説明

発泡固形潤滑剤封入自在継手およびその製造方法

【課題】長寿命で低コストであり、生産性にも優れ、環境への負荷低減を同時に達成できる発泡固形潤滑剤を封入した自在継手を提供する。
【解決手段】外方部材2および内方部材3に設けられたトラック溝4、5とトルク伝達部材6との係り合いによって回転トルクが伝達され、上記トルク伝達部材6が上記トラック溝4、5に沿って転動することによって軸方向移動がなされ、継手内部に発泡固形潤滑剤10が封入されてなる発泡固形潤滑剤封入自在継手であって、上記発泡固形潤滑剤10は、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡固形潤滑剤を封入した自在継手(ジョイント)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高性能化、コンパクト化および軽量化のための技術的改良が進み、自動車部品や産業機械の駆動伝達に用いられる自在継手についても小型化、高性能化および長寿命化の要求が高まっている。
コンパクト化や軽量化の進展とともに、自在継手にも高い負荷が加わることになり、従来のグリースによる潤滑では、充分な長寿命化が困難な場合がある。今後ますます高性能化が求められることからグリースの封入量や添加剤を最適化するだけでは、高温、高速、高負荷の使用環境下での潤滑剤の飛散や垂れ落ちを防止するには限界がある。
このような問題に対して、固形成分を発泡体化し、これに潤滑油を充填させる発泡潤滑剤が報告されている(特許文献1参照)。
この発泡潤滑剤は、等速ジョイントの屈曲により変形するブーツに追従して固形状となった潤滑剤が圧縮される。ここで固形状となった潤滑剤より滲み出た液状潤滑剤が必要部位に供給され、良好な潤滑を可能にするものである。
【0003】
特許文献1に開示されている潤滑剤は発泡樹脂に潤滑油を含浸させるという後含浸型のものである。後含浸型の場合、潤滑油は発泡樹脂の発泡空間には含浸されるが、発泡樹脂そのものには殆ど含浸しない。そのため、発泡樹脂と潤滑油との親和性が弱い場合など、潤滑油保持力が小さく、高速条件下で使用した場合には潤滑油が一度に抜け出てしまうという問題がある。このような発泡潤滑剤においては短時間での潤滑や密閉空間においては使用可能であるが、長時間や開放空間で使用することが困難である。また、油保持性が高くないため、潤滑油の放出と発泡体への吸収を繰り返しながら潤滑油は絶えず空間内を流動する。このような場合、潤滑油やそれに含まれる添加剤の化学的性質によってはブーツ材を攻撃、劣化させる可能性があり、潤滑剤またはブーツ材のどちらか一方の材料選択が制限されるという問題がある。また、後含浸に伴う製造工程の工数増加や、製造時間の増加、それらに伴うコストアップは避けられないという問題がある。
【0004】
一方、ポリオール成分とイソシアネート成分とで生成されるポリウレタン樹脂内に潤滑油を含ませた潤滑性組成物が知られている(特許文献2〜特許文献5参照)。
また、瀝青などによる油展が可能な原料として水酸基末端ポリジエン化合物がこれまでに報告されている(特許文献6参照)。
しかしながら、圧縮・屈曲などの外部応力の働く部位において使用できるようなゴム弾性を有し、潤滑剤の放出性が高く、かつ大きな変形を許容する発泡固形潤滑剤は知られていない。
【0005】
そこで上記のような理由から潤滑剤の保持性が高く、かつ大きな変形を許容する固形潤滑剤を用いた自在継手が求められている。特に固形樹脂成分内にも潤滑油等を含有させ、潤滑剤保持力を高める必要がある。
このように自在継手に求められている潤滑剤は工業的に汎用されているようなグリース潤滑と比較しても、必要量を必要箇所に供給することが可能であるため、従来のグリース使用量の低減によるコストダウン、ブーツ材への負荷低減、自在継手の軽量化とコンパクト化を可能にする技術であるという利点があり、工業的に有利な経済的側面だけでなく環境に対する負荷低減、設計の自由度という複数の観点からも社会的重要度の高い技術であるといえる。
【特許文献1】特開平9−42297号公報
【特許文献2】特開昭60−173010号公報
【特許文献3】特開昭62−241997号公報
【特許文献4】特開平8−3259号公報
【特許文献5】特開平6−172770号公報
【特許文献6】特開昭58−189243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題に対処するためになされたものであり、長寿命で低コストであり、生産性にも優れ、環境への負荷低減を同時に達成できる発泡固形潤滑剤を封入した自在継手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発泡固形潤滑剤封入自在継手は、外方部材および内方部材に設けられたトラック溝とトルク伝達部材との係り合いによって回転トルクが伝達され、上記トルク伝達部材が上記トラック溝に沿って転動することによって軸方向移動がなされ、継手内部に発泡固形潤滑剤が封入されてなる発泡固形潤滑剤封入自在継手であって、上記発泡固形潤滑剤は、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させてなり、上記潤滑成分は炭化水素系潤滑油および炭化水素系グリースから選ばれた少なくとも1つの潤滑成分であり、上記液状ゴムは高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が 