説明

発泡シール材付き樹脂製パネル

【課題】発泡シール材が凹条溝から離脱しない樹脂製パネルを簡単かつ確実に、しかも安価に提供する。
【解決手段】プレート本体15の凹条溝19内で液状発泡樹脂原料を発泡硬化させて発泡シール材11をプレート本体15の表面に膨出させる。複数個の貫通孔27を凹条溝19の底面19aに溝長手方向に間隔をあけて形成する。凹条溝19の側面19bの各貫通孔27対応箇所に、複数個の係止片29を発泡シール材11に埋もれるように溝長手方向に間隔をあけて溝内側方に向かって突設する。発泡シール材11の一部を各貫通孔27内に嵌入して各係止片29に係止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡シール材付き樹脂製パネルの改良に関し、特に発泡シール材の離脱防止対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車の金属製ドアアウタパネルと樹脂製ドアインナパネルとを、各々の外周縁部に発泡シール材を介在させて接合したドアが開示されている。この特許文献1では、上記ドアインナパネルの主体をなすパネル本体の外周縁部に凹条溝を形成し、該凹条溝内に発泡シール材をパネル本体の表面に膨出するように収容している。そして、上記ドアアウタパネルとドアインナパネルとを接合した状態で、上記発泡シール材を両パネルで挟持して圧縮することで両パネル間のシール性を確保するようにしている。
【0003】
また、上記の特許文献1には、ドアインナパネルのパネル本体の少なくとも凹条溝周りに、接着性改良を目的として、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理等の表面処理を施し、発泡シール材が凹条溝から離脱しないようにする旨の記載がある。
【特許文献1】特開2003−335134号公報(段落0035欄、段落0069欄、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1のように、パネル本体の表面に表面処理を施す手法だと、大掛かりな設備が必要でコストアップを招来するばかりか、表面処理後、直ちに液状発泡樹脂原料を凹条溝内に注入しないと上記表面処理の効果が低下してしまい、発泡シール材を凹条溝内に離脱しないように収容することができなくなる。
【0005】
一方、発泡シール材が凹条溝から離脱しないようにするために、係止片を凹条溝の側面に溝内側方に向かって突設させて発泡シール材に埋もれさせようとすると、成形後に、係止片がアンダーカット部となって成形されたパネル本体を脱型することができなくなる。したがって、これを回避するためには、係止片と凹条溝の底面との間に位置する型部分をスライド型で構成しなければならず、スライド型が必要な分だけ型構造が複雑になって設備費用が高騰することになる。
【0006】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発泡シール材が凹条溝から離脱しない樹脂製パネルを簡単かつ確実に、しかも安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、この発明は、特別な表面処理を施すことなく、しかもスライド型を採用することなく、発泡シール材を凹条溝内に離脱しないように収容したことを特徴とする。
【0008】
具体的には、この発明は、表面に凹条溝を有する樹脂製パネル本体と、上記凹条溝内で液状発泡樹脂原料が発泡硬化して上記パネル本体の表面に膨出してなる発泡シール材とを備えた発泡シール材付き樹脂製パネルを前提とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記凹条溝の底面には、複数個の貫通孔が溝長手方向に間隔をあけて形成されているとともに、上記凹条溝の側面の上記各貫通孔対応箇所には、複数個の係止片が上記発泡シール材に埋もれるように溝長手方向に間隔をあけて溝内側方に向かって突設され、上記各貫通孔内には、上記発泡シール材の一部が嵌入されて上記各係止片に係止していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記前提において、上記凹条溝の側面には、複数個の貫通孔が溝長手方向に間隔をあけて形成され、該各貫通孔内には、上記発泡シール材の一部が嵌入されて上記各貫通孔周縁に係止していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上記前提において、上記発泡シール材には、上記凹条溝から外側方に向かってはみ出し、かつ全体が上