説明

発泡成形品の製造装置

【課題】本発明は、小型化が可能で小規模生産に適した発泡成形品の製造装置を提供する。
【解決手段】発泡成形品の製造装置1に設けられ金型収容部12の昇降機構Sは、金型収容部12の下方に位置して、金型収容部12を昇降させる足踏みレバー20と、足踏みレバー20の作用部22と金型収容部12とを連結する連結レバー14と、を備えている。連結レバー14の一端は金型収容部12に軸支され、連結レバー14の他端は、足踏みレバー20の作用部22に軸支されている。この発泡成形品の製造装置1は、足踏み部21を力点としたテコの原理で金型収容部12を上昇させることができる。従って、モータやエアーピストンなどの動力を利用することなく、人力によって重い金型Kを上昇させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用座席に備えるヘッドレストやアームレストなどの小物の発泡成形に利用される製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、発泡成形品の製造装置は、特開平8−150627号公報に記載されているように、ターンテーブル方式が利用される。ターンテーブルの各ステーションでは、金型内に表皮をセットする工程と、金型の内部にウレタンを注入する工程と、成熟(キュア)工程と、脱型工程とが、実行され、ターンテーブルを所定時間のインターバルをもって回転させることで、効率良く発泡成形品を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−150627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の発泡成形品の製造装置は、効率良く大量に発泡成形品を製造することは可能であるが、大型化するので小規模生産には不向きであるといった問題点がある。
【0005】
本発明は、小型化が可能で小規模生産に適した発泡成形品の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金型内に発泡液を注入することで発泡成形品を製造する装置において、
上部に配置されると共に、前記金型に発泡液を注入するノズルを有する発泡液注入ヘッドと、
前記発泡注入ヘッドの下方に配置されると共に、前記金型を収容する金型収容部と、
前記金型収容部を昇降させる足踏みレバーと、を備え、
前記足踏みレバーは、一端に設けられた足踏み部と、他端で前記金型収容部に連結された作用部と、前記作用部側に位置する支点と、を有することを特徴とする。
【0007】
この発泡成形品の製造装置は、発泡液注入ヘッドの下方に金型収容部を備え、この金型収容部を昇降させる足踏みレバーは、一端に設けられた足踏み部と、他端で金型収容部に連結された作用部と、作用部側に位置する支点と、を有しているので、足踏み部を力点としたテコの原理で金型収容部を上昇させることができる。従って、モータやエアーピストンなどの動力を利用することなく、人力によって重い金型を上昇させることができ、自重によって金型を降下させることができる。よって、本発明は、発泡成形品の製造装置の構造を簡易化して、小規模生産に適した小型化を図ることができる。
【0008】
また、前記足踏みレバーのロックを行うロック機構は、
前記金型収容部を上下方向に摺動自在に支持する架台のベース部と前記作用部との間で延在すると共に、前記ベース部側に一端が軸支された第1のリンク部と、一端側が前記作用部側に軸支され、他端側が前記第1のリンク部側に軸支された前記第2のリンク部と、からなるアーム部と、
前記第1のリンク部と前記第2のリンク部とを、デッドポイントを超えた位置で保持する保持部と、を備えると好適である。
アーム部は、デッドポイントを超えた位置で保持部に当接することで、足踏みレバーは、ロック状態に維持することができる。これによって、ロック状態を安定させることができる。
【0009】
また、前記足踏みレバーのロック解除を行うロック解除レバーは、前記アーム部の前記第1のリンク部と前記第2のリンク部との何れか一方に連結され、前記デッドポイントを超える前の状態に戻すように引かれると好適である。
保持部によって保持されたアーム部は、ロック解除レバーを引くことで、第1のリンク部と第2のリンク部との何れか一方が、デッドポイントを超える前の状態に向けて回動し、これによって、足踏みレバーは、ロック解除状態になり、自重によって金型を容易に降下させることができる。
【0010】
また、前記第1のリンク部と前記第2のリンク部との何れか一方と前記架台の前記ベース部との間を連結する引張りバネを有し、前記引張りバネによって前記アーム部を前記保持部に押し当てると好適である。
このような構成を採用すると、引張りバネの付勢力によって、アーム部を、デッドポイントを超えた位置で確実に誘い込むことができ、アーム部と保持部との当接状態を確実に維持させることができる。これによって、不用意にロックが解除されることがなく、発泡液注入工程で、金型内に発泡液を確実に注入させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発泡成形品の製造装置の構造を簡易化して、小規模生産に適した小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る発泡成形品の製造装置の第1の実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明に係る発泡成形品の製造装置の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2に示された装置本体部の側面図である。
