説明

発電システムの電力変動緩和装置および電力変動緩和方法

【課題】 互いに異なる態様の二次電池を用いても構成することのできる発電システムの電力変動緩和装置を提供することにある。
【解決手段】 並列に接続された組電池2の出力電圧をそれぞれ検出して、組電池2のそれぞれの出力電圧を均一に調整し、発電システム10の発電による電力変動を緩和するために、発電システム10に接続された電力変換装置5により、電圧を均一に調整した組電池2から出力される直流電力を交流電力に変換する発電システムの電力変動緩和装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電システムの電力変動緩和装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減を目的として、風力、太陽光などの自然エネルギーを電気エネルギーに変換して電力を発電するシステムの導入が増大している。これらの自然エネルギーによる発電電力は、気象条件に大きく影響される。このため、自然エネルギーによる発電電力は、電力変動が生じ易い。発電電力の電力変動に、系統側が十分に追随できない場合は、負荷で電圧変動や部分停電が発生する恐れがある。
【0003】
しかし、このような事態を避けるために、予備電力として火力発電所を待機させると燃料費等の維持費用が増大する。このため、自然エネルギーを用いた発電システム自体で変動電力を抑制することが望まれている。
【0004】
他方、輸送体の環境負荷低減の推進の一環として、ハイブリッド自動車や電気自動車が急速に導入されている。これらの自動車には、電源としてバッテリーが搭載されている。このため、将来、廃車などの際に、大量の二次電池が排出される状況が予想される。従って、これらの二次電池の扱いも問題となることが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−51106号公報
【特許文献2】特開2010−45002号公報
【特許文献3】特開2009−27797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の状況を鑑みて、二次電池の充放電により発電システムの電力変動を緩和する電力変動緩和装置を、再利用する二次電池により構成しようとすると、次のような問題が生じる。
【0007】
二次電池には、様々な種類がある。また、同種類の電池でも、端子材料又は製造メーカが異なる場合、電池端電圧も異なる。さらに、再利用の二次電池では、使用状態、使用期間、又は使用環境などにより、固体差が大きくなる。
【0008】
このような異なる態様の二次電池を用いて構成した場合、電池間の循環電流による部分発熱、又は構成電池間の電圧分担の不均一による貯蔵電力量の低下などを生じる恐れがある。
【0009】
そこで、本発明の実施形態による目的は、互いに異なる態様の二次電池を用いても構成することのできる発電システムの電力変動緩和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態の観点に従った発電システムの電力変動緩和装置は、複数の二次電池が並列に接続され、前記複数の二次電池から出力される直流電力を交流電力に変換し、発電システムに接続された電力変換装置を制御する発電システムの電力変動緩和装置であって、前記複数の二次電池から出力される直流電圧をそれぞれ調整する複数の直流電圧調整手段と、前記複数の二次電池から出力される直流電圧をそれぞれ検出する複数の直流電圧検出手段と、前記複数の直流電圧検出手段により検出された直流電圧に基づいて、前記複数の二次電池から出力される直流電圧を均一に調整するために、前記複数の直流電圧調整手段を制御する直流電圧制御手段と、前記発電システムの電力変動を緩和するために前記電力変換装置を制御する電力変換制御手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電力変動緩和装置の適用された発電システムの構成を示す構成図。
【図2】第1の実施形態に係る電力変動緩和システム制御装置の適用された電力変動緩和装置の構成を示す構成図。
【図3】第1の実施形態に係るスイッチ装置の構成を示す構成図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るスイッチ装置の構成を示す構成図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る電力変動緩和システム制御装置の適用された電力変動緩和装置の構成を示す構成図。
【図6】第3の実施形態に係る計画充放電制御装置による電力変動緩和装置の放電制御を示すグラフ図。