記パネル本体の表面に溶着されて偏平状に圧縮された複数個のタブ部が溝長手方向に間隔をあけて一体に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、上記前提において、上記凹条溝の側面には、溝外側方に向かって凹陥する複数個の凹陥部が溝長手方向に間隔をあけて形成され、上記発泡シート材には、上記各凹陥部に嵌入され、かつ該凹陥部周縁対応部分が上記パネル本体の表面に溶着されて偏平状に圧縮された複数個のタブ部が溝長手方向に間隔をあけて一体に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、各凹陥部の底面には、先端に膨出部を有する突起が各タブ部に埋もれるように一体に突設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、発泡シール材の一部が複数個の係止片に溝長手方向に間隔をあけた位置で係止してアンカー効果が発揮されているため、パネル本体の表面に特別な表面処理を施さなくても、発泡シール材を凹条溝内に離脱しないように確実に収容することができるとともに、表面処理に必要な大掛かりな設備が不要で、コストを低減することができる。また、複数個の貫通孔内に発泡シール材の一部が嵌入されることによるアンカー効果によっても、発泡シール材を凹条溝から離脱し難くすることができる。
【0015】
さらに、パネル本体を成形するに際し、パネル本体の表面側を成形する第1割型の成形面に凹条溝形成箇所に対応して突条を突設し、一方、パネル本体の裏面側を成形する第2割型の成形面に凹条溝形成箇所に対応して貫通孔形成用の複数個の突起を、型閉じ状態で上記突条と各々の側面が摺り合うように突設した成形型を用意し、型閉じ状態で、上記各突起先端と第1割型の成形面との間に係止片形成用の空間をあけるようにすることで、成形後に、係止片がアンダーカット部となって成形されたパネル本体を脱型できない事態が回避される。したがって、これを回避するためのスライド型が不要で、型構造の簡素な成形型でパネル本体、ひいては発泡シール材付き樹脂製パネルを簡単かつ確実に、しかも安価に製造することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、発泡シール材の一部が、凹条溝の側面に形成された複数個の貫通孔に嵌入されて該各貫通孔周縁に係止してアンカー効果が発揮されているため、請求項1と同様に、パネル本体の表面に特別な表面処理を施さなくても、発泡シール材を凹条溝内に離脱しないように確実に収容することができるとともに、表面処理に必要な大掛かりな設備が不要で、コストを低減することができる。
【0017】
さらに、パネル本体を成形するに際し、パネル本体の表面側を成形する第1割型の成形面に凹条溝形成箇所に対応して突条を突設し、一方、パネル本体の裏面側を成形する第2割型の成形面の凹条溝形成箇所を複数個の貫通孔に対応して部分的に膨出させて該膨出部を、型閉じ状態で上記突条と各々の側面が摺り合うように突設した成形型を用意してパネル本体を成形することで、成形後に、アンダーカット部となる箇所をなくして成形されたパネル本体を脱型できない事態が回避される。したがって、請求項1と同様に、これを回避するためのスライド型が不要で、型構造の簡素な成形型でパネル本体、ひいては発泡シール材付き樹脂製パネルを簡単かつ確実に、しかも安価に製造することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、発泡シール材の複数個のタブ部が、溝長手方向に間隔をあけた位置でパネル本体の表面に溶着されて偏平状に圧縮されているため、請求項1と同様に、パネル本体の表面に特別な表面処理を施さなくても、発泡シール材を凹条溝内に離脱しないように確実に収容することができるとともに、表面処理に必要な大掛かりな設備が不要で、コストを低減することができる。
【0019】
さらに、パネル本体を成形するに際し、パネル本体の表面側を成形する第1割型の成形面に凹条溝形成箇所に対応して突条を突設し、一方、パネル本体の裏面側を成形する第2割型の成形面の凹条溝形成箇所に対応して凹条部を形成した成形型を用意してパネル本体を成形することで、成形後に、アンダーカット部となる箇所をなくして成形されたパネル本体を脱型できない事態が回避される。したがって、請求項1と同様に、これを回避するためのスライド型が不要で、型構造の簡素な成形型でパネル本体、ひいては発泡シール材付き樹脂製パネルを簡単かつ確実に、しかも安価に製造することができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、発泡シール材の複数個のタブ部が、溝長手方向に間隔をあけた位置で複数個の凹陥部周縁のパネル本体の表面に溶着されて偏平状に圧縮されているため、請求項1(請求項3)と同様に、パネル本体の表面に特別な表面処理を施さなくても、発泡シール材を凹条溝内に離脱しないように確実に収容することができるとともに、表面処理に必要な大掛かりな設備が不要で、コストを低減することができる。また、複数個の凹陥部内にタブ部が嵌入されてアンカー効果が発揮されることによっても、発泡シール材を凹条溝から離脱し難くすることができる。
