説明

発電・水素ガス発生装置

【課題】簡素な構成、構造で、水素ガス生成原料を加熱することができる発電・水素ガス発生装置を提供する。
【解決手段】発電・水素ガス発生装置は、水素ガス発生装置10、太陽電池40及び熱輸送部材50を備えており、水素ガス発生装置10は、熱輸送部材50の一端の部分51から構成された分離壁部12によって分離された複数の電気分解セルを備えており、熱輸送部材50の他端の部分52から構成された太陽電池取付部53に太陽電池40が取り付けられており、太陽電池40にて生成した熱が太陽電池取付部53を介して分離壁部12から電気分解セルに伝熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電・水素ガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能なエネルギーシステム社会の構築を目指し、化石燃料の代替エネルギーとして、太陽光エネルギーと水とから得た水素の利用が検討されている。このシステムは、有限な化石燃料の消費を抑制し、主要な温暖化ガスの1つである二酸化炭素ガスを排出しないことから、エネルギー問題と環境問題とを解決するシステムとして期待されている。水素を太陽光エネルギーと水とから生成する実効性の高い、即ち、水素変換効率の高い水素生成システムの1つとして、太陽電池と水素ガス発生装置とを組み合わせた発電・水素ガス発生装置が検討されている。水素ガス発生装置は、例えば、特許公報第3772261号から周知である。
【0003】
水素ガス発生装置において、水素ガス生成の原料である液体(例えば、水)の温度が高い程、電解電圧が低下するので、水素ガスを生成する際の効率が向上する。それ故、係る液体の温度を出来るだけ高くすることが望ましい。一方、例えば、集光レンズを備えた太陽電池においては、集光によって太陽電池の温度が上昇すると発電特性(PV特性)が低下する。従って、集光による太陽電池の温度の上昇を抑制するために、太陽電池をヒートシンクに載置し、あるいは又、太陽電池を放熱フィンに取り付けて、放熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公報第3772261号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素ガス発生装置においては、水素ガス生成の原料である液体を加熱する装置が別途必要とされ、発電・水素ガス発生装置の構成、構造が複雑になる。しかも、太陽電池の温度の上昇を抑制するために、太陽電池を冷却する装置が別途必要とされ、やはり、発電・水素ガス発生装置の構成、構造が複雑になる。
【0006】
従って、本発明の目的は、簡素な構成、構造で、太陽電池の冷却、水素ガス発生装置における水素ガス生成の原料である液体を加熱することができる発電・水素ガス発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の発電・水素ガス発生装置は、水素ガス発生装置、太陽電池、及び、熱輸送部材を備えており、
水素ガス発生装置は、熱輸送部材の一端の部分から構成された分離壁部によって分離された複数の電気分解セルを備えており、
熱輸送部材の他端の部分から構成された太陽電池取付部に太陽電池が取り付けられており、
太陽電池にて生成した熱が太陽電池取付部を介して分離壁部から電気分解セルに伝熱される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発電・水素ガス発生装置にあっては、太陽電池にて生成した熱が太陽電池取付部を介して分離壁部から電気分解セルに伝熱されるので、簡素な構成、構造にて、水素ガス生成の原料である液体を加熱することができ、同時に、太陽電池の温度の上昇を抑制することができる。しかも、電気エネルギーに変換された残りの熱として放出、廃棄されるエネルギーを水素ガス発生装置において有効に利用するので、発電・水素ガス発生装置、全体のエネルギー利用効率、水素生成システムの水素変換効率の一層の向上を図ることが可能となるし、水素生成システムとして付帯設備を削減若しくは軽減することができ、水素生成システム構築のコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1の発電・水素ガス発生装置の概念図である。
【図2】図2は、実施例1の水素ガス発生装置の模式的な断面図である。
【図3】図3は、実施例1の水素ガス発生装置における1つの分離壁部等の模式的な断面図である。
【図4】図4は、図2の矢印A−Aに沿った実施例1の水素ガス発生装置の模式的な断面図である。
【図5】図5は、図2の矢印B−Bに沿った実施例1の水素ガス発生装置の模式的な断面図である。
【図6】図6は、図4の矢印A方向から眺めた実施例1の水素ガス発生装置の模式的な側面図である。
【図7】図7は、図4の矢印B方向から眺めた実施例1の水素ガス発生装置の別の模式的な側面図である。
【図8】図8は、図4の矢印C方向から眺めた実施例1の水素ガス発生装置の別の模式的な側面図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1における熱輸送部材の軸線を含む仮想平面で熱輸送部材を切断したときの熱輸送部材の模式的な一部断面図、及び、熱輸送部材の軸線と直交する仮想平面で熱輸送部材を切断したときの熱輸送部材の模式的な一部断面図である。
【図10】図10は、水電解電圧と水電解効率の温度依存性を示すグラフである。
【図11】図11の(A)は、太陽電池の最大出力電圧と水素ガス発生装置における水素ガスを発生させるための電解電圧の最適化を図ったときのグラフであり、図11の(B)及び(C)は、太陽電池の最大出力電圧と水素ガス発生装置における水素ガスを発生させるための電解電圧との間に電圧差が存在すると、電圧差分だけ水素変換効率が低減することを説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の発電・水素ガス発生装置、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の発電・水素ガス発生装置)、その他
