説明

発酵用酵素ブレンド

本発明はグルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼを含む酵素ブレンド組成物に関する。さらに、本発明は発酵性糖類からのアルコール類のような最終産物を生産する方法であって、(a)デンプン含有粉砕穀物を含むスラリーをアルファアミラーゼと接触させ液状化物を生産する段階、(b)前記液状化物をグルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼと接触させ発酵性糖類を生産する段階、及び(c)発酵生物の存在下発酵性糖類を発酵させ最終産物を生産する段階を含む方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼを含む酵素ブレンドに関する。また、本発明は例えばエタノールのような最終産物を生産するようなデンプン転換プロセスにおける酵素ブレンドを利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用発酵は、酵素類、タンパク質類、アミノ酸類、有機酸類、糖アルコール類、医薬品類、及び他の生物化学薬品類のような、多くの最終産物の生産のための原料として、グルコースを主に用いる。多くの利用においてグルコースはデンプン及びセルロース(例、全体を粉砕される穀物)含有基質の酵素的転換から生産される。デンプンは、アミロース及びアミロペクチンという二つのポリサッカライド分画を有し、顆粒状粒子として、植物細胞中に存在する。これらの顆粒の部分的結晶構造は冷水中不溶性であり、その結果、水に対するデンプン顆粒の可溶化は一般的に顆粒の結晶構造を崩壊するための熱エネルギーが必要となる。多大なプロセスをデンプン可溶化に使用し、これらは粒状デンプン含有基質の直接的及び間接的加熱を含む(例えば、STARCH CHEMISTRY AND TECHNOLOGY, Eds R.L. Whistler他、2nd Ed., 1984 Academic Press Inc., Orlando FL及びSTARCH CONVERSION TECHNOLOGY, Eds G.M.A. Van Beynum他、Food Science and Technology Series 1985 Marcel Dekker Inc. NYを参照)。
【0003】
一般的に、デンプンからグルコースへの処理は、二段階からなり、これらの段階はデンプンの液状化及び液化デンプンの糖化を含む。さらに、段階は、(a)所望の最終産物が精製デキストロース又はフルクトースの場合に、精製及び異性化又は(b)所望の最終産物が例えば、アルコール(例、エタノール)の場合に、発酵及び蒸留を含んでよい。
【0004】
デンプン液状化プロセスの目的はデンプンポリマー顆粒のスラリーを低粘度のさらに短い鎖の長さであるデキストリンの液体へ転換することである。これは、デンプン転換プロセスにて用いる産業用装置の便利な操作のための重要な段階である。通常、デンプンは高温及び酵素的生物的変換の使用により液化される。例えば、通常の酵素的液状化プロセスは熱安定性微生物のアルファアミラーゼ(例、スペザイム(商標)プライム(SPEZYME(商標)PRIME)及びスペザイム(商標)フレッド (SPEZYME(商標)FRED)、スペザイム(商標)エチル(SPEZYME(商標)XTHYL) (ダニスコユー.エス.インク、ジェネンコ ディビジョン(Danisco U.S., Inc, Genencor Division))、又はターマミルSC(TERMAMYL SC)、ターマミル スープラ (TERMAMYL SUPRA)又はターマミル 120L(TERMANYL 120L) (ノボザイムズ(Novozymes)))を粒状デンプン含有基質を含むスラリーに添加し、pHを5.5から6.5の間及び90℃以上の温度に調整することを伴う。デンプンは液化し、そして、糖化酵素に接触される。典型的に、糖化は、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)(例、オプチデックスL−400(OPTIDEX L−400)(ジェネンコ インターナショナル社(Genencor International Inc)))由来のグルコアミラーゼのようなグルコアミラーゼの存在下液状化段階のpHより酸性のpHで起こる。
【0005】
数多くのバリエーションがデンプン基質の液状化及び糖化には存在する、しかし、デンプンの液状化、糖化、及び発酵のための効率のよい手段の必要性がなお存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明はグルコアミラーゼ(GA)、酸性菌類プロテアーゼ(AFP)、及び酸安定性アルファアミラーゼ(AA)を含む酵素ブレンド組成物に関する。好ましくは、グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼの比がGAU:SSU:SAPUで測定した場合、約1:1.5:0.1から約1:8:1又は約1:2:0.2から約1:5:0.6である。
【0007】
酵素ブレンド組成物は発酵性糖からの最終産物を生産するために有用であり、特に、液状化物からのエタノールの生産に有用である。酵素ブレンド組成物の有利な効果は実質的に同様な条件下グルコアミラーゼを単独に用いて生産されるエタノール量に比較して多くの量のエタノールをもたらすことである。ある態様においては、GA単独と比較して0.5%より大きい増加であり、1.0%、1.5%、2%、及び2.5%より大きい増加を含む。
【0008】
ある態様においては、GAがトリコデルマ種(Trichoderma spp.)、タラロミセス種(Taleromyces spp.)、ペニシリウム種(Penicillium spp.)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)及びフミコーラ種(Humicola spp.)から成る群から選択される糸状菌から得られる。さらなる態様においては、グルコアミラーゼは配列番号1の配列を有するグルコアミラーゼと少なくとも90%の相同性を有し、及び/又はAFPは配列番号14の配列を有するAFPと少なくとも90%の相同性を有し、及び/又はアルファアミラーゼは配列番号5の配列を有するAAと少なくとも90%の相同性を有し、及び/又はアルファアミラーゼは配列番号5の配列を有するAAと少なくとも95%の相同性を有する。
【0009】
酵素ブレンド組成物は任意に一以上の他の酵素を含み、例えば、第二のグルコアミラーゼ、第二のアルファアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、第二のプロテアーゼ類、フィターゼ、プルラナーゼ、ベータ‐アミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ベータ‐グルカナーゼ、ガラクトシダーゼ、エステラーゼ、シクロデキストリントランスグルコシルトランスフェラーゼ、及びそれらの組み合わせを含む。
【0010】
さらに、本発明は発酵性糖類からアルコールのようなの最終産物を生産するための方法に関する。方法は、
(a)デンプン含有粉砕穀物を含むスラリーをアルファアミラーゼと接触させ液状化物を生産する段階、
(b)前記液状化物をグルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼと接触させ発酵性糖類を生産する段階、及び
(c)発酵生物の存在下発酵性糖類を発酵させ最終産物を生産する段階
を含む。
この方法において、段階(b)である糖化及び段階(c)である発酵を連続して行って又は同時に行ってよい。グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼを液状化物に別々に添加してよい。あるいは、グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼを含む酵素ブレンド組成物を液状化物へ添加してよい。処理の間に任意に、アルファアミラーゼ、グルコアミラーゼ、フィターゼ、セルラーゼ、プルラナーゼ、プロテアーゼ、又はラッカーゼのような少なくとも一つの他の酵素を用いてよい。また、方法は最終産物を回収する段階を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1は実施例2にさらに記載のように液状化した全粉砕トウモロコシを用いた同時糖化/発酵の間、異なる酵素ブレンドを用いて得られる最終アルコール濃度を示す。Y軸は%エタノールを示し(V/V)、X軸は次の通りである。
1.TrGA、0.25GAU/gds トウモロコシ、
2.番号1 + 0.05SAPU AFP/gds トウモロコシ
3.番号1 + 2.0SSUアルファアミラーゼ/gds トウモロコシ、
4.番号1 + 0.05SAPU、AFP + 2.0SSUアルファアミラーゼ/gds トウモロコシ
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書にて他に定義されていない限り、本明細書で用いるすべての技術的及び特別な用語はこの発明に属する当業者によって普通に理解されるものと同様の意味を持つ。Singleton、他、 DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 2D ED.、John Wiley and Sons, New York (1994)及びHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY (1991)が、当業者には本発明で用いられる用語の多くの一般的辞書となる。さらに、特定の用語は明瞭性のため及び参照の場合のために下記に定義する。
【0013】
「アルファアミラーゼ(Alpha amylases)」はアルファ‐1、4、‐4‐グルカン‐グルカノヒドロラーゼ(E. C. 3.2.1.1)であり、デンプン(例、アミロペクチン又はアミロースポリマー)中アルファ‐1、4‐グルコシド内部結合を切断又は加水分解する酵素である。
【0014】
用語「ゼラチン化温度より低い(below the gelatinization temperature)」は、ゼラチン化温度より低い温度をいう。
【0015】
用語「DE」又は「デキストロース当量(dextrose equivalent)」は、乾燥重量を基本にD‐グルコースとして計算される、還元糖全体の濃度を測定するための業界基準である。非加水分解粒状デンプンはDEが実質的に0であり、D‐グルコースはDEが100となる。
【0016】
「デキストリン(Dextrins)」はグルコースの短鎖ポリマー(例、2から10単位)である。
【0017】
用語「乾燥固体(dry solids)(ds)」は、乾燥重量を基本として%表示のスラリーの固体の総数をいう。
【0018】
用語「最終産物(end product)」は、発酵基質から酵素的に転換される任意の炭素源由来産物をいう。幾つかの好ましい実施態様においては、最終産物はアルコール(例えば、エタノール)である。
【0019】
本明細書にて用いる用語「エタノール生産体(ethanol producer)」又は「エタノール生産微生物(ethanol producing microorganism)」はモノサッカライド又はオリゴサッカロイドからエタノールを生産することのできる発酵微生物をいう。
【0020】
用語「発酵性糖類(fermentable sugars)」は発酵生物により発酵される任意の糖類をいう。発酵性糖類はオリゴサッカロイド類及びデキストリン類を含む。
【0021】
「発酵性糖(fermentable sugar)」はモノサッカライド又はジサッカロイドをいい、最終産物を生産するためにその発酵性糖に接触して微生物より発酵工程にて転換してよい。幾つかの実施態様においては、発酵性糖は微生物により代謝され、他の実施態様においては、微生物による酵素の発現及び/又は分泌によって発酵性糖の所望の転換を達成する。
