説明

発生器ガスからの還元ガスを供給する方法及び装置

本発明は、鉄鉱石の還元のための還元ガスを、溶融ガス化炉(3)において生産された発生器ガス(20)を冷却し、乾式脱塵することによって提供する方法に関し、また、この方法を実行する装置に関する。この場合、発生器ガス(20)は、この発生器ガスが溶融ガス化炉(3)から排出された後、かつ発生器ガスの乾式脱塵の前に、水噴射及び少なくとも1つの液体熱交換媒体を有する熱交換の両方によって冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石の還元のための還元ガスを、溶融ガス化炉において生産された発生器ガスを冷却し、乾式脱塵することによって提供する方法に関し、また、この方法を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石のための多くの溶融還元法、例えばCOREX(登録商標)又はFINEX(登録商標)においては、必要とされる還元ガスは、溶融ガス化炉において酸素と予備還元された鉄担持体との存在下において、炭素担持体をガス化することによって生産された、いわゆる発生器ガスとして知られるものから提供される。発生器ガスは、還元反応炉における還元ガスとしての使用にとっては粉塵を有しすぎており、鉄鉱石を還元するために使用されるのに好適な温度範囲より高い温度にある。発生器ガスの温度は一定ではなく、溶融ガス化炉における圧力衝撃によって、約1030℃〜1070℃の平均値の前後±50℃までの範囲で変動する。したがって、この発生器ガスを還元反応炉において還元ガスとして使用することを可能とするために、発生器ガスは脱塵され、冷却されなければならない。この出願の明細書中では、発生器ガスは、一度だけ脱塵および冷却が達成された還元ガスとして示されている。ここで、冷却は付随して導管を通過する際の熱損失の形態で発生する温度低下を包含している。
【0003】
例えば特許文献1からは、発生器ガスから粉塵を、サイクロンにおいて乾式脱塵によって除くことが知られている。発生器ガスは、サイクロンから出る還元ガスの部分量が洗浄機において湿式脱塵されるとともに冷却され、続いて圧縮されて、乾式脱塵の前のいわゆる冷却ガスとしての発生器ガスに供給されることによって、冷却される。脱塵され冷却されたいわゆる還元ガスは、このようにしてサイクロンから出る。特許文献1に開示されている冷却ガス回路による冷却は、装置に係る出費の面で非常に複雑であるとともにスペースを必要とする。この冷却回路を実現するために必要とされる、洗浄機及び圧縮機、閉止弁及び制御弁、閉止フラップ及び制御フラップ、並びに騒音防止設備及びクレーンを含む建屋のような設備部品が設けられて、高いエネルギー消費を伴って操業されなければならないこと、特に圧縮機を保守しなければならないことは、この場合には非常に高い保守費用を生じさせる。さらに洗浄機は、特許文献1のような銑鉄生産プラントの排水システムに必要とされる設計寸法に非常に大きく寄与する。冷却ガス回路における洗浄機によって還元ガスから除去されるエネルギーは、利用されることなく洗浄水とともに持ち去られ、冷却塔を介して周囲環境にさらに排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第98/01587号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、発生器ガスが従来技術による冷却ガス回路なしに確実に冷却される方法を提供することであり、したがって上述した従来技術の欠点がこの方法を実施する場合に回避される。同様に、この方法を実施する装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、鉄鉱石の還元用の還元ガスを、銑鉄生産のための溶融ガス化炉において生産された発生器ガスを冷却し、乾式脱塵することによって提供する方法によって達成され、この方法において発生器ガスは、溶融ガス化炉から排出された後、かつ発生器ガスの乾式脱塵の前に水噴射と熱交換との両方によって冷却される。
【発明の効果】
【0007】
溶融ガス化炉、発生器ガス、及び還元ガスという用語は、導入部において上記に定義されたように理解されるべきである。一般的に知られているように、予備還元された鉄担持体は、発生器ガスを生産するための溶融ガス化炉においてさらに完全に還元され、生成した銑鉄は溶融する。還元ガスを提供するためには、二酸化炭素CO、蒸気HO、及び窒素Nに加えて一酸化炭素CO、水素H、及びメタンCH のような還元要素から主に成る発生器ガスが、従来技術のように乾式脱塵及び冷却に供せられる。
