説明

発熱構造体収納用容器および内部発熱装置

【課題】 発熱構造体より発生する熱が発熱構造体収納用容器へ伝導するため発熱構造体収納用容器の表面温度が高くなる。
【解決手段】 発熱構造体収納用容器は、内部にヒータを備えることにより、若しくは内部で起こる化学反応の反応熱により発熱する発熱構造体2を収容する中空部を有する筐体と、筐体の内面に配置され、発熱構造体2が載置される台座6を備える。台座6は、内部に真空領域を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイクロ化学システムにおける発熱構造体を収納するための発熱構造体収納用容器および内部発熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精密加工技術の進歩発展により、マイクロテクノロジーとよばれる新しい概念が登場してきた。特に、微小空間を活用して、液体や気体を高速、高精度で制御し反応させるマイクロ化学システムは、反応・分析の効率化・高速化のための革新的な技術としてだけでなく、新反応系の場としても注目を集めている。
【0003】
このマイクロ化学システム(プラント)は、マイクロ加工技術によってつくられた幅数μmから数百μmのマイクロ流路を基本に、各種のマイクロ反応器(マイクロリアクター等)の機能デバイスから構成されるシステムである。そして、このマイクロ化学プラントは熱移動や物質移動速度が格段に大きく、化学反応の効率を飛躍的に増大させる可能性が指摘されているとともに、化学反応を効率良く維持させるためには、各種マイクロ反応器を周囲から断熱した状態で保持することが重要となる。
【0004】
一方、このマイクロ化学システムを携帯機器用のシステムとして採用するにあたっては、反応器内部は原料反応に必要な高い温度を安定維持しつつ、反応器収容用容器の外部は、携帯性に問題がない程度の低い温度に保つことが要求されると同時に、小型化および低背化に優れることが求められる。
【0005】
それゆえ、例えば、基体と蓋体とから成る反応器収納用容器内部を真空状態にすることにより、反応器内で発生する熱の外部への伝導を遮断し、且つ台座を用いて小さな接合面で反応器を保持することで、発電損失の少ないマイクロ反応器システムを提供することができる。
【特許文献1】特開2003−2602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように台座を用いて反応器を載置する反応器収納用容器において、反応器内で発生する熱の外部への伝導を遮断するためには、熱伝導の観点から台座を伝導する熱の流れ方向と直交方向の台座の断面積を小さくする、および台座の高さを高くすること等が考えられるが、台座の熱の流れ方向と直交方向の断面積を小さくすることは、台座と反応器および台座と反応器収納用容器との接続強度が不足し、接続信頼性の低下につながる。
【0007】
さらに、反応器内部に燃料の反応に必要な温度まで上昇させるためのヒータを内蔵した場合、ヒータと反応器収納用容器とを、例えばワイヤボンディング法で電気的に接続する必要がある。しかし、反応器を支える台座の熱の流れ方向と直交方向の断面積が極めて小さく、その強度が小さい場合には、ワイヤボンディング作業時のツールの圧力により台座自体が破壊されてしまう。その結果、反応器を反応器収納用容器の内部に安定して載置できないおそれがある。
【0008】
本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、例えば反応器等の熱を発する発熱構造体の発生する熱が発熱構造体収納用容器に伝導することを抑制し、また、強固に発熱構造体を載置できる発熱構造体収納用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発熱構造体収納用容器は、発熱構造体を収容する中空部を有する筐体と、該筐体の内面に配置され、前記の発熱構造体が載置される台座とを備え、前記の台座は、内部に真空領域を有する。この発熱構造体収納用容器を、「第1の発熱構造体収納用容器」という。
【0010】
好ましくは、前記の第1の発熱構造体収納用容器において、前記の真空領域の圧力は、10Pa以下である。この発熱構造体収納用容器を、「第2の発熱構造体収納用容器」という。
【0011】
好ましくは、前記の第1又は第2の発熱構造体収納用容器において、前記の台座は、絶縁体である。この発熱構造体収納用容器を、「第3の発熱構造体収納用容器」という。
【0012】
好ましくは、前記の第1又は第2の発熱構造体収納用容器において、前記の台座が絶縁コーティングされている。この発熱構造体収納用容器を、「第4の発熱構造体収納用容器」という。
【0013】
好ましくは、前記の第1乃至第4のいずれかの発熱構造体収納用容器において、前記の台座が断熱コーティングされている。この発熱構造体収納用容器を、「第5の発熱構造体収納用容器」という。