【0022】
用語「発酵(fermentation)」は、より簡単な有機化合物を生産するために微生物によって有機基質の酵素的及び嫌気的分解をすることをいう。発酵は嫌気的条件下で行われる一方、この用語は単に嫌気条件下で行われるものに限定されず、酸素存在下での発酵も意図する。
【0023】
本明細書にて用いる用語「発酵生物(fermenting organism)」は、発酵における使用に適し、直接又は間接的に最終産物を生産するのに適する任意の微生物又は細胞をいう。
【0024】
用語「機能的に同等(functional equivalent)」は、野生型酵素と同様の酵素の機能的特徴を有する酵素及び野生型由来の酵素を意味する。
【0025】
用語「ゼラチン化(gelatinization)」は一般的に、粘性のある懸濁液を形成するために加熱によるデンプン分子の可溶化をいう。
【0026】
用語「ゼラチン化温度(gelatinization temperature)」は基質を含むデンプンのゼラチン化が始まる最も低い温度をいう。ゼラチン化の適切な温度は特定のデンプンで決定され、植物の種、及び環境と増殖条件のような因子次第で変化してよい。
【0027】
用語「粒状デンプン(granular starch)」は、生デンプン、つまり、ゼラチン化温度にさらされていないデンプンを意味する。
【0028】
用語「粒状デンプン加水分解(GSH)酵素(granular starch hydrolyzing (GSH) enzyme)」及び「粒状デンプン加水分解(GSH)活性(granular starch hydrolyzing (GSH) axtivity)を有する酵素」は粒状形態でデンプンを加水分解する能力を有する酵素をいう。
【0029】
用語「%ホモロジー(% homology)」は用語「%相同性(% identity)」と本明細書にて互換可能に用いる。二つの配列間の相同性を決定するために用いることのできる典型的なコンピュータープログラムは、一連のBLASTプログラム、例えば、BLASTN、BLASTX、及びTBLASTX、BLASTPとTBLASTN、及びインターネットで公的に入手可能なもの(例えばNational Center for Biotechnology Informationウェブサイト上BLASTページを参照)を含むが、これらに限定されない。また、Altschul, 他、1990及びAltschul、他、1997を参照願いたい。
【0030】
得られる核酸配列をGenBankDNA配列における核酸配列及び他の公的データベースと比較して評価する場合、配列検索は一般的にBLASTNプログラムを用いて行う。BLASTXプログラムはGenBankタンパク質配列における核酸配列及び他の公的データベースにおけるアミノ酸配列に対してすべてのリーディングフレーム中に翻訳される核酸配列を検索するために有用である。BLASTN及びBLASTX両者はオープンギャップペナルティ11.0、及び拡張ギャップペナルティ1.0のデフォルトパラメータを用いて計算され、BLOSUM‐62マトリックスを利用する。(例、Altschul、他、1997参照。)
【0031】
可溶化デンプン基質又は液状化基質とも呼ばれる「液状化物(Liquefact)」は高温液状化にさらされる熱安定性アルファアミラーゼを含む全粒粉砕穀物スラリーであり、その結果、糖化及び発酵又はSSFのための可溶性基質となる。高温とは穀物のゼラチン化温度より高い温度である。
【0032】
「液状化(Liquefaction)」又は「液化する(liquefy)」は、デンプンがより短い鎖及びより低い粘性のデキストリンに転換するプロセスを意味する。
【0033】
用語「製粉する(milled)」は、すりつぶす、押しつぶす、断片化する、又は粒子サイズを小さくする他の任意の手段によって、サイズを小さくする植物原料をいうために本明細書にて用いる。製粉には乾式又は湿式製粉を含む。「乾式製粉(Dry milling)」は乾燥穀物全体の製粉をいう。「湿式製粉(Wet milling)」は穀物を柔らかくするために穀物を最初に水に浸す(染み込む)プロセスをいう。
【0034】
用語「オリゴサッカライド(oligosaccharides)」は、グリコシド結合で結合する2から10のモノサッカライド単位を有する任意の化合物をいう。単糖類のこれらの短鎖ポリマーはデキストリンを含む。
【0035】
本明細書にて同定されたアミノ酸配列又は核酸配列に関して本明細書で用いる「配列相同性割合(%)(percent(%)sequence identity)」は、必要であれば、最大の割合の配列相同性を達成するように、いずれの同類置換をも配列相同性の一部として考慮することなく、配列を整列し及びギャップを挿入した後、配列中のアミノ酸残基又はヌクレオチドと同定された候補配列におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドとの割合で定義される。周知である配列整列をする方法と配列相同性の決定は過度の実験をせずに行うことができ、相同性値の計算は確実に得られる。例えばAusubel他編、(1995)Current Protocols in Molecular Biology, 19章(Greene Publishing and Wiely‐Interscience, NewYork)及びALIGN program(Dayhoff (1978)Atlas of Protein Sequence and Structure 5:Supple 3(National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C.)を参照願いたい。多くのアルゴリズムは配列を整列させ、配列相同性を決定するのに利用可能である。例えばNeedleman他のthe homology alignment algorithm(1970)J.Mol.Biol.48:443、スミス他のthe local homology algorithm(1981)Adv.Appl.Math.2:482, Pearson他のthe search for similarity method (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444, the Smith‐Wsterman algorithm (Meth.Mol.Biol.70:173‐187(1997)及びBLASTP, BLASTIN, and BLASTX algorithms(参照Altschul他(1990)J.Mol.Biol.215:403−410)を参照されたい。これらのアルゴニズムに使用するコンピュータープログラムは入手可能であり、以下のものを含むがこれらに限定はされない。即ち、ALIGN又はMegalin
g(DANSTAR)ソフトウエア又はWU-BLAST-2(Altschul他、Meth. Enzym., 266:460-480(1996))、又はGAP、BESTFIT、BLAST(Altschul他)上記、FASTA及びGenetics Computing Group (GCG)パッケージ、バージョン8、マジソン、ウィスコン州米国にて入手可能なTFASTA及びIntelligences, Mountain View、カリフォルニア州による CLUSTAL in the PC/Gene programである。当業者であれば比較される配列の長さに渡って最大の配列比較を達成するために必要であるアルゴリズムを含め、整列を測定する適切なパラメーターを決定できる。好ましくは、配列相同性はプログラムによって決定されたデフォルトパラメーターを使用することにより決定される。特に、配列相同性はSmith-Waterman homology search algorithm (Meth. Mol. Biol. 70: 173-1 87 (1997)) によって決定される。このアルゴリズムは次のサーチパラメーターで、すなわち12のギャップ開始ペナルティ及び1のギャップ伸長ペナルティで、アファインギャップサーチを使用しているMSPRCH program (Oxford Molecular) で実行される。好ましくは対のアミノ酸の比較はGenetics Computer Group, Inc., Madison, Wis.の12のギャップウエイトと2のレングスウエイトをもつBLOSUM62アミノ酸置換行列を使用しているGCG配列分析ソフトウエアパッケージの使用により実行される。二つのアミノ酸配列の最適整列に関して、種々のアミノ酸配列の連続セグメントは参照アミノ酸配列に対して追加アミノ酸残基又は欠損アミノ酸残基をもってもよい。参照アミノ酸配列と比較するために使用した連続セグメントは少なくとも20アミノ酸残基を含んでもよく、30、40、50又はそれ以上のアミノ酸残基を含んでもよい。誘導体のアミノ酸配列中ギャップを含む関係で増加した配列相同性の補正はギャップペナルティを割り当てることにより実行できる。
【0036】
用語「タンパク質(protein)」及び「ポリペプチド(polypeptide)」は、本明細書にて互換可能に用いる。本明細書及び特許請求の範囲において、従来の1文字及び3文字のアミノ酸残基コードを使用する。アミノ酸の3文字コードは、生化学命名に関するIUPAC‐IUB委員会(IUPAC‐IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature (JCBN))に基づいて定められる。また、ポリペプチドが、遺伝子コードの縮重により二以上のヌクレオチド配列によりコードされてよいことは理解される。
【0037】
本発明の変異体は「原型のアミノ酸/位置/置換されるアミノ酸残基」の順の命名法を用いて記載する。例えば89位のアラニン(A)にかかるトレオニン(T)の置換をA89Tとして表す。二つ以上のアミノ酸が所定の位置にて置換される場合、例えば、置換を1)A89C、A89D又はA89T、2)A89C、D又はT、又は3)A89C/D/Tとして表す。置換に有用な位置が具体的アミノ酸が示唆されずに本明細書にて同定される場合、任意のアミノ酸残基がその位置でそのアミノ酸残基に関して置換されてよいことが理解される。
【0038】
用語「糖化酵素(saccharifying enzyme)」及び「グルコアミラーゼ(glucoamylase)(E. C. 3.2.1.3)」は本明細書にて互換可能に用い、デンプン及び関連オリゴサッカライドとポリサッカライドの非還元末端からD‐グルコースの放出を触媒することができる任意の酵素をいう。
【0039】
語句「同時糖化発酵(simultaneous saccharification and fermentation)(SSF)」は、エタノール生産微生物のような発酵生物と糖化酵素のような少なくとも一つの酵素が同じ反応器中同じ工程で併用する最終産物の生産工程をいう。
【0040】
用語「スラリー(slurry)」は不溶性固体(例えば、粒状デンプン)を含む水溶性混合液をいう。
【0041】
本明細書にて用いる用語「デンプン(starch)」は、植物性ポリサッカライドの炭水化物の複合体を含み、化学式(C10)xで表すアミロース及びアミロペクチンを含む任意の原料をいい、ここでxは任意の数字である。
【0042】
用語「蒸留残液(thin stillage)」は、懸濁微粒子及び溶解原料を含む固体(例えば、スクリーニング又は遠心分離によって生じる)から分離される蒸留物(stillage)の液体部分を意味する。用語「バックセット(backset)」は一般的に再循環される蒸留残液(thin stillage)を意味するために用いる。
【0043】
