説明

発電プラントの停止方法

【課題】 発電プラントにおけるタービン軸受け潤滑油の冷却設備の点検時間を十分に確保することが可能な発電プラントの停止方法を提供する。
【解決手段】 発電プラント100の運転中は、2次熱交換器91の2次冷却水循環路(2次循環流路92)に海水を循環させて1次冷却水の冷却を行う。発電プラント100を停止させる際に、タービン31,32,33a,33bの熱変形を防止するためにタービン31,32,33a,33bを低速回転させるターニング工程を行う。ターニング工程では、2次冷却水循環路(2次循環流路92)に工業用水を供給して1次冷却水の冷却を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントの停止方法に関し、特に点検作業の着工を早めることが可能な発電プラントの停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タービンを用いて発電機を駆動するようにした発電プラントでは、ボイラ内で微粉炭等の燃料を燃焼させることにより蒸気を発生させ、この蒸気によりタービンを回転させ、タービンの回転軸に駆動軸が接続された発電機を駆動して発電を行っていた。このような発電プラントでは、定期的にその運転を停止して設備点検を行っている。
【0003】
ここで、発電プラントの停止を行う際の工程を説明する。
発電プラントの停止を行う際には、例えば、第1の工程として、発電プラントの解列工程を行い、第2の工程として、ボイラヘの燃料供給等を停止して、ボイラを消火するボイラ消火工程を行い、第3の工程として、消火したボイラ内に送風してボイラを冷却するボイラ冷却工程を行い、第4の工程として、復水器内の真空度を下げる真空破壊工程を行い、第5の工程として、ボイラおよびタービン関係配管内の水を除去する内部水除去工程を行い、第3の工程から第5の工程と並行して、所定時間にわたってタービンを低速回転させるターニング工程を行っていた。
【0004】
特に、ターニング工程は重要な工程となっている。すなわち、発電プラントを停止した際にタービンを回転させずにおくと、タービンケーシング内の温度低下に伴ってタービンの部分的な温度差が生じるとともに、タービンの自重が作用して、タービンに曲がり等の熱変形が生じるおそれがあるため、上述したターニング工程が必須となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このターニング工程では、タービンの回転に伴ってタービン軸受けに供給している軸受け潤滑油が摩擦発熱するため、軸受け潤滑油を冷却しなければならない。したがって、ターニング工程が終了するまでの間、軸受け潤滑油を冷却するための1次冷却装置、および1次冷却装置を循環する1次冷却水を冷却するための2次冷却装置を運転し続けなければならなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平10−121908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図3に示すように、発電プラントの停止工程を約4日間とすると、その殆どの期間においてターニング工程を行わなければならない。このようにターニング工程は長時間にわたる工程であるため、軸受け潤滑油の冷却装置の点検開始時期が、他の装置の点検開始時期と比較して著しく遅れていた。
【0008】
このため、他の装置の点検が終了したにも拘わらず軸受け潤滑油の冷却装置の点検が終了しないため、発電プラントの再開を行うことができなかった。特に、2次冷却装置は海水を用いて冷却を行っているため、海水による腐食が生じやすく、綿密な点検を行う必要があり、十分な点検時間を確保しなければならない。
【0009】
本発明は上述した事情に鑑み提案されたもので、発電プラントにおけるタービン軸受け潤滑油の冷却設備の点検時間を十分に確保することが可能な発電プラントの停止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る発電プラントの停止方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を備えている。
すなわち、本発明に係る発電プラントの停止方法は、発電機を駆動するタービンの軸受け潤滑油を冷却する冷却装置として、1次冷却水を循環させて前記軸受け潤滑油の冷却を行う1次熱交換器と、2次冷却水を循環させて前記1次冷却水の冷却を行う2次熱交換器とを備え、発電プラントの運転中は、前記2次熱交換器の2次冷却水循環路に海水を循環させて前記1次冷却水の冷却を行う発電プラントを停止させるための方法であって、
