説明

発泡床材、及び発泡床材の製造方法

【課題】 本発明は、鮮明で且つ比較的深いエンボス凹部を有し、クッション性及び耐久性に優れた発泡床材を提供することを課題とする。
【解決手段】 基材層2と前記基材層2の表面に発泡樹脂層3とを有し、前記発泡樹脂層3の表面に、発泡印刷層5が設けられており、前記発泡印刷層5の表面からメカニカルエンボス加工を施して前記発泡印刷層5の表面部を溶融させることにより、前記発泡印刷層5の表面にスキン層6が形成されている発泡床材1。好ましい態様では、前記発泡印刷層5は前記発泡樹脂層3よりも低倍率で発泡されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にエンボス凹部が形成された発泡層を有する発泡床材、及び該発泡床材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クッション性、断熱性に優れた床材として、発泡樹脂層を有する発泡床材が公知である。
この種の発泡床材は、一般に、基材層と、該基材層の上に設けられた発泡樹脂層と、該発泡樹脂層の表面に印刷された意匠印刷層と、該意匠印刷層の表面に設けられた表面保護層と、を有し、この表面保護層の表面からメカニカルエンボス加工を施すことにより、凹凸模様が付与されている。
かかる発泡床材は、基材層と表面保護層の間に発泡樹脂層が設けられているので、メカニカルエンボス加工を施す際に、発泡樹脂層内の空気が逃げず、表面保護層の一部が複数箇所で破裂する場合がある。特に、断熱性を向上させるため、発泡層の厚みを厚くしたり或いはエンボスの深さを深くすると、より破裂し易くなる。
この点、上記表面保護層を設けなければ、上記破裂を防止できる。しかしながら、上記発泡床材において表面保護層が設けられていないと、足裏の摩擦によって意匠印刷が擦り取られ、短期間のうちに意匠的価値がない床材となってしまう上、摩耗によって発泡層の持つクッション性、断熱性が損なわれる。
【0003】
また、特許文献1には、発泡層を有するクッションフロアの製法において、クッションフロア用積層体中の層構成材の少なくとも1つの発泡層が未発泡の段階において、前記積層体にエンボス加工を行い、そのエンボス表面全体に平滑な合成樹脂表面層を形成した後、前記未発泡層の発泡を行う盛り上り模様を有するクッションフロアの製法が開示されている。
この製法によって得られたクッションフロアは、発泡層が未発泡の段階においてエンボス加工を施すので、上記破裂を防止することができる。
【特許文献1】特開平10−169174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のクッションフロアは、エンボス加工を施した後、発泡層を発泡させるため、エンボス加工によって比較的深い凹部を形成しても、発泡層の発泡によって押し戻され、凹部が浅くなったり、或いは、凹凸が不鮮明になり易いという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、鮮明で且つ比較的深いエンボス凹部を有し、クッション性及び耐久性に優れた発泡床材を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記発泡床材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発泡床材は、基材層と前記基材層の表面に発泡樹脂層とを有し、前記発泡樹脂層の表面に、発泡印刷層が設けられており、前記発泡印刷層の表面からメカニカルエンボス加工を施して前記発泡印刷層の表面部を溶融させることにより、前記発泡印刷層の表面にスキン層が形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記発泡床材は、発泡樹脂層の表面に発泡印刷層が設けられているので、発泡層が比較的厚く形成されている。このため、上記発泡床材は、クッション性に優れ、更に、防音効果及び断熱効果にも優れている。
また、上記発泡床材は、発泡樹脂層及び発泡印刷層を発泡させた状態で、発泡印刷層の表面からメカニカルエンボス加工を施すので、明瞭な輪郭で且つ比較的深いエンボス凹部が形成される。
また、メカニカルエンボス加工時、発泡印刷層内の気泡中の空気は発泡印刷層の表面から逃げるので、発泡印刷層の一部が破裂することも防止できる。
