説明

発進装置

【課題】多板クラッチのクラッチドラムの構造を単純化しつつ、多板クラッチを介して原動機からの動力が伝達されるダンパ装置の主要な構成要素を単板クラッチを介して原動機からの動力が伝達されるダンパ装置と兼用可能にする。
【解決手段】流体伝動装置1のダンパ装置10は、多板摩擦式のロックアップクラッチ機構8を介してエンジンからの動力が伝達されるドライブ部材11と、第1および第2外周スプリングSP11,SP12と、第1中間部材12および第2中間部材14と、内周スプリングSP2と、ドリブン部材15とを含み、ドライブ部材11は、ロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82と共に第2中間部材14を挟み込むように当該クラッチドラム82に連結され、ロックアップクラッチ機構8に向けて延びると共に第1外周スプリングSP11の一端と当接するスプリング当接部11aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多板クラッチとダンパ装置とを備えた発進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発進装置として、原動機に接続されたフロントカバーに向けて移動して当該フロントカバーに対して摩擦板を押圧する多板クラッチと、当該多板クラッチのクラッチドラムに連結されるダンパ装置とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008060940号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、ダンパ装置の詳細な構成が記載されていないが、多板クラッチからダンパ装置に動力を伝達するためには、クラッチドラムをダンパ装置の弾性体に直接当接させることが考えられる。しかしながら、このような構造を採用すると、クラッチドラムの形状が複雑化してしまい、部品の加工性や組立性が悪化してしまうおそれがある。また、ダンパ装置と組み合わされるクラッチとしては、要求されるトルク容量に応じて多板クラッチと単板クラッチとを使い分けるのが一般的であるが、多板クラッチと組み合わされる装置の主要な構成要素を単板クラッチと組み合わされるダンパ装置と兼用することができればコストや部品管理といった様々な面で有利である。
【0005】
そこで、本発明は、多板クラッチのクラッチドラムの構造を単純化しつつ、多板クラッチを介して原動機からの動力が伝達されるダンパ装置の主要な構成要素を単板クラッチを介して原動機からの動力が伝達されるダンパ装置と兼用可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発進装置は、上記主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明の発進装置は、
多板クラッチと、該多板クラッチを介して原動機からの動力が伝達される入力要素、該入力要素から動力が伝達される外周側弾性体、該外周側弾性体の内周側に配置される内周側弾性体、前記外周側弾性体からの動力を前記内周側弾性体に伝達する中間要素、および前記内周側弾性体から動力が伝達される出力要素とを含むダンパ装置とを備えた発進装置において、
前記入力要素は、前記多板クラッチのクラッチドラムと共に前記中間要素を挟み込むように該クラッチドラムに連結されることを特徴とする。
【0008】
この発進装置を構成するダンパ装置の入力要素は、多板クラッチのクラッチドラムと共に中間要素を挟み込むように当該クラッチドラムに連結される。このように、入力要素を中間要素を挟んで多板クラッチのクラッチドラムとは反対側に配置すると共にクラッチドラムに連結し、クラッチドラムとは反対側から外周側弾性体の一端と当接させることで、多板クラッチのクラッチドラムから外周側弾性体との当接機能を省略して当該クラッチドラムの構造を単純化することができる。更に、多板クラッチのクラッチドラムとは反対側に入力要素を配置することで、入力要素が中間要素や出力要素等と干渉するのを抑制可能となり、中間要素や出力要素等に対して、多板クラッチから動力が伝達されるダンパ装置専用の設計を施す必要がなくなる。従って、上記入力要素を省略すると共に、クラッチドラムの代わりに、単板クラッチを構成するピストンに取り付けられると共に当該ピストン側から外周側弾性体の一端と当接する他の入力要素を用いることで、中間要素や出力要素、外周側弾性体および内周側弾性体といった主要な構成要素を単板クラッチを介して原動機からの動力が伝達されるダンパ装置と兼用することが可能となる。
【0009】
また、前記入力要素は、前記多板クラッチに向けて延びると共に前記外周側弾性体の一端と当接する当接部を有してもよい。これにより、他の部材と干渉させることなく入力要素を配置することが可能となる。
【0010】