【0021】
さらに、パネル本体を成形するに際し、パネル本体の表面側を成形する第1割型の成形面に凹条溝形成箇所に対応して突条と凹陥部形成用の凸部とを突設し、一方、パネル本体の裏面側を成形する第2割型の成形面の凹条溝形成箇所に対応して凹条部と凹陥部形成用の凹部とを形成した成形型を用意してパネル本体を成形することで、成形後に、アンダーカット部となる箇所をなくして成形されたパネル本体を脱型できない事態が回避される。また、タブ部を圧縮して発泡シール材をパネル本体に溶着する時、圧縮に対してパネル本体に設けた凹陥部により発泡シール材の反発が少なくなるので、発泡シール材はパネル本体の凹陥部周縁に強く圧縮されて確実に溶着できる。したがって、請求項1と同様に、これを回避するためのスライド型が不要で、型構造の簡素な成形型でパネル本体、ひいては発泡シール材付き樹脂製パネルを簡単かつ確実に、しかも安価に製造することができる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、突起先端の膨出部によってもアンカー効果が発揮され、タブ部を凹陥部からさらに離脱し難くし、発泡シール材を凹条溝から一層離脱し難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0024】
(実施形態1)
図6は自動車のサイドドア1の下端部分の断面図である。該サイドドア1はドアアウタパネル3とドアインナパネル5とからなる金属製ドア本体7を備え、該ドア本体7の上記ドアインナパネル5にこの発明の実施形態1に係る発泡シール材付き樹脂製パネルとしてのキャリアプレート(ドアモジュールプレート)9が発泡シール材11を介して取り付けられ、樹脂製ドアトリム13が上記キャリアプレート9を車室内側から被うように上記ドアインナパネル5に取り付けられ、これにより、キャリアプレート9がドアインナパネル5とドアトリム13との間に取り付けられている。
【0025】
上記キャリアプレート9は、例えば、ガラス繊維等の繊維が混入された熱可塑性樹脂で成形され、ウインドガラス昇降用のガイドレールやモータ、プルハンドル及びスピーカ等が取り付けられるようになっている。
【0026】
上記キャリアプレート9は、その主体をなす樹脂製パネル本体としてのプレート本体15を備えている。該プレート本体15の車室内側の表面外周縁部には、細長い膨出部17が全周に亘って形成され、該膨出部17に対応するプレート本体15の車室外側の表面外周縁部には、1条の凹条溝19が全周に亘って形成され、図5にも示すように、該凹条溝19内に上記発泡シール材11が収容されている。上記発泡シール材11は、液状発泡樹脂原料が凹条溝19内で発泡硬化して上記プレート本体15の表面に膨出してなるものである。
【0027】
また、上記プレート本体15の外周縁部近傍(凹条溝19より内側)には、円形ボス状の取付部21が複数個所定間隔をあけて全周に亘って一体に隣接して突設され、該各取付部21には、締結用のボルト挿通孔21aがプレート本体15を貫通するように形成されている。
【0028】
そして、キャリアプレート9をドアインナパネル5に重ねて上記各取付部21のボルト挿通孔21aをドアインナパネル5の開口周縁部に形成された複数個のボルト挿通孔5aに対応させた状態で、ボルト23を車室内側から各ボルト挿通孔21a,5aに挿通し、ドアインナパネル5の車室外側面に溶着されたウェルドナット25に螺合させることにより、キャリアプレート9をドアインナパネル5に取り付けている(図6参照)。
【0029】
上記凹条溝19の底面19a(膨出部17の膨出頂面17a)には、図1〜4に示すように、複数個の矩形状貫通孔27が凹条溝19の側面19b(膨出部17の側面17b)と接するように千鳥状に溝長手方向に間隔をあけて形成されている。また、上記凹条溝19の側面17bの上記各貫通孔27対応箇所には、複数個の矩形状係止片29が上記発泡シール材11に埋もれるように千鳥状に溝長手方向に間隔をあけて溝内側方に向かって一体に突設されている。そして、上記各貫通孔27内には、上記発泡シール材11の一部が嵌入されて該嵌入部分11aが上記各係止片29に係止している。
