説明

発泡成型体用樹脂組成物、発泡成型体用樹脂シート、及び発泡成型体

【課題】光反射性、及び軽量性に優れた光反射部材を提供し得る発泡成型体用樹脂組成物、発泡成型体用樹脂シート、及び、発泡成型体を提供すること。
【解決手段】 非反応性ガスを含浸させた後、加熱して発泡成型体とするための樹脂組成物であって、テレフタル酸およびエチレングリコール由来の成分を主とするポリエステル樹脂を主とし、他に極性基を有するポリマーと、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂を含むことを特徴とする発泡成型体用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系の発泡成型体用樹脂組成物、発泡成型体用樹脂シート、及び、発泡成型体に関する。より詳細には、光反射率が高く、軽量性にすぐれ、さらに液晶表示装置バックライト用光反射部材や電飾掲示板用光反射部材の用途に好適なポリエステル樹脂発泡体を提供しうる、発泡成型体用樹脂組成物、発泡成型体用樹脂シート、及び、当該発泡成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は自ら発光しないので、別のバックライトユニットを必要とする。前記バックライトユニットは、画面の明るさ及び外観に重要な役割を果たす部品である。特に、輝度増減に重要な役割をする。また、光を反射する反射部材は、液晶表示装置のバックライトユニットでランプ周辺に配置されるため、相当に重要な役割をする。
【0003】
このような反射部材としては、例えば、(i)発泡薬品を混合して形成されたマイクロ泡を含むポリエステルフィルムからなる中間層及び炭酸カルシウムを含む最外層から構成される3層構造の光反射部材、(ii)発泡体からなる中間層及び硫酸バリウムを含んで反射効率を増加させる最外層から構成される3層構造の光反射部材、(iii)不活性ガスによるバッチ発泡で形成され、発泡倍率が2倍以上のマイクロ泡を含む光反射部材などが知られている。また、一般的な反射部材として、銀をコーティングして光を正反射することができる構造を有する部材が知られている。
【0004】
しかし、前記の反射部材(光反射部材)は、(i)で得られた光反射部材はマイクロ泡が大きく反射特性が低い(例えば、特許文献1)、(ii)で得られた光反射部材は発泡倍率が非常に小さく反射特性も低い(例えば、特許文献2)、(iii)で得られた光反射部材は反射特性には優れるが、非反応性ガスの含浸による結晶化時間が掛かる(例えば、特許文献3及び特許文献4)、という短所を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−195001号公報
【特許文献2】特開2007−261260号公報
【特許文献3】特開平05−230259号公報
【特許文献4】特開2009−209171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光反射性、及び軽量性に優れた光反射部材を提供し得る発泡成型体用樹脂組成物、発泡成型体用樹脂シート、及び、発泡成型体を提供することである。本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、2種以上のポリエステル樹脂と極性基を有するポリマーを含む樹脂組成物を発泡成形させて得られるポリエステル樹脂発泡体を光反射層として含ませれば、光反射性、軽量性及び非反応性ガスの含浸による結晶化時間に優れた光反射部材を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の構成よりなる。
1.非反応性ガスを含浸させた後、加熱して発泡成型体とするための樹脂組成物であって、テレフタル酸およびエチレングリコール由来の成分を主とするポリエステル樹脂を主とし、他に極性基を有するポリマーと、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂を含むことを特徴とする発泡成型体用樹脂組成物。
2.主たるポリエステル樹脂よりも融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル樹脂が、主たるポリエステル樹脂と同じ多価カルボン酸および又は多価アルコールを主とするポリエステル系樹脂である、上記第1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
3.上記第1に記載の極性基を有するポリマーがポリエステル系樹脂であり、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂が、極性基を有するポリエステル系樹脂と同じ多価カルボン酸および又は多価アルコールを含むことを特徴とする、上記第1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
4.上記第1に記載の極性基を有するポリマーがオレフィン系樹脂であり、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂が、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等や、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸、および又はエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール等の脂環式ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール、ポリエチレンオキサイドグリコール、ポリプロピレンオキサイドグリコール、ポリテトラメチレンオキサイドグリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール及びこれらの混合物さらにはこれらのエーテル構成成分を共重合した共重合ポリエーテルグリコール等の少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、上記第1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
5.主たるポリエステル樹脂が、60質量%以上である上記第1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
