説明

白色インク、および記録物

【課題】白色色材が沈降により底面で固化せず、再分散が容易、かつ、記録ヘッドの目詰まりを生じない白色インクを提供する。
【解決手段】本発明に係る白色インクは、白色色材と、糖と、を含有するインクジェットインクである。これによって、長期間白色インクを放置した場合に、底面での固化と吐出する場合の目詰まりを良好に防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色インク、およびこれを用いた記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウム等の白色色材を含有するインクが、様々な印刷方式に用いられている。特に、安価な点から二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物が多く用いられているが、溶媒との比重差の点から、これらの顔料が沈降しやすいという問題がある。さらに一度沈降した顔料は底面で固化し撹拌で容易に再分散しないという問題もある。そのため、塗料用の白色インクなどは粘度を1000mPa・s以上にして沈降を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−208330号公報
【特許文献2】米国特許第4880465号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクジェットプリンターで印刷可能なインクの粘度はおよそ2〜10mPa・sであり、沈降を防止するには不十分な粘度である。そのため、インクジェット用の白色インクは撹拌してから使用することが必要であり、様々な撹拌機構が用いられている。しかし、一度沈降した顔料が底面で固化した場合、撹拌で再分散させることが困難となるため、インクジェット用の白色インクは長期保存に適さなかった。また、記録ヘッド内で顔料が固化してノズルの目詰まりを起こす問題も生じている。そこで、本発明は沈降した顔料が底面で固化することと目詰まりを防ぎ、インクジェットプリンターで使用可能なインクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0006】
[適用例1]本発明に係るインクジェットインクの一態様は、白色色材と、糖と、を含有する。
【0007】
適用例1に記載のインクジェットインクによれば、糖が白色色材の沈降による底面で固化と目詰まりを防ぐことができる。
【0008】
[適用例2]
上記適用例に記載のインクジェットインクにおいて、前記糖が、単糖と、二糖以上の糖と、であることが好ましい。
【0009】
適用例2に記載のインクジェットインクによれば、糖が白色色材表面に吸着し、白色色材同士の凝集を防ぎ、白色色材の沈降による底面で固化を防ぐことができる。
【0010】
[適用例3]
適用例2に記載のインクジェットインクにおいて、含有された前記糖は、単糖の割合が5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0011】
適用例3に記載のインクジェットインクによれば、糖が保湿剤として作用し、記録ヘッドのノズル目詰まりを防ぐことができる。
【0012】
[適用例4]
上記適用例に記載のインクジェットインクにおいて、前記糖の添加量がインクジェットインクに対して3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0013】
適用例4に記載のインクジェットインクによれば、記録ヘッドのノズル目詰まりを防ぎ、乾燥性の優れたインクを得ることができる。
【0014】
[適用例5]
上記適用例に記載のインクジェットインクにおいて、前記白色色材が、二酸化チタンであることが好ましい。
【0015】
適用例5に記載のインクジェットインクによれば、白色度の優れたインクを得ることができる。
【0016】
[適用例6]
上記適用例に記載のインクジェットインクにおいて、スチレンアクリル樹脂を顔料固形分に対し3質量%以上30質量%以下含むことが好ましい。
【0017】
適用例6に記載のインクジェットインクによれば、スチレンアクリル樹脂が顔料粒子の凝集を防ぎ、沈降と底面での固化を防止できる。
【0018】
[適用例7]
上記適用例に記載のインクジェットインクにおいて、水分量が50質量%以上97質量%未満であることが好ましい。
【0019】
適用例7に記載のインクジェットインクによれば、糖および樹脂の溶解性を高め、均一な溶液となり顔料粒子の分散性を高めることができる。
【0020】
[適用例8]
適用例に記載のインクジェットインクにおいて、含有された前記糖は、三糖を含むことが好ましい。
【0021】
適用例8に記載のインクジェットインクによれば、顔料粒子の凝集を防ぎ、沈降と底面での固化を一層防止出来る。
【0022】
[適用例9]
本適用例に係る記録物の一態様は、上記適用例のいずれか一例に記載のインクジェットインクによって画像が記録されたものである。
【0023】
適用例9に記載の記録物によれば、白色度と乾燥性の優れた記録物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0025】
1.インクジェットインク
本発明の一実施形態に係るインクジェットインクは、白色色材と、糖と、を含有する。以下、本実施の形態に係るインクジェットインクに含まれる各成分について詳細に説明する。
【0026】
1.1.白色色材
本実施の形態に係るインクジェットインクは、白色色材を含有する。前記白色色材としては、例えば金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、白色度に優れているという観点から、二酸化チタンを粉末状にした二酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
【0027】
また、白色色材としては、中空樹脂粒子を用いてもよい。中空樹脂粒子としては、例えば、特許文献2(米国特許第4880465号)などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を挙げることができる。なお、中空樹脂粒子とは、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されているものである。中空樹脂粒子は、白色色材として使用することができる。
【0028】