【0008】
本発明によれば、発生器ガスはここで、溶融還元ユニットから排出された後であって乾式脱塵の前に、水噴射及び熱交換の両方によって冷却される。
【0009】
冷却は、もはや還元ガスの部分量から生成される冷却ガスを導入することによってもたらされることはないので、従来技術による複雑な冷却ガス回路はここでは無しに済まされる。
【0010】
冷却は、乾式脱塵の前に既にもたらされており、よって粉塵の粒子を冷却し、乾式脱塵のための装置の熱負荷を可能な限り低く保持する。
【0011】
水噴射と熱交換との組み合わせは、発生器ガスが還元ガスの酸化度を設定しつつ冷却されるのを確実にし、還元ガスの酸化度の設定は後続の鉄鉱石の還元及び還元ガスの一定の温度の設定にとって好ましい。ここで一定の温度という用語は、工業的な鉄鉱石の還元プラントとその操業とに関連させて理解され、したがって望ましい温度の値からの小さい制御誤差を除外しない。
【0012】
水噴射のみによる冷却は、水の蒸発及び蒸気と一酸化炭素との反応による還元ガスを提供し、本発明による手順に比較して非常に高い酸化度を有する−これは、熱交換による冷却の放棄が、非常に多くの水が還元ガスに対する特定の望ましい温度を達成するために噴射されなければならず、このことが発生器ガスの酸化度が結果として大幅に増加する理由だからである。
【0013】
ここで、酸化度は以下の式によって規定される。
(CO+HO)/(CO+CO+H+HO)
【0014】
熱交換システムの慣性の理由により、熱交換システムが冷却されるガス流の温度変動に反応する場合には、還元ガスの温度も所与の大幅に変動する発生器ガス温度と同様に変動するという問題がある。熱交換のみによる最大温度における確実な冷却は、最大温度ピークと生じる発生器ガスの処理容量とに必要とされるプラント用部品を設計することが必要である。このことによって、温度ピークより低い発生器ガスの温度における、発生器ガスの過剰な冷却を確実に回避するという課題が生じる。
【0015】
発生器ガスを冷却するための水噴射と熱交換との本発明による組み合わせは、2つの個別の冷却コンセプトのこれら欠点を回避する。熱交換による不活性な反応による冷却は、迅速に反応する水噴射によって補われ、還元ガスの酸化度への水噴射の負の影響は、冷却のすべてが水噴射によって行われるのではなく、熱交換もまた冷却中に放散される熱のいくらかを除去するという事実によって減少する。
【0016】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、熱交換は少なくとも1つの液体熱交換媒体によって実施される。液体熱交換媒体は、熱交換器の表面温度を450℃未満に確実に保持できるように使用される。ガス又は蒸気による冷却は、反対に、熱伝導率が低く、従って熱交換器の高い表面温度の危険があるという欠点を有する。450℃未満の熱交換機の表面温度は、発生器ガスの成分との反応による熱交換器のメタルダスティング腐食のリスクを回避するために好ましい。
【0017】
液体熱交換媒体は、例えば圧縮されるとともに特別に処理されたものとすることができる水(例えば鉱物質を除去されるか脱塩された水)、又は、例えば合成油又はオーガニックオイルから生産された熱オイルである。鉄鋼プラント石油化学プラント及びORCプラントにおいては、放熱又は排熱回収のための例えば商業的に入手可能な熱オイルTHERMINOL(登録商標)66が使用される。
【0018】
熱に対する熱オイルの主な利点は著しく高い沸点であり、この沸点は300℃より高くすることができる。さらに、熱オイルの使用は、熱オイルが大気圧で使用され、従って水を使用するプラントとは対照的に、プラントを過剰圧力用に設計する必要がないので、装置の観点から管理が容易である。特に、水は過剰圧力で使用されることが多く、したがってプラントはより安定して設計されなければならない。しかし、本発明によれば、熱オイルを過剰圧力にて使用することもまたもちろん可能である。
【0019】
水に比較した欠点は、熱が使用される場合に、熱オイルから得られた熱を別の生産媒体につなげる必要があることである。さらに、熱オイルは水よりも小さな熱容量しか有さず、蒸発熱を飽和蒸気作業の場合には使用することができない。
【0020】
水噴射は、熱交換の前、間、又は後に行うことができる。水噴射を熱交換の前、間、又は後に行うことは好都合である。このように、水噴射のために十分な蒸発距離を提供すること、及び発生器ガスの温度の同等化を乾式脱塵の前により容易に達成することができる。