用語「全体の糖度(total sugar content)」は、デンプン組成物中に存在する全体の糖の含有量をいう。
【0044】
酵素(例、アルファアミラーゼ、グルコアミラーゼ、酸性菌プロテアーゼ、フィターゼ、又はその同類)に関して用いる場合、用語「変異体(variant)」は、自然的に生じる酵素(野生型)由来の酵素であるが、自然発生的酵素に比較して一以上のアミノ酸の置換、付加、欠失を有する酵素を意味する。その用語は、酵素のハイブリッドの形態を含み、例えば、酵素がバシルス種(Bacillus sp.)(例、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis))由来のC末端と異なるバシルス種(Bacillus sp.)(例、バシルス ステアロテルモフィルス(B. stearothermophilus))由来のN末端を有してもよい。変異体は、野生型と比較して、熱安定性の増加、タンパク質分解安定性の増加、特異的活性の増加、基質特異性の拡張、pH範囲に対する活性の拡張、又はそれらの組み合わせのような、しかしこれらに限定されないが、一以上の改変される特徴を有してよい。
【0045】
本明細書にて用いる用語「野生型(wild−type)」は、宿主細胞中に自然発生的(自然)に生じる酵素をいう。
【0046】
典型的な実施態様
発明者はアルファアミラーゼ、グルコアミラーゼ、及び酸性菌プロテアーゼを含む酵素ブレンドを発見した。そのような組成物は糖化及び/又は糖化/発酵の間デンプン転換プロセスにおいて有用である。そのような組成物を使用することはデンプン転換プロセスにおいてグルコアミラーゼを単独にて用いるより有用な効果を提供する。
【0047】
本発明はグルコアミラーゼ、酸性菌プロテアーゼ、及び酸安定性アルファアミラーゼを含む組成物に関する。また、本発明は発酵性糖から所望の最終産物を生産するための組成物の使用に関し、例えば、液状化物からのエタノールを生産することである。組成物の有利な効果は実質的に同様の条件下グルコアミラーゼを単独にて生産するエタノール量に比較して多量のエタノールをもたらすことである。ある態様においては、増加はグルコアミラーゼ単独に比較して0.5%より多く、好ましくは、1.0%、1.5%、2%、及び2.5%より多い。
【0048】
グルコアミラーゼ
グルコアミラーゼ(E.C.3.2.1.3.)はデンプン類及びデキストリン類をグルコースへ分解する酵素である。グルコアミラーゼはエキソ作用酵素である。それはデンプンにおけるアルファ1−4及びアルファ1−6グルコシド結合を加水分解し、グルコースを放出する。
【0049】
本発明による有用なグルコアミラーゼは野生型グルコアミラーゼ、その変異体又はフラグメント又は例えば、ある微生物源からの触媒部位及び別の微生物源からのデンプン結合部位由来のハイブリッドグルコアミラーゼでよい。次のグルコアミラーゼ類は本発明により含まれるプロセスに使用されるグルコアミラーゼの例であるが、これらに限定されない。
【0050】
グルコアミラーゼをアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)G1及びG2グルコアミラーゼ(例えば、Boel他、(1984) EMBO J. 3: 1097 − 1 102: WO 92/00381、WO 00/04136及びUSP 6,352,851を参照)、アスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(例えば、WO 84/02921参照)、アスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼ(例えば、Hata他、(1991) Agric. Biol. Chem. 55:941−949参照)及びアスペルギルス シロウサミ(Aspergillus Shirousami)(例えば、Chen他、(1996) Prot. Eng. 9:499 − 505: Chen他、(1995) Prot. Eng. 8:575−582;及びChen他、(1994) Biochem J. 302:275−281を参照)の菌から得てよい。タラロミセス エマーソニー(T. emersonii)、タラロミセス レイセタヌス(T. leycettanus)、タラロミセス デュポンティ(T. duponti)、及びタラロミセス テルモフィラス(T. thermophilus) (例えば、WO 99/28488; USP No. RE: 32,153; USP No. 4,587,215を参照)のようなタラロミセス(Talaromyces)、トリコデルマ レーシ(T. reesei)及び特に、US Pat. Pub. No. 2006‐0094080に記載の配列番号4と少なくとも約80%、85%、90%及び95%の配列相同性を有するグルコアミラーゼのようなトリコデルマ(Trichoderma)の菌株、リゾプス ニベウス(R. niveus)及びリゾプス オリザエ(R. oryzae)のようなリゾプス(Rhizopus)の菌株、ムコール(Mucor)の菌株、フミコーラ グリセア(H. grisea)(例えば、Boel他、(1984) EMBO J. 3:1097−1102; WO 92/00381 ; WO 00/04136; Chen他、(1996) Prot. Eng. 9:499−505; Taylor他、(1978) Carbohydrate Res. 61 :301−308; USP. 4,514,496; USP 4,092,434; USP 4,618,579; Jensen他、(1988) Can. J. Microbiol. 34:218−223及びWO 2005/052148の配列番号3を参照)のようなフミコーラ(Humicola)の菌株から得られる。幾つかの実施態様においては、グルコアミラーゼは、WO 05/052148記載の配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の配列相同性を有する。本発明に有用な他のグルコアミラーゼは、アセリア ロルフシイ(Athelia rolfsii)及びそれらの変異体(例えば、WO 04/111218を参照)から得られるものを含む。
【0051】
商業的に用いるグルコアミラーゼ活性を有する酵素は、例えば、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)(ジェネンコ インターナショナル社(Genencor International Inc.))製の商品名DISTILLASE、OPTIDEX L−400及びG ZYME G990 4X)又はリゾプス(Rhizopus)種(日本の新日本化学(Shin Nihon Chemicals)製の商品名CU.CONCを参照)から生産される。また、商業的な消化酵素は、日本の天野製薬(Amano Pharmaceuticals)製の商品名グルクザイム(GLUCZYME)(例えば、Takahashi他、(1985) J. Biochem. 98:663−671を参照)である。さらなる酵素はリゾプス種(Rhizopus sp.)のグルコアミラーゼ(E. C.3.2.1.3)の3つの形態を含む、すなわち、「Gluc1」(MW 74,000)、「Gluc2」(MW 58,600)及び「Gluc3」(MW 61,400)である。また、酵素調製GC480(ジェネンコ インターナショナル社(Genencor International Inc.))を本発明に用いる。上記のグルコアミラーゼ及び商業的酵素の例は本発明をこれらに限定することを意図せず、単に実施例として提供される。
【0052】
グルコアミラーゼは細菌、植物及び菌を供給源とする異種又は内因性タンパク質発現由来でよい。本発明に有用な好ましいグルコアミラーゼは糸状菌及び酵母の数種の菌株により生産され、特に、トリコデルマ(Trichoderma)の菌株から分泌されるグルコアミラーゼ類である。
【0053】
表1は599アミノ酸を有するトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼの推定アミノ酸配列(配列番号1)を示し、触媒部位(配列番号2)は下線をひいてなく1‐453残基の位置により示される。リンカー領域(配列番号3)は下線をひいて454‐491残基の位置により示される。デンプン結合部位である配列番号4は太字にて492‐599残基の位置により示される。
【表1】

【0054】
発明者はグルコアミラーゼ活性に関与する二つの部位を同定した。即ち、結合部位及び触媒部位である。これらの部位における保存的変異はグルコアミラーゼ活性を有するタンパク質となりうる。これらの部位においてすべての保存的アミノ酸置換が必ずしもグルコアミラーゼ活性を有するタンパク質とならないが、当業者はこれらの保存的置換の多くがグルコアミラーゼ活性を有するタンパク質となるであろうと予測する。さらに、二つの同定された機能部位の外側でのアミノ酸置換はグルコアミラーゼ活性に顕著な影響はないと考えられる。
【0055】
幾つかの実施態様においては、本発明に有用なグルコアミラーゼは配列番号1又は2のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有する。
【0056】
アルファアミラーゼ
本発明による有用なアルファアミラーゼは野生型アルファアミラーゼ、その変異体又はフラグメント又は例えば、ある微生物源からの触媒部位及び別の微生物源からのデンプン結合部位由来のハイブリッドアルファアミラーゼでよい。あるいは、アルファアミラーゼは酸安定性であるように組み換えらた変異体でよい。また、アルファアミラーゼは粒状デンプン加水分解活性(GSHE)を有するアルファアミラーゼでよい。なぜならその酵素は液状化物における多くのデンプンを分解するように働くからである。
【0057】
菌類アルファアミラーゼの例は、糸状菌の菌株から得られるものを含み、アスペルギルス(Aspergillus)(例、アスペルギルス ニガー(A. niger)、アスペルギルス カワチ(A. kawachi)、及びアスペルギルス オリザエ(A. oryzae))、トリコデルマ 種(Trichoderma sp.)、リゾプス種(Rhizopus sp.)、ムコール種(Mucor sp.)、及びペニシリウム種(Penicillium sp.)を含むがこれらに限定されない。幾つかの実施態様においては、アルファアミラーゼはアスペルギルス カワチ(Aspergillus. kawachi)菌株又はトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)の菌株から得られる。
【0058】
本発明により取り込まれる方法及び組成物に用いると考えられる商業的に入手可能なアルファアミラーゼは、GZYME 997及びCLARASE L(ジェネンコ インターナショナル社)、ターマミル(TERMAMYL)120−L、LC及びSC及びスープラ(SUPRA) (ノボザイムズ バイオテック(Novozymes Biotech))、及びサン スーパー(SAN SUPER )(ノボザイムズ エイエス(Novozymes A/S))、及びFUELZYME FL(Diversa/Valley Research)を含む。
【0059】
幾つかの実施態様においては、本発明に有用なアルファアミラーゼは、酸安定性アルファアミラーゼであり、有効な量が添加される時、pH3.0から7.0の範囲及び好ましくはpH3.5から6.5の範囲であってpH約4.0、4.5、5.0、5.5及び6.0を含む範囲で活性を有する。本発明による有用な酸安定性アルファアミラーゼは菌類のアルファアミラーゼ又は細菌類のアルファアミラーゼでよい。好ましい酸安定性アルファアミラーゼはアスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachi)(例えば、AkAA)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)(例えば、AnAA)、及びトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)(例えば、TrAA)から得られるものを含む。