【0011】
[本発明の発電・水素ガス発生装置、全般に関する説明]
本発明の発電・水素ガス発生装置において、熱輸送部材の一端の部分は複数の分岐部を有し、各分岐部が分離壁部を構成する形態とすることができる。
【0012】
本発明の発電・水素ガス発生装置の係る形態にあっては、
複数の分離壁部は離間して並置されており、
対向する2つの分離壁部に挟まれた空間は、分離壁部と平行に配された高分子電解質膜によって第1の空間及び第2の空間に区画されており、
対向する2つの分離壁部の内の一方の分離壁部の対向面には、第1の空間内に位置し、先端部が高分子電解質膜に接した複数の第1電極が設けられており、他方の分離壁部の対向面には、第2の空間内に位置し、先端部が高分子電解質膜に接し、第1電極と対向した第2電極が設けられており、
各第1電極は、その一端に、分離壁部の側面に露出した(例えば、分離壁部の側面から突出した)第1接続部を備えており、
各第2電極は、その一端に、分離壁部の側面に露出した(例えば、分離壁部の側面から突出した)第2接続部を備えており、
第1の空間に連通した液体導入部及び液体排出部、並びに、第2の空間に連通した液体排出部を更に備えており、
一対の第1電極及び第2電極によって、1つの電気分解セルが構成されており、
第2の空間において水素ガスが生成され、
第1接続部及び第2接続部が接続され、電気分解セルに電圧を印加する制御装置を更に備えており、
太陽電池から制御装置に供給される電圧に応じて、制御装置は電気分解セルの直列接続及び並列接続の接続状態を変更する構成とすることができる。
【0013】
ところで、太陽電池の最大出力電圧と水素ガス発生装置における水素ガスを発生させるための電解電圧との間に電圧差(以下、単に『電圧差』と呼ぶ場合がある)が存在すると、電圧差分だけ水素変換効率が低減する(図11の(B)及び(C)参照)。然るに、このような構成の本発明の発電・水素ガス発生装置における水素ガス発生装置にあっては、離間して並置された複数の分離壁部を備えており、対向する2つの分離壁部に挟まれた空間内には高分子電解質膜が配され、高分子電解質膜を挟んで複数の第1電極及び第2電極が設けられており、各電極は、その一端に、分離壁部の側面に露出した接続部を備えており、一対の第1電極及び第2電極によって1つの電気分解セルが構成されている。従って、水素ガス発生装置を第1電極及び第2電極が延びる方向と直交する仮想平面で切断したとき、電気分解セルが2次元マトリクス状に配置された状態となっており、しかも、各電極の接続部は分離壁部の側面に露出しているので、例えば、太陽電池の最大出力電圧と水素ガス発生装置における電解電圧との間の電圧差を無くし、あるいは又、減少させるために、電気分解セルの電気的な接続状態における直列接続及び並列接続を、適宜、容易に、しかも、適切に変更することができる。それ故、最大出力(最大変換効率)の電気エネルギーで、例えば水を電気分解して水素ガスを得る際のエネルギーロスを低減することができ、高効率で水素ガスを生成することができる。尚、前述の特許公報に開示された水素ガス発生装置にあっては、構造上、このような電気分解セルの電気的接続状態を任意に変更することは極めて困難である。
【0014】
しかも、1つの分離壁部に対して複数の電極を設けるので、水素ガス発生装置の構成部品点数を削減することができるだけでなく、電極と電極との間のスペースを、水素ガスの原料となる液体の流路及び生成ガスの排出流路として用いることができる。それ故、水素ガス発生装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0015】
そして、このような構成の本発明の発電・水素ガス発生装置にあっては、太陽電池の最大出力電圧(Vpm)の±10%の範囲内、好ましくは、太陽電池の最大出力電圧(Vpm)の±5%の範囲内に、直列接続された電気分解セルに印加される電圧が納まるように、制御装置は電気分解セルの直列接続及び並列接続の接続状態を変更する構成とすることが望ましい。
【0016】
更には、これらの構成の本発明の発電・水素ガス発生装置において、各電極の後部は分離壁部に埋め込まれている構成とすることができる。分離壁部と電極を別々に作製し、分離壁部と電極とを組み立ててもよいし、電極を予め作製しておき、分離壁部と電極とを一体に作製してもよい。
【0017】
更には、これらの構成の本発明の発電・水素ガス発生装置において、高分子電解質膜は、フッ素樹脂系イオン交換膜あるいはプロトン伝導性の固体高分子膜(PEM膜)、具体的には、側鎖の末端にスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸系高分子膜から成る構成とすることができる。ここで、高分子電解質膜として、具体的には、ナフィオン(デュポン株式会社の登録商標)膜やDow膜を例示することができる。
【0018】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の発電・水素ガス発生装置において、
熱輸送部材は、密閉された内部空間を有しており、
該内部空間には、毛細管部材が配置されており、且つ、相変化を利用して熱を輸送する流体(熱媒体)が封入されている構成とすることができる。
【0019】
ここで、毛細管部材は、第1の部材と、第1の部材よりも目の粗い第2の部材が積層して成る形態とすることができる。そして、第1の部材及び第2の部材は、流体に毛細管力を作用させ得る材料から構成されていればよく、メッシュ状の部材から成り、あるいは又、ワイヤを束ねた部材から成る形態とすることができる。尚、これらの形態にあっては、太陽電池にて生成した熱によって、太陽電池取付部(吸熱部)において流体(熱媒体)が気相となり、第2の部材を通過して分離壁部(放熱部)に到達し、分離壁部において液相となることで電気分解セルに伝熱し、液相となった流体(熱媒体)は第1の部材を通過して太陽電池取付部に戻る形態とすることができる。尚、このような構成、構造を有する熱輸送部材は、高熱伝導性を有し、容易に薄手化を図ることができ、形状自由度の高い、薄型ヒートパイプである。