前記白色色材の含有量(固形分)は、インクジェットインクの全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。白色色材の含有量が前記範囲を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まり等の信頼性を損なうことがある。一方、前記範囲未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向がある。
【0029】
上記の白色色材を含有することにより白色インクとなる。また本願において「白色インク」とは、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に、duty100%以上で吐出されたインクの明度(L*)と色度(a*、b*)が、分光測光器Spectrolino(商品名:GretagMacbeth社製)を、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN_NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測した場合に、70≦L*≦100、−4.5≦a*≦2、−6≦b*≦2.5の範囲を示すインクのことをいう。以下、白色インクのことを適宜インク(インクジェットインク)という。
【0030】
1.2.糖
本実施の形態に係るインクジェットインクは、糖を含有する。糖を添加することによりインクジェットインクの湿潤性を高め、インクの乾燥を防いでインクジェットプリンターの記録ヘッドでの目詰まりが抑制される。また、沈降した顔料が底面で固化するのを抑制する効果もある。糖は、単糖とニ糖以上の糖により構成されていてもよいし、単糖のみであってもよいし、二糖以上の糖のみによって構成されていてもよい。糖の種類は、求める効果の範囲で適宜選択される。つまり、固化するのを抑制する効果に充填を置きたい場合には、ニ糖以上の糖のみ(単糖を含有しない)により構成されていてもよい。またニ糖以上の糖のみによって構成されている場合、その糖は、ニ糖と三糖以上の糖のみであってよい。
【0031】
本実施の形態に係るインクジェットインクは、前記糖として、単糖、二糖以上の糖(オリゴ糖(三糖および四糖を含む)および多糖)を含有しても良い。単糖、ニ糖以上の糖の例としては、グルコース、リボース、マンニトール、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などがあげられる。ここで、多糖とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖の誘導体としては、前記した糖の還元糖[(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(ここで、n=2〜5の整数を表す)で表される]、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖などがあげられる。糖の種類は特に限定されないが、特に還元糖が好ましく、具体例としてはグルコース、フルクトースなどが挙げられる。
【0032】
また、単糖とニ糖以上の糖が添加されている場合、インク中に含有された糖全体に対して、単糖の割合が5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、20質量%以上45質量%以下である。これにより、糖が保湿剤として作用し、記録ヘッドのノズル目詰まりを防ぐことができる。さらに糖が白色色材粒子に吸着し、粒子の凝集を防ぎ、白色色材の沈降による底面で固化を防ぐことができる。また、糖は三糖(ニ糖以上の糖の一種)を含むと一層好ましい。三糖を含有させる場合には、その含有量は特に限定されないが、3質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以上85質量%以下である。なお、単糖とニ糖以上の糖をインクに添加する場合、単糖とニ糖以上の糖を別個に添加してもよいし、二つを含む混合糖(例えばシラップ)を添加してもよい。
【0033】
還元糖の市販品としては、例えば「HS−500」(株式会社林原商事製)、「HS−300」(株式会社林原商事製)、「HS−60」(株式会社林原商事製)、「HS−30」(株式会社林原商事製)、「HS−20」(株式会社林原商事製)等が挙げられる。
【0034】
糖の添加量はインクジェットインクに対して、2質量%以上10質量%以下程度が好ましく、より好ましくは5質量%以上8質量%以下程度である。糖の含有量が前記範囲を超えると、インクジェット記録物の乾燥性を損なうことがある。一方、前記範囲未満であると、沈降した顔料を底面で固化させない効果が損なわれる。
【0035】
1.3.その他の成分
本実施の形態に係るインクジェットインクは、前記成分に加えて、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を添加してもよい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体等の被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0036】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール等の炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0037】
グリコールエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが挙げられる。これらの中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0038】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、インクジェットインクの全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上10質量%以下である。
【0039】
