説明

発酵食品及びその製造方法

【課題】 発酵食品及びその製造方法において、テンペ菌によって発酵させ完成した後においても、雑菌の繁殖を抑制すること。
【解決手段】 豆類、穀類、ナッツ類又はこれらの混合物にテンペ菌を接種して発酵させた発酵食品であって、抗雑菌作用物質が混入されている。この発酵食品の製造方法は、大豆にテンペ菌を接種する工程(S007)と、テンペ菌で大豆を発酵させる工程(S009)と、を備え、少なくとも発酵させる工程前に、テンペ菌に抗雑菌作用物質としてカテキンを含む微粉末茶を混入させる(S006)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆等にテンペ菌を接種して製造される発酵食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、納豆のような独特の匂いや粘りが少ないテンペが注目されている。テンペとは、インドネシアの伝統的発酵食品であり、テンペ菌(リゾープス菌ともいう)を大豆に接種して発酵させて製造されるものである。このようなテンペ菌による発酵食品は、納豆に比べて、大豆そのものの味を損なわずに味わえると共に、板状やブロック状等の固形体が容易に得られて、焼く、揚げる、炒める、蒸す等の種々の料理に適用可能な優れた食品である。したがって、このテンペ菌による発酵食品は、和食、洋食、中華料理等に使用できるだけでなく、菓子類やパン等に適用することも可能である。
【0003】
上記テンペ菌は、ハイビスカスやバナナの葉等に生息している「白カビ」の一種で、リゾープス属の糸状菌(Rhizopus oligosuorus)である。このテンペ菌を豆(大豆、ピーナッツ、小豆、そら豆、エンドウ豆等の豆類)に接種して発酵させることにより、消化性が増し、ビタミン類やアミノ酸類が増加することが知られている。すなわち、このテンペ菌による豆の発酵食品と、単に煮ただけの豆と、を比較すると、テンペ菌による発酵食品では、飛躍的に栄養価が向上することが知られている。また、テンペ菌は、主に4種類のリゾープス菌(R.stolonifer,R.oligosporus,R.oryazae,R.arrhizus)があり、その中でもオリゴポラスは、アフラトキシン等のカビ毒を分解、解毒する特性を有していることが知られている。
【0004】
従来、このテンペ菌を用いた発酵食品として、例えば特許文献1には、豆類等にテンペ菌を接種し、発酵させた発酵食品及びその製造方法が記載されている。この発酵食品の製造方法では、テンペ菌の生育を助長し、バクテリア等の雑菌の繁殖を防ぐために、豆類等に乳酸、酢酸等の酸を添加してpH調整する酸性化工程が採用されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−168423号公報(特許請求の範囲、段落番号0019)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来、テンペ菌による発酵食品では、発酵時にバクテリア等の雑菌の繁殖を防ぐために、酸性化工程等が採用されているが、発酵させて完成した後、室温等でそのまま放置しておくと、雑菌が繁殖して全体が黒ずんで腐敗してしまう不都合があった。したがって、発酵させて完成した後、すぐに調理することが好ましいが、すぐに調理しない場合は、直ちにラップ等により密封状態にして冷凍保存する必要があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、テンペ菌によって発酵させ完成した後においても、雑菌の繁殖を抑制することができる発酵食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の発酵食品は、豆類、穀類、ナッツ類又はこれらの混合物にテンペ菌を接種して発酵させた発酵食品であって、抗雑菌作用物質が混入されていることを特徴とする。
また、本発明の発酵食品の製造方法は、豆類、穀類、ナッツ類又はこれらの混合物にテンペ菌を接種する工程と、前記テンペ菌で前記豆類、前記穀類、前記ナッツ類又はこれらの混合物を発酵させる工程と、を備え、少なくとも前記発酵させる工程前に、前記テンペ菌、前記豆類、前記穀類、前記ナッツ類又はこれらの混合物に、抗雑菌作用物質を混入させることを特徴とする。