さらに、上記発泡床材は、発泡印刷層の表面にスキン層が形成されているので、該スキン層が表面保護層として機能する。このため、発泡印刷層の内部に砂などが入り込むことを抑制できる。従って、上記発泡床材は、足裏の摩擦によって発泡印刷層の摩耗や破損を抑制でき、耐久性に優れている。
また、発泡印刷層は、厚み方向において着色されているので、発泡印刷層の表面が仮に磨耗しても、発泡床材の意匠が損なわれない。
さらに、発泡印刷層5の表面に存する微細な凹凸に起因して、スキン層6の表面は、微細な凹凸を有する。該微細な凹凸を有するスキン層6の表面は、空気を含み、触った時に特有の温かさを感じさせるとともに、繊維質のような触感も有する。
また、上記発泡床材は、発泡印刷層の上に表面保護層を形成しなくてもよいので、外観上(発泡印刷層の表面側を見た場合)質感があり、意匠的にも好ましい。
【0008】
本発明の好ましい発泡床材は、前記発泡印刷層が前記発泡樹脂層よりも低倍率で発泡されている。
このように発泡印刷層が発泡樹脂層よりも低倍率で発泡されていると、発泡印刷層の表面からメカニカルエンボス加工を施した場合、より明瞭な輪郭で且つ深いエンボス凹部が形成され得る。
また、床材である以上、長期間の使用によって上記スキン層が摩耗し、これに伴い発泡印刷層も摩耗するが、発泡印刷層が、発泡樹脂層よりも低倍率で発泡されていると、足裏の摩擦によって比較的摩耗し難く、この点においても、上記発泡床材は耐久性に優れている。
【0009】
本発明の好ましい発泡床材は、前記メカニカルエンボス加工により、深さ0.3mm〜1.5mmのエンボス凹部が形成されている。該エンボス凹部は、好ましくは深さ0.5mm〜1.0mmである。
かかる深さのエンボス凹部が形成された発泡床材は、表面における凹凸差が大きく、恰も表面に繊維が積層されているような外観及び触感を醸し出すことができるので好ましい。
また、エンボス凹部は、空気を保持して床材の断熱性を高める効果があるので、上記のように比較的深いエンボス凹部が形成されていることが好ましい。
さらに、上記発泡床材は、発泡樹脂層上に発泡印刷層を設けることによって、発泡層全体の厚みが厚くなっている。一般に、発泡層が厚くなるとクッション性は向上するが、発泡層の沈み込みには限界があるので、ある程度の厚みを越えると、クッション性の向上を望めない。この点、上記のように比較的深いエンボス凹部が形成されていることにより、エンボス凹部の間における発泡層部分(すなわち、エンボス凸部における発泡層部分)が容易に変形するので、発泡層の厚みに比例して床材のクッション性を向上させることができる。
【0010】
本発明の好ましい発泡床材は、前記基材層が、前記発泡樹脂層及び発泡印刷層の発泡温度において熱収縮しうる、熱収縮性シートを含んでいる。
かかる熱収縮性シートを有する発泡床材は、上反りを生じ難いので好ましい。具体的には、発泡樹脂層及び発泡印刷層は発泡時に収縮するので、発泡床材の側縁部が上方向に反り上がり易い(上反りが生じ易い)。この点、発泡樹脂層の裏面側に位置する基材層が上記熱収縮性シートを含んでいるので、発泡樹脂層及び発泡印刷層を発泡温度に加熱して発泡させた際、熱収縮性シートが収縮し、発泡樹脂層及び発泡印刷層の収縮による上反りを規制できる。
【0011】
本発明の他の手段は、発泡床材の製造方法を提供する。
該本発明の発泡床材の製造方法は、基材層の上に、発泡性樹脂組成物を積層する工程、前記発泡性樹脂組成物の上に、所望のデザインが印刷によって表された発泡性層を積層する工程、前記発泡性樹脂組成物及び前記発泡性層を加熱して両者を発泡させることにより、基材層の上に発泡樹脂層及び発泡印刷層を形成する工程、前記発泡印刷層の表面部を加熱しつつ、前記発泡印刷層の表面からエンボスロールを押圧する工程、を有することを特徴とする。
【0012】
上記発泡床材の製造方法によれば、発泡性樹脂組成物の上にデザイン印刷された発泡性層を積層した後、両者を同時に発泡させるので、形成された発泡樹脂層内の気泡及び発泡印刷層内の気泡が連続する。このため、その後の工程において、発泡印刷層の表面にエンボスロールを押圧した際、発泡樹脂層及び発泡印刷層内の気泡中の空気は発泡印刷層の表面から逃げるので、発泡印刷層の一部が破裂することを防止でき、更に、明瞭な輪郭で且つ深いエンボス凹部を形成することができる。