【0060】
表2はアスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachi)アルファアミラーゼ(AkAA)(配列番号5)に関する成熟タンパク質配列を示す。推定リンカーはTTTTTTAATSTSKATTSSSSSSAAATTSSSCTATSTT(配列番号6)であって、下線にて表示する。リンカーのアミノ酸上流は触媒部位(配列番号7)を含み、下線をひいていない。リンカーのアミノ酸下流はデンプン結合部位(SBD)を含み、(配列番号8)、太字で表示する。SBDはポリペプチドの最後102個のアミノ酸を含む。
【表2】

【0061】
発明者はアルファアミラーゼ活性に関与する二つの部位を同定した。即ち、結合部位及び触媒部位である。これらの部位における保存的変異はアルファアミラーゼ活性を有するタンパク質となりうる。これらの部位においてすべての保存的アミノ酸置換が必ずしもアルファアミラーゼ活性を有するタンパク質とならないが、当業者はこれらの保存的置換の多くがアルファアミラーゼ活性を有するタンパク質となるであろうと予測する。さらに、二つの同定された機能部位の外側でのアミノ酸置換はアルファアミラーゼ活性に顕著な影響はないと考えられる。
【0062】
幾つかの実施態様においては、アルファアミラーゼは配列番号5又は7のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有する。
【0063】
表3はアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)アルファアミラーゼ(AnAA)(配列番号9)に関する成熟タンパク質配列を示す。表中、触媒部位を1−478のアミノ酸(配列番号10)で表し、下線を引いていない。リンカー領域を下線部(配列番号11)で示す。デンプン‐結合部位は太字(配列番号12)で示す。
【表3】

【0064】
幾つかの実施態様においては、アルファアミラーゼは配列番号9又は10のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有する。
【0065】
表4は443個のアミノ酸を有するトリコデルマ(Trichoderma)アルファアミラーゼ(TrAA)に関する成熟タンパク質配列(配列番号13)を示す。このアルファアミラーゼはSBD又はリンカーを含まない。
【表4】

【0066】
幾つかの実施態様においては、アルファアミラーゼは配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有する。
【0067】
本発明に従って有用な酸性菌類プロテアーゼ(Acid fungal proteases)(AFP)は野生型酸性菌類プロテアーゼ、その変異体又はフラグメント、又は遺伝的に組み換えられた変異AFPでよい。
【0068】
例えば、酸性菌類プロテアーゼは、アスペルギルス ニガー(A. niger)、アスペルギルス アワモリ(A. awamori)、アスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)、及びムコール ミエヘイ(M.miehei)のような、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ムコール(Mucor)及びリゾプス(Rhizopus)から得られるものを含む。AFPは細菌類、植物及び菌類を供給源とする異種又は内因性タンパク質発現由来でよい。本発明に有用な好ましいグルコアミラーゼは糸状菌及び酵母の数種の菌株により生産され、特に、トリコデルマ(Trichoderma)の菌株から分泌されるAFPが好ましい。
【0069】
表5はトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)由来の好ましいAFPに関する成熟タンパク質配列(355アミノ酸)(配列番号14)を示す。
【表5】

【0070】
幾つかの実施態様においては、酸性菌類プロテアーゼは配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有する。
【0071】
第二酵素
本発明の幾つかの実施態様は、少なくとも一つの酸安定性アルファアミラーゼ、少なくとも一つのグルコアミラーゼ、及び少なくとも一つの菌類プロテアーゼを含む組成物を含むけれども、任意的に、組成物は他の酵素を含んでもよい。例えば、組成物を多様な適用(例えば、デンプン処理適用)に用いる場合、さらに、第二酵素を含んでよい。本発明によるブレンド組成物は発酵微生物及び他の成分及び他の第二酵素を伴って糖化段階及び/又は発酵段階において用いてよい。追加される酵素は、追加グルコアミラーゼ、追加アルファアミラーゼ、追加プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、フィターゼ、プルラナーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ベータ‐グルカナーゼ、ガラクトシダーゼ、エステラーゼ、シクロデキストリントランスグルコシルトランスフェラーゼ(CGTases),ベータ‐アミラーゼ、及びそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0072】
幾つかの実施態様においては、追加酵素は菌類アルファアミラーゼのような、第二酸安定性アルファアミラーゼである。幾つかの実施態様においては、第二アルファアミラーゼはAkAA、TrAA又はAsAAのようなGSHEである。ブレンドと組み合わせて用いることのできる他のアルファアミラーゼの例は、バシルス(Bacillus)、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、リゾプス(Rhizopus)、フザリウム(Fusarium)、ペニシリウム(Penicillium)、ニューロスポラ(Neurospora)、及びフミコーラ(Humicola)由来のものであるが、これらに限定されない。
【0073】
これらのアミラーゼの幾つかは商業的に入手可能である。例えば、ノボ ノルディスク エーエス(Novo Nordisk A/S)から入手可能なターマミル(TERMAMYL)及びSUPRA、Diversaから入手可能なFUELZYME、ノボ ノルディスク エーエス(Novo Nordisk A/S)から入手可能なリコザイム(LIQUEZYME)SC、及びジェネンコ インターナショナル社(Genencor International Inc)から入手可能なスペザイム フレッド(SPEZYME FRED)、スペザイム エチル(SPEZYME ETHYL)及びGZYME G997である。
【0074】
別の実施態様においては、本発明はフィターゼの添加を含んでよい。フィターゼはイノシトール6リン酸から少なくとも一つの無機リン酸塩を遊離することができる酵素である。フィターゼはフィチン酸分子が加水分解を開始するリン酸エステル基の特定の位置への優先性に従って分けられる(例えば、3‐フィターゼ(EC3.1.3.8)として又は6−フィターゼ(EC3.1.3.26)として)。フィターゼの典型的な例はミオ‐イノシトール‐ヘキサキスフォスフェート‐3‐フォスフォヒドロラーゼ(myo‐inositol‐hexakiphosphate‐3‐phosphohydrolase)である。フィターゼを菌類及び細菌類のような微生物から得て良い。これらの微生物のいくつかは例えばアスペルギルス(Aspergillus)(例、アスペルギルス ニガー(A. niger)、アスペルギルス テレウス(A. terreus)、及びアスペルギルス フミガタス(A. fumigatus))、ミセリオフトラ(Myceliophthora)(ミセリオフトラ サーモフィラ(M. thermophila))、タラロミセス(Talaromyces)(タラロミセス テルモフィルス(T. thermophilus)、トリコデルマ種(Trichoderma spp)(トリコデルマ レーシ(T. reesei))及びテルモミセス(Thermomyces)(WO 99/49740)を含む。また、フィターゼはペニシリウム種(Penicillium)から得られ、例えば、ペニシリウム ホルデイ(P. hordei)(ATCC No.22053)、ペニシリウム ピセウム(P. piceum)(ATCC No. 10519)、又はペニシリウム ブレビ‐コンパクタム(P. brevi−compactum)(ATCC No.48944)である。例えば、USP 6,475,762を参照願いたい。さらに、フィターゼはペニオフォラ(Peniophora)、大腸菌(E. coli)、シトロバクター(Citrobacter)、エンテロバクター(Enterbacter)及びブティアウクセラ(Buttiauxella)(2005年10月17日出願のWO2006/043178を参照願いたい)から得られる。市販のフィターゼはNATUPHOS (BASF)、RONOZYME P(Novozymes A/S)、PHZYME (Danisco A/S, Diversa)及びFINASE (AB Enzymes)のように入手可能である。幾つかの実施態様においては、本発明に有用な少なくとも一つフィターゼはブティアウクセラ種(Buttiauxella spp.)である微生物由来のものである。ブティアウクセラ種(Buttiauxella spp.)は、ブティアウクセラ アグレスティス(B. agrestis)、 ブティアウクセラ ブレネラエ(B. brennerae)、ブティアウクセラ フェラギターゼ(B. ferragutiase)、ブティアウクセラ ガビニアエ(B. gaviniae)、ブティアウクセラ イザルディイ(B. izardii)、ブティアウクセラ ノアキアエ(B. noackiae)、及びブティアウクセラ ワ−ムボールディアエ(B. warmboldiae)を含む。ブティアウクセラ(Buttiauxella)種の菌株はDSMZ、the German National Resource Center for Biological Material (Inhoffenstrabe 7B, 38124 Braunschweig, Germany) から入手できる。登録番号NCIMB 41248にて寄託されるブティアウクセラ種(Buttiauxella sp.)の菌株であるP1−29は、フィターゼが本発明によって得られ及び使用されてよい特に有用な菌株の例である。
【0075】
また、セルラーゼを本発明によるブレンド及び/又は組成物に用いてよい。セルラーゼはセルロース(β‐1,4‐D‐グルカン結合)及び/又はリン酸膨張セルロースのようなそれらの誘導体を加水分解する酵素組成物である。セルラーゼはエキソ‐セロビオヒドロラーゼ(exocellobiohydrolases)(CBH)エンドグルカナーゼ(EG)及びベータ‐グルコシダーゼ(BG)(EC3.2.191、EC3.2.1.4及びEC3.2.1.21)に分類できる。セルラーゼの例はペニシリウム(Penicillium)、トリコデルマ(Trichoderma)、フミコーラ(Humicola)、フザリウム(Fusarium)、テルモモノスポラ(Thermomonospora)、セルロモナス(Cellulomonas)、クロストリジウム(Clostridium)及びアスペルギルス(Aspergillus)からのセルラーゼを含む。食品業界で販売される商業的に入手可能なセルラーゼは、ROVABIO(Adisseo)、NATUGRAIN(BASF)、MULTIFECT BGL(ダニスコ ジェネンコ(Danisco Genencor))及びECONASE(AB Enzymes)のようなベータ‐グルカナーゼである。