【0020】
また、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の発電・水素ガス発生装置において、太陽電池には、ガラスあるいはプラスチックから作製された集光レンズが備えられていることが好ましい。
【0021】
また、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の発電・水素ガス発生装置において、太陽電池は化合物系太陽電池から成ることが好ましいが、これに限定するものではなく、シリコン系太陽電池や、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池を含む有機系太陽電池を挙げることもできる。尚、太陽電池は、複数の太陽電池セルの集合体である太陽電池モジュールから構成されていてもよい。
【0022】
熱輸送部材を構成する材料として、銅(Cu)やステンレス鋼、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Ai)を例示することができる。熱輸送部材は、例えば、上面部材と下面部材と側面部材とから構成すればよく、上面部材及び下面部材の板厚として0.1mm〜0.8mmを例示することができるし、側面部材の板厚として1mm〜2mmを例示することができる。熱輸送部材には、熱輸送部材の一端の部分から構成された分離壁部と、熱輸送部材の他端の部分から構成された太陽電池取付部との間に、中間部(接続部)が設けられていてもよい。熱輸送部材の軸線と直交する仮想平面で熱輸送部材を切断したときの熱輸送部材の断面形状は、矩形形状等、任意の断面形状とすることができる。流体(熱媒体)として、水や、エチルアルコール等のアルコールを例示することができる。第1の部材及び第2の部材を、金属細線から成るメッシュ状の部材から構成する場合、第1の部材を1層あるいは2層以上のメッシュ状の部材から構成すればよいし、同様に、第2の部材を1層あるいは2層以上のメッシュ状の部材から構成すればよい。メッシュ状の部材の厚さとして、0.02mm〜0.05mmを例示することができる。メッシュ状の部材を構成する材料として、銅(Cu)やステンレス鋼、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)を挙げることができ、ワイヤを構成する材料として、銅(Cu)やステンレス鋼、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)を挙げることができる。メッシュ状の部材を積層する場合、例えば、接着剤を用いて、あるいは、ロウ付け、半田付け、メッキ等によって相互に固定すればよい。
【0023】
場合によっては、分離壁部は、プラスチック材料あるいはセラミックス材料から成る構成とすることができる。ここで、プラスチック材料として、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂);ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂(PA系樹脂);ポリオキシメチレン(ポリアセタール,POM)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;液晶ポリマーで例示される熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ケトン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂で例示される熱硬化性樹脂を挙げることができる。分離壁部は、構成材料に依存するが、公知の成形技術や焼結技術等に基づき作製すればよい。また、この場合、金属あるいは合金から作製された太陽電池取付部と、プラスチック材料あるいはセラミックス材料から作製された分離壁部とを、適切な方法、手段で接続、接合すればよい。
【0024】
上記の好ましい形態、構成を含む本発明の発電・水素ガス発生装置(以下、これらを総称して、単に『本発明』と呼ぶ場合がある)において、第1電極(陽極)は、例えば、第1電極本体部、及び、第1電極本体部の先端部に設けられ、高分子電解質膜に接する触媒層から構成されている。同様に、第2電極(陰極)は、例えば、第2電極本体部、及び、第2電極本体部の先端部に設けられ、高分子電解質膜に接する触媒層から構成されている。ここで、第1電極本体部は、耐酸性、耐酸化性を有する材料から構成すればよく、係る材料として、例えば、チタン(Ti)、ステンレス鋼を挙げることができるし、第2電極本体部は、耐酸性を有する材料から構成すればよく、係る材料として、例えば、ニッケル(Ni)を挙げることができる。また、第1電極を構成する触媒層として、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム、チタン(Ti)を挙げることができるし、第2電極を構成する触媒層として、チタン(Ti)、白金(Pt)を挙げることができる。分離壁部が導電材料から構成されている場合、分離壁部を接する第1電極及び第2電極の部分に絶縁材料層を設けることで、第1電極や第2電極を分利壁部から絶縁することができる。
【0025】
第1の空間には、液体導入部から液体を流し、液体排出部から排出し、第2の空間には、第1の空間から高分子電解質膜を介して液体を流し、液体排出部から排出するが、ここで、液体として、水を挙げることができる。液体排出部から排出された液体を液体導入部に戻すことで循環させればよい。液体として水を用いる場合、第1の空間における液体排出部から排出される水には酸素ガスが同搬されるが、係る酸素ガスは、周知の方法に基づき、適切な分離装置を用いて水と分離すればよい。また、第2の空間における液体排出部から排出される水には水素ガスが同搬されるが、係る水素ガスは、周知の方法に基づき、適切な分離装置を用いて水と分離し、周知の方法に基づき、ボンベに貯蔵してもよいし、水素吸蔵合金に吸蔵させてもよい。場合によっては、液体排出部とは別に酸素ガス及び水素ガスを取り出す排出ポートを水素ガス発生装置に設けてもよい。