また、前記中間要素は、前記出力要素により軸方向および径方向に支持されてもよく、前記クラッチドラムは、前記出力要素により径方向に支持されてもよい。これにより、出力要素により軸方向および径方向に支持される中間要素をクラッチドラムと入力要素とで挟み込むことにより、中間要素に特別な加工を施すことなくクラッチドラムおよび入力要素を当該中間要素により軸方向に支持することができる。また、クラッチドラムを出力要素により径方向に支持することで、クラッチドラムに連結される入力要素をも出力要素により径方向に支持することができる。この結果、入力要素を軸方向および径方向に支持するために中間要素や出力要素に特別な加工を施す必要がなくなり、中間要素や出力要素、外周側弾性体および内周側弾性体といった主要な構成要素を単板クラッチを介して原動機からの動力が伝達されるダンパ装置とより容易に兼用することが可能となる。
【0011】
更に、前記外周側弾性体は、周方向に複数配設されてもよく、前記入力要素は、それぞれ前記外周側弾性体の外周を支持する複数の弾性体支持部を有すると共に、互いに隣り合う前記外周側弾性体の一方と当接してもよく、前記中間要素は、複数の前記外周側弾性体を囲むと共に前記クラッチドラムにより径方向に支持され、前記互いに隣り合う前記外周側弾性体の間で両者と当接する第1当接部を有する第1中間部材と、前記互いに隣り合う前記外周側弾性体の他方と当接する第2当接部を有する第2中間部材とを含むものであってもよい。この場合、上記入力要素を省略すると共に、クラッチドラムの代わりに、単板クラッチを構成するピストンに取り付けられると共に、当該ピストン側から外周側弾性体の一端と当接する当接部と、外周側弾性体の外周を支持する弾性体支持部とを有し、第1中間部材を径方向に支持する他の入力要素を用いることで、中間要素や出力要素、外周側弾性体および内周側弾性体といった主要な構成要素を単板クラッチを介して原動機からの動力が伝達されるダンパ装置と兼用することが可能となる。
【0012】
また、前記第1中間部材は、前記クラッチドラムに形成された軸方向延出部により径方向に支持されてもよい。これにより、第1中間部材をクラッチドラムにより容易に径方向に支持することが可能となる。
【0013】
更に、前記第2中間部材は、前記第2当接部を有すると共に前記クラッチドラムと前記入力要素とにより挟み込まれる第1プレートと、前記第1プレートと共に前記内周側弾性体と前記出力要素とを挟み込むように該第1プレートに連結され、前記出力要素により径方向に支持される第2プレートとを含むものであってもよい。
【0014】
また、前記多板クラッチは、前記原動機に接続される動力入力部材に向けて移動して摩擦板を該動力入力部材に対して押圧するピストンを有するものであってもよい。すなわち、このような多板クラッチは、ピストンを動力入力部材に向けて移動させることにより係合することから、当該多板クラッチとダンパ装置との干渉を容易に抑制可能なものである。従って、このような構成の多板クラッチと本発明によるダンパ装置とを組み合わせれば、多板クラッチとの干渉を抑制するために中間要素や出力要素に特別な加工を施す必要がなくなり、中間要素や出力要素、外周側弾性体および内周側弾性体といった主要な構成要素を単板クラッチを介して原動機からの動力が伝達されるダンパ装置とより容易に兼用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る発進装置としての流体伝動装置1を示す部分断面図である。
【図2】流体伝動装置1のダンパ装置10を示す背面図である。
【図3】ダンパ装置10を示す要部拡大斜視図である。
【図4】ダンパ装置10と主要な構成要素を兼用するダンパ装置10Aを示す概略構成図である。
【図5】ダンパ装置10Aを示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る発進装置としての流体伝動装置1を示す構成図である。同図に示す流体伝動装置1は、原動機としてのエンジン(内燃機関)を備えた車両に発進装置として搭載されるトルクコンバータであり、図示しないエンジンのクランクシャフトに接続されるフロントカバー(動力入力部材)3と、フロントカバー3に固定されたポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4と、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5と、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6と、図示しない自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速装置のインプットシャフトに固定されるタービンハブ(動力出力部材)7と、多板摩擦式のロックアップクラッチ機構8と、タービンハブ7に接続されると共にロックアップクラッチ機構8に接続されたダンパ装置10とを含む。
【0018】
フロントカバー3は、センターピース30と、当該センターピース30に溶接により固定されると共に径方向に延びる側壁部34と当該側壁部34の外周から流体伝動装置1の軸方向に延出された外筒部35とを有するカバー本体33とを含む。また、カバー本体33の側壁部34の外周部には、図示しないエンジンのクランクシャフトに取り付けられたドライブプレート(図示省略)と連結されるセットブロック36が溶接等により固定される。ポンプインペラ4は、フロントカバー3の外筒部35に密に固定されるポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。また、タービンシェル50は、タービンハブ7に嵌合されると共にリベットを介して当該タービンハブ7に固定される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、これらポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成する。