【0021】
特に、水噴射が熱交換の前及び/又は間に行われる場合、液体熱交換媒体の入り口温度が70℃の、好ましくは100℃の最低温度、及びメタルダスティング腐食が熱交換のための装置の材料において発生器ガスとの反応によって起きる最低の温度より低い最高温度、好ましくは450℃、特に好ましくは150℃を有する温度範囲内にあると好都合である。
【0022】
入り口温度が100℃〜150℃の温度範囲内にあるのが好ましい。
【0023】
これは、水噴射が熱交換の前及び/又は間に実施する場合には、発生ガスの蒸気濃度が上がり、したがって熱交換用の装置の表面が蒸気の凝縮を確実に避けることを可能にするからである。このような凝縮は、発生器ガスに同伴されるダストの望ましくないケーキングの形成の危険を伴う。70℃、好ましくは100℃の最低温度において、凝縮の危険は大幅に回避される。
【0024】
最高温度は、メタルダスティング腐食を避けるために、メタルダスティング腐食が熱交換用の装置の材料上における発生器ガスとの反応によって生じる最低温、好ましくは450℃より低くなければならない。メタルダスティング腐食は通常は、熱交換のための装置中の過剰に高い表面温度の結果として熱交換のための装置用の一般的な材料の場合には約450℃〜900℃の範囲で生じる。
【0025】
水噴射が、熱交換後の発生器ガスの温度に従って調整されることが好ましい。水噴射が、乾式脱塵によって生産される還元ガスの温度に従って調整されることが好都合である。このように、還元ガスの温度の変化に適切に反応することが可能である。
【0026】
ともかく、水噴射を調整するために使用される温度は、水噴射が実行された後の発生器ガス(又は還元ガス)の温度とすべきである。好ましい実施形態によれば、この調整は、水噴射による冷却能力に加えて熱交換によって提供することができる冷却の能力に関する情報を算入して実行される。
【0027】
例えば、水噴射の調整Aを前提として実行される冷却が、熱交換によっては還元ガスに対する望ましい温度まで冷却することができない、熱交換にかけられる発生器ガスの温度をもたらすことが予測される場合、水噴射の調節は調節Bに調整され、これにより、熱交換の冷却能力による望ましい温度を設定することを可能にする。
【0028】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、熱交換中に発生器ガスから引き抜かれる時間当たりの熱量、すなわち冷却能力は、熱交換媒体の温度及び/又は時間当たりに供給される熱交換媒体の量を変化させることによって調整される。この調整も、乾式脱塵によって生産された還元ガスの温度に従って実行することができる。また、調整のための乾式脱塵の前に、熱交換の下流で発生器ガスの温度を使用することができる。ともかく、調整のために使用される温度は、熱交換が実行された後の発生器ガスの(又は還元ガスの)温度であるべきである。
【0029】
好ましい実施形態によれば、熱エネルギーの特定の基本量は発生器ガスから熱交換によって引き抜かれ、追加的に引き抜かれる多量の熱は水噴射によって引き抜かれる。発生器ガスの温度における変動の理由によって、これら追加的な多量の熱は長期にわたって変化する。水噴射は、発生器ガス温度における変動への冷却能力の、熱交換による冷却能力の調整より容易かつ迅速な適応を可能にする。
【0030】
従来技術による冷却ガス回路とは逆に、本発明のさらなる利点は、発生器ガスに同伴した石炭塵の噴射水とのガス化反応によって、水噴射が不均一な反応によるCO及びH2のような還元成分の形成に寄与するという事実にある。
C+HO→CO+H
【0031】
対応して発生器ガスからの変換された石炭塵は乾式脱塵中に分離されることはなく(このことは乾式脱塵装置への負荷を軽減する)、還元ガスの還元能力に寄与する。
【0032】
また、本発明は本発明による方法を実施するための装置にも関し、この装置は、還元ガスによって鉄鉱石を還元するための還元反応炉と、炭素担持体を、酸素と予備還元された鉄担持体との存在下においてガス化することによって発生器ガスを生産するための溶融ガス化炉とを備え、これら溶融ガス化炉と還元反応炉とはガスラインによって接続され、このガスラインには乾式脱塵装置が設けられ、水噴射のための装置と熱交換のための装置とが、溶融ガス化炉と乾式脱塵装置との間においてガスラインに設けられている。
【0033】
