説明

発電装置及びそのような発電装置を備えた発電システム

【課題】光発電及び熱発電を行うことができる発電装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る発電装置の一形態は、p型半導体層11aとn型半導体層11bとが積層された複数のpn積層体11と、複数のpn積層体11同士を接続して、光発電モード又は熱発電モードに切り替えるモード切り替え部16と、を備える。モード切り替え部16は、複数のpn積層体11に対して、p型半導体層同11a士を並列に接続し且つn型半導体層11b同士を並列に接続することにより、光発電モードに切り替える。また、モード切り替え部16は、異なるpn積層体11に対して、p型半導体層11aとn型半導体層11bとを直列に接続することにより、熱発電モードに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置及びそのような発電装置を備えた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する太陽電池が利用されている。この光エネルギーとしては、主に太陽光が使用される。
【0003】
例えば、太陽電池は、p型半導体層とn型半導体層とが積層されて形成される。太陽電池は、太陽光等の光を受けて、pn接合部において電子−正孔対が発生することによって起電力が生じる。
【0004】
太陽電池の形成材料としては、無機物系及び有機物系がある。無機物系の太陽電池では、無機物半導体材料として主にSiが用いられる。p型又はn型の極性は、Siに不純物を添加することによって制御される。
【0005】
また、有機物系の太陽電池では、有機半導体材料として、有機色素、導電性ポリマ等の有機化合物又はカーボンナノチューブ等が用いられる。そして、これらの材料は、例えば、ガラス等の電気絶縁性の基板上に配置されて太陽電池が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−78066号公報
【特許文献2】特開平9−15353号公報
【特許文献3】特開2007−81097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽光を利用する太陽電池は、太陽光を利用できない夜間には、発電することができない。また、日中であっても、雨や曇り等の天候によっては、太陽光が弱いために、十分に発電することができない場合もある。
【0008】
また、発電装置としては、簡易な構造であることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示する発電装置の一形態によれば、p型半導体層とn型半導体層とが積層された複数のpn積層体と、複数の上記pn積層体同士を接続して、光発電モード又は熱発電モードに切り替えるモード切り替え部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
上述した発電装置の一形態によれば、簡易な構造を有し、光エネルギーを電気エネルギーに変化させることができると共に、利用できる光エネルギーが十分でない場合であっても、発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本明細書に開示する発電システムの第1実施形態のシステム構成図である。
【図2】(A)は図1に示す発電装置のpn積層体の配置状態を示す平面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図3】(A)は図2のpn積層体の拡大平面図であり、(B)は(A)のX−X線断面図である。
【図4】図1の発電装置におけるpn積層体及びモード切り替え部を説明する図である。
【図5】(A)はpn体積層体の他の配置状態を示す平面図であり、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図6】本明細書に開示する発電システムの第2実施形態のpn積層体及びモード切り替え部を示す図である。
【図7】本明細書に開示する発電システムの第3実施形態のpn積層体を示す図である。
【図8】図7のpn積層体における端部電極の形成材料及びその熱伝導率を示す図である。
【図9】(A)は本明細書に開示する発電システムの第4実施形態のpn積層体の平面図であり、(B)は(A)のY−Y線断面図である。
【図10】本明細書に開示する発電システムの第5実施形態のpn積層体の断面図である。
【図11】本明細書に開示する発電システムの第6実施形態のpn積層体の平面図である。
【図12】図11のpn積層体のZ1−Z1線断面図である。
【図13】本明細書に開示する発電システムの第7実施形態のシステム構成図である。
【図14】本明細書に開示する発電システムの第8実施形態のシステム構成図である。
【図15】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第1実施形態の製造工程を示す図(その1)である。
【図16】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第1実施形態の製造工程を示す図(その2)である。
【図17】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第1実施形態の製造工程を示す図(その3)である。
【図18】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第1実施形態の製造工程を示す図(その4)である。
【図19】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第2実施形態の製造工程を示す図(その1)であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のZ2−Z2線拡大断面図である。
【図20】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第2実施形態の製造工程を示す図(その2)である。
【図21】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第2実施形態の製造工程を示す図(その3)である。
【図22】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第2実施形態の製造工程を示す図(その4)であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のZ3−Z3線拡大断面図である。
【図23】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第2実施形態の製造工程を示す図(その5)である。
【図24】本明細書に開示する発電装置の製造方法の第2実施形態の製造工程を示す図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本明細書で開示する発電システムの好ましい第1実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0013】
