説明

発熱体の冷却構造及び画像形成装置

【課題】ハウジングに形成された取付孔に装着された発熱体と,上記発熱体の近傍で回転する軸に取り付けられ,一部が送風ファン状の羽根として構成された羽根付きギアとを備え,上記羽根付きギアが回転することによって上記羽根によって送られた風によって上記発熱体を冷却する発熱体の冷却構造における冷却効率の向上を期待しうる冷却構造を提供すること。
【解決手段】上記発熱体を囲む上記ハウジングに,上記羽根によって送られた風が流通し,この風によって発熱体を冷却するための通気孔が形成されてなることを特徴とする発熱体の冷却構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ハウジングに形成された取付孔に装着された発熱体と,上記発熱体の近傍に設けられた軸に取り付けられ,一部が送風ファン状の羽根として構成された羽根付きギアとを備え,上記羽根付きギアが回転することによって上記羽根によって送られた風によって上記発熱体を冷却する発熱体の冷却構造に係り,特に,冷却効率の向上が可能な冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,プリンタ,ファクシミリ装置,複写機等の画像形成装置では,感光体ドラムや中間転写体などの回転機器の駆動源としてサーボモータやステッピングモータが採用されることが多い。その他,多段の給紙カセットを備え,各カセットに対応して設けられた給紙ローラ(給紙部の一例)をクラッチによって切り替えることで,使用するカセットを選択する場合もある。
【0003】
上記のようなモータ類や,クラッチ類は,内部にコイルを備えており,長時間の使用によってかなりの高温になる発熱体として捉えられ,あまりに高温となると上記コイルやそれに近接して設けられたコンデンサなどの電子機器の寿命に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
そのため,例えば特許文献1には,発熱体の近傍に設けられたギアを,その一部が送風ファン状の羽根状部として構成された羽根付きギアとして構成し,この羽根付きギアが回転した時に生じる風によって,上記発熱体を冷却することが提案されている。
【特許文献1】特開2001−336612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記羽根付きギアを用いれば,もともと必要なギア自身が送風ファンとしての機能を有するので,新たに送風手段を設ける必要がなく,場所をとらず,装置の小型化に適切に寄与しうることになる。
しかしながら,特許文献1に示される冷却構造では,羽根付きギアによって起こされた風を単純に発熱体に吹き付けるだけであるので,発熱体の上記羽根付きギアに面した部分については冷却される可能性があるが,発熱体の広い面積,例えばその周囲から広く熱を奪うものではないので,冷却の効率が非常に悪いという欠点は否めない。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,前記したハウジングに形成された取付孔に装着された発熱体と,上記発熱体の近傍に設けられた軸に取り付けられ,一部が送風ファン状の羽根として構成された羽根付きギアとを備え,上記羽根付きギアが回転することによって上記羽根によって送られた風によって上記発熱体を冷却する発熱体の冷却構造における冷却効率の向上を期待しうる冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係る発熱体の冷却構造は,
ハウジングに形成された取付孔に装着された発熱体と,上記発熱体の近傍に設けられた軸に取り付けられ,一部が送風ファン状の羽根として構成された羽根付きギアとを備え,上記羽根付きギアが回転することによって上記羽根によって送られた風によって上記発熱体を冷却する発熱体の冷却構造において,
上記発熱体を囲む上記ハウジングに,上記羽根によって送られた風が流通し,この風によって発熱体を冷却するための通気孔が形成されてなることを特徴とする発熱体の冷却構造として構成される。
【0007】
本発明に係る発熱体の冷却構造においては,上記のように上記羽根の回転によって生じた風が通気孔を流通するので,その周りのハウジングやクラッチ,モータなどの発熱体を効率よく冷却することができる。
【0008】
この場合,前記通気孔は,上記発熱体に隣接して形成されてなるものであれば冷却効率は極めてよくなるであろうし,後記する実施形態のように接して設けられていれば,もっともよくなるであろう。
【0009】
前記通気孔が,上記ハウジングの上記羽根付きギアと対向する部分に形成された流入部と,該流入部と接続され上記発熱体の周囲に形成された隙間部と,該隙間部と接続され上記ハウジングの上記ギアと反対側の部分に形成された流出部とを備えて形成されていれば,上記流入部から入った風が発熱体の周囲に形成された隙間部を通って発熱体を冷却し,そのご流出部から流出することになり,効率のよい冷却構造が提供される。
【0010】
さらに,前記通気孔の一部が,そこを通過する上記風の流れ方向に進む螺旋状壁部により構成されてなるような構造が考えられる。このような螺旋状壁部があれば,風は流れを遮られることなく,この螺旋状壁部に沿って円滑に流れることになり,冷却効率の向上が期待される。
