説明

発電装置、及び発電デバイス

【課題】発電効率の高い発電装置、および、発電デバイスを提供する。
【解決手段】発電装置100は、海上に設置される浮体部200と、海面下に設置される垂下蓮310と、を備えている。浮体部200は、海面に浮かぶ複数の浮体210と、変形することによって発電する板状の発電デバイス500とを有している。また、垂下蓮310は、海面下に設置される支持体と、その支持体に一端が連結され、支持体の周囲を放射線状に取り囲む複数の板状の発電デバイス500と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電装置、及び発電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギーの有効活用が望まれている。特許文献1には、風を受けた際に固定端を
支点にして曲げ振動する短冊状の受風板と、受風板に固定され、受風板の曲げ振動に伴う変形によって発電する圧電素子と、を備える風力発電ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−24583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示す風力発電ユニットは、受風板の両面に、単純に圧電素子を貼り付けただけであり、発電効率があまり高くない。
【0005】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、発電効率の高い発電装置、および、発電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る発電装置は、
海に浮かぶ複数の浮体と、前記浮体同士を連結し変形することによって発電する板状の発電デバイスと、を有する浮体部、を備え、
海洋エネルギーを受けて前記発電デバイスに連結された前記浮体同士の相対的な高さの変化に追従して前記発電デバイスが変形し発電する、
ことを特徴とする。
【0007】
前記発電デバイスは、海面下で前記浮体に連結されていてもよい。
【0008】
前記発電デバイスは、平面を鉛直方向に向けて前記浮体に連結されていてもよい。
【0009】
前記浮体は、内部に水を出し入れするための注排水手段を有していてもよい。
【0010】
本発明の第2の観点に係る発電装置は、
海面下に設置される支持体と、前記支持体に一端が連結され、前記支持体の周囲を放射線状に取り囲む複数の板状の発電デバイスと、を有する垂下蓮、を備え、
前記発電デバイスに作用する海洋エネルギーを受けて変形し発電する、
ことを特徴とする。
【0011】
前記発電デバイスは、前記支持体に連結されていない側の端に、所定の重さの付加物が設置されていてもよい。
【0012】
前記付加物の単位体積あたりの質量は、水の単位体積当たりの質量より軽くてもよい。
【0013】
前記垂下蓮は、鉛直方向に複数連結されており、
いずれかの前記垂下蓮の動きに連動して他の前記垂下蓮が動き、他の前記垂下蓮の前記発電デバイスが変形し発電してもよい、
【0014】
平面が鉛直方向を向く前記発電デバイスと、平面が水平方向を向く前記発電デバイスとが前記支持体に連結されていてもよい。
【0015】
本発明の第3の観点に係る発電装置は、
海に浮かぶ複数の浮体と、前記浮体同士を連結し変形することによって発電する板状の発電デバイスと、を有する浮体部と、
海面下に設置される支持体と、前記支持体に一端が連結され、前記支持体の周囲を放射線状に取り囲む複数の板状の発電デバイスと、を有する垂下蓮と、を備え、
前記浮体部と前記垂下蓮は、支持部材を介して接続されており、
前記浮体部の発電デバイスは、海洋エネルギーを受けて、前記浮体部の発電デバイスに連結された前記浮体同士の相対的な高さの変化に追従して変形し発電し、
前記垂下蓮の発電デバイスは、前記垂下蓮の発電デバイスに作用する海洋エネルギーを受けて変形し発電する、
ことを特徴とする。
【0016】
前記発電装置は、
前記発電デバイスの出力電流の方向を一定方向にするための整流回路を備え、
整流された電流方向が一致するように、複数の前記発電デバイスが並列接続されていてもよい。
【0017】
本発明の第4の観点に係る発電デバイスは、
弾性板と、
該弾性板の表面に設置され、変形することによって電流を出力する圧電フィルムと、を備え、
前記圧電フィルムと前記弾性板の長手方向の長さの比が0.75以上1未満である、
ことを特徴とする。
【0018】
複数の前記圧電フィルムが前記弾性板を挟んで積層されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
発電効率の高い発電装置、および、発電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る発電装置の斜視図である。
【図2】発電装置が備える浮体部の断面図である。
【図3】発電装置に設置される発電デバイスを説明するための図であり、(A)は発電デバイスの分解斜視図、(B)は発電デバイスの縦断面図、(C)は発電デバイスが変形したときの部分断面部である。
