説明

発電設備および発電設備の起動方法

【課題】外部の商用電力から電力を供給することができない場合であっても、好適に起動することができるバイナリ発電設備を提供する。
【解決手段】発電設備100は、膨張機、蒸発器30および凝縮器40を備え、非水系の機器(膨張機、作動媒体ポンプ、潤滑油ポンプ)から構成される媒体系統150と、水系のポンプ機器(冷却水ポンプ、温水ポンプ)から構成される水ポンプ系統170とが磁気カップリング160を介して直列に接続されている。水ポンプ系統170の回転軸174はポンプハウジング172の外部へ延設されて、外部回転力供給装置180に接続されている。起動時には、外部回転力供給装置180が回転軸174を回転させて、媒体系統150および水ポンプ系統170へ回転力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、回転駆動力を用いて発電機を駆動する発電設備に関する技術であって、特に、この発電設備を好適に起動することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策のため化石燃料の代替エネルギーとして再生可能エネルギーの導入が図られており、太陽光発電システム、風力発電システム、マイクロ水力発電システムが着目されている。さらに、蒸気タービンを回転させるほどの熱量を持たない低温の熱源(たとえば地熱)から低沸点の作動媒体の熱サイクルへ熱を移動し、この循環サイクル内で作動媒体を用いた発電を行うバイナリ発電システムも着目されている。
【0003】
特開平8−100610号公報(特許文献1)は、このようなバイナリ発電システムを開示する。このバイナリ発電システムは、蒸発器、スクリュータービン、油セパレータ、凝縮器および媒体ポンプを直列に接続して、閉じた作動媒体ループを構成させ、スクリュータービンに発電機を連結し、この発電機により発電を行うものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−100610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようなバイナリ発電システムにおいて電力を発電するためには、作動媒体ループの循環ポンプ(補機)などを先に駆動する必要がある。このような補機はモーターで駆動されるように構成され、この発電システムの起動時には、外部の商用電力をモーターへ供給して補機が駆動されることが多い。このように、補機を先に駆動して発電システムを暖機運転する。その後に発電システムが起動して自立した運転に必要な電力を発電し始めた暖機運転後は、その電力をポンプを駆動するモーターへ供給して、バイナリ発電システムが定常運転される。
【0006】
しかしながら、バイナリ発電システムの外部から供給できる商用電力が存在しない場合(停電時、離島)には、バイナリ発電システムを起動させることができない。このような問題をバイナリ発電システムは有している。
ところが、上述した特許文献1は、バイナリ発電システムにおける起動時間を短縮する技術を開示しているが、上述した問題については、記載も示唆もしていない。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、外部の商用電力から電力を供給することができない場合であっても、好適に起動することができる、発電設備および発電設備の起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る発電設備は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のある局面に係る発電設備は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、前記回転駆動力を用いて発電機を駆動する。この発電設備は、回転機械で構成される補機を備え、補機のハウジング外部へ延設された補機の延設回転軸および/または前記発電機のハウジング外部へ延設された発電機の延設回転軸を備える。前記発電設備の起動時に、機外から前記延設回転軸に対して回転力が付与可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記延設回転軸に対して付与された回転力は、磁気カップリングを介して、前記補機および/または前記発電機に付与可能に構成されていると良い。
さらに好ましくは、前記補機は、前記凝縮器に冷熱供給用として冷却媒体を流すための冷却媒体ポンプおよび前記蒸発器に熱源供給用として加熱媒体を流すための加熱媒体ポンプで構成されていると良い。
【0010】
さらに好ましくは、前記補機へ付与された回転力は、磁気カップリングを介して他の補機へ付与可能に構成されていると良い。
さらに好ましくは、前記回転力は、エンジンから供給されるように構成されていると良い。
さらに好ましくは、前記回転力は、自動車に搭載されたエンジンからの回転力を取り出すPTO軸から供給されるように構成されていると良い。
【0011】
さらに好ましくは、前記補機はモーター駆動可能に構成され、バッテリーから前記モーターへ電力を供給可能に構成されていると良い。
また、本発明の別の局面に係る発電設備の起動方法は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、前記回転駆動力を用いて発電機を駆動する発電設備の起動方法である。この発電設備は、回転機械で構成される補機を備え、補機のハウジング外部へ延設された補機の延設回転軸および/または前記発電機のハウジング外部へ延設された発電機の延設回転軸を備える。この起動方法は、前記発電設備の起動時に、機外から前記延設回転軸に対して回転力を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る発電設備および発電設備の起動方法を用いることにより、外部の商用電力から電力を供給することができない場合であっても、好適に起動することができる。特に、外部電力を必要としない点または低減できる点と、エネルギー効率を低下させない点で好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発電設備の概要を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る発電設備の概要を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る発電設備の概要を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る発電設備の概要を示す図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る発電設備の概要を示す図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る発電設備の概要を示す図である。