【0014】
好ましくは、前記の第1乃至第5のいずれかの発熱構造体収納用容器において、前記の発熱構造体は、内部にヒータを備えることにより、若しくは内部で起こる化学反応の反応熱により発熱する。この発熱構造体収納用容器を、「第6の発熱構造体収納用容器」という。
【0015】
好ましくは、前記の第6の発熱構造体収納用容器において、前記の発熱構造体は、供給された物質に所定の反応を施して排出する反応器であり、外部から前記の反応器に物質を供給する供給管と、前記の反応器から外部に反応後の物質を排出する排出管とを備える。この発熱構造体収納用容器を、「第7の発熱構造体収納用容器」という。
【0016】
好ましくは、前記の第6または第7の発熱構造体収納用容器は、前記の発熱構造体に電力を供給する配線を備える。この発熱構造体収納用容器を、「第8の発熱構造体収納用容器」という。
【0017】
本発明の内部発熱装置は、上記第1乃至第8のいずれか記載の発熱構造体収納用容器と、前記の台座に載置された前記の発熱構造体とを具備している。
【0018】
好ましくは、上記内部発熱装置において、前記の発熱構造体収納用容器の内部の圧力が10Pa以下である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発熱構造体収納用容器は、発熱構造体を収容する中空部を有する筐体と、筐体の内面に配置され、発熱構造体が載置される台座とを備え、前記の台座は、内部に真空領域を有することから、発熱構造体の発生する熱が発熱構造体収納用容器に伝導することを抑制し、また、強固に発熱構造体を載置できる発熱構造体収納用容器を提供することができる。
【0020】
本発明の内部発熱装置は、発熱構造体収納用容器と、台座に載置された発熱構造体からなることから、断熱性に優れた内部発熱装置を提供することができる。
【0021】
また、断熱性に優れた内部発熱装置を提供することができることから、携帯機器内の他の部品が熱的に影響を受けることを有効に防止でき、そのような内部発熱装置を含むシステムを長期に安定的に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態による発熱構造体収納用容器および内部発熱装置を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態による発熱構造体収納用容器を有する内部発熱装置の構成例を示す断面図である。図1に示されるように、本実施の形態による内部発熱装置1は、発熱構造体2と、その発熱構造体2を収容する発熱構造体収納用容器(以下、単に「収納容器」ともいう。)3とを備える。収納容器3は、凹部を有する基体4と、その凹部を覆う蓋体5と、凹部の底面に配置され、発熱構造体2を載置する台座6とを有する。なお、基体4および蓋体5は、発熱構造体2を収容する中空部を備えた筐体を構成する。
【0024】
また、発熱構造体2は、内部にヒータ(図示せず)を有し、その表面には、ヒータに電気的に接続される電極7が設けられる。この電極7は、基体4に設けられた貫通孔に挿通されるリード端子8に、ボンディングワイヤ9を介して接続される。そして、貫通孔には、基体2の貫通孔にリード端子8を絶縁しつつ封止固定するための絶縁封止材10が存在する。なお、リード端子8は、発熱構造体2に電力を供給する配線である。また、本実施の形態による内部発熱装置1において、発熱構造体2は、内部で化学反応を起こす反応器として作用し、収納容器3は、発熱構造体2の内部に物質を供給する供給路としての供給管11aと、反応後の物質を発熱構造体2の内部から外部に排出する排出路としての排出管11bとを有する。なお、以下では、発熱構造体2および発熱構造体収納用容器3を、それぞれ反応器2および反応器収納用容器3ともいう。
【0025】
この内部発熱装置1において、基体4および蓋体5は、ともに発熱構造体2を収納する容器としての役割を有する。それらは、例えば、SUS、Fe−Ni−Co合金、Fe−Ni合金等のFe系合金や、無酸素銅等の金属材料、酸化アルミニウム(Al)質焼結体、ムライト(3Al・2SiO)質焼結体、炭化珪素(SiC)質焼結体、窒化アルミニウム(AlN)質焼結体、窒化珪素(Si)質焼結体、ガラスセラミックス等のセラミック材料、ポリイミド等の高耐熱の樹脂材料等で形成されている。
【0026】
基体4および蓋体5に適用可能なガラスセラミックスとしては、ガラス成分とフィラー成分とが挙げられる。
【0027】