図1は、本明細書に開示する発電システムの第1実施形態を示す図である。図2は、図1に示す発電装置のpn積層体の配置状態を示す図である。図3(A)は図2のpn積層体の拡大平面図であり、図3(B)は図3(A)のX−X線断面図である。図4は、図1の発電装置におけるpn積層体及びモード切り替え部を説明する図である。
【0014】
発電システム1は、図1に示すように、発電装置10と、発電装置10を制御する制御装置30と、を有する。
【0015】
発電装置10は、p型半導体層11aとn型半導体層11bとが積層された複数のpn積層体11と、複数のpn積層体11同士を接続して、光発電モード又は熱発電モードに切り替えるモード切り替え部16と、を備えることができる。
【0016】
発電装置10は、光発電モードでは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光発電を行う。また、発電装置10は、熱発電モードでは、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電を行うことができる。
【0017】
発電装置10は、例えば、太陽光が利用できる昼間は、光発電モードで発電し、太陽光を利用できない夜間は、熱発電モードで発電を行ってもよい。
【0018】
制御装置30は、発電装置10を光発電モード又は熱発電モードに切り替える判断を行って、且つモード切り替え部16に対してモードの切り替えを実行させる切り替え判断部31を備えることができる。また、制御装置30は、切り替え判断部31がモード切り替えの判断を行うタイミングを与えるタイマー部32と、切り替え判断部31が光発電モード又は熱発電モードに切り替える判断を行うための情報が記憶された記憶部33と、を備えることができる。
【0019】
記憶部33には、発電システム1が設置される場所の緯度又は高度等の情報と、過去の統計に基づいた日照確率と、光発電による発電量が熱発電による発電量よりも多くなると予想される日時を記憶することができる。
【0020】
切り替え判断部31は、タイマー部32によって与えられたタイミングで、記憶部33に記憶された情報を元にして、発電装置10を光発電モード又は熱発電モードに切り替える判断を行う。
【0021】
制御装置30は、例えば、パーソナルコンピュータを用いて形成できる。また、記憶部33としては、ROM又はフラッシュメモリ等の半導体記憶装置、磁気記憶装置等を用いて形成できる。
【0022】
発電装置10において光発電モードで発電された電力は、図1に示すように、+Vsol及びーVsolから、整流器70を介してパワーコンディショナ50に出力される。太陽発電モードで発電された電力は、光強度の変化に伴って変動するので、出力された電力は、パワーコンディショナ50によって、出力電圧+Voutが一定に調整されて、負荷に出力される。
【0023】
パワーコンディショナ50からの出力には、蓄電器60が並列に接続されているので、天候による光発電電力の変動が更に防止される。
【0024】
また、発電装置10において、熱発電モードで発電された電力は、+VTE及びーVTEから、同様に、整流器70を介してパワーコンディショナ50に出力された後、負荷に出力される。
【0025】
整流器70は、光発電モードで発電された電力が、+VTEに逆流することを防止する。また、整流器70は、熱発電モードで発電された電力が、+Vsolに逆流することを防止する。
【0026】
なお、蓄電池60は、発電装置10とパワーコンディショナ50との間に配置されても良い。
【0027】
以下、発電装置10に関して、更に説明を行う。
【0028】
図2に示すように、pn積層体11は、縦長の矩形形状を有する。pn積層体11を形成するp型半導体層11a及びn型半導体層11bは、それぞれも、縦長の矩形形状を有する。p型半導体層11aとn型半導体層11bとは、それぞれの長手方向を一致させて積層されている。
【0029】
pn積層体11は、下側の半導体層と同じ形状を有する電気絶縁性の基板12を有する。pn積層体11では、基板12上に、p型半導体11a及びn型半導体層11bが積層されている。
【0030】
発電装置10では、複数のpn積層体11は、幅方向に間隔をあけて、一列に並んで配置される。ここで、幅方向とは、pn積層体11の長手方向と直交する方向である。
【0031】
図2に示すように、隣接するpn積層体11におけるp型半導体層11aとn型半導体層11bとの積層の順番は異なっていてもよい。
【0032】
図2(B)の左側のpn積層体11では、基板12側に配置されたn型半導体層11bは、その上に積層されたp型半導体層11aよりも寸法が大きい方が好ましい。また、図2(A)の中央のpn積層体11では、基板12側に配置されたp型半導体層11aは、その上に積層されたn型半導体層11bよりも寸法が大きい方が好ましい。
【0033】
光発電モードでは、pn積層体11は、p型半導体層11aとn型半導体層11bとのpn接合部分において光エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0034】
また、熱発電モードでは、pn積層体11は、p型半導体層11a又はn型半導体層11bの長手方向の両端部に温度差を設け、長手方向に起電力を発生させて、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0035】
なお、図2(A)及び(B)では、説明を簡単にするため、3つのpn積層体11が一列に配置された状態が示されているが、更に多くの数のpn積層体11が、一列に配置されていても良い。また、発電装置10では、複数のpn積層体11が、2次元のアレイ状に配置されていても良い。
【0036】
次に、図3(A)及び(B)を参照して、更にpn積層体11の構造を以下に説明する。図3(A)及び(B)に示すpn積層体11は、p型半導体層11aがn型半導体層11bの上に積層されているが、後述する説明は、n型半導体層11bがp型半導体層11aの上に積層されたpn積層体に対しても適宜適用される。
【0037】
pn積層体11は、上述したp型半導体11a、n型半導体11b及び基板12以外にも、p型半導体層11aの上方の全面に形成された上部電極13としての全面電極を有する。上部電極13は、太陽光に対して透明である。pn積層体11は、上部電極13側を太陽に向けて配置される。
【0038】
また、pn積層体11は、n型半導体層11bの下方に離隔して形成された下部電極14としてのくし歯型電極を有する。複数の下部電極14が、n型半導体層11bの長手方向に対して間隔をあけて配置されている。
【0039】
更に、pn積層体11では、n型半導体層11bの長手方向の両端部には、他のpn積層体の半導体層と接続されるか又は熱発電した電力を取り出すための端部電極15a、15bが形成されている。端部電極15a、15bは、p型半導体層11aが積層されていない部分のn型半導体層11bの上に配置されている。
【0040】