【図4】発電装置が備える垂下部を説明するための図であり、(A)は垂下部が備える垂下蓮の1つの斜視図であり、(B)は垂下部の断面図である。
【図5】発電装置が備える蓄電装置の内部構成を説明するための図である。
【図6】蓄電装置が備える整流回路の動作を説明するための図である。
【図7】発電デバイスが変形する様子を示す図であり、(A)は浮体の上下左右動に連動して発電デバイスが変形する様子を示す図であり、(B)は波の上下動によって発電デバイスが変形する様子を示す図である。
【図8】発電デバイスの一端に付加物を設置した様子を示す図である。
【図9】発電デバイスに4つの圧電フィルムを設置した様子を示す図である。
【図10】実施形態2に係る発電装置の斜視図である。
【図11】実施例1で使用した模型を説明するための図であり(A)は模型の斜視図、(B)は「Floating Type」の模型の側面図、(C)は「Submerged Type」の模型の側面図である。
【図12】実施例1で使用した二次元造波水槽を説明するための図である。
【図13】実施例1の測定結果を説明するための図である。
【図14】実施例2の測定条件を説明するための図であり、(A)は発電デバイスに付加した付加物を説明するための図であり、(B)は測定に使用した二次元造波水槽を説明するための図である。
【図15】実施例2の測定結果を説明するための図であり、(A)は付加物の比重と発電量との関係を示した図であり、(B)は付加物の比重とCとの関係を示した図である。
【図16】実施例3の測定条件と測定結果を説明するための図であり、(A)は測定に使用する4種類の発電デバイスを示した図であり、(B)は圧電フィルムの長さと発電量との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
実施形態1に係る発電装置について、図面を参照しながら説明する。
発電装置100は、海洋エネルギー(波浪、潮流、渦、砕波などの流体エネルギー等)を回収して発電する海洋エネルギー発電装置であり、図1に示すように、浮体部200と、垂下部300と、蓄電装置400とから構成される。
【0022】
浮体部200は、発電装置100の海面に浮かんでいる部分であり、浮体210と、発電デバイス500と、配線ケーブル220とから構成される。
【0023】
浮体210は、海面に浮かぶ、例えば、中空のタンクや発砲スチロール等の浮体から構成され、図1に示すように、10個の浮体210で正三角形となるよう配置されている。また、浮体210は、図2に示すように、海面下で発電デバイス500によって連結されている。
【0024】
発電デバイス500は、変形することによって発電する発電板であり、図3(A)に示すように、3枚の弾性板510と、それら弾性板510によって挟まれる2枚の圧電フィルム520とから構成される。なお、発電デバイス500は、平面を鉛直方向に向けて設置されている。
【0025】
弾性板510は、例えば、シリコンゴム、天然ゴム、合成ゴム等の曲がりやすく弾性のある板状の柔軟性弾性素材から構成される。
【0026】
圧電フィルム520は、PVDF(PolyVinylidene DiFluoride:ポリフッ化ビニリデン)などの圧電材料によって構成される圧電シートの両面に電極膜を形成したフィルム状の圧電素子から構成され、図3(C)に示すように、伸張したとき、上面の電位が高くなり(上面が+極、下面が−極)、収縮したとき、下面の電位が高くなる(上面が−極、下面が+極)分極特性を有している。また圧電フィルム520の両面には、それぞれ、配線531と配線532とが接続されており、分極によって発生した電荷を、配線を通じて外部に出力するようになっている。なお、圧電フィルム520の長手方向の長さは、弾性板510の長手方向の長さの75%程度となっている。
【0027】
配線ケーブル220は、配線531と配線532とを束ねてビニール等の樹脂で被覆したものであり、発電デバイス500の脇を通って蓄電装置400に接続されている。
【0028】
垂下部300は、発電装置100の海面下に沈んでいる部分であり、図4に示すように、垂下蓮310と、連結ケーブル(またはフレーム)320と、配線ケーブル330とから構成される。
【0029】
垂下蓮310は、海中の海洋エネルギー(波浪、潮流、渦エネルギー等)を回収して発電する発電モジュールであり、図4(A)に示すように、支持体311と、複数の発電デバイス500とから構成される。
【0030】
支持体311は、鉄、アルミニウム、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)等で構成される六角形の環であり、六角形の各辺には、発電デバイス500の一端が連結されている。なお、支持体311には、水平板と垂直板が交互に連結されている。ここで、「水平板」とは、平面を鉛直方向に向けた発電デバイス500のことであり、「垂直板」とは、平面を水平方向に向けた発電デバイス500のことである。