【図7】第3の実施形態に係る計画充放電制御装置による電力変動緩和装置の充電制御を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力変動緩和装置1の適用された発電システム10の構成を示す構成図である。なお、以降の図における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。以降の実施形態も同様にして重複する説明を省略する。
【0014】
発電システム10は、風力発電機7により発電された電力を負荷9に供給するシステムである。負荷9は、風力発電機7と電気的に接続されている。負荷9は、変圧器8を介して風力発電機7と接続しても、変圧器8を介さずに風力発電機7と接続してもよい。電力変動緩和装置1は、電力変換装置5を介して発電システム10の電力系統(風力発電機7から負荷9に電力を供給する電力系統)と接続されている。電力変換装置5の交流側には、発電システム10の電力系統の状態を把握するための電気量測定器6が設けられている。
【0015】
風力発電機7は、自然エネルギーである風力を利用する発電機である。
【0016】
電力変換装置5は、電力変換動作により、電力変動緩和装置1を充放電させることで、発電システム10の電力系統の電力変動を緩和する。電力変換装置5は、風力発電機7による発電電力が不足している場合、電力変動緩和装置1から供給される直流電力を交流電力に変換し、発電システム10の電力系統に供給する。電力変換装置5は、風力発電機7による発電電力が過剰の場合、発電システム10の電力系統の余剰の交流電力を直流電力に変換し、電力変動緩和装置1を充電する。
【0017】
電気量測定器6は、発電システム10の電力系統の状態を示す電気量を測定する。電気量測定器6により測定される電気量は、電圧、電流、電力、有効電力、又は無効電力などである。電気量測定器6は、測定した電気量を系統情報D1として電力変動緩和装置1に出力する。
【0018】
電力変動緩和装置1は、電気量測定器6により測定された系統情報D1に基づいて、電力変換装置5を制御するための制御信号S1を出力する。これにより、電力変動緩和装置1は、電力変換装置5を介して発電システム10の電力系統の電力変動を緩和する。
【0019】
電力変動緩和装置1は、複数の組電池2と、電力変動緩和システムとを備えている。電力変動緩和システムは、電力変動緩和システム制御装置3と、スイッチ装置4とを含む構成である。
【0020】
電力変動緩和システム制御装置3は、電力変動緩和装置1の制御に関する演算処理する部分である。電力変動緩和システム制御装置3は、制御信号S1を電力変換装置5に出力して、電力変換装置5を制御する。電力変動緩和システム制御装置3は、制御信号S2を各組電池2に出力して、各組電池2を制御する。電力変動緩和システム制御装置3は、制御信号S3をスイッチ装置4に出力して、スイッチ装置4を制御する。電力変動緩和システム制御装置3は、電気量測定器6から系統情報D1を受信する。電力変動緩和システム制御装置3は、各組電池2から組電池情報D2を受信する。電力変動緩和システム制御装置3は、各組電池2からスイッチ装置4に入力された入力電圧を入力電圧情報D3としてスイッチ装置4から受信する。
【0021】
スイッチ装置4は、各組電池2から出力される電圧を調整して、電力変換装置5の直流側に出力する。これにより、スイッチ装置4は、複数の組電池2と電力変換装置5との間の電力の授受の中継を行う。
【0022】
組電池2は、スイッチ装置4に接続されている。組電池2は、二次電池である。組電池2は、充電又は放電することにより、発電システム10の電力系統の電力変動を緩和する。複数の組電池2には、様々な種類又は状態(中古又は新品など)の組電池2が含まれている。また、複数の中古の組電池2がある場合でも、各組電池2の使用状態、使用期間、又は使用環境などは様々である。なお、以降においては、複数の組電池2のうち主に1つの組電池2について説明し、他の組電池2については同様であるとして、説明を適宜省略する。
【0023】
組電池2は、セル部21と、セル制御装置22と、セルバランス回路23とを備えている。
【0024】
セル部21は、複数の単位電池であるセルが直列又は並列に接続された構成である。組電池2は、セル部21により、充電又は放電をする。
【0025】