6.極性基を有するポリマーが、0.1質量%以上である上記第1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
7.主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂が、0.1質量%以上である上記第1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
8.非反応性ガス含浸後の結晶化度を評価したときに、結晶化度が25%を超えるのに要する時間が42時間未満である上記第1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
(但し、結晶化度は、樹脂シートから、縦35mm×横45mm×厚さ0.6mmの大きさの試料片を切り出し、超臨界流体処理試験装置(型式;HV1−SC、株式会社日阪製作所製)にセットし、25℃、6MPa下でCOガスに所定時間曝露した後、試料片を超臨界流体処理試験装置から取り出し、23℃×50%R.H.×48時間風乾した。次いで、風乾後の試料片を示差走査熱量計(EXSTAR6000、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)にセットし、10℃/分にて昇温しながら、試料片の結晶化および融解に基づく熱量を測定し、下記式に基づいて算出した。
結晶化度(%)=(A−B)/C
A;融解に基づく熱量(J/g)
B;結晶化に基づく熱量(J/g)
C;100%結晶化PETの融解熱量(117.6(J/g))
9.上記第1に記載の発泡成型体用樹脂組成物から得られることを特徴とする発泡成型体用樹脂シート。
10.上記第9に記載の発泡成型体用樹脂シートから得られることを特徴とする発泡成型体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光反射性、軽量性及び非反応性ガスの含浸による結晶化時間に優れた光反射部材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(樹脂組成物)
本願は発明の樹脂組成物は、光反射部材で光反射層として有用なポリエステル樹脂発泡体(発泡体)に使用されるもので、ポリエステル樹脂を少なくとも含有しており、ポリエステル樹脂発泡体の原料となる組成物である。
つまり、テレフタル酸およびエチレングリコール由来の成分を主とするポリエステル樹脂を主とし、他に極性基を有するポリマーと、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂を含むことを特徴とする発泡成型体用樹脂組成物であり、必要に応じて更にはパウダー粒子や添加剤などを含んでいても良い。
主たるポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、ここでいうポリエチレンテレフタレートとは、カルボン酸成分としてテレフタル酸の他に8モル程度以下のイソフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールの他に8モル%程度以下のジエチレングリコールを含んでなるものも含まれる。カルボン酸成分としてテレフタル酸の他にイソフタル酸を含んだり、グリコール成分としてエチレングリコールの他に8モル%程度以下のジエチレングリコールを含む場合は、イソフタル酸及び/あるいは、ジエチレングリコールは1モル%程度以上含むのが好ましい。なお、樹脂組成物を成形することにより未発泡樹脂成形体を得ることができる。
【0010】
樹脂組成物が、特に極性基を有するポリマーと、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂を含む場合、樹脂組成物に非反応性ガスを含有させることによって反射率の高い高発泡で高密度な発泡成型体が得られる。
極性基は、繰返し単位当たりの極性基の数が、主たるポリエステル樹脂よりも多いほど良い。融点の差は好ましくは15℃以上であり、更に好ましくは20℃以上である。しかしながら、あまりにも融点の差が大きすぎると融点差の低温側にあたるポリエステル樹脂の熱分解やポリエステル樹脂間の溶融流動特性差が顕著となる場合があるので、融点の差は200℃以下でよく、150℃以下であることが好ましい。
【0011】
極性基を有するポリマーと、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル樹脂を含有させることによって、反射率の高い高発泡で高密度な発泡成型体が得られる理由については次のように推定している。
ポリエステル樹脂に非反応性ガスを含有させることによってポリエステル樹脂を結晶化する際、ポリエステル樹脂中に分散した主たるポリエステル樹脂に対して極性基を有するポリマーと、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル樹脂が、結晶核生成の起点となって微結晶が生成したり、非反応性ガスがポリエステル樹脂に対して極性基を有するポリマーおよび又は主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル樹脂中に偏在または高濃度に含浸・含有したり、発泡過程で気泡核生成の起点となったり、あるいは、ポリエステル樹脂中のポリエステル樹脂に対して極性基を有するポリマーと、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル樹脂の分散径をミクロンオーダーからサブミクロン以下に微分散させる又は相溶化させることにより微細発泡化したりするなどの効果を発揮することに因ると考えられる。
このことにより、内部に平均気泡径30μm以下、さらには10μm以下の均一な微細孔を含有する、高い反射率を有する発泡成型体を得ることができる。
【0012】
(ポリエステル樹脂の特性)
本発明で用いるポリエステル樹脂の極限粘度は、後述する方法で測定した場合に、0.5dl/g以上(好ましくは0.6dl/g以上、より好ましくは0.7dl/g以上、さらに好ましくは0.8dl/g以上)であることが好ましい。本発明で用いるポリエステル樹脂は、発泡成型体用の樹脂組成物であることから、極限粘度が0.5dl/g未満の場合には機械特性や衝撃強度が低下する場合がある。
【0013】
(ポリエステル樹脂の含有率)
本発明に係る発泡成型体用樹脂組成物には、上記主たるポリエステル樹脂が60質量%(より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)以上含まれることが好ましい。ポリエステル樹脂の含有率が60質量%未満の場合には、このポリエステル樹脂を用いて得られる発泡成型体の耐熱性や剛性の低下が著しく好ましくない。