【0031】
連結ケーブル(またはフレーム)320は、海面下で垂下蓮310を連結するための支持部材(例えば、鎖やワイヤー等のケーブル、また、鉄、アルミニウム、FRP等で構成されるフレームや棒状体)であり、図4(B)に示すように、鉛直方向に3つの垂下蓮310を連結している。なお、連結ケーブル(またはフレーム)320は垂下蓮310が海中で回転しないように、垂下蓮310の六角形の各角に連結されている。また、連結ケーブル(またはフレーム)320の上端は、例えば、浮体210の底部に接続されており、浮体部200と垂下部300とを接続している。
【0032】
配線ケーブル330は、発電デバイス500から出ている配線531と配線532とを束ねたものであり、連結ケーブル320の脇を通って、配線ケーブル220と接続される。配線531と配線532は、配線ケーブル330と配線ケーブル220の内部を通って、最終的に、蓄電装置400に接続される。
【0033】
蓄電装置400は、複数の発電デバイス500から出力される電荷を蓄えるための装置であり、図5に示すように、整流回路410と、蓄電媒体420とから構成される。
【0034】
整流回路410は、図6に示すようなダイオードブリッジ回路等から構成される。整流回路410は、一対の入力端子を有しており、その入力端子は、それぞれ、配線531と配線532に接続されている。また、整流回路410は、正極端子、負極端子から構成される1対の出力端子を有しており、正極端子は蓄電媒体420の正極端子に、負極端子は蓄電媒体420の負極端子に接続されている。
【0035】
蓄電媒体420は、大容量コンデンサや二次電池等から構成され、発電デバイス500から伝達された電荷を蓄える。
【0036】
次に、このような構成を有する発電装置100の発電動作について説明する。
【0037】
上述したように、発電装置100の浮体部200は、海面に浮かぶ複数の浮体210を有している。波浪・砕波等によって海水が動くと、浮体210は、海水の動きに連動して上下左右に運動する。浮体210には発電デバイス500が連結されており、発電デバイス500は浮体210の上下左右の運動に伴って、例えば、図7(A)に示すように変形する。そうすると、発電デバイス500内部の圧電フィルム520は分極し、両面に電荷を発生させる。
【0038】
また、発電デバイス500は、海面下で平面を海面の方向に向けて浮体210に連結されている。そのため、発電デバイス500は、海面下の波浪・砕波等による海水の動きを直接受けて、図7(B)に示すように変形する。そうすると、圧電フィルム520は分極し、両面に電荷を発生させる。
【0039】
また、発電装置100は、海面下に設置される垂下部300を備えおり、その垂下部300は、複数の垂下蓮310を有している。垂下蓮310は、一端が支持体311に連結された複数の発電デバイス500を備えている。海面下で海流または渦が発生すると、発電デバイス500は、支持体311との連結部を支点として振動することになる。そうすると、発電デバイス500内部の圧電フィルム520は分極し、両面に電荷を発生させる。
【0040】
また、波による海水の動きは、深くなるほど発生しにくいが、垂下蓮310は連結ケーブル(またはフレーム)320によって他の垂下蓮310と連結されているので、海面下深くに連結された垂下蓮310は、周囲に海水の動きがなくても、他の垂下蓮310(特に、海面近くの垂下蓮310)の動きに連動して上下左右に動くことになる。そうすると、発電デバイス500は、周囲の海水の抵抗を受けて振動し、結果、圧電フィルム520は分極し、両面に電荷を発生させる。
【0041】
圧電フィルム520に発生した電荷は、配線531と配線532を通って、蓄電装置400に伝達される。複数の発電デバイス500は、それぞれ、異なった周期・位相で振動しているので、発電デバイス500ごとに発生電荷の周期・位相はばらばらとなる。そのため、各配線を単純に連結したら、各配線の電流が相殺しあって、効率よく電力を蓄えることができない。
【0042】
しかしながら、蓄電装置400は、図5に示すように内部に整流回路410を備えているので、配線を介して伝達された電流は、整流回路410によって一定方向に変換され、結果、蓄電媒体420には効率よく電力が蓄えられる。
【0043】
また、各整流回路410は、極性が一致するよう蓄電媒体420に並列接続されている。発電デバイス500は電流源と考えられるので、それらを整流回路410を経由して蓄電媒体420に並列接続することによって、各発電デバイス500から出力される電流は加算され、結果、蓄電装置400には多くの電力が蓄えられる。
【0044】
本実施形態によれば、発電装置100は、幅広いレンジの運動エネルギーを有する海洋エネルギーを回収して発電することができる。例えば、発電装置100は浮体210に連結された発電デバイス500を有しているので、波浪・砕波等による海面の上下動のエネルギーを回収することができる。また、発電デバイス500は、海面下で、平面を鉛直方向に向けて設置されているので、発電装置100は、海面近くの海水の上下動のエネルギーを直接回収することができる。また、発電装置100は、鉛直方向に複数連結された垂下蓮310を有しているので、さまざまな深度の海洋エネルギーを回収することができる。また、垂下蓮310には水平板と垂直板が交互に放射線状に設置されているので、発電装置100は、海面下のあらゆる方向の海水の動きを捉えることができる。
