説明

白金族元素及び/又は希土類元素の回収方法、並びに白金族元素及び希土類元素の回収装置

【課題】白金族元素及び希土類元素を単一のイオン液体に溶解させ、これらを選択的に分離する白金族元素及び希土類元素の回収方法、並びに該回収方法に用いる回収装置の提供。
【解決手段】イオン液体34中に白金族元素及び希土類元素を含有する資源15を溶解させた後、該イオン液体から該白金族元素を電解析出により回収し、該白金族元素の回収処理を経たイオン液体から該希土類元素を電解析出により回収した後、該希土類元素の回収処理を経たイオン液体に残存する希土類元素を電気泳動により濃縮する白金族元素及び希土類元素の回収方法であり、前記イオン液体は、四級ホスホニウムのカチオン、又は四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択されるアニオンとから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族元素及び/又は希土類元素の回収方法、並びに白金族元素及び希土類元素の回収装置に関する。より詳しくは、イオン液体に白金族元素及び/又は希土類元素を溶解させて、電気化学的方法により回収する白金族元素及び/又は希土類元素の回収方法、並びにイオン液体に白金族元素及び希土類元素を溶解させて、電気化学的方法により回収する白金族元素及び希土類元素の回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガスを処理する触媒、超伝導体、蛍光発光体、磁性体等に、稀少資源である白金族元素や希土類元素が使用されている。これらの元素を触媒等から回収するための技術として、環境負荷を低減した高効率な回収方法の開発が望まれている。
【0003】
自動車の排ガスを処理する触媒に含まれる白金族元素を触媒から回収するための従来方法としては、湿式法及び乾式法が知られている。
湿式法は、粉砕した触媒を王水や酸化剤を含む強酸に浸漬させて、白金族元素を溶解させた後、該強酸の溶液を濃縮して不溶性の沈殿としてろ過分離を行い、さらに水素還元を行うことによって、スポンジ状の白金族元素として回収する方法である。
乾式法は、触媒を溶鉱炉において銅とともに溶解することにより白金族元素を粗銅に溶解した状態にした後、該粗銅を電解精製して純銅にする過程で沈積する電解スライムとして白金族元素を得て、さらに酸溶液に溶解させて白金族元素を分離精製する方法である。このような溶鉱炉と電解精製を組み合わせた白金族元素の回収方法は、特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、触媒に含まれる希土類元素を回収する方法は、例えば、陽極酸化による電気化学的処理により希土類元素を溶液中に溶解させて、該溶液中に蓚酸または蓚酸アルカリ等の沈殿剤を添加して、蓚酸塩として希土類元素を得て、つづいて該蓚酸塩を酸化焼成することによって希土類元素を酸化物として回収する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この湿式方法は、システムの簡素化が困難な多段プロセスであるため効率が悪く、最終的な二次廃棄物の発生量が多くなるという大きな問題が残る。
また、高温溶融塩を電解槽として使用する乾式法も提案されている(特許文献3)が、800℃という非常な高温で行われるため電解槽の材料が腐食する恐れがあり、取り扱いや操業の安全面に課題を有する。さらに、アルカリハロゲン化物等の中・低温の融点を有する溶融塩を用いる場合は、溶媒の吸湿を抑制するためにグローブボックス等の不活性雰囲気中で操業しなければならないので複雑な設備を必要とする問題がある。
【0005】
上記の回収方法で用いられている水溶液や高温溶融塩に換えて、難燃性・難揮発性等の環境調和型特性に優れたイオン液体を用いる方法も開示されている。例えば、四級アンモニウムのカチオンと、[CF(CFSO]N、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成される常温溶融塩を溶媒とした電気泳動法によって、希土類およびアルカリ土類元素を回収する方法が特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−243080号公報
【特許文献2】特開2000−087154号公報
【特許文献3】特開2002−198104号公報
【特許文献4】特許第4242313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記回収方法では、白金族元素や希土類元素を個別に回収する方法が提案されているが、白金族元素及び希土類元素等の複数の元素を含む廃材から、これらの元素を単一の溶媒を用いて回収する効率的な方法が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、白金族元素及び希土類元素を単一のイオン液体に溶解させ、これらを選択的に分離する白金族元素及び希土類元素の回収方法、並びに該回収方法に用いうる白金族元素及び希土類元素の回収装置を提供することを課題とする。