鉄鉱石を還元するための還元反応炉は、例えば、固定床反応炉又は流動床反応炉とすることができる。また、複数のこのような還元反応炉は、直列に設けられるか、または並列に接続することができる。還元反応炉においては、鉄鉱石は、還元ガスによって少なくとも部分的に還元される。
【0034】
例えばCOREX(登録商標)又はFINEX(登録商標)から既知である溶融ガス化炉においては、発生器ガスが生産される。溶融ガス化炉と還元反応炉とは、ガスラインによって接続されている。乾式脱塵装置、例えばサイクロン又はセラミック高温ガスフィルタがガスラインに設けられて、溶融ガス化炉からガスライン中に供給された発生器ガスを脱塵する。
【0035】
水噴射のための装置および熱交換のための装置の両方が、溶融ガス化炉と乾式脱塵装置との間のガスラインに設けられている。
【0036】
溶融ガス化炉からガスライン中に供給された発生器ガスは、還元反応炉の方向に流れる。この場合、発生器ガスは水噴射のための装置および熱交換のための装置の両方を通過して、これら水噴射のための装置および熱交換のための装置によって冷却され、乾式脱塵装置を通過して、この乾式脱塵装置によって発生器ガスに含まれる粉塵が低減される。還元反応炉において還元を行うために好適な温度まで冷却され脱塵された、乾式脱塵装置から出たガスは、本願の記載中では還元ガスとして表されている。還元ガスはガスラインを介して還元反応炉に供給される。
【0037】
水噴射のための装置は、例えば発生器ガスライン当たり1〜3つの水ノズルから成る。水ノズルは好ましくは2つの流体ノズルであり、これらノズルは水を、噴霧化ガスとしての窒素又は蒸気、又はプロセスガスによって水を噴霧化する。結果として、液滴サイズは最小化され、発生器ガス中における、噴射された水の蒸発のための短い蒸発距離と、発生器ガス中において、噴射された水を混合するための十分な混合距離とを確保する。
【0038】
短い距離内の蒸発及びこの場合における混合は、噴射された水の冷却作用を十分に引き出すのを助ける。
【0039】
熱交換のための装置が、1つの発生器ガスラインに対して1つ又は複数の間接的熱交換機を意味していることが理解されるべきである。典型的なCOREX(登録商標)又はFINEX(登録商標)プラントは、4つの発生器ガスラインを有している。熱交換器は、水予熱器として、又は水蒸発器として作動させることができる。過熱器としての作動は一般的には不利である。これは、この場合には熱交換機から蒸気への熱移動が十分でなく、したがって存在する熱交換器の高い表面温度のせいで、熱交換媒体がメタルダスティング腐食を起こす場合があるからである。しかし、熱交換器の材料が過熱器としての作動の条件下においてメタルダスティング腐食に耐性を有するものである場合には、熱交換器を過熱器として、又はガス‐ガス熱交換器として作動させることも可能である。
【0040】
熱交換のための装置は、複数の熱交換器を有利に有し、これら熱交換器は熱交換媒体用の供給ライン及び排出ラインに対して並列に又は直列に接続されている。これは、生産およびアセンブリーにおける利点を提供し、設置された状態における熱膨張の場合に問題がほとんど生じず、ここで、使用される場合には、熱交換のための特定の表面積を有する大型の熱交換機の代わりに、熱交換のための表面積が全体として大型の熱交換機に相当する複数の小型の熱交換機を使用する場合に利点を適用することができる。
【0041】
好ましい実施形態によれば、熱交換のための装置は冷却ジャケット型熱交換器の形態である。この場合、熱交換器は内側に滑らかな表面を有しするとともに内側には取り付け部品を有さない。このことは、ケーキング及び粉塵によってもたらされる摩耗のような問題を大幅に回避する。
【0042】
冷却ジャケット型熱交換器が、熱交換媒体用のらせん状のガイドを有するのが有利である。これによって、特に効率的な冷却が可能になる。
【0043】
熱交換のための装置は、例えば発生器ガスを導くパイプライン内に配置することができる。しかし、また、熱交換のための装置は、それ自体が前記パイプラインを形成することもできる。
【0044】
発生器ガスを導くためのパイプラインは通常、高温の発生器ガスと、この発生器ガスが運ぶ粉塵に由来する摩耗に対する保護のために、発生器ガスの方に面した耐摩耗性メーソンリーの層を備え、この耐摩耗性メーソンリーの層は、断熱のための断熱メーソンリーの層によって外側に向かって周囲を取り囲まれている。熱交換のための装置が、発生器ガスを導くためのパイプラインの中に配置されている場合には、耐摩耗性メーソンリーの場所に固定される。熱交換のための装置は好ましくは、例えば、熱交換のための装置と断熱メーソンリーとの間に空隙を残し、シール、例えばシリコーンによって覆われたセラミックビーズによってガスによる侵入に対してシールされるように、絶縁メーソンリーの中に可動に固定される。