【0014】
また、極性基を有するポリマーおよび主たるポリエステル樹脂よりもその融点が10℃以上低いポリエステル系樹脂の樹脂組成物に対する含有率が0.1質量%以上であることも好ましい。更に好ましくは0.5質量%以上であり、もっとも好ましくは0.7質量%以上である。極性基を有するポリマーおよび主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂の樹脂組成物に対する含有率が0.1質量%以上とすることにより、ポリエステル樹脂を結晶化させる際、結晶化速度が更に速くなる。しかしながら、極性基を有するポリマーおよび主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂の樹脂組成物に対する含有率が多すぎることは、耐熱性や剛性の低下を招き易くなるので、40重量%以下でよく、更に好ましくは30重量%以下である。
【0015】
(ポリエステル樹脂および極性基を有するポリエステル系樹脂の製造方法)
本発明で用いるポリエステル樹脂は、その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、テレフタル酸及びエチレングリコールを主成分として、エステル化反応、溶融重縮合、及び固相重合を経て製造することができる。また、テレフタル酸に代えて、テレフタル酸ジメチル等のエステルを用いて、エステル交換反応を経る方法であってもよい。
【0016】
<エステル化反応>
テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とする原料成分のエステル化反応は、100〜300℃、常圧〜加圧下で原料成分を撹拌することによって行うことができる。この際、窒素ガス存在下で原料成分の撹拌を行ってもよい。
【0017】
エステル化反応を行う際に用いる原料成分としては、上記テレフタル酸やエチレングリコールの他に、他の成分(多価カルボン酸、多価アルコール)が含まれてもよい。
【0018】
例えば、テレフタル酸以外の多価カルボン酸としては、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等や、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びそれらの酸無水物等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。本発明においては、主たるポリエステル樹脂に対して、極性基を有するように、および又はその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上になるように、多価カルボン酸成分が用いられることが好ましい。
【0019】
また、エチレングリコール以外の多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール等の脂環式ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール、ポリエチレンオキサイドグリコール、ポリプロピレンオキサイドグリコール、ポリテトラメチレンオキサイドグリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール及びこれらの混合物さらにはこれらのエーテル構成成分を共重合した共重合ポリエーテルグリコール等が挙げられる。本発明においては、主たるポリエステル樹脂に対して、極性基を有するように、および又はその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上になるように、多価アルコールが用いられることが好ましい。
【0020】
<溶融重縮合>
溶融重縮合は、上記エステル化反応によって得られた反応物に、重縮合触媒を添加し、100℃〜300℃、13.3Pa〜3990Pa下で撹拌することによって行うことができる。
【0021】
重縮合触媒としては、慣用の種々の触媒が使用でき、例えばチタン系触媒(チタニウムテトラブトキシド等)、アンチモン系触媒(三酸化アンチモン、酢酸アンチモン等)、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウム等)、コバルト系触媒(酢酸コバルト等)、スズ系触媒(モノブチルヒドロキシスズオキサイド等)、マンガン系触媒(酢酸マンガン等)、アルミニウム系触媒(塩基性酢酸アルミニウム等)等が挙げられる。これらの重縮合触媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
<固相重合>
固相重合は、溶融重縮合によって得たポリエステル樹脂のプレポリマーを、水等で冷却しながら切断して平均粒径1.5mm〜5mmのチップにした後、不活性ガスの流通下、あるいは減圧下、プレポリマーの融点未満の温度で好ましくは1〜30時間加熱することによって行うことができる。
【0023】
固相重合に先立って、固相重合を行う温度よりも低い温度で予備結晶化を行ってもよい。これにより、固相重合をより効率よく進行することができる。この予備結晶化工程は、例えば、プレポリマーのチップを不活性ガス下または減圧下あるいは水蒸気または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下において、50℃〜240℃の温度で1時間〜24時間加熱して行うことができる。
【0024】
ポリエステル樹脂のプレポリマーを切断してチップにした後は、篩を通す方法、あるいはチップを空送等する場合にはサイクロン式エアフィルタを通す方法等により、プレポリマーのチップ中に含まれる微粉体やシート状物を除去することが好ましい。これにより、組成が均一な長尺のポリエステル樹脂シートを得ることができる。
【0025】
(ポリエステル樹脂に対して極性基を有するオレフィン系樹脂)
本発明の発泡成型体用樹脂組成物は、上記極性基を有するポリエステル樹脂の他に、ポリエステル樹脂に対して極性基を有するオレフィン系樹脂であっても良い。ポリエステル樹脂に対して極性基を有するオレフィン系樹脂を含んで構成されるポリエステル樹脂組成物から得られる樹脂シートを発泡させることによっても、内部に平均気泡径50μm以下の均一な微細孔を含有する、高い反射率を有する発泡成型体を得ることができる。