25 〜 110 mgKOH/g となる量の水酸基を有する液状ゴムであり、上記硬化剤は分子内にイソシアネート基を有する有機化合物であり、上記発泡剤が水であり、上記液状ゴムと上記硬化剤との割合は、上記液状ゴムに含まれる水酸基と上記硬化剤に含まれるイソシアネート基とが当量比で(OH/NCO)=1/( 1.0 〜 2.0 )の範囲であり、上記混合物は、混合物全体に対して、上記潤滑成分を 40 〜80 重量%、上記液状ゴムを 5 〜45 重量%含むことを特徴とする。
【0008】
上記液状ゴムがブタジエンもしくはイソプレンの重合体の主鎖末端に水酸基を有する数平均分子量 1000〜3500 の水酸基末端ジエン系重合体、または該ジエン系重合体を水添処理した変性水酸基末端ジエン系重合体であることを特徴とする。
【0009】
上記分子内にイソシアネート基を持つ有機化合物は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、イソシアネート基の割合が 2.5 〜 5.0 NCO%からなるプレポリマーであるか、または、芳香族ポリイソシアネート、特にトリレンジイソシアネートであることを特徴とする。
【0010】
上記混合物は、発泡・硬化が完了する前に上記トルク伝達部材の周囲に充填されることを特徴とする。
また、上記発泡固形潤滑剤封入自在継手は、等速自在継手であることを特徴とする。
【0011】
本発明の発泡固形潤滑剤封入自在継手の製造方法は、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む成分を混合して混合物を得る混合工程と、上記混合物の発泡・硬化が完了する前に、上記混合物をトルク伝達部材の周囲に充填する充填工程と、上記充填された上記混合物を発泡・硬化させる発泡・硬化工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡固形潤滑剤封入自在継手は、発泡固形潤滑剤を自在継手内部(継手外輪内輪間)に封入して使用している。この発泡固形潤滑剤は、この発泡固形潤滑剤は、炭化水素系潤滑成分と、分子内に水酸基を有する炭化水素系液状ゴムと、ポリイソシアネート系硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させるので、潤滑成分が発泡・硬化した固形成分内に吸蔵される。このため、自在継手の回転運動に伴う遠心力や自在継手が角度をとったときに発生する圧縮、屈曲、膨張などの外的な応力によって発泡固形潤滑剤中より外部に潤滑油が徐放されるので、潤滑剤保持力に優れ、自在継手の小型化、高性能化および長寿命化が図れる。なお、潤滑成分が発泡・硬化した固形成分内に吸蔵されるとは、後述する潤滑油やグリースなどの液体・半固体状の潤滑成分が、発泡・硬化した固形成分中に分子内に水酸基を有する液状ゴムや硬化剤と反応することなく、化合物にならないで含まれることをいう。
【0013】
また、本発明の自在継手の製造方法は、上記混合工程と、充填工程と、発泡・硬化工程とからなるので、組み立て後に潤滑剤を封入しなくてもよい。その結果、生産効率が向上し、安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の自在継手に用いる発泡固形潤滑剤に用いられる固形成分には耐熱性および柔軟性に優れ、低コスト化が可能となるウレタン樹脂を用いるのが好ましい。ウレタン樹脂を形成する水酸基含有成分としては、分子内に水酸基を有する液状ゴムが好ましく、この液状ゴムは高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が 25 〜 110 mgKOH/g となる量の水酸基を有する液状ゴムであることが好ましい。水酸基価が 25 mg KOH/g 未満では、発泡・硬化が十分でなく、水酸基価が 110 mg KOH/g をこえると、発泡固形潤滑剤の弾力性が失われる場合がある。
この液状ゴムは、ブタジエンもしくはイソプレンの重合体の主鎖末端に水酸基を有する数平均分子量 1000〜3500 の水酸基末端ジエン系重合体、または該ジエン系重合体を水添処理した変性水酸基末端ジエン系重合体を用いることができる。
水酸基末端液状ポリブタジエンとしては、poly-bd R45HT(出光興産社製)、poly-bd R15HT(出光興産社製)、NISSO−PB G−1000、G−2000、G−3000(日本曹達社製)が挙げられ、水酸基末端液状ポリイソプレンとしては、poly-ip(出光興産社製)が挙げられ、水添処理した水酸基末端ポリジエン化合物としては、エポール(出光興産社製)、NISSO−PB GI−1000、GI−2000、GI−3000(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0015】