【0045】
また、発電装置100は、海面に浮かんでいるだけであるので、海洋環境への影響(流れや太陽光の遮蔽効果、海洋生態系)を最小限に止めることができる。
【0046】
また、発電装置100は、海洋エネルギーを回収することによって、周辺海域の波を小さくすること(即ち、消波すること)ができる。海洋に設置した構造物(例えば、洋上風力発電施設など)を発電装置100で取り囲めば、波による構造物の破壊を抑制することができる。
【0047】
なお、垂下蓮310の発電デバイス500は、支持体311に連結されていない側の一端に、例えば、図8に示すように、直方体や球体等の付加物540が設置されていてもよい。なお、付加物540の比重は、水の比重(即ち“1”)と異なっていてもよい。例えば、付加物540の比重は、0.01〜0.99であってもよいし、1.01以上であってもよい。発電デバイス500が大きく揺れるようになり、さらに効率のよい発電が可能になる。
【0048】
また、垂下蓮310の支持体311の形状は六角形に限られない。例えば、円形であってもよいし、四角形や八角形等の多角形であってもよい。この場合、垂直板が均等に配置されるように、支持体311の形状は、四角形、八角形、十角形等の偶数角形であるほうが望ましい。海中での垂下蓮310の回転や発電装置100の運動(ロール、ピッチ、ヒーブ運動など)を抑制することができる。
【0049】
また、垂下蓮310の鉛直方向への連結個数は3個に限られない。3個以上であってもよいし、浅い海の場合、1個や2個であってもよい。
【0050】
発電デバイス500に設置される圧電フィルム520の枚数は2枚に限られない。例えば、図9に示すように、5枚の弾性板510で4枚の圧電フィルム520を挟み込んでもよいし、さらに多くの偶数枚の圧電フィルム520を挟みこんでもよい。多くの圧電フィルム520が設置されることによって、さらに効率のよい発電が可能になる。
【0051】
また、発電デバイス500の中央の弾性板510は、図9に示すように、他の弾性板510より厚くてもよい。圧電フィルム520の伸縮差が大きくなるので、さらに効率のよい発電が可能になる。
【0052】
また、発電デバイス500の平面の向きは鉛直方向や垂直方向に限られない。斜め45°、斜め30°等、さまざまな方向に向けてもよい。あらゆる方向からの海洋エネルギーの回収が可能になる。
【0053】
また、浮体部200には、没水機能が備わっていてもよい。例えば、浮体210の1つ1つに、海水を注排水するための注排水口(不図示)と、その注排水口から海水を出し入れするためのポンプ(不図示)とを備え、船舶等のバラストタンクのように、自由に浮力を変更できるようにしてもよい。台風、津波、高潮、Freak Waveなどの異常波浪の際に、浮体210に海水を注入して没水させておくことにより、異常気象による発電装置100の破壊を防ぐことができる。
【0054】
また、発電装置100は、他の発電装置100と連結するための連結機能が備わっていてもよい。例えば、ケーブルを通すための環を浮体210に設置し、ケーブルを使って、発電装置100を他の発電装置100と連結する。海洋条件、設置条件、発電性能等に合わせて、合理的に自由にデザイン・カスタマイズすることが可能になる。
【0055】
また、発電装置100の消波機能を利用して、他の発電システムとのハイブリッド化を実現してもよい。例えば、洋上に設置した風力発電用の風車を発電装置100で取り囲んでもよいし、また、洋上に設置した太陽光発電用のパネルを発電装置100で取り囲んでもよい。
【0056】
(実施形態2)
実施形態1の発電装置100は、海面に浮かんでいるため、海底もしくは海岸線近くの海洋エネルギーを回収することが困難である。以下、海底もしくは海岸線近くの海洋エネルギーを回収することが可能な発電装置600について説明する。
【0057】
発電装置600は、海底もしくは海岸線近くに設置される発電ユニットであり、図10に示すように、フレーム610と、発電デバイス500と、配線ケーブル220と、蓄電装置400とから構成される。なお、発電デバイス500と蓄電装置400の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0058】
フレーム610は、鉄,アルミニウム、FRP等から構成され、2本の棒の中間にハシゴ状に横棒を設置した形状をしている。フレーム610の横棒それぞれには、発電デバイス500の長手方向の一端が連結されている。このフレーム610は、発電デバイス500が突き出ている側を上にして、海底に設置される。
【0059】