該発電プラントを停止させる際に、タービンの熱変形を防止するためにタービンを低速回転させるターニング工程を行い、該ターニング工程では、前記2次冷却水循環路に工業用水を循環させて前記1次冷却水の冷却を行うことを特徴とするものである。
【0011】
また、前記発電プラントの停止方法において、前記2次冷却水循環路には、海水供給路と工業用水供給路とが切換可能に接続されており、前記ターニング工程では、前記2次冷却水循環路に前記工業用水供給路を接続して、工業用水を循環させることが可能である。
【0012】
また、前記発電プラントの停止方法において、前記工業用水供給路は、発電プラントの稼働試験を行う際の冷却水供給路を用いることが可能である。
【0013】
また、前記発電プラントの停止方法において、前記ターニング工程では、停止操作を中止しなければならない条件が成立した場合に、前記2次冷却水循環路における海水循環を再開させて前記1次冷却水の冷却を行うことが好ましい。
【0014】
また、前記発電プラントの停止方法は、主タービンの熱変形を防止するためのターニング工程において、前記2次冷却水循環路に工業用水を循環させることが好ましい。
【0015】
また、前記発電プラントの停止方法において、前記発電プラントは、前記発電機を電力駆動することにより前記ターニング工程におけるタービンの低速回転を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発電プラントの停止方法では、ターニング工程において、通常運転中に海水を循環させていた2次冷却水循環路に工業用水を循環させて1次冷却水の冷却を行うことにより、ターニング工程の終了を待たずに海水供給路の点検作業を開始することができる。このため、海水による腐食が生じやすく、綿密な点検を行う必要がある海水供給路に対して十分な点検を行うことができ、発電プラントにおいて安全かつ円滑な運転を行うことが可能となる。
【0017】
また、ターニング工程において、2次冷却水循環路に接続されていた海水供給路を工業用水供給路に切換接続して、工業用水を循環させることにより、2次冷却水の切換作業を簡単かつ短時間に行うことが可能となる。
【0018】
また、発電プラントの稼働試験を行う際の冷却水供給路として用いていた工業用水供給路を介して、2次冷却水循環路に工業用水を供給することにより、新たな冷却水供給路を追加することなく既存の設備を利用して2次冷却水の切換作業を行うことができ、設備費用を低減することが可能となる。
【0019】
また、停止操作を中止しなければならない条件が成立した場合に、2次冷却水循環路における海水循環を再開させて1次冷却水の冷却を行うことにより、軸受け潤滑油を確実かつ十分に冷却することができ、タービンの熱変形を未然に防止することができる。
【0020】
また、発電機を電力駆動することによりターニング工程におけるタービンの低速回転を行うことにより、ターニング工程を実施するための特別な装置を必要とせず、既存の設備を利用してターニング工程を実施することができ、設備費用を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る発電プラントの停止方法の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る発電プラントの概略構成を示す説明図である。
【0022】
本発明の実施形態に係る発電プラント100は、ボイラ11内で燃料を燃焼させて水を加熱することにより蒸気を発生させ、発生した蒸気をタービン関係配管21,22,23,24,25を介してタービンケーシング内に送り、タービン(高圧タービン31、中圧タービン32、および低圧タービン33a,33b)を回転させることにより、1次発電機41および2次発電機42を駆動して発電を行うようになっている。
【0023】
この発電プラント100は、ボイラ11内で燃料を燃焼させるための燃焼系統110と、水を加熱することにより蒸気を発生させ、発生した蒸気によりタービン31,32,33a,33bを回転させるための復水・蒸気系統120と、両系統110,120の設備に冷却水を供給する冷却系統130(図2参照)とに大別することができる。
【0024】
以下、各系統について詳細に説明する。
燃焼系統110は、図1に示すように、ボイラ11および排ガス処理設備51を備えている。
ボイラ11は、燃料を燃焼させるための火炉11aと、火炉11a内の下部に設けられた燃焼バーナ12とを備えている。燃焼バーナ12には、微粉炭機13から微粉炭が供給されるとともに、押込送風機14から燃焼空気が供給され、微粉炭と燃焼空気とが混合されて火炉11a内で燃焼するようになっている。
【0025】
火炉11aの内部上方には、復水器61から供給される水を加熱して蒸気を発生させるための過熱器15および再熱器16が配設されている。