また、これら水酸基末端ポリジエン化合物または水添処理した水酸基末端ポリジエン化合物の末端水酸基をイソシアネート基やエポキシ基などで一部変性した水酸基末端ポリジエン化合物または水添処理した水酸基末端ポリジエン化合物も水酸基が末端に含まれれば使用することができる。製造された発泡体の物性を制御するなどの目的でこれら化合物を2種類以上混合して用いてもよい。
【0016】
上記水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体は、後述する炭化水素から構成されるパラフィン系やナフテン系の鉱物油からなる潤滑成分と分子構造が類似するので、潤滑成分を構成する分子との化学的親和性に優れ、水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体と潤滑成分分子とが比較的弱い相互作用によって絡み合っていると考えられる。そのため多くの潤滑成分をその水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体の分子内に含浸させることが可能であり、高い潤滑成分保持性を発揮することができる。これに熱や遠心力などの強い力を加えることで、水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体と潤滑成分の相互作用が壊され、潤滑成分を徐放させることができる。
【0017】
液状ゴムを硬化させる硬化剤としての分子内にイソシアネート基を有する有機化合物は、液状ゴム内の水酸基と反応し、分子鎖を延長させ、または架橋させるイソシアネート化合物であれば、特に制限なく使用できる。好ましいイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート類を挙げることができる。ポリイソシアネート類は後述する発泡剤となる水と反応して気体を発生させることができるので特に好ましい。
ポリイソシアネート類としては、ポリイソシアネートおよび/または分子内に2個以上のイソシアネート基を有するプレポリマーが挙げられる。
【0018】
ポリイソシアネート類は芳香族、脂肪族、または脂環族ポリイソシアネート類を挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと記す)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと記す)、TDIの多量体、MDIの多量体、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート、ジフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類としては、オクタデカメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート類としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
また、上記ポリイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどのポリオールとの付加物も使用できる。
液状ゴムの末端官能基である水酸基との反応を高温度で行なう場合は、フェノール類、ラクタム類、アルコール類、オキシム類などのブロック剤でイソシアネート基をブロックしたブロックイソシアネート等を使用することができる。
【0019】
水酸基末端ポリジエン系重合体と反応させる場合、ポリイソシアネート類の中で芳香族ポリイソシアネート類が好ましく、更には水酸基末端ポリジエン系重合体等との発泡性および反応性に優れるTDIが好ましい。
【0020】
分子内に2個以上のイソシアネート基を有するプレポリマーとしては、イソシアネート基の割合が 2.5 〜 5.0 NCO%からなるプレポリマーであれば使用できる。なお、NCO%は、プレポリマー中におけるNCO基としての重量%である。 2.5 〜 5.0 NCO%のプレポリマーは水酸基末端ポリジエン系重合体等と反応して弾力性に富んだウレタンを得ることができる。
プレポリマー類には重合させるモノマーの種類によりPPG系、PTMG系、エステル系、カプロラクトン系などに分類される。PPG系にはタケネートL−1170(三井化学ポリウレタン社製)、L−1158(三井化学ポリウレタン社製)があり、PTMG系にはコロネート4090(日本ポリウレタン社製)がある。また、エステル系としてはコロネート4047(日本ポリウレタン社製)などがあり、カプロラクトン系にはタケネートL-1350(三井化学ポリウレタン社製)、タケネートL-1680(三井化学ポリウレタン社製)、サイアナプレン7−QM(三井化学ポリウレタン社製)、プラクセルEP1130(ダイセル化学工業社製)などを挙げることができる。
上記プレポリマーは、目的に応じて2種類以上を混合して用いることができる。
【0021】