【0009】
これらの発酵食品及びその製造方法では、抗雑菌作用物質を混入するので、テンペ菌の主な菌の育成を妨げることなく、テンペ菌等に混入している雑菌(バクテリア等の細菌等)の繁殖を抑制することができ、従来に比べて、テンペ菌の良好な発酵状態を長期に維持することができる。
【0010】
また、本発明の発酵食品は、前記抗雑菌作用物質が、カテキンであることを特徴とする。すなわち、この発酵食品では、カテキンが混入されているので、抗雑菌作用だけでなく、抗酸化作用等を有し、より高い栄養素を含む健康食品とすることができる。これにより、活性酸素の害を防ぎ、発ガン、老化、動脈硬化等を抑制する効果を得ることができる。また、血中のコレステロールや脂質を取り除く効果もあり、脳血管障害、脳血管性痴呆等の予防にも効果が得られる。また、カテキンの混入分量に応じて、渋味成分を加えることができ、発酵食品として、味のバリエーションを広げることができる。
【0011】
さらに、本発明の発酵食品は、緑茶葉が混入されていることを特徴とする。すなわち、この発酵食品では、自然食材としてカテキンを有する緑茶葉が粉末状態等で混入されているので、特にカテキンを抽出して混入させなくても、容易にカテキンを混入させることができる。また、緑茶葉の混入分量に応じて緑茶の風味が得られ、発酵食品として、さらに味のバリエーションを広げることができると共に、緑色等の色合いを持たせることが可能になる。
【0012】
また、本発明の発酵食品は、前記抗雑菌作用物質が、カプサイシンであることを特徴とする。すなわち、この発酵食品では、カプサイシンが混入されているので、抗雑菌作用だけでなく、体内での中枢神経刺激作用等を有し、より高い栄養素を含む健康食品とすることができる。これにより、ホルモン分泌の促進を図り、エネルギーの代謝が活発化して、貯蔵脂肪の分解が促進され、肥満防止、老化防止、胃腸内の殺菌作用、食欲増進、健胃作用等を得ることができる。また、カプサイシンの混入分量に応じて、辛味成分を加えることができ、辛味による食欲増進作用が得られると共に、発酵食品として、味のバリエーションを広げることができる。
【0013】
さらに、本発明の発酵食品は、唐辛子が混入されていることを特徴とする。すなわち、この発酵食品では、自然食材としてカプサイシンを含む唐辛子が粉末状態等で混入されているので、特にカプサイシンを抽出して混入させなくても、容易にカプサイシンを混入させることができる。また、唐辛子の混入分量に応じて唐辛子の風味が得られ、発酵食品として、さらに味のバリエーションを広げることができると共に、赤色等の色合いを持たせることが可能になる。
【0014】
また、本発明の発酵食品は、前記抗雑菌作用物質が、アリルからし油であることを特徴とする。すなわち、この発酵食品では、アリルからし油が混入されているので、抗雑菌作用だけでなく、抗カビ作用、アリルからし油の揮発成分による防臭作用、血小板の凝固抑制作用、発ガン性物質の活性化抑制作用等を有し、より高い栄養素を含む健康食品とすることができる。これにより、臭みを消して大豆等の旨味をより引き立たせて食欲を増進させることができると共に、脳梗塞、動脈硬化、心筋梗塞、発ガン等の予防効果を得ることができる。また、アリルからし油の混入分量に応じて、辛味成分を加えることができ、辛味による食欲増進作用が得られると共に、発酵食品として、味のバリエーションを広げることができる。
【0015】
さらに、本発明の発酵食品は、わさびが混入されていることを特徴とする。すなわち、この発酵食品では、自然食材としてアリルからし油を含むわさびが練りわさび状等で混入されているので、特にアリルからし油を抽出して混入させなくても、容易にアリルからし油を混入させることができる。また、わさびの混入分量に応じて、わさびの風味が得られ、発酵食品として、さらに味のバリエーションを広げることができると共に、緑色等の色合いを持たせることが可能になる。さらに、わさびには、ペルオキシターゼという酵素が含まれているため、解毒作用を促進したり、染色体異常を抑える等の効果が得られる。