分散剤は、顔料インクに使用可能であるものを特に制限なく用いることができ、例えば、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤や界面活性剤等が挙げられる。アニオン性分散剤の例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニルーアクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレンーアクリル酸共重合体、スチレンーメタクリル酸共重合体、スチレンーアクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレンーメタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレンーα−メチルスチレンーアクリル酸共重合体、スチレンーα−メチルスチレンーアクリル酸一アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレンーマレイン酸共重合体、ビニルナフタレンーマレイン酸共重合体、酢酸ビニルーエチレン共重合体、酢酸ビニルー脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニルーマレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニルークロトン酸共重合体、酢酸ビニルーアクリル酸共重合体等が挙げられる。ノニオン性分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ビニルピロリドンー酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。分散剤としての界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等のノニオン性界面活性剤、が挙げられる。特に、顔料の分散安定性を高める観点から、スチレンー(メタ)アクリル酸共重合体を用いることが好ましい。
【0040】
本実施の形態に係るインクジェットインクは、前記成分に加えて、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を添加してもよい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0041】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0042】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0043】
さらに、本実施の形態に係るインクジェットインクは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を添加してもよい。
【0044】
界面活性剤の含有量は、インクジェットインクの全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。
【0045】
本実施の形態に係るインクジェットインクは、前記成分に加えて、多価アルコールを添加してもよい。多価アルコールは、インクの乾燥を防止し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
【0046】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0047】
多価アルコールの含有量は、インクジェットインクの全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0048】
本実施形態に係るインクジェットインクは、水を50%以上含有する、いわゆる水系インクであってもよい。水系インクは、非水系(溶剤系)インクに比べて、記録ヘッドに用いられているピエゾ素子等や、記録媒体に含まれる有機バインダー等への反応性が弱く、溶かしてしまう、腐食するといった不具合が少ない。また、非水系(溶剤系)インクでは、用いた溶剤が高沸点・低粘度であると、乾燥時間が非常にかかるという問題も生ずる。さらに、溶剤系インクに比べて水系インクは臭いも非常に抑えられており、半分以上が水であるので環境にも良いという利点がある。なお、水としては、イオン交換水、逆浸透水、蒸留水、超純水等が挙げられ、水の含有量は50質量%以上97質量%未満が好ましい。
【0049】
本実施の形態に係るインクジェットインクは、溶媒として水以外に、有機溶媒を併用してもよい。このような有機溶媒としては、例えばエタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1以上4以下のアルキルアルコール類、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられる。このような有機溶媒を用いることで、記録媒体への浸透性を向上させると共に、ノズル目詰まりを防止することができる。これらは、1種単独または2種以上併用してもよく、インクジェットインクの全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下程度含有することが好ましい。
【0050】
本実施の形態に係るインクジェットインクは、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルター等を用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0051】
本実施の形態に係るインクジェットインクは、各種記録媒体に塗布することにより白色画像を形成することができる。記録媒体としては、例えば、紙、厚紙、繊維製品、シートまたはフィルム、プラスチック、ガラス、セラミックス等が挙げられる。
【0052】
本実施の形態に係るインクジェットインクは、その用途は特に限定されないが、各種インクジェット記録方式に適用することができる。インクジェット記録方式としては、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーション等が挙げられる。
【0053】
2.記録物
本発明はまた、上述したインクジェットインクによって画像が形成された記録物を提供することができる。本発明に係る記録物によれば、白色濃度の安定した記録物を得ることができる。
【0054】
3.実施例
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0055】
3.1.インクジェットインク組成物の調製
表1に示す配合量で、二酸化チタン粒子、樹脂、有機溶媒、多価アルコール、界面活性剤およびイオン交換水を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、実施例1〜2と、比較例1〜10の各白色インク組成物を得た。なお、表1に記載されている濃度の単位は、質量%であり、二酸化チタン粒子、スチレンアクリル樹脂についてはいずれも固形分換算濃度である。
【0056】
実施例1〜11で使用した糖は表2で示す比率で構成されている。単糖にはグルコースを使用した。また、比較例10の単糖はフルクトースを使用した。二糖にはマルトースを使用した。三糖にはマルトトリオースを使用した。