【0026】
平均気泡径は、発泡成型体断面のSEM写真を撮影し、発泡層の一定断面積内に含まれる任意の気泡30個について、観測した気泡を球形に近似した場合の直径を算出し、これを平均化することにより求めることができる。
【0027】
本発明において用いるポリエステル樹脂に対して極性基を有するオレフィン系樹脂としては、例えば、汎用の低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、及びエチレン系の共重合体、スチレン系の共重合体等が挙げられ、具体的には、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンメチルメタアクリレート(EMMA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレンメチルアクリレート(EMA)、エチレンエチルアクリレート無水マレイン酸(E−EA−MAH)、エチレンアクリル酸(EAA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、アイオノマー(エチレンメタクリル酸金属架橋)、MAH−G−ポリオレフィン(PEやPPに無水マレイン酸をグラフト重合したもの)、エチレングリシジルメタクリレート(E−GMA)、エチレングリシジルメタクリレート酢酸ビニル(E−GMA−VA)、エチレングリシジルメタクリレートアクリル酸メチル(E−GMA−MA)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/プロピレン共重合体(SEP)、スチレン−エチレン/ブチレン−エチレン共重合体(SEBC)、水添スチレン/ブタジエン共重合体(HSBR)等に、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基(酸無水物、金属塩となっているカルボキシル基も含む)、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、スルホ基、ニトロ基、ハロゲン基、オキサゾリン基、イソシアネート基、チオール基等の官能基を有していることが好ましい。中でも官能基を有するSEBS、SEBCがより好ましい。
【0028】
スチレン系の共重合体への官能基の導入は、例えば官能基がエポキシ基の場合は、ジエン成分を一部エポキシ化したり、グリシジルメタクリレートのようなエポキシ含有化合物をグラフト変性したりすることによって行うことができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物中のポリエステル樹脂に対して極性基を有するオレフィン系樹脂の含有率は、発泡成型体用樹脂組成物100質量%中0.1質量%以上(より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上)が好ましく、40質量%以下(より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下)が好ましい。含有率が0.1質量%未満の場合には、高発泡で高密度な発泡成型体を得る効果が薄くなる。また、40質量%を超える場合には、結果的に樹脂組成物中のポリエステル樹脂の含有率が低下することから、得られる発泡成型体の耐熱性や剛性・強度が低下する場合があり、あまり好ましくない。
【0030】
(パウダー粒子)
本発明では、光反射部材の形成に使用されるポリエステル樹脂発泡体は、さらに、パウダー粒子を含んでいても良い。つまり、ポリエステル樹脂発泡体の発泡成形に用いられる樹脂組成物には、ポリエステル樹脂及びパウダー粒子を含むこともできる。パウダー粒子は、発泡成形時の発泡核剤として機能することができる。そのため、パウダー粒子を配合することにより、良好な発泡状態のポリエステル樹脂発泡体を得ることができる。なお、樹脂組成物にパウダー粒子を使用し、さらにポリエステル樹脂の発泡に用いる発泡剤である高圧ガスとして超臨界状態の流体を用いれば、特に微細で均一な気泡を有するポリエステル樹脂発泡体を得ることができる。
【0031】
このようなパウダー粒子としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、モンモリナイト等のクレイ、カーボン粒子、グラスファイバー、カーボンチューブなどを用いることができる。パウダー粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
パウダー粒子の含有率としては、特に制限されないが、例えば、樹脂組成物におけるポリエステル樹脂100質量%に対して、0.1〜30質量%(好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1.0〜15質量%)の範囲から適宜選択することができる。パウダー粒子の含有率がポリエステル樹脂100質量%に対して0.1質量%未満であると、均一な発泡体を得ることが困難になり、一方、30質量%を超えると、樹脂組成物としての粘度が著しく上昇するとともに、発泡形成時にガス抜けが生じてしまい、発泡特性を損なう恐れがある。
【0033】
パウダー粒子の平均粒径としては、特に制限されないが、例えば0.1〜10μm(好ましくは、0.5〜5μm)程度である。パウダー粒子の平均粒径が0.1μm未満では核剤として十分に機能しない場合があり、平均粒径が10μmを超えると発泡成形時にガス抜けの原因となる場合がある。
【0034】
(ポリエステル樹脂の融点とガラス転移温度)
JIS K 7121に記載の「プラスチックの転移温度測定方法」により、DSC測定を行った。ポリエステル樹脂は、約10mgをアルミパンに密封して300℃で3分間溶融し、液体窒素でクエンチしたものを用いた。測定器には示差走査熱量計(EXSTAR6000、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、以下、単に「DSC」と称する場合がある。)を用い、乾燥窒素雰囲気下で実施した。10℃/分の速さで加熱して中間点ガラス転移温度を求めた後、融解ピーク温度(融点)を求めた。
【0035】
(結晶化度)
本発明の発泡成型用樹脂組成物は、下記の方法で結晶化度を評価した場合に、結晶化度が25%を超えるのに要するCO曝露時間が42時間以内(より好ましくは、結晶化度が25%を超えるのに要するCO曝露時間が36時間以内)であることが好ましい。これにより、本発明の樹脂組成物から得られる樹脂シートを速やかに発泡成型体にすることが可能となるため、発泡成型体の大量生産に資するとともに製造コストをさらに抑えることができる。