また、わさびには、カルシウム、リン、ビタミンB1、B2、C等の成分が多く含まれており、より栄養素の高い食品を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る発酵食品及びその製造方法によれば、カテキン、カプサイシンやアリルからし油等の抗雑菌作用物質を混入するので、テンペ菌の主な菌の育成を妨げることなく、テンペ菌等に混入している雑菌の繁殖を抑制することができ、従来に比べて、テンペ菌の良好な発酵状態を長期に維持することができる。これにより、今まで以上に衛生面で優れかつ栄養素の高い、今までに無い新しい発酵食品の提供が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る発酵食品及びその製造方法の第一実施形態を、図1を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態の発酵食品は、豆類、穀類、ナッツ類又はこれらの混合物にテンペ菌を接種して発酵させ、抗雑菌作用物質としてカテキンを含む緑茶の微粉末茶を混入させた発酵食品であり、その製造方法を図1に示すフローチャートを用いて以下に説明する。なお、本実施形態では、大豆にテンペ菌を接種して発酵させたテンペを例に説明する。
【0019】
まず、図1に示すように、大豆を水に漬けて大豆の汚れをよく洗い落とす(大豆洗浄工程:S001)。なお、大豆を洗浄する際に、既に傷が付いている豆や小さすぎる豆は取り除いておくことが好ましい。次に、洗浄した大豆を、乳酸、酢酸又はクエン酸が入った水溶液中に浸漬する(浸漬工程:S002)。ここで使用する乳酸又は酢酸の水溶液の酸の濃度及び浸漬する時間については、大豆に腐敗菌が繁殖するのを抑制する目的が達成可能な範囲で適宜決定することができ、本実施形態では、5リットルの米酢を100リットルの水で薄めた水溶液に、一晩(約8時間)浸漬した。
【0020】
次に、浸漬した大豆を、手もみして外皮を剥いて除去する(脱皮工程:S003)。さらに、浸漬した状態の大豆を加熱処理する(加熱工程:S004)。この際、10kgの大豆を乳酸又は酢酸の水溶液40リットルの中に入れ、沸騰してから30分〜1時間程度加熱する。そして、加熱した大豆の水を切り、表面を乾燥させる(乾燥工程:S005)。なお、上記乾燥は、自然乾燥で2時間程度行った。
【0021】
次に、粉末状のテンペ菌(インドネシア産テンペ菌:RAGI)に緑茶葉の微粉末茶を万遍なく混ぜ、微粉末茶入りテンペ菌としておく(混入工程:S006)。この緑茶葉には、カテキンが多く含まれており、その種類としては、例えば煎茶、番茶、玄米茶、玉露、抹茶、茎茶等が該当する。なお、本実施形態では、大豆1kgに対してテンペ菌1〜3g及び微粉末茶12gの割合となるように微粉末茶をテンペ菌に混入させている。また、テンペ菌の分量については、大豆の量・大きさ等を考慮して適宜決定される。そして、この微粉末茶入りテンペ菌を、表面を乾燥させた大豆に接種する(接種工程:S007)。なお、テンペ菌及び微粉末茶が大豆全体に充分に行き渡るように、微粉末茶入りテンペ菌を散布した後、大豆を攪拌することが好ましい。
【0022】
次に、微粉末茶入りテンペ菌を接種した大豆を容器に充填する(充填工程:S008)。例えば、本実施形態では、容量が500gの角形プラスチック容器に充填した。この容器に充填した大豆を、気温30〜32℃に保持された室内で20時間程度静置し、発酵させる(発酵工程:S009)。このようにすることで、全体をテンペ菌の菌糸がびっしりと覆い、ケーキ状に固まった微粉末茶入りテンペとなる。発酵後、容器から取り出すことで(取り出し工程:S010)、微粉末茶入りテンペ(発酵食品)が完成する。この微粉末茶入りテンペは、テンペ菌による白っぽい全体の中に濃緑色の微粉末茶が点在していることが外観上認識できる。
【0023】
このように本実施形態の発酵食品では、抗雑菌作用物質としてカテキンを含んだ緑茶葉の微粉末茶をテンペ菌に混入するので、テンペ菌の主な菌の育成を妨げることなく、テンペ菌等に混入している雑菌(バクテリア等の細菌等)の繁殖を抑制することができ、従来に比べて、テンペ菌の良好な発酵状態を長期に維持することができる。特に、カテキンには、抗雑菌作用だけでなく、抗酸化作用等があり、より高い栄養素を含む健康食品とすることができる。
【0024】