ガラス成分としては、例えばSiO−B系、SiO−B−Al系、SiO−B−Al−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)、SiO−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは同一または異なってCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)、SiO−B−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは前記と同じである)、SiO−B−MO系(但し、MはLi、NaまたはKを示す)、SiO−B−Al−MO系(但し、Mは前記と同じである)、Pb系ガラス、Bi系ガラス等が挙げられる。
【0028】
また、フィラー成分としては、例えばAl、SiO、ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル、ムライト、コージェライト)等が挙げられる。
【0029】
基体4および蓋体5は、基体4および蓋体5で形成される空域部(内部)12に反応器2を収納できればよく、例えば図1に示したように、凹部を有する枠状の基体4と板状の蓋体5のほか、板状の基体4とコの字を90度左に回転させたような蓋体5であってもよい。
【0030】
この場合、基体4と蓋体5は、内部を気密に封止するため、はんだや金属ロウ材等で接合する方法や、基体4が凹部を有する場合には、凹部の上面に鉄合金等で作製されたシールリング等を接合して、シームウェルド、エレクトロンビームやレーザー等の方法にて接合してもよい。なお、プロジェクション法、シームウェルダー法、電子ビーム法、レーザービーム法等の溶接法による基体4と蓋体4との接合は、基体4と蓋体4の接合部及びその近傍のみが加熱されることから、熱応力がによる負荷が少ない形成法である。
【0031】
例えば、Au−Snロウ材により接合する場合は、蓋体5に予めAu−Snロウ材を溶着させておくか、あるいは金型等を用いて打ち抜き加工等で枠状に形成したAu−Snロウ材を基体4と蓋体5との間に載置した後、封止炉あるいはシームウェルダーで蓋体5を基体4に接合する。
【0032】
また、基体4および蓋体5は、反応器収納用容器3の小型化、低背化を可能とするために、厚さを薄くするのが好ましいが、基体4および蓋体5の強度を維持すべく、機械的強度である曲げ強度は200MPa以上とするのが好ましい。例えば、曲げ強度が200MPa以上の場合には、基体4および蓋体5の機械的強度が十分であり、荷重が加わった際に破壊してしまうことを防止することができる。
【0033】
また、基体4および蓋体5が、相対密度が95%以上の緻密質の酸化アルミニウム質焼結体で形成される場合、以下のようにして作製される。
【0034】
まず酸化アルミニウム粉末に、希土類酸化物粉末や酸化アルミニウム粉末等の焼結助剤を添加、混合して、酸化アルミニウム質焼結体の原料粉末を調製する。次いで、この原料粉末に有機バインダおよび分散媒を添加、混合してペースト化し、このペーストをドクターブレード法によって、あるいは原料粉末に有機バインダを加え、プレス成形、圧延成形等によって、所定の厚みのグリーンシートを作製する。その後、所定枚数のシート状成形体を位置合わせして積層圧着した後、この積層体を、例えば非酸化性雰囲気中、焼成最高温度が1200〜1500℃の温度で焼成して、目的とするセラミック製の基体4および蓋体5を得る。なお、基体4および蓋体5の成形は粉末成形プレス法であっても良い。
【0035】
一方、基体4および蓋体5が金属材料から成る場合は、切削法、プレス法、MIM(Metal Injection Mold)法等により所定の形状に形成される。
【0036】
さらに、基体4および蓋体5が金属材料から成る場合には、腐食を防止するためにその表面は、例えばAu、Niのめっき処理や、ポリイミド等の樹脂コーティング等の被覆コーティング処理が行なわれることが望ましい。例えばAuめっき処理の場合であれば、その厚さは0.1〜5μm程度であることが望ましい。
【0037】
また、基体4および蓋体5で構成される反応器収納用容器3の少なくとも内側表面をAuやAlのめっき処理膜で覆うことにより、収容された反応器2で発生する輻射熱を効率良く防ぐことができ、反応器収納用容器3の昇温を抑制することが可能となる。
【0038】
また、基体4は、反応器2に接合される供給管11aおよび排出管11bが貫通するための貫通孔13a、および電極7と接合されるリード端子8が貫通するための貫通孔13bを有する。
【0039】
なお、貫通孔13a、13bは、切削法、プレス法、エッチング法、ブラスト法等により所定の形状に作製される。
【0040】