【図7】本発明の第7実施形態に係る発電設備の概要を示す図である。
【図8】本発明の第8実施形態に係る発電設備の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る発電設備を、図面に基づき詳しく説明する。なお、以下の説明では、異なる実施形態であっても同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る発電設備100を、図面に基づき説明する。
【0015】
[全体構成]
図1に示すように、第1実施形態に係る発電設備100は、膨張機(主要部は後述するスクリュロータ10)で発生した回転駆動力を用いて発電機20を駆動することにより発電を行うものである。このような膨張機を備えた発電設備100には、たとえば、蒸気機関、蒸気タービン、スターリングサイクルのような外燃機関、または、ガスタービンのような内燃機関を用いて発電を行うものが含まれるが、本実施形態においてはバイナリサイクルを用いて発電を行うバイナリ発電設備を例示して説明する。
【0016】
なお、以下においては、蒸発機の熱源として用いる加熱媒体を温水として、凝縮器の冷媒として用いる冷却媒体を水として説明する。このため、加熱媒体ポンプは温水ポンプと、冷却媒体ポンプは冷却水ポンプと記載する。しかしながら、加熱媒体および冷却媒体は、これらに限定されるものではない。加熱媒体は温水ではなく蒸気であっても構わないし、冷却媒体は水以外の冷媒であっても構わない。
【0017】
図1に示すように、発電設備100は、液体の作動媒体Tを蒸発させる蒸発器30と、この蒸発器30で蒸発した作動媒体Tの蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、膨張機で膨張させられた作動媒体Tの蒸気を液体に凝縮する凝縮器40と、この凝縮器40で凝縮させられた液体の作動媒体Tを循環させる作動媒体ポンプ(主要部は後述する作動媒体ポンプロータ110)とを、閉ループ状の循環配管50上に備えている。作動媒体ポンプは、作動媒体Tを蒸発器30へ向けて圧送する。
【0018】
上述した膨張機は、作動媒体Tの蒸気を膨張させることにより回転駆動する駆動部を有している。本実施形態における膨張機は、スクリュ膨張機であるため、駆動部としてスクリュロータ10を有している。このスクリュロータ10で発生した回転駆動力は発電機20へ伝えられ、発電機20で発電が行われる。
蒸発器30と凝縮器40とはいずれも熱交換器であり、蒸発器30はその1次側に温水を供給することで2次側の作動媒体Tを蒸発できるようになっている。また、凝縮器40は、その2次側に冷却水を供給することで1次側の作動媒体Tを凝縮できるようになっている。さらに、蒸発器30の1次側に温水を供給する温水ポンプ(主要部は後述する温水ポンプロータ140)、凝縮器40の2次側に冷却水を供給する冷却水ポンプ(主要部は後述する冷却水ポンプロータ130)などが補機として設けられている。補機としては、上述したポンプに加えて、膨張機のスクリュロータ10または/および発電機20の軸受部に供給される潤滑油を循環させる潤滑油ポンプ(主要部は後述する潤滑油ポンプロータ120)、制御基盤なども含まれる。
【0019】
上述した発電設備100で発電を行う際には、温水ポンプを用いて温水を蒸発器30の1次側に送る。蒸発器30の2次側に供給される液体の作動媒体Tは(水より)低沸点の有機媒体であるため、容易に蒸発して液体の作動媒体Tは蒸気に変化する。このようにして得られた作動媒体Tの蒸気は膨張機に送られ、膨張機内で膨張してスクリュロータ10(駆動部)を回転させる。
【0020】
このようにしてスクリュロータ10を回転させるのに用いられた作動媒体Tの蒸気は凝縮器40に送られる。凝縮器40の2次側には冷却水ポンプを用いて冷却水が供給されており、凝縮器40での熱交換により1次側の作動媒体Tの蒸気が凝縮されて液体に戻る。このようにして凝縮器40で液体になった作動媒体Tは作動媒体ポンプを用いて再び蒸発器30に送られ蒸発に用いられる。このような作動媒体Tが循環するサイクル(バイナリサイクル)においては、膨張機で作動媒体Tの蒸気が膨張する際に生じる、作動媒体Tの膨張前後の圧力差でスクリュロータ10が回転して回転駆動力が生じる。
【0021】
[動力伝達系統]
ところで、本実施形態に係る発電設備100には、上述したスクリュロータ10で発生した回転駆動力を伝達する1つの(分岐しない)動力伝達系統が設けられていて、この動力伝達系統で伝達された回転駆動力を用いて発電機20が駆動され、発電が行われる。一方、この1つの動力伝達系統上には発電機20だけでなく発電設備100に付帯して駆動する補機も発電機20に連なるように配備されている。つまり、回転駆動力は発電機20だけでなく補機にも伝達できるようになっている。本実施形態における動力伝達系統は、発電機20と、水以外を取り扱う非水系の機器から構成される媒体系統150と、磁気カップリング160と、水を取り扱う水系のポンプ機器から構成される水ポンプ系統170とが直列に接続されたものである。磁気カップリング160は、媒体系統150と水ポンプ系統170との間で、回転力を非接触で伝達する。
【0022】
本実施形態に係る発電設備100は、膨張機と補機との間に発電機20が備えられているもの、つまり膨張機で発生した回転駆動力を最初に発電機20の駆動すなわち発電に用い、残りの回転駆動力を補機の駆動に用いるものとして考えることができる。なお、発電設備100としては、膨張機と発電機20との間に補機が備えられているもの、つまり膨張機で発生した回転駆動力を最初に補機の駆動に用い、残りの回転駆動力を発電機20の駆動に用いるものとして考えることもできる。このように種々の動力伝達系統が考えられるため、動力伝達系統の配列順序が限定されて本発明が適用されるものではない。
【0023】
以下において、媒体系統150と、磁気カップリング160と、水ポンプ系統170とについて説明する。
本実施形態に係る発電設備100は、互いに多少混ざり合っても問題の少ない作動媒体Tおよび潤滑油(いずれも非水系の媒体)とを扱う作動媒体ポンプおよび潤滑油ポンプの両ポンプロータ110、120を、複数の部材で一体的に構成された1つのハウジング(膨張機を含むハウジング152)内に収容した媒体系統150と、互いに多少混ざり合っても問題の少ない水を循環媒体とする冷却水ポンプおよび温水ポンプの両ポンプロータ130,140を、複数の部材で一体的に構成された1つのポンプハウジング172内に収容した水ポンプ系統170とから構成される。