【0026】
制御装置は、太陽電池から制御装置に供給される電圧を測定するための電圧測定回路、マイクロコンピュータ、記憶装置、スイッチング回路を含み、太陽電池から制御装置に供給された電圧の値をパラメータとした電気分解セルの直列接続及び並列接続の接続組合せが、予め決定されており、記憶装置に記憶されている。そして、太陽電池から制御装置に供給された電圧の値に応じて、マイクロコンピュータは、記憶装置から電気分解セルの直列接続及び並列接続の接続組合せの内、最適な組合せを選択し、係る組合せに基づきスイッチング回路を制御する。そして、これによって、電気分解セルの直列接続及び並列接続の接続状態の最適化を図ることができる。太陽電池から制御装置に供給された電圧の値だけでなく、第1の空間及び第2の空間を流れる液体の温度をもパラメータとした電気分解セルの直列接続及び並列接続の接続組合せを、予め決定し、記憶装置に記憶しておいてもよい。
【実施例1】
【0027】
実施例1は、本発明の発電・水素ガス発生装置に関する。実施例1の発電・水素ガス発生装置の概念図を図1に示し、水素ガス発生装置の模式的な断面図を図2に示し、1つの分離壁部等の模式的な断面図を図3に示し、図2の(A)の矢印A−Aに沿った実施例1の水素ガス発生装置の模式的な断面図、及び、図2の(A)の矢印B−Bに沿った実施例1の水素ガス発生装置の模式的な断面図を、それぞれ、図4及び図5に示す。更には、図4の矢印A方向、図4の矢印B方向及び図4の矢印C方向から眺めた実施例1の水素ガス発生装置の模式的な側面図を、それぞれ、図6、図7及び図8に示す。尚、各分離壁部を含む仮想平面と平行な仮想平面で水素ガス発生装置を切断したときの模式的な断面図は、実質的に同じである。また、太陽電池の最大出力電圧と水素ガス発生装置における水素ガスを発生させるための電解電圧の最適化を図ったときのグラフを図11の(A)に示す。
【0028】
実施例1の発電・水素ガス発生装置は、水素ガス発生装置10、太陽電池40、及び、熱輸送部材50を備えており、
水素ガス発生装置10は、熱輸送部材50の一端の部分51から構成された分離壁部12によって分離された複数の電気分解セル11を備えており、
熱輸送部材50の他端の部分52から構成された太陽電池取付部53に太陽電池40が取り付けられており、
太陽電池40にて生成した熱が太陽電池取付部53を介して分離壁部12から電気分解セル11に伝熱される。
【0029】
具体的には、実施例1の水素ガス発生装置10は、離間して並置された複数の分離壁部(セパレータ)12を備えている。尚、熱輸送部材50の一端の部分51は複数の分岐部を有し、各分岐部が分離壁部12を構成している。ここで、複数の分離壁部12が離間して並置されているが、分離壁部12は、垂直方向に積層された状態で離間して並置されていてもよいし、水平方向に離間して並置されていてもよい。尚、前者の場合、分離壁部12を含む仮想平面は水平面であり、後者の場合、分離壁部12を含む仮想平面は垂直面である。そして、対向する2つの分離壁部12に挟まれた空間は、分離壁部12と平行に配された高分子電解質膜14によって第1の空間15及び第2の空間16に区画されている。尚、分離壁部12と高分子電解質膜14とは、厳密に平行に配されている必要はない。図示した例では、水素ガス発生装置10は、5枚の分離壁部12を備えており、4つの空間が存在し、1つの空間当たり5個の電気分解セル11が設けられているが、これに限定するものではない。尚、複数の分離壁部12は、複数の分離壁部12の四隅を貫通する複数のボルト及びナット(これらは図示せず)を用いて相互に固定されている。
【0030】
更には、対向する2つの分離壁部12の内の一方の分離壁部12の対向面には、第1の空間15内に位置し、先端部が高分子電解質膜14に接した複数の第1電極21が設けられており、他方の分離壁部12の対向面には、第102の空間16内に位置し、先端部が高分子電解質膜14に接し、第1電極21と対向した第2電極22が設けられている。ここで、各第1電極21は、その一端に、分離壁部12の側面13Aに露出した(具体的には、分離壁部12の側面13Aから突出した)第1接続部21Cを備えており、各第2電極22は、その一端に、分離壁部12の側面13Aに露出した(具体的には、分離壁部12の側面13Aから突出した)第2接続部22Cを備えている。ここで、各電極21,22の後部は分離壁部12に埋め込まれている。具体的には、分離壁部12の対向面には予め凹部が形成されており、電極21,22が、対向面から突出した状態でこれらの凹部に嵌合している。また、参照番号12’は、水素ガス発生装置10を構成する側壁部材であり、ポリカーボネート樹脂から成る。
【0031】
更には、第1の空間15に連通した液体導入部17A及び液体排出部18A、並びに、第2の空間16に連通した液体排出部18Bを更に備えている。尚、液体導入部17Aは、分離壁部12の側面13Aに設けられており、液体排出部18A,18Bは、分離壁部12の側面13Cに設けられている。第1の空間15には、循環用ポンプ(図示せず)を用いて、液体導入部17Aから液体、具体的には水を流し、第1の空間15を流れた液体は液体排出部18Aから排出される。また、第1の空間15から高分子電解質膜14を介して第2の空間16に導入された液体は液体排出部18Bから排出される。液体排出部18A,18Bから排出された液体を液体導入部17Aに戻すことで循環させる。第1の空間15における液体排出部18Aから排出される水には酸素ガスが同搬されるが、係る酸素ガスは、周知の方法に基づき、適切な分離装置(図示せず)を用いて水と分離すればよい。また、第2の空間16における液体排出部18Bから排出される水には水素ガスが同搬されるが、係る水素ガスは、周知の方法に基づき、適切な分離装置(図示せず)を用いて水と分離し、周知の方法に基づき、ボンベ(図示せず)に貯蔵してもよいし、水素吸蔵合金(図示せず)に吸蔵させてもよい。尚、液体導入部17Aを1箇所、設け、マニホールドによって各第1の空間15に液体を供給してもよい。また、液体排出部18Aを1箇所、設け、マニホールドによって各第1の空間15から液体を排出してもよい。同様に、液体排出部18Bを1箇所、設け、マニホールドによって各第2の空間16から液体を排出してもよい。場合によっては、液体排出部18A,18Bとは別に酸素ガス及び水素ガスを取り出す排出ポートを第1の空間15及び第2の空間16に設けてもよい。