【0030】
このように、この実施形態1では、発泡シール材11の一部を、複数個の係止片29に溝長手方向に間隔をあけた位置で係止させてアンカー効果を発揮させているので、プレート本体15の表面に特別な表面処理を施すことなく、発泡シール材11を凹条溝19内に離脱しないように確実に収容することができるとともに、表面処理に必要な大掛かりな設備が不要で、コストを低減することができる。また、複数個の貫通孔27内に発泡シール材11の一部(嵌入部分11a)が嵌入されることによるアンカー効果によっても、発泡シール材11を凹条溝19から離脱し難くすることができる。
【0031】
このような貫通孔27及び係止片29をプレート本体15の凹条溝19に形成するには、図7に示すような成形型31を用いる。この成形型31は、プレート本体15の表面側を成形する第1割型33と、プレート本体15の裏面側を成形する第2割型35とを備えている。上記第1割型33の成形面33aには、1条の突条37が凹条溝19成形箇所に対応して一体に突設されているとともに、該突条37には、コ字状の切欠部(図示せず)が上記各係止片29に対応して千鳥状に長手方向に間隔をあけて形成されている。
【0032】
一方、上記第2割型35の成形面35aには、プレート本体15の厚みに対応するキャビティ39が形成され、該キャビティ39の外周縁部には、凹条部39aが上記膨出部17に対応して全周に亘って形成されている。また、上記凹条部39aの底面には、貫通孔27形成用の複数個の突起41が凹条溝19形成箇所に対応して千鳥状に一体に突設され、これら突起41は、成形型31の型閉じ状態で、上記第1割型33の突条37と各々の側面が摺り合うようになっている。また、この型閉じ状態で、上記各突起41先端と第1割型33の成形面33aとの間に係止片29形成用の空間39bが形成されている。
【0033】
そして、成形型31の型閉じ状態で、キャビティ39内に射出機から上述の如きガラス繊維等が混入された熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)を射出充填することで、図3及び図4に示すように、底面19aに複数個の貫通孔27が形成され、かつ側面19bに複数個の係止片29が突設された凹条溝19を有するプレート本体15が成形される。このプレート本体15の凹条溝19内に液状発泡樹脂原料を注入し、該液状発泡樹脂原料が凹条溝19内で発泡硬化してプレート本体15の表面に膨出することで発泡シール材11が凹条溝19内に収容される。
【0034】
このようにして成形されたプレート本体15では、上記各係止片29の下方に各貫通孔27が対応しているので、成形後に、各係止片29がアンダーカット部となって成形されたプレート本体15の脱型不能な事態を回避することができる。したがって、これを回避するためのスライド型が不要で、型構造の簡素な成形型でプレート本体15、ひいては発泡シール材付き樹脂製キャリアプレート9を簡単かつ確実に、しかも安価に製造することができる。
【0035】
(実施形態2)
図8及び図9は実施形態2に係るキャリアプレート9を、図10及び図11はプレート本体15をそれぞれを示す。上記プレート本体15の凹条溝19の側面19b(膨出部17の側面17b)には、複数個の矩形状貫通孔27が凹条溝19の底面19a(膨出部17の膨出頂面17a)と接するように千鳥状に溝長手方向に間隔をあけて形成されている。また、上記膨出部17の側面17bの上記各貫通孔27対応箇所には、矩形状の切欠部17cが各貫通孔27を側方及び下方に開放するように切欠き形成されている。そして、上記各貫通孔27内には、発泡シール材11の一部が嵌入されて該嵌入部分11aが上記切欠部17cに臨み、各貫通孔27周縁に係止している。そのほかは実施形態1と同様に構成されている(図5及び図6参照)。
【0036】
このように、この実施形態2では、発泡シール材11の一部を、凹条溝19の側面17bに形成された複数個の貫通孔27に嵌入させて該各貫通孔27周縁に係止させているので、実施形態1と同様のアンカー効果が得られ、プレート本体15の表面に特別な表面処理を施すことなく、発泡シール材11を凹条溝19内に離脱しないように確実に収容することができるとともに、表面処理に必要な大掛かりな設備が不要で、コストを低減することができる。
【0037】