【0036】
(結晶化度評価方法)
本発明の発泡成型体用樹脂組成物から得られた樹脂シートから、縦35mm×横45mm×厚さ0.6mmの大きさの試料片を切り出し、超臨界流体処理試験装置(型式;HV1−SC、株式会社日阪製作所製)にセットし、25℃、6MPa下でCOガスに所定時間曝露した後、試料片を超臨界流体処理試験装置から取り出し、23℃×50%R.H.×48時間風乾した。次いで、風乾後の試料片を示差走査熱量計(EXSTAR6000、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)にセットし、10℃/分にて昇温しながら、試料片の結晶化および融解に基づく熱量を測定し、下記式に基づいて結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=(A−B)/C
A;融解に基づく熱量(J/g)
B;結晶化に基づく熱量(J/g)
C;100%結晶化PETの融解熱量(117.6(J/g))
【0037】
(添加剤)
本発明の発泡成型体用樹脂組成物には、これを用いて得られる発泡成型体の特性に影響を及ぼさない範囲において、各種添加剤(例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、着色剤、抗菌剤、相溶化剤、滑剤、強化剤、難燃剤等)を配合してもよい。
【0038】
特に、アルカリ金属(酢酸リチウム等)、アルカリ土類金属(酢酸マグネシウム等)、リン含有化合物(リン酸トリメチル等)等が添加剤として配合されることが好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属を配合することによって、静電密着方式に因るキャスト法によって樹脂組成物から樹脂シートを得る際に、樹脂シートがロールに密着し易くなる。また、リン含有化合物を配合することにより、熱安定性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0039】
(発泡成型体)
上記の発泡成型体用樹脂組成物を用いて発泡成型体を得る方法としては特に限定されるものではないが、例えば以下の方法が挙げられる。
【0040】
すなわち、先ず、2種以上の上記ポリエステル樹脂のチップと、極性基を有するポリマー(チップ)と、必要に応じて帯電防止剤等の各種添加剤を、ホッパドライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、押出機を用いて150〜300℃の温度でフィルム状に押し出して、ポリエステル樹脂シート(未延伸)を作製する。あるいは、未乾燥の2種以上の上記ポリエステル樹脂のチップと、極性基を有するポリマー(チップ)と、必要に応じて帯電防止剤等の各種添加剤を、ベント式押出機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押し出して、ポリエステル樹脂シート(未延伸)を作製する。押出に際しては、Tダイ法、チューブラ法等、既存のどの方法を採用しても構わない。
【0041】
押出後は、キャスティングロールで急冷する。その際、上記押出機とキャスティングロールの間に電極を配設し、電極とキャスティングロールとの間に電圧を印加し、静電気的にシートをロールに密着させてもよい。
【0042】
次に、ポリエステル樹脂シートとセパレータとを重ねて巻くことによりロール形成し、このロールを加圧非反応性ガス雰囲気中に保持して、ポリエステル樹脂シートに非反応性ガスを含浸させる。
【0043】
ここで、本発明において用いることができる非反応性ガスとしては、二酸化炭素、ヘリウム、窒素、アルゴンなどが挙げられ、樹脂へのガス浸透性(速度、溶解度、臨界点)を考慮すると、二酸化炭素がより好ましい。
【0044】
ポリエステル樹脂シートへの非反応性ガスの浸透処理時間、および浸透量は、発泡させる樹脂の種類、非反応性ガスの種類、浸透圧力およびシートの厚さによって適宜調整されるが、15〜30℃、4.0〜7.1MPa下で非反応性ガスをポリエステル樹脂シートに含浸させる態様が挙げられる。具体的には、本発明のポリエステル樹脂シートに二酸化炭素を含浸させる場合にあっては、25℃、6MPa下、COガスが充填されたチャンバーにて、ポリエステル樹脂シートの結晶化度が25%になるまで上記ロールを保持する。
【0045】
なお、ポリエステル樹脂シートへの非反応性ガスの含浸は、超臨界状態で行ってもよい。
【0046】
その後、非反応性ガスを含浸させたポリエステル樹脂シートを、常圧下、ポリエステル樹脂の軟化温度以上に加熱して発泡させる。具体的には、本発明においては、非反応性ガスを含浸させたポリエステル樹脂シートを240℃で1分間加熱して行う。
【0047】
得られる発泡成型体の見かけ密度は100〜1300kg/mであることが好ましい。
【0048】
<用途>
本発明の発泡成型体は、反射率に優れる。具体的には、後述する方法で測定したときに400〜700nmの光波長域における平均全反射率が90%以上となる。このため、電飾看板や照明器具、液晶ディスプレイ反射板用基材のみならず、他の高反射率が要求される用途においても、好適に用いることができる。
【0049】
前記の発泡成型体は、2種以上からなるポリエステルと極性基を有するポリマーの樹脂発泡体からなる発泡層のみで構成された単層体、又は前記発泡層と、該発泡層の少なくとも片面に設けられた無発泡層とで構成された積層体であることも好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例で採用した測定・評価方法は次の通りである。また、実施例中で「部」とあるのは「質量部」を意味し、「%」とあるのは断りのない限り「質量%」を意味する。
【0051】
(測定・評価方法)
(1)ポリエステル樹脂組成
本発明で用いるポリエステル樹脂の組成は、ポリエステル樹脂試料15mgをCDCl/CFCOOH(85/15)に溶解し、H−NMRを測定することによって求めた。
【0052】
(2)極限粘度
本発明で用いるポリエステル樹脂の極限粘度IV(実測値)は、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール(2:3質量比)混合溶媒中30℃における溶液粘度から求めた。
【0053】
(3)結晶化度