【0045】
熱交換媒体のための供給ライン及び排出ラインには好ましくは補償機が設けられ、これにより熱交換のための装置の熱交換のための表面積を提供する部分中への供給ライン及び排出ラインの入り口の領域および出口の領域における、熱膨張の場合によって生じる応力及び材料の破壊を回避する。
【0046】
本発明の様々な実施形態によれば、熱交換のための装置は熱交換媒体のための予熱装置として、及び/又は熱交換媒体のための蒸発装置として作動させることができる。
【0047】
1つの実施形態によれば、熱交換のための装置には、液体熱交換媒体、好ましくは水又は熱オイルのための供給ラインが設けられる。
【0048】
水噴射のための装置は、溶融ガス化装置と熱交換のための装置との間、熱交換のための装置の中、又は熱交換のための装置と乾式脱塵装置との間に配置することができる。
【0049】
好ましい実施形態によれば、水噴射のための装置は、溶融ガス化装置と、(発生器ガスの流れの方向において見た場合に)熱交換のための装置の終端との間に配置されている。
【0050】
好ましい実施形態によれば、水噴射のための装置は熱交換のための装置の中に配置されている。
【0051】
水噴射のための装置が、溶融ガス化装置と(発生器ガスの流れの方向において見た場合に)熱交換のための装置の始端との間に配置されているのが好ましい。
【0052】
水噴射のための装置が配置されている実際に選択された場所は、例えば、本発明による方法を実施するための所与の装置のどこで、噴射された水の最適な乱流を達成することができるかに依存する。
【0053】
熱交換のための装置において生産することができる蒸気を、例えばCOREX(登録商標)又はFINEX(登録商標)プロセスにおいて、微加熱用の溶鉱炉蒸気の代替として、又は酸素ノズルのための蒸気噴射システム用に使用することができる。発生器ガスから引き抜かれたエネルギーの熱交換による利用は、鉄鉱石還元又は銑鉄生産の方法が全体的に、より経済的に実施されるのを可能にする。
【0054】
本発明の実施形態が、図面を参照しつつ例示の方法によって後述される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来技術による、溶融ガス化炉から得られた還元ガスによる鉄鉱石還元用の装置の図である。
【図2】図1に類似する本発明による装置の図である。
【図3】発生器ガスを導くとともに冷却ジャケット型熱交換器を設けられたガスライン部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、COREX(登録商標)法に従う従来技術による銑鉄生産用の溶融ガス化炉において生産された発生器ガスを冷却し乾式脱塵することによって、鉄鉱石溶融還元のために還元ガスを供給する方法を実施する装置を示している。
【0057】
鉄鉱石2は還元反応炉1、この場合には固定床反応炉の中に導入され、還元ガスによって還元される。
【0058】
炭素担持体4、鉄鉱石の還元中に還元反応炉中において得られた予備還元された鉄担持体5、及び酸素6が溶融ガス化炉3に導入される。予備還元された鉄担持体5から、完全な還元の結果として溶融ガス化炉3において得られる銑鉄は溶融し、溶融ガス化炉3から取り出すことができる。予備還元された鉄担持体5の存在下において炭素担持体4の酸素6とのガス化反応によって溶融ガス化炉において形成された発生器ガスは、溶融ガス化炉3を還元反応炉1に接続するガスラインを通じて溶融ガス化炉3から排出される。ガスラインのガスライン部分7aは発生器ガスを導く。発生器ガス中の粉塵は、ガスラインに設けられた乾式脱塵装置8、ここではサイクロンにおいて低減される。サイクロンにおいて分離された粉塵は溶融ガス化炉3の中に戻される。乾式脱塵装置8から出る還元ガスの部分量は洗浄機9において湿式洗浄にかけられ、このプロセスにおいて残留する粉塵を大幅に取り除かれて冷却される。洗浄機9から取り出されたガスの部分量は、圧縮の後、乾式脱塵装置8に入る前の発生器ガスに供給される。これは、乾式脱塵装置8に入る発生器ガスの温度を低下させる、すなわち発生器ガスは冷却される。
【0059】