このような貫通孔27をプレート本体15の凹条溝19に形成するには、図12に示すような成形型31を用いる。この成形型31は、プレート本体15の表面側を成形する第1割型33と、プレート本体15の裏面側を成形する第2割型35とを備えている。上記第1割型33の成形面33aには、1条の突条37が凹条溝19成形箇所に対応して一体に突設されている。
【0038】
一方、上記第2割型35の成形面35aには、プレート本体15の厚みに対応するキャビティ39が形成され、該キャビティ39の外周縁部には、凹条部39aが膨出部17に対応して全周に亘って形成されている。また、上記凹条部39aの底面には、貫通孔27及び切欠部17c形成用の複数個の突起43が凹条溝19形成箇所に対応して千鳥状に一体に突設され、これら突起43は、成形型31の型閉じ状態で、上記第1割型33の突条37と各々の側面が摺り合うようになっている。
【0039】
そして、成形型31の型閉じ状態で、キャビティ39内に射出機から上述の如きガラス繊維等が混入された熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)を射出充填することで、図10及び図11に示すように、側面19bに複数個の貫通孔27が形成された凹条溝19を有し、かつ膨出部17の側面17bに複数個の切欠部17cが形成されたプレート本体15が成形される。このプレート本体15の凹条溝19内に液状発泡樹脂原料を注入し、該液状発泡樹脂原料が凹条溝19内で発泡硬化してプレート本体15の表面に膨出することで発泡シール材11が凹条溝19内に収容される。
【0040】
このようにして成形されたプレート本体15では、成形後に、アンダーカット部となる箇所がなく、成形されたプレート本体15の脱型不能な事態を回避することができる。したがって、実施形態1と同様に、これを回避するためのスライド型が不要で、型構造の簡素な成形型でプレート本体15、ひいては発泡シール材付き樹脂製キャリアプレート9を簡単かつ確実に、しかも安価に製造することができる。
【0041】
(実施形態3)
図13、図14及び図19は実施形態3に係るキャリアプレート9を、図15及び図16はプレート本体15を、図17及び図18はプレート本体15の凹条溝19内で発泡樹脂原料が発泡した状態をそれぞれを示す。上記プレート本体15の凹条溝19には、実施形態1,2の如き貫通孔27や係止片29等はない。その代わりに、発泡シール材11には、複数個の半円形状のタブ部45が凹条溝19から外側方(プレート本体15の内側)に向かってはみ出すように溝長手方向に間隔をあけて一体に形成されている(図19参照)。このタブ部45は、全体が上記プレート本体15の表面に溶着されて偏平状に圧縮され、発泡シール材11の非圧縮部分に比べて硬くなっている。図17及び図18中、45′は発泡シール材11の圧縮前のはみ出し部分を示す。図18中、47は該はみ出し部分45′を圧縮する超音波溶着治具である。なお、超音波溶着治具47に代えて、例えば熱ゴテ等を用いてはみ出し部分45′を圧縮してもよい。以下の実施形態においても同様である。そのほかは実施形態1と同様に構成されている(図6参照)。
【0042】
このように、この実施形態3では、発泡シール材11の複数個のタブ部45を、溝長手方向に間隔をあけた位置でプレート本体15の表面に超音波溶着治具47により溶着して偏平状に圧縮したので、請求項1と同様に、プレート本体15の表面に特別な表面処理を施すことなく、発泡シール材11を凹条溝19内に離脱しないように確実に収容することができるとともに、表面処理に必要な大掛かりな設備が不要で、コストを低減することができる。
【0043】
上記プレート本体15を成形するに際しては、図示しないが、プレート本体15の表面側を成形する第1割型33と、プレート本体15の裏面側を成形する第2割型35とを備えた成形型31を用いる(図7及び図12参照)。ただし、上記第1割型33の成形面33aには、1条の突条37が凹条溝19成形箇所に対応して一体に突設されているだけであり、突条37には実施形態1の如き切欠部はない。また、上記第2割型35の成形面35aには、凹条部39aを有するキャビティ39がプレート本体15の厚みに対応して形成されているだけであり、凹条部39aの底面には実施形態1の如き突起41や、実施形態2の如き切欠部17c形成用の突起43はない。
【0044】
したがって、このような成形型31を用いてプレート本体15を成形しても、成形後に、アンダーカット部となる箇所ができず、成形されたプレート本体15の脱型不能な事態を回避することができる。したがって、実施形態1と同様に、これを回避するためのスライド型が不要で、型構造の簡素な成形型でプレート本体15、ひいては発泡シール材付き樹脂製キャリアプレート9を簡単かつ確実に、しかも安価に製造することができる。