【0008】
また、上記湿式法による希土類元素の回収では二次廃棄物の発生量が多く、上記乾式法による希土類元素の回収では複雑な設備を必要とするため、再生利用が可能な溶媒を用いたより簡易な希土類元素の回収方法が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、希土類元素を再生利用が可能な溶媒であるイオン液体に溶解させて、簡易な方法で回収する希土類元素の回収方法を提供することを課題とする。
【0009】
また、上記湿式法による白金族元素の回収では大量の酸性溶媒を必要とし、上記乾式法による白金族元素の回収では粗銅の電解精製を必要とするため、再生利用が可能な溶媒を用いたより簡易な白金族元素の回収方法が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、白金族元素を再生利用が可能な溶媒であるイオン液体に溶解させて、簡易な方法で回収する白金族元素の回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の白金族元素及び希土類元素の回収方法は、イオン液体中に白金族元素及び希土類元素を含有する資源を溶解させた後、該イオン液体から該白金族元素を電解析出により回収し、該白金族元素の回収処理を経たイオン液体から該希土類元素を電解析出により回収した後、該希土類元素の回収処理を経たイオン液体に残存する希土類元素を電気泳動により濃縮する白金族元素及び希土類元素の回収方法であり、
前記イオン液体は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成されることを特徴とする。
[上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。また、上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、アンモニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。nは0〜5の整数を表す。]
【0011】
本発明の請求項2に記載の白金族元素及び希土類元素の回収方法は、請求項1において、前記濃縮された希土類元素を含むイオン液体から希土類元素を電解析出により回収することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に記載の白金族元素及び希土類元素の回収装置は、第一の槽内において、白金族元素及び希土類元素を含む資源を溶解させたイオン液体から白金族元素を電解析出により回収する第一の電極、及び該第一の電極による処理を経たイオン液体から希土類元素を電解析出により回収する第二の電極を有する第一処理部と、
第一の槽内において、前記第二の電極による処理を経たイオン液体に残存する希土類元素を電気泳動により濃縮する第二処理部と、
第二の槽内において、前記第二処理部で濃縮された希土類元素を含むイオン液体から希土類元素を電解析出により回収する第三の電極を有する第三処理部と、
を少なくとも備える。
【0013】
本発明の請求項4に記載の白金族元素及び希土類元素の回収方法は、イオン液体中に白金族元素及び希土類元素を含有する資源を溶解させた後、該イオン液体から該白金族元素を電解析出により回収し、該白金族元素の回収処理を経たイオン液体から該希土類元素を電気泳動により濃縮する白金族元素及び希土類元素の回収方法であり、前記イオン液体は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成されることを特徴とする。
[上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。また、上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、アンモニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。nは0〜5の整数を表す。]
【0014】
本発明の請求項5に記載の白金族元素及び希土類元素の回収方法は、請求項4において、前記濃縮された希土類元素を含むイオン液体から希土類元素を電解析出により回収することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に記載の希土類元素の回収方法は、イオン液体中に希土類元素を含有する資源を溶解させた後、該イオン液体から該希土類元素を電気泳動により濃縮する希土類元素の回収方法であり、前記イオン液体は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成されることを特徴とする。
[上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。]
【0016】
本発明の請求項7に記載の希土類元素の回収方法は、請求項7において、前記濃縮された希土類元素を含むイオン液体から希土類元素を電解析出により回収することを特徴する。
【0017】
