒子の表面上に融合タンパク質として発現させることができる。例えば、繊維状ファージ系では、外来ペプチド配列を感染性ファージの表面上に発現させ、それによって2つの重大な利点を付与し得る。第一に、これらのファージはミリリットル当たり1013ファージを大幅に上回る濃度でアフィニティマトリックスに供され得るため、一度に多数のファージをスクリーニングすることができる。第二に、感染性ファージはそれぞれその表面上に遺伝子産物を提示するため、特定のファージがアフィニティマトリックスから低い収量で回収された場合には、もう一度感染させることによってそのファージを増幅することができる。ファージディスプレイライブラリーでは、ほとんど同一である大腸菌繊維状ファージ群M13、fd.、およびf1が最も頻繁に用いられる。ウイルス粒子の最終的なパッケージングを妨害することなく融合タンパク質を生成するには、ファージgIIIまたはgVIIIコートタンパク質を使用し得る。外来エピトープをpIIIのNH2末端で発現させ、そのようなエピトープを有するファージを、このエピトープを欠く大過剰量のファージから回収することができる(Ladner et al.、国際公開公報第90/02909号;Garrard et al.、国際公開公報第92/09690号;Marks et al. (1992) J. Biol. Chem. 267:16007-16010;Griffiths et al. (1993) EMBO J 12:725-734;Clackson et al. (1991) Nature 352:624-628;およびBarbas et al. (1992) PNAS 89:4457-4461)。
【0189】
一般的なアプローチでは、ペプチド融合パートナーとして大腸菌マルトース受容体(外膜タンパク質、LamB)を使用する(Charbit et al. (1986)EMBO 5:3029-3037)。このタンパク質の細胞外ループの1つに融合されたペプチドが産生されるように、LamB遺伝子をコードするプラスミドにオリゴヌクレオチドが挿入されている。これらのペプチドはリガンド、例えば抗体に対する結合に利用でき、細胞が動物に投与された場合に免疫応答を誘発し得る。他の細胞表面タンパク質、例えばOmpA(Schorr et al. (1991) Vaccines 91:387-392)、PhoE(Agterberg, et al. (1990) Gene 88:37-45)、およびPAL(Fuchs et al. (1991) Bio/Tech 9:1369-1372)、ならびに大きな細菌表面構造が、ペプチドディスプレイの媒体として役立っている。重合して遺伝情報の細菌間交換のための線毛-導管を形成するタンパク質であるピリンとペプチドを融合することができる(Thiry et al. (1989) Appl. Environ. Microbiol. 55:984-993)。その役割が他の細胞との相互作用におけるものであることから、線毛はペプチドを細胞外環境に提示するのを有効に支援する。ペプチドディスプレイに用いられる別の大きな表面構造は、細菌の運動器官である鞭毛である。ペプチドとサブユニットタンパク質フラジェリンとの融合は、宿主細胞上に多数のペプチドコピーの高密度配置をもたらす(Kuwajima et al. (1988) Bio/Tech. 6:1080-1083)。他の細菌種の表面タンパク質もまた、ペプチド融合パートナーとして役立っている。例として、ブドウ球菌(Staphylococcus)プロテインAおよびナイセリア(Neisseria)の外膜プロテアーゼIgAが挙げられる(Hansson et al. (1992) J. Bacteriol. 174:4239-4245、およびKlauser et al. (1990) EMBO J. 9:1991-1999)。
【0190】
上記の繊維状ファージ系およびLamB系では、ペプチドとそれをコードするDNAとの物理的な関係は、表面上にペプチドを有する粒子(細胞またはファージ)内にDNAが含まれることによって生じる。ペプチドを捕獲すると、粒子および粒子内のDNAが捕獲される。
【0191】
組換えランダムライブラリーにおけるスクリーニングされ得るペプチドの数は膨大である。107〜109個の独立したクローンからなるライブラリーが日常的に調製される。1011個の組換え体という大きなライブラリーも作製されている。このライブラリーサイズの限界は、ランダム部分を含むDNAを宿主細菌細胞に形質転換する段階で起こる。この限界を回避するために、ポリソーム複合体における新生ペプチドの提示に基づくインビトロ系が最近開発された。このディスプレイライブラリー法は、現在利用できるファージ/ファージミドライブラリーまたはプラスミドライブラリーよりも3〜6桁大きなライブラリーを作製できる能力を有する。さらに、ライブラリーの構築、ペプチドの発現、およびスクリーニングは、完全に無細胞の形式で行われる。
【0192】
この方法の1つの応用では(Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37(9):1233-1251)、1012個のデカペプチドをコードする分子DNAライブラリーが構築され、ライブラリーは大腸菌S30インビトロ共役転写/翻訳系において発現された。リボソームがmRNA上で停止し、ポリソームにおいてかなりの割合のRNAが蓄積し、新生ペプチドをコードするRNAに依然として連結している新生ペプチドを含む複合体が得られるように条件を選択する。ポリソームは、従来の組換えペプチドディスプレイライブラリーがスクリーニングされるのとほぼ同じように、固定化された受容体上でアフィニティ精製できるほど十分に強固である。結合した複合体からRNAを回収し、cDNAに変換し、PCRで増幅して、次回の合成およびスクリーニングのための鋳型を得る。ポリソームディスプレイ法はファージディスプレイ系と一緒に行うことができる。数回のスクリーニングの後に、ポリソームの濃縮プールからのcDNAがファージミドベクターにクローニングされた。このベクターは、コートタンパク質に融合されたペプチドを提示するペプチド発現ベクター、およびペプチド同定用のDNA配列決定ベクターの両方として役立つ。ポリソーム由来ペプチドをファージ上で発現させることによって、この形式でアフィニティ選択手順を続けることができ、またはファージELISAで結合活性について、もしくは競合ファージELISAで結合特異性について個々のクローン上のペプチドをアッセイすることもできる(Barret, et al. (1992) Anal. Biochem 204:357-364)。活性ペプチドの配列を同定するには、ファージミド宿主により産生されたDNAを配列決定する。
【0193】