セル制御装置22は、電力変動緩和システム制御装置3から受信する制御信号S2に基づいて、セルバランス回路23を介してセル部21を制御する。制御信号S2は、セル部21を充電させる充電指令又はセル部21を放電させる放電指令などである。セル制御装置22は、セル部21から電圧情報DV、電流情報DI、又は温度情報DTなどの各セルの運転状態に関する情報を受信する。セル制御装置22は、受信した各セルの運転状態に関する情報を組電池情報D2として、電力変動緩和システム制御装置3に送信する。
【0026】
セルバランス回路23は、セル部21を構成する各セルの状態を監視する。セルバランス回路23は、各セル間の電圧又は充電状態を均一化する処理を行う。セルバランス回路23は、セル制御装置22から充電指令又は放電指令を受信すると、各セル間の電圧又は充電状態が均一になるように、セル部21を充電又は放電させる制御をする。
【0027】
図2は、本実施形態に係る電力変動緩和システム制御装置3の適用された電力変動緩和装置1の構成を示す構成図である。
【0028】
電力変動緩和システム制御装置3は、電力変換制御部31と、組電池制御部32と、スイッチ装置制御部33とを備えている。
【0029】
電力変換制御部31は、電気量測定器6から系統情報D1を受信する。電力変換制御部31は、組電池制御部32から組電池2に関する情報D21を受信する。組電池2に関する情報には、全ての組電池2の総和のSOC(蓄電率、State of Charge)情報が含まれている。電力変換制御部31は、系統情報D1及び組電池2に関する情報D21に基づいて、電力変動緩和装置1の制御内容(充電又は放電など)を決定する。電力変換制御部31は、決定した制御内容に従って、電力変換装置5及び組電池2を制御する。
【0030】
例えば、電力変換制御部31は、次のように制御内容を決定する。
【0031】
電力変換制御部31は、系統情報D1に基づいて、発電システム10の電力系統の電力変動を把握する。電力変換制御部31は、この電力変動を抑制するように、各組電池2を充放電制御する。組電池2を充電させる場合、電力変換制御部31は、組電池制御部32に組電池2を充電させるように要求する情報D12を出力し、電力変換装置5に余剰電力を電力変動緩和装置1に充電するように制御信号S1を出力する。組電池2を放電させる場合、電力変換制御部31は、組電池制御部32に組電池2を放電させるように要求する情報D12を出力し、電力変換装置5に電力を発電システム10の電力系統に供給するように制御信号S1を出力する。
【0032】
組電池制御部32は、各組電池2から組電池情報D2を受信する。組電池制御部32は、電力変換制御部31から情報D12を受信する。組電池制御部32は、スイッチ装置制御部33から情報D32を受信する。情報D32には、スイッチ装置4に各組電池2から入力された入力電圧に関する情報が含まれている。組電池制御部32は、組電池情報D2及びスイッチ装置4から受信した情報D32に基づいて、各組電池2の制御内容(各組電池2の充電、放電、又は停止など)を決定する。組電池制御部32は、組電池情報D2に基づいて、電力変換制御部31に送信する組電池2に関する情報D21を生成する。
【0033】
組電池2を充電させる場合、組電池制御部32は、各組電池2にそれぞれ充電指令を含む制御信号S2を出力し、スイッチ装置制御部33にスイッチ装置4の制御に必要な情報D23を送信する。組電池2を放電させる場合、組電池制御部32は、各組電池2にそれぞれ放電指令又は放電電圧を制御するための放電電圧指令を含む制御信号S2を出力し、スイッチ装置制御部33にスイッチ装置4の制御に必要な情報D23を送信する。
【0034】
例えば、組電池制御部32は、次のように制御内容を決定する。
【0035】
組電池制御部32は、各組電池2に関する情報D21に含まれる電圧情報DV及び電流情報DIに基づいて、各組電池2の出力電力が均一になるように制御する。これにより、出力電力が特定の組電池2に偏ることを抑制する。
【0036】
組電池制御部32は、各組電池2に関する情報D21に基づいて、各組電池2のSOCを測定する。組電池制御部32は、各組電池2のSOCが均一になるように制御する。
【0037】
組電池制御部32は、各組電池2に関する情報D21に含まれる温度情報DTに基づいて、各組電池2の温度がある一定の範囲内になるように制御する。これは、組電池2の温度が高過ぎる場合、組電池2は故障の恐れがあり、組電池2の温度が低過ぎる場合、組電池2の充放電の効率が低下するからである。
【0038】
スイッチ装置制御部33は、組電池制御部32から各組電池2の充放電に関する情報D23を受信する。スイッチ装置制御部33は、スイッチ装置4から入力電圧情報D3を受信する。スイッチ装置制御部33は、入力電圧情報D3に基づいて、組電池制御部32に送信する各組電池2の入力電圧に関する情報D32を生成する。スイッチ装置制御部33は、各組電池2の充放電に関する情報D23及び入力電圧情報D3に基づいて、スイッチ装置4を制御するための制御指令を含む制御信号S3を出力する。