本発明の請求項8に記載の白金族元素の回収方法は、イオン液体中に白金族元素を含有する資源を溶解させた後、該イオン液体から該白金族元素を電解析出により回収する白金族元素の回収方法であり、前記イオン液体は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成されることを特徴とする。
[上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。また、上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、アンモニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。nは0〜5の整数を表す。]
【0018】
本明細書および本特許請求の範囲において、「白金族元素」とは、白金、パラジウム、及びロジウムの白金族金属3種、並びに金、及び銀の貴金属元素2種をいう。また、本明細書および本特許請求の範囲において、「希土類元素」とは、スカンジウム、イットリウム、及びランタノイドをいう。また、本明細書および本特許請求の範囲において、「オニウム」とは、ホスホニウム、アンモニウムを包括する呼称である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の白金族元素及び希土類元素の回収方法によれば、白金族元素及び希土類元素を単一のイオン液体に溶解させ、これらを選択的に分離する回収方法を提供することができる。該イオン液体は、本発明の白金族元素及び希土類元素の回収方法に再利用することができる。また、得られた白金族元素及び希土類元素は、自動車排ガスの触媒等に有用である。
【0020】
本発明の白金族元素及び希土類元素の回収装置によれば、第一の槽内において、単一のイオン液体に溶解された白金族元素及び希土類元素を電解析出により選択的に回収し、該イオン液体に残存する希土類元素を電気泳動により濃縮して第二の槽内に移して、該第二の槽内において、濃縮された希土類元素を電解析出により回収することができる。
【0021】
また、本発明の希土類元素の回収方法によれば、イオン液体に溶解させた希土類元素を電気泳動により、簡易に希土類元素を濃縮して回収することができる。濃縮して回収された希土類元素を含むイオン液体から電解析出により、分離して回収することができる。該イオン液体は、本発明の希土類元素の回収方法に再利用することができる。また、得られた希土類元素は、自動車排ガスの触媒等に有用である。
【0022】
また、本発明の白金族元素の回収方法によれば、イオン液体に溶解させた白金族元素を電解析出により、簡易に白金族元素を分離して回収することができる。該イオン液体は、本発明の白金族元素の回収方法に再利用することができる。また、得られた白金族元素は、自動車排ガスの触媒等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の白金族元素及び希土類元素の回収方法の第一態様に用いることのできる回収装置の一例である。
【図2】本発明の白金族元素及び希土類元素の回収方法の第二態様のプロセスの流れを示す図である。
【図3】本発明の白金族元素及び希土類元素の回収方法の第二態様に用いることのできる回収装置の一例である。
【図4】本発明の希土類元素の回収方法に用いることのできる電気泳動装置の一例である。
【図5】本発明の白金族元素及び/又は希土類元素の回収方法に用いることのできる電界析出装置の一例である。
【図6】P2225TFSI中での陽極溶解におけるPd(II)の分光スペクトルである。
【図7】陽極溶解における溶解時間とPd溶出量との関係を示す図である。
【図8】分離管のフラクションナンバーに対するLa濃度比を示す図である。
【図9】P2225TFSI中に濃縮されたLa(III)のサイクリックボルタンメトリーの測定結果である。
【図10】電解析出(定電位電解)により回収したLa金属のエネルギー分散型X線分光の測定結果である。
【図11】分離管のフラクションナンバーに対するCe濃度比を示す図である。
【図12】P2225TFSI中のCe(III)のサイクリックボルタンメトリーの測定結果である。
【図13】P2225TFSI中のPd(II)及びLa(III)のサイクリックボルタンメトリーの測定結果である。
【図14】電解析出(定電位電解)により回収した析出物のX線回折の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳しく説明する。
<白金族元素及び希土類元素の回収方法の第一態様>
本発明の白金族元素及び希土類元素の回収方法の第一態様は、前記請求項1に記載の回収方法である。該回収方法に用いることができる白金族元素及び希土類元素の回収装置の一例として図1に記載の回収装置10が挙げられる。
【0025】