【0019】
ロックアップクラッチ機構8は、ダンパ装置10を介して動力入力部材としてのフロントカバー3とタービンハブ7すなわち変速装置のインプットシャフトとを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除することができるものであり、図1に示すように、ダンパ装置10とフロントカバー3の側壁部34との間に配置される。ロックアップクラッチ機構8は、フロントカバー3により軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン80と、ロックアップピストン80と対向するようにフロントカバー3(カバー本体33)の側壁部34に固定される環状のクラッチハブ81と、ダンパ装置10を介して変速装置のインプットシャフトに連結されるクラッチドラム82と、クラッチハブ81の外周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第1摩擦板83(セパレータプレート)と、クラッチドラム82の内周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第2摩擦板(摩擦材を有する板体)84と、ロックアップピストン80よりもダンパ装置10側に位置するようにフロントカバー3のセンターピース30に固定される環状のフランジ部材(油室画成部材)85とを含む。
【0020】
ロックアップピストン80は、センターピース30に形成された第1円筒部(第1支持部)31に嵌合されると共にフロントカバー3(カバー本体33の側壁部34等)の内面と対向する内周部80aと、内周部80aの外周部からダンパ装置10側かつ軸方向に延出された円筒部80bと、円筒部80bから外方かつフロントカバー3に向けて延出された押圧部80cとを有する。図1に示すように、ロックアップピストン80の内周部80aは、Oリング等のシール部材を介してセンターピース30の第1円筒部31の外周面と摺接する。また、ロックアップピストン80の円筒部80bは図示するようにフロントカバー3(カバー本体33)に固定されたクラッチハブ81の内周部にスプライン嵌合され、これにより、ロックアップピストン80は、その一部がクラッチハブ81の内周側に配置されると共に、フロントカバー3により流体伝動装置1の軸方向に移動自在に支持される。更に、ロックアップピストン80の押圧部80cは、クラッチハブ81に嵌合された複数の第1摩擦板83のうちの最もダンパ装置10側に位置する1つの概ね中央部(外周と内周との中央部)と対向する。
【0021】
クラッチハブ81は、カバー本体33の側壁部34の内面に溶接により固定され、クラッチハブ81とクラッチドラム82とは、図示するように、フロントカバー3内の外周側の領域に配置される。また、クラッチドラム82は、図1および図3に示すように、フロントカバー3とは反対側に軸方向に延びる環状部(軸方向延出部)82aと、当該環状部82aの端部からそれぞれ径方向内側に延出された締結部82bとを有する。更に、カバー本体33の側壁部34は、ロックアップピストン80に向けて軸方向に突出するようにプレス成形により形成されると共にクラッチハブ81により支持された複数の第1摩擦板83のうちの最もフロントカバー3側に位置する1つの概ね中央部(外周と内周との中央部)と当接する環状の突出部34aを有する。このようにフロントカバー3(側壁部34)に第1および第2摩擦板83,84の何れか1つと当接する突出部を形成することで、いわゆるバッキングプレート(エンドプレート)を省略して部品点数を削減しつつ、フロントカバー3(側壁部34)に曲げ部を形成することで側壁部34(フロントカバー3)の剛性をより高めることができる。
【0022】
フランジ部材85は、第1円筒部31の内周側で当該第1円筒部31よりもダンパ装置10側に突出するようにセンターピース30に形成された第2円筒部(第2支持部)32に嵌合される基部85aと、Oリング等のシール部材を介してロックアップピストン80の円筒部80bの内周面と摺接してロックアップピストン80の軸方向における移動をガイドする円筒状の外周部85bと、当該外周部85bのロックアップピストン80側の外縁から内方かつ径方向(軸方向と直交する方向)に延びる環状面を有するピストン移動規制部85cとを有する。図2に示すように、センターピース30の第2円筒部32は、径方向からみて第1円筒部31のダンパ装置10側の端部と重なるように形成されており、フランジ部材85の基部85aは、第1円筒部31と第2円筒部32との重なり部分(凹部)まで差し込まれる。従って、第1円筒部31と、第2円筒部32に嵌合されたフランジ部材85とは、径方向からみて重なることになる。そして、フランジ部材85(基部85a)は、スナップリングを用いてセンターピース30(フロントカバー3)に対して軸方向に固定される。また、センターピース30の第2円筒部32は、タービンハブ7に対して回転自在に嵌合され、両者の間にOリング等のシール部材が配置される。