【0024】
[媒体系統]
媒体系統150のハウジング152の内部には、水平方向を向く回転軸154が設けられており、この回転軸154上に、膨張機のスクリュロータ10、発電機20、作動媒体ポンプロータ110、潤滑油ポンプロータ120が膨張機側から順番に並んで設けられている。そして、作動媒体ポンプロータ110と発電機20との間、および、作動媒体ポンプロータ110と潤滑油ポンプロータ120との間には、それらが収容されているハウジング152内において作動媒体Tおよび潤滑油の漏洩を抑制しつつ回転軸154を回転自在に支持する軸シール機構156が設けられている。なお、膨張機と発電機の間の隔壁や回転軸154を支持するその他の軸受など、本発明の説明に関係のない部分は図示を省略している。
【0025】
そして、回転軸154の端部(図1における媒体系統150の右端)には、発電機20で発電に用いられなかった回転駆動力(言い換えるとスクリュロータ10を回転駆動させて余った回転駆動力)ならびに作動媒体ポンプロータ110および潤滑油ポンプロータ120でポンプ回転に用いられなかった回転駆動力を、媒体系統150のハウジング152の外側に伝達する磁気カップリング160を構成する外筒体162が設けられている。なお、この磁気カップリング160は、後述するように、回転力を双方向に伝達できるので、後述する外部回転力供給装置180により回転軸174が回転されると、回転軸174から回転軸154へ回転駆動力が伝達される。
【0026】
これらのスクリュロータ10、発電機20、作動媒体ポンプロータ110、潤滑油ポンプロータ120および外筒体162は、いずれも回転軸154を介して一体に回転可能とされている。それゆえ、膨張する作動媒体Tの蒸気の作用でスクリュロータ10に回転駆動力が発生すると、回転軸154を介して伝達された回転駆動力が発電機20を回転させ、回転駆動力の残りが作動媒体ポンプロータ110および潤滑油ポンプロータ120を回転させ、さらにその回転駆動力の残りが回転軸154を介して外筒体162に伝達される。後ほど詳しく説明する磁気カップリング160により、外筒体162から内挿体164へ回転力が伝達されて、媒体系統150から水ポンプ系統170へ回転力が非接触で伝達される。
【0027】
[水ポンプ系統]
水ポンプ系統170のポンプハウジング172の内部には、水平方向を向く回転軸174が設けられており、この回転軸174上に、冷却水ポンプロータ130および温水ポンプロータ140が並んで設けられている。そして、冷却水ポンプロータ130と温水ポンプロータ140との間にも、それらが収容されているポンプハウジング172内において水(冷却水および温水)の漏洩を抑制しつつ回転軸174を回転自在に支持する軸シール機構176が設けられている。
【0028】
そして、回転軸174の端部(図1における水ポンプ系統170の左端)には、磁気カップリング160を構成する内挿体164が設けられている。
これらの冷却水ポンプロータ130、温水ポンプロータ140および内挿体164は、いずれも回転軸174を介して一体に回転可能とされている。それゆえ、膨張する作動媒体Tの蒸気の作用でスクリュロータ10に回転駆動力が発生すると、磁気カップリング160を介して伝達された回転軸154の回転駆動力が冷却水ポンプロータ130および温水ポンプロータ140を回転させる。
【0029】
そして、回転軸174の他端(図1における水ポンプ系統170の右端)は、ポンプハウジング172の外部へ軸シール機構176を介して延設されている。この回転軸174の他端は、外部回転力供給装置180に接続可能とされている。
外部回転力供給装置180は、回転軸174の延設軸に回転力を付与できる機器である。この外部回転力供給装置180の種類は限定されるものではなく、商用電力の供給を受けて回転エネルギーを発生したり、商用電力の供給を受けることなく回転エネルギーを発生したり、蓄えられた電力を使用して回転エネルギーを発生したり、内燃機関のように化石燃料などを使用して回転エネルギーを発生したりして、回転軸174の延設軸に回転力を付与できる機器であれば構わない。
【0030】
なお、回転軸174がポンプハウジング172の外部へ延設されているが、磁気カップリングではなく軸シール機構176を介して延設されている。これは、水ポンプ系統170において、万が一、循環媒体が漏洩しても、媒体系統150とは異なり循環媒体が水であるので、環境汚染などの大きな問題とならないためである。
[磁気カップリング]
次に、磁気カップリング160について説明する。この磁気カップリング160は、公知のものであって、磁力で回転トルクを伝える機械部品である。なお、この磁気カップリングは、隔壁を介して且つ双方向に回転駆動力(回転トルク)を伝達できるものとする。
【0031】
磁気カップリング160は、回転軸154に設けられた外筒体162と、回転軸174に設けられた内挿体164とで構成されている。回転軸154の潤滑油ポンプ側の端部は、媒体系統150のハウジング152(隔壁)の近傍にまで伸びていて、この端部に外筒体162が設けられている。また、回転軸174の冷却水ポンプ側の端部は、水ポンプ系統170のポンプハウジング172(隔壁)の近傍にまで伸びていて、この端部に内挿体164が設けられている。
【0032】
外筒体162は、水ポンプ系統170側を向いて開口する有底円筒状(コップ状)の部材であり、非磁性体から形成されている。外筒体162は、回転軸154の端部にその回転軸心と同軸状に連結されており、その内周面には周方向に沿って複数個の磁石(以降、外周側磁石という。)が設けられている。外筒体162に対応するハウジング152の部分は、内側に凹んでおり、当該凹部を覆うように有底円筒状の外筒体162が回転自在に嵌り込んでいる。
【0033】
内挿体164は、回転軸174の端部に設けられた円柱体であり、外筒体162と同じく非磁性体から形成されている。内挿体164は、外筒体162の内側において回転自在となるように設けられており、この内挿体164の外周面には磁石(以降、内周側磁石という。)が取り付けられている。内挿体164に対応するポンプハウジング172の部分は、外側に凸状とされ、当該凸部の内部に円柱体の内挿体164が入り込んでいる。この凸部(ポンプハウジング172に形成された凸部)は、凹部(ハウジング152に形成された凹部)に嵌り込むようになっていて、媒体系統150と水ポンプ系統170とは互いの内部が隔絶された状態で隣接配備される。
【0034】
言い換えれば、外筒体162と内挿体164との間であって、外周側磁石と内周側磁石との間には、ハウジング152を構成する隔壁と、ポンプハウジング172を構成する隔壁とが径方向で内外に並んで存在する。