本発明の発泡成型体用樹脂組成物から得られた樹脂シートから、縦35mm×横45mm×厚さ0.6mmの大きさの試料片を切り出し、超臨界流体処理試験装置(型式;HV1−SC、株式会社日阪製作所製)にセットし、25℃、6MPa下でCOガスに所定時間曝露した後、試料片を超臨界流体処理試験装置から取り出し、23℃×50%R.H.×48時間風乾した。次いで、風乾後の試料片を示差走査熱量計(EXSTAR6000、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)にセットし、10℃/分にて昇温しながら、試料片の結晶化および融解に基づく熱量を測定し、下記式に基づいて結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=(A−B)/C
A;融解に基づく熱量(J/g)
B;結晶化に基づく熱量(J/g)
C;100%結晶化PETの融解熱量(117.6(J/g))
【0054】
(4)全反射率
分光光度計(UV−3150;島津製作所製)を用いて、400〜700nmの光波長域における発泡成型体の反射率を測定し、得られたチャートより2nm間隔で反射率を読み取り、平均値を測定した。なお、下記表1において、硫酸バリウム(和光純薬工業株式会社製、和光一級)の微粉末を固めた白板の全反射率を100%として、各々の発泡成型体の全反射率を相対値で示している。
【0055】
(合成例1)
ハステロイ製撹拌機付き熱媒循環式エステル化反応器に、高純度テレフタル酸100モル%とエチレングリコール100モル%を仕込み、トリエチルアミンを全酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下245℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を2時間行い、エステル化率が95%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びオリゴマーの混合物(以下、BHET混合物という。)を得た。このBHET混合物をハステロイ製撹拌機付き重縮合器に輸送し、これに重縮合触媒として三酸化アンチモンをSb残存量として270ppmになるように添加した。次いで、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間撹拌した。その後、245℃に保ったまま反応系の圧力を徐々に下げて13.3Paとして50分間第一段目の初期重縮合を行い、さらに275℃、13.3PaでIVが約0.65デシリットル/グラムになるまで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のプレポリマーを冷却水中にストランド状に吐出して急冷し、ストランドカッターでチップ化してシリンダー形状のチップを得た。なお、チップ化時、重縮合器出口からノズル細孔までの樹脂温度は約270℃とし、約30分以内に全量をチップ化した。
【0056】
なお、冷却水は、工業用水(河川伏流水由来)をフィルター濾過装置、及びイオン交換装置で処理したものであり、粒径1〜25μmの粒子を約500個/10ml含み、ナトリウム含有量が0.02ppm(質量基準、以下同じ)、マグネシウム含有量が0.01ppm、カルシウム含有量が0.01ppm、及び珪素含有量が0.11ppmである。
【0057】
次いで、得られたチップを直ちに減圧乾燥機にて約50〜約150℃で熱処理し、振動式篩分工程及び気流分級工程によって処理して、微粉体及びフィルム状物を除去し、微粉体含有量を約50ppm以下とする結晶化プレポリマーを得た。極限粘度は0.63デシリットル/グラムであった。
【0058】
次いで、結晶化プレポリマーを結晶化装置に送り、ひきつづき窒素雰囲気下、約155℃で結晶化し、さらに窒素雰囲気下で約200℃に予熱後、連続固相重合反応器に送り窒素雰囲気下、約205℃で固相重合した。固相重合後、篩分工程および微粉体除去工程で連続的に処理し微粉体を除去し、微粉体含有量を約50ppmとした樹脂1を得た。得られた樹脂1の極限粘度は1.0デシリットル/グラムであった。
【0059】
(合成例2)
合成例1において、エステル化反応釜に、97モル%のテレフタル酸、3モル%のイソフタル酸、100モル%のエチレングリコールを仕込み、エステル化反応を行ったこと、及び、重縮合触媒として、二酸化ゲルマニウムをGe残存量として40ppmとなるように用いた以外は合成例1と同様にして、樹脂2を得た。得られた樹脂の極限粘度は、0.85デシリットル/グラムであった。
【0060】
(合成例3)
合成例1において、エステル化反応釜に、100モル%のテレフタル酸、70モル%のエチレングリコール、30モル%の数平均分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを仕込み、エステル化反応を行ったこと、及び、重縮合触媒として、テトラブチルチタネートを用いた以外は合成例1と同様にして、樹脂10を得た。得られた樹脂の極限粘度は、2.45デシリットル/グラムであった。
【0061】
(合成例4)
合成例1において、エステル化反応釜に、70モル%のテレフタル酸、30モル%アジピン酸、100モル%の1,4ブタンジオールを仕込み、エステル化反応を行ったこと、及び、重縮合触媒として、テトラブチルチタネートを用いた以外は合成例1と同様にして、樹脂4を得た。得られた樹脂の極限粘度は、0.80デシリットル/グラムであった。
【0062】
(合成例5)
合成例1において、エステル化反応釜に、100モル%のテレフタル酸、100モル%の1,4ブタンジオールを仕込み、エステル化反応を行ったこと、及び、重縮合触媒として、テトラブチルチタネートを用いた以外は合成例1と同様にして、樹脂5を得た。得られた樹脂の極限粘度は、1.00デシリットル/グラムであった。
【0063】
(合成例6)
合成例1において、エステル化反応釜に、100モル%のナフタレンジカルボン酸、100モル%の1,4ブタンジオールを仕込み、エステル化反応を行ったこと、及び、重縮合触媒として、テトラブチルチタネートを用いた以外は合成例1と同様にして、樹脂7を得た。得られた樹脂の極限粘度は、0.75デシリットル/グラムであった。
【0064】
(実施例1)
ポリエステル樹脂として、それぞれ別個に予備乾燥した発泡成型体用樹脂1を99.8質量部、発泡成型体用樹脂3と同樹脂4をそれぞれ0.1質量部、押出機直上のホッパに供給して混合し、280℃に温調した二軸押出機を用いて溶融押出し、40℃の冷却ロールで急冷して巻き取って、厚さ約0.6mmの樹脂シート1を得た。樹脂シート1の一部を結晶化度測定用に裁断した後、残りを下記方法によって発泡させて、発泡成型体1を得た。