【0039】
図3は、本実施形態に係るスイッチ装置4の構成を示す構成図である。
【0040】
スイッチ装置4には、各組電池2に対応して、パワートランジスタ等のスイッチング素子TRで構成されたチョッパ回路41が設けられている。チョッパ回路41は、対応する組電池2から出力された直流電圧を調整するための回路である。
【0041】
チョッパ回路41の組電池2側には、組電池2から入力される電圧を検出する電圧検出器DRVが設けられている。電圧検出器DRVは、検出した組電池2の入力電圧を入力電圧情報D3としてスイッチ装置制御部33に出力する。
【0042】
スイッチ装置制御部33は、検出した各組電池2の入力電圧に基づいて、電力変換装置5の直流側に出力する電圧値を調整するための制御信号S3を、調整の制御対象となるチョッパ回路41に出力する。スイッチ装置制御部33は、組電池2間の循環電流が流れないように、かつ組電池2間の電圧分担が均一になるように、各チョッパ回路41を制御する。チョッパ回路41は、構成素子であるスイッチング素子TRがオン・オフ制御されることで、組電池2からの入力電圧を制御する。
【0043】
スイッチ装置4は、全てのチョッパ回路41の電力変換装置5側に接続される部分が短絡されている。この構成により、スイッチ装置4に複数の組電池2を接続すると、全ての組電池2は、並列接続される。スイッチ装置4は、各チョッパ回路41により調整された各組電圧2の出力電圧が合成された直流電力を電力変換装置5の直流側に出力する。
【0044】
本実施形態によれば、スイッチ装置4により、各組電池2から出力される出力電圧を個別に調整することができる。これにより、任意の組電池2間に循環電流を流さずに、かつ組電池2間の電圧分担を均一にして、並列接続により各組電圧2の出力電圧が合成された直流電力を電力変換装置5に出力することができる。
【0045】
従って、多種多様の二次電池を組電池2として用いても、発電システムの電力変動緩和装置1を構成することができる。例えば、組電池2に再利用の二次電池を用いた場合には、電力変動緩和装置1は、様々な態様の二次電池で構成されることになる。このような場合であっても、互いに異なる態様の組電池2間を用いることによる問題(端子電圧の違いによる循環電流など)を発生させることなく、電力変動緩和装置1を動作させることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係るスイッチ装置4Aの構成を示す構成図である。
【0047】
本実施形態に係る電力変動緩和装置は、図1に示す第1の実施形態に係る電力変動緩和装置1において、スイッチ装置4をスイッチ装置4Aに、電力変動緩和システム制御装置3を電力変動緩和システム制御装置3Aに代えている。その他は、第1の実施形態に係る電力変動緩和装置1と同様である。
【0048】
電力変動緩和システム制御装置3Aは、図2に示す第1の実施形態に係る電力変動緩和システム制御装置3において、スイッチ装置制御部33をスイッチ装置制御部33Aに代えている。その他は、第1の実施形態に係る電力変動緩和システム制御装置3と同様である。
【0049】
スイッチ装置制御部33Aは、第1の実施形態に係るスイッチ装置制御部33において、スイッチング素子TRのオン・オフ制御をする代わりに、開閉装置SWの開閉制御を行う。その他は、第1の実施形態に係るスイッチ装置制御部33と同様である。
【0050】
スイッチ装置4Aは、図3に示す第1の実施形態に係るスイッチ装置4において、チョッパ回路41を直流電圧調整回路41Aに代えている。その他は、第1の実施形態に係るスイッチ装置4と同様である。
【0051】
直流電圧調整回路41Aは、直列抵抗RSと開閉装置SWとを備えた構成である。
【0052】
直流電圧調整回路41Aの組電池2側には、組電池2から入力される電圧を検出する電圧検出器DRVが設けられている。電圧検出器DRVは、検出した組電池2の入力電圧を入力電圧情報D3としてスイッチ装置制御部33Aに出力する。
【0053】
スイッチ装置制御部33Aは、検出した各組電池2の入力電圧に基づいて、電力変換装置5の直流側に出力する電圧値を調整するための制御信号S3を、調整の制御対象となる直流電圧調整回路41Aに出力する。スイッチ装置制御部33Aは、組電池2間の循環電流が流れないように、かつ組電池2間の電圧分担が均一になるように、各直流電圧調整回路41Aを制御する。各組電池2の電圧差は、直列抵抗RSにより調整される。直流電圧調整回路41Aは、構成素子である開閉装置SWが開閉制御されることで、組電池2からの入力電圧を制御する。