末端水酸基を有する水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体とイソシアネート基を有するイソシアネート化合物との配合割合は、水酸基(−OH)とイソシアネート基(−NCO)との当量比で(OH/NCO)=1/( 1.0 〜 2.0 )の範囲が好ましく、特に優れた発泡性および弾力性を考慮すると、(OH/NCO)=1/( 1.1 〜 1.9 )の範囲が好ましい。(OH/NCO)が 1/ 1.0 より大きいときには架橋するイソシアネート基が不足するため硬化が十分でなくなる。また、(OH/NCO)が 1/2.0 より小さい場合にはイソシアネート基が過剰なため架橋密度が大きくなり、ゴム弾性が小さくなり、変形を許容できないなどの問題を生じることがある。
【0022】
本発明の自在継手に用いる発泡固形潤滑剤を発泡させる発泡剤としては、原料にイソシアネート化合物を用いることから、イソシアネート化合物と反応して二酸化炭素ガスを発生させる水を用いることが好ましい。
【0023】
また、このような反応を伴う発泡を用いる場合には必要に応じて触媒を使用することが好ましく、例えば、3級アミン系触媒や有機金属触媒などを用いることができる。使用する3級アミン系触媒としてはモノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類などが挙げられる。また、有機金属触媒としてはスタナオクタエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマレエート、ジオクチルチンジメルカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレートなどが挙げられる。また、反応のバランスを整えるなどの目的でこれら複数種類を混合して用いてもよい。
【0024】
本発明に使用できる潤滑成分は、発泡体を形成する固形成分を溶解しないものであれば使用することができる。潤滑成分としては、炭化水素系潤滑油、炭化水素系グリース、または炭化水素系潤滑油と炭化水素系グリースとの混合物が挙げられる。
炭化水素系潤滑油としては、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、炭化水素系合成油、GTL基油等が挙げられる。これらは単独でも混合油としても使用できる。
炭化水素系グリースは炭化水素油を基油して増ちょう剤を加えたものであり、基油としては上述の炭化水素系潤滑油を挙げることができる。増ちょう剤としては、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、カルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。
ジウレア化合物は、例えばジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、へキサンジイソシアネート等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、へキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等が挙げられる。
【0025】
上記潤滑成分には、炭化水素系合成ワックス、ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル系ワックス、高級脂肪酸アミド系ワックス、ケトン・アミン類、水素硬化油などを混合して使用することができる。これらのワックスに油を混合してもよく使用する油成分としては上述の潤滑油と同様のものを用いることができる。
【0026】
本発明の自在継手に封入する発泡固形潤滑剤は、上記潤滑成分と、液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させて得られる。
上記潤滑成分の配合割合は、混合物全体に対して、 40 重量%〜80 重量%である。潤滑成分が 40 重量%未満であると、潤滑油などの供給量が少なく発泡固形潤滑剤としての機能を発揮できず、80 重量%より多いときには固化しなくなる。
上記液状ゴムの配合割合は、混合物全体に対して、 5 重量%〜45 重量%、好ましくは 9 重量%〜42 重量%である。5 重量%より少ないときは固化しないため発泡固形潤滑剤としての機能を持たず、45 重量%より多いときには潤滑剤の供給が少なく、発泡固形潤滑剤としての機能を持たない。
【0027】
上記硬化剤の配合割合は、液状ゴムの配合量と発泡倍率により、上記発泡剤の配合割合は、後述する発泡倍率との関係でそれぞれ定まる。すなわち、硬化剤量は液状ゴムの水酸基当量と二酸化炭素の発生量との関係で定まる。
【0028】
本発明の自在継手に用いる発泡固形潤滑剤の発泡倍率は 1.1 倍〜 50 倍であることが好ましく、より好ましくは 1.1 倍〜10 倍である。発泡倍率 1.1 倍未満の場合は気泡体積が小さく、外部応力が加わったときに変形を許容できない。また、発泡倍率が 50 倍をこえる場合は外部応力に耐える強度を得ることが困難となる。
【0029】
本発明において発泡固形潤滑剤には必要に応じて顔料や帯電防止剤、難燃剤、防黴剤やフィラーなどの各種添加剤等を添加することができる。