【0065】
すなわち、樹脂シート1とセパレーター(オレフィン系不織布(FT300グレード、日本バイリーン株式会社製))を重ねて巻くことによりロールを形成し、このロールを25℃、6.4MPa下、COが充填されたチャンバーにて保持して、樹脂シート1の結晶化度が25%になるまで樹脂シート1にCOガスを含浸させる。圧力容器からロールを取り出し、セパレーターを取り除きながらCOガスが浸透した樹脂シート1だけを240℃に設定した熱風循環式発泡炉に発泡時間が1分となるように連続的に供給して発泡した。得られた発泡成型体1の厚さは1000μm、平均気泡径は1μmであった。
【0066】
(実施例2)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を98質量部、発泡成型体用樹脂3と同樹脂4をそれぞれ1質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート2、及び発泡成型体2を得た。
【0067】
(実施例3)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を90質量部、発泡成型体用樹脂3と同樹脂4をそれぞれ5質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート3、及び発泡成型体3を得た。
【0068】
(実施例4)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を98質量部、変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS(f−SEBS)、JSR社製)と発泡成型体用樹脂4をそれぞれ1質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート4、及び発泡成型体4を得た。
【0069】
(実施例5)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を90質量部、変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS(f−SEBS)、JSR社製)と発泡成型体用樹脂4をそれぞれ5質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート5、及び発泡成型体5を得た。
【0070】
(実施例6)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を98質量部、発泡成型体用樹脂3と同樹脂5をそれぞれ1質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート6、及び発泡成型体6を得た。
【0071】
(実施例7)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を90質量部、発泡成型体用樹脂3と同樹脂5をそれぞれ5質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート7、及び発泡成型体7を得た。
【0072】
(実施例8)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂2を98質量部、発泡成型体用樹脂3と同樹脂4をそれぞれ1質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート2、及び発泡成型体2を得た。
【0073】
(実施例9)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂2を90質量部、発泡成型体用樹脂3と同樹脂4をそれぞれ5質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート2、及び発泡成型体2を得た。
【0074】
(比較例1)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を100質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂シート10、及び発泡成型体10を得た。
【0075】
(比較例2)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を98質量部、発泡成型体用樹脂3を2質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート11、及び発泡成型体11を得た。
【0076】
(比較例3)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を98質量部、変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS(f−SEBS)、JSR社製)を2質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート12、及び発泡成型体12を得た。
【0077】
(比較例4)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を98質量部、発泡成型体用樹脂3と同樹脂6をそれぞれ1質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート13、及び発泡成型体13を得た。
【0078】
(比較例5)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を90質量部、発泡成型体用樹脂3と同樹脂6をそれぞれ5質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート14、及び発泡成型体14を得た。
【0079】
(比較例6)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を98質量部、発泡成型体用樹脂5と同樹脂6をそれぞれ1質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート15、及び発泡成型体15を得た。
【0080】
(比較例7)
実施例1において、ポリエステル樹脂として、発泡成型体用樹脂1を90質量部、発泡成型体用樹脂5と同樹脂6をそれぞれ5質量部用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート16、及び発泡成型体16を得た。