このように、膨張機で発生した回転駆動力を伝達する1つの動力伝達系統上に、発電機20および補機を配備し、非水系の機器をハウジング152に、水系の機器をポンプハウジング172に、それぞれ収容した。ハウジング152およびポンプハウジング172を透過して磁気的な引力を誘起可能な磁気カップリング160によりこれらを接続すれば、非水系の機器(膨張機、発電機20、作動媒体ポンプ、潤滑油ポンプ)と水系の機器(冷却水ポンプ、温水ポンプ)とを気密的に隔離しつつ回転駆動力を双方向に伝達させることが可能となる。
【0035】
なお、磁気カップリング160により回転力が伝達される2つの回転軸である回転軸154および回転軸174は、一体的に構成された軸でも分割された軸を接続して構成されていても構わない。
[延設軸]
このような構成を備える本実施形態に係る発電設備100において、回転軸174の延設端部(内挿体164の反対側端部)は、ポンプハウジング172の外部へ延設されている。回転軸174の延設端部には外部回転力供給装置180が接続されている。このため、外部回転力供給装置180は、回転軸174を介して、冷却水ポンプロータ130および温水ポンプロータ140を回転させることができるとともに、磁気カップリング160および回転軸154を介して、スクリュロータ10、発電機20、作動媒体ポンプロータ110および潤滑油ポンプロータ120を回転させることができる。
【0036】
その逆に、膨張する作動媒体Tの蒸気の作用でスクリュロータ10に回転駆動力が発生すると、1つの動力伝達系統上に配備された媒体系統150から水ポンプ系統170へ回転力が伝達される。その結果、回転軸174の延設端部も回転することになる。
[起動方法]
この発電設備100の起動開始時においては、作動媒体Tが循環していないのでスクリュロータ10に回転駆動力が発生していないため、上述のように動力伝達系統が構成されていても、作動媒体ポンプ、潤滑油ポンプ、冷却水ポンプおよび温水ポンプは駆動されない。従来の技術では、このようなバイナリ発電設備においては、作動媒体ポンプ、潤滑油ポンプ、冷却水ポンプおよび温水ポンプなどの補機は、それぞれに設けられるモーターで駆動されるように構成され、発電設備の起動時(暖機運転が終了するまで)は、外部の商用電力を各モーターへそれぞれ供給して補機が駆動されるが、本実施形態に係る発電設備100の補機は、暖機運転が終了後は膨張機の駆動力で駆動可能に構成されている。
【0037】
この発電設備100は、以下のように起動される。
まず、各種の起動準備が完了すると、外部回転力供給装置180の回転力を用いて回転軸174を回転させる。すなわち、この発電設備100の外部から供給された電力を用いて補機のモーターを回転させてポンプロータを回転させるのではなく、外部回転力供給装置180の回転力を用いて回転軸174を回転させてポンプロータを回転させる。
【0038】
そして、外部回転力供給装置180の回転力により回転軸174が回転されると磁気カップリング160を介して回転軸154も回転する。これにより、回転軸174および回転軸154に設けられた各ポンプロータが回転されて、作動媒体ポンプ、潤滑油ポンプ、冷却水ポンプおよび温水ポンプが駆動されて、バイナリサイクルが始動する。
すなわち、外部回転力供給装置180の回転力により駆動された温水ポンプにより温水が蒸発器30の1次側に送られ、蒸発器30の2次側に供給される液体の作動媒体Tが蒸発して作動媒体Tは蒸気に変化する。この作動媒体Tの蒸気は、外部回転力供給装置180の回転力により駆動された作動媒体ポンプにより、膨張機と膨張機を迂回する図示しないバイパス路に適宜送られ、膨張機を暖気する。なお、このとき、この作動媒体Tの蒸気によりスクリュロータ10が回転されると、回転軸154上に設けられた発電機20、作動媒体ポンプロータ110および潤滑油ポンプロータ120、ならびに、回転軸174上に設けられた冷却水ポンプロータ130および温水ポンプロータ140に回転力が付与されることになる。
【0039】
膨張機を迂回した作動媒体Tの蒸気乃至はスクリュロータ10を回転させるのに用いられた作動媒体Tの蒸気は、外部回転力供給装置180の回転力により駆動された作動媒体ポンプにより、凝縮器40に送られる。凝縮器40の2次側には外部回転力供給装置180の回転力により駆動された冷却水ポンプにより冷却水が供給されており、凝縮器40での熱交換により1次側の作動媒体Tの蒸気が凝縮されて液体に戻る。凝縮器40で液体になった作動媒体Tは外部回転力供給装置180の回転力により駆動された作動媒体ポンプにより、再び蒸発器30に送られ蒸発に用いられる。なお、外部回転力供給装置180の回転力により駆動された潤滑油ポンプにより、膨張機のスクリュロータ10または/および発電機20の軸受部に潤滑油が供給される。
【0040】
このようにして、作動媒体Tが循環するバイナリサイクルにより、膨張機で作動媒体Tの蒸気が膨張する際に生じる、作動媒体Tの膨張前後の圧力差でスクリュロータ10が回転して回転駆動力が生じ、その回転駆動力により発電が行われる。
バイナリサイクルが定常的に運転され始めると、バイパス路が閉じられ発電機20により定常的に定格電力が発生する。たとえば、このタイミングで暖機運転が終了したと判断して、外部回転力供給装置180による回転力の付与を終了させる。このとき、外部回転力供給装置180においては、発電設備100におけるスクリュロータ10の回転を妨げないように、回転軸174が自由に回転できるように構成されている(後述の他の実施形態においても同様)。例えば、延設軸にクラッチ機構を設けて発電設備100との動力伝達を任意に遮断することができる。
【0041】
なお、暖気運転後においては、発電機20で発生した電力により、補機であるポンプのモーターを回転させて、ポンプを駆動させることも可能である。
このように、この発電設備100においては、膨張機から補機までを同じ回転軸で構成して(この場合の同じ回転軸には磁気カップリング160により接続された回転軸154と回転軸174とを含む)、発電設備100のハウジングの外部へ回転軸を延設している。これにより、発電設備100の起動時において、ハウジングの外部から、1本の延設された回転軸を、外部回転力供給装置180により回転させるだけで、膨張機および補機を一度に回転させることが可能となる。その結果、外部から電力を供給することなく、発電設備100を暖機運転することができる。
【0042】
[作用効果]
本実施形態に係る発電設備100によると、以下の作用効果を奏する。
第1に、1つのハウジング152内にスクリュロータ10、発電機20、作動媒体ポンプロータ110、潤滑油ポンプロータ120を一緒に収容することにより、(1)作動媒体Tおよび潤滑油を漏洩させることなく、(2)作動媒体Tおよび潤滑油が互いに多少混ざり合っても問題なく、発電設備100で発電を行うことができる。