【0057】
二酸化チタン粒子には、市販品「NanoTek(R) Slurry」(シーアイ化成株式会社製)を用いた。NanoTek(R) Slurryは、平均粒子径300nmの二酸化チタン粒子を固形分濃度15%の割合で含むスラリーである。
【0058】
界面活性剤には、ポリシロキサン系界面活性剤である「BYK−348」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を使用した。
【0059】
スチレンアクリル樹脂には、「YS−1274」(星光PMC株式会社製)を使用した。
【0060】
糖には、単糖はグルコースを、二糖はマルトースを、三糖はマルトトリオースを使用した。実施例11の単糖のみフルクトースを使用した。
【0061】
3.2.再分散性評価
実施例1〜11と、比較例のインクジェットインクを100mLスクリュー管瓶(AS ONE製)に各100mLずつ入れ、室温25℃、湿度50%RHの環境に半年間放置し、上下に30cmの幅で10往復振った後、スクリュー管瓶内のインク上澄みを3mL採取した。
【0062】
上記の様にして得られた実施例1〜11、および比較例の採取サンプル1gに、蒸留水を加えて1000倍に希釈した。次いで、分光光度計(製品名「Spectrophotometer U−3300」、株式会社日立製作所製)を用いて、希釈した白色インク組成物の波長500nmにおける吸光度(Abs値)を、撹拌回数毎に測定した。このようにして得られた各サンプルの吸光度と、上記の調整直後の白色インク組成物の吸光度と、を比較して、下記式(1)を用いて吸光度の回復率を求めた。
吸光度の回復率(%)=100×(各サンプルの吸光度)/(調整直後の吸光度) ・・・(1)
【0063】
また、得られた結果を以下の基準を用いて評価した。
A:回復率が90%以上
B:回復率が80%以上90%未満
C:回復率が70%以上80%未満
D:回復率が70%未満
【0064】
3.3.目詰まり性評価
実施例1〜11と、比較例のインクジェットインクをインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、商品名「PX−G930」)の専用カートリッジのインク室にそれぞれ充填した。そして、インクカートリッジをプリンターに装着し、室温25℃、湿度50%RHの環境に半年間放置し、クリーニング操作を10回行なった後の目詰まりしたノズル数を測定した。
【0065】
また、得られた結果を以下の基準を用いて評価した。
A:目詰まりノズル数が無い
B:目詰まりノズルはあるが、その数が50個未満
C:目詰まりノズル数が50個以上100個未満
D:目詰まりノズル数が100個以上
【0066】
3.4.乾燥性評価
実施例1〜11と、比較例のインクジェットインクをインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、商品名「PX−G930」)の専用カートリッジのインク室にそれぞれ充填した。そして、記録媒体(「OHPシート」コクヨ株式会社製)に対してベタパターン画像の記録を行った。記録は、解像度1440×1440dpiで、ベタパターン画像をduty100%で行なった。このようにして得られた記録物を60℃、湿度20%RHの状態で2時間乾燥させた後、学振形染色摩擦堅ろう度試験機(安田精機製作所製)を用いて、JIS染色堅ろう度試験用白布(日本規格協会製)で記録物を擦り、乾燥性を評価した。
【0067】
また、評価は以下の基準を用いた。
A:擦りによる剥がれが無い。
B:擦りによる剥がれがある。
【0068】
4.評価結果
4.1.再分散性評価の結果
表3は再分散性評価の結果を示すものである。表3の数値が低いほど撹拌によって沈降物が再分散せず固化しやすい傾向を持つことを示している。表3の結果から、糖の単糖の比率が5質量%以上50質量%以下であると再分散性が良好となる。また、25質量%以上45質量%以下であるとさらに良い結果が得られた。
【0069】
4.2.目詰まり性評価の結果
表3は目詰まり性評価の結果を示すものである。表3の数値は目詰まりしたノズルの数を示している。これより、糖を添加すると良好な結果が得られることが分かる。さらに、糖の単糖の比率が5質量%以上であると目詰まり性の防止効果が一層良好となる。
【0070】
4.3.乾燥性評価の結果
表3は乾燥性評価の結果を示すものである。表3において、Aは指で擦っても指にインクの付着が無い状態を示している。Bは指で擦ると指にインクの付着がある状態を示している。これより、保湿剤にグリセリンを使用した場合と、糖の量が11質量%以上の場合ではインクの乾燥性が悪く、印刷品質を損なってしまう。
【0071】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色色材と、糖と、を含有するインクジェットインク。
【請求項2】
前記糖が、単糖と、二糖以上の糖と、である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
含有された前記糖は、単糖の割合が5質量%以上50質量%以下である、請求項2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記糖の添加量がインクジェットインクに対して3質量%以上10質量%以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記白色色材が、二酸化チタンである、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
スチレンアクリル樹脂が添加されており、前記スチレンアクリル樹脂は前記白色色材に対し3質量%以上30質量%以下含む、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
水分量が50質量%以上97質量%未満である、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
含有された前記糖は、三糖を含む請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のインクジェットインクによって画像が記録された記録物。

【公開番号】特開2012−97214(P2012−97214A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247150(P2010−247150)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】