【0032】
ここで、一対の第1電極21及び第2電極22によって、1つの電気分解セル11が構成されている。そして、第2の空間16において水素ガスが生成される。
【0033】
複数の第1電極21(酸素ガス発生用触媒電極)は、図示したとおり、離間した状態で設けられており、第1電極21と第1電極21との間の隙間は、電気分解の原料となる水(純水)の流路、及び、生成した酸素ガスの排出流路に相当する。同様に、複数の第2電極22(水素発生用触媒電極)は、図示したとおり、離間した状態で設けられており、第2電極22と第2電極22との間の隙間は、電気分解の原料となる水(純水)の流路、及び、生成した水素ガスの排出流路に相当する。
【0034】
高分子電解質膜14は、フッ素樹脂系イオン交換膜あるいはプロトン伝導性の固体高分子膜(PEM膜)、具体的には、側鎖の末端にスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸系高分子膜、より具体的には、ナフィオン膜から成る。高分子電解質膜14の端部は、ガスケット19を介して分離壁部12に挟まれた状態で固定されている。また、分離壁部12が側壁部材12’と接する部分にもガスケットが配されているが、これらのガスケットの図示は省略した。
【0035】
また、第1電極21(陽極)は、チタンから成る第1電極本体部21A、及び、第1電極本体部21Aの先端部に設けられ、高分子電解質膜14に接し、酸化イリジウムから成る触媒層21Bから構成されている。分離壁部12と接する第1電極21の部分には、絶縁材料層21Dが形成されている。一方、第2電極22(陰極)は、ニッケルから成る第2電極本体部22A、及び、第1電極本体部22Aの先端部に設けられ、高分子電解質膜14に接し、チタンから成る触媒層22Bから構成されている。分離壁部12と接する第2電極22の部分には、絶縁材料層22Dが形成されている。絶縁材料層21D,22Dを設けることで、第1電極21、第2電極22を分利壁部12から絶縁することができる。尚、絶縁材料層21D,22Dは、図3にのみ示した。
【0036】
実施例1の水素ガス発生装置10には、制御装置30が更に備えられている。制御装置30は、配線31及びコネクタ(図示せず)を介して、第1接続部21C及び第2接続部22Cに接続されており、電気分解セル11に電圧を印加する。そして、複数の化合物系(GaAs系)太陽電池セルから成る太陽電池(太陽電池モジュール)40から制御装置30に供給される電圧に応じて、制御装置30は電気分解セル11の直列接続及び並列接続の接続状態を変更する。尚、実施例1の発電・水素ガス発生装置を駆動する方法にあっては、太陽電池40から制御装置30に供給される電圧に応じて、制御装置30の制御下、電気分解セル11の直列接続及び並列接続の接続状態を変更する。
【0037】
具体的には、制御装置30は、太陽電池40から制御装置30に供給される電圧を測定するための電圧測定回路、マイクロコンピュータ、記憶装置、スイッチング回路(これらは図示せず)を含んでいる。ここで、太陽電池40から制御装置30に供給された電圧の値をパラメータとした電気分解セル11の直列接続及び並列接続の接続組合せが、予め決定されており、記憶装置に記憶されている。そして、太陽電池40から制御装置30に供給された電圧の値に応じて、マイクロコンピュータは、記憶装置から電気分解セル11の直列接続及び並列接続の接続組合せの内、最適な組合せを選択し、係る組合せに基づきスイッチング回路を制御する。そして、これによって、電気分解セル11の直列接続及び並列接続の接続状態の最適化を図っている。
【0038】
更には、太陽電池40を構成する太陽電池セルの最大出力電圧(Vpm)の値をパラメータとした太陽電池セルの直列接続及び並列接続の接続組合せが、予め決定されており、記憶装置に記憶されている。そして、制御装置30は太陽電池セルの最大出力電圧(Vpm)を測定し、その測定結果に基づき、マイクロコンピュータは、記憶装置から太陽電池セルの直列接続及び並列接続の接続組合せの内、最適な組合せを選択し、係る組合せに基づきスイッチング回路を制御する。そして、これによって、太陽電池セルの直列接続及び並列接続の接続状態の最適化を図っている。
【0039】
例えば、電気分解セル11の水電解電圧[理論電位(平衡電極電位、理論電解電圧)と、実際に反応が進行するときの電極の電位との和]が1.5ボルトとなるように、電極を構成する材料等が組み合わされ、水素ガス発生装置が構成されているとする。そして、太陽電池40の太陽電池セル1つ当たりの最大出力電圧(Vpm)が2.2ボルトである場合、太陽電池40を15個の太陽電池セルの直列接続から構成すれば、太陽電池40から供給される電圧は、
2.2×15=33.0ボルト
となる。従って、電気分解セル11を22個、直列に接続すればよい。
【0040】
また、太陽電池40の太陽電池セル1つ当たりの最大出力電圧(Vpm)が2.1ボルトに低下した場合、太陽電池40を5個の太陽電池セルの直列接続から構成すれば、太陽電池40から供給される電圧は、
2.1×5=10.5ボルト
となる。従って、電気分解セル11を7個、直列に接続すればよい。