【0076】
また、キシラナーゼを本発明によるブレンド及び/又は組成物に用いてよい。キシラナーゼ(例えば、エンド‐β‐キシラナーゼ(E.C.3.2.1.8)は、キシラン骨格鎖を加水分解するが、バシルス(Bacillus)、ストレプトミセス(Streptomyces)、クロストリジウム(Clostridium)、アシドサーマス(Acidothermus)、ミクロテトラスポラ(Microtetrapsora)又はテルモモノスポラ(Thermonospora)のような細菌由来でよい。さらに、キシラナーゼは、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ニューロスポラ(Neurospora)、及びフミコーラ(Humicola)、ペニシリウム(Penicillium)、又はフザリウム(Fusarium)のような菌類由来でもよい。(例えば、EP473 545、USP 5,612,055、WO 92/06209およびWO 97/20920を参照願いたい。)商業的調製品は、MULTIFECT及びFEEDTREAT Y5(ダニスコ ジェネンコ(Danisco Genencor)、RONOZYME WX(ノボザイムズ エイエス(Novozymes A/S))、及びNATUGRAIN WHEAT(BASF)を含む。
【0077】
また、追加的プロテアーゼを本発明によるブレンド及び/又は組成物に用いてよい。プロテアーゼは細菌又は菌類由来でよい。細菌のプロテアーゼの供給源は、バシルス アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、バシルス レンツス(B. lentus)、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)、及びバシルス ズブチリス(B. subtilis)のようなバシルス(Bacillus)由来のプロテアーゼを含む。これらの供給源は、バシルス アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)及びそれらの変異体(USP 4,760,025)から得られるスブチリシンのようなスブチリシンを含む。適切な業務用プロテアーゼは、MULTIFECT P 3000(ダニスコ ジェネンコ (Danisco Genencor))及びスミザイム FP(SUMIZYME FP)(新日本(Shin Nihon))を含む。また、菌類プロテアーゼの供給源は、例えば、トリコデルマ(Trichoderma)(例えば、NSP‐24)、アスペルギルス(Aspergillus)、フミコーラ(Humicola)、及び、ペニシリウム(Penicillium)を含む。
【0078】
酵素ブレンド組成物
本発明の酵素ブレンド組成物はグルコアミラーゼ、アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼを含む。三つの酵素成分は一緒に混合される三つの酵素を含むブレンドされた製剤、又は本発明により含まれる組成物を得るためにプロセス段階の間に別個に添加される酵素成分を含むブレンドされた製剤として用いてよい。好ましくは、本発明の組成物をデンプン転換における段階の間に用い、その結果、下記に規定する活性比率が維持される。これは経時的(time‐wise manner)に組成物の別々の成分を加えることに関係し、その結果、酵素比は維持され、例えば、その成分を同時に添加してもよい。
【0079】
幾つかの実施態様においては、酵素ブレンド組成物は、
a)配列番号1に対して少なくとも95%又は少なくとも97%の配列相同性を有するGA、配列番号5に対して少なくとも97%配列相同性を有するAkAA及びAFP、
b)配列番号1に対して少なくとも95%又は少なくとも97%配列相同性を有するGA、酸安定性AA、及びAFP、
c)配列番号1に対して少なくとも95%又は少なくとも97%配列相同性を有するGA、GSHE AA、及び配列番号14に対して少なくとも90%、95%又は99%の配列相同性を有するAFP、
d)GA、AkAA又はTrAA、及び配列番号14に対して少なくとも95%又は少なくとも97%の配列相同性を有する酸性菌類プロテアーゼ、
e)GA、AkAA、及び配列番号14に対して少なくとも95%又は少なくとも97%の配列相同性を有する酸性菌類プロテアーゼ、
f)配列番号1に対して少なくとも95%又は少なくとも97%の配列相同性を有するGA、AkAA、及び配列番号14に対して少なくとも95%又は少なくとも97%の配列相同性を有するAFP、
g)配列番号1に対して少なくとも95%又は少なくとも97%の配列相同性を有するGA、TrAA、及び配列番号14に対して少なくとも95%又は少なくとも97%の配列相同性を有する酸性菌類プロテアーゼ、
h)配列番号1に対して少なくとも95%の配列相同性を有するGA、配列番号14に対して少なくとも95%の配列相同性を有するAFP、及び配列番号5に対して少なくとも95%の配列相同性を有するAA、
i)配列番号1に対して少なくとも98%の配列相同性を有するGA、配列番号14に対して少なくとも98%の配列相同性を有するAFP、及び配列番号5に対して少なくとも98%の配列相同性を有するAA、及び
j)STARGEN(商標)001であって、酸安定性アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachi)アルファアミラーゼ、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼのブレンド(ジェネンコ インターナショナル社から商業的に入手可能)、及び酸性菌類プロテアーゼ、
を含む。
【0080】
しばしば、酵素活性をグルコアミラーゼに関してGAU、アルファアミラーゼに関してSSU、及び酸性菌類プロテアーゼに関してSAPUにて測定する。
【0081】
幾つかの実施態様においては、酵素活性の比を下記に規定し、各酵素の比をグルコアミラーゼ(GA)に関して示す。例えば、GA(GAU):AA(SSU)の比は約1:1から1:15であり、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、及び1:10を含むがこれらに限定されない。比は最低で1:1と最高で1:15である。好ましい実施態様においては、GA(GAU):AA(SSU)の比は約1:1.5から約1:8又は約1:2から約1:5である。ある好ましい実施態様においては、GA(GAU):AA(SSU)の比は約1:4である。
【0082】
幾つかの実施態様においては、GA(GAU)対AFP(SAPU)の比は約1:0.1から約1:5であり、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1を含むがこれらに限定されない。又は最高で1:5であり、1:2、1:3、及び1.4含むがこれらに限定されない。好ましくは、GA(GAU)対AFP(SAPU)の比は約1:0.1から1:1又は約1:0.2から約1:0.8又は1:0.2から1:0.6の間である。ある好ましい実施態様においては、GA(GAU)対AFP(SAPU)の比は約1:0.4である。
【0083】
ある好ましい組成物において、グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類
プロテアーゼは、GAU:SSU:SAPUによる測定として約1:1.5:0.1から約1:8:1である。
【0084】
ある好ましい組成物において、グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類
プロテアーゼは、GAU:SSU:SAPUにて測定して約1:2:0.2から約1:5:0.6である。
【0085】
ある好ましい組成物において、GA:AA:AFPの比は約1:4:0.4である。活性比に関して本明細書にて用いる時、「約(about)」は記載する数字の±15%を含むことを意味する。
【0086】
使用方法
本発明はさらに発酵性糖類から最終産物を生産するための方法に関する。方法は
(a)デンプン含有粉砕穀物を含むスラリーをアルファアミラーゼと接触させ、液状化物を生産する段階、
(b)その液状化物をグルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼに接触させ、発酵性糖類を生産する段階、及び
(c)発酵生物の存在下発酵性糖類を発酵させて最終産物を生産する段階
を含む。前記方法において、工程(b)糖化及び(c)発酵は連続して行って又は同時に行ってもよい。グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼを液状化物に別個に添加してよい。あるいは、グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼを含む酵素ブレンド組成物を液状化物へ添加してよい。各段階を以下に詳しく記載する。
【0087】
デンプン転換
植物原料を含む基質を周知の方法により粉末にして又は粉砕してよい。植物原料は小麦、トウモロコシ、ライ、ソルガム(ミロ)、米、キビ、オオムギ、ライ小麦、キャッサバ(タピオカ)、ジャガイモ、サツマイモ、サトウダイコン、サトウキビ、及び大豆及びエンドウ豆のような豆類を含む植物から得られる。好ましい植物の原料は、トウモロコシ、オオムギ、小麦、米、ミロ、及びそれらの組み合わせを含む。植物原料はハイブリッド変異体及び遺伝的に修飾される変異体(例えば、異種性遺伝子を含むトランスジェニックトウモロコシ、オオムギ、又は大豆)を含んでよい。
【0088】
デンプンを含む植物のいずれの部位を液状化物を生産するために使用してよく、葉、茎、さや、殻、塊茎、トウモロコシの穂軸、穀物の粒、及び同様物のような植物の部位を含むが、これらに限定されない。好ましい未精白の穀物は、トウモロコシ、小麦、ライ、オオムギ、ソルガム、及びそれらの組み合わせを含む。他の実施態様においては、デンプンは、繊維、内胚乳、及び/又は胚成分を含む分割された穀物から得てよい。トウモロコシ及び小麦のような植物原料を分割する方法は周知である。幾つかの実施態様においては、異なる供給源から得られる植物原料を一緒に(例えば、トウモロコシとミロ又はトウモロコシとオオムギ)混合してよい。製粉の方法は周知技術であり、THE ALCOHOL TEXTBOOK: A REFERENCE FOR THE BEVERAGE, FUEL AND INDUSTRIAL ALCOHOL INDUSTRIES 3rd ED. K. A. Jacques他、Eds,(1999) Nottingham University Press.に引用されている。2章及び4章を参照願いたい。
【0089】
幾つかの実施態様においては、製粉であれ、他の方法であれ粉末にされる植物原料は液体と混合することによりデンプン基質を含むスラリーが得られる。幾つかの実施態様においては、スラリーは、バックセットのようなデンプンプロセスの副流を含んでよい。幾つかの実施態様においては、スラリーは、15−55%ds(例えば、20−50%、25−45%、25−40%、及び20−35%ds)を含む。粉末植物原料を含むスラリーを液状化処理してよく、アルファアミラーゼを液状化段階の間に添加してよい。これにより液状化物を得る。液状化物を生産するために、一回投与量又は分割投与量のアルファアミラーゼをスラリーに添加してよい。当業者は容易に液状化処理中に用いるべきアルファアミラーゼの有効な量を決定する。
【0090】