更にまた、基板12には、基板12内における熱の伝導を防止するための複数のスリット12aが形成されている。図3(B)に示すように、複数のスリット12aの間隔は、pn積層体11の長手方向における一方の端部11dに近づくと共に、漸増している。即ち、pn積層体11の長手方向における他方の端部11cに近づくと共に、漸減している。
【0041】
pn積層体11を熱電素子として用いる場合には、pn積層体11の長手方向の両端部に温度差を設ける。例えば、端部電極15a側を低温領域として、端部電極15b側を高温領域とする。この場合、端部電極15a、15bが接続されたn型半導体層11bの長手方向の両端部における温度差が大きい程、n型半導体層11b内の起電力が大きくなる。
【0042】
そこで、pn積層体11では、その長手方向と直交する方向に複数のスリット12aを設けてある。このスリット12aを設けることによって、例えば、端部電極15b側を高温領域とした場合には、端部電極15b側からの熱エネルギーが、基板12を伝わって、低温領域である端部電極15a側へ伝導することが防止される。
【0043】
p型半導体層11a及びn型半導体層11bの形成材料としては、SiまたはGeを主成分として含む無機半導体材料を用いることができる。
【0044】
p型半導体層11a及びn型半導体層11bとしては、製造コストを低減する観点から、基板12上に形成されたPoly−Siの薄膜を用いることが好ましい。
【0045】
また、基板12として、p型のSi基板を用いれば、基板12をp型半導体層として用いることができる。同様に、基板12として、n型のSi基板を用いれば、基板12をn型半導体層として用いることができる。特に、単結晶又は多結晶のSi基板を基板12として用いることにより、光発電の性能を向上させることができる。
【0046】
p型半導体層11aに添加するp型ドーパントとしては、例えば、B、Al、Ga、又はInを用いることができる。また、n型半導体層11bに添加するn型ドーパントとしては、例えば、P、As、又はSbを用いることができる。
【0047】
上部電極13の形成材料としては、例えばITO、ZnO、又はTiO2を用いることができる。
【0048】
基板12の形成材料としては、例えば、ガラス、アルミナ又は石英等を用いることができる。
【0049】
次に、発電装置10のモード切り替え部16を、図4を参照して、更に以下に説明する。図4には、3つのpn積層体11が幅方向に間隔をあけて配置されており、モード切り替え部16によって、複数のpn積層体11同士の接続を変更して、発電装置10が光発電モード又は熱発電モードに切り替えられる。
【0050】
モード切り替え部16は、複数のpn積層体11に対して、p型半導体層11a同士を並列に接続し、且つn型半導体層11b同士を並列に接続することにより、光発電モードに切り替える。
【0051】
具体的には、モード切り替え部16は、図4に示すように、p型半導体層11a同士を、並列に接続する第1スイッチング素子17a、17bと、n型半導体層11b同士を並列に接続する第2スイッチング素子18a、18bと、を有する。
【0052】
第1スイッチング素子17aは、図4左側のp型半導体層11aと、図4中央のp型半導体層11aとを、上部電極13及び下部電極14を介して接続する。また、第1スイッチング素子17bは、図4中央のp型半導体層11aと、図4右側のp型半導体層11aとを、上部電極13を介して接続する。
【0053】
第2スイッチング素子18aは、図4左側のn型半導体層11bと、図4中央のn型半導体層11bとを、上部電極13を介して接続する。また、第1スイッチング素子18bは、図4中央のn型半導体層11bと、図4右側のn型半導体層11bとを、上部電極13及び下部電極14を介して接続する。
【0054】
第1スイッチング素子17a、17bと第2スイッチング素子18a、18bとは、光発電モードへ切り替えるための共通のPVモード切り替え信号線16aに接続される。第1スイッチング素子17a、17b及び第2スイッチング素子18a、18bは、PVモード切り替え信号線16aからの信号を入力すると導通状態になる。PVモード切り替え信号線16aは、モード切り替え部16に接続する。
【0055】
また、モード切り替え部16は、異なるpn積層体11に対して、p型半導体層11aとn型半導体層11bとを直列に接続することにより、熱発電モードに切り替える。
【0056】
具体的には、モード切り替え部16は、異なるpn積層体11に対して、p型半導体層11aとn型半導体層11bとを、端部電極15a、15bを介して接続する第3スイッチング素子19a、19bを有する。
【0057】
第3スイッチング素子19aは、図4左側のn型半導体層11bを、端部電極15aを介して、図4中央のp型半導体層11aと接続する。また、第3スイッチング素子19bは、図4中央のp型半導体層11aを、端部電極15bを介して、図4右側のn型半導体層11bと接続する。
【0058】
第3スイッチング素子19a、19bは、発電装置10を熱発電モードへ切り替えるためのTEモード切り替え信号線16bに接続する。第3スイッチング素子19a、19bは、TEモード切り替え信号線16bからの信号を入力すると導通状態になる。TEモード切り替え信号線16bは、モード切り替え部16に接続する。
【0059】
各pn積層体11には、複数の下部電極14同士を接続する第5スイッチング素子21が配置される。図4に示すように、各pn積層体11では、複数の第5スイッチング素子21が並列に接続されており、第5スイッチング素子の導通によって、複数の下部電極14が、並列に接続される。
【0060】
第5スイッチング素子21は、発電装置10を光発電モードへ切り替えるためのPVモード切り替え信号線16aに接続する。第5スイッチング素子21は、PVモード切り替え信号線16aからの信号を入力すると導通状態になる。
【0061】
本実施形態では、第1スイッチング素子17a、17b、第2スイッチング素子18a、18b、第3スイッチング素子19a、19b及び、第5スイッチング素子21は、ノーマリーオフのトランジスタである。ノーマリーオフとは、PVモード切り替え信号線16a又はTEモード切り替え信号線16bからの信号が入力されない場合には、トランジスタが非導通状態にあり、信号が入力されると導通状態になる意味である。また、各スイッチング素子としては、継電器又は機械的なスイッチを用いても良い。
【0062】
次に、発電装置10が光発電モードで発電する動作について、以下に説明する。
【0063】
まず、光発電モードでは、モード切り替え部16が、PVモード切り替え信号線16aに信号を出力することによって、第1スイッチング素子17a、17b、第2スイッチング素子18a、18b、及び第5スイッチング素子21が導通状態になる。一方、TEモード切り替え信号線16bには信号が出力されていないので、第3スイッチング素子19a、19bは非導通状態にある。
【0064】
第1スイッチング素子17a、17bが導通状態になることによって、複数のpn積層体11において、p型半導体層11a同士が並列に接続される。また、第2スイッチング素子18a、18bが導通状態になることによって、複数のpn積層体11に対して、n型半導体層11b同士が並列に接続される。