これにより、活性酸素の害を防ぎ、発ガン、老化、動脈硬化等を抑制する効果を得ることができる。また、血中のコレステロールや脂質を取り除く効果もあり、脳血管障害、脳血管性痴呆等の予防にも効果が得られる。また、微粉末茶の混入分量に応じて、渋味成分及び緑茶の風味を加えることができ、発酵食品として、味のバリエーションを広げることができると共に、緑色等の色合いを持たせることが可能になる。さらに、自然食材である緑茶葉が粉末状態等で混入されているので、特にカテキンを抽出して混入させなくても、容易にカテキンを混入させることができる。
【0025】
上記製造方法により作製した微粉末茶入りテンペについて、その栄養成分分析を行った結果を、表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示す分析結果から、微粉末茶入りテンペ100g当たりの成分として、カテキンは180mg含まれていることがわかる。
【0028】
次に、本発明に係る発酵食品の第2実施形態について、以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0029】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態ではテンペ菌に緑茶葉の微粉末茶を混入しているのに対し、第2実施形態では、テンペ菌に粉末唐辛子を混入している点である。すなわち、第2実施形態では、上記混入工程において、テンペ菌に微粉末茶の代わりに粉末唐辛子を混入し、この唐辛子入りテンペ菌を大豆に接種して発酵させることで、唐辛子入りテンペ(発酵食品)を作製する。なお、第2実施形態では、唐辛子の混入分量は、第1実施形態の微粉末茶と同様に設定している。
【0030】
このように本実施形態では、抗雑菌作用物質としてカプサイシンを含んだ粉末唐辛子をテンペ菌に混入するので、抗雑菌作用だけでなく、体内での中枢神経刺激作用等を有し、より高い栄養素を含む健康食品とすることができる。これにより、ホルモン分泌の促進を図り、エネルギーの代謝が活発化して、貯蔵脂肪の分解が促進され、肥満防止、老化防止、胃腸内の殺菌作用、食欲増進、健胃作用等を得ることができる。
【0031】
また、粉末唐辛子の混入分量に応じて、辛味成分及び唐辛子の風味を加えることができ、辛味による食欲増進作用が得られ、発酵食品として、味のバリエーションを広げることができると共に、赤色等の色合いを持たせることが可能になる。
さらに、自然食材である唐辛子が粉末状態等で混入されているので、特にカプサイシンを抽出して混入させなくても、容易にカプサイシンを混入させることができる。
【0032】
上記製造方法により作製した唐辛子入りテンペについて、その栄養成分分析を行った結果を、表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2に示す分析結果から、唐辛子入りテンペ100g当たりの成分として、カプサイシンは0.6mg%含まれていることがわかる。
【0035】
次に、本発明に係る発酵食品の第2実施形態について、以下に説明する。
【0036】
第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態ではテンペ菌に粉末唐辛子を混入しているのに対し、第3実施形態では、添加物をいれていないテンペ菌を接種のために大豆に散布した後、練りわさびをその中に混入させる点である。すなわち、第3実施形態では、テンペ菌を大豆に散布した後、練りわさびをその中に混入させると共に、テンペ菌及び練りわさびが大豆全体に充分に行き渡るように、大豆を攪拌し、これを発酵させることで、わさび入りテンペ(発酵食品)を作製する。なお、本実施形態では、練りわさびの混入分量を、大豆1kgに対して20gに設定している。
【0037】
このように本実施形態では、抗雑菌作用物質としてアリルからし油を含んだ練りわさびをテンペ菌が散布された大豆に混入するので、抗雑菌作用だけでなく、抗カビ作用、アリルからし油の揮発成分による防臭作用、血小板の凝固抑制作用、発ガン性物質の活性化抑制作用等を有し、より高い栄養素を含む健康食品とすることができる。これにより、臭みを消して大豆等の旨味をより引き立たせて食欲を増進させることができると共に、脳梗塞、動脈硬化、心筋梗塞、発ガン等の予防効果を得ることができる。
【0038】