幾つかの実施態様においては、液状化に用いるアルファアミラーゼの量は大部分のデンプンの液状化を引き起こすのに効果的な量である。他の実施態様においては、その量は40%より多いデンプンの液状化を可能とするのに効果的であり、50%、60%、70%、80%、90%、及び100%を含む。幾つかの実施態様においては、その範囲は0.05から50AUU/gds、また0.1から20AUU/gds、及び1.0から10.0AUU/gdsである。さらなる実施態様においては、アルファアミラーゼ量は0.01から10.0kg/メトリックトン(MT)ds、また0.05から5.0kg/MT ds及び0.1から4.0kg/MT dsである。
【0091】
幾つかの実施態様においては、アルファアミラーゼを粉末植物原料の粒状デンプンのデンプンゼラチン化温度未満の0から30℃の温度で加えてよい。この温度はデンプンゼラチン化温度未満の0から25℃、0から20℃、0から15℃及び0から10℃でよい。この具体的な値はスラリーを含む穀物のタイプにより変化し及び依存してよい。例えば、トウモロコシのデンプンゼラチン化温度は一般的にライ又は小麦のデンプンゼラチン化温度より高い。幾つかの実施態様においては、温度は45から80℃の間、また50から75℃の間、また50から72℃の間でよく、幾つかの実施態様においては、温度は68℃未満、65℃未満、62℃未満、60℃未満、及びまた55℃未満でよい。他の実施態様においては、温度は40℃、45℃、50℃、55℃より高い温度でよい。幾つかの好ましい実施態様においては、インキュベーションの温度は58℃と72℃の間及び60℃から68℃の間でよい。
【0092】
幾つかの実施態様においては、スラリーは約3.0から約6.5未満の範囲のpHで、また、約4.0から約6.2未満の範囲のpHで、また、約4.5から約6.0未満のpHで及び好ましくは約5.0から約6.0(例えば、約5.4から約5.8まで)に維持され、スラリー中の製粉穀物は2分から8時間(例えば、5分から3時間、15分から2.5時間及び30分から2時間)の間酵素組成物と接触できる。さらなる段階において、インキュベーションされる基質は、約4.0から約6.5のpHで2分から8時間(例えば、2分から6時間、5分から4時間及び好ましくは1時間から2時間)の間、インキュベーションされる基質をデンプンゼラチン化温度(例えば、65℃から120℃まで、70℃から110℃まで、70℃から90℃まで)以上の0から55℃のような温度上昇に処されることにより液化する。幾つかの実施態様においては、温度を約85‐90℃の間まで温度上昇させ、単独投与量のアルファアミラーゼを用いてよい。もし温度が90‐105℃より高い温度に上昇するならば、温度が通常に戻った後、第二回目の投与のアルファアミラーゼを加えてよい。さらなる実施態様においては、温度を約105℃と140℃の間まで温度上昇させ、分割投与のアルファアミラーゼを用いてよく、これは、温度上昇前に添加される一部分と温度が少なくとも105℃より低く下がった後であって、104、103、102、101、100、99、98、97、96、95、94、93、92、及び91℃を含み、好ましくは90℃より低く下がった後添加される他の部分を用いてよい。幾つかの実施態様においては、得られる液状化物を糖化前に冷却する。
【0093】
糖化及び発酵
上述のように得られた液状化物を所望の酵素比を出来る限り長く維持する単独投与又は分割投与にてグルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ及び酸性菌類プロテアーゼと接触してよい。
つまり、分割投与量とは、所望の比における全体投与量を一以上に分割して添加し、二分割又は三分割を含むことを意味する。ある実施態様においては、全体投与量の一部分を初期に添加し、第二部分をプロセスにおける特定の時間に添加する。ある実施態様においては、、少なくとも一部分の投与量を糖化(又はSSF)の初期に添加し、糖化処理を始める。ある実施態様においては、酵素組成物中各酵素を液状化物に別々に、けれども、連続してまたは活性比が維持されるように十分短い時間にて添加してよい。あるいは、グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ及び酸性菌類プロテアーゼを含む酵素ブレンド組成物を糖化及び発酵の一つの間又は両方の間に添加してよい。グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ及び酸性菌類プロテアーゼの比はGAU:SSU:SAPUによる測定として好ましくは約1:1.5:0.1から約1:8:1、及びより好ましくは、約1:2:0.2から約1:5:0.6である。
【0094】
糖化プロセスは12から120時間続けてよい。しかしながら、30分から2時間の間、糖化を行い、それから発酵の間に糖化を完了することが通常である。時々、これを同時糖化発酵(SSF)という。通常、糖化を30から65℃の温度で一般的に4.0から5.0を含むpH3.0から5.0で行う。糖化によって発酵性糖類の生産物として得てよい。
【0095】
幾つかの実施態様においては、発酵性糖類を発酵微生物用いる発酵に用いてよい。接触段階及び発酵段階を同じ反応容器で同時又は分離して行ってよい。一般的に、発酵プロセスはThe Alcohol Textbook 3rd ED, A Reference for the Beverage, Fuel and Industrial Alcohol Industries, Eds Jacques他、(1999) Nottingham University Press, UKに記載されている。
【0096】
幾つかの実施態様においては、方法はさらに、アルコール(例えば、エタノール)、有機酸類(例えば、コハク酸、乳酸)、糖アルコール類(例えば、グリセロール)、アスコルビン酸中間体(例えば、グルコネート、DKG,KLG)、アミノ酸(例えば、リジン)、及びタンパク質類の(例えば、抗体及びそれらのフラグメント)ような最終産物を得るために、適切な発酵条件下、微生物の発酵における発酵用原料として発酵性糖類(デキストリン、例えば、グルコース)の使用を含む。
【0097】
幾つかの好ましい実施態様においては、アルコール産物、好ましくはエタノールを生産するために、発酵性糖類を15から40℃、20から38℃及びまた25から35℃の範囲の温度にて、pH3.0から6.5、またpH3.0から6.0、pH3.0からpH5.5、pH3.5から5.0及びまたpH3.5から4.5の範囲のpHにて、5時間から120時間、好ましくは12から120時間より好ましくは24時間から90時間の間、酵母を用いて発酵する。
【0098】
酵母細胞を一般的に10から1012の量で供給し、好ましくは、発酵培地の1mlあたり10から1010生存酵母数で供給する。発酵は、さらに発酵微生物(例えば、酵母)、栄養素、任意の酸及び/又は追加的酵素を含むことができる。幾つかの実施態様においては、上述の生原料に加えて、発酵培地はサプリメント類を含んでよく、それはビタミン類(例えば、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、リボフラビン)、コファクター、及びマクロとミクロ栄養素及び塩類(例えば、(NHSO、KHPO、NaCl、MgSO、HBO、ZnCl、及びCaCl)を含むが、これらに限定されない。
【0099】
幾つかの好ましい実施態様においては、粉砕植物原料は大麦、ミロ、トウモロコシ及びそれらの組み合わせを含み、接触及び発酵段階は3.5から5.5の範囲のpH、30−45℃の温度にて及び48から90時間にて同時に導入され、少なくとも50%のデンプンが可溶化することを特徴とする。
【0100】
最終産物
即時発酵プロセスのある好ましい最終産物は例えばエタノールのようなアルコール産物である。さらなる実施態様においては、最終産物は、乾燥した蒸留穀物残渣(Distillers Dried Grains)(DDG)、可溶性物質添加乾燥蒸留穀物残渣(Distillers Dried Grain plus Solubles)(DDGS)、のような発酵副産物であって、動物の飼料として用いられるものである。
【0101】
さらなる実施態様においては、周知であって適切な発酵微生物の使用により、発酵最終産物はグルセロール、1,3‐プロパンジオール、グルコネート、2‐ケト‐D‐グルコネート、2,5‐ジケト‐D‐グルコネート、2‐ケト‐L‐グロン酸、コハク酸、乳酸、アミノ酸類、及びそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0102】
発酵生物
発酵生物の例はエタノール生産微生物(ethanologenic microorganisms)又はアルコールデヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デヒドロゲナーゼを発現し、ザイモモナス モビリス(Zymomonas moblis)(例えば、USP 5,000,000、USP 5,028,539、USP 5,424,202、USP 5,514,583及びUSP 5,554,520を参照願いたい)から得られるエタノール生産細菌類のようなエタノール生産微生物(ethanol producing microorganisms)である。さらなる実施態様においては、エタノール生産微生物はキシロースリダクターゼ及びキシリトールデヒドロゲナーゼであって、キシロースをキシルロースに変える酵素を発現する。さらなる実施態様においては、キシロース イソメラーゼはキシロースをキシルロースに変える。ある好ましい実施態様においては、ペントース類及びヘキソース類両方をエタノールへ発酵できる微生物を利用してよい。例えば、幾つかの実施態様においては、微生物は天然の微生物又は遺伝子組み換えをしていない微生物であり、他の実施態様においては、微生物は組み換え微生物でよい。
【0103】
発酵微生物はバシルス(Bacillus)、ラクトバシルス(Lactobacillus)、大腸菌(E.coli)、エルウィニア(Erwinia)、パントエア(Pantoea)(例えばパントエア シトレア(P. citrea))、シュードモナス(Pseudomonas)、及びクレブシエラ(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ オキシトカ(K. oxytoca)(例えば、USP 5,028,539、USP 5,424,202、及びWO 95/13362を参照願いたい)由来の細菌菌株を含むがこれらに限定されない。バシルス(Bacillus)は好ましい発酵微生物である。発酵段階で用いる発酵微生物は生産されるべき最終産物で決定してよい。
【0104】
別の好ましい実施態様においては、エタノール生産微生物はトリコデルマ(Trichoderma)のような菌類微生物、酵母、及び特に、サッカロミセス セレビジアエ(S. cerevisiae)(USP 4,316,956)の菌株のようなサッカロミセス(Saccharomyces)である。多くのサッカロミセス セレビジアエ(S. cerevisiae)は商業的に入手可能であり、これらはFALI(Fleischmann‘s Yeast)、SUPERSTART(Alltech)、FERMIOL(DSM Specialties)、RED STAR(Lesaffre)及びAngel alcohol yeast(Angel Yeast Company, China)を含むが、これらに限定されない。
【0105】
例えば、乳酸が所望な最終産物の場合、ラクトバシルス種(Lactobacillus sp.)(ラクトバシルス カセイ(L. casei))を用いてよい。グルセロール又は1,3‐プロパンジオールが所望の最終産物の場合は大腸菌(E.coli)を用いてよい。そして2‐ケト‐D‐グルコネート、2,5‐ジケト‐D‐グルコネート、及び2‐ケト‐L‐グロン酸が所望の最終産物である場合、パントエア シトレア(Pantoea citrea)を発酵微生物として用いてよい。上記列挙するリストは単なる例であり、当業者は所望の最終産物を得るために適切に用いることのできる多くの発酵微生物を知っている。