【図4】ロック機構及びロック解除レバーを示す斜視図である。
【図5】足踏みレバーのロック状態を示す側面図である。
【図6】金型収容部の降下状態を示す側面図である。
【図7】足踏みレバーのロック解除状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る発泡成形品の製造装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1に示されるように、発泡成形品の製造装置1は、発泡液を貯留するタンク2及び供給ポンプ3を備えた発泡液供給部4と、発泡液供給用のホース5を介して接続される装置本体部10と、で構成されている。
【0015】
装置本体部10は、床面に設置されるベース部11aとベース部11aから立設されるスタンド部11bとを備えた架台11と、上部で架台11のスタンド部11bに固定された発泡液注入ヘッド9と、発泡液注入ヘッド9の下方で架台11のスタンド部11bに昇降自在に取り付けられた金型収容部12と、金型収容部12を昇降させる昇降機構Sと、を備えている。
【0016】
発泡液注入ヘッド9は、所定圧の発泡液を貯留するためのシリンダからなる。そして、発泡液を発泡液注入ヘッド9の下部には、発泡液を注入するためのノズル9aが設けられ、発泡液注入ヘッド9の上部には、発泡液供給用のホース5が接続されている。
【0017】
金型収容部12は、車両のヘッドレストやアームレストなどの小物の発泡成形に利用される金型Kを格納するためにボックス状に形成され、金型収容部12の前部には、下端のヒンジ部6を支点として開閉自在な蓋部12Aが設けられている。
【0018】
この蓋部12Aは、上下に分離され、上側の蓋部12aと下側の蓋部12bとはヒンジ部7により連結され、上側の蓋部12aを大きく開けることができる。蓋部12Aを開けることで、上方から金型Kを金型収容部12内に滑り込ませるようにセットすることができる。さらに、金型収容部12は、スタンド部11bに設けられたガイドレール13によって上下方向に摺動される。
【0019】
昇降機構Sは、金型収容部12の下方に位置して、金型収容部12を昇降させる足踏みレバー20と、足踏みレバー20の作用部22と金型収容部12とを連結する連結レバー14と、を備えている。連結レバー14の一端は金型収容部12に軸支され、連結レバー14の他端は、足踏みレバー20の作用部22に軸支されている。
【0020】
足踏みレバー20は、一端に設けられた板状の足踏み部21と、他端で金型収容部12に連結レバー14を介して連結された作用部22と、ベース部11aから立設された軸受け部15に軸支された支点23と、を有し、この支点23を、作用部22側に位置させることで、テコの原理を利用することができる。
【0021】
このような足踏みレバー20の足踏み部21を足で踏むことで、金型収容部12を動力を利用することなしに容易に上昇させることができる。また、金型収容部12が上昇することで、金型K内にノズル9aが挿入され、金型K内に発泡液(例えばウレタンフォーム)を装填する準備が整う。
【0022】
その後、金型Kのキャビティ内にノズル9aから発泡液が注入され、注入完了後、足踏み部21から足を離すことで、金型Kの自重によって金型収容部12が自然降下する。そして、金型K内でウレタンを成熟(キュア)させた後、蓋部12aを開いて、金型収容部12内から金型Kが取り出される。
【0023】
この発泡成形品の製造装置1は、足踏み部21を力点としたテコの原理で金型収容部12を上昇させることができる。従って、モータやエアーピストンなどの動力を利用することなく、人力によって重い金型Kを上昇させることができ、自重によって金型Kを降下させることができる。よって、発泡成形品の製造装置1の構造が簡易化され、小規模生産に適した小型化を図ることができる。
【0024】
[第2実施形態]
第2の実施形態に係わる発泡成形品の製造装置30について説明する。なお、第1の実施形態に係わる発泡成形品の製造装置1と同等な構成については、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0025】
図2及び図3に示されるように、発泡成形品の製造装置30の装置本体部31は、ガイドレール13の上端と下端にエンドストッパ32を有している。そして、ガイドレール13に沿って昇降する金型収容部12と架台11のスタンド部11bとの間は、ガススプリング33により連結されている。ガススプリング33は、金型Kの収容状態で金型収容部12がその自重により急激に降下しないような付勢力を発生させている。
【0026】
発泡成形品の製造装置30は、金型収容部12を上昇位置でロックするためのロック機構Rと、金型収容部12のロック状態を解除するロック解除レバーLと、を備えている。
【0027】
図4及び図5に示されるように、ロック機構Rは、架台11のベース部11aと作用部22との間で延在するアーム部40と、アーム部40の関節部40aがデッドポイントを超えた位置でアーム部40を保持する保持部50と、を備えている。
【0028】