台座6は、反応器収納用容器3の底面に設置され、反応器2を反応器収納用容器3の内部に載置固定する役割を持つ。本実施の形態による反応器収納用容器3において、台座6は、内部に真空領域を有し、好ましくは、その真空領域の圧力が10Pa以下である。このように、内部に真空領域を有する台座6を用いることにより、反応器2が発した熱が台座6を介して反応器収納用容器3に伝達することを抑制することができる。また、内部が真空領域を有する台座6を用いることにより、反応器2と台座6との接合面積および反応器収納用容器3と台座6との接合面積を比較的高い自由度で設計することができることから、台座6の形状を比較的任意に選択することができる。よって、内部が10Pa以下より成る台座6に反応器2が載置されることにより、台座6による熱伝導を遮断する効果をより向上させることができるとともに、台座6と基体4との接合面積を接合材の量を調整することにより大きくして台座6を反応器収納用容器3の内側に高強度で接合させることができる。その結果、反応器2から反応器収納用容器3に伝導する熱をさらに低減できると同時に、反応器収納用容器3の内壁に高強度で固定された台座6によって反応器2を安定して収納することが可能な、高い信頼性を有する反応器収納用容器3を提供することができる。なお、台座6の形状は、直方体形状、円柱形状、多角形柱形状、種々の立体形状を採用し得る。
【0041】
本実施の形態による反応器収納用容器3によれば、反応器2を載置するための内部に真空領域を有する台座6を有していることから、反応器2は反応器収納用容器3の内壁に直接載置したものではないため、反応器2が発した熱が容器に直接大量に伝導することを防止することができる。そのため、反応器収納用容器3の表面の温度が上昇することもなく、この反応器収納用容器3の周辺に配置される他の部品が熱による影響を受けることを防止することができる。
【0042】
さらに、反応器収納用容器3は、反応器2が発した熱が容器に直接大量に伝導することがないため、反応器2からの熱を断熱するために反応器収納用容器3の外壁を2重構造にするといったことも必要でなくなることから、その分、反応器収納用容器3の外形を小さくでき、その結果、携帯機器に搭載可能な小型化,低背化を実現した反応器収納用容器3を提供することができる。
【0043】
また、反応器2の温度が熱伝導により低下することがないことから、反応に必要な熱を確保でき反応効率を向上させることも可能となる。
【0044】
また、本実施の形態による反応器収納用容器3によれば、反応器収納用容器3の内部に、内部が真空の密閉空間を構成する台座6が設けられている。このように、台座6が別個の真空空間を構成することから、反応器収納用容器3の内部の真空度が多少低い場合であっても、反応器2からの熱を、反応器収納用容器3の周辺に配置される他の部品に悪影響を与えない程度に断熱することが可能である。すなわち、本実施の形態による反応器収納用容器3によれば、台座6の内部と反応器収納用容器3の内部とをともに真空にすることにより2重に断熱を行なうので、時間の経過と共に反応器収納用容器3内の真空度が多少悪化しても、断熱効果を十分保持することが可能である。
【0045】
また、このような台座6は、反応器2の熱を基体4に伝え難くするために熱伝導率が低い材料が望ましい。台座6が金属の場合、例えば、炭素鋼を始めとする鋼材や、SUS,Fe−Ni−Co合金,Fe−Ni合金等のFe合金、Cu合金等が挙げられるが、燃料改質器8の熱を基体4に伝え難くするという観点からは、熱伝導率が20W/mK以下のSUSやFe−Ni−Co合金が好ましい。なお、台座6の成型は、切削法、プレス法、エッチング法、ブラスト法等により内部に空間が出来るような所定の形状に作製され、真空雰囲気下での溶接手法やロウ付け等で形成される。
【0046】
また、好ましくは、プロジェクション法、シームウェルダー法、電子ビーム法、レーザービーム法等の溶接法により台座6が作製されるのがよい。
【0047】
他方、台座6が例えば酸化アルミニウム等のセラミック材料などで形成されている場合、凹部を有した部品と凹部もしくは板状で内部に空間が形成されるように真空雰囲気下でのろう付け等で形成される。台座6がセラミック材料等の絶縁体であると、台座を介しての外部電位を遮断するため、反応器2がノイズの影響を受けにくい。なお、台座6が金属から成る場合であっても、台座6の表面を絶縁コーティングすることにより、材料が絶縁体に限定されない設計自由度の高い台座6を介して外部電位を遮断することができるため、反応器2がノイズの影響を受けにくい。
【0048】
なお、台座6の表面を断熱コーティングしてもよい。このようにすると、材料が低熱伝導率材料に限定されない設計自由度の高い台座6を用いることができ、熱伝導を遮断する効果を向上させることができる。
【0049】
そして、この台座6上へ反応器2を載置した後に、先に詳述した石英ガラス,硼珪酸ガラス等のガラスや各種セラミックス,無機ポリマーを含む無機接着剤、ポリイミドアミド等の高耐熱性有機材料を含む接着剤、シリコーンゴムや珪素樹脂等の有機珪素化合物、Au−Sn,Au−Si合金等の各種ロウ材から成る材料を用いて接合する。
【0050】