【0023】
フランジ部材85は、ロックアップピストン80の軸方向における移動をガイドすると共に、当該ロックアップピストン80のフロントカバー3(側壁部34)とは反対側に当該ロックアップピストン80と共に係合側油室87を画成する。係合側油室87には、エンジンにより駆動される図示しないオイルポンプに接続された油圧制御装置(図示省略)から変速装置のインプットシャフトに形成された油路やセンターピース30に形成された油路30aを介してロックアップクラッチ機構8を係合させるため(完全係合状態あるいはスリップ状態にするため)の作動油(ロックアップ圧)が供給される。実施例において、センターピース30に形成された油路30aは、図1に示すように、係合側油室87に対して軸方向に開口する。
【0024】
更に、フロントカバー3とロックアップピストン80とは、クラッチハブ81すなわち第1および第2摩擦板83,84の内周側にフロントカバー3やポンプインペラ4のポンプシェル40により画成される流体伝動室9内、すなわち第1および第2摩擦板83,84やポンプインペラ4、タービンハブ7、ダンパ装置10等に作動油を供給するための油路(油室)88を画成する。油路88には、図示しない油圧制御装置から変速装置のインプットシャフトに形成された油路やセンターピース30に形成された油路30bを介して流体伝動室9内への作動油(例えばライン圧等を減圧して得られる循環圧)が供給される。なお、図1に示すように、クラッチハブ81には、油路88と第1および第2摩擦板83,84側すなわち流体伝動室9とを連通させる開口81oが形成され、クラッチドラム82には、油路88側と流体伝動室9とを連通させる開口82oが形成される。
【0025】
ダンパ装置10は、図1および図2に示すように、入力要素としてのドライブ部材11と、複数の第1外周スプリング(外周側弾性体)SP11を介してドライブ部材11と係合する第1中間部材(中間要素)12と、複数の第2外周スプリング(外周側弾性体)SP12を介して第1中間部材12と係合する第2中間部材(中間要素)14と、複数の内周スプリング(内周側弾性体)SP2を介して第2中間部材14と係合するドリブン部材(出力要素)15とを含む。実施例において、第1外周スプリングSP11および第2外周スプリングSP12は、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなるコイルスプリングであり、第1外周スプリングSP11は、第2外周スプリングSP12よりも高い剛性を有する。また、内周スプリングSP2は、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークスプリングである。
【0026】
ドライブ部材11は、フロントカバー3やポンプインペラ4のポンプシェル40により画成される流体伝動室9内部の外周側領域、かつ中間要素としての第2中間部材14を挟んでロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82とは反対側に配置され、リベットを介してクラッチドラム82の複数の締結部82bに固定される。また、ドライブ部材11は、図1および図2に示すように、それぞれロックアップクラッチ機構8に向けて延びると共に対応する第1外周スプリングSP11の一端と当接する複数のスプリング当接部11aと、それぞれ対応する第1または第2外周スプリングSP11,SP12の外周を支持する複数のスプリング支持部(弾性体支持部)11bとを有する。
【0027】
第1中間部材12は、第1および第2外周スプリングSP11,SP12を外側から囲むと共に、ドライブ部材11の複数のスプリング支持部11bと共に第1および第2外周スプリングSP11,SP12を同一円周上で互いに隣り合わせに(交互に)して支持可能な環状部材として構成されている。第1中間部材12は、ロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82により流体伝動装置1の軸周りに回転自在に嵌合され、クラッチドラム82の環状部82aにより径方向に支持されて流体伝動室9内の外周側領域に配置される。また、第1中間部材12は、図1および図2に示すように、それぞれ対応する第1外周スプリングSP11の他端と、当該第1外周スプリングSP11と隣り合う第2外周スプリングSP12の一端との間に配置されて両者と当接する一対のスプリング当接部12a(第1当接部)を複数有する。
【0028】