回収装置10は、第一の槽11内において、白金族元素及び希土類元素を含む資源を溶解させたイオン液体β1から白金族元素を電解析出により回収する第一の電極16、及び該第一の電極16による処理を経たイオン液体γ1から希土類元素を電解析出により回収する第二の電極20を有する第一処理部と、第一の槽11内において、前記第二の電極20による処理を経たイオン液体δ1に残存する希土類元素を電気泳動により濃縮する第二処理部と、第二の槽39内において、前記第二処理部で濃縮された希土類元素を含むイオン液体ε1から希土類元素を電解析出により回収する第三の電極36を有する第三処理部と、を少なくとも備えている。
【0026】
第一態様では、まず、イオン液体α1中に白金族元素及び希土類元素を含有する資源を溶解させたイオン液体β1を得る工程Aを行う。
その後、イオン液体β1に溶解している前記白金族元素を電解析出により回収して得るとともに、該白金族元素の回収処理を経たイオン液体γ1を得る工程Bを行う。
つづいて、イオン液体γ1から前記希土類元素を電解析出により回収して得るとともに、該希土類元素の回収処理を経たイオン液体δ1を得る工程Cを行う。
次に、イオン液体δ1に残存する前記希土類元素を電気泳動により濃縮して、希土類元素の濃度が濃縮により高められたイオン液体ε1を得る工程Dを行う。
【0027】
前記イオン液体α1〜ε1は、溶媒としてのイオン液体の種類は同一であり、溶解しているものが異なる。
前記イオン液体(イオン液体α1)は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成される。
【0028】
前記ホスホニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基である。
【0029】
が置換基を有するアルキル基である場合、該アルキル基における水素原子の一部または全部が、水素原子以外の基または原子で置換されている。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0030】
における炭素数2〜6の直鎖状アルキル基としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
における炭素数2〜6の分岐状アルキル基としては、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基等が挙げられる。
における炭素数2〜6の脂環状アルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
【0031】
上記のなかでも、Rとしては、炭素数2〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましく、炭素数2〜6の直鎖状アルキル基がより好ましく、エチル基又はプロピル基がさらに好ましい。
【0032】
前記ホスホニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基である。
【0033】
が置換基を有するアルキル基である場合、該アルキル基における水素原子の一部または全部が、水素原子以外の基または原子で置換されている。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0034】
における直鎖状アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、3〜8がより好ましく、炭素数4〜6がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基、トリデカニル基、テトラデカニル基が挙げられる。
【0035】
における分岐状アルキル基としては、炭素数3〜10であることが好ましく、3〜8がより好ましく、炭素数4〜6がさらに好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0036】
における脂環状アルキル基としては、炭素数5〜12であることが好ましく、5〜10がより好ましく、炭素数5〜6がさらに好ましい。例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等のモノシクロアルキル基が挙げられる。
【0037】
上記のなかでも、Rとしては、炭素数3〜9の直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましく、炭素数4〜7の直鎖状アルキル基がより好ましく、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基がさらに好ましい。
【0038】
前記ホスホニウムカチオンの式中、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、前記ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。
【0039】
とRとの好ましい組み合わせとしては、Rがエチル基又はプロピル基であり、且つRがブチル基、ペンチル基又はヘキシル基である。該組み合わせであることにより、前記イオン液体の疎水性、粘性、融点等の物理化学的特性が、白金族元素及び希土類元素を溶解させて、電解析出により析出させるのに適したものとなる。
【0040】