【0106】
最終産物の回収
本発明の方法に従って生産される最終産物は発酵培地から分離及び/又は精製されてよい。分離及び精製の方法は周知であり、例えば培地を抽出、蒸留及びカラムクロマトグラフィー処理による方法である。幾つかの実施態様においては、最終産物は培地を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析にて処理することにより直接同定される。
【0107】
さらなる実施態様においては、例えばマッシュ(mash)を遠心分離により液相と固相及びアルコールや回収される固体のような最終産物へ分離してよい。アルコールを蒸留及びモレキュラーシーブ脱水又は限外ろ過のような手段にて回収してよい。
【0108】
幾つかの実施態様においては、エタノール生産の方法にかかる本発明による酵素ブレンド又は組成物の使用は8%、10%、12%、14%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、及び22%(v/v)より多いエタノールの収量を得る。
【0109】
任意的に、発酵に続いて、例えば、アルコール(例えば、エタノール)を蒸留により抽出できる。エタノールは燃料、携帯用又は産業用エタノールとして使用できる。
【実施例】
【0110】
本発明を次の実施例にてさらに詳しく述べるが、これは特許請求の範囲を限定することを全く意図していない。添付図面は本発明の明細書及び本発明の記載の不可分な一部として考えられる。すべての引用文献は、記載されるすべてのものを本明細書に引用することにより具体的に本明細書に取り込まれる。次の実施例は本発明を説明するために提供されるが、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0111】
開示及び次の実施例のセクションにおいて、つぎの略語が適用される。wt%(質量パーセント(weight percent)、℃(摂氏(degrees Centigrade)、HO(水(water))、dHO(脱イオン水(deionized water))、dIHO(脱イオン水、ミリQろ過(deionized water,Milli−Q filtration)、gまたはgm(グラム(grams))、μg(マイクログラム(micrograms))、mg(ミリグラム(milligrams))、kg(キログラム(kilograms))、μL(マイクロリットル(microliters))、ml及びmL(ミリリットル(milliliters)、mm(ミリメートル(millimeters))、μm(マイクロメートル(micrometer))、M(モル(molar))、mM(ミリモル(millimolar))、μM(マイクロモル(micromolar))、U(単位(units))、MW(分子量(molecular weight))、sec(秒(seconds))、min(s)(分(minute/minutes))、hr(s)(時間(hour/hours))、DO(溶解酸素(dissolved oxygen))、W/V(重量/体積(weight to volume))、W/W(重量/重量(weight to weight))、V/V(体積/体積(volume to volume))、IKA (アイケーエー(IKA Works Inc. 2635 North Chase Parkway SE, Wilmington, NC))、Genencor(ジェネンコー インターナショナル社(Genencor International, Inc., Palo Alto, CA))、Ncm(ニュートン センチメートル(Newton centimeter))、ETOH(エタノール(ethanol))、eq(当量(equivalents)、N(規定(Normal))ds又はDS(乾燥固体含有量(dry solids content))、SAPU(分光光度の酸性プロテアーゼ単位(spectrophotometric acid protease unit)であって、1SAPUはアッセイ条件下カゼイン基質
から1マイクロモルのチロシンを遊離するプロテアーゼ酵素活性の量である)、及びGAU(グルコアミラーゼ ユニット(glucoamylase unit)であって、pH4.2及び60℃にて可溶性デンプン基質から時間当たりグルコースに換算して1gの還元糖を生産することのできる酵素量として規定される)。
【0112】
材料及び方法
粘度測定
グラスクッカー‐粘度計(glass cooker ‐viscometer)、LR‐2.STシステムIKAを粘度測定するために用いる。手短に説明すると、粘度計は、ユーロスター ラボテクニック パワー コントロール‐粘度計(Eurostar Labortechnik power control−viscometer)(ビスコクリック(Viscoklick)粘度計の粘度範囲は0から600Ncm)によって攪拌されるアンカーミキサーを有する2000mlの二重壁のガラス容器からなる。一般的に、本明細書に記載する実施例のために、デンプン基質及び適切な酵素量を含有するスラリーを粘度計容器に注いだ。温度及び粘度を85℃まで加熱する間記録し、インキュベーションをさらに60分から120分間続けた。Ncmとして測定される粘度は間隔を置いて記録した。
【0113】
酵素
用いたグルコアミラーゼは表1に配列番号1として示すトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)GA(TrGA)であった(また、US 2006/0003408、1/5/2006発行、及びUS 2006/0094080、5/4/2006発行を参照願いたい、両者は参照によりここに取り込まれる)。実施例にて用いる酸性菌類プロテアーゼは、配列番号14の配列を有するトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)であった(また、US 2006/015342、7/13/2006発行、配列番号10を参照願いたい、参照により取り込まれる)。アルファアミラーゼは、本明細書にて配列番号5(米国特許第7,205,138)として示すアスペルギルス カワチ(Aspergillus. kawachi)アルファアミラーゼ(AkAA)であった。すべての特許出願はそれら全体を参照により本明細書に取り込まれる。
【0114】
高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による炭水化物分析
オリゴサッカライド反応産物の組成物を屈折率(refractive index)(RI)検出器(ERC−7515A RI検出器, Anspec Company Inc.)に接続し50℃に維持したHPLCカラム(レゼックス(Rezex) 8u 8% H, モノサッカライド)が備わったHPLC(ベックマンシステム(Beckman System) Gold 32 Karat Fullerton, CA)により測定した。サッカライド類は分子量に基づいて分離された。DP1の記号は、グルコースのようなモノサッカライド、DP2の記号は、マルトースのようなジサッカライド、DP3の記号は、マルトトリオースのようなトリサッカライド及び「DP4」の記号は、4以上の重合(DP)度を有するオリゴサッカライドである。
【0115】
アルファアミラーゼ活性(AAU)は分光学的に測定されるヨード染色能の減少割合を反映するようにデンプン加水分解の割合によって決定した。アルファアミラーゼ活性の1AAUは標準条件下、1分当たり10mgのデンプンを加水分解することのできる酵素量である。
【0116】
アルファアミラーゼ活性は、可溶性デンプン単位(SSU)として算定した。pH4.5、50℃にて酵素サンプルの一部によって可溶性ジャガイモデンプン基質(4%DS)の加水分解の程度に基づく。還元糖含有量はMiller, G. L. (1959) Anal. Chem. 31 :426−428に記載のDNS方法を用いて測定される。スペザイム フレッド(SPEZYME FRED)でのLIQUIFON Units (LU)におけるアルファアミラーゼ活性はUSP 5,958,739記載の方法に従って測定された。手短に説明すると、試験方法は、化学的にブロックされる非還元末端糖を有する基質としてp−ニトロフェニルマルトヘプトシド(p−nitrophenyl maltoheptoside)を用いる。p−ニトロフェニルの放出の割合はアルファアミラーゼ活性と比例し、放出は410nmで測定される。活性は標準コントロールに対して計算される。
【0117】
グルコアミラーゼ活性単位(GAU)は=PNPG試験をグルコアミラーゼの活性を測定するために用いる。
【0118】
酸性菌類プロテアーゼ活性(SAPU)=酸性菌類プロテアーゼ活性はpH3.0及び37℃にて精製高窒素カゼイン基質(Purified High nitrogen Casein Substrate)の30分間タンパク質加水分解から可溶性カゼインペプチドの遊離に基づく。非加水分解基質をトリクロロ酢酸を用いて沈殿させろ過にて除去する。可溶化カゼインをそれから分光学的に測定される。1の分光光度の酸性プロテアーゼ単位(SAPU)はその方法の条件下酵素産物の1グラム当たり1分間での1マイクロモルのチロシン相当量を遊離する活性である。
【0119】
実施例1
エタノール発酵でのTrGA、AkAA及びAFPブレンド又は組成物の効果
この実施例は、エタノール発酵でのグルコアミラーゼ、アルファアミラーゼ及び酸性菌類プロテアーゼのブレンドの驚くべき有用性を示す。
【0120】
グルコアミラーゼ(トリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)又はアスペルギルス ニガー(A. niger))を用いた酸性菌類プロテアーゼ(ジェネンコ−ダニスコ(Genencor‐Danisco)製ファームゲン(商標)(FERMGEN(商標))及び酸安定性アルファアミラーゼ(配列番号5を有するAkAA)の効果を酵母発酵の間、炭素転換効率(アルコール収量)にて分析した。液状化全粒粉砕トウモロコシを含む培地を試験した。この試験用のマッシュを蒸留残液(thin stillage)(ニュー エネルギー(New Energy, South Bend IN)から得られる9.8% DS)を用いて32%DSまでニュー エネルギー(New Energy, South Bend IN)液状化物(39.8% DS W/W)を希釈することにより作成した。マッシュ(mash)は29.3%トウモロコシDSを含んだ。そのマッシュ(mash)のpHを6N硫酸にて4.2に調整した。600ppm尿素をレッドスターエタノール(Red Star Ethanol)の酵母播種材料と共に添加した。発酵を300gmのマッシュ(mash)を含む500mlフラスコにて行った。酵素を希釈してそのフラスコへ0.2ml添加した。すべての酵素用量を1gmトウモロコシDS当たりの酵素用量であった。フラスコを32℃の水浴に置き、場合によって混合した。表6に示す酵素濃度を用いた。
【0121】
発酵の間、HPLC分析のために約2mlの発酵培地(ブロス)をサンプルとして採取した。スクリューキャップ試験管中0.5mlのサンプル上澄みを4.45mlの水と0.05mlの1N硫酸に加えた。試験管に蓋をして15分間75℃の水浴に置いて、酵素活性を失活させた。加熱後、HPLC分析のために希釈されたサンプルを0.2ミクロンフィルターを通してろ過した。HPLC分離を60℃にて0.01N硫酸の移動相を用いて0.6ml/分にてフェノミネックス酸性カラム(Phenominex acid column)で行った。20μlのサンプルを注入した。71時間後発酵を停止し、発酵培地を廃棄した。