また、発泡印刷層の表面部を加熱しつつ発泡印刷層の表面からエンボスロールを押圧するので、発泡印刷層の表面部が溶融する。このため、発泡印刷層の表面にスキン層が形成された上記発泡床材を簡易に製造できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発泡床材は、鮮明で且つ比較的深いエンボス凹部を有するので、意匠的に優れ、更に、クッション性及び耐久性にも優れている。さらに、本発明の発泡床材は、スキン層の表面が微細な凹凸を有するので、特有の温感と繊維質感を有する。
また、本発明の発泡床材の製造方法は、鮮明で且つ比較的深いエンボス凹部を有し、クッション性及び耐久性に優れた発泡床材を簡易に且つ確実に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳述する。
(発泡床材の第1実施形態)
図1は、本発明の発泡床材の一実施形態の部分断面図である。なお、各図において、実際の寸法とは異なっていることに留意されたい。
【0015】
図1に於いて、1は、基材層2と、該基材層2の表面側に設けられた発泡樹脂層3と、該発泡樹脂層3の表面に設けられた発泡印刷層5と、を有する積層体からなる発泡床材を示す。
発泡印刷層5の表面には、スキン層6が形成されており、該スキン層6を含めて発泡印刷層5の表面には、エンボス凹部7が形成されている。
【0016】
基材層2は、発泡床材1の寸法安定性を付与し、下地に対する密着性を向上させる目的等で設けられる層である。
基材層2としては、例えば、織布や不織布などの布類;難燃紙などの紙類;合成樹脂シート;木質板、石膏ボードなどの無機質板、金属板などの板類;などが挙げられる。
織布や不織布などの布類の材質は、特に限定されず、セルロース系繊維、ポリエステル系繊維などの合成樹脂繊維;ガラス繊維などの無機繊維;ジュートなどの天然繊維などが挙げられる。
【0017】
基材層2は、1層でも良いし、複層でもよい。
好ましくは、図1に示すように、基材層2は複層で構成される。
好ましい基材層2は、第1基材21と第2基材22を有する。この第1基材21と第2基材22の間には、両者を接合するための接着層23が設けられている。
第1基材21及び第2基材22は、上記で例示した布類、紙類などを適宜選択して用いることができる。
【0018】
第1基材21としては、熱的安定性及び機械的安定性に優れ、柔軟性のある織布又は不織布を用いることが好ましい。例えば、第1基材21としては、ガラス繊維などの無機繊維、ポリエステル系繊維などの合成樹脂繊維などからなる不織布又は織布を用いることができる。かかる第1基材21は、主として発泡床材1の寸法安定性に寄与する。
【0019】
一方、第2基材22としては、熱収縮性シートを用いることが好ましい。該熱収縮性シートとは、発泡樹脂層3及び発泡印刷層5(本明細書において「発泡樹脂層及び発泡印刷層」を「発泡層」という場合がある)の発泡温度において、収縮しうるシートを言う。該熱収縮の方向性は、熱収縮性シートの面内の2軸方向(面内の一方向及び該一方向に対して面内で直交する方向)である。
該熱収縮性シートとしては、例えば、発泡層の発泡温度において熱収縮する合成繊維を用いた不織布又は織布、発泡層の発泡温度において熱収縮する合成樹脂シートなどを用いることができる。中でも、熱収縮性シートとしては、発泡層の発泡温度において熱収縮する合成繊維を用いた不織布が好ましい。かかる第2基材22は、発泡層を発泡させる際の熱によって、面内の中心側に向かって熱収縮する。該第2基材22の収縮力によって、発泡層が発泡時に収縮する収縮力を打ち消すことができ、発泡樹脂層3及び発泡印刷層5の上反りを規制できる。従って、製造時及び経時的にも反りが生じ難く、寸法安定性に優れた平坦状の発泡床材1を提供できる。
【0020】
上記接着層23は、第1基材21及び第2基材22を接合し、一体化できる接着剤としての機能を有していれば特に限定されず、例えば、公知の樹脂材料を用いることができる。
【0021】
なお、基材層2は、上記第1基材21及び第2基材22を有する複層構造に限定されず、様々に変更できる。例えば、上記第2基材22の裏面に、更に、バッキング層が設けられていてもよい(図示せず)。該バッキング層としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アクリル酢酸エチル共重合樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂、オレフィン系等の熱可塑性エラストマー、アクリロニトリル−ブタンジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタンジエンゴムなどのゴム系などのシート若しくは発泡シート又はこれらの積層シートなどを例示できる。