また、上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、アンモニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。
【0041】
の具体的な説明は、前述のRの具体的な説明と同じである。
の具体的な説明は、前述のRの具体的な説明と同じである。
また、RとRとの好ましい組み合わせの具体的な説明は、前述のRとRとの好ましい組み合わせの具体的な説明と同じである。
【0042】
前記イオン液体におけるアニオンは、 (SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0043】
[CF(CFSOにおけるnは0〜5の整数であり、0〜3が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0044】
前記イオン液体は、前記ホスホニウムのカチオン又は前記アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種であるアニオンとから構成される。
前記イオン液体のカチオンとしては、前記ホスホニウムのカチオンが好ましく、Rがエチル基又はプロピル基であり、且つRがブチル基、ペンチル基又はヘキシル基である前記ホスホニウムのカチオンがより好ましい。
前記イオン液体のアニオンとしては、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、又はCFSOが好ましく、(SOF)、N(CN)、[CFSO、又は[CFCFSOがより好ましい。
【0045】
したがって、本発明における好適なイオン液体の具体例としては、
トリエチル−n−ペンチルホスホニウム・ビスフルオロスルホニルイミド、トリプロピル−n−ペンチルホスホニウム・ビスフルオロスルホニルイミド、トリエチル−n−ヘキシルホスホニウム・ビスフルオロスルホニルイミド、トリプロピル−n−ヘキシルホスホニウム・ビスフルオロスルホニルイミド、
トリエチル-n-ペンチルホスホニウム・ジシアナミド、トリプロピル−n−ペンチルホスホニウム・ジシアナミド、トリエチル−n−ヘキシルホスホニウム・ジシアナミド、トリプロピル−n−ヘキシルホスホニウム・ジシアナミド、
トリエチル−n−ペンチルホスホニウム・ビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリプロピル−n−ペンチルホスホニウム・ビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリエチル−n−ヘキシルホスホニウム・ビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリプロピル−n−ヘキシルホスホニウム・ビストリフルオロメチルスルホニルイミド、
トリエチル−n−ペンチルホスホニウム・ビストリフルオロエチルスルホニルイミド、トリプロピル−n−ペンチルホスホニウム・ビストリフルオロエチルスルホニルイミド、トリエチル−n−ヘキシルホスホニウム・ビストリフルオロエチルスルホニルイミド、トリプロピル−n−ヘキシルホスホニウム・ビストリフルオロエチルスルホニルイミド、
トリエチル−n−ペンチルホスホニウム・トリフルオロメタンスルホン酸、トリプロピル−n−ペンチルホスホニウム・トリフルオロメタンスルホン酸、トリエチル−n−ヘキシルホスホニウム・トリフルオロメタンスルホン酸、トリプロピル−n−ヘキシルホスホニウム・トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
なお、本明細書において、「・・・イミド」と記載したアニオンは、「・・・アミド」と別名で記載することも可能である。イミドもアミドも呼び方が異なるだけであり、化合物としては同一である。
【0046】
本発明における前記イオン液体は10〜100℃において難揮発性の液体であり、白金族元素及び希土類元素を前記工程Aにおいて溶解することができる。
【0047】
前記工程Aにおいて、白金族元素及び希土類元素を含有する資源を前記イオン液体(イオン液体α1)に溶解させる方法としては、前記資源から効率よくイオン液体α1へ白金族元素及び希土類元素を溶解させられる方法であれば特に制限されない。例えば、前記資源を前記イオン液体α1中に浸漬して、該資源に含有される白金族元素及び希土類元素をイオン液体α1中に溶出させる方法や、前記資源に電圧を印加して陽極溶解することにより、該資源に含有される白金族元素及び希土類元素をイオン液体α1へ溶解させる方法が挙げられる。該陽極溶解する方法が、効率に優れるため好ましい。
【0048】