したがって、還元ガスは、本願の記述に従って乾式脱塵装置9から出る。したがって、発生器ガスはガスライン部分7a中を導かれ、還元ガスはガスライン部分7b中を導かれる。ガスラインは、2つのガスライン部分7a及び7bからなる。洗浄機10における洗浄の後、還元反応炉1から出る炉頂ガスが、洗浄機9において処理された還元ガスの部分量とともに送出ガス11としてさらなる需要、例えば発電所又はペレット化システムへ、エネルギープロバイダーとして供給される。
【0060】
湿式洗浄のため、圧縮のため、及び、湿式洗浄され、圧縮された還元ガスを発生器ガス中に供給するために使用される装置の部分は冷却ガス回路として参照されている。
【0061】
図2は、図1に相当する本発明による装置を示している。装置の相当部分には、図1におけると同じ参照符号がふられている。図1に示された従来技術による装置とは対照的に、洗浄機9および圧縮機を有する冷却ガス回路が存在しない。発生ガスを冷却するために、代わりに、水噴射のための装置12および熱交換のための装置13の両方が、ガスラインの溶融ガス化炉と乾式脱塵装置8、ここではサイクロンとの間に存在している。
【0062】
熱交換のための装置13には液体熱交換媒体14、ここでは加圧水のための供給ラインが設けられている。熱交換のための装置13は冷却ジャケット型熱交換器の形態にあり、冷却ジャケット熱交換器は熱交換媒体‐加圧水のためのらせん状ガイドを有している。
【0063】
水噴射のための装置12は、溶融ガス化炉と熱交換のための装置13との間に配置されている。水噴射は、乾式脱塵によって生産された還元ガスの温度に従って調整される。この目的を達成するために、弁15及び温度センサ16がガスライン部分7bに調整装置17を介して互いにたいして接続されている。
【0064】
図3はガスライン部分7aの部分断面図を示しており、このガスライン部分7aは熱区間のための装置13としての冷却ジャケット型熱交換器18に接続されている。
【0065】
冷却ジャケット型熱交換器18には熱交換媒体のためのらせん状ガイドが設けられており、このガイドは冷却ジャケット型熱交換器18内に破線によって示されている。冷却ジャケット型熱交換器は、ガスライン部分7aの発生器ガスを導くためのパイプライン19内に配置されている。冷却ジャケット型熱交換器の無い部分において、発生器ガスを導くためのパイプライン19は、流れの方向に波状矢印によって示されている、高温の発生器ガス床の発生器ガスに運ばれる粉塵に由来する摩耗に対する保護のための、発生器ガス20に向かって面する耐摩耗性メーソンリー21の層を有し、この耐摩耗性メーソンリー21の層は、断熱のための断熱メーソンリーの層22によって外側に向かって取り囲まれている。冷却ジャケット型熱交換器18が発生器ガスを導くためのパイプライン19内に配置されているところでは、冷却ジャケット型熱交換器18は耐摩耗性メーソンリー21の場所に固定されている。冷却ジャケット型熱交換器18と断熱メーソンリー22の間には中間空間23が空けられており、その結果、冷却ジャケット型熱交換器18は断熱メーソンリー22の中に稼働に固定されている。明瞭性のため、ガスの侵入に対して中間空間23用に存在するシールは図示されていない。
【0066】
熱交換媒体、この場合には(破線によって示される)水のための供給ライン24及び排出ライン25には、(図視されない)補償機が設けられ、これによって、熱交換のための装置の熱交換のための表面積を提供する、冷却ジャケット型熱交換器18の部分中への供給ライン及び排出ラインの入り口の領域および出口の領域における、熱膨張の場合によって生じる応力及び材料の破壊を回避する。
【符号の説明】
【0067】
1・・・還元反応炉
2・・・鉄鉱石
3・・・溶融ガス化炉
4・・・炭素担持体
5・・・鉄担持体
6・・・酸素
7a、7b・・・ガスライン部分
8・・・乾式脱塵装置
9、10・・・洗浄機
11・・・送出ガス
12・・・水噴射のための装置
13・・・熱交換のための装置
14・・・液体熱交換媒体
15・・・弁
16・・・温度センサ
17・・・調整装置
18・・・冷却ジャケット型熱交換器
19・・・発生器ガスを導くパイプライン
20・・・発生器ガス
21・・・耐摩耗性メーソンリー
22・・・耐熱メーソンリー
23・・・中間空間
24・・・供給ライン
25・・・排出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石の還元用の還元ガスを、銑鉄生産のための溶融ガス化炉(3)において生産された発生器ガス(20)を冷却し、乾式脱塵することによって提供する方法であって、