二次スクリーニング
上記のハイスループットアッセイの後に、またはそれに代えて、例えば、当業者がアゴニストとアンタゴニストを識別できるようにする生物活性を同定するために二次スクリーニングを行うことができる。使用される二次スクリーニングの種類は、試験を必要とする所望の活性によって決まる。例えば、上記の一次スクリーニングの1つによって単離されたペプチド断片群からコリンアゴニストおよびアンタゴニストを同定するために、皮膚においてコリン活性を調節する(例えば、減少もしくは増加させる、または模倣する)能力を使用し得る本明細書に記載の発毛関連アッセイを使用することができる。
【0194】
または、コリンアゴニストおよびアンタゴニストを同定するために、コリンがpro-ANPを処理する能力を試験するpro-ANPアッセイを使用することができる(例えば、Wu et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:16900-16905を参照のこと)。
【0195】
ペプチド模倣物
本開示はまた、模倣物、例えばペプチド性または非ペプチド性の物質、例えばアゴニストを作製するための、コリンのタンパク質結合ドメインの生成を提供する。
【0196】
重要な残基の非加水分解性ペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidinger et al. Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照のこと)、アゼピン(例えば、Huffman et al. Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照のこと))、置換γラクタム環(Garvey et al. Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988)、ケトメチレン偽ペプチド(Ewenson et al. (1986) J Med Chem 29:295;およびEwenson et al. Peptides: Structure and Function (Proceedings of the 9th American Peptide Symposium) Pierce Chemical Co. Rockland, IL, 1985)、β-ターンジペプチドコア(Nagai et al. (1985) Tetrahedron Lett 26:647;およびSato et al. (1986) J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、およびβ-アミノアルコール(Gordon et al. (1985) Biochem Biophys Res Commun 126:419;およびDann et al. (1986) Biochem Biophys Res Commun 134:71)を用いて作製することができる。
【0197】
実施例
実施例1−抗コリン抗体はマウスおよびヒトのDP細胞を染色する
細菌においてマウスコリン(LRP4)タンパク質のドメインを発現させるための一連の発現構築物を構築し、これらを用いてこのタンパク質に対する抗血清を産生させるためのペプチドを生成した。試験した6つの構築物のうち、2つが安定なペプチドをもたらした(LRP5のLDLドメイン1〜5を含むALDL15抗原、およびLRP5のLDLドメイン6〜8を含むALDL68抗原と表示する)。抗血清を生成するために、これらのペプチドを用いてウサギを免疫した。他の大きさおよび他の組み合わせのペプチド(任意の種、例えばヒトまたはマウスに由来する)も使用することができる。例えば、ヒトまたはマウスコリンの細胞外ドメイン全体を使用することも可能である。
【0198】
ウサギで産生された抗血清の第1セットから、ALDL15発現構築物が有効な免疫原であることが示された。ALDL15により、免疫組織化学法によりマウス皮膚における真皮乳頭を特異的に染色する抗血清の産生がもたらされた(図1)。ヒト皮膚の凍結切片における免疫組織化学法から、このタンパク質がヒト毛包の真皮乳頭でも発現され、皮膚の他の細胞種では認められないことが確認された(図2)。これらの結果から、マウスおよびヒトにおいて、コリンが皮膚のDP細胞で選択的に発現されることが実証される。
【0199】
本明細書で引用したすべて出版物および特許は、参照により本明細書に組み入れられる。多くの態様について説明した。それにもかかわらず、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが理解されると考えられる。したがって、他の態様も特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】抗LRP4抗体で染色したマウス皮膚の顕微鏡写真である。
【図2】抗LRP4抗体で染色したヒト皮膚の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真皮乳頭(DP)細胞を同定する方法であって、皮膚細胞を提供する段階、および皮膚細胞におけるコリン(corin)発現を評価する段階を含み、皮膚細胞がコリンを発現する場合にそれがDP細胞であると同定される方法。
【請求項2】
コリン発現を評価する段階が、抗コリン抗体またはその断片を使用する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗体またはその断片が標識を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
標識が、蛍光タグ、放射性タグ、mycタグ、およびhisタグからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
評価段階がインビトロで行われる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
コリン発現を評価する段階が、その発現がコリンプロモーターによって制御されるレポーター遺伝子を評価する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
DP細胞を単離する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
コリン発現を評価する段階が生細胞を評価する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
DP細胞を単離する方法であって、皮膚細胞を含む細胞集団を提供する段階;および集団から少なくとも1つのコリン発現細胞を分離する段階を含む方法。
【請求項10】