【0065】
また、第5スイッチング素子21が導通状態になることによって、各pn積層体11における複数の下部電極14同士が並列に接続される。
【0066】
そして、太陽光等の光を各pn積層体11の上面に照射することによって、各pn積層体11は、光エネルギーを電気エネルギーに変化して発電する。このように発生した電力は、出力端子+Vsol及びーVsolからとり出される。
【0067】
次に、発電装置10が熱発電モードで発電する動作について、以下に説明する。
【0068】
まず、熱発電モードでは、モード切り替え部16が、TEモード切り替え信号線16bに信号を出力することによって、第3スイッチング素子19a、19bが導通状態になる。一方、PVモード切り替え信号線16aには信号が出力されないので、第1スイッチング素子17a、17b、第2スイッチング素子18a、18b、及び第5スイッチング素子21は非導通状態にある。
【0069】
第3スイッチング素子19a、19bが導通状態になることによって、異なるpn積層体11において、p型半導体層11aとn型半導体層11bとが直列に接続される。
【0070】
そして、各pn積層体11における電極端子15b側の長手方向の一方の端部11dを、高温領域Hとし、長手方向の他方の端部11cを低温領域Lとして、温度差を設ける。
【0071】
p型半導体層11a及びn型半導体層11bそれぞれの長手方向に温度勾配が生じると、ゼーベック効果により起電力が生じる。p型半導体層11aとn型半導体層11bとでは、温度勾配に対する起電力の向きが逆方向になる。発電装置10では、p型半導体層11aとn型半導体層11bとが直列に接続されているので、各半導体層における起電力の向きが一致して発電できる。このように発生した電力は、出力端子+VTE及びーVTEからとり出される。
【0072】
発電システム1は、発電装置10を用いて、例えば、昼間は太陽光を利用して光発電モードで発電を行い、太陽光を利用できない夜間には、地熱を利用して熱発電モードで発電を行うことができる。
【0073】
夜間では、地面の温度は、大気の温度よりも高くなる場合が多い。例えば、pn積層体11を地面の上に水平に配置すると、基板12にスリット12aが形成されていない端部電極15b側の温度は、地面の温度に近づいて高い温度になる。一方、基板12に複数のスリット12aが形成されている端部電極15a側は、スリット12aの断熱作用によって、地熱が伝導しにくいので、相対的に、大気の温度に近い低い温度になる。このようにして、pn積層体11の長手方向に温度勾配を形成して、熱発電を行うことができる。
【0074】
このようにして、発電システム1は、天候に関わらず1日中、発電を行うことができる。
【0075】
上述した本実施形態の発電システム1によれば、熱発電モードでは、光エネルギーを電気エネルギーに変化させることができる。また、利用できる光エネルギーが十分でない場合には、熱発電モードで熱発電を行うことができる。
【0076】
また、発電システム1は、光発電素子及び熱発電素子として同じ半導体層を使用し、pn積層体におけるp型半導体層11a及びn型半導体層11bの電気的接続を変えることによって、発電モードを切り替えるので、簡易な構造を有する。
【0077】
更に、制御装置30によって、光発電モード又は熱発電モードを選択して、発電量の高いモードを選択することによって、効率的な発電が行える。
【0078】
次に、上述した実施形態の変形例を、図5を参照して、以下に説明する。
【0079】
発電装置10は、図5(A)及び(B)に示すように、隣接するpn積層体11におけるp型半導体層11aとn型半導体層11bとの積層の順番が同じであっても良い。図5(A)及び(B)に示す例では、3つのpn積層体11が幅方向に一列に配置されており、各pn積層体11では、p型半導体層11aがn型半導体層11bの上に積層されている。
【0080】
モード切り替え部16は、光発電モードでは、複数のpn積層体11に対して、p型半導体層11a同士を並列に接続し、且つn型半導体層11b同士を並列に接続する。この点に関しては、配線の接続方法が異なる以外は、上述した実施形態と同様である。
【0081】
また、モード切り替え部16は、熱発電モードは、異なるpn積層体11に対して、p型半導体層11aとn型半導体層11bとを直列に接続する。この点に関しても、配線の接続方法が異なる以外は、上述した実施形態と同様である。
【0082】
この変形例では、全てのpn積層体11の構造が同じであるので、pn積層体の製造が簡易となる。
【0083】
次に、本明細書に開示する第2〜第7実施形態の発電システムを、図面を参照しながら以下に説明する。第2〜第7実施形態について特に説明しない点については、上述の第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図6〜図14において、図1〜図4と同じ構成要素に同じ符号を付してある。
【0084】
以下、本明細書に開示する第2実施形態の発電システムを、図6を参照して、説明する。図6は、本明細書に開示する発電システムの第2実施形態のpn積層体及びモード切り替え部を示す図である。
【0085】
本実施形態の発電システムでは、モード切り替え部16が第3スイッチング素子19としてノーマリーオンのタイプを有している点が、上述した第1実施形態に対して異なっている。
【0086】
モード切り替え部16は、ノーマリーオフである第1スイッチング素子17a、17b及び第2スイッチング素子18a、18bと、ノーマリーオンである第3スイッチング素子19a、19bと、を有する。
【0087】
第1スイッチング素子17a、17bと第2スイッチング素子18a、18bと第3スイッチング素子19a、19bとは、共通の1本のモード切り替え制御信号線16cに接続される。モード切り替え制御信号線16cは、モード切り替え部16に接続する。
【0088】
ノーマリーオンとは、モード切り替え制御信号線16cからの信号が入力されない場合には、トランジスタが導通状態にあり、信号が入力されると非導通状態になる意味である。
【0089】
次に、本実施形態の発電装置10が光発電モードで発電する動作について、以下に説明する。
【0090】
まず、光発電モードでは、モード切り替え部16が、モード切り替え信号線16cに信号を出力することによって、第1スイッチング素子17a、17b、第2スイッチング素子18a、18b、及び第5スイッチング素子21が導通状態になる。一方、第3スイッチング素子19a、19bは非導通状態となる。
【0091】
そして、太陽光等の光を各pn積層体11の上面に照射することによって、各pn積層体11は、光エネルギーを電気エネルギーに変化して発電する。このように発生した電力は、出力端子+Vsol及びーVsolからとり出される。
【0092】
次に、発電装置10が熱発電モードで発電する動作について、以下に説明する。
【0093】
まず、熱発電モードでは、モード切り替え部16が、モード切り替え信号線16cへの信号の出力を停止することによって、第3スイッチング素子19a、19bが導通状態になる。一方、第1スイッチング素子17a、17b、第2スイッチング素子18a、18b、及び第5スイッチング素子21は、非導通状態になる。