前記発生器ガス(20)が、溶融ガス化炉(3)から排出された後、かつ発生器ガスの乾式脱塵の前に、水噴射と熱交換との両方によって冷却されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熱交換は、少なくとも1つの液体熱交換媒体(14)によって実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体熱交換媒体(14)は水であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体熱交換媒体(14)は熱オイルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記水噴射は、熱交換の前及び/又は間に行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体熱交換媒体(14)の入り口温度が、
70℃、好ましくは100℃の最低温度と、
メタルダスティング腐食が、熱交換のための装置(13)の材料における前記発生器ガス(20)との反応によって起きる最低温度より低い、好ましくは450℃、特に好ましくは150℃の最高温度と、
を有する温度範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水噴射が、前記熱交換後の前記発生器ガス(20)の温度に従って調整されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水噴射が、前記乾式脱塵によって生産される還元ガスの温度に従って調整されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱交換中に発生器ガス(20)から引き抜かれる時間当たりの熱量は、前記熱交換媒体の温度及び/又は時間当たりに供給される前記熱交換媒体の量を変化させることによって調節されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
還元ガスによって鉄鉱石(2)を還元するための還元反応炉(1)と、
炭素担持体(4)を、酸素(6)と予備還元された鉄担持体(5)との存在下においてガス化することによって発生器ガス(20)を生産するための溶融ガス化炉(3)と、
を備え、
前記溶融ガス化炉(3)と前記還元反応炉(1)とはガスラインによって接続されており、前記ガスラインには乾式脱塵装置(8)が設けられ、
水噴射のための装置(12)と、熱交換のための装置(13)と、の両方が、前記溶融ガス化炉(3)と前記乾式脱塵装置(8)との間において、前記ガスラインに設けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項11】
前記熱交換のための装置(13)には、液体熱交換媒体(14)、好ましくは水又は熱オイルのための供給ライン(24)が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記水噴射のための装置(12)は、前記溶融ガス化装置(3)と、(発生器ガスの流れの方向において見た場合に)前記熱交換のための装置(13)の終端との間、好ましくは前記熱交換のための装置(13)中に配置されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記熱交換のための装置(13)は、冷却ジャケット型熱交換器(18)の形態であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記冷却ジャケット型熱交換器(18)は、熱交換媒体用のらせん状のガイドを有する冷却ジャケットを備えることを特徴とする請求項13に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−515850(P2013−515850A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545186(P2012−545186)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067616
【国際公開番号】WO2011/076489
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(595031362)シーメンス・ファオアーイー・メタルズ・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー (23)
【Fターム(参考)】