【0054】
スイッチ装置4Aは、各直流電圧調整回路41Aにより調整された各組電圧2の出力電圧が合成された直流電力を電力変換装置5の直流側に出力する。
【0055】
本実施形態によれば、スイッチング素子TRで構成されるチョッパ回路41の代わりに、直列抵抗RSと開閉装置SWで構成される直流電圧調整回路41Aを用いて、電力変動緩和システム制御装置3Aを構成することができる。これにより、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る電力変動緩和システム制御装置3Bの適用された電力変動緩和装置1Bの構成を示す構成図である。
【0057】
電力変動緩和装置1Bは、図2示す第1の実施形態に係る電力変動緩和装置1において、電力変動緩和システム制御装置3を電力変動緩和システム制御装置3Bに代え、自然エネルギー発電量予測システム11及び計画充放電制御装置12を加えた構成である。自然エネルギー発電量予測システム11は、電力変動緩和装置1Bの外部に設けられている気象予報モデル90から情報を受信する。その他は、第1の実施形態に係る電力変動緩和装置1と同様である。
【0058】
電力変動緩和システム制御装置3Bは、図2に示す第1の実施形態に係る電力変動緩和システム制御装置3において、電力変換制御部31を電力変換制御部31Bに代えている。その他は、第1の実施形態に係る電力変動緩和システム制御装置3と同様である。
【0059】
気象予報モデル90は、気象予想値を供給する数値予報モデルである。気象予報モデル90は、風速ベクトル及び気圧などの様々な気象に関する各種の情報を提供する。例えば、気象予報モデル90は、メソ数値予報モデル(MSM: meso scale model)又は全球数値予報モデル(GSM: global spectral model)などの気象庁が公開しているシステムである。メソ数値予報モデルは、日本及びその近海の大気を対象としたモデルである。全球数値予報モデルは、地球全体の大気を対象としたモデルである。これらの数値予報モデルは、55〜20km間隔の格子点で解析した気象予想値を提供する。
【0060】
自然エネルギー発電量予測システム11は、気象予報モデル90から提供される情報のうち、発電システム10の風力発電機7が設置されている位置又は地域の風向、風量、又は日照等の風力発電機7の発電に影響する気象予想値を抽出する。自然エネルギー発電量予測システム11は、抽出した気象予想値に基づいて、風力発電機7の発電量を予測する。自然エネルギー発電量予測システム11は、予測した風力発電機7の発電量を計画充放電制御装置12に送信する。
【0061】
計画充放電制御装置12は、自然エネルギー発電量予測システム11から受信した予測される風力発電機7の発電量に基づいて、電力変動緩和装置1Bの充電目標量又は放電目標量を演算する。計画充放電制御装置12は、演算した充電目標量又は放電目標量に基づいて、時間毎の充電目標量又は放電目標量を計画する。計画充放電制御装置12は、立てた計画に従って、時間毎に充電目標量又は放電目標量などを達成するための充放電に関する指令を電力変換制御部31Bに出力する。例えば、充放電に関する指令は、電力変動緩和装置1BのSOC(全ての組電池2の総和のSOC)の指令値である。
【0062】
電力変換制御部31Bは、計画充放電制御装置12から受信した充放電に関する指令に基づいて、組電池制御部32に組電池2を充放電させるように要求する情報D12を出力する。
【0063】
電力変換制御部31Bは、電力変動緩和装置1のSOCが計画充放電制御装置12により計画されたSOCを下回るのであれば、電力変動緩和装置1Bを充電させるように制御する。電力変換制御部31Bは、電力変動緩和装置1のSOCが計画充放電制御装置12により計画されたSOCを上回るのであれば、電力変動緩和装置1Bを放電させるように制御する。電力変換制御部31Bは、計画充放電制御装置12による計画よりも風力発電機7の発電量が少ない場合、電力変動緩和装置1Bを放電させて、発電システム10の不足分の電力を供給する。電力変換制御部31Bは、計画充放電制御装置12による計画よりも風力発電機7の発電量が多い場合、電力変動緩和装置1Bを充電させて、発電システム10の余剰分の電力を吸収する。電力変換制御部31Bは、これらの電力変動緩和装置1Bの充放電の制御に対応して、電力変換装置5の制御をする。
【0064】
図6は、本実施形態に係る計画充放電制御装置12による電力変動緩和装置1Bの放電制御を示すグラフ図である。図7は、本実施形態に係る計画充放電制御装置12による電力変動緩和装置1Bの充電制御を示すグラフ図である。