【0094】
そして、各pn積層体11における電極端子15b側の長手方向の一方の端部11dを、高温領域Hとし、長手方向の他方の端部11cを低温領域Lとして、温度差を設ける。このように発生した電力は、出力端子+VTE及びーVTEからとり出される。
【0095】
上述した本実施形態の発電システム1によれば、モード切り替え部16における配線の数を低減することができる。
【0096】
次に、本明細書に開示する第3実施形態の発電システムを、図7を参照して、以下に説明する。図7は、本明細書に開示する発電システムの第3実施形態のpn積層体を示す図である。
【0097】
本実施形態では、n型半導体層11bの長手方向における温度差を増大させて、熱発電モードにおける発電量を増大させる工夫がなされている。
【0098】
具体的には、n型半導体層11bの両端部に配置された端部電極15a、15b及び基板12に形成されたスリット12aが、上述した第1実施形態とは異なっている。
【0099】
図7に示すように、n型半導体層11bの長手方向の一方の端部11dに配置される端部電極15bは、他方の端部11cに配置される端部電極15aよりも寸法が大きい。具体的には、一方の端部電極15bの平面積は、他方の端部電極15aよりも大きく形成されている。
【0100】
寸法が大きい一方の端部電極15bは、寸法の小さい他方の端部電極15aよりも熱伝導が大きいので、n型半導体層11bの長手方向の両端部における温度差を大きくすることができる。例えば、基板12の長手方向にわたる温度が均一であっても、n型半導体層11bの長手方向には温度勾配を発生させることができる。
【0101】
また、一方の端部電極15bは、n型半導体層11bと基板12との間に配置されている。端部電極15a、15bの形成材料としては、電気導電率の良いもの、例えば、Ag、Cu等の金属を用いることが好ましい。そして、電気導電率のよい材料は、熱伝導率も優れている。
【0102】
そこで、熱伝導率の優れた端部電極15aを、n型半導体層11bと基板12との間に配置することによって、地面等の熱源から基板12が受け取った熱エネルギーをn型半導体層11bの端部に効率よく伝えることができる。
【0103】
一方、他方の端部電極15bは、n型半導体層11bの表面に配置されているので、一方の端部電極15aのような働きは有していない。
【0104】
このようにして、n型半導体層11bの長手方向の両端部における温度差を更に大きくすることができる。
【0105】
上述した観点から、一方の端部電極15bの形成材料としては、n型半導体層11bの端部の温度を高くするために、熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。一方、他方の端部電極15aの形成材料としては、n型半導体層11bの温度を相対的に低くするために、熱伝導率の低い材料を用いることが好ましい。
【0106】
図8に、端部電極の材料として用いることのできる材料及びその熱伝導率を示す。一方の端部電極15bの形成材料としては、例えば、Ag又はCu等を用いることができる。また、他方の端部電極15bの形成材料としては、例えば、In又はSn等を用いることができる。
【0107】
また、本実施形態では、基板12に形成されている複数のスリット12aの幅は、pn積層体11の長手方向の他方の端部11cに近づくと共に、漸増している。即ち、スリット12aの幅は、pn積層体11の長手方向の一方の端部11dに近づくと共に、漸減している。
【0108】
このようなスリット12aを用いることによって、基板12の長手方向における温度勾配を増加させることができる。上述した第1実施形態でも、基板12の温度勾配を増加させるために、同じ幅を有するスリットの間隔を変化させて配置していたが、そのためにはより多くの数のスリットを基板12に形成する必要があった。一方、本実施形態では、幅の異なるスリットを用いるので、基板12に形成するスリットの数を減らしつつ、同じ効果が得られるため、製造コストを低減できる。
【0109】
上述した熱発電では、夜間に地熱を熱源として発電する場合を例として説明を行った。一方、発電装置10は、太陽光を熱源として、昼間に熱発電を行うことも可能である。このように、昼間に熱発電を行う観点からは、一方の端部電極15bの形成材料としては、n型半導体層11bの端部の温度を高くするために、光反射率の低い材料を用いて、太陽光を吸収させることが好ましい。一方、他方の端部電極15aの形成材料としては、n型半導体層11bの端部の温度を相対的に低くするために、光反射率の高い材料を用いて、太陽光を反射させることが好ましい。光反射率の低い材料としては、例えば、CuやInを用いることができる。また、光反射率の高い材料としては、例えば、AgやAlを用いることができる。
【0110】
上述した本実施形態のpn積層体11によれば、端部電極に対して、寸法、配置位置、熱伝導率、又は光反射率を適宜選択することによって、n型半導体層11bの長手方向における温度勾配を増加させて、熱発電量を向上させることができる。
【0111】
また、上述した説明は、端部電極がp型半導体層11aの長手方向の両端部に配置されたpn積層体に対しても適宜適用される。
【0112】
次に、本明細書に開示する第4実施形態の発電システムを、図9を参照して、以下に説明する。図9(A)は本明細書に開示する発電システムの第4実施形態のpn積層体の平面図であり、図9(B)は図9(A)のY−Y線断面図である。
【0113】
本実施形態の発電システムでは、上部電極13が、全面電極ではなく、くし歯形電極である点が、上述した第1実施形態とは異なっている。複数の上部電極13が、p型半導体層11aの上に、p型半導体層11aの長手方向に対して間隔をあけて配置されている。
【0114】
本実施形態では、上部電極13が、pn積層体11の長手方向に対して、下部電極14と同じ位置に配置されている。
【0115】
ただし、p型半導体層11aの長手方向の両端部には、端部電極15a、15bが配置されている。熱発電モードでは、p型半導体層11aの端部電極15a、15bが、隣接するpn積層体11のn型半導体層11bの端部電極と接続される。
【0116】
光発電モードでは、励起された少数キャリアが電極との界面で再結合することを抑制する観点から、電極と半導体層との接触面積は小さいことが好ましい。本実施形態では、この観点から、上部電極13として、くし歯形電極を用いている。
【0117】
また、このように光が入射する側にくし歯形電極を用いる場合には、電極の幅を狭めると共に、電極同士の間の間隔を広げて、半導体層への光の入射を妨げないことが好ましい。
【0118】
上述した本実施形態の発電システムによれば、上部電極13としてくし歯形電極を用いているので、少数キャリアの再結合が抑制できるので、光発電モードの発電効率を向上させることができる。
【0119】
次に、本明細書に開示する第5実施形態の発電システムを、図10を参照して、以下に説明する。図10は、本明細書に開示する発電システムの第5実施形態のpn積層体の断面図である。