【0045】
(実施形態4)
図20及び図21は実施形態4に係るキャリアプレート9を、図22及び図23はプレート本体15を、図24及び図25はプレート本体15の凹条溝19内で発泡樹脂原料が発泡した状態をそれぞれを示す。上記プレート本体15の凹条溝19には、実施形態3と同様に、実施形態1,2の如き貫通孔27や係止片29等はない。その代わりに、実施形態3と同様に、発泡シール材11には、複数個の半円形状のタブ部45が凹条溝19から外側方(プレート本体15の内側)に向かってはみ出すように溝長手方向に間隔をあけて一体に形成されている。図24及び図25中、45′は発泡シール材11の圧縮前のはみ出し部分を示す。図25中、47は該はみ出し部分45′を圧縮する超音波溶着治具である。
【0046】
ただし、実施形態4では、実施形態3と異なり、凹条溝19の側面19bには、溝外側方(プレート本体15の内側)に向かって凹陥する複数個の凹陥部49が溝長手方向に間隔をあけて形成されている。17dは、上記凹陥部49に対応して外側方に膨出した膨出側壁部分である。そして、発泡シール材11には、複数個のタブ部45が上記各凹陥部49に嵌入され、かつ該凹陥部49周縁対応部分が上記プレート本体15の表面に溶着されて偏平状に圧縮され、発泡シール材11の非圧縮部分に比べて硬くなっている。また、凹陥部49内の発泡シール材11も圧縮されている。そのほかは実施形態1と同様に構成されている(図6参照)。
【0047】
このように、この実施形態4では、発泡シール材11の複数個のタブ部45を、溝長手方向に間隔をあけた位置で複数個の凹陥部49周縁のプレート本体15の表面に超音波溶着治具47により溶着して偏平状に圧縮したので、請求項1(請求項3)と同様に、プレート本体15の表面に特別な表面処理を施すことなく、発泡シール材11を凹条溝19内に離脱しないように確実に収容することができるとともに、表面処理に必要な大掛かりな設備が不要で、コストを低減することができる。また、複数個の凹陥部49内にタブ部45が嵌入されてアンカー効果が得られることによっても、発泡シール材11を凹条溝19から離脱し難くすることができる。
【0048】
上記プレート本体15を成形するに際しては、図示しないが、プレート本体15の表面側を成形する第1割型33と、プレート本体15の裏面側を成形する第2割型35とを備えた成形型31を用いる(図7及び図12参照)。ただし、上記第1割型33の成形面33aには、上記凹陥部49に対応する突出部を有する1条の突条37が凹条溝19成形箇所に対応して一体に突設されているだけであり、突条37には実施形態1の如き切欠部はない。また、上記第2割型35の成形面35aには、凹条部39aを有するキャビティ39がプレート本体15の厚みに対応して形成され、かつ上記凹条部39aは上記凹陥部49に対応する幅広部を有しているだけであり、凹条部39aの底面には実施形態1の如き突起41や、実施形態2の如き切欠部17c形成用の突起43はない。
【0049】
したがって、このような成形型31を用いてプレート本体15を成形しても、成形後に、アンダーカット部となる箇所ができず、成形されたプレート本体15の脱型不能な事態を回避することができる。また、タブ部45を圧縮して発泡シール材11をプレート本体15に溶着する時、圧縮に対してプレート本体15に設けた凹陥部49により発泡シール材11の反発が少なくなるので、発泡シール材11はプレート本体15の凹陥部49周縁に強く圧縮されて確実に溶着できる。したがって、実施形態1と同様に、これを回避するためのスライド型が不要で、型構造の簡素な成形型でプレート本体15、ひいては発泡シール材付き樹脂製キャリアプレート9を簡単かつ確実に、しかも安価に製造することができる。
【0050】
(実施形態5)
図26、図27及び図28は実施形態5に係るキャリアプレート9を、図29及び図30はプレート本体15を、図31及び図32はプレート本体15の凹条溝19内で発泡樹脂原料が発泡した状態をそれぞれを示す。上記プレート本体15の凹条溝19には、実施形態3と同様に、実施形態1,2の如き貫通孔27や係止片29等はない。その代わりに、実施形態3,4と同様に、発泡シール材11には、複数個の半円形状のタブ部45が凹条溝19から外側方(プレート本体15の内側)に向かってはみ出すように溝長手方向に間隔をあけて一体に形成されている。図31及び図32中、45′は発泡シール材11の圧縮前のはみ出し部分を示す。図32中、47は該はみ出し部分45′を圧縮する超音波溶着治具である。
【0051】