【0011】
冷却すべき発熱体が複数ある場合には,前記通気孔を,近接して設けられた複数の発熱体にわたって連続して形成することで,1つの通気孔で上記複数の発熱体を一挙に冷却することができる。
前記発熱体としては,クラッチ,モータなどの電磁的アクチュエータである場合が多い。
この発明は,上記のようなクラッチやモータを備えた機器に等しく適用可能であるが,前記発熱体が,画像形成装置の給紙部を駆動するクラッチについても適用可能である。そのような場合には,上記クラッチの冷却構造を持った画像形成装置が対象となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る発熱体の冷却構造においては,上記のように上記羽根の回転によって生じた風が通気孔を流通するので,その周りのハウジングやクラッチ,モータなどの発熱体を効率よく冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る発熱体の冷却構造に用いられる羽根付きギアの斜視図,図2はクラッチ取り付けハウジング部分の斜視図,図3は図2に示した部分の羽根付きギアを取り外した状態を示す斜視図,図4は上記クラッチ取り付けハウジング自体の単体の斜視図,図5は上記ハウジングの流出部側から見た部分斜視図,図6は,上記流出部側から見たハウジングの全体を示す正面図である。
【0014】
まず,図1を参照して,本実施形態に用いる羽根付きギアの構造について説明する。
図1に示すように,羽根付きギア1は,後述の回転軸15に取り付けるための取付孔3を備えたボス部5をその中心に有し,上記ボス部5とその外周のギア部7とが複数の(この場合6枚)羽根9によって連結され,一体に構成されている。なお,外周のギア形状は図示省略されている。
上記羽根9は,送風用のファン状に上記ボス部5の軸心に対して所定角度傾斜しており,回転することで,風を送る機能がある。この羽根付きギア1の場合,図示の状態で時計方向に回転することで,紙面の裏から表の方向に風が送られる。
【0015】
この羽根付きギア1が取り付けられるハウジング11は,図3において一点鎖線で示されており(図4に実線で示されている),この場合,図3に示されるように,2個のクラッチ13a及び13bがこのハウジング11に形成された取付孔11a,11bに装着されて埋め込まれて取り付けられている。この実施形態においては上記クラッチ13a及び13bが,本発明における発熱体の一例である。
上記クラッチ13a及び13bは,画像形成装置における給紙部に設けられた給紙ローラを駆動させるためのもので,装置の小型化によって給紙カセットごとの給紙部が非常に近接していることにより,上記クラッチ13a及び13bも,図示のように非常に近接して設けられ,それ故にそれぞれのクラッチで発生した熱の逃げ場がなくなり,温度上昇が著しくなっている。
【0016】
図3に示されるように,ハウジング11には,上記したクラッチ13a及び13bに隣接して,これらのクラッチ13a及び13bに平行な回転軸15が設けられている。この回転軸15が,本発明における軸の一例である。この回転軸15には,図2に示すように上記羽根付きギア1が取り付けられている。なお,図3はこの回転軸15から羽根付きギア1を取り外した状態を示すものである。
【0017】
上記のように羽根付きギア1が,クラッチ13a及び13bの近傍に設けられているので,上記羽根付きギア1が回転することによって上記羽根9によって送られた風によって上記クラッチ13a及び13bの少なくとも表面が冷却される。
この点については,特許文献1に記載された冷却構造と変わるところはない。ただし,この実施形態に係る冷却構造では,上記発熱体の一例である上記クラッチ13a及び13bを取り付けた上記ハウジング11に,上記羽根9によって送られた風が流通し,この風によって上記クラッチ13a及び13bを冷却するための通気孔17が形成されている点において,前記従来技術とは大きく異なる。
上記通気孔17は,上記クラッチ13a及び13bに近接して,特に,前記取付孔11a,11bと,その中に装着したクラッチ13a,13bとの間の隙間部として形成されていることが望ましい。このように構成することで,そこを通る冷却風がクラッチ13a,及び13bに直接接触して流れるので,冷却効率が著しく向上する。
即ち,この実施形態では,上記通気孔17は,上記冷却用の風が,上記クラッチ13a及び13bの周囲を湾曲して流れるように,曲線的に湾曲して構成されている。
【0018】
具体的には,上記通気孔17は,前記羽根付きギア1及びこれが取り付けられた回転軸15と同軸で,上記ハウジング11の上記羽根付きギア1と対向する部分に形成された流入部17aと,この流入部17aに隣接し,流入部17aと連続的に接続されたクラッチ13aの周囲の第1の隙間部17bと,上記第1の隙間部17bと連続的に接続されたクラッチ13bの周囲の第2の隙間部17cと,上記第2の隙間部17cと連続し,上記ハウジング11の羽根付きギア1と反対側の部分に形成された流出部17dとから構成されている。
【0019】