【0120】
基板12は、p型半導体層11a及びn型半導体層11bが配置されている面が、地面に対して水平な底面12bに対して角度αの傾きを有している。
【0121】
この角度αは、太陽光がp型半導体層11aに効率よく入射するように、発電装置10を有する発電システム1が設置される緯度及び高度に基づいて決定されることが好ましい。角度αは、例えば、春分又は秋分の日の正午の時点に、半導体層が、太陽からの光を垂直に受ける角度として決定することができる。
【0122】
基板12の厚さは、図10に示すように、pn積層体11の長手方向の一方の端部11dに近づくと共に漸減しており、角度αを形成する。一方、基板12の厚さは、pn積層体11の長手方向の他方の端部11cに近づくと共に漸増している。
【0123】
また、pn積層体11の長手方向の一方の端部11dは、基板12の厚さが薄いので、n型半導体層11bに地熱が伝わり易い。一方、pn積層体11の長手方向の他方の端部11cは、基板12が厚いので、n型半導体層11bには地熱が伝わり難い。
【0124】
基板12の形成材料としては、熱伝導性の低い材料を用いることが、n型半導体層11bの長手方向における温度差を大きくする上で好ましい。基板12の形成材料としては、例えば、ガラス又はプラスチックを用いることができる。
【0125】
また、基板12の厚さが薄いpn積層体11の長手方向の一方の端部には、基板12の内部に蓄熱材25が配置されている。蓄熱材25は、昼間に太陽光を受けることにより蓄熱し、蓄熱した熱を夜間に放出して一方の端部11d側のn型半導体層11bの部分の温度を高める。こうして、夜間の熱発電モードにおいて、熱発電の効率を高めることができる。
【0126】
更に、pn積層体11の長手方向の一方の端部11dは、地中に打ち込まれた熱伝導性の杭26と、熱的に接続されており、地熱が、上記端部11dに伝導し易くなっている。杭26の形成材料としては、熱伝導性の良い材料を用いることが好ましい。杭26の形成材料として、例えば、銅を用いることができる。
【0127】
一方、基板12の厚さが厚いpn積層体11の長手方向の他方の端部は、複数のスリット12aが設けられており、n型半導体層11bへの地熱の伝導を防止している。
【0128】
また、本実施形態では、下部電極14の幅は、一方の端部11dに近づくと共に漸増しており、地熱が、基板12から、下部電極14を介して、n型半導体層11bにおける一方の端部11d側に伝導し易くなっている。
【0129】
一方、下部電極14の幅は、他方の端部11cに近づくと共に漸減しており、地熱が、基板12から、下部電極14を介して、n型半導体層11bにおける他方の端部11c側に伝導し難くなっている。
【0130】
本実施形態では、上部電極13がくし歯型電極によって形成されており、上部電極13の配置密度が、一方の端部11dに近づくと共に漸増している。即ち、上部電極13の配置密度が、他方の端部11cに近づくと共に漸減している。
【0131】
上述した本実施形態の発電システムによれば、光発電及び熱発電の効率が高められている。
【0132】
次に、本明細書に開示する第6実施形態の発電システムを、図11及び図12を参照して、以下に説明する。図11は、本明細書に開示する発電システムの第6実施形態のpn積層体の平面図である。図12は、図11のpn積層体のZ1−Z1線断面図である。
【0133】
本実施形態のpn積層体11は、太陽光に対して透明な基板12を有している。図12に示すように、太陽光を、pn積層体11に対して、基板12側から照射する。
【0134】
基板12の上には、複数のp型半導体層11aが配置される。各p型半導体層11aの上には、n型半導体層11bが配置される。
【0135】
基板12とp型半導体層11aとの間には、下部電極14としてのくし歯型電極が配置される。また、n型半導体層11bの上には、上部電極13として全面電極が配置される。
【0136】
図11及び図12に示すように、端部電極15a、15bは、p型半導体層11aの長手方向の両端部において、p型半導体層11aと基板12との間に配置される。
【0137】
図12に示すように、端部電極15aは、隣接するpn積層体11の端部電極15bに向かって延びている。同様に、端部電極15bは、隣接するpn積層体11の端部電極15aに向かって延びている。
【0138】
本実施形態では、モード切り替え部16は、対向する端部電極15aと端部電極15bとの間を接続する第4スイッチング素子20を有する。第4スイッチング素子20には、TEモード信号線16bが接続されており、TEモード切り替え信号線16bからの信号を入力すると導通状態になる。TEモード切り替え信号線16bは、モード切り替え部16に接続する。
【0139】
熱発電モードにおいて、モード切り替え部16は、複数のpn積層体11に対して、p型半導体層11a同士を直列に接続する。そして、各pn積層体11の長手方向の一方の端部11dを、高温領域Hとし、長手方向の他方の端部11cを低温領域Lとして、温度差を設ける。このようにして、p型半導体層11aのみを用いて熱発電を行うことができる。そして、発生した電力は、出力端子+VTE及びーVTEからとり出される。
【0140】
光発電モードでは、第1実施形態と同様に、モード切り替え部16が、PVモード信号線16aに信号を送ることによって、第1スイッチング素子17a、17b、第2スイッチング素子18a、18b及び第5スイッチング素子21を導通状態にする。そして、p型半導体層11a及びn型半導体層11bそれぞれが並列に接続される。
【0141】
p型半導体層11a又はn型半導体層11bの形成材料としては、有機半導体材料を用いることが好ましい。有機半導体材料としては、有機色素、導電性ポリマ等の有機化合物又はカーボンナノチューブ等を用いることができる。
【0142】
具体的には、p型半導体層11aの形成材料としては、例えば、フラーレン誘導体を用いることができる。また、n型半導体層11bの形成材料としては、例えば、3−hexylthiophene(P3HT)を用いることができる。
【0143】
基板12の形成材料としては、太陽光を透過する電気絶縁性の材料を用いることが好ましい。例えば、基板12の形成材料としてガラスを用いることができる。
【0144】
また、基板12とp型半導体層11aとの間及びn型半導体層11bと上部電極13との間に、バッファ層を形成しても良い。このバッファ層の形成材料としては、例えば、TiO2、MoO3、PEDOT−PSS、又はBCP(bathocuproine)を用いることができる。
【0145】
上述した本実施形態によれば、透明な基板12から太陽光を入射するので、上部電極13及び半導体層が直接外気にさらされないため、pn積層体11の耐久性が向上する。
【0146】
なお、この第4スイッチング素子20が、複数のpn積層体11に対して、n型半導体層11b同士を直列に接続するようにして、モード切り替え部16が、熱発電モードに切り替えるようにしても良い。また、基板12としては、透明なフィルムを用いても良い。また、上部電極13を透明電極にして、光を上方から入射、あるいは上面と下面の両方から入射させる形にしても良い。