前記陽極溶解する方法を、図1で説明する。第一の槽11にはイオン液体34(イオン液体α1)が入れられており、電源(ポテンショスタット)に接続された陽極13、陰極14、及び参照極(図示略)を有する陽極電解用電極12がイオン液体α1に浸漬されている。陽極13の先端部には前記資源15が付けられている。陽極13の該資源15以外の部位の周りには絶縁管(図示略)が設けられている。陽極13と陰極14の間に前記参照極で設定した電位を印加することにより資源15から、白金族元素および希土類元素を陽極電解してイオン液体α1へ溶解させることができる。前記電位の設定は、溶解させる元素の酸化電位に相当する電極電位から貴な側に0.1V程度とすればよい。例えば、白金族元素(Pd)を溶解させる場合は、Pdの酸化電位に相当する電極電位から貴な側に0.1V程度をポテンショスタットで設定する。
【0049】
上記のように陽極溶解を行うことにより、イオン液体α1中に白金族元素及び希土類元素を溶解することにより、イオン液体β1が得られる。このとき、イオン液体β1中に溶解した白金族元素及び希土類元素の各イオンを安定化するために、白金族イオンのハロゲン化物や希土類イオンのハロゲン化物をイオン液体α1又はイオン液体β1に溶解させておくことが好ましい。
【0050】
上記のように、陽極13側で資源15の陽極溶解を行う一方、陰極14側では、イオン液体α1中への溶出が速く、希土類元素よりも電気化学的に貴な不純物が析出して回収除去される。
【0051】
イオン液体α1中に浸漬する資源15としては、自動車排ガス処理用の触媒等の使用済み資源であってもよいし、前処理によって白金族元素及び希土類元素の含有率を高めた資源であってもよい。
【0052】
前記工程Bにおいて、イオン液体β1に溶解している前記白金族元素及び希土類元素を電解析出により回収する方法を、図1で説明する。第一の槽11にはイオン液体34(イオン液体β1)が入れられており、電源(ポテンショスタット)に接続された陽極17及び陰極18がイオン液体β1に浸漬されている。このような構成を有する第一処理部の第一の電極16において、陽極17と陰極18の間に白金族元素(白金族金属)が析出する電位を印加することにより、イオン液体β1から白金族元素を選択的に陰極18に析出して白金族金属19として回収することができる。
【0053】
前記白金族元素が析出する電位は、イオン液体α1及びβ1のサイクリックボルタンメトリー(CV)を予め測定し、白金族元素および希土類元素の各還元電位ピークに基づいて設定することができる。このとき、陰極電流効率を高める観点から、各還元電位ピークよりも−0.1V側に設定することが好ましい。
【0054】
上記のように、イオン液体β1中に溶解している白金族元素及び希土類元素から、白金族元素を選択的に電解析出して回収することにより、イオン液体β1は希土類元素を溶解しているイオン液体γ1として得られる。
【0055】
前記工程Cにおいて、イオン液体γ1に溶解している前記希土類元素を電解析出により回収する方法を、図1で説明する。第一の槽11にはイオン液体γ1が入れられており、電源(ポテンショスタット)に接続された陽極21及び陰極22がイオン液体γ1に浸漬されている。このような構成を有する第一処理部の第二の電極20において、陽極21と陰極22の間に希土類元素が析出する電位を印加することにより、イオン液体γ1から白金族元素を選択的に陰極22に析出して希土類金属24として回収することができる。
【0056】
前記希土類元素が析出する電位は、イオン液体α1及びβ1若しくはγ1のサイクリックボルタンメトリー(CV)を予め測定し、希土類元素の還元電位ピークに基づいて設定することができる。このとき、陰極電流効率を高める観点から、還元電位ピークよりも−0.1V側に設定することが好ましい。
【0057】
上記のように、イオン液体γ1中に溶解している希土類元素を電解析出して回収することにより、イオン液体γ1は低濃度の希土類元素が残存して溶解しているイオン液体δ1として得られる。
【0058】
前記工程Dにおいて、イオン液体δ1に残存して溶解している前記希土類元素を電気泳動により濃縮して回収する方法を、図1で説明する。第一の槽11にはイオン液体34(イオン液体δ1)が入れられており、電源(直流安定化電源)に接続された陽極27及び陰極28を有する電気泳動用電極26がイオン液体δ1に浸漬されている。陽極27の先端部がイオン液体δ1の液面付近に浸漬され、陽極27の腐食を防止するための非導電性の保護管29が陽極27の周りに設けられている。該液面下における保護管29はイオン液体δ1の深部まで延びた泳動管30となる。泳動管30は中空であり、内部はアルミナ等の非導電性のセラミックス製粒子が充填されている(図示略)。イオン液体δ1が泳動管30の内部へ浸透により流入する。
【0059】
前記保護管29は、陽極27の先端部が浸漬されている液面部において、導出管32が分岐している。図1には示していないが、導出管32にはポンプ等の送液装置が備えられており、陽極27近辺のイオン液体δ1を吸引して導出管32へ導いて、第二の槽39へ適宜送液することができる。
【0060】
上記の構成を有する第二処理部の電気泳動用電極26において、陽極27と陰極28の間に直流で通電させることにより、希土類元素(希土類イオン)が泳動管30の先端31から泳動管30内部へ電気泳動により導かれて、陽極27付近へ濃縮される。濃縮された希土類元素は、泳動管30内部に充填された前記セラミックス製粒子があるので、泳動管30外へ拡散せず、泳動管30内で保持される。