従って,羽根付きギア1の回転によって羽根9で送られた風は,まず,前記流入部17aに流れ込み,その後流入部17aに接続された第1の隙間部17bを通って直接接触するクラッチ13aを冷却し,その後更に第1の隙間部17bと接続された第2の隙間部17cを通って直接接触するクラッチ13bを冷却したのち,前記流出部17dからハウジング11外に排出される。
このように,この実施形態にかかる冷却構造では,羽根付きギア1による風が,単にクラッチのような発熱体に吹き付けられるだけでなく,ハウジング11に形成された通気孔17を経て,クラッチ13a及び13bの周囲を通ってハウジング11の表側から裏側まで通り抜けるので,効率よくクラッチ13a及び13b及びハウジング11を冷却することができる。
通気孔17は,必ずしも上記クラッチ13aあるいは13bと接していなくてもよいが,上記実施形態のようにクラッチ13aあるいは13bと接している場合には,冷却風が直接クラッチに接触するので,特に高い冷却効果が期待されうる。
【0020】
更にこの実施形態に係る通気孔17は,そこを通る風が円滑に流れるようにこの通気孔17の一部が,そこを通過する上記風の流れ方向に進む螺旋状壁部19により構成されている。このような風の流れ方向に進む(図3の場合,紙面手前から紙面裏面方向へ進む)螺旋状壁部19が形成されていることによって,風がこの螺旋状壁部19に沿って流れることになり,風の流れが円滑となり,冷却効果が向上する。
【0021】
この実施形態においては,前記したように前記通気孔17が,近接して設けられた複数のクラッチ13aの周囲及び13bの周囲にわたって連続して形成されているが,これは一例であって,クラッチ毎に独立に形成してもよいことは言うまでもない。
また,通気孔17が,近接して設けられた複数のクラッチ13a及び13bにわたって連続して形成されている場合であっても,排気部を構成する流出部17dについては,クラッチ毎に設けられてもよい。この実施形態では,このように流出部17dが図5に示すようにクラッチ毎に設けられている場合である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る発熱体の冷却構造に用いられる羽根付きギアの斜視図。
【図2】クラッチ取り付け用のハウジング部分の斜視図。
【図3】図2に示した部分の羽根付きギアを取り外した状態を示す斜視図。
【図4】クラッチ取り付け用のハウジング自体の単体の斜視図。
【図5】ハウジングの流出部側から見た部分斜視図。
【図6】流出部側から見たハウジングの全体を示す正面図。
【符号の説明】
【0023】
1…羽根付きギア
3…取付孔
9…羽根
11…ハウジング
13(13a,13b)…クラッチ(発熱体)
15…回転軸
17…通気孔
17a…流入部
17b…第1の隙間部
17c…第2の隙間部
19…螺旋状壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに形成された取付孔に装着された発熱体と,上記発熱体の近傍に設けられた軸に取り付けられ,一部が送風ファン状の羽根として構成された羽根付きギアとを備え,上記羽根付きギアが回転することによって上記羽根によって送られた風によって上記発熱体を冷却する発熱体の冷却構造において,
上記発熱体を囲む上記ハウジングに,上記羽根によって送られた風が流通し,この風によって発熱体を冷却するための通気孔が形成されてなることを特徴とする発熱体の冷却構造。
【請求項2】
前記通気孔が,上記発熱体に隣接して形成されてなる請求項1記載の発熱体の冷却構造。
【請求項3】
前記通気孔が,上記ハウジングの上記羽根付きギアと対向する部分に形成された流入部と,該流入部と接続され上記発熱体の周囲に形成された隙間部と,該隙間部と接続され上記ハウジングの上記ギアと反対側の部分に形成された流出部とを備えて形成されてなる請求項1あるいは2のいずれかに記載の発熱体の冷却構造。
【請求項4】
前記通気孔の一部が,そこを通過する上記風の流れ方向に進む螺旋状壁部により構成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の発熱体の冷却構造。
【請求項5】
前記通気孔が,近接して設けられた複数の発熱体にわたって連続して形成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の発熱体の冷却構造。
【請求項6】
前記発熱体が,クラッチ,モータなどの電磁的アクチュエータである請求項1〜5のいずれかに記載の発熱体の冷却構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の発熱体の冷却構造を備えた画像形成装置。
【請求項8】
前記発熱体が,画像形成装置の給紙部を駆動するクラッチである請求項7記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−302548(P2008−302548A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150222(P2007−150222)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】