第2中間部材14は、ロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82とドライブ部材11とにより挟み込まれる環状の第1プレート141と、第1プレート141と共に内周スプリングSP2およびドリブン部材15を挟み込むようにリベットを介して第1プレート141に連結(固定)される環状の第2プレート142とにより構成される。第2中間部材14の第1プレート141は、それぞれ対応する第2外周スプリングSP12の他端と当接する複数のスプリング当接部(第2当接部)141aを外周側に有すると共に、内周スプリングSP2を支持するための複数のスプリング支持部を内周側に有する。また、第2中間部材14の第2プレート142は、それぞれ第1プレート141のスプリング支持部と対向して内周スプリングSP2を支持するスプリング支持部を有する。そして、第1プレート141には、それぞれ対応する内周スプリングSP2の一端と当接する複数のスプリング当接部141b(図2参照)が形成されている。また、第2プレート142にも、それぞれ対応する内周スプリングSP2の一端と当接する複数のスプリング当接部(図示省略)が形成されている。
【0029】
これにより、複数の第1外周スプリングSP11は、それぞれドライブ部材11のスプリング当接部11aと第1中間部材12のスプリング当接部12aとの間に位置するようにダンパ装置10の外周部に配置され、複数の第2外周スプリングSP12は、それぞれ第1中間部材12のスプリング当接部12aと第2中間部材14すなわち第1プレート141のスプリング当接部141aとの間に位置するようにダンパ装置10の外周部に配置されることになる。また、複数の内周スプリングSP2は、それぞれ第1および第2外周スプリングSP11,SP12から流体伝動装置1の径方向に離間して配置され、第1および第2外周スプリングSP11,SP12よりも内周側に位置することになる。
【0030】
ドリブン部材15は、それぞれ対応する内周スプリングSP2の他端と当接する複数のスプリング当接部15aを有し、リベットを介してタービンハブ7に固定される。そして、ドリブン部材15は、第2中間部材14の第1プレート141と第2プレート142との間に配置されて両者により挟み込まれる。また、ドリブン部材15は、軸方向に突出して第2中間部材14の第2プレート142の内周を回転自在に支持する複数のプレート支持部15cを有している。これにより、第2中間部材14は、実施例では、ドリブン部材15により流体伝動装置1の軸周りに回転自在となるように軸方向および径方向に支持される。
【0031】
上述のように、流体伝動装置1に含まれるダンパ装置10のドライブ部材11は、ロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82と共に中間要素としての第1および第2中間部材12,14を挟み込むように当該クラッチドラム82に連結され、それぞれロックアップクラッチ機構8に向けて延びると共に対応する第1外周スプリングSP11の一端と当接する複数のスプリング当接部11aを有する。このように、入力要素としてのドライブ部材11を第1および第2中間部材12,14を挟んでロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82とは反対側に配置すると共にクラッチドラム82に連結し、クラッチドラム82とは反対側から第1外周スプリングSP11の一端と当接させることで、ロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82から第1外周スプリングSP11との当接機能を省略して当該クラッチドラム82の構造を単純化することができる。
【0032】
そして、ロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82とは反対側にドライブ部材11を配置すると共にロックアップクラッチ機構8に向けて延びるスプリング当接部11aと第1外周スプリングSP11の一端とを当接させることで、ドライブ部材11が第1および第2中間部材12,14やドリブン部材15等と干渉するのを抑制可能となり、第1および第2中間部材12,14やドリブン部材15等に対して、多板摩擦式のロックアップクラッチ機構8から動力(トルク)が伝達されるダンパ装置10専用の設計を施す必要がなくなる。従って、図4および図5に示すように、ドライブ部材11を省略すると共に、クラッチドラム82の代わりに、摩擦材801を有して単板摩擦式のロックアップクラッチ機構を構成するロックアップピストン800にリベットを介して取り付けられると共に当該ロックアップピストン800側から第1外周スプリングSP11の一端と当接するスプリング当接部110aを有するドライブ部材110を用いることで、第1および第2中間部材12,14やドリブン部材15、第1および第2外周スプリングSP11,SP12、内周スプリングSP2といった主要な構成要素を当該単板摩擦式のロックアップクラッチ機構を介してエンジンからの動力が伝達されるダンパ装置10Aと兼用することが可能となる。
【0033】
なお、上記実施例において、外周側弾性体としての第1および第2外周スプリングSP11,SP12は、周方向に複数配設され、ドライブ部材11は、それぞれ第1または第2外周スプリングSP11,SP12の外周を支持する複数のスプリング支持部11bを有すると共に、互いに隣り合う第1および第2外周スプリングSP11,SP12の一方である第1外周スプリングSP11と当接する。そして、ダンパ装置10は、複数の第1および第2外周スプリングSP11,SP12を囲むと共にクラッチドラム82の環状部82aにより径方向に支持され、互いに隣り合う第1および第2外周スプリングSP11,SP12の間で両者と当接するスプリング当接部12aを有する第1中間部材12と、互いに隣り合う第1および第2外周スプリングSP11,SP12の他方である第2外周スプリングSP12の他端と当接するスプリング当接部141aを有する第2中間部材14とを含む。従って、ダンパ装置10Aのドライブ部材110は、図4および図5に示すように、スプリング当接部110aに加えて、それぞれ第1または第2外周スプリングSP11,SP12の外周を支持する複数のスプリング支持部110bを有すると共に、第1中間部材12を径方向に支持するように構成されるとよい。