【0147】
次に、本明細書に開示する第7実施形態の発電システムを、図13を参照して、以下に説明する。図13は、本明細書に開示する発電システムの第7実施形態のシステム構成図である。
【0148】
本実施形態では、制御装置30は、切り替え判断部31と、光センサ34と、温度センサ35と、を有する。切り替え判断部31は、光センサ34及び温度センサ35の出力に基づいて、モード切り替え部16に対してモードの切り替えを実行させる。
【0149】
切り替え判断部31は、光センサ34及び温度センサ35の出力を入力して、光発電モードによる発電量と熱発電モードによる発電量の内、発電量の高いモードを選択する。そして、切り替え判断部31は、モード切り替え部16に対して選択されたモードへ切り替えを実行させる。
【0150】
上述した本実施形態によれば、太陽光の照射量又は温度等の現在の天候に基づいて、最適な発電モードを選択して、より効率の高い発電を行うことができる。
【0151】
また、上述した第7実施形態の変形例として、光センサとして、発電装置10のpn積層体11を用いても良い。この光センサとしてのpn積層体11の発電電圧が、所定の閾値以上である場合には光発電を行い、所定の閾値未満の場合には、熱発電を行っても良い。
【0152】
次に、本明細書に開示する第8実施形態の発電システムを、図14を参照して、以下に説明する。図14は、本明細書に開示する発電システムの第8実施形態のシステム構成図である。
【0153】
本実施形態の制御装置30は、切り替え判断部31と、タイマー部32と、光発電モードにおける発電電力及び熱発電モードにおける発電電力を測定する電力測定部36を有している。
【0154】
電力測定部36には、光発電モードにおける電力出力+Vsol及びーVsolが入力される。また、電力測定部36には、熱発電モードにおける電力出力+VTE及びーVTEが入力される。
【0155】
タイマー部32は、所定の間隔で、光発電モード及び熱発電モードそれぞれのモードに切り替えるように、切り替え判断部31に対して信号を出力する。この所定の間隔は、例えば、10分から30分の間とすることができる。
【0156】
切り替え判断部31は、タイマー部32からの信号を入力すると、光発電モード及び熱発電モードそれぞれのモードで所定の時間の間発電を行うように、モード切り替え部16を切り替える。
【0157】
発電装置10では、モード切り替え部16の切り替えによって、光発電モード及び熱発電モードそれぞれのモードで所定の時間の間発電を行う。
【0158】
電力測定部36は、光発電モードにおける発電電力及び熱発電モードにおける発電電力を測定して、測定した電力値を切り替え判断部31に出力する。
【0159】
それぞれの発電電力を入力した切り替え判断部31は、光発電モードにおける発電量と、熱発電モードにおける発電量とを比較して、発電量の多い方のモードに、モード切り替え部16を切り替える。
【0160】
上述した本実施形態によれば、太陽光の照射量又は温度等の現在の天候に基づいて、所定の間隔で、最適な発電モードを選択して効率良く発電することができる。
【0161】
次に、上述した発電システムの発電装置におけるpn積層体の好ましい製造方法の第1実施形態を、図15〜図18を参照して、以下に説明する。
【0162】
まず、図15(A)に示すように、p型のSi基板12上に、マスクパターン80が形成される。基板12は、単結晶基板でも良いし、多結晶基板であっても良い。p型のSi基板12が、p型半導体層を兼ねる。
【0163】
次に、図15(B)に示すように、基板12をアルカリ性溶液に浸漬して、異方性エッチングが行われる。その結果、マスクパターン80に覆われていない基板12の表面にテクスチャ構造81が形成される。このテクスチャ構造81を設けることによって、光発電モードにおいて、太陽光を効率良く吸収し、より多くの光励起を行うことができる。アルカリ性溶液としては、例えば、KOH又はNaOH溶液を用いることができる。
【0164】
次に、図15(C)に示すように、マスクパターン80の開口部分にP等の不純物を熱拡散させて、基板12の表面にn型半導体層11bが形成される。
【0165】
次に、図15(D)に示すように、n型半導体層11bの上に、反射防止層83が形成される。反射防止層83の形成方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタ法を用いることができる。反射防止層83の形成材料としては、例えばSiNを用いることができる。
【0166】
次に、図16(E)に示すように、マスクパターン80が除去される。
【0167】
次に、図16(F)に示すように、反射防止層83の上にマスク層84が形成される。
【0168】
次に、図16(G)に示すように、基板12におけるn型半導体層11bが形成される面とは反対側の面上に、絶縁層85が形成される。絶縁層85の形成方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタ法を用いることができる。絶縁層85の形成材料としては、例えばSiO2を用いることができる。
【0169】
次に、図16(H)に示すように、絶縁層85の上に、くし歯型の下部電極を形成するためのマスクパターン86が形成される。
【0170】
次に、図17(I)に示すように、マスクパターン86の開口部に露出した絶縁層85の部分がエッチングにより除去される。このエッチングとしては、フッ酸を用いたウエットエッチング又はドライエッチングを用いることができる。
【0171】
次に、図17(J)に示すように、マスクパターン86の開口部に露出した基板12の部分に、ボロン等を熱拡散して、p+領域である不純物拡散層87が形成される。
【0172】
次に、図17(K)に示すように、不純物拡散層87及びマスクパターン86の上に導体層88が形成される。導体層88の形成方法としては、スパッタ法又は蒸着法を用いることができる。導体層88の形成材料としては、例えばAl又はAu等の金属を用いることができる。
【0173】
次に、図17(L)に示すように、導体層88の一部を残すと共に、導体層88がマスクパターン86と共に除去される。導体層88の残された一部は、下部電極14を形成する。
【0174】
次に、図18(M)に示すように、マスク層84をパターニングして、マスクパターン89が形成される。マスクパターン89の開口部は、下部電極14の位置と一致している。
【0175】
次に、図18(N)に示すように、基板12の上に、導体層90が形成される。導体層90の形成方法としては、スパッタ法又は蒸着法を用いることができる。導体層90の形成材料としては、例えばAl又はAu等の金属を用いることができる。
【0176】
次に、図18(O)に示すように、リフトオフによって、導体層90の一部を残すと共に、導体層90がマスクパターン89と共に除去されて、上部電極13及び端部電極15a、15bが形成される。
【0177】
上述した製造方法の第1実施形態によって、pn積層体11が形成される。
【0178】