【0022】
発泡樹脂層3は、発泡剤を含有した軟質の合成樹脂を発泡させることによって形成されている。該合成樹脂としては、塩化ビニル系樹脂(PVC);エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などのエチレン共重合体;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;6,6ナイロンなどのポリアミド系樹脂などの樹脂(エラストマーを含む)の1種単独で、又は2種以上の混合物などを用いることができる。
中でも、発泡樹脂層3の樹脂成分としては、塩化ビニル系樹脂が好ましい。塩化ビニル系樹脂は、ペーストタイプでもよいし、サスペンションタイプでもよい。
【0023】
発泡樹脂層3の発泡剤としては、特に限定されず、アゾ化合物、ヒドラジド化合物、ニトロソ化合物などの化学発泡剤;炭酸ガス、ブタンガス、フロンガスなどのガス発泡剤;などを用いることができる。なお、化学発泡剤には、必要に応じて、酸化亜鉛などの発泡助剤を添加してもよい。
また、発泡樹脂層3には、樹脂の種類に応じて、各種添加剤を配合してもよい。該添加剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和酸化物などの難燃剤;炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカ等の充填材;ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、リン酸エステル系、塩素化パラフィン、トリメリット酸エステルなどの可塑剤;ステアリン酸カルシウム、無機塩、有機スズ化合物などの安定剤;滑剤;酸化防止剤;顔料などの着色剤;などが挙げられる。
【0024】
発泡樹脂層3の発泡倍率は、特に限定されないが、好ましくは2倍〜10倍であり、より好ましくは3倍〜6倍である。発泡樹脂層3の発泡倍率が余りに低いと、発泡床材1のクッション性が低下し、一方、発泡樹脂層3の発泡倍率が余りに高いと、キャスター走行性が悪く、荷重による凹みの復元性が悪くなるからである。
【0025】
また、発泡樹脂層3の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1.0mm〜6.0mmであり、より好ましくは2.0mm〜4.0mmである。発泡樹脂層3の厚みが余りに薄いと、発泡床材1のクッション性が低下し、更に、比較的深いエンボス凹部7の形成が困難となり、一方、発泡樹脂層3の厚みが余りに厚いと、キャスター走行性が悪くなるからである。
【0026】
発泡印刷層5は、所望のデザインが印刷された発泡性層を発泡させることによって形成されている。該発泡印刷層5は、発泡樹脂層3の表面に直接積層されている。
該発泡印刷層5は、印刷によって塗工可能な印刷適正を有する発泡インキなどを用いて形成できる。また、発泡印刷層5は、該印刷層の厚み方向全体に亘って着色されているので、発泡印刷層5の表面が仮に磨耗しても、発泡床材1の意匠が損なわれない。
該発泡インキは、顔料などの着色剤及び発泡剤を含有し、且つ樹脂成分として熱可塑性樹脂が用いられていれば、特に限定されない。発泡インキとしては、例えば、ペーストタイプ又はサスペンションタイプの塩化ビニル系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、エチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系エマルジョンなどの水性エマルジョン樹脂などが挙げられる。
発泡樹脂層3の樹脂成分として塩化ビニル系樹脂が用いられる場合には、発泡印刷層5としては、塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。発泡樹脂層3と発泡印刷層5の界面を強固に接合させることができ、更に、両者を同時に加熱して固化及び発泡させることができるからである。
【0027】
上記発泡印刷層5の発泡剤としては、上記発泡樹脂層3で例示した発泡剤を適宜選択して用いることができる。
また、発泡印刷層5の着色剤は、発泡床材1の表面に表すデザインを考慮して、適宜な色彩の着色剤が選択される。
なお、発泡インキには、上記発泡樹脂層3で例示した各種添加剤が配合されていてもよい。
【0028】
