説明

発泡シリコーン発泡体

【課題】発泡制御が容易であり、優れた圧縮性能を有するだけでなく、不純物の残渣がなく製造時の環境負荷を低減する発泡シリコーン成形体を提供する。
【解決手段】シリコーンゴム材料に水溶性微粉末、加硫材、充填材、及び必要に応じた添加剤を加えて混練してマスターバッチとし、当該マスターバッチを加硫した後、水溶性微粉末を除去して得られる気泡を有する多孔質シリコーンゴム成形体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にパッキン、クッション、シール材等として使用が可能な発泡シリコーンゴム発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコーンゴム成形体は、耐熱性、耐溶剤性、電気絶縁性などの諸特性に優れ、軽量であるので、熱機器のパッキン材や複写機の表面被覆材、建築ガスケット材、各種クッション材等として広く利用されている。
【0003】
これらの中でも、発泡シリコーンゴム発泡体を使用する場合、材料費の低減やシリコーンゴムの硬度を制御するために内部に発泡部や中空部を有する形状がとられている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−181988
【特許文献2】特開2007−9038
【特許文献3】特開2007−210132
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシリコーン発泡体は発泡剤に熱を加えることでガスを発生させ、ガスの体積膨張により発泡制御を行うために、成形時の温度管理を高精度で行わなければならないために、発泡制御が極めて困難であるという問題があった。係る問題を解決するために、例えば特許文献1ではシリコーンゴム材料に熱膨張性樹脂製の微小フィラーを混合し過熱成形を行うことで温度制御を改善する手法が用いられているが、当該技術においても高精度の温度管理が必要であることや、成形後のシリコーン成形体において本来の昨日発現に必要のないフィラー材が残留するといった問題が残されている。また例えば特許文献2では成形体の内部に中空部と隔壁を設けることで発泡体と同等の機能を具備する手法が用いられているが、この構造はいわゆる密閉型の成形体であるので、外部のシリコーン成形部分が破損した場合、必要とする機能が失われてしまうといった信頼性に課題があるといった問題がある。また例えば、特許文献3ではゴム材料に揮発性溶剤を加えて作成したペースト状物から前記揮発性溶剤を揮発除去して得られる軟化原料ゴムに、主に水溶性微粉末を加えて混練し、加熱処理を行い残留揮発性溶剤の体積膨張を利用して連泡経路を形成した後、水溶性微粉末を除去して連続気泡を有するゴム成形体をえる手法が用いられているが、この方法では成形時の発泡制御が厳密な温度制御を必要とすることや成形時に発生する揮発性溶剤による生産設備及び周辺地域の環境への影響が発生すること、成形後の樹脂内部に揮発性溶剤の残留成分が残ること等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、シリコーンゴム材料に水溶性微粉粉末、加硫材、充填材、及び必要に応じた添加剤を加えて混練してマスターバッチとし、当該マスターバッチを加硫した後、水溶性微粉末を除去して得られる気泡を有する多孔質シリコーンゴム成形体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、シリコーンゴム材料に水溶性微粉粉末、加硫材、充填材、及び必要に応じた添加剤を加えて混練してマスターバッチとし、当該マスターバッチを加硫した後、水溶性微粉末を除去することでシリコーンゴム成形体を得られるために、従来の技術における課題であった、本来の機能に不要なフィラーの残留もなく、気泡制御のための厳密な温度処理も必要とせず、また原料に揮発性溶剤を用いないことから成形時に周囲の環境に影響を与える揮発物も発生しない。特に、加硫後のシリコーンゴムは水蒸気やイオンなどの分子密度の低い物質を透過する性質があるため、成形後の水溶性微粉末は水に浸漬するだけで容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。シリコーンゴムの材料としては、従来より様々な種類のシリコーンゴムが公知となっているので、それらを単独で用いても良いし、若しくは2種類以上用いてもよい。また、シリコーンゴムには、充填材、顔料、耐熱向上材等の各種添加剤を必要に応じて適宜配合してもよい。このようなものとして例えばシリカ、酸化チタニウム、クレイ、マイカ、炭酸亜鉛、酸化鉄、酸化セリウムなどが挙げられる。
【0009】
また、シリコーンゴムを成形体として使用する場合は、加硫する必要があるためシリコーンゴムには加硫剤を配合する必要があるが、この加硫剤はシリコーンゴムの加硫に一般的に用いられているものであれば種類は問わない。例えばジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらはシリコーンゴムのタイプを考慮して適宜選択する。