さらに、この実施形態5では、実施形態4と同様に、凹条溝19の側面19bには、溝外側方(プレート本体15の内側)に向かって凹陥する複数個の凹陥部49が溝長手方向に間隔をあけて形成されているが、各凹陥部49には凹条溝19の底面19aよりも上方に位置する段上部51が形成され、該段上部51の頂面が凹陥部49の底面を構成している点と、先端に膨出部53aを有する突起53が上記段上部51の頂面に一体に突設されている点とで実施形態4と異なっている。なお、この突起53の膨出部53aはタブ部45圧縮前にはない(図29及び図30参照)。17dは、上記凹陥部49に対応して外側方に膨出した膨出側壁部分である。
【0052】
そして、この実施形態5では、発泡シール材11には、複数個のタブ部45が上記各凹陥部49に嵌入され、かつ該凹陥部49周縁対応部分が上記プレート本体15の表面に超音波溶着治具47により溶着されて偏平状に圧縮され、発泡シール材11の非圧縮部分に比べて硬くなっている。また、凹陥部49内の発泡シール材11も圧縮されている。この溶着に際し、上記突起53の先端が超音波溶着治具47により押し潰されて膨出部53aが形成され、突起53が各タブ部45に埋もれている。そのほかは実施形態1と同様に構成されている(図6参照)。
【0053】
このように、この実施形態5では、発泡シール材11の複数個のタブ部45を、溝長手方向に間隔をあけた位置で複数個の凹陥部49周縁のプレート本体15の表面に超音波溶着治具47により溶着して偏平状に圧縮したので、請求項1(請求項3,4)と同様に、プレート本体15の表面に特別な表面処理を施すことなく、発泡シール材11を凹条溝19内に離脱しないように確実に収容することができるとともに、表面処理に必要な大掛かりな設備が不要で、コストを低減することができる。また、複数個の凹陥部49内にタブ部45が嵌入されてアンカー効果が得られることによっても、発泡シール材11を凹条溝19から離脱し難くすることができる。さらに、突起53先端の膨出部53aによってもアンカー効果が発揮され、タブ部45を凹陥部49からさらに離脱し難くし、発泡シール材11を凹条溝19から一層離脱し難くすることができる。
【0054】
上記プレート本体15を成形するに際しては、図示しないが、プレート本体15の表面側を成形する第1割型33と、プレート本体15の裏面側を成形する第2割型35とを備えた成形型31を用いる(図7及び図12参照)。ただし、上記第1割型33の成形面33aには、上記凹陥部49(段上部51及び突起53を含む)に対応する突出部を有する1条の突条37が凹条溝19成形箇所に対応して一体に突設されているだけであり、突条37には実施形態1の如き切欠部はない。また、上記第2割型35の成形面35aには、凹条部39aを有するキャビティ39がプレート本体15の厚みに対応して形成され、かつかつ上記凹条部39aは上記凹陥部49(段上部51及び突起53を含む)に対応する幅広部を有しているだけであり、凹条部39aの底面には実施形態1の如き突起41や、実施形態2の如き切欠部17c形成用の突起43はない。
【0055】
したがって、このような成形型31を用いてプレート本体15を成形しても、成形後に、アンダーカット部となる箇所ができず、成形されたプレート本体15の脱型不能な事態を回避することができる。したがって、実施形態1と同様に、これを回避するためのスライド型が不要で、型構造の簡素な成形型でプレート本体15、ひいては発泡シール材付き樹脂製キャリアプレート9を簡単かつ確実に、しかも安価に製造することができる。
【0056】
なお、上記の実施形態では、発泡シール材付き樹脂製パネルが自動車のサイドドアのキャリアプレート9である場合を示したが、他の自動車用パネルや自動車以外のパネルにも適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、発泡シール材を凹条溝内に離脱しないように収容した樹脂製パネルについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図5のA−A線における断面に相当する斜視図である。
【図2】図5のA−A線における断面図(図1のB−B線における矢視図)である。
【図3】実施形態1に係るキャリアプレートのプレート本体の凹条溝周辺部分を示す斜視図である。
【図4】図3のC−C線における断面図である。
【図5】実施形態1に係るキャリアプレートを車室外側から見た正面図である。
【図6】実施形態1に係るキャリアプレートが適用された自動車のサイドドアの下端部分を示す断面図である。
【図7】実施形態1において図4対応箇所の成形型の断面図である。
【図8】実施形態2の図1相当図である。