【0034】
また、上記実施例において、中間要素を構成する第2中間部材14は、ドリブン部材15により軸方向および径方向に支持される。また、ロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82は、ドリブン部材15により径方向に支持される。これにより、ドリブン部材15により軸方向および径方向に支持される第2中間部材14をクラッチドラム82とドライブ部材11とで挟み込むことにより、中間要素としての第2中間部材14に特別な加工を施すことなくクラッチドラム82およびドライブ部材11を当該第2中間部材14により軸方向に支持することができる。また、クラッチドラム82をドリブン部材15により径方向に支持することで、クラッチドラム82に連結されるドライブ部材11をもドリブン部材15により径方向に支持することができる。この結果、ドライブ部材11を軸方向および径方向に支持するために第2中間部材14やドリブン部材15に特別な加工を施す必要がなくなり、第1および第2中間部材12,14やドリブン部材15、第1および第2外周スプリングSP11,SP12、内周スプリングSP2といった主要な構成要素を単板摩擦式のロックアップクラッチ機構を介してエンジンからの動力が伝達されるダンパ装置10Aとより容易に兼用することが可能となる。
【0035】
また、上記ロックアップクラッチ機構8は、エンジンに接続される動力入力部材としてのフロントカバー3に向けて移動して第1および第2摩擦板83,84をフロントカバー3に対して押圧するロックアップピストン80を有するものである。このようなロックアップクラッチ機構8は、ロックアップピストン80をフロントカバー3に向けて移動させることにより係合することから、ロックアップピストン80やフランジ部材85といった当該ロックアップクラッチ機構8の構成要素とダンパ装置10との干渉を容易に抑制可能なものである。従って、このような構成のロックアップクラッチ機構8とダンパ装置10とを組み合わせれば、ロックアップクラッチ機構8との干渉を抑制するために第2中間部材14やドリブン部材15に特別な加工を施す必要がなくなり、第1および第2中間部材12,14やドリブン部材15、第1および第2外周スプリングSP11,SP12、内周スプリングSP2といった主要な構成要素を単板摩擦式のロックアップクラッチ機構を介してエンジンからの動力が伝達されるダンパ装置10Aとより容易に兼用することが可能となる。
【0036】
以上説明したように、多板摩擦式のロックアップクラッチ機構8と共に流体伝動装置1を構成するダンパ装置10は、ロックアップクラッチ機構8を介してエンジンからの動力が伝達されるドライブ部材11と、ドライブ部材11から動力が伝達される第1外周スプリングSP11と、第1外周スプリングSP11から動力が伝達される第1中間部材12および当該第1中間部材12および第2外周スプリングSP12を介して第1外周スプリングSP11から動力が伝達される第2中間部材14と、第2中間部材14から動力が伝達される内周スプリングSP2と、内周スプリングSP2から動力が伝達されるドリブン部材15とを含む。そして、ドライブ部材11は、ロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82と共に第2中間部材14を挟み込むように当該クラッチドラム82に連結され、第1外周スプリングSP11の一端と当接するスプリング当接部11aを有する。これにより、多板摩擦式のロックアップクラッチ機構8のクラッチドラム82の構造を単純化しつつ、ロックアップクラッチ機構8を介してエンジンからの動力が伝達されるダンパ装置10の主要な構成要素である第1および第2中間部材12,14、ドリブン部材15、第1および第2外周スプリングSP11,SP12、並びに内周スプリングSP2を単板摩擦式のロックアップクラッチ機構を介してエンジンからの動力が伝達されるダンパ装置10Aと兼用することが可能となる。
【0037】
なお、ダンパ装置10,10Aは、流体伝動室9内の外周側にドリブン部材15が配置されると共に、流体伝動室9内の内周側にドライブ部材11,110が配置されるように構成されてもよく、ダンパ装置10,10Aは、いわゆる並列式のダンパ装置として構成されてもよい。また、上述のダンパ装置10,10Aは、タービンランナからポンプインペラへの作動流体の流れを整流するステータを含まない流体継手に適用されてもよい。更に、ダンパ装置10,10Aにおいて、第1および第2外周スプリングSP11,SP12は、同一諸元のものとされてもよい。