【0043】
第2に、1つのポンプハウジング172内に作動媒体ポンプ、潤滑油ポンプを収容して両者の間に軸シール機構176を設け、媒体系統150と水ポンプ系統170とを磁気カップリング160で接続することにより、水系のポンプを作動媒体Tで駆動することができる。
第3に、軸シール機構176を介してポンプハウジング172の外部まで回転軸174を延設することにより、起動時に外部から回転力を付与することができるので、(1)水ポンプ系統170のポンプを駆動させることができ、(2)磁気カップリング160を介して、媒体系統150の機器を駆動することができ、外部から電力を供給することなく、発電設備を起動して暖機運転することができる。
【0044】
特に、外部回転力供給装置180からの回転力により発電設備100を起動して暖機運転することにより、発電設備100の暖気運転中に、外部から供給する電力が不要となる。すなわち、延設された回転軸174に、商用電力の供給を受けることなく回転エネルギーを発生する外部回転力供給装置180を接続することで、商用電力の停電時または商用電力が供給されていない離島においても発電設備100を簡単に起動することが可能となる。さらに、商用電力の供給を受けて回転エネルギーを発生する外部回転力供給装置180(1台のモーターを備える)を用いる場合であっても以下の点で有利である。従来の技術では、複数の補機がそれぞれモーターを備え、起動時において複数のモーターを介して複数の補機が回転駆動されていた。しかし、本実施形態に係る発電設備100においては、外部回転力供給装置180に備えられた1台のモーターで複数の補機を回転駆動することができるために、従来よりもエネルギー効率はよくなる。
【0045】
<第2実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態に係る発電設備200を示している。構成部品の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返さない。
本実施形態に係る発電設備200においては、第1実施形態に係る発電設備100と以下の点が異なる。発電設備100においては、媒体系統150のハウジング152に、膨張機および発電機20(以上、膨張系統)と、作動媒体ポンプおよび潤滑油ポンプ(以上、非水ポンプ系統)とを収容していた。発電設備200では、これらを2つの膨張系統250と非水ポンプ系統260とに分けた。膨張系統250の動力伝達系統は独立しており、他の装置から回転力を受けることもなく、他の装置へ回転力を与えることもない。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0046】
膨張系統250のハウジング252の内部には、水平方向を向く駆動軸254が設けられており、この駆動軸254上に、膨張機のスクリュロータ10および発電機20が設けられている。
非水ポンプ系統260のハウジング262の内部には、水平方向を向く回転軸264が設けられており、この回転軸264上に、作動媒体ポンプロータ110および潤滑油ポンプロータ120が設けられている。そして、作動媒体ポンプロータ110と潤滑油ポンプロータ120との間には、それらが収容されているハウジング262内において作動媒体Tおよび潤滑油の漏洩を抑制しつつ回転軸264を回転自在に支持する軸シール機構266が設けられている。
【0047】
本実施形態に係る発電設備200も、上述した発電設備100と同じように起動される。異なる点は、発電設備200では、外部回転力供給装置180によっては膨張機および発電機20が回転されない点である。
各種の起動準備が完了すると、外部回転力供給装置180の回転力を用いて回転軸174を回転させる。すなわち、この発電設備200の外部から供給された電力を用いて複数の補機それぞれのモーターを回転させて複数のポンプロータをそれぞれ回転させるのではなく、外部回転力供給装置180の回転力を用いて回転軸174を回転させて複数のポンプロータを一度に回転させる。
【0048】
そして、外部回転力供給装置180の回転力により回転軸174が回転されると磁気カップリング160を介して回転軸264も回転する。これにより、回転軸174および回転軸264に設けられた各ポンプロータが回転されて、作動媒体ポンプ、潤滑油ポンプ、冷却水ポンプおよび温水ポンプが駆動されて、バイナリサイクルが始動する。なお、本実施形態に係る外部回転力供給装置180としては、商用電力の供給を必要としないものが好適である。外部回転力供給装置180としてモーターを用いる場合は、起動時には、そのモーターを外部からの電力で駆動させ、発電機20により定常的に定格電力が発電し始めた際には、そのモーターを発電電力による駆動に切り替えるとよい。
【0049】
本実施形態に係る発電設備200によると、膨張機および発電機20を除く補機のポンプローターに接続された回転軸を延設して、ハウジングから外部へ出して外部回転力供給装置180に接続している。これにより、発電設備200の起動時において、ハウジングの外部から、1本の延設された回転軸を、外部回転力供給装置180により回転させるだけで、複数の補機を一度に回転させることが可能となる。その結果、外部から電力を供給することなく発電設備200を暖機運転することができる。このとき、膨張機および発電機20は回転されない。
【0050】
この場合において、発電機20の種類によるが、発電機20が誘導発電機や同期発電機の場合、補機だけで暖気運転し、その後に膨張機を回転させることで発電モードに入る。この点で、この発電設備200が好適である。
<第3実施形態>
図3は、本発明の第3実施形態に係る発電設備300を示している。構成部品の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返さない。
【0051】
本実施形態に係る発電設備300においては、第2実施形態に係る発電設備200と以下の点が異なる。発電設備200が備えていた非水ポンプ系統260および磁気カップリング160を発電設備300は備えず、発電設備300は水ポンプ系統170の代わりに水ポンプ系統370を備える。
このように発電設備300においては、非水ポンプ系統260を備えない代わりに、作動媒体ポンプ310(作動媒体ポンプロータを内蔵)およびそれを駆動するモーター312、ならびに、潤滑油ポンプ320(潤滑油ポンプロータを内蔵)およびそれを駆動するモーター322を設けた。
【0052】
また、磁気カップリング160を備えないのでポンプハウジング172とは異なる形状のポンプハウジング372と、内挿体164を有さない回転軸374とを備え、そのポンプハウジング372内に冷却水ポンプおよび温水ポンプを収容した、水ポンプ系統370を設けた。この回転軸374も回転軸174と同じくポンプハウジング372の外部へ延設されて、その延設端部は外部回転力供給装置180に接続されている。その他の構成は第2実施形態と同じである。