なお、基板12の上にn型半導体層11bを形成しても良い。この場合には、n型不純物としてP等が添加されたn型Si基板を用いる。また、n+領域として、P等のn型不純物を拡散して不純物拡散層が形成される。
【0179】
上述した本実施形態のpn積層体の製造方法は、従来の太陽電池の製造方法を適宜利用できるので、容易にpn積層体を製造することが可能である。
【0180】
次に、上述した発電システムの発電装置におけるpn積層体の好ましい製造方法の第2実施形態を、図19〜図24を参照して、以下に説明する。上述した第6実施形態のpn積層体は、例えば、本実施形態を用いて形成される。
【0181】
まず、図19(A)及び図19(B)に示すように、ガラス基板12上に、下部電極及び端部電極を形成するためのマスクパターン100が形成される。
【0182】
次に、図20に示すように、ガラス基板12上に、導電層101が形成される。導電層101の形成方法としては、例えば、スパッタ法を用いることができる。導電層101の形成材料としては、例えば、ITO又はZnOを用いることができる。
【0183】
次に、図21に示すように、リフトオフによって、導電層101の一部を残すと共に、導電層101がマスクパターン100と共に除去されて、下部電極14及び端部電極15a、15bが形成される。
【0184】
次に、図22(A)及び図22(B)に示すように、基板12上に、マスクパターン102が形成される。
【0185】
次に、基板12上に、p型半導体層をスピンコート等により塗布した後、マスクパターン102を除去して、図23に示すように、基板12上に、p型半導体層11aが形成される。p型半導体層11aの形成材料としては、ドナー型の導電性高分子、例えば3−hexylthiophene(P3HT)を用いることができる。また、下部電極14とp型半導体層11aとの間のキャリアの移動をスムーズにするため、バッファ層を設けても良い。このバッファ層として、例えばTiO2やMoO3、PEDOT−PSSを用いることができる。
【0186】
次に、図24に示すように、マスクパターン(図示せず)を用いて、p型半導体層11aの上に、n型半導体層11bが形成される。n型半導体層11bの形成方法としては、例えば、蒸着法を用いることができる。n型半導体層11bの形成材料としては、例えば、フラーレン誘導体であるPCBMを用いることができる。ここで用いたマスクパターンは、マスクパターン102と同じ寸法のものを用いることができる。
【0187】
次に、図12に示すように、n型半導体層11bの上に、上部電極13が形成される。上部電極13の形成材料としては、例えば、Al,Ag又はAuを用いることができる。上部電極13の形成方法としては、例えば、蒸着法を用いることができる。また、上部電極13とn型半導体層11bとの間のキャリアの移動をスムーズにするため、バッファ層を設けても良い。このバッファ層として、例えばBCP膜(bathocuproine)を用いることができる。
【0188】
本発明では、上述した各実施形態の発電システム及び発電装置は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0189】
ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、読者が、発明者によって寄与された発明及び概念を技術を深めて理解することを助けるための教育的な目的を意図する。ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、そのような具体的に述べられた例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、明細書のそのような例示の機構は、本発明の優越性及び劣等性を示すこととは関係しない。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、その様々な変更、置き換え又は修正が本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り行われ得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0190】
1 発電システム
10 発電装置
11 pn積層体
11a p型半導体層
11b n型半導体層
11c 他方の端部
11d 一方の端部
12 基板
12a スリット
12b 底面
13 上部電極(太陽電池用)
14 下部電極(太陽電池用)
15a、15b 端部電極(熱発電用)
16 モード切り替え部
16a PVモード切り替え信号線
16b TEモード切り替え信号線
16c モード切り替え信号線
17 第1スイッチング素子
18 第2スイッチング素子
19 第3スイッチング素子
20 第4スイッチング素子
21 第5スイッチング素子
22 PVモード切り替え信号線
23 TEモード切り替え信号線
24 モード切り替え信号線
25 蓄熱材
26 杭
30 制御装置
31 切り替え判断部
32 タイマー部
33 記憶部
34 光センサ
35 温度センサ
36 電圧測定部
50 パワーコンディショナ
60 蓄電器
70 整流器
80 マスクパターン
81 テクスチャ構造
83 反射防止層
84 マスク層
85 絶縁層
86 マスクパターン
87 不純物拡散層
88 導電体層
89 マスクパターン
90 導電体層
100 マスクパターン
101 導電体層
102 マスクパターン
H 高温領域
L 低温領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型半導体層とn型半導体層とが積層された複数のpn積層体と、
複数の前記pn積層体同士を接続して、光発電モード又は熱発電モードに切り替えるモード切り替え部と、
を備える発電装置。
【請求項2】
前記モード切り替え部は、複数の前記pn積層体に対して、前記p型半導体層同士を並列に接続し、且つ前記n型半導体層同士を並列に接続することにより、光発電モードに切り替える請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記モード切り替え部は、異なる前記pn積層体に対して、前記p型半導体層と前記n型半導体層とを直列に接続することにより、熱発電モードに切り替える請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記モード切り替え部は、複数の前記pn積層体に対して、複数の前記pn積層体に対して、前記p型半導体層同士を直列に接続するか、又は前記n型半導体層同士を直列に接続することにより、熱発電モードに切り替える請求項2に記載の発電装置。
【請求項5】
前記切り替え部は、前記p型半導体層同士を並列に接続する第1スイッチング素子と、前記n型半導体層同士を並列に接続する第2スイッチング素子と、異なる前記pn積層体に対して、前記p型半導体層と前記n型半導体層と直列に接続する第3スイッチング素子と、を有する請求項3に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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