分離段階が、細胞集団を、コリンタンパク質に結合する抗体と接触させる段階を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
抗体が標識されている、請求項10記載の方法。
【請求項12】
抗体が不溶性支持体に結合されている、請求項9記載の方法。
【請求項13】
分離段階が、蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気活性化セルソーティング(MACS)を含む、請求項9記載の方法。
【請求項14】
皮膚細胞が哺乳動物に由来する、請求項9記載の方法。
【請求項15】
皮膚細胞がヒトに由来する、請求項9記載の方法。
【請求項16】
細胞の拡大を支持する条件下で、分離された細胞を維持する段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項17】
Wntシグナル伝達を活性化する条件下で、分離された細胞を維持する段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項18】
分離された細胞をWnt3aの存在下で培養する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
分離された細胞またはその子孫を対象に移植する段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項20】
分離された細胞またはその子孫をケラチノサイトと共に移植する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
分離された細胞またはその子孫を対象の毛包に移植する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
分離された細胞またはその子孫を皮膚移植片の成分として対象に投与する、請求項19記載の方法。
【請求項23】
移植の前に、分離された細胞またはその子孫をケラチノサイトまたはそれに由来する物質と接触させる、請求項19記載の方法。
【請求項24】
以下の段階を含む、細胞を評価する方法:
細胞をケラチノサイトまたはケラチノサイト由来物質と接触させる段階;
細胞に付随するコリン発現を評価する段階。
【請求項25】
細胞が非心臓細胞である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
ケラチノサイト由来物質がケラチノサイトによって馴化された培地を含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
評価する細胞とケラチノサイトを共培養する、請求項24記載の方法。
【請求項28】
以下の段階を含む、発毛を調節する物質を同定する方法:
物質を皮膚細胞と接触させる段階;および
細胞に付随するコリン発現を評価する段階であって、物質がコリン発現を調節する能力が発毛を調節する能力を示す段階。
【請求項29】
コリン発現がコリン活性の検出によって評価される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
細胞がDP細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
接触段階の前に、細胞集団からコリン発現細胞として皮膚細胞を単離する段階をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項32】
コリン発現を評価する段階が、抗コリン抗体またはその断片を使用する段階を含む、請求項28記載の方法。
【請求項33】
物質が植物物質または抽出物である、請求項28記載の方法。
【請求項34】
物質が、核酸、ポリペプチド、ペプチド断片、ペプチド模倣物、および小分子からなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項35】
物質がコリン発現を増加させる場合にその物質を選択する段階をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項36】
物質がコリン発現を減少させる場合にその物質を選択する、請求項28記載の方法。
【請求項37】
DP細胞が、コリン遺伝子プロモーターまたはその一部に機能的に連結されたレポーターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む、請求項30記載の方法。
【請求項38】
レポーターポリペプチドが比色によりまたは蛍光により検出可能なポリペプチドである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
コリン遺伝子プロモーターに機能的に連結されたレポーターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む、単離された皮膚細胞。
【請求項40】
レポーターポリペプチドが比色によりまたは蛍光により検出可能なポリペプチドである、請求項39記載の皮膚細胞。
【請求項41】
皮膚細胞が哺乳動物皮膚細胞である、請求項39記載の皮膚細胞。
【請求項42】
皮膚細胞がヒト皮膚細胞である、請求項39記載の皮膚細胞。
【請求項43】
皮膚細胞がDP細胞である、請求項39記載の皮膚細胞。
【請求項44】
コリン発現能を有する皮膚細胞であって、皮膚細胞を含む細胞集団から少なくとも1つのコリン発現細胞を分離する段階を含む方法によって単離される細胞の集団。
【請求項45】
コリン発現能を有する少なくとも103個の皮膚細胞を含む哺乳動物細胞の集団であって、コリン発現能を有する細胞が細胞集団の少なくとも50%を構成する哺乳動物細胞の集団。
【請求項46】
コリン発現能を有する少なくとも103個の皮膚細胞を含む培養容器であって、コリン発現能を有する細胞が容器中の細胞集団の少なくとも50%を構成する培養容器。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−530016(P2007−530016A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501000(P2007−501000)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/006052
【国際公開番号】WO2005/084223
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(505164025)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (20)
【Fターム(参考)】