【0053】
なお、図示していないが、冷却水ポンプおよび温水ポンプも、共用するモーターでモーター駆動可能に構成されている。詳しくは、4つの補機がそれぞれモーターを備える。または、非水系の補機が共用するモータを備え、水系の補機が共用するモータを備えてもよい。この場合において、本実施形態に係る外部回転力供給装置180としては、商用電力の供給を必要としないものが好適である。外部回転力供給装置180が1台のモーターを備え、起動時には、その1台のモーターをバッテリー等の電力で駆動させ、発電機20により定常的に定格電力が発電し始めた後は、その1台のモーターまたは補機が備えるモーターを発電電力による駆動に切り替えて運転することが好適である。なお、外部回転力供給装置180は、商用電力の供給を必要としないことが好ましいが、商用電力の供給を必要とするモーターを備えてもよい。後者の場合、複数のポンプロータを、外部回転力供給装置180が備える1台のモーターで駆動可能に構成されているため、複数の補機を駆動する複数のモーターを用いて起動する従来の技術よりもエネルギー効率はよくなる。
【0054】
本実施形態に係る発電設備300も、上述した発電設備200と同じように起動される。異なる点は、発電設備300では、外部回転力供給装置180によっては作動媒体ポンプおよび潤滑油ポンプが回転されない点である。
各種の起動準備が完了すると、外部回転力供給装置180の回転力を用いて回転軸374を回転させる。すなわち、この発電設備300の外部から供給された電力を用いて複数の補機それぞれのモーターを回転させて複数のポンプロータをそれぞれ回転させるのではなく、外部回転力供給装置180の回転力を用いて回転軸374を回転させて、少なくとも複数のポンプロータ(ここでは、冷却水ポンプロータ130および温水ポンプロータ140)を一度に回転させる。そして、外部電源からモーター312およびモーター322へ電力を供給して、作動媒体ポンプ310および潤滑油ポンプ320を駆動させる。
【0055】
これにより、各ポンプロータが回転されて、作動媒体ポンプ、潤滑油ポンプ、冷却水ポンプおよび温水ポンプが駆動されて、バイナリサイクルが始動する。なお、起動時にモーター駆動される補機は、作動媒体ポンプ310および潤滑油ポンプ320に限定されない。起動時に外部からの電力でモーター駆動される補機は、発電機20により定常的に定格電力が発電し始めた際には、そのモーターを発電電力による駆動に切り替えて運転するのが好適である。なお、その場合のモーターは商用電源からの電力供給を必要としないものが更に好適である。また、起動時に外部回転力供給装置180で駆動される補機は、冷却水ポンプ370および温水ポンプロータ372に限定されない。
【0056】
本実施形態に係る発電設備300によると、その起動時において、冷却水ポンプおよび温水ポンプは、外部回転力供給装置180により回転されて、作動媒体ポンプ310および潤滑油ポンプ320は外部電源から供給された電力により回転される。このため、外部回転力供給装置180から付与される回転力分だけ、暖気運転時に外部電源から供給される電力を減らすことができる。
【0057】
なお、図3において発電機20へ向かっている点線で示すように、起動時だけ外部電源から発電機20へ電力を供給して、発電機をモーターとして回転させることも好ましい。このように膨張機に接続されている発電機20をモーターとして回転させると、膨張機のスクリュロータ10が回転するので膨張機を介して作動媒体Tを循環させることができる。このようにすると、起動時(暖気運転時)に作動媒体Tの循環量がより多くなるので(膨張機をバイパスするバイパス管路だけ通過させて暖気する場合に比較して)、暖気に必要な時間が短縮される。外部電源から発電機20へ電力を供給するため電力を消費することになるが、補機の一部(少なくとも複数の補機)は外部回転力供給装置180から付与される回転力を利用して駆動するため、従来よりは電力消費は少なくて済む。このように電力消費が少ないと、外部電源から供給される電力としてバッテリーや可搬式の発電機からの電力だけで十分である場合には、商用電力がない場合もこの発電設備300を起動することができる。
【0058】
<第4実施形態>
図4は、本発明の第4実施形態に係る発電設備400を示している。構成部品の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返さない。
本実施形態に係る発電設備400においては、上述した実施形態に係る発電設備と以下の点が異なる。発電設備100、発電設備200および発電設備300が備えていた外部回転力供給装置180の代わりに、発電設備400はエンジン回転駆動装置480を備える。その他の構成は第3実施形態と同じである。
【0059】
本実施形態に係る発電設備400も、上述した発電設備300と同じように起動される。異なる点は、発電設備300のように外部回転力供給装置180によって冷却水ポンプおよび温水ポンプを回転させるのではなく、発電設備400ではこれらをエンジン回転駆動装置480により回転させる点である。
本実施形態に係る発電設備400によると、発電設備400の外部から回転力を供給する装置として、化石燃料などを使用するエンジン駆動としている。このため、化石燃料などのエネルギー密度が高いため、エンジン回転駆動装置480を小型化することができ、簡易に持ち運びが可能となる。
なお、第3実施形態と同様、起動時にモーター駆動される補機は、起動時に外部からの電力でモーターを駆動させ、発電機20により定常的に定格電力が発電し始めた際には、そのモーターを発電電力による駆動に切り替えて運転するのが好適である。なお、その場合のモーターは商用電源からの電力供給を必要としないものが更に好適である。
【0060】
<第5実施形態>
図5は、本発明の第5実施形態に係る発電設備500を示している。構成部品の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返さない。
本実施形態に係る発電設備500においては、上述した第4実施形態に係る発電設備400と以下の点が異なる。発電設備400が備えていたエンジン回転駆動装置480の代わりに、発電設備500はエンジンを搭載した自動車(車)580を備える。その他の構成は第4実施形態と同じである。
【0061】