また、火炉11aの下流側には、微粉炭の燃焼によって発生した排ガスを処理するための排ガス処理設備51が設けられている。この排ガス処理設備51は、排ガス中の窒素酸化物を除去するための脱硝装置51a、排ガス中のダストを除去するための集塵装置51b、排ガス中の硫黄酸化物を除去するための脱硫装置51c、および煙突51dからなる。脱硝装置51a、集塵装置51b、および脱硫装置51cを通過した排ガスは、煙突51dから大気中に放散される。
【0026】
なお、集塵装置51bと脱硫装置51cとの間には誘引通風機(図示せず)が配設されるとともに、脱硫装置51cと煙突51dとの間には脱硫通風機(図示せず)が配設されており、誘引通風機および脱硫通風機の作用により排ガスが吸引されて煙突51dへ至るようになっている。
【0027】
次に、復水・蒸気系統120について説明する。
復水・蒸気系統120は、タービン31,32,33a,33bと、タービン31,32,33a,33bから排出された蒸気を凝縮して水に戻す復水器61と、復水器61から供給された水を加熱して蒸気とする過熱器15および再熱器16とを備えている。過熱器15および再熱器16で発生した蒸気は、タービン関係配管21,22,23,24,25を介してタービン31,32,33a,33bへ供給される。このように、復水・蒸気系統120は循環系となっている。
【0028】
タービン31,32,33a,33bは、過熱器15で発生した蒸気により回転する高圧タービン31と、高圧タービン31から排出された蒸気を再熱器16で加熱して得られた再加熱蒸気により回転する中圧タービン32と、中圧タービン32から排出された蒸気により回転する低圧タービン33a,33bとからなる。上述したように、復水・蒸気系統120は循環系となっており、低圧タービン33a,33bを回転させた排出蒸気は復水器61に戻される。
【0029】
低圧タービン33a,33bは一対設けられており、各低圧タービン33a,33bに対して、中圧タービン32から排出された蒸気が供給される。また、過熱器15と高圧タービン31のケーシングとを繋ぐタービン関係配管21、高圧タービン31のケーシングと再熱器16とを繋ぐタービン関係配管22、再熱器16と中圧タービン32のケーシングとを繋ぐタービン関係配管23、中圧タービン32のケーシングと低圧タービン33aのケーシングとを繋ぐタービン関係配管24、および低圧タービン33bのケーシングと復水器61とを繋ぐタービン関係配管25が連通接続されており、上述したように蒸気が循環するようになっている。
【0030】
高圧タービン31と中圧タービン32とは互いに同軸となるように連結されている。高圧タービン31および中圧タービン32の回転は、高圧タービン31に同軸に連結された1次発電機41に伝達され、1次発電機41が駆動されて発電が行われる。また、2台の低圧タービン33a,33b同士も互いに同軸に連結されており、低圧タービン33a,33bの回転は、低圧タービン33a,33bに同軸に連結された2次発電機42に伝達され、2次発電機42が駆動されて発電が行われる。
【0031】
高圧タービン31、中圧タービン32、および低圧タービン33a,33bは、それぞれ、スラスト軸受けやメタル軸受け等の軸受け(図示せず)によって支持されて、各タービンケーシング内に収容されている。そして、タービン関係配管21,22,23,24,25を介して各タービンケーシングに蒸気が供給されることにより、高圧タービン31、中圧タービン32、および低圧タービン33a,33bが回転するようになっている。
【0032】
復水器61は、気密容器となっており、復水器61の上部には、低圧タービン33a,33bから排出される排出蒸気を取り込むための蒸気取込口62が設けられている。この蒸気取込口62にはタービン関係配管25が連通接続されている。また、復水器61の略中央には、排出蒸気を冷却凝縮して復水するための管巣63が設けられており、復水器61内の下部には、冷却凝縮された水を貯留するためのホットウエル64が設けられている。
【0033】
管巣63は、複数の伝熱管から構成され、伝熱管内には海水循環ポンプ65によって汲み上げられた海水が循環して流され、排出された蒸気を冷却凝縮して水に戻すようになっている。また、冷却に供された海水は海中へ放流される。なお、この海水循環ポンプ65は、冷却系統130の一部を構成している。
【0034】
ホットウエル64には、管巣63において冷却凝縮された水が貯留される。このホットウエル64の底部は、送水管26を介して過熱器15に連通接続しており、送水管26に設けられた復水ポンプ17を用いて、貯留された水を過熱器15へ供給するようになっている。
【0035】