さらに二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、有機モリブデン等の摩擦調整剤、アミン、脂肪酸、油脂類等の油性剤、アミン系、フェノール系などの酸化防止剤、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、ソルビタンエステルなどの錆止め剤、イオウ系、イオウ−リン系などの極圧剤、有機亜鉛、リン系などの摩耗防止剤、ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0030】
本発明において潤滑油などの潤滑成分存在下で発泡反応と硬化反応とを同時に行なう反応型含浸法を用いることが、潤滑成分の高充填化と材料物性の高伸化を同時に両立させるためには望ましい。これは発泡体形成段階において発泡体に形成された気泡に潤滑剤が均一に含浸されるとともに、潤滑成分が発泡・硬化した固形成分内に吸蔵されることにより潤滑剤の高充填化と材料物性の高伸化が両立するものと考えられる。
これに対してあらかじめ発泡体を製造しておき、これに潤滑剤を含浸させる後含浸法では潤滑剤保持力が十分でなく、短時間で潤滑剤が放出され長期的に使用すると潤滑剤が供給不足となる。
【0031】
本発明において分子内に水酸基を有する液状ゴムを発泡により多孔質化する際に生成させる気泡は気泡が連通している連続気泡であることが好ましい。これは、外部応力によって潤滑成分を樹脂の表面から連続気泡を介して外部に直接供給するためである。気泡間が連通していない独立気泡の場合は固形成分中の潤滑油の全量が一時的に独立気泡中に隔離され気泡間での移動が困難となり、必要なときに外部に十分供給されない場合がある。
【0032】
本発明の発泡固形潤滑剤封入自在継手は、トルク伝達部材としての転動体の周囲に、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を充填した後、発泡・硬化させることにより得られる。
【0033】
本発明の発泡固形潤滑剤封入自在継手を等速ジョイントに利用した例としては、ボールフィクストジョイント(以下、BJと記す)の他、アンダーカットフリージョイント(以下、UJと記す)などが挙げられる。このようなBJやUJのボール数は6個または8個の場合がある。
BJやUJに発泡固形潤滑剤を封入した場合、潤滑剤が必要な部位のみに充填されることになるため、低コスト化・軽量化に寄与できると共に、使用される作動角が大きいことから圧縮・屈曲を受けやすく、摺動部へ潤滑剤が供給されやすい。
また、摺動式等速ジョイントに利用した例としては、ダブルオフセットジョイント(以下、DOJと記す)、トリポードジョイント(以下、TJと記す)、クロスグルーブジョイントなどが挙げられる。DOJのボール数は6個または8個の場合がある。
また、不等速ジョイントとしては、クロスジョイントなどが挙げられる。
【0034】
本発明の発泡固形潤滑剤封入自在継手を図1〜図3に基づいて説明する。図1はBJの一部切欠断面図を、図2はDOJの一部切欠断面図を、図3はTJの一部切欠断面図を、それぞれ示す。
図1に示すように、BJ1は外方部材2としての外輪の内面および球形の内方部材3としての内輪の外面に軸方向の六本のトラック溝4、5を等角度に形成し、そのトラック溝4、5間に組み込んだボール6をケージ7で支持し、このケージ7の外周を球面7aとし、かつ内周を内方部材3の外周に適合する球面7bとしている。
また、外方部材2の外周とシャフト8の外周とをブーツ9で覆い、外方部材2と、球形の内方部材3と、トラック溝4、5と、ボール6と、ケージ7と、シャフト8とに囲まれた空間に発泡固形潤滑剤10が封入されている。
【0035】
図2に示すように、DOJ11は外方部材12の内面および球形の内方部材13の外面に軸方向の六本のトラック溝14、15を等角度に形成し、そのトラック溝14、15間に組み込んだボール16をケージ17で支持し、このケージ17の外周を球面17aとし、かつ内周を内方部材13の外周に適合する球面17bとし、各球面17a、17bの中心(イ)、(ロ)を外方部材12の軸心上において軸方向に位置をずらしてある。
また、外方部材12の外周とシャフト18の外周とをブーツ19で覆い、外方部材12と、球形の内方部材13と、トラック溝14、15と、ボール16と、ケージ17と、シャフト18とに囲まれた空間に発泡固形潤滑剤20が封入されている。
【0036】
図3に示すように、TJ21は外方部材22の内面に軸方向の三本の円筒形トラック溝23を等角度に形成し、外方部材22の内側に組み込んだトリポード部材24には三本の脚軸25を設け、各脚軸25の外側に球面ローラ26を嵌合し、その球面ローラ26と脚軸25との間にニードル27を組み込んで球面ローラ26を回転可能に、かつ軸方向にスライド可能に支持し、その球面ローラ26を上記トラック溝23に嵌合してある。
また、外方部材22の外周とシャフト28の外周とをブーツ29で覆い、外方部材22と、トラック溝23と、トリポード部材24と、シャフト28とに囲まれた空間に発泡固形潤滑剤30が封入されている。
【0037】