上記発泡印刷層5は、一層で構成されていてもよいし、多層で構成されていてもよい。多色模様のデザインを表す際には、発泡印刷層5は、異なる色彩の多層塗りで構成される。
【0029】
発泡印刷層5の発泡倍率は、特に限定されないが、発泡樹脂層3よりも低倍率とされていることが好ましい。
このように発泡印刷層5を低倍率で発泡させることにより、発泡印刷層5が足裏の摩擦によって比較的摩耗し難くなる。また、発泡印刷層5を低倍率で発泡させることにより、この表面に明瞭な輪郭のエンボス凹部7(シャープなエンボス凹部)を形成でき、更に、比較的深いエンボス凹部7を形成できる。
具体的には、発泡印刷層5の発泡倍率は、好ましくは1.2倍〜3.0倍であり、より好ましくは1.8倍〜2.5倍である。発泡印刷層5の発泡倍率が余りに低いと、実質的に無発泡状態と変わりがなく、一方、発泡印刷層5の発泡倍率が余りに高いと、摩耗し易くなる上、良好なエンボス凹部7の形成が困難となるからである。
【0030】
また、発泡印刷層5の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.3mm〜1.5mmであり、より好ましくは0.5mm〜1.5mmである。発泡印刷層5の厚みが余りに薄いと、明瞭な輪郭のエンボス凹部7が形成され難く、一方、発泡印刷層5の厚みが余りに厚いと、相対的に発泡樹脂層3の厚みを薄くする必要があり、そのためクッション性が低下するからである。
【0031】
スキン層6は、発泡印刷層5の表面に形成された薄層である。該スキン層6は、発泡印刷層5の表面にメカニカルエンボス加工を施した際、該発泡印刷層5の表面部における熱可塑性樹脂が溶融し、その後、これが硬化することによって形成された層である。
該スキン層6は、発泡印刷層5の表面を保護する表面保護層として機能する。発泡床材1の表面は、足裏で踏まれため、摩擦や砂付着などに曝されるが、上記スキン層6が設けられていることにより、発泡印刷層5の摩耗や、発泡印刷層5の内部に砂などが入り込むことを抑制できる。
さらに、発泡印刷層5の表面に存する微細な凹凸に起因して、スキン層6の表面は、微細な凹凸を有する。該微細な凹凸を有するスキン層6の表面は、空気を含み、触った時に特有の温かさを感じさせるとともに、繊維質のような触感も有する。
【0032】
スキン層6の厚みは、10μm〜50μm程度に形成されることが好ましい。スキン層6の厚みが余りに薄いと、表面保護層として実質的に機能せず、一方、スキン層6の厚みが余りに厚いと、発泡床材1の触感が硬くなるからである。
【0033】
上記発泡床材1は、発泡樹脂層3及び発泡印刷層5が設けられているので、クッション性に優れ、更に、防音効果及び断熱効果にも優れている。
また、上記発泡床材1は、発泡樹脂層3及び発泡印刷層5を発泡させた状態で、発泡印刷層5の表面からメカニカルエンボス加工を施すので、明瞭な輪郭で且つ比較的深いエンボス凹部7が形成される。
このように比較的深いエンボス凹部7が形成された発泡床材1は、表面における凹凸差が大きく、恰も表面に繊維が積層されているような外観及び触感を有する。また、エンボスの凹部7は、空気を保持して発泡床材1の表面における温かさを向上させる効果がある。
さらに、上記発泡床材1は、発泡樹脂層3上に発泡印刷層5を設けることによって、発泡層全体の厚みが厚くなっている。一般に、発泡層が厚くなるとクッション性は向上するが、発泡層の沈み込みには限界があるので、発泡層がある程度の厚みを越えると、クッション性の向上を望めない。この点、上記のように比較的深いエンボス凹部7が形成されていることにより、エンボス凸部における発泡層部分が容易に変形するので、発泡層の厚みに比例して発泡床材1のクッション性を向上させることができる。
また、メカニカルエンボス加工時、発泡樹脂層3及び発泡印刷層5内の空気は発泡印刷層5の表面から逃げるので、発泡印刷層5の一部が破裂することも防止できる。
さらに、上記発泡床材1は、スキン層6が表面保護層として機能するため、発泡印刷層5の内部に砂などが入り込むことを抑制できる。よって、上記発泡床材1は、足裏の摩擦によって発泡印刷層5の摩耗や破損を抑制でき、耐久性に優れている。特に、発泡印刷層5は、発泡樹脂層3よりも低倍率で発泡されているため、足裏の摩擦によって比較的摩耗し難く、この点においても、上記発泡床材1は耐久性に優れている。
【0034】
(発泡床材の第2実施形態)
次に、発泡床材の第2実施形態を示す。ただし、第2実施形態の説明に於いて、主として上記第1実施形態と異なる構成及び効果について説明し、上記第1実施形態と同様の構成などについては、その説明を省略し、用語及び符号を援用することがある。