【0065】
図6及び図7を参照して、風力発電機7の設置箇所に強風が予測される場合の電力変動緩和装置1Bの充放電制御について説明する。
【0066】
自然エネルギー発電量予測システム11は、気象予報モデル90から提供される気象予想値に基づいて、風力発電機7の設置箇所の強風を予測する。自然エネルギー発電量予測システム11は、予測した強風の風力及び風向などに基づいて、風力発電機7の強風による発電量を予測する。
【0067】
計画充放電制御装置12は、自然エネルギー発電量予測システム11により予測された発電量に基づいて、充電目標量Pcr及び放電目標量Pdrの計画を立てる。
【0068】
電力変換制御部31Bは、計画充放電制御装置12により計画された充電目標量Pcr及び放電目標量Pdrを達成するように、充電指令及び放電指令を組電池制御部32に出力する。
【0069】
強風を予測した気象予想値を自然エネルギー発電量予測システム11が気象予報モデル90から受信した時刻t0よりも前までは、電力変換制御部31Bは、並み風(通常)時の充電目標量Pcr及び放電目標量Pdr(図6では、放電目標量Pdrをゼロとしている。)を達成するように充放電指令をする。
【0070】
時刻t0から強風になる予測された時刻tfまでは、電力変換制御部31Bは、強風に備えるための充電目標量Pcr及び放電目標量Pdrを達成するように充放電指令をする。
【0071】
強風に備えるための充電目標量Pcrは、並み風時の充電目標量Pcrよりも低くなるように計画されている。これにより、電力変動緩和装置1Bは、強風による発電エネルギーを充電するための容量が確保される。
【0072】
強風に備えるための放電目標量Pdrは、並み風時の放電目標量Pdrよりも高くなるように計画されている。これにより、電力変動緩和装置1Bは、商用の電力系統への売買契約量の上限値の範囲内で適切な電力量を放電する。
【0073】
時刻tf以降は、電力変換制御部31Bは、強風による電力変動を抑制するための充電目標量Pcr及び放電目標量Pdrを達成するように充放電指令をする。これにより、電力変動緩和装置1Bは、強風による風力発電機7の余剰の発電電力(例えば、売買契約を超える分の電力)を吸収(蓄電)する。
【0074】
一方、弱風又は無風が予測される場合、電力変動緩和装置1Bの充放電制御は、強風時が予測される場合と反対に、充電目標量Pcrを並み風時の充電目標量Pcrよりも高くし、放電目標量Pdrを並み風時の放電目標量Pdrよりも低くする。これにより、電力変動緩和装置1Bは、弱風等による風力発電機7の不足の発電電力を放電電力により補えるように備える。
【0075】
本実施形態によれば、気象予想値を受信することで、風力発電機7の設置箇所の風力又は風向などの気象を予測することができる。電力変動緩和装置1Bは、予測した気象に基づいて、風力発電機7の発電電力を予測することができる。電力変動緩和装置1Bは、予測した風力発電機7の発電電力に基づいて、複数の組電池2を制御することで、充放電を計画的に行うことができる。
【0076】
このように、計画的に充放電を行うことにより、電力変動緩和装置1Bは、中長期的に自然エネルギーの利用率を上げることができる。
【0077】
以上説明したように、各実施形態によれば、互いに異なる態様の二次電池を用いても構成することのできる発電システムの電力変動緩和装置を提供することができる。
【0078】
なお、各実施形態において、発電システム10に用いる発電機を、風力により発電する風力発電機7としたが、これに限らない。自然エネルギーを利用した発電機であれば、発電電力の電力変動が生じ易いことが多い。このため、電力変動緩和装置1等の電力変動を緩和する対象となる発電システム10の発電機は、風力以外の太陽光などの自然エネルギーを利用するものでもよい。また、発電機は、発電電力の電力変動が生じる恐れのある発電機であれば、自然エネルギーを利用するものに限らない。
【0079】
また、各実施形態では、組電池2から出力される直流電圧を調整するための構成として、スイッチング素子TR等を用いる構成を説明したが、これらの実施形態の構成に限らない。直流電圧が調整できるのであれば、どのような素子又は回路でもよい。また、第2の実施形態では、1つの直列抵抗RSと1つの開閉装置SWのみによる回路構成について説明したが、これに限らない。直列抵抗RS又は開閉装置SWはいくつ設けてもよいし、他の素子又は回路と組み合わせてもよい。即ち、開閉装置としての機能を持つもの(スイッチング素子等を含む)を操作することにより、組電池2から出力される直流電圧を調整できる構成であれば、どのような構成にしてもよい。