また、練りわさびの混入分量に応じて、辛味成分及びわさびの風味を加えることができ、辛味による食欲増進作用が得られ、発酵食品として、味のバリエーションを広げることができると共に、緑色等の色合いを持たせることが可能になる。さらに、自然食材であるわさびが練りわさび状等で混入されているので、特にアリルからし油を抽出して混入させなくても、容易にアリルからし油を混入させることができる。さらに、わさびには、ペルオキシターゼという酵素が含まれているため、解毒作用を促進したり、染色体異常を抑える等の効果が得られる。また、わさびには、栄養素として、カルシウム、リン、ビタミンB1、B2、C等の成分が多く含まれており、より優れた健康食品が得られる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明に係る発酵食品を、実施例により図2から図5を参照して具体的に説明する。
【0040】
上記第1〜第3実施形態の微粉末茶入りテンペ、唐辛子入りテンペ及びわさび入りテンペを実際に作製して、完成した時点から室内で室温(25℃程度)状態のまま1日放置した実験を行った。この実験前後における各テンペの表面状態を、図2〜図4に示す。なお、比較例として、抗雑菌作用物質を混入せずに作製した従来のテンペも作製し、同様の放置実験を行った。この従来のテンペについても、実験前後の表面状態を、併せて図5に示す。
【0041】
第1実施形態に基づいて作製した微粉末茶入りテンペでは、完成直後、図2の(a)に示すように、テンペ菌の発酵により白くなった全体の中に粒状の微粉末茶が点在している状態がわかるが、図2の(b)に示すように、1日放置しても、微粉末茶だけが点在しているだけで、バクテリア等の雑菌の繁殖はみられなかった。なお、図2の(b)に示す1日放置した状態では、黒くものが集中した部分があるが、これは微粉末茶が分散せずに若干集中してしまった部分であり、殺菌の繁殖ではない。
なお、微粉末茶入りテンペについては、さらに続けて1日放置した連続2日放置実験を行ったので、その結果を図2の(c)に示す。これからわかるように、微粉末茶入りテンペを2日間放置しても、テンペ菌がさらに繁殖して全体的により白くなって表面を覆い、やはりバクテリア等の雑菌の繁殖はみられなかった。
【0042】
また、第2実施形態に基づいて作製した唐辛子入りテンペでは、完成直後、図3の(a)に示すように、テンペ菌の発酵により白くなった全体の中に粒状の唐辛子が点在している状態がわかるが、図3の(b)に示すように、1日放置しても、唐辛子だけが点在しているだけで、バクテリア等の雑菌の繁殖はみられなかった。なお、図3の(b)に示す1日放置した状態では、赤黒く集中した部分があるが、これは唐辛子が分散せずに若干集中してしまった部分であり、殺菌の繁殖ではない。
【0043】
さらに、第3実施形態に基づいて作製したわさび入りテンペでは、完成直後、図4の(a)に示すように、テンペ菌の発酵により全体が白くなった状態であるのがわかるが、図4の(b)に示すように、1日放置しても、全体的に白い状態が維持されており、バクテリア等の雑菌の繁殖はみられなかった。
【0044】
これらの上記各実施形態の実施例に対して、抗雑菌作用物質を混入せずに作製した従来のテンペでは、完成直後、図5の(a)に示すように、テンペ菌の発酵により全体が白くなった状態であるのがわかるが、図5の(b)に示すように、1日放置すると、バクテリア等の雑菌が大量に繁殖してしまい、黒ずんでしまっていることがわかる。
このように、従来のテンペに比べ、本発明に係る実施例の微粉末茶入りテンペ、唐辛子入りテンペ及びわさび入りテンペは、いずれも雑菌の繁殖が抑制されて良好な状態が維持されていることがわかる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、緑茶葉及び唐辛子を粉末状態に混入しているが、これを液化して混入しても構わない。また、第3実施形態では、わさびを練りわさび状態で混入しているが、わさびを粉末化又は液化して混入しても構わない。
【0046】
また、第1実施形態では、緑茶葉を微粉末にして混入しているが、緑茶葉から抽出したカテキンを直接混入しても構わない。同様に、第2及び第3実施形態では、唐辛子及びわさびを混入しているが、唐辛子及びわさびから抽出したカプサイシン及びアリルからし油を直接混入しても構わない。