【0041】
更には、太陽電池40の太陽電池セル1つ当たりの最大出力電圧(Vpm)が2.0ボルトに低下した場合、太陽電池40を3個の太陽電池セルの直列接続から構成すれば、太陽電池40から供給される電圧は、
2.0×3=6.0ボルト
となる。従って、電気分解セル11を4個、直列に接続すればよい。
【0042】
従って、電気分解セル11の数を、22と7と4の最小公倍数である308個とし、天候に応じて、太陽電池40における太陽電池セルの直列/並列の接続状態と、電気分解セル11における直列/並列の接続状態とを、制御装置30の制御下、適宜、変更することで、常に、太陽電池40と水素ガス発生装置との間の電圧差を減少・低減させることができ、太陽電池40の電気エネルギー変換効率を最大限有効活用して水素ガスを生成することができる。尚、水素ガス発生装置の構成要素を構成する材料、駆動条件、太陽電池40の構成要素を構成する材料、想定する最大出力電圧(Vpm)に応じて、電気分解セル11の数を、適宜、決定すればよい。ここで、広くは、太陽電池40の最大出力電圧(Vpm)の±10%の範囲内、好ましくは、太陽電池40の最大出力電圧(Vpm)の±5%の範囲内に、直列接続された電気分解セル11に印加される電圧が納まるように、制御装置30は電気分解セル11の直列接続及び並列接続の接続状態を変更し、また、制御装置30の制御下、電気分解セル11の直列接続及び並列接続の接続状態を変更する。
【0043】
また、もしも、太陽電池40の太陽電池セル1つ当たりの最大出力電圧(Vpm)が1.9ボルトに低下した場合、太陽電池40を15個の太陽電池セルの直列接続から構成すれば、太陽電池40から供給される電圧は、
1.9×15=28.5ボルト
となる。従って、電気分解セル11を19個、直列に接続すればよい。この場合、電気分解セル11の個数は304個であり、308個の電気分解セル11の内、4個の電気分解セル11を不使用とすればよい。
【0044】
一般には、電気分解セル11の水電解電圧をV0ボルトとし、太陽電池40の太陽電池セル1つ当たりの最大出力電圧をVpm-iボルト、太陽電池40における直列接続された太陽電池セルの個数をNSC-iとしたとき、太陽電池40から供給される電圧は、
pm-i×NSC-i
である。そして、電気分解セル11を直列に接続すべき個数をNNC-iとすれば、
NC-i=(Vpm-i/V0)×NSC-i
を満足すればよい。ここで、太陽電池セル1つ当たりの最大出力電圧の変化がIケースあると想定した場合、IケースのNNC-i(i=1,2・・・I)の最小公倍数が、水素ガス発生装置において必要とされる電気分解セル11の個数となる。但し、場合によっては、上述したとおり、多少の電気分解セル11を駆動させること無く、水素ガス発生装置によって水素ガスを生成させてもよい。
【0045】
熱輸送部材50の軸線を含む仮想平面で熱輸送部材50を切断したときの熱輸送部材50の模式的な一部断面図を図9の(A)に示し、熱輸送部材50の軸線と直交する仮想平面で熱輸送部材50を切断したときの熱輸送部材50の模式的な一部断面図を図9の(B)に示す。実施例1において、熱輸送部材50は、密閉された内部空間60を有しており、この内部空間60には、毛細管部材70が配置されており、且つ、相変化を利用して熱を輸送する流体(熱媒体)が封入されている。尚、流体(熱媒体)は図示していない。具体的には、毛細管部材70は、第1の部材71と、第1の部材71よりも目の粗い第2の部材72が積層して成る。
【0046】
また、太陽電池40には、ガラスあるいはプラスチックから作製された集光レンズ41が備えられており、太陽光の光を太陽電池40に集光する。但し、太陽電池40に入射する光は太陽光に限定されない。
【0047】
熱輸送部材50の一端の部分51から構成された分離壁部12と、熱輸送部材50の他端の部分52から構成された太陽電池取付部53との間には、中間部(接続部)54が設けられている。尚、太陽電池取付部53と太陽電池40との間には、ヒートシンク55が配置されている。熱輸送部材50は、ステンレス鋼から作製されており、上面部材61と下面部材62と側面部材63から構成されている。分離壁部12の部分を除き、熱輸送部材50の軸線と垂直な仮想平面で熱輸送部材50を切断したときの熱輸送部材50の断面形状は、図9の(B)に示したように、矩形形状である。但し、断面形状は、矩形形状に限定するものではない。分離壁部12の部分においては、熱輸送部材50の軸線を含む垂直な仮想平面で熱輸送部材50を切断したときの熱輸送部材50の断面形状は、図2あるいは図3に示したように、凹凸形状を有する。流体(熱媒体)として、水を用いる。第1の部材71は複数のメッシュ状の部材(太陽電池、2枚〜5枚のメッシュ状の部材の積層体)から構成されており、第2の部材72は1層のメッシュ状の部材から構成されている。尚、メッシュ状の部材は、ステンレス鋼のワイヤを編むことで作製されている。
【0048】
熱輸送部材50が動作していないとき(熱を伝達していないとき)には、流体は、第1の部材71及び第2の部材72の内、主に毛細管力の強い第1の部材71の方に引き寄せられて保持されている。太陽電池40を作動させると、熱輸送部材50の吸熱部である太陽電池取付部53において太陽電池40から熱を受ける。その結果、液相の流体(熱媒体)が蒸発する。気相になった流体は、熱輸送部材50の内部空間60内を第2の部材72を介して放熱部である分離壁部12へと移動し、分離壁部12において熱を放出し、凝縮し、液相となることで電気分解セル11に伝熱する。液相となった流体(熱媒体)は、熱輸送部材50の内部空間60内を第1の部材71を介して太陽電池取付部53に戻る。尚、第1の部材71による毛細管力を受けて液相の流体が移動する。このサイクルが繰り返されることで、太陽電池40から熱が除かれる一方、電気分解セル11には熱が与えられる。熱輸送部材50の外形形状は薄板形状であるが故に、太陽電池40は、太陽電池取付部53において、第1の部材71側に取り付けられていてもよいし、第2の部材72側に取り付けられていてもよい。