その後、反応器2上の電極7とリード端子8とをボンディングワイヤ9を介して電気的に接続する。さらに蓋体5を用いて基体4の凹部を封止することによって、反応器収納用容器3の凹部内に収容した反応器2を気密に封止した燃料改質装置が形成される。
【0051】
上述の反応器2においては、反応器収納用容器3の内圧が10Pa以下にされている。これにより、反応器2からの放射熱によって基体4や蓋体5に熱が伝わるのを有効に防止することができる。反応器収納用容器の内圧が10Pa以下であればと、反応器2からの放射熱が基体4や蓋体5に伝わりにくくなる。
【0052】
本実施の形態による反応器収納用容器3に収納される反応器2は、反応器2に接合される供給管11aから供給された物質を、他の物質に変化させ、排出管11bより排出するための装置であり、その供給された物質を他の物質に変化させるための微細流路あるいは空隙を内部に有する。
【0053】
反応器2は、特に限定されるものではなく、例えば、シリコン等の半導体、石英、ガラス、金属、セラミックス等の無機材料の基材に、切削法、エッチング法、ブラスト法等により細い溝を形成して液体流路を作製するとともに、操作中の液体の蒸発防止等を目的として、ガラス板、金属等のカバーを陽極接合、ロウ付け、溶接等により表面に密着することにより形成される。またその形状も特に限定されるものではなく、例えば四角形状等があげられる。また、石英、ガラス、金属、セラミックス等の無機材料から成り、その内面に原料を反応生成するための触媒を担持した管状等であってもよい。
【0054】
例えば、物質の反応が吸熱反応の場合、反応器2内には、温度調節機構、例えば、抵抗層等から成る薄膜ヒータ(不図示)や厚膜ヒータ(不図示)を形成し、表面にはこのヒータへ電力を供給する端子として電極7が形成される。この温度調節機構により、反応器2を、原料反応条件に相当する200〜800℃程度の温度条件に調整することで、供給管11aが接続された物質供給口から供給される原料を反応させて、物質排出口に接続された排出管11bから反応生成物を発生させる物質反応を良好に促進することができる。
【0055】
なお、反応器2において、ヒータは、触媒が担持され原料反応をおこなう流路内や空隙内、あるいはその近傍に配置されることにより、ヒータから発生する熱を効率的に原料反応に用いることができる。
【0056】
この反応器2は、蓋体5がAu系,Ag系,Al系等の金属ロウ材やガラス材による接合やシームウェルド法等により基体4にその凹部を覆って取着されることによって、反応器収納容器3内に収納される。
【0057】
例えば、Au−Snロウ材により接合する場合は、蓋体5に予めAu−Snロウ材を溶着させておくか、あるいは金型等を用いて打ち抜き加工等で形成したAu−Snロウ材を基体4と蓋体5との間に載置した後、封止炉あるいはシームウェルダーで蓋体5を基体4に取着することにより、反応器収納用容器3の内部11に反応器2を封止する。
【0058】
反応器収納容器12内の断熱性をさらに向上させるためには、反応器収納容器3内を真空にすることが効果的であり、反応器2を封止する際、真空炉でのロウ材による封止や真空チャンバー内でのシームウェルド法で行なえば良い。
【0059】
また、反応器2は、反応器2上の電極7がボンディングワイヤ9を介して基体4に設けたリード端子8に電気的に接続される。これにより、電極7を通じて反応器2上に形成されたヒータを加熱することができる。その結果、反応器2において反応温度の維持が可能となり燃料の改質反応を安定させることができる。
【0060】
供給管11aおよび排出管11bは、例えば、Fe−Ni系,Fe−Ni−Co系,SUS等の金属材料や、Al質焼結体,3Al・2SiO質焼結体,SiC質焼結体,AlN質焼結体,Si質焼結体,ガラスセラミック焼結体等のセラミック材料や、ポリイミド等の高耐熱の樹脂材料で形成されている。
【0061】
そして、これらの供給管11aおよび排出管11bは、基体4に形成した貫通孔13aに挿通して接合される。この接合方法として、供給管11aおよび排出管11bと基体4を構成する材料により、超音波接合や熱溶着、圧着、樹脂接着剤による接着、Au−SiやAg−Cu等のロウ材による接合、硼珪酸ガラス等のガラスによる接合、同時焼結等の各種方法が適宜用いられる。
【0062】
また、供給管11aおよび排出管11bの内径はφ0.1mm以上として流体の圧力損失を抑えるとともに、小型化,低背化のためにはφ5mm以下とすることが好ましい。
【0063】
供給管11aおよび排出管11bの接合部分の断面形状としては、通常は円形とすればよいが、これに限定されない。すなわち、円形の他には、楕円形や、流体の流れ方向にその辺部を合わせることができる角状のもの、例えば、正方形,長方形が挙げられる。また、肉厚は物質供給や反応物質排出の圧力で変形しない厚みが必要であり、上記の材料から成る場合には、携帯機器等に使用するものでは通常は0.1mm以上であれば良い。また、流れ方向の長さは、反応器2で発生する熱を発電セルに伝えにくくするためには長い程よいが、反応装置システム全体の大きさを考慮した長さにすべきである。