配線ケーブル220は、発電デバイス500から出ている配線531と配線532を束ねたものであり、フレーム610の脇を通って蓄電装置400に接続されている。
【0060】
水面下に没水設置された発電装置600に波が作用すると、海水の周期的な左右運動によって,発電デバイス500は大きく左右振動し、結果、圧電フィルム520は分極して両面に電荷を発生させる。また、海底近くで海流が発生すると、海流に面した先頭の発電デバイス500は、後方に、いわゆるカルマン渦を発生させる。後方の発電デバイス500は、その渦の動きに伴って大きく振動し、結果、圧電フィルム520は分極して両面に電荷を発生させる。発生した電荷は、配線531と配線532を通って蓄電装置400に伝達され、整流回路410を介して蓄電媒体420に蓄積される。
【0061】
本実施形態によれば、海底もしくは海岸線近くの海洋エネルギーを効率よく回収することができる。
【実施例1】
【0062】
発電デバイスの設置位置と発電量との関係について検証した。また発電デバイスのサイズと発電量との関係について検証した。検証には、図11(A)に示すような、2個の浮体(図11に示す「Float」)に1個の発電デバイス(図11に示す「FPED」)を連結した模型を使用した。
【0063】
まず、以下の条件を満たす5種類の発電デバイスを用意した。なお、以下の数値は、後述の二次元造波水槽で発生させる波の波長λを基準としている。
【0064】
発電デバイス(FPED)の長さL/λ:0.1〜0.5までの5種類
圧電フィルム(PVDF)の幅B/λ :0.09
圧電フィルム(PVDF)間距離δ/λ:0.005
【0065】
この発電デバイスを使用して、「Floating Type」の模型と、「Submerged Type」の模型とを作製した。「Floating Type」とは、図11(B)に示すように、浮体の下側に発電デバイスを設置したタイプであり、「Submerged Type」とは、図11(C)に示すように、浮体の上側に発電デバイスを設置したタイプである。
【0066】
波の発生には、図12に示すような、二次元造波水槽を使用した。この二次元造波水槽で発生させた波は以下の条件の波である。
【0067】
周期 :0.8s
波長λ :1.0m
波高H/λ:0.077
【0068】
二次元造波水槽を使用して、「Floating Type」と「Submerged Type」それぞれについて、発電量を測定した。その結果をグラフにしたものが図13である。このグラフから、「Floating Type」の発電量は、「Submerged Type」の発電量の2倍以上となることがわかる。また、L/λ=0.4で発電量が最大となることがわかる。
【実施例2】
【0069】
付加物の比重と発電量との関係について検証した。また、固有振動数と加振振動数との関係について検証した。
【0070】
まず、以下の条件を満たす5種類の発電デバイス(図14(A)に示す「弾性圧電デバイス」)を用意した。
【0071】
発電デバイス(FPED)の長さL:340mm
圧電フィルム(PVDF)の幅B :100mm
圧電フィルム(PVDF)間距離δ: 5mm
【0072】
次に、比重の異なる5種類の付加物(図14(A)に示す「立方体型付加物」)を用意した。付加物は一辺が100mmの立方体であり、比重は0.8〜1.2までの5種類である。
【0073】
この付加物を発電デバイスの一端に設置し、図14(B)に示すように、他端を振動発生機(図14(B)に示す「Vibration generator」)に固定した。そして、発電デバイスを、水槽の中で加振した。そのとき得られた結果が図15のグラフである。図15(A)は付加物の比重と発電量の関係をグラフにしたものであり、図15(B)は付加物の比重とCの関係をグラフにしたものである。ここで、Cは、波周波数にFPEDの固有振動数がどれだけ近いかを示す無次元数であり、下記(式1)により定義される。
【0074】
【数1】

【0075】
図15(A)のグラフから、付加物比重により発電量の操作が可能であることが分かる。また、水の比重と同じ比重(“1”)の場合が、発電量が最も小さく、また、水の比重より小さい場合と大きい場合とでは、小さい場合の方が、発電量が大きいことがわかる。
【0076】
また、図15(B)のグラフから、発電量はCに比例することが分かる。このことから、付加物比重により発電デバイスの固有振動数を調整し、発電量の操作が可能であることがわかる。
【実施例3】
【0077】
圧電フィルム(PVDF)の長さと発電量との関係について検証した。
【0078】
まず、図16(A)に示すように、圧電フィルム(PVDF)の長さが異なる4種類の発電デバイスを用意した。圧電フィルムの長さlは、発電デバイスの長さLを基準として、l/L=1.0、0.75、0.50、0.25の4種類である。
【0079】
これら4種類の発電デバイスをそれぞれ水槽で振動させ、発電量を測定した。その結果をグラフにしたものが図16(B)である。このグラフから、発電デバイスに使用するPVDF長は最低l/L=0.75以上必要であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