また、復水器61は、その内部を真空脱気するための排気管71および真空ポンプ72を備えており、真空脱気を行うことにより、復水器61内の水の溶存酸素量を減少させるようになっている。すなわち、水中の溶存酸素量が多い場合には、ボイラ11等の腐食を促進するため、発電プラント100が稼働している間は、復水器61内を高度の真空状態に維持している。ただし、発電プラント100を停止している間は、復水器61内の真空状態が解除(真空破壊)される。この真空破壊は、復水器61の内外を連通する空気導入管73に設けられた真空破壊弁74を開くことにより実現される。
【0036】
過熱器15および再熱器16は、復水器61等から供給される水を蒸気にするための装置であり、ボイラ11の火炉11a内の上部に配設されている。過熱器15には復水器61から水が供給され、火炉11aの燃焼熱との間で熱交換が行われて蒸気となる。この蒸気は、タービン関係配管21を介して高圧タービン31に供給される。一方、再熱器16では、高圧タービン31からタービン関係配管22を介して排出された蒸気が再加熱され、発生した再加熱蒸気を、タービン関係配管23を介して中圧タービン32に供給する。
【0037】
次に、図2を参照して、冷却系統130を詳細に説明する。図2は、冷却系統130の概略構成を示す説明図である。
冷却系統130は、図2に示すように、高圧タービン31、中圧タービン32、および低圧タービン33a,33bの軸受け潤滑油の冷却に供する1次冷却水を循環供給する1次冷却系統80と、この1次冷却水を2次熱交換器91を介して冷却する2次冷却系統90とからなる。
【0038】
軸受け潤滑油は、高圧タービン31、中圧タービン32、および低圧タービン33a,33bの回転に伴う軸受けの摩擦を軽減するものであり、循環流路81を介してタービン31,32,33a,33bの軸受けに循環して供給される。この循環流路81は、貯留タンク82と1次熱交換器83とを備えており、貯留タンク82に貯留された潤滑油は、1次熱交換器83に供給される1次冷却水によって冷却された後、軸受けに向かって送出される。
【0039】
1次冷却系統80は、1次熱交換器83に1次冷却水を循環供給するための1次循環流路84を備えている。この1次循環流路84には、1次冷却水を冷却するための熱交換器である2次熱交換器91が配設されている。潤滑油の冷却によって暖められた1次冷却水は、この2次熱交換器91に循環供給される2次冷却水によって冷却される。なお、1次冷却水には純水が使用される。
【0040】
2次冷却系統90は、2次熱交換器91に2次冷却水を循環供給するための2次循環流路92を備えている。また、2次循環流路92は、2次冷却水を2次熱交換器91へ供給するための循環ポンプとして海水循環ポンプ65を備えている。すなわち、通常の運転状態では、2次冷却水には海水が使用され、海水循環ポンプ65によって海から吸い上げた海水を2次熱交換器91へ供給し、2次熱交換器91において1次冷却水の冷却に供した後、海中へ放流するようになっている。
【0041】
このように2次冷却水として海水を使用しているので、冷却に供した2次冷却水を海中へ放流すれば、冷却に供した海水は海中において自然冷却される。したがって、2次冷却水を空冷するためのクーリングタワー等を設ける必要がなくなり、発電プラント100の装置構成を簡略にすることができる。
【0042】
なお、この2次冷却系統90は、低圧タービン33a,33bから復水器61へ排出された蒸気の冷却についても使用される。すなわち、この2次冷却系統90は、海水循環ポンプ65の下流側において本流から分岐する分岐流路(図示せず)を有しており、この分岐流路は、低圧タービン33a,33bの出側部分のタービン関係配管25に至っている。
【0043】
さらに、2次冷却系統90には、切換弁93を介して工業用水供給路95が接続されている。この工業用水供給路95は、発電プラント100の稼働試験を行う際の2次冷却水の供給路として用いるもので、本実施形態では、ターニング工程において2次冷却系統90の2次冷却水の供給路としても使用されるようになっている。
また、工業用水供給路95は、2次冷却水を2次熱交換器91へ供給するための工水ポンプ96を備えている。
【0044】
なお、工業用水供給路95から供給される工業用水は、通常の運転状態では復水器61へ供給されるもので、本実施形態では、ターニング工程において2次冷却系統90の2次冷却水としても使用されるようになっている。この工業用水は、図示しないが、一旦、工水タンクに貯留された後、補給水処理装置により補給水として適した状態とされ、復水器61および2次冷却系統90へ供給されるようになっている。
【0045】
次に、発電プラント100の停止工程について説明する。
発電プラント100は、設備点検を目的として定期的に停止される。発電プラント100の停止工程は、図3に示すように、少なくとも6つの工程に分類することができる。