アーム部40は、ベース部11a側に一端が軸支された第1のリンク部41と、一端側が作用部22側に軸支され、他端側が第1のリンク部41側に軸支された第2のリンク部42とからなり、第1のリンク部41と第2のリンク部42とは、軸支された関節部40aにより連結されている。
【0029】
保持部50は、第2のリンク部42を囲むようにコ字状に形成され、保持部50の一端は、足踏みレバー20に固定されている。そして、第1のリンク部41と第2のリンク部42とが一直線を越えて「く」の字状になった状態(デッドポイントを超えた状態)で、第2のリンク部42は、保持部50の突き当て部50aによって保持される。
【0030】
このように、アーム部40は、デッドポイントを超えた位置で保持部50の突き当て部50aに突き当たることで、足踏みレバー20を、ロック状態に維持させることができる。これによって、足踏みレバー20のロック状態を安定させることができる。
【0031】
更に、引張りバネ60は、第1のリンク部41と架台11のベース部11aとの間に掛け渡され、引張りバネ60によって、第2のリンク部42を保持部50の突き当て部50aに強く押し当てることができる。
【0032】
このように引張りバネ60の付勢力によって、アーム部40を、デッドポイントを超えた位置まで確実に誘い込むことができ、アーム部40の第2のリンク部42と保持部50の突き当て部50aとの当接状態を確実に維持させることができる。これによって、不用意にロックが解除されることがなく、発泡液注入工程において、金型K内に発泡液を確実に注入させることができる。
【0033】
ロック解除レバーLの先端は、第1のリンク部41に軸部70によって連結され、ロック解除レバーLの後端には、ハンドル部72が設けられている。そして、ロック解除レバーLは、架台11のスタンド部11bに取り付けられたガイド筒71内を挿通させられている。
【0034】
図6及び図7に示されるように、ロック状態でロック解除レバーLを手前側に引くと、第1のリンク部41が、デッドポイントを超える前の状態に戻るように手前側に向けて回動し、これによって、足踏みレバー20は、ロック解除状態になり、自重によって金型収容部12を降下させることができる。このとき、足踏みレバー20が跳ね上がるが、ガススプリング33により金型収容部12はゆっくりと降下することになる。
【0035】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0036】
例えば、バネや液圧シリンダによって金型収容部12の上昇力をサポートするようにしてもよい。
【0037】
保持部50は第1のリンク部41と第2のリンク部42の何れを保持してもよい。
【0038】
引張りバネ60は、第1のリンク部41と第2のリンク部42の何れに連結されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1,30…発泡成形品の製造装置、9…発泡液注入ヘッド、9a…ノズル、11…架台、11a…ベース部、12…金型収容部、20…足踏みレバー、21…足踏み部、22…作用部、23…支点、40…アーム部、41…第1のリンク部、42…第2のリンク部、50…保持部、60…引張りバネ、K…金型、L…ロック解除レバー、R…ロック機構。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に発泡液を注入することで発泡成形品を製造する装置において、
上部に配置されると共に、前記金型に発泡液を注入するノズルを有する発泡液注入ヘッドと、
前記発泡注入ヘッドの下方に配置されると共に、前記金型を収容する金型収容部と、
前記金型収容部を昇降させる足踏みレバーと、を備え、
前記足踏みレバーは、一端に設けられた足踏み部と、他端で前記金型収容部に連結された作用部と、前記作用部側に位置する支点と、を有することを特徴とする発泡成形品の製造装置。
【請求項2】
前記足踏みレバーのロックを行うロック機構は、
前記金型収容部を上下方向に摺動自在に支持する架台のベース部と前記作用部との間で延在すると共に、前記ベース部側に一端が軸支された第1のリンク部と、一端側が前記作用部側に軸支され、他端側が前記第1のリンク部側に軸支された前記第2のリンク部と、からなるアーム部と、
前記第1のリンク部と前記第2のリンク部とを、デッドポイントを超えた位置で保持する保持部と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の発泡成形品の製造装置。
【請求項3】
前記足踏みレバーのロック解除を行うロック解除レバーは、前記アーム部の前記第1のリンク部と前記第2のリンク部との何れか一方に連結され、前記デッドポイントを超える前の状態に戻すように引かれることを特徴とする請求項2記載の発泡成形品の製造装置。
【請求項4】
前記第1のリンク部と前記第2のリンク部との何れか一方と前記架台の前記ベース部との間を連結する引張りバネを有し、前記引張りバネによって前記アーム部を前記保持部に押し当てることを特徴とする請求項2又は3記載の発泡成形品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−14038(P2013−14038A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147087(P2011−147087)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】