【0081】
得られた樹脂シート1〜16の結晶化度を上記方法によって測定し、その結晶化時間を求めた。また発泡成形体の平均発泡径と全反射率を、上記の方法によって測定した。
【0082】
上記結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
表1において、TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、AAはアジピン酸、NPAはナフタレンジカルボン酸、EGはエチレングリコール、DEGはジエチレングリコール、PTMGはポリテトラメチレンオキシドグリコール、BDは1,4−ブタンジオール、f−SEBSは変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体を意味する。
【0085】
表1より、融点またはガラス転移温度が10℃以上異なる2種以上のポリエステル樹脂と極性基を有するポリマーとすることによって、樹脂シートの結晶化速度が上昇することが分った。
【0086】
また、それらより得られた発泡成形体の全反射率は、全反射率の優れる発泡成型体が得られることが分った。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の発泡成型体用樹脂組成物は、短時間に、結晶化度に優れた樹脂シートを製造することができる。また、全反射率に優れることから、電飾看板や照明器具、液晶ディスプレイ等の反射板用途として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非反応性ガスを含浸させた後、加熱して発泡成型体とするための樹脂組成物であって、テレフタル酸およびエチレングリコール由来の成分を主とするポリエステル樹脂を主とし、他に極性基を有するポリマーと、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂を含むことを特徴とする発泡成型体用樹脂組成物。
【請求項2】
主たるポリエステル樹脂よりも融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル樹脂が、主たるポリエステル樹脂と同じ多価カルボン酸および又は多価アルコールを主とするポリエステル系樹脂である、請求項1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の極性基を有するポリマーがポリエステル系樹脂であり、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂が、極性基を有するポリエステル系樹脂と同じ多価カルボン酸および又は多価アルコールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の極性基を有するポリマーがオレフィン系樹脂であり、主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂が、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等や、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸、および又はエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール等の脂環式ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール、ポリエチレンオキサイドグリコール、ポリプロピレンオキサイドグリコール、ポリテトラメチレンオキサイドグリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール及びこれらの混合物さらにはこれらのエーテル構成成分を共重合した共重合ポリエーテルグリコール等の少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
【請求項5】
主たるポリエステル樹脂が、60質量%以上である請求項1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
【請求項6】
極性基を有するポリマーが、0.1質量%以上である請求項1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
【請求項7】
主たるポリエステル樹脂よりもその融点の差が10℃以上またはガラス転移温度の差が10℃以上低いポリエステル系樹脂が、0.1質量%以上である請求項1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。
【請求項8】
非反応性ガス含浸後の結晶化度を評価したときに、結晶化度が25%を超えるのに要する時間が42時間未満以内である請求項1に記載の発泡成型体用樹脂組成物。(但し、結晶化度は、樹脂シートから、縦35mm×横45mm×厚さ0.6mmの大きさの試料片を切り出し、超臨界流体処理試験装置(型式;HV1−SC、株式会社日阪製作所製)にセットし、25℃、5MPa下でCOガスに所定時間曝露した後、試料片を超臨界流体処理試験装置から取り出し、23℃×50%R.H.×48時間風乾した。次いで、風乾後の試料片を示差走査熱量計(EXSTAR6000、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)にセットし、10℃/分にて昇温しながら、試料片の結晶化および融解に基づく熱量を測定し、下記式に基づいて算出した。
結晶化度(%)=(A−B)/C
A;融解に基づく熱量(J/g)
B;結晶化に基づく熱量(J/g)
C;100%結晶化PETの融解熱量(117.6(J/g))
【請求項9】
請求項1に記載の発泡成型体用樹脂組成物から得られることを特徴とする発泡成型体用樹脂シート。
【請求項10】
請求項9に記載の発泡成型体用樹脂シートから得られることを特徴とする発泡成型体。

【公開番号】特開2012−116966(P2012−116966A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268526(P2010−268526)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】