【0035】
本実施形態では、図2に示すように、発泡印刷層5の表面の一部分を覆うように、オーバーコート層8が設けられている。
このオーバーコート層8は、無発泡の樹脂層である。オーバーコート層8を形成する樹脂材料としては、特に限定されず、塩化ビニル系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などのエチレン共重合体;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;6,6ナイロンなどのポリアミド系樹脂などの樹脂(エラストマーを含む)の1種単独で、又は2種以上の混合物などを用いることができる。オーバーコート層8は、上記樹脂材料を含む塗工液を、発泡印刷層5の表面に公知の印刷法によって塗工することにより形成できる。
【0036】
上記オーバーコート層8は、(発泡印刷層5の表面にベタ状に設けられている層ではなく)発泡印刷層5の表面の一部分が露出するように、定形又は不定形の無数の孔部81を有する。
このような無数の孔部81を有するオーバーコート層8は、上記樹脂材料を含む塗工液を、発泡印刷層5の表面に島海状に塗工することにより形成できる。具体的には、オーバーコート層8は、平面視略格子模様、平面視略水玉模様、平面視略ストライプ模様などの定形模様のほか、無定形模様に形成してもよい。図3の(a)〜(d)に、オーバーコート層8の形成パターンを示す。なお、図3において、白抜き部分がオーバーコート層8の設けられた部分である。
オーバーコート層8の厚みは、特に限定されないが、好ましくは20μm〜150μmであり、より好ましくは40μm〜100μmである。オーバーコート層8の厚みが余りに薄いと、表面保護層として十分に機能せず、一方、オーバーコート層8の厚みが余りに厚いと、発泡床材1の触感が硬くなるからである。
【0037】
上記オーバーコート層8は、発泡印刷層5の表面保護層として機能するので、発泡印刷層5の摩耗などを抑制できる。
また、上記オーバーコート層8は、孔部81を有するので、該孔部81から発泡印刷層5の表面が露出する。このため、メカニカルエンボス加工を施す際、孔部81から露出した発泡印刷層5の表面から、その内部の空気が逃げるので、発泡印刷層5の一部が破裂することを防止できる。
なお、メカニカルエンボス加工時には、オーバーコート層8の孔部81から露出した発泡印刷層5の表面部が溶融し、該露出した発泡印刷層5の表面に上記スキン層6が形成される(図2参照)。このように、オーバーコート層8の孔部81に対応してスキン層6が形成されるので、この部分における発泡印刷層5の摩耗なども抑制できる。
また、孔部81に形成されたスキン層6も、上記第1実施形態と同様に、特有の温感や繊維質感を有する。また、オーバーコート層8は、孔部81よりも突出しているので、足裏などは先ずオーバーコート層8に接触する。このため、オーバーコート層8は、表面保護の機能を充分に果たすことができる。
【0038】
(発泡床材の製造方法)
上記発泡床材は、例えば、下記の方法に従って製造することができる。
一実施形態の製造方法では、下記各工程を有する。
工程1:基材層の上に、発泡性樹脂組成物を積層する工程。
工程2:前記発泡性樹脂組成物の上に、所望のデザインが印刷によって表された発泡性層を積層する工程。
工程3:前記発泡性樹脂組成物及び前記発泡性層を加熱して両者を発泡させることにより、基材層の上に発泡樹脂層及び発泡印刷層を形成する工程。
工程4:前記発泡印刷層の表面部を加熱しつつ、発泡樹脂層の表面からエンボスロールを押圧する工程。
【0039】
<工程1>
一つの実施形態においては、発泡床材1は、長尺状に形成される。なお、長尺状とは、一方向に於ける長さが他方向に比して十分に長い形状を言い、例えば、一方向に於ける長さが他方向に於ける長さの10倍以上である。
【0040】
図4は、長尺状の発泡床材の製造方法の各工程を表した参考図である。
まず、長尺基材29の上に、発泡樹脂層を形成する発泡性樹脂組成物39を塗工する。長尺基材29としては、例えば、長尺状のガラス繊維不織布と長尺状の熱収縮性不織布の積層体を用いることができる。発泡性樹脂組成物39としては、発泡剤を含有し、主成分として例えばペースト塩化ビニルなどを含む組成物を用いることができる。
上記発泡性樹脂組成物39は、コータ91などを用いて平滑化される。