【0049】
第1の部材71及びその上に積層された第2の部材72から成る毛細管部材70の厚さをt1とする。また、熱輸送部材50における内部空間60の高さ(側面部材63の高さ)をt2とする。組み立て前にあっては、t1>t2の関係にある。具体的には、例えば、
0mm≦t1−t2≦0.2mm
である。
【0050】
熱輸送部材50は、例えば、以下に説明する方法で製造することができる。即ち、下面部材62に側面部材63を載置した、断面形状が「コ」の字の部材の内部に毛細管部材70を配置し、毛細管部材70の上に上面部材61を乗せる。この状態にあっては、上面部材61と側面部材63の頂面との間には隙間が存在する。そして、雰囲気を高温とした状態で上面部材61側から圧力Pを加えることで、下面部材62と側面部材63、及び、上面部材61と側面部材63とが拡散接合される。このとき、毛細管部材70は(t1−t2)だけ、圧縮される。毛細管部材70は弾性を有しているので、圧力Pの一部が吸収され、その圧力Pよりも小さい圧力P’が毛細管部材70から下面部材62へ加えられる。この圧力P’によって下面部材62と毛細管部材70とが拡散接合される。また、上面部材61にも、圧縮された毛細管部材70から圧力Pよりも小さい圧力P”が加えられる。この圧力P”によって上面部材61と毛細管部材70とが拡散接合される。このように、拡散接合することで、熱輸送部材50の気密性が破られるリーク不良を防ぐことができる。尚、下面部材62側から圧力Pを加えてもよい。また、t1=t2であっても、拡散接合工程は高温状態で行われるので、上面部材61も高温になり、僅かに変形し、この変形によって、毛細管部材70が圧縮される。このように、複数の拡散接合が同じ工程において行われるので、少ない工程に基づき効率的に製造される、安価な熱輸送部材の製造方法を提供することができる。尚、こうして得られた熱輸送部材50の各部を、適切な方法で組み立てればよい。
【0051】
集光レンズ41によって、光のエネルギーを500倍、集光した場合、放熱する必要がある熱量は、例えば、以下の計算から35ワット/cm2である。
【0052】
集光レンズ41に入射する太陽光 :0.1ワット/cm2
太陽電池に入射する太陽光 :50ワット/cm2
太陽電池におけるエネルギー利用効率 :30%
太陽電池において利用されるエネルギー :15ワット/cm2
水素ガス発生装置において利用されるエネルギー:35ワット/cm2
【0053】
仮に、水素生成用原料(液体)及び電気分解によって発生する酸素ガスを押し流して排出するために、実際に電気分解される水量の約500倍以上の過剰の純水である0.25ミリリットル/秒(0.25グラム/秒)の純水を水素ガス発生装置10に導入した場合、水の比熱を4.2ジュール/グラム・Kとすれば、純水1グラム/秒を1゜C上昇させるのに必要な熱量は4.2ワットであるので、33゜Cの温度上昇となる。
(35/4.2)(1/0.25)=33
【0054】
水電解電圧と水電解効率の温度依存性を図10に示すが、常温での水電解効率に対し、約3%乃至4%の水電解効率向上を図ることができる。尚、水素ガス発生装置10に導入すべき液体の流量を制御することで、液体の上昇温度を制御することができる。即ち、流量を増加させると電解温度は低下し、流量を減少させると電解温度は上昇する。
【0055】
実施例1の発電・水素ガス発生装置にあっては、太陽電池40にて生成した熱が太陽電池取付部53を介して分離壁部12から電気分解セル11に伝熱されるので、簡素な構成、構造にて、水素ガス生成の原料である液体を加熱することができ、同時に、太陽電池40の温度の上昇を抑制することができる。即ち、これまで冷却機構で廃棄していた太陽電池の熱で電気分解セル11を加熱できるようになり、総合的なエネルギー利用効率を向上させることが可能となる上、水素生成システムとして付帯設備を削減若しくは軽減することができ、コストの低減を図ることが可能となる。しかも、より均等に電気分解セル11に熱が移動し、電気分解が行われる反応場を均一に加熱することができるので、電気分解の効率低下や信頼性低下を引き起こす局所加熱や加熱温度ばらつきの発生を抑制することができる。尚、局所的な加熱が発生し、温度が上昇しない電気分解セル11が発生すると、このような電気分解セル11における電解電圧(特に、陽極の過電圧)が上昇し、水素変換効率が低下するだけでなく、電解電圧の上昇による陽極の自己溶解等が発生し、信頼性が低下する虞があるし、局所的に加熱された電気分解セル11が劣化する虞もある。
【0056】
また、実施例1にあっては、水素ガス発生装置を第1電極21及び第2電極22が延びる方向と直交する仮想平面で切断したとき、電気分解セル11が2次元マトリクス状に配置された状態となっており、しかも、各電極21,22の接続部21C,22Cは分離壁部12の側面13Aに露出しているので、例えば、太陽電池の最大出力電圧と水素ガス発生装置における電解電圧との間の電圧差を無くし、あるいは又、減少させるために、電気分解セル11の直列/並列接続の状態を、適宜、しかも、容易に変更することができる。それ故、最大出力(最大変換効率)の電気エネルギーで、例えば水を電気分解して水素ガスに変換する際に、エネルギーロスを低減することができ、高効率で水素ガスを生成することが可能となる。しかも、電極21,22を分離壁部12に設けることで、水素ガス発生装置の構成部品点数を削減することができるだけでなく、電極21,22を分離するためのスペースを、水素ガスの原料となる液体の導入流路及び生成ガスの排出流路として用いることができるので、水素ガス発生装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0057】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明した水素ガス発生装置、太陽電池、熱輸送部材、発電・水素ガス発生装置の構成、構造、用いた材料や仕様等は例示であり、適宜、選択、変更することができる。