【0046】
第1の工程である解列工程は、発電プラント100と送電線との間に介装された遮断器を開閉することによって、発電プラント100から送電線への電力供給を遮断する工程である。
【0047】
第2の工程であるボイラ消火工程は、微粉炭機13による微粉炭の供給および押込送風機14による燃焼空気の供給をそれぞれ停止することによって、ボイラ11の火炉11aを消火する工程である。
【0048】
第3の工程であるボイラ冷却工程は、消火した火炉11a内に、押込送風機14を用いて大気を送風し、火炉11aを強制冷却する工程である。
【0049】
第4の工程である真空破壊工程は、ボイラ冷却工程の後に行われる工程であり、発電プラント100の稼働中に高度な真空状態に維持された復水器61内に大気を導入して、その真空度を下げる工程である。この真空破壊工程は、真空破壊弁74を開くことによって実施される。
【0050】
第5の工程である内部水除去工程は、真空破壊工程の後に行われる工程であり、火炉11a内、およびタービン関係配管21,22,23,24,25内等に残留する水を除去する工程である。
【0051】
第6の工程である夕一二ング工程は、ボイラ冷却工程とほぼ同時に開始される工程であり、タービン31,32,33a,33bを所定時間に低速回転させることにより、タービン31,32,33a,33bの熱変形を防ぐ工程である。このターニング工程では、モータ駆動のターニング装置(図示せず)を、クラッチ等を介してタービン31,32,33a,33bに連結し、モータの回転力をタービン31,32,33a,33bに伝達することによってタービン31,32,33a,33bを回転させる。
【0052】
なお、ターニング工程におけるタービン31,32,33a,33bの低速回転を、モータ駆動のターニング装置により行うのではなく、1次発電機41および2次発電機42に電力を入力してモータとして機能させることにより、タービン31,32,33a,33bを低速回転させてもよい。このように1次発電機41および2次発電機42をターニング装置として機能させることにより、ターニング装置を別途設ける必要がなくなり、装置構成を簡略化することができる。
【0053】
図3から明らかなように、上述した6つの工程の中で、ターニング工程が最も長時間にわたって実施される。このターニング工程では、タービン31,32,33a,33bの回転に伴ってタービン軸受けに供給している軸受け潤滑油が摩擦発熱するため、軸受け潤滑油を冷却しなければならない。したがって、ターニング工程が終了するまでの間、軸受け潤滑油を冷却するための装置である1次冷却系統80および2次冷却系統90を運転し続けなければならない。
【0054】
ここで、従来の発電プラント100では、ターニング工程が終了するまでの間、通常の運転状態と同様に、2次冷却水として海水を使用していた。このため、2次冷却系統90を構成する海水循環ポンプ65等の点検開始が遅れてしまい、ひいては全点検工程に長時間を要することとなっていた。
【0055】
この点、本発明の実施形態では、発電プラント100の運転中は、2次循環流路92に海水を循環させて1次冷却水の冷却を行うとともに、発電プラント100を停止させる際に行うターニング工程では、切換弁93を切り換えて、2次循環流路92に工業用水を供給することにより1次冷却水の冷却を行っている。
このように、ターニング工程において、2次循環流路92に工業用水を供給することにより、海水循環ポンプ65等の点検時期を早めて十分な点検を行うことができ、発電プラント100において安全かつ円滑な運転を行うことが可能となった。
【0056】
なお、ターニング工程において何ら問題が生じない場合には、2次循環流路92に工業用水を供給することにより1次冷却水の冷却を行い続けて差し支えないが、停止操作を中止しなければならない条件が成立した場合には、2次循環流路92における海水循環を再開させて1次冷却水の冷却を行うことが好ましい。
【0057】
停止操作を中止しなければならない条件とは、例えば、低圧タービン33a,33bの排気温度が所定温度に達するおそれがある場合、各軸受けの温度が所定温度に達するおそれがある場合、軸冷水差圧調節弁(図示せず)あるいは軸冷水温度調節弁(図示せず)の開度が所定値を超えるおそれがある場合、油冷却器温度調節弁(図示せず)の開度が所定値を超えるおそれがある場合等である。
【0058】
このような場合には、2次循環流路92における海水循環を再開させて1次冷却水の冷却を行うことにより、軸受け潤滑油を確実かつ十分に冷却することができ、タービン31,32,33a,33bの熱変形を未然に防止することができる。
【0059】