【0064】
また、反応器2の物質供給口,物質排出口と供給管11a,排出管11bとの接続には、石英ガラス,ホウ珪酸ガラス等のガラスや各種セラミックス,無機ポリマーを含む無機接着剤、ポリイミドアミド等の高耐熱性有機材料を含む接着剤、シリコーンゴムや珪素樹脂等の有機珪素化合物、Au−Sn,Au−Si,Au−Ge,Ag−Cu合金等の各種ロウ材から成るものを用いる接続方法が適用でき、これにより気密封止される。
【0065】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、図1に示した例においては、供給管11aおよび排出管11bは反応器2の上面に接合されているが、これらは反応器2の仕様に応じて下面に接合してもよい。
【0066】
また、図1に示した例において、台座6は複数個であるが、反応器2を載置固定するのに十分な接合強度を確保できる場合は、台座6は単数であっても良い。
【0067】
また、上記実施の形態では、発熱構造体2を、内部で化学反応を起こす反応器として説明したが、これに限らず、発熱する装置であれば任意の装置であってよい。さらに、発熱構造体2は、ヒータで加熱されることにより放熱するものであってもよいし、内部で起こる反応により発熱するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の内部発熱装置について実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1・・・・・内部発熱装置(反応装置)
2・・・・・発熱構造体(反応器)
3・・・・・発熱構造体収納用容器(反応器収納用容器)
4・・・・・基体
5・・・・・蓋体
6・・・・・台座
7・・・・・電極
8・・・・・リード端子
9・・・・・ボンディングワイヤ
10・・・・・絶縁封止材
11a・・・・供給管
11b・・・・排出管
12・・・・空域部
13a・・・・貫通孔(供給管/排出管用)
13b・・・・貫通孔(リード端子用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱構造体を収容する中空部を有する筐体と、
該筐体の内面に配置され、前記発熱構造体が載置される台座と
を備え、
前記台座は、内部に真空領域を有することを特徴とする発熱構造体収納用容器。
【請求項2】
前記台座の前記真空領域の圧力が10Pa以下であることを特徴とする請求項1記載の発熱構造体収納用容器。
【請求項3】
前記台座が絶縁体であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発熱構造体収納用容器。
【請求項4】
前記台座が絶縁コーティングされていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発熱構造体収納用容器。
【請求項5】
前記台座が断熱コーティングされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか記載の発熱構造体収納用容器。
【請求項6】
前記発熱構造体は、内部にヒータを備えることにより、若しくは内部で起こる化学反応の反応熱により発熱することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか記載の発熱構造体収納用容器。
【請求項7】
前記発熱構造体は、供給された物質に所定の反応を施して排出する反応器であり、
外部から前記反応器に物質を供給する供給管と、前記反応器から外部に反応後の物質を排出する排出管とを備えることを特徴とする請求項6記載の発熱構造体収納用容器。
【請求項8】
前記発熱構造体に電力を供給する配線を備えることを特徴とする請求項6または請求項7記載の発熱構造体収納用容器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか記載の発熱構造体収納用容器と、前記台座に載置された前記発熱構造体とを具備していることを特徴とする内部発熱装置。
【請求項10】
前記発熱構造体収納用容器の内部の圧力が10Pa以下であることを特徴とする請求項9記載の内部発熱装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−207109(P2008−207109A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46852(P2007−46852)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】