【0122】
表6に示すHPLCの結果は酵母発酵(0.25GAUのTr‐GA/gds corn、32%ds、pH4.3、32℃)の間酸安定性アルファアミラーゼ(AkAA)及び酸性菌類プロテアーゼ(ファームゲン(FERMGEN)/AFP)の効果を示す。重合の程度、又はDPは重合反応中時間tにて平均ポリマー鎖における繰り返し単位の数である。長さはモノマー単位である。重合の程度は分子量の測定である。DP‐1の例はグルコース及びフルクトースのようなモノサッカライド類である。DP‐2の例はマルトース及びスクロースのようなジサッカライド類である。DP‐3はマルトトリオースをいう。DP>3は3より大きい重合度を有するポリマーを示す。表6に示すDP‐1、DP‐2、及びDP‐3はデンプンの加水分解から得られる糖類である。
【0123】
乳酸はラクトバシルス(Lactobacillus)菌により炭水化物の発酵中に生産される有機酸である。乳酸の生産は感染されたエタノール発酵中の収量の低下の主な原因となる。そのことから、乳酸は定期的にモニターされる。グリセロールはエタノール発酵の副産物である。それは酵母発酵の調子の指標として定期的にモニターされる。
【0124】
表6の結果は酵素ブレンド中AkAAのレベルが増加する場合、高い糖のの割合の減少(>DP3)と結果としてエタノール生産の割合が増加し、最終的にエタノールの収量が増加することを示す。
【表6】




【0125】
実施例2
マスバランス試験
酵母発酵の間、炭素転換効率(アルコール収率)に対するグルコアミラーゼ(トリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei))を用いた酸性菌類プロテアーゼ(Danisco US, Inc, Genencor Division製のファームゲン(FERMGEN))及び酸安定性アルファアミラーゼ(配列番号5)の効果を分析した。液状化全粒粉砕トウモロコシを含む培地をさらにマスバランス試験に用いた。
【0126】
液状化物(液状化全粒粉砕トウモロコシ基質)を最終DSが32%になるように蒸留残液(thin stillage)を全粒粉砕トウモロコシ液状化物へ加えることによって調製した。pHを6N硫酸を用いて4.3に調整した。マッシュに400ppmの尿素を0.05重量%のレッドスターエタノール(Red Star Ethanol)酵母播種材料と共に添加した。マッシュを1200グラムの量に分割し、表8に記載する0.325GAU/gDSレベルにて酵素を投与した。約800グラムのマッシュを4つの1リットルの容量フラスコにそれぞれ定量的に加えた。さらにそれぞれ約150グラムを250ml三角フラスコに添加した。1リットル容量フラスコはCOを逃がすための針を備えたゴム製コルク栓で蓋をし、32℃のインキュベーターに置き、定期的に重量を測定した。250mlの三角フラスコは150rpmにて32℃の強制空気シェーカー中に置き、HPLC分析用に定期的にサンプリングした。1L容器の発酵の最後にHPLC分析用に一部の溶液を採取した。フラスコの内容物を約500mlの脱イオン水(DI water)を用いながら定量的に2Lの三角フラスコに移したフラスコを蒸留装置に装着し、蒸留させた。約800mlの蒸留物を1Lの容量フラスコに集め、1Lに希釈した。サンプルをそれからHPLC分析用に採取した。蒸留後残留物を天秤皿に移し104℃にて乾燥した。乾燥残留物(DDGS)を集め、残留デンプンを試験した。
【0127】
発酵中のアルコール収率及び糖の組成物プロファイルに対する0.325GAUのTrGA/gds トウモロコシでのAkAA及びAFPの効果に関するHPLCデータを表7に示す。
【表7】

【0128】
表8のデータは酸性菌類プロテアーゼ(AFP)の添加がアルコール産物の割合の増加をもたらすが、アルファアミラーゼ(AkAA)の添加はコントロールと比較してさらに高いアルコール産物を生産した。マスバランスデータを表8にまとめた。表8はTrGA、AFP、及びAkAAを含む三種の酵素ブレンドがTrGAとAFP又はAkAA単独との組み合わせと比較して高い炭素転換効率(2,67%)をもたらすことを示した。
【表8】

【0129】
蒸留からのアルコール収率はCOの値と同様の傾向を示し、7300及び5000SSU/gアルファアミラーゼを含むブレンドは1ブッシェルのトウモロコシ当たり1ガロンのエタノールに関する最終の値において互いに同じくらいであり、コントロールよりよかった(表8を参照願いたい)。表8のデータはAkAAの容量増加につれて最終発酵でのエタノールレベルが増加することを示す。最終培地のHPLC分析は同じ傾向を十分示すが、CO値及び蒸留物の値ほどまで示さなかった。
【0130】
液状化全粒粉砕トウモロコシを用いる酵母発酵条件下異なる酵素組成を用いて得られる最終アルコール濃度をTrGAに対して比較して図1に示した。図1は液状化全粒粉砕トウモロコシの酵母発酵の間最終アルコール収率に対するTrGA添加酸性菌類プロテアーゼ(SAPU)及び酸安定性アルファアミラーゼ(SSU)の効果を示した。図1中番号が付けられた異なる酵素混合物は
1:TrGA、0.25GAU/gds トウモロコシ、
2:番号1+0.05SAPU AFP/gds トウモロコシ、
3:番号1+2.0SSU アルファアミラーゼ/gds.トウモロコシ、
4:番号1+0.05SAPU、AFP+2.0SSU アルファアミラーゼ/gds トウモロコシ
である。
【0131】
予想外に結果は炭素転換効率(トウモロコシdsのグラム当たりアルコール収量)は酵素ブレンド組成に依存することを示した。AFP又はAkAAを含むTrGAを用いるアルコール収率における増加は付加的ではなく、予想外に相乗的効果を示した。
【0132】
上記明細書に言及するすべての文献及び特許は引用により本明細書に組み入れられる。本発明の記載された方法及びシステムの種々の修飾及び変化は本発明の範囲及び精神に沿って当業者にて明らかである。本発明は特定の所望の実施態様との関係で記載されているが、特許請求の範囲にかかる発明が、そのような特定の実施態様に不当に限定すべきでないことは理解されるところである。実際に、本発明を行うために当業者とってあきらかな態様の種々の修飾は以下の特許請求の範囲内であることを意図する。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼを含む組成物。
【請求項2】
グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼの比がGAU:SSU:SAPUで測定した場合、約1:1.5:0.1から約1:8:1であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼの比がGAU:SSU:SAPUで測定した場合、約1:2:0.2から1:5:0.6であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記グルコアミラーゼがトリコデルマ(Trichoderma)、タラロミセス(Taleromyces)、ペニシリウム(Penicillium)、アスペルギルス(Aspergillus)及びフミコーラ(Humicola)から成る群から選択される菌類から得られることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記グルコアミラーゼが配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記グルコアミラーゼ配列番号1のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸安定性アルファアミラーゼがトリコデルマ(Trichoderma)又はアスペルギルス(Aspergillus)から得られることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記酸安定性アルファアミラーゼが配列番号5、7、9、10、又は13のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記グルコアミラーゼが配列番号5のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記酸性菌類プロテアーゼがトリコデルマ(Trichoderma)から得られることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記酸性菌類プロテアーゼが配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記酸性菌類プロテアーゼが配列番号14のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、第二のグルコアミラーゼ、第二のアルファアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、第二のプロテアーゼ類、フィターゼ、プルラナーゼ、ベータアミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ベータ‐グルカナーゼ、ガラクトシダーゼ、エステラーゼ、シクロデキストリントランスグルコシルトランスフェラーゼ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される追加酵素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
発酵性糖類から最終産物を生産するための方法であって、
a.デンプン含有粉砕穀物を含むスラリーをアルファアミラーゼと接触させ液状化物を生産する段階、
b.前記液状化物をグルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼと接触させ発酵性糖類を生産する段階、及び
c.発酵生物の存在下発酵性糖類を発酵させ最終産物を生産する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記最終産物がアルコールであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
グルコアミラーゼ、酸安定性アルファアミラーゼ、及び酸性菌類プロテアーゼの比がGAU:SSU:SAPUで測定した場合、約1:1.5:0.1から約1:8:1であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
段階(b)と段階(c)を連続して行うことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
段階(b)と段階(c)を同時に行うことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
段階(b)が30から65℃及びpH3.0からpH5.0にて行うことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
段階(c)が15−40℃及びpH3.0からpH6.5にて行うことを特徴とする、請求項14に記載の方法。


【公表番号】特表2011−500058(P2011−500058A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530065(P2010−530065)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/079827
【国際公開番号】WO2009/052101
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】