このようなTJやDOJについては、軸方向に摺動しろが必要なため、グリースなどの既存の潤滑剤を用いた場合は上述したBJなどの固定式ジョイントよりも封入空間容積が多くなる。
しかしながら発泡固形潤滑剤(図1の10、図2の20、図3の30)は、必要な部位にのみ充填が可能であるため、DOJやTJに発泡固形潤滑剤を封入する場合に低コスト化と軽量化への寄与度がより大きくなる。
【0038】
本発明の発泡固形潤滑剤封入自在継手の製造方法は、上記自在継手の製造方法であって、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む各成分を混合して混合物を得る混合工程と、上記混合物の発泡・硬化が完了する前に、上記混合物をトルク伝達部材の周囲に充填する充填工程と、上記充填された上記混合物を発泡・硬化させ固形物を得る発泡・硬化工程とを備える。
本発明の自在継手は、上記各種自在継手のトルク伝達部材周りのみ組み立てたサブアッシーの所定空間に少なくとも分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、潤滑成分と、発泡剤との混合物を充填し、発泡・硬化させた後、ブーツ等の部材を組み付けることで得られる。混合物を自在継手サブアッシーに充填し発泡・硬化させるだけであるので、形状が複雑な自在継手内の任意の部位にも容易に充填することが可能であり、得られる自在継手には既に潤滑剤が含浸されている。このため発泡成形体を得るための成形金型や潤滑剤の後含浸工程等も不要である。
【0039】
上記混合工程は、原料の各成分を混合して混合物を得る工程である。潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を混合する方法は、特に限定されることなく、例えばヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ジューサーミキサー、ミキシングヘッド等、一般に用いられる撹拌機を使用して混合することができる。
混合物は、市販のシリコーン系整泡剤などの界面活性剤を使用し、各原料分子を均一に分散させておくことが望ましい。また、この整泡剤の種類によって表面張力を制御し、生じる気泡の種類を連続気泡または独立気泡に制御することが可能となる。このような界面活性剤としては陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0040】
上記充填工程は、混合物が発泡・硬化する前にこの混合物を自在継手サブアッシーの任意の部位に充填する工程である。発泡・硬化する前の混合物は流動性があるので形状が複雑な自在継手内の任意の部位にも容易に充填することが可能である。なお、混合物を充填する際は、必要に応じて自在継手サブアッシー内の所定空間の側面に金具等の治具で蓋をすることにより、所定の形状に成形することができる。
【0041】
上記発泡・硬化工程は、充填された混合物を自在継手サブアッシー内で発泡・硬化させる工程である。
樹脂成分を発泡させる手段としては上述の発泡手段を採用することができる。本発明においては原料として反応性の高いイソシアネート基を持つ化合物を使用して、イソシアネート化合物と水分子との化学反応によって生じる二酸化炭素による化学的発泡を用いている。また、このような反応を伴う発泡を用いる場合には必要に応じて上述の触媒を使用することが好ましい。また、発泡により得られる気泡は上述の連続気泡であることが好ましい。
【0042】
また上記製造方法において、混合物を自在継手サブアッシーに充填する以外の方法として、成形用金型内に充填後、発泡・硬化させて成形した発泡固形潤滑剤を自在継手に組み込む方法がある。
また成形用金型を用いずに常圧で混合物を発泡・硬化させる方法もあるが、この場合は発泡・硬化物を裁断や研削等で目的の形状に後加工して、自在継手に組み込む必要がある。なお後加工の場合は、加工時に潤滑剤が漏出する場合があるので、この場合は後含浸して所定量の潤滑剤を確保する必要がある。
これらの方法は成形用金型等の治具を必要としたり、研削や後含浸、組み込み等の後加工が必要となる。また、硬化した発泡体に潤滑剤を後含浸して追加しても、潤滑剤保持性が低いことや、自在継手に組み込むためのハンドリング時に発泡体から潤滑剤が漏出しやすい等の不具合が生じやすい。
以上のことから本発明においては、品質面、作業面、コスト面で混合物を自在継手サブアッシーに充填して発泡・硬化させる方法を採用することが好ましい。
【0043】
また、本発明の自在継手では、発泡固形潤滑剤を自在継手内部の所定空間に封入するので、トラック溝や摺動面近くに潤滑成分が存在する。よって、グリース潤滑に比較してより潤滑成分がトラック溝や摺動面に供給されやすいという利点もある。また、外部からの塵や水分等の侵入に対してはシールの役割をも果たす。
【実施例】
【0044】
以下に本発明の実施例を挙げ、本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
実施例および比較例に用いた潤滑成分、液状ゴム、硬化剤、発泡剤、触媒を以下に示す。なお、( )内は表中での略号を表す。
潤滑成分