波浪、潮流、渦、砕波などの海洋エネルギーを利用する種々の発電システムで利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
100 発電装置
200 浮体部
210 浮体
220、330 配線ケーブル
300 垂下部
310 垂下蓮
311 支持体
320 連結ケーブル
400 蓄電装置
410 整流回路
420 蓄電媒体
500 発電デバイス
510 弾性板
520 圧電フィルム
531、532 配線
540 付加物
600 発電装置
610 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海に浮かぶ複数の浮体と、前記浮体同士を連結し変形することによって発電する板状の発電デバイスと、を有する浮体部、を備え、
海洋エネルギーを受けて前記発電デバイスに連結された前記浮体同士の相対的な高さの変化に追従して前記発電デバイスが変形し発電する、
ことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記発電デバイスは、海面下で前記浮体に連結されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記発電デバイスは、平面を鉛直方向に向けて前記浮体に連結されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記浮体は、内部に水を出し入れするための注排水手段を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項5】
海面下に設置される支持体と、前記支持体に一端が連結され、前記支持体の周囲を放射線状に取り囲む複数の板状の発電デバイスと、を有する垂下蓮、を備え、
前記発電デバイスに作用する海洋エネルギーを受けて変形し発電する、
ことを特徴とする発電装置。
【請求項6】
前記発電デバイスは、前記支持体に連結されていない側の端に、所定の重さの付加物が設置されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の発電装置。
【請求項7】
前記付加物の単位体積あたりの質量は、水の単位体積当たりの質量より軽い、
ことを特徴とする請求項6に記載の発電装置。
【請求項8】
前記垂下蓮は、鉛直方向に複数連結されており、
いずれかの前記垂下蓮の動きに連動して他の前記垂下蓮が動き、他の前記垂下蓮の前記発電デバイスが変形し発電する、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項9】
平面が鉛直方向を向く前記発電デバイスと、平面が水平方向を向く前記発電デバイスとが前記支持体に連結されている、
ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項10】
海に浮かぶ複数の浮体と、前記浮体同士を連結し変形することによって発電する板状の発電デバイスと、を有する浮体部と、
海面下に設置される支持体と、前記支持体に一端が連結され、前記支持体の周囲を放射線状に取り囲む複数の板状の発電デバイスと、を有する垂下蓮と、を備え、
前記浮体部と前記垂下蓮は、支持部材を介して接続されており、
前記浮体部の発電デバイスは、海洋エネルギーを受けて、前記浮体部の発電デバイスに連結された前記浮体同士の相対的な高さの変化に追従して変形し発電し、
前記垂下蓮の発電デバイスは、前記垂下蓮の発電デバイスに作用する海洋エネルギーを受けて変形し発電する、
ことを特徴とする発電装置。
【請求項11】
前記発電デバイスの出力電流の方向を一定方向にするための整流回路を備え、
整流された電流方向が一致するように、複数の前記発電デバイスが並列接続されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の発電装置。
【請求項12】
弾性板と、
該弾性板の表面に設置され、変形することによって電流を出力する圧電フィルムと、を備え、
前記圧電フィルムと前記弾性板の長手方向の長さの比が0.75以上1未満である、
ことを特徴とする発電デバイス。
【請求項13】
複数の前記圧電フィルムが前記弾性板を挟んで積層されている、
ことを特徴とする請求項12に記載の発電デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−237264(P2012−237264A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107680(P2011−107680)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、垂下式弾性浮体ユニット型海洋エネルギー発電技術の基礎研究の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【Fターム(参考)】