【図9】図8のD−D線における矢視図である。
【図10】実施形態2の図3相当図である。
【図11】図10のE−E線における矢視図である。
【図12】実施形態2において図11対応箇所の成形型の断面図である。
【図13】図19のF−F線における断面に相当する斜視図である。
【図14】図13のG−G線における矢視図である。
【図15】実施形態3の図3相当図である。
【図16】図15のH−H線における矢視図である。
【図17】実施形態3においてプレート本体の凹条溝内で発泡樹脂原料が発泡した状態を示す斜視図である。
【図18】図17のI−I線における矢視図である。
【図19】実施形態3の図5相当図である。
【図20】実施形態4の図13相当図である。
【図21】図20のJ−J線における断面図である。
【図22】実施形態4の図15相当図である。
【図23】図22のK−K線における矢視図である。
【図24】実施形態4の図17相当図である。
【図25】図24のL−L線における矢視図である。
【図26】実施形態5の図13相当図である。
【図27】図26のM−M線における矢視図である。
【図28】図26のN−N線における断面図である。
【図29】実施形態5の図22相当図である。
【図30】図29のO−O線における矢視図である。
【図31】実施形態5の図24相当図である。
【図32】図31のP−P線における矢視図である。
【符号の説明】
【0059】
9 キャリアプレート(パネル)
11 発泡シール材
15 プレート本体(パネル本体)
19 凹条溝
19a 凹条溝の底面
19b 凹条溝の側面
27 貫通孔
29 係止片
45 タブ部
49 凹陥部
53 突起
53a 膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹条溝を有する樹脂製パネル本体と、上記凹条溝内で液状発泡樹脂原料が発泡硬化して上記パネル本体の表面に膨出してなる発泡シール材とを備えた発泡シール材付き樹脂製パネルであって、
上記凹条溝の底面には、複数個の貫通孔が溝長手方向に間隔をあけて形成されているとともに、上記凹条溝の側面の上記各貫通孔対応箇所には、複数個の係止片が上記発泡シール材に埋もれるように溝長手方向に間隔をあけて溝内側方に向かって突設され、
上記各貫通孔内には、上記発泡シール材の一部が嵌入されて上記各係止片に係止していることを特徴とする発泡シール材付き樹脂製パネル。
【請求項2】
表面に凹条溝を有する樹脂製パネル本体と、上記凹条溝内で液状発泡樹脂原料が発泡硬化して上記パネル本体の表面に膨出してなる発泡シール材とを備えた発泡シール材付き樹脂製パネルであって、
上記凹条溝の側面には、複数個の貫通孔が溝長手方向に間隔をあけて形成され、
該各貫通孔内には、上記発泡シール材の一部が嵌入されて上記各貫通孔周縁に係止していることを特徴とする発泡シール材付き樹脂製パネル。
【請求項3】
表面に凹条溝を有する樹脂製パネル本体と、上記凹条溝内で液状発泡樹脂原料が発泡硬化して上記パネル本体の表面に膨出してなる発泡シール材とを備えた発泡シール材付き樹脂製パネルであって、
上記発泡シール材には、上記凹条溝から外側方に向かってはみ出し、かつ全体が上記パネル本体の表面に溶着されて偏平状に圧縮された複数個のタブ部が溝長手方向に間隔をあけて一体に形成されていることを特徴とする発泡シール材付き樹脂製パネル。
【請求項4】
表面に凹条溝を有する樹脂製パネル本体と、上記凹条溝内で液状発泡樹脂原料が発泡硬化して上記パネル本体の表面に膨出してなる発泡シール材とを備えた発泡シール材付き樹脂製パネルであって、
上記凹条溝の側面には、溝外側方に向かって凹陥する複数個の凹陥部が溝長手方向に間隔をあけて形成され、
上記発泡シート材には、上記各凹陥部に嵌入され、かつ該凹陥部周縁対応部分が上記パネル本体の表面に溶着されて偏平状に圧縮された複数個のタブ部が溝長手方向に間隔をあけて一体に形成されていることを特徴とする発泡シール材付き樹脂製パネル。
【請求項5】
請求項4に記載の発泡シール材付き樹脂製パネルにおいて、
各凹陥部の底面には、先端に膨出部を有する突起が各タブ部に埋もれるように一体に突設されていることを特徴とする発泡シール材付き樹脂製パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2009−166421(P2009−166421A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9141(P2008−9141)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】