次に、これをヒーター92などの加熱装置に通して、発泡性樹脂組成物39をプリゲル化し、発泡性樹脂組成物39を安定化させる。
【0041】
<工程2>
上記プリゲル化した発泡性樹脂組成物39の表面に、所望のデザインが印刷によって表された発泡性層を積層する。この発泡性層は、発泡後、発泡印刷層となる。
発泡性層59の形成材料としては、発泡剤を含有し、樹脂成分として例えばペースト塩化ビニルなどを含む発泡インキを用いることができる。
上記発泡性樹脂組成物39の表面に、発泡性層の形成材料を、グラビア印刷法、凸版輪転印刷法などの印刷法によって直接印刷することにより、上記発泡性樹脂組成物39の表面に、所望のデザインが印刷によって表された発泡性層を積層することができる。
また、予めロータリースクリーンなどを用いて、離型紙の上に上記形成材料を印刷することにより、所望のデザインの発泡性層が離型紙上に仮貼付された印刷シートを用いることもできる。
上記印刷シート59は、図4に示すように、供給ロール93で送出され、該印刷シート59から離型紙を剥離して発泡性層を引き出した後、該発泡性層が発泡性樹脂組成物39の表面に貼り合わされる。なお、剥離された離型紙は、回収ロール94に巻き取られる。
発泡性樹脂組成物39は、完全にゲル化していないため(プリゲル)、発泡性層を発泡性樹脂組成物39の表面に容易に接着させることができる。
このようにして、発泡性樹脂組成物39の表面に発泡性層が積層された床材長尺物11を得ることができる。
【0042】
<工程3>
前記床材長尺物11を、オーブン95などの加熱装置に通し、前記発泡性樹脂組成物及び発泡性層を完全にゲル化すると共に発泡させる。発泡性樹脂組成物及び発泡性層を加熱する際の温度(発泡温度)及び時間は、発泡剤及び樹脂の種類などに応じて適宜設定されるが、通常、160〜220℃程度であり、加熱時間は、2〜5分程度である。
このようにして発泡樹脂層及び発泡印刷層が積層された床材長尺物11を得ることができる。
【0043】
<工程4>
前記床材長尺物11の発泡印刷層の表面に、メカニカルエンボス加工を施すことによってエンボス凹部を形成する。メカニカルエンボス加工は、回転するエンボスロールの押圧又はエンボス板の押圧によって実施できる。一つの実施形態では、床材の形成に適していることから、エンボスロール96が用いられる。
エンボスロール96を押圧する際、発泡印刷層の表面部を加熱し、発泡印刷層の表面部に存する樹脂を僅かに溶融させる。
加熱されたエンボスロール96を用いて発泡印刷層の表面部を加熱してもよいし、或いは、エンボスロール96にて押圧する直前に、別途の加熱装置を用いて、発泡印刷層の表面部を加熱してもよい。
該加熱温度は、発泡印刷層の樹脂成分に応じて適宜設定されるが、通常、130〜180℃程度である。
【0044】
一つの実施形態では、エンボスロール96による押圧の直前に、発泡印刷層の表面がヒーターなどの加熱装置にて加熱される。
上記加熱温度に加熱されて僅かに溶融した発泡印刷層の表面部に、エンボスロール96を押圧することにより、発泡印刷層の表面にエンボス凹部が形成される。なお、エンボスロール96にて押圧した際、発泡印刷層の表面から内部の空気が瞬時に逃げるので、発泡印刷層の表面が破裂することはない。
冷却後(自然冷却又は冷却装置による冷却)、発泡印刷層の表面部が硬化して、スキン層が形成される。
上記のようにして得られた床材長尺物11は、通常、ロール97に巻き取られ、保管・搬送に供される。
【0045】
なお、上記第2実施形態の発泡床材1を製造する場合には、例えば、上記工程2と工程3の間に下記工程5を行えばよい。
【0046】
<工程5>
工程2で得られた床材長尺物11の発泡性層の上に、オーバーコート層の形成材料を塗工する。該形成材料は、無発泡材料であり、主成分として例えばペースト塩化ビニルなどを含む塗工液を用いることができる。
該形成材料は、公知の印刷法などによって、発泡性層の上に島海状に塗工される。
得られた床材長尺物11を、工程3に従って、オーブン95で加熱することにより、上記形成材料がゲル化し、発泡印刷層の上に、孔部を有するオーバーコート層が形成される。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例)
75g/mのガラスマット基材(オリベスト社製、商品名「MBC−075」)の上に、下記発泡性樹脂組成物Aを塗工し、ナイフコータで厚み0.8mmとなるように平均化した。