自動車580は、自動車580の外部へ回転力を取り出す回転軸582を備え、その回転軸582がギヤ、カップリングなどで、回転軸374の延設端部に接続されている。なお、回転軸582は、PTO(Power Take−Off)軸と呼ばれる、車両駆動用のエンジン動力を作業機の駆動のために取り出す機構であっても構わない。この場合、カップリングは、PTO軸に接続されるユニバーサルジョイントとなる。
【0062】
本実施形態に係る発電設備500も、上述した発電設備400と同じように起動される。異なる点は、エンジン回転駆動装置480が自動車580である点である。
本実施形態に係る発電設備500によると、発電設備500の外部から供給される回転力を自動車の回転軸とすることで、発電設備500を自動車に搭載した場合に、自動車の回転軸を用いて簡単に暖気運転が可能となる。また、発電設備500を自動車に搭載しない場合であっても、自動車を発電設備500の近傍まで持ち込めば、暖気運転が可能となる。
【0063】
<第6実施形態>
図6は、本発明の第6実施形態に係る発電設備600を示している。構成部品の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返さない。
本実施形態に係る発電設備600においては、上述した第5実施形態に係る発電設備500と以下の点が異なる。発電設備500においては、その起動時に作動媒体ポンプおよび潤滑油ポンプは外部電源からの電力により駆動されていた。発電設備600においては、作動媒体ポンプおよび潤滑油ポンプは自動車のバッテリーからの電力により駆動される。その他の構成は第5実施形態と同じである。
【0064】
自動車680は、自動車680の外部へ回転力を取り出す回転軸682を備え、その回転軸682がギヤ、カップリングなどで、回転軸374の延設端部に接続されている。なお、回転軸682は、回転軸582と同様の回転軸である。自動車680に搭載されたバッテリー684は、この発電設備600の暖気運転時に、作動媒体ポンプ310のモーター312および潤滑油ポンプ320のモーター322へ電力を供給する。
【0065】
本実施形態に係る発電設備600も、上述した発電設備500と同じように起動される。異なる点は、発電設備500のように作動媒体ポンプおよび潤滑油ポンプが外部電源から供給された電力により駆動されるのではなく、発電設備600においては、自動車680に搭載されたバッテリー684から供給された電力によりこれらが駆動される点である。
【0066】
各種の起動準備が完了すると、自動車680の回転軸682の回転力を用いて回転軸374を回転させる。そして、自動車680のバッテリー684からモーター312およびモーター322へ電力を供給して、作動媒体ポンプ310および潤滑油ポンプ320を駆動させる。
これにより、各ポンプロータが回転されて、作動媒体ポンプ、潤滑油ポンプ、冷却水ポンプおよび温水ポンプが駆動されて、バイナリサイクルが始動する。
【0067】
本実施形態に係る発電設備600によると、発電設備600の外部から供給される回転力を自動車の回転軸とし、外部電源を自動車に搭載したバッテリーとすることで、発電設備600を自動車に搭載した場合に、自動車の回転軸およびバッテリーを用いて簡単に暖気運転が可能となる。また、発電設備500を自動車に搭載しない場合であっても、自動車を発電設備500の近傍まで持ち込めば、外部電源を用いることなく暖気運転が可能となる。すなわち、補機ポンプのうちモーター駆動をさせる分の電力を、自動車のバッテリーから供給する。これにより、暖気運転時に外部電源が不要となり、商用電力を介さずにこの発電設備600の起動(暖気運転)が可能となる。
【0068】
<第7実施形態>
図7は、本発明の第7実施形態に係る発電設備700を示している。構成部品の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返さない。
本実施形態に係る発電設備700においては、第6実施形態に係る発電設備600と以下の点が異なる。発電設備600が備えていた水ポンプ系統370を発電設備700は備えず、発電設備600が備えていた膨張系統250とは異なる膨張系統750を発電設備700は備える。その他の構成は第6実施形態と同じである。
【0069】
この発電設備700は、自動車の排気ガスの熱またはエンジンを冷却することで発生する熱を利用した車載用のバイナリ発電設備である。このため、温水ポンプおよび冷却水ポンプは自動車に搭載された装置により実現される。なお、図7には示していないが図6と同じく、作動媒体ポンプおよび潤滑油ポンプを回転させるモーターを備える。この発電設備700の起動時には、これらのモーターへ、自動車のバッテリーから電力が供給される。なお、膨張機手前の高圧部において油と作動媒体を確実に分離するとともに、高圧部の圧力を利用して潤滑油を膨張機に油を供給するように構成して、潤滑油ポンプを省略してもよい。また、凝縮器を空冷とするとともに、その設置箇所を作動媒体ポンプの上部として、冷却水を自然循環させるようにして、冷却水ポンプを省略してもよい。また、温水ポンプと作動媒体ポンプを駆動する駆動手段を共用できる場合は、それらの駆動手段を個別に設けなくともよい。
【0070】
膨張系統750のハウジング752の内部には、水平方向を向く回転軸754が設けられており、この回転軸754上に、膨張機のスクリュロータ10および発電機20が設けられている。さらに、この回転軸754がハウジング752の外部へ延設されている。この回転軸754の延設端部は、自動車780の回転軸782が接続可能に構成されている。なお、膨張系統750から回転軸754が延設されるにあたり、図示していないが、軸シール機構が設けられている。また、図示していないが、回転軸754には、第1実施形態と同様のクラッチ機構が設けられており、発電設備700と自動車780との動力伝達を任意に遮断することができるようになっている。
【0071】
自動車780は、自動車780の外部へ回転力を取り出す回転軸782を備え、その回転軸782がギヤ、カップリングなどで、回転軸754の延設端部に接続されている。なお、回転軸782は、回転軸682と同様の回転軸である。
本実施形態に係る発電設備700も、上述した発電設備と同じように起動される。異なる点は、自動車780の回転軸を用いて回転されるのは、補機ではなく、膨張機および発電機20である点である。
【0072】
各種の起動準備が完了すると、自動車780の回転軸782の回転力を用いて回転軸754を回転させる。そして、自動車780のバッテリーから作動媒体ポンプ310のモーター312および潤滑油ポンプ320のモーター322へ電力を供給して駆動させる。
これにより、膨張機が回転されるとともに、各ポンプロータが回転されて、作動媒体ポンプおよび潤滑油ポンプが駆動されて、バイナリサイクルが始動する。なお、上述したように、温水ポンプおよび冷却水ポンプは自動車に搭載された装置により実現されているので、これらのポンプは、自動車780の当該装置により駆動されている。