【0038】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0039】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、発進装置の製造分野等において利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 流体伝動装置、3 フロントカバー、4 ポンプインペラ、5 タービンランナ、6 ステータ、7 タービンハブ、8 ロックアップクラッチ機構、9 流体伝動室、10,10A ダンパ装置、11,110 ドライブ部材、11a,110a スプリング当接部、11b,110b スプリング支持部、12 第1中間部材、12a スプリング当接部、14 第2中間部材、15 ドリブン部材、15a スプリング当接部、15c プレート支持部、30 センターピース、30a,30b 油路、31 第1円筒部、32 第2円筒部、33 カバー本体、34 側壁部、34a 突出部、35 外筒部、36 セットブロック、40 ポンプシェル、41 ポンプブレード、50 タービンシェル、51 タービンブレード、60 ステータブレード、61 ワンウェイクラッチ、80,800 ロックアップピストン、80a 内周部、80b 円筒部、80c 押圧部、81 クラッチハブ、81o 開口、82 クラッチドラム、82o 開口、83 第1摩擦板、84 第2摩擦板、85 フランジ部材、85a 基部、85b 外周部、85c ピストン移動規制部、87 係合側油室、88 油路、141 第1プレート、141a,141b スプリング当接部、142 第2プレート、801 摩擦材、SP11 第1外周スプリング、SP12 第2外周スプリング、SP2 内周スプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多板クラッチと、該多板クラッチを介して原動機からの動力が伝達される入力要素、該入力要素から動力が伝達される外周側弾性体、該外周側弾性体の内周側に配置される内周側弾性体、前記外周側弾性体からの動力を前記内周側弾性体に伝達する中間要素、および前記内周側弾性体から動力が伝達される出力要素とを含むダンパ装置とを備えた発進装置において、
前記入力要素は、前記多板クラッチのクラッチドラムと共に前記中間要素を挟み込むように該クラッチドラムに連結されることを特徴とする発進装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発進装置において、
前記入力要素は、前記多板クラッチに向けて延びると共に前記外周側弾性体の一端と当接する当接部を有することを特徴とする発進装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発進装置において、
前記中間要素は、前記出力要素により軸方向および径方向に支持され、
前記クラッチドラムは、前記出力要素により径方向に支持されることを特徴とする発進装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の発進装置において、
前記外周側弾性体は、周方向に複数配設され、
前記入力要素は、それぞれ前記外周側弾性体の外周を支持する複数の弾性体支持部を有すると共に、互いに隣り合う前記外周側弾性体の一方と当接し、
前記中間要素は、複数の前記外周側弾性体を囲むと共に前記クラッチドラムにより径方向に支持され、前記互いに隣り合う前記外周側弾性体の間で両者と当接する第1当接部を有する第1中間部材と、前記互いに隣り合う前記外周側弾性体の他方と当接する第2当接部を有する第2中間部材とを含むことを特徴とする発進装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発進装置において、
前記第1中間部材は、前記クラッチドラムに形成された軸方向延出部により径方向に支持されることを特徴とする発進装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の発進装置において、
前記第2中間部材は、前記第2当接部を有すると共に前記クラッチドラムと前記入力要素とにより挟み込まれる第1プレートと、前記第1プレートと共に前記内周側弾性体と前記出力要素とを挟み込むように該第1プレートに連結され、前記出力要素により径方向に支持される第2プレートとを含むことを特徴とする発進装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の発進装置において、
前記多板クラッチは、前記原動機に接続される動力入力部材に向けて移動して摩擦板を該動力入力部材に対して押圧するピストンを有することを特徴とする発進装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−96558(P2013−96558A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242897(P2011−242897)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(594079143)アイシン・エィ・ダブリュ工業株式会社 (119)
【出願人】(000149033)株式会社エクセディ (270)