【0080】
さらに、各実施形態において、電力変動緩和装置1等は、複数の組電池2及び電力変換装置5をいずれも構成として含むとしてもよいし、含まないとしてもよい。
【0081】
また、第3の実施形態では、風力による発電機7の場合について説明したが、その他の自然エネルギーを利用する発電機でもよい。例えば、太陽光を利用する発電機であれば、日照時間又は日光の照度などを予測して、発電量を予測してもよい。
【0082】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1…電力変動緩和装置、2…組電池、3…電力変動緩和システム制御装置、4…スイッチ装置、5…電力変換装置、6…電気量測定器、7…風力発電機、8…変圧器、9…負荷、10…発電システム、21…セル部、22…セル制御装置、23…セルバランス回路、D1…系統情報、D2…組電池情報、D3…入力電圧情報、S1,S2,S3…制御信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池が並列に接続され、前記複数の二次電池から出力される直流電力を交流電力に変換し、発電システムに接続された電力変換装置を制御する発電システムの電力変動緩和装置であって、
前記複数の二次電池から出力される直流電圧をそれぞれ調整する複数の直流電圧調整手段と、
前記複数の二次電池から出力される直流電圧をそれぞれ検出する複数の直流電圧検出手段と、
前記複数の直流電圧検出手段により検出された直流電圧に基づいて、前記複数の二次電池から出力される直流電圧を均一に調整するために、前記複数の直流電圧調整手段を制御する直流電圧制御手段と、
前記発電システムの電力変動を緩和するために前記電力変換装置を制御する電力変換制御手段と
を備えたことを特徴とする発電システムの電力変動緩和装置。
【請求項2】
前記複数の二次電池の運転状態に基づいて、前記複数の二次電池の充放電を制御する二次電池制御手段
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の発電システムの電力変動緩和装置。
【請求項3】
前記複数の二次電池を備えたこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発電システムの電力変動緩和装置。
【請求項4】
前記電力変換装置を備えたこと
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発電システムの電力変動緩和装置。
【請求項5】
前記直流電圧調整手段は、直流チョッパであること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発電システムの電力変動緩和装置。
【請求項6】
前記直流電圧調整手段は、抵抗と開閉装置とが直列に接続された構成を含む回路であること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発電システムの電力変動緩和装置。
【請求項7】
気象に関する予想がされた値である気象予想値を取得する気象予想値取得手段と、
前記気象予想値取得手段により取得された前記気象予想値に基づいて、前記発電システムの発電電力を予測する発電電力予測手段と、
前記発電電力予測手段により予測された前記発電電力に基づいて、前記複数の二次電池の充放電を計画的に制御する充放電計画制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発電システムの電力変動緩和装置。
【請求項8】
複数の二次電池が並列に接続され、前記複数の二次電池から出力される直流電力を交流電力に変換して、発電システムの電力変動を緩和する発電システムの電力変動緩和方法であって、
前記複数の二次電池から出力される直流電圧をそれぞれ検出し、
検出した直流電圧に基づいて、前記複数の二次電池から出力される直流電圧を均一に調整し、
前記発電システムの電力変動を緩和するために、直流電圧を均一に調整した前記複数の二次電池から出力される直流電力を交流電力に変換すること
を含むことを特徴とする発電システムの電力変動緩和方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−39821(P2012−39821A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179630(P2010−179630)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】