さらに、上記各実施形態では、脱皮工程により大豆の皮を剥いているが、脱皮工程を採用せず皮付き大豆にテンペ菌を接種し、発酵させても構わない。この場合、テンペ菌を接種した後、大豆を圧潰、切断又は穿孔することにより、テンペ菌の菌糸が大豆の内部に行き渡り、充分に発酵させることができると共に、ブロック状に成形し易くなる。
【0047】
上記各実施形態では、テンペ菌を大豆に接種して発酵させたが、その他の豆類、穀類、ナッツ類又はこれらの混合物にテンペ菌を接種して発酵させても構わない。その他の豆類としては、ピーナッツ類タンパク質及び脂肪を主成分とするもの、小豆、そらまめ、えんどうまめ、うずらまめ等澱粉及びタンパク質を主成分とするもの等が挙げられる。また、穀類としては、米、大麦、ライ麦、とうもろこし、あわ、ひえ等の他、そば等が挙げられる。さらに、ナッツ類としては、栗、くるみ、ぎんなん、しい、アーモンド、カカオ、ココナッツ、マカデミアナッツ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る第1実施形態の発酵食品の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る実施例において、微粉末茶入りテンペの完成直後の表面状態を写した拡大写真である。
【図3】本発明に係る実施例において、微粉末茶入りテンペの1日放置の表面状態を写した拡大写真である。
【図4】本発明に係る実施例において、微粉末茶入りテンペの2日放置の表面状態を写した拡大写真である。
【図5】本発明に係る実施例において、唐辛子入りテンペの完成直後の表面状態を写した拡大写真である。
【図6】本発明に係る実施例において、唐辛子入りテンペの1日放置の表面状態を写した拡大写真である。
【図7】本発明に係る実施例において、わさび入りテンペの完成直後の表面状態を写した拡大写真である。
【図8】本発明に係る実施例において、わさび入りテンペの1日放置の表面状態を写した拡大写真である。
【図9】本発明に係る比較例において、従来のテンペの完成直後の表面状態を写した拡大写真である。
【図10】本発明に係る比較例において、従来のテンペの1日放置の表面状態を写した拡大写真である。
【符号の説明】
【0049】
S006…混入工程、S007…接種工程、S009…発酵工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆類、穀類、ナッツ類又はこれらの混合物にテンペ菌を接種して発酵させた発酵食品であって、
抗雑菌作用物質が混入されていることを特徴とする発酵食品。
【請求項2】
請求項1に記載の発酵食品において、
前記抗雑菌作用物質が、カテキンであることを特徴とする発酵食品。
【請求項3】
請求項2に記載の発酵食品において、
緑茶葉が混入されていることを特徴とする発酵食品。
【請求項4】
請求項1に記載の発酵食品において、
前記抗雑菌作用物質が、カプサイシンであることを特徴とする発酵食品。
【請求項5】
請求項4に記載の発酵食品において、
唐辛子が混入されていることを特徴とする発酵食品。
【請求項6】
請求項1に記載の発酵食品において、
前記抗雑菌作用物質が、アリルからし油であることを特徴とする発酵食品。
【請求項7】
請求項6に記載の発酵食品において、
わさびが混入されていることを特徴とする発酵食品。
【請求項8】
豆類、穀類、ナッツ類又はこれらの混合物にテンペ菌を接種する工程と、
前記テンペ菌で前記豆類、前記穀類、前記ナッツ類又はこれらの混合物を発酵させる工程と、を備え、
少なくとも前記発酵させる工程前に、前記テンペ菌、前記豆類、前記穀類、前記ナッツ類又はこれらの混合物に、抗雑菌作用物質を混入させることを特徴とする発酵食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−254702(P2006−254702A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72115(P2005−72115)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(503048545)有限会社ホットプランニング (1)
【Fターム(参考)】