次に、ヒーターを用いて、下記発泡性樹脂組成物Aの表面を、160〜180℃で1分間加熱し、発泡性樹脂組成物Aをプリゲル化した。
【0049】
他方、ロータリースクリーンを用いて、離型紙の上に下記発泡インキBを印刷することにより、離型紙の上に発泡性層を形成した。なお、発泡インキBは、2度塗りし、全体として厚み0.3mmの発泡性層を形成した。
【0050】
上記発泡性層を離型紙から剥離し、これを上記プリゲル化させた発泡性樹脂組成物Aの上に貼り合わせた。
次に、上記基材、発泡性樹脂組成物及び発泡性層の積層体を、オーブンを用いて、180〜200℃で5分間加熱することにより、発泡性樹脂組成物A及び発泡性層を完全にゲル化させ且つ発泡させた。
これにより、発泡性樹脂組成物Aが約4倍に発泡し、発泡性層が約2倍に発泡し、ガラスマット基材上に発泡倍率4倍の発泡樹脂層が積層され、該発泡樹脂層の上に発泡倍率2倍の発泡印刷層が積層された発泡床材を得た。
この発泡床材の発泡印刷層の上を、ヒーターにて表面温度130〜140℃に加熱した直後、エンボスロール(このエンボスロールの表面温度は30〜40℃)を当て、メカニカルエンボス加工を行った。
得られた発泡床材の発泡印刷層の表面には、発泡に起因する微小な凹凸を有する薄い膜が形成されていた。
【0051】
(比較例)
上記実施例の発泡インキを、下記無発泡インキCに変えたこと以外は、上記実施例と同様にして、発泡床材を作製した。
【0052】
(発泡性樹脂組成物A)
PVC樹脂(ペーストレジン、平均重合度1100)…100質量部。
DOP…69質量部。
充填材…28質量部。
発泡剤…3質量部。
安定剤…1質量部。
その他…9質量部。
(発泡インキB)
PVC樹脂(ペーストレジン、平均重合度1000)…100質量部。
DOP…53質量部。
発泡剤…1質量部。
安定剤…4質量部。
その他…23質量部。
(無発泡インキC)
PVC樹脂(ペーストレジン、平均重合度1500)…100質量部。
DOP…50質量部。
安定剤…3質量部。
その他…1質量部。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態の発泡床材を示す一部省略断面図。
【図2】第2実施形態の発泡床材を示す一部省略断面図。
【図3】オーバーコート層の形成パターンを示す参考平面図。
【図4】発泡床材の製造方法の一実施形態を示す参考図。
【符号の説明】
【0054】
1…発泡床材、2…基材層、21…第1基材、22…第2基材、3…発泡樹脂層、5…発泡印刷層、6…スキン層、7…エンボス凹部、8…オーバーコート層、81…オーバーコート層の孔部、95…オーブン、96…エンボスロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と前記基材層の表面に設けられた発泡樹脂層とを有する発泡床材であって、
前記発泡樹脂層の表面に、発泡印刷層が設けられており、
前記発泡印刷層の表面からメカニカルエンボス加工を施して前記発泡印刷層の表面部を溶融させることにより、前記発泡印刷層の表面にスキン層が形成されていることを特徴とする発泡床材。
【請求項2】
前記発泡印刷層が、前記発泡樹脂層よりも低倍率で発泡されている請求項1に記載の発泡床材。
【請求項3】
前記メカニカルエンボス加工により、深さ0.3mm〜1.5mmのエンボス凹部が形成されている請求項1または2に記載の発泡床材。
【請求項4】
前記基材層が、前記発泡樹脂層及び発泡印刷層の発泡温度において熱収縮しうる、熱収縮性シートを含む請求項1〜3のいずれかに記載の発泡床材。
【請求項5】
基材層の上に、発泡性樹脂組成物を積層する工程、
前記発泡性樹脂組成物の上に、所望のデザインが印刷によって表された発泡性層を積層する工程、
前記発泡性樹脂組成物及び前記発泡性層を加熱して両者を発泡させることにより、基材層の上に発泡樹脂層及び発泡印刷層を形成する工程、
前記発泡印刷層の表面部を加熱しつつ、前記発泡印刷層の表面からエンボスロールを押圧する工程、
を有することを特徴とする発泡床材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−91794(P2009−91794A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262886(P2007−262886)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】