また、特に熱変形のおそれが顕著である低圧タービン33a,33bのターニング工程において、2次循環流路92に工業用水を供給して1次冷却水の冷却を行うことにより、熱変形防止効果を十分に発揮することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発電プラント100を構成する機器を適宜変更する等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えば、微粉炭を燃料として水を過熱することにより蒸気を発生させ、この蒸気によりタービン31,32,33a,33bを回転させて1次発電機41および2次発電機42を駆動するような発電プラント100の停止方法として利用することができるが、タービンを用いて発電機を駆動するようにした発電プラントであれば、どのような発電プラントにおいても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る発電プラントの概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る発電プラントを構成する冷却系統の概略構成を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る発電プラントにおける停止工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
100 発電プラント
110 燃焼系統
120 復水・蒸気系統
130 冷却系統
11 ボイラ
11a 火炉
12 燃焼バーナ
13 微粉炭機
14 押込送風機
15 過熱器
16 再熱器
17 復水ポンプ
21〜25 タービン関係配管
26 送水管
31 高圧タービン
32 中圧タービン
33a,33b 低圧タービン
41 1次発電機
42 2次発電機
51 排ガス処理設備
51a 脱硝装置
51b 集塵装置
51c 脱硫装置
51d 煙突
61 復水器
62 蒸気取込口
63 管巣
64 ホットウエル
65 海水循環ポンプ
71 排気管
72 真空ポンプ
73 空気導入管
74 真空破壊弁
80 1次冷却系統
81 循環流路
82 貯留タンク
83 1次熱交換器
84 1次循環流路
90 2次冷却系統
91 2次熱交換器
92 2次循環流路
93 切換弁
95 工業用水供給路
96 工水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機を駆動するタービンの軸受け潤滑油を冷却する冷却装置として、1次冷却水を循環させて前記軸受け潤滑油の冷却を行う1次熱交換器と、2次冷却水を循環させて前記1次冷却水の冷却を行う2次熱交換器とを備え、
発電プラントの運転中は、前記2次熱交換器の2次冷却水循環路に海水を循環させて前記1次冷却水の冷却を行う発電プラントを停止させるための方法であって、
該発電プラントを停止させる際に、タービンの熱変形を防止するためにタービンを低速回転させるターニング工程を行い、
該ターニング工程では、前記2次冷却水循環路に工業用水を循環させて前記1次冷却水の冷却を行うことを特徴とする発電プラントの停止方法。
【請求項2】
前記2次冷却水循環路には、海水供給路と工業用水供給路とが切換可能に接続されており、
前記ターニング工程では、前記2次冷却水循環路に前記工業用水供給路を接続して、工業用水を循環させることを特徴とする請求項1に記載の発電プラントの停止方法。
【請求項3】
前記工業用水供給路は、発電プラントの稼働試験を行う際の冷却水供給路であることを特徴とする請求項1または2に記載の発電プラントの停止方法。
【請求項4】
前記ターニング工程において、停止操作を中止しなければならない条件が成立した場合に、前記2次冷却水循環路における海水循環を再開させて前記1次冷却水の冷却を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電プラントの停止方法。
【請求項5】
前記発電プラントは、主タービンおよび副タービンを備えており、
前記ターニング工程は主タービンの熱変形を防止するための工程であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の発電プラントの停止方法。
【請求項6】
前記発電プラントは、前記発電機を電力駆動することにより前記ターニング工程におけるタービンの低速回転を行うことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の発電プラントの停止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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