潤滑油(潤滑油):タービン100(新日本石油社製)
潤滑グリース(グリース):NTG2218M(協同油脂社製)
液状ゴム
水酸基末端ポリブタジエン(PBOH1):Poly-bd R45HT(水酸基価:46.6mgKOH/g、数平均分子量:2,800、出光興産社製)
水酸基末端ポリブタジエン(PBOH2):Poly-bd R15HT(水酸基価:102.7mgKOH/g 、数平均分子量:1,200、出光興産社製)
水酸基末端ポリイソプレン(PipOH):Poly-ip(水酸基価:46.6mgKOH/g 、数平均分子量:2,500、出光興産社製)
水添水酸基末端ポリイソプレン(HPipOH):エポール(水酸基価:50.5mgKOH/g 、数平均分子量:2,500、出光興産社製)
硬化剤
イソシアネート化合物(TDI):コロネートT−80(日本ポリウレタン社製)
エラストマ1(UE1):コロネート4090(4.4NCO% 日本ポリウレタン社製)
エラストマ2(UE2):プラクセルEP1130(3.3NCO% ダイセル化学工業社製)
発泡剤(発泡剤) イオン交換水
整泡剤(整泡剤) SRX298(東レダウ社製)
触媒(触媒) DM70(東ソー社製)
【0045】
実施例1〜実施例12
硬化剤(イソシアネート)を除く配合材料を表1および表2に示す配合割合でよく混合し、最後に硬化剤を加えて素早く混合した混合物 18.0 g を、外方部材2、内方部材3、ケージ7およびトルク伝達部材6を組み付けた図1に示す固定式8個ボールジョイントサブアッシー(NTN株式会社製、EBJ82 外径サイズ 72.6 mm )に充填した。数秒後に発泡反応が始まり、常温で数時間放置し硬化させた後、ブーツ、シャフトなど他の部材を組み付け、試験用等速ジョイントを得た。この試験用等速ジョイントを用いて、以下に示す等速ジョイント回転試験を行ない、潤滑剤重量変化率を測定した。結果を表1および表2に併記する。
【0046】
実施例13〜実施例15
発泡剤および触媒を除く配合材料を表2に示す配合割合で 80℃でよく混合し、最後に触媒および発泡剤を加えて素早く混合した混合物 18.0 g を、外方部材2、内方部材3、ケージ7およびトルク伝達部材6を組み付けた図1に示す固定式8個ボールジョイントサブアッシー(NTN株式会社製、EBJ82 外径サイズ 72.6 mm )に充填した。数秒後に発泡反応が始まり、100℃で 15分間放置し硬化させた後、ブーツ、シャフトなど他の部材を組み付け、試験用等速ジョイントを得た。この試験用等速ジョイントを用いて、以下に示す等速ジョイント回転試験を行ない、潤滑剤重量変化率を測定した。結果を表2に併記する。
【0047】
<等速ジョイント回転試験>
得られた試験用等速ジョイントを、回転数 1000 rpm、角度 10 deg、運転時間 5 時間の条件で回転試験を行なった。試験前後の発泡固形潤滑剤の重量を測定し、以下の式により発泡固形潤滑剤重量変化率として算出した。
潤滑剤重量変化率(%)= 100×(試験前潤滑剤重量 − 試験後潤滑剤重量)/試験前潤滑剤重量
算出した重量変化率(%)が小さいほど油放出量が少なく、潤滑剤保持力が大きいといえる。本発明においては重量変化率が 5 %以上、40 %以下のものを潤滑剤保持力に優れる潤滑剤であるとして「○」を、それ以外の結果を「×」とした。結果を表1および表2に併記する。
【0048】
比較例1〜比較例4
上述の実施例1〜12と同様に、表3に示す配合割合でよく混合し、硬化剤を加えて混合した混合物 18.0 gを、固定式8個ボールジョイントサブアッシー(NTN株式会社製、EBJ82 外径サイズ 72.6 mm )に充填した。比較例1では油と樹脂が分離し、うまく硬化できなかった。また、比較例2および比較例3では硬化せず、液状のままであった。比較例4では、実施例1と同様の条件で、等速ジョイント回転試験を行ったが、潤滑油の放出がほとんどなく、潤滑剤としての効能を発揮しなかった。結果を表3に併記する。
【0049】
比較例5
固定式8個ボールジョイントサブアッシー(NTN株式会社製、EBJ82 外径サイズ 72.6 mm )に2液性ポリウレタン軟質フォーム(日本ポリウレタン社製、NEF−337・CEF−268)を封入し発泡させた後に、表3の配合となるように潤滑油を後含浸させた。実施例1と同様の条件で、等速ジョイント回転試験を行ったが、潤滑成分の過剰放出が起こり、固形潤滑剤としての効果を発揮しなかった。結果を表3に併記する。
【0050】
【表1】

【表2】

【表3】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の発泡固形潤滑剤封入自在継手は、発泡固形潤滑剤中に含浸された状態で含まれる潤滑成分が、外力による発泡体の変形によっても急激に滲み出すことがなく、潤滑成分を効率よく摺動面に滲み出させて用いることができる。その結果、該自在継手は潤滑成分量が必要最小限でよく、しかも長寿命である。このため、耐熱、耐久性に優れる発泡固形潤滑剤封入自在継手として、撚線機、電動機器、印刷機、自動車部品、電装補機、建設機械等の各種産業用機械に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例に係る等速ジョイントの断面図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る等速ジョイントの断面図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る等速ジョイントの断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1、11、21 等速ジョイント