【0073】
本実施形態に係る発電設備700によると、車載用のバイナリ発電設備に適用され、その起動時に自動車の回転軸で膨張機および発電機を回転させて、起動させることができる。この場合において、エネルギー変換することなく回転エネルギーを直接利用するので効率が高い。
<第8実施形態>
図8は、本発明の第8実施形態に係る発電設備800を示している。構成部品の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返さない。
【0074】
本実施形態に係る発電設備800においては、第7実施形態に係る発電設備700と以下の点が異なる。発電設備700が備えていない磁気カップリング160を、発電設備800は備える。このため、発電設備800は、膨張系統750とは異なるハウジング形状の膨張系統850を備える。磁気カップリング160の構成は第1実施形態と略同様であり、その他の構成は第7実施形態と同じである。
【0075】
膨張系統850のハウジング852の内部には、水平方向を向く回転軸854が設けられており、この回転軸854上に、膨張機のスクリュロータ10、発電機20および磁気カップリング160の外筒体162が設けられている。外筒体162に対向して設けられる磁気カップリング160の内挿体164は、回転軸856に設けられている。外筒体162と内挿体164とは、膨張系統850のハウジング852を構成する隔壁を介して隔絶されている。そのため、発電設備800においては、ハウジング852内を外部から気密的に隔離しながら、回転軸854の回転駆動力を回転軸856に伝達することができる。この回転軸856の端部は、自動車880の回転軸882が接続可能に構成されている。
【0076】
自動車880は、自動車880の外部へ回転力を取り出す回転軸882を備え、その回転軸882がギヤ、カップリングなどで、回転軸856の端部に接続されている。なお、回転軸882は、回転軸782と同様の回転軸である。
本実施形態に係る発電設備800も、上述した発電設備700と同じように起動される。
【0077】
本実施形態に係る発電設備800によると、車載用のバイナリ発電設備に適用され、発電設備700と同じく、その起動時に自動車の回転軸で膨張機および発電機を回転させて、起動させることができる。この場合において、エネルギー変換することなく回転エネルギーを直接利用するので効率が高い。さらに、発電設備800によると、回転軸のハウジング外部への延設に磁気カップリングを使用することにより、軸シール機構が不要となり、作動媒体Tの外部への漏洩をなくすことができる。
【0078】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。上記実施形態では特に記載していないが、制御機器(制御基盤)へ供給する電力は、他の補機と同様に、外部からの電力や、発電電力や、車のバッテリーからの電力等、実施形態に応じた適宜の方法で得ることができる。
【符号の説明】
【0079】
10 スクリュロータ
20 発電機
30 蒸発器
40 凝縮器
50 循環配管
100 発電設備(第1実施形態)
110 作動媒体ポンプロータ
120 潤滑油ポンプロータ
130 冷却水ポンプロータ
140 温水ポンプロータ
150 媒体系統
152 ハウジング
154 回転軸
156 軸シール機構
160 磁気カップリング
162 外筒体
164 内挿体
170 水ポンプ系統
172 ポンプハウジング
174 回転軸
176 軸シール機構
180 外部回転力供給装置
200 発電設備(第2実施形態)
250 膨張系統
260 非水ポンプ系統
300 発電設備(第3実施形態)
370 水ポンプ系統
400 発電設備(第4実施形態)
480 エンジン回転駆動装置
500 発電設備(第5実施形態)
580 自動車
600 発電設備(第6実施形態)
680 自動車
700 発電設備(第7実施形態)
750 膨張系統
800 発電設備(第8実施形態)
850 膨張系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、前記回転駆動力を用いて発電機を駆動する発電設備であって、
前記発電設備は回転機械で構成される補機を備え、
補機のハウジング外部へ延設された補機の延設回転軸および/または前記発電機のハウジング外部へ延設された発電機の延設回転軸を備え、
前記発電設備の起動時に、機外から前記延設回転軸に対して回転力が付与可能に構成されていることを特徴とする発電設備。
【請求項2】
前記延設回転軸に対して付与された回転力は、磁気カップリングを介して、前記補機および/または前記発電機に付与可能に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の発電設備。
【請求項3】
前記補機は、前記凝縮器に冷熱供給用として冷却媒体を流すための冷却媒体ポンプおよび前記蒸発器に熱源供給用として加熱媒体を流すための加熱媒体ポンプであることを特徴とする、請求項1に記載の発電設備。
【請求項4】
前記補機へ付与された回転力は、磁気カップリングを介して他の補機へ付与可能に構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の発電設備。
【請求項5】
前記回転力は、エンジンから供給されることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発電設備。
【請求項6】
前記回転力は、自動車に搭載されたエンジンからの回転力を取り出すPTO軸から供給されることを特徴とする、請求項5に記載の発電設備。
【請求項7】
前記補機はモーター駆動可能に構成され、
バッテリーから前記モーターへ電力を供給可能に構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発電設備。
【請求項8】
作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、前記回転駆動力を用いて発電機を駆動する発電設備における起動方法であって、
前記発電設備は回転機械で構成される補機を備え、
補機のハウジング外部へ延設された補機の延設回転軸および/または前記発電機のハウジング外部へ延設された発電機の延設回転軸を備え、
前記発電設備の起動時に、機外から前記延設回転軸に対して回転力を付与することを特徴とする発電設備の起動方法。

【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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