【0010】
本発明において使用できる水溶性微粉末は、塩などが挙げられる。塩は微粉末化、粒度分布の調整が容易であり、シリコーンゴムの加硫温度(110〜160℃)においても安定であり、水において容易に溶解し除去できる無機化合物を指し、具体的には塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。平均粒径は通常0.044〜0.498mm(350〜32メッシュ)のものを用い、使用比率はシリコーン原料ゴムに100部に対し、水溶性微粉末約30〜400部が好ましい。30部未満では成形後に水溶性微粉末が十分除去できない。シリコーンゴム原料は水溶性微粉末などの無機化合物を多く加えた状態でも混練が可能であり、従来技術での水溶性微粉末の添加量の上限が300部程度であるのに対し、本発明では300部以上水溶性微粉末を加えることが可能である。400部以上ではシリコーン原料ゴムと水溶性微粉末の混練性が低下する。
【0011】
発泡シリコーン成形体に内包される気泡は、それぞれの気泡が単独で形成されている独立気泡と気泡同士が連通している連続気泡とがあるが、本発明においてはいすれのタイプでも対応が可能である。独立気泡であれば発泡シリコーンゴムとしての反発力、防水性が向上する。連続気泡であれば、変位量、通気性が向上し、それぞれの用途に応じて使い分けることができる。単独気泡とするか、連続気泡とするかは本発明においては水溶性微粉末の粒度分布、添加量によって容易に調整が可能である。
【0012】
発泡シリコーン成形体の気泡形成は、シリコーン原料ゴムと水溶性微粉末、及び適宜添加物を加えたものを混練したものをマスターバッチとし、所定の形状に成形したものを加硫し、水に浸漬することで水溶性微粉末を除去した後、乾燥し水分を除去することで完了する。
【0013】
本発明においては、上記の通り、発泡シリコーン成形体の内部に気泡を有した構造であり、成形後の架橋後に水溶性微粉末を除去するため、成形時の寸法形状を維持することが可能である。そのため、意図した形状での成形が可能である。
【0014】
次に、本発明の製造方法について説明する。シリコーン原料ゴムに必要な添加剤を加えたものに対し、水溶性微粉末を混合しマスターバッチを得る。次にマスターバッチをカレンダーロール等でシート状に成形する。次にシートを100〜160℃の温度下で数10分〜数時間加熱して加硫する。加熱手段は電熱加熱など公知のものが使用可能である。次に加硫後のシート状成形体を冷水または温水に浸漬し水溶性微粉末を除去する。その後、水分を乾燥除去することにより、本発明の気泡を有するシリコーンゴム成形体を得ることが出きる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。
(実施例)
未加硫のシリコーンゴム100部に加硫剤5部、平均粒径32メッシュの塩化ナトリウム300部添加したもの混練しマスターバッチとした。このマスターバッチをカレンダーロールにより厚さ3mm、幅200mm、長さ300mmのシート状に成形した。得られたシートを130℃で20分間加熱し加硫処理を行った。その後、温度60℃の温水に1時間浸漬し、水溶性微粉末を除去した後、加熱乾燥により水分を除去し、気泡を有する発泡シリコーン成形体を得た。
【0016】
本発明に係る発泡シリコーン成形体と従来のシリコーン成形体について性能を確認したところ、表1に示す結果を得た。表中の比較例1は熱膨張性樹脂製の微小フィラーを混合して作成したシリコーン成形体であり、比較例2は成形体内部に空隙と隔壁を内包するシリコーン成形体であり、比較例2はウレタンゴム材料に揮発性溶剤と水溶性微粉末成を混合して作成したシリコーン成形体である。寸法はいずれも実施例と同じとした。
【0017】
【表1】

【0018】
以上のように本発明によれば機械特性や耐久性に優れるだけでなく、不純物が少なく、また製造時における周環境負荷の小さいシリコーン成形体を製造することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン発泡体からなるシートであって、上記シリコーン発泡体を水溶性微粉粉末、加硫材、充填材、及び必要に応じた添加剤を含有するシリコーンゴム材料を用いて成形し、成形後水溶性微粉末を除去して得られる気泡を有するシリコーン成型体。
【請求項2】
上記シリコーンゴム材料と水溶性微粉末の成分含有比が、原料ゴム:水溶性微粉末=100:30〜400である請求項1記載の気泡を有するシリコーン成型体。

【公開番号】特開2010−111838(P2010−111838A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307960(P2008−307960)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(504211164)
【Fターム(参考)】