2、12、22 外方部材
3、13、 内方部材
4、5、14、15、23 トラック溝
6、16、 トルク伝達部材(ボール)
7、17、 ケージ
7a、17a 球面
7b、17b 球面
8、18、28 シャフト
9、19、29 ブーツ
10、20、30 発泡固形潤滑剤
24 トリポード部材
25 脚軸
26 トルク伝達部材(球面ローラ)
27 ニードル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方部材および内方部材に設けられたトラック溝とトルク伝達部材との係り合いによって回転トルクが伝達され、前記トルク伝達部材が前記トラック溝に沿って転動することによって軸方向移動がなされ、継手内部に発泡固形潤滑剤が封入されてなる発泡固形潤滑剤封入自在継手であって、
前記発泡固形潤滑剤は、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させてなり、
前記潤滑成分は炭化水素系潤滑油および炭化水素系グリースから選ばれた少なくとも1つの潤滑成分であり、
前記液状ゴムは高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が 25 〜 110 mgKOH/g となる量の水酸基を有する液状ゴムであり、
前記硬化剤は分子内にイソシアネート基を有する有機化合物であり、
前記発泡剤が水であり、
前記液状ゴムと前記硬化剤との割合は、前記液状ゴムに含まれる水酸基と前記硬化剤に含まれるイソシアネート基とが当量比で(OH/NCO)=1/( 1.0 〜 2.0 )の範囲であり、
前記混合物は、混合物全体に対して、前記潤滑成分を 40 〜80 重量%、前記液状ゴムを 5 〜45 重量%含むことを特徴とする発泡固形潤滑剤封入自在継手。
【請求項2】
前記液状ゴムがブタジエンもしくはイソプレンの重合体の主鎖末端に水酸基を有する数平均分子量 1000〜3500 の水酸基末端ジエン系重合体、または該ジエン系重合体を水添処理した変性水酸基末端ジエン系重合体であることを特徴とする請求項1記載の発泡固形潤滑剤封入自在継手。
【請求項3】
前記分子内にイソシアネート基を持つ有機化合物は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、イソシアネート基の割合が 2.5 〜 5.0 NCO%からなるプレポリマーであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発泡固形潤滑剤封入自在継手。
【請求項4】
前記分子内にイソシアネート基を持つ有機化合物は、芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発泡固形潤滑剤封入自在継手。
【請求項5】
前記芳香族ポリイソシアネートがトリレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項4記載の発泡固形潤滑剤封入自在継手。
【請求項6】
前記混合物は、発泡・硬化が完了する前に前記トルク伝達部材の周囲に充填されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の発泡固形潤滑剤封入自在継手。
【請求項7】
前記発泡固形潤滑剤封入自在継手は、等速自在継手であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の発泡固形潤滑剤封入自在継手。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の自在継手の製造方法であって、
前記製造方法は、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む成分を混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物の発泡・硬化が完了する前に、前記混合物をトルク伝達部材の周囲に充填する充填工程と、
前記充填された前記混合物を発泡・硬化させる発泡・硬化工程とを備えることを特徴とする自在継手の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−298111(P2008−298111A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142668(P2007−142668)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】