【符号の説明】
【0058】
11・・・電気分解セル、12・・・分離壁部、12’・・・側壁部材、13A・・・電極の接続部が突出した分離壁部の側面、13B,13C,13D・・・分離壁部のその他の側面、14・・・高分子電解質膜、15・・・第1の空間、16・・・第2の空間、17A・・・液体導入部、18A,18B・・・液体排出部、19・・・ガスケット、21・・・第1電極、21A・・・第1電極本体部、21B・・・触媒層、21C・・・第1接続部、22・・・第2電極、22A・・・第2電極本体部、22B・・・触媒層、22C・・・第2接続部、30・・・制御装置、40・・・太陽電池、41・・・集光レンズ、50・・・熱輸送部材、51・・・熱輸送部材の一端の部分、52・・・熱輸送部材の他端の部分、53・・・太陽電池取付部、54・・・中間部(接続部)、55・・・ヒートシンク、60・・・内部空間、61・・・上面部材、62・・・下面部材、63・・・側面部材、70・・・毛細管部材、71・・・第1の部材、72・・・第2の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス発生装置、太陽電池、及び、熱輸送部材を備えた発電・水素ガス発生装置であって、
水素ガス発生装置は、熱輸送部材の一端の部分から構成された分離壁部によって分離された複数の電気分解セルを備えており、
熱輸送部材の他端の部分から構成された太陽電池取付部に太陽電池が取り付けられており、
太陽電池にて生成した熱が太陽電池取付部を介して分離壁部から電気分解セルに伝熱される発電・水素ガス発生装置。
【請求項2】
熱輸送部材の一端の部分は複数の分岐部を有し、
各分岐部が分離壁部を構成する請求項1に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項3】
複数の分離壁部は離間して並置されており、
対向する2つの分離壁部に挟まれた空間は、分離壁部と平行に配された高分子電解質膜によって第1の空間及び第2の空間に区画されており、
対向する2つの分離壁部の内の一方の分離壁部の対向面には、第1の空間内に位置し、先端部が高分子電解質膜に接した複数の第1電極が設けられており、他方の分離壁部の対向面には、第2の空間内に位置し、先端部が高分子電解質膜に接し、第1電極と対向した第2電極が設けられており、
各第1電極は、その一端に、分離壁部の側面に露出した第1接続部を備えており、
各第2電極は、その一端に、分離壁部の側面に露出した第2接続部を備えており、
第1の空間に連通した液体導入部及び液体排出部、並びに、第2の空間に連通した液体排出部を更に備えており、
一対の第1電極及び第2電極によって、1つの電気分解セルが構成されており、
第2の空間において水素ガスが生成され、
第1接続部及び第2接続部が接続され、電気分解セルに電圧を印加する制御装置を更に備えており、
太陽電池から制御装置に供給される電圧に応じて、制御装置は電気分解セルの直列接続及び並列接続の接続状態を変更する請求項2に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項4】
太陽電池の最大出力電圧の±10%の範囲内に、直列接続された電気分解セルに印加される電圧が納まるように、制御装置は電気分解セルの直列接続及び並列接続の接続状態を変更する請求項3に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項5】
各電極の後部は分離壁部に埋め込まれている請求項3又は請求項4に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項6】
高分子電解質膜はフッ素樹脂系イオン交換膜から成る請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項7】
熱輸送部材は、密閉された内部空間を有しており、
該内部空間には、毛細管部材が配置されており、且つ、相変化を利用して熱を輸送する流体が封入されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項8】
毛細管部材は、第1の部材と、第1の部材よりも目の粗い第2の部材が積層して成る請求項7に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項9】
第1の部材及び第2の部材は、メッシュ状の部材から成り、あるいは又、ワイヤを束ねた部材から成る請求項8に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項10】
太陽電池にて生成した熱によって、太陽電池取付部において流体が気相となり、第2の部材を通過して分離壁部に到達し、分離壁部において液相となることで電気分解セルに伝熱し、液相となった流体は第1の部材を通過して太陽電池取付部に戻る請求項8又は請求項9に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項11】
太陽電池には集光レンズが備えられている請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の発電・水素ガス発生装置。
【請求項12】
太陽電池は化合物系太陽電池から成る請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の発電・水素ガス発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−36414(P2012−36414A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174672(P2010−174672)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】