【0061】
前記直流の電流密度は特に制限されないが、0.01〜10.0mA/mmが好ましく、0.05〜5.0mA/mmがより好ましく、0.1〜1.0mA/mmがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、効率の良い電気泳動を行うことができる。また、上記範囲の上限値以上であることにより、イオン液体δ1の温度を高めることなく、室温〜100℃以下というイオン液体が十分に安定な温度で電気泳動を行うことができる。
【0062】
このような電気泳動により、陽極27付近に濃縮された希土類元素(希土類イオン)を含むイオン液体ε1が得られる。
【0063】
イオン液体ε1を導出管32により適宜第二の槽39へ送液して、第二の槽39、並びに陽極37及び陰極38を有する第三の電極36を備えた構成の第三処理部おいて、別途電解析出によりイオン液体ε1から希土類元素を回収することが、純度の高い希土類元素を得る観点から好ましい。
第一処理部においてイオン液体δ1に残存した希土類元素を第二処理部において濃縮したことにより、第三処理部における希土類元素の電解析出を実質的に行うことが可能になる。
【0064】
第三処理部の第三の電極36において、イオン液体ε1に溶解している前記希土類元素を電解析出により回収する方法としては、前記工程Cにおける方法と同様に行うことができる。すなわち、陽極37と陰極38の間に、CVで予め測定した希土類元素が析出する電位を印加することにより、イオン液体ε1から希土類元素を選択的に陰極38に析出して希土類金属43として回収することができる。
【0065】
前記希土類元素が回収されたイオン液体ε1は、再びイオン液体α1として再利用することが可能である。
【0066】
<白金族元素及び希土類元素の回収方法の第二態様>
本発明の白金族元素及び希土類元素の回収方法の第二態様は、前記請求項4に記載の回収方法である。そのプロセスの流れを図2に示す。
前記回収方法に用いることができる白金族元素及び希土類元素の回収装置の一例として図3に示す回収装置50が挙げられる。
【0067】
回収装置50は、第一の槽51内において、白金族元素及び希土類元素を含む資源55を溶解させたイオン液体β2から白金族元素を電解析出により回収する第一の電極56を有する第一処理部と、第一の槽51内において、前記第一の電極56による処理を経たイオン液体γ2に溶解されている希土類元素を電気泳動により濃縮する第二処理部と、第二の槽69内において、前記第二処理部で濃縮された希土類元素を含むイオン液体ε2から希土類元素を電解析出により回収する第二の電極66を有する第三処理部とを少なくとも備えている。
【0068】
第二態様では、まず、イオン液体α2中に白金族元素及び希土類元素を含有する資源55を溶解させたイオン液体β2を得る工程Fを行う。
その後、イオン液体β2に溶解している前記白金族元素を電解析出により回収して得るとともに、該白金族元素の回収処理を経たイオン液体γ2を得る工程Gを行う。
次に、イオン液体γ2に溶解している前記希土類元素を電気泳動により濃縮して、希土類元素の濃度が濃縮により高められたイオン液体ε2を得る工程Hを行う。
【0069】
前記イオン液体α2、β2、γ2、及びε2は、溶媒としてのイオン液体の種類は同一であり、溶解しているものが異なる。
前記イオン液体(イオン液体α2)は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成される。
【0070】
前記イオン液体の具体的な説明は、前述の白金族元素及び希土類元素の回収方法の第一態様におけるイオン液体の具体的な説明と同様である。
【0071】
前記工程Fにおいて、白金族元素及び希土類元素を含有する資源を前記イオン液体(イオン液体α2)に溶解させる方法としては、前記資源から効率よくイオン液体α2へ白金族元素及び希土類元素を溶解させられる方法であれば特に制限されない。例えば、前記資源を前記イオン液体α2中に浸漬して、該資源に含有される白金族元素及び希土類元素をイオン液体α2中に溶出させる方法や、前記資源に電圧を印加して陽極溶解することにより、該資源に含有される白金族元素及び希土類元素をイオン液体α2へ溶解させる方法が挙げられる。該陽極溶解する方法が、効率に優れるため好ましい。
【0072】
前記陽極溶解する方法を、図3で説明する。第一の槽51にはイオン液体64(イオン液体α2)が入れられており、電源(ポテンショスタット)に接続された陽極52、陰極54、及び参照極(図示略)を有する陽極電解用電極52がイオン液体α2に浸漬されている。陽極52の先端部には資源55が付けられている。陽極52の資源55以外の部位の周りには絶縁管(図示略)が設けられている。陽極52と陰極54の間に前記参照極で設定した電位を印加(することにより資源55から、白金族元素および希土類元素を陽極電解してイオン液体α2へ溶解させることができる。前記電位の設定は、溶解させる元素の酸化電位に相当する電極電位から貴な側に0.1V程度とすればよい。例えば、白金族元素(Pd)を溶解させる場合は、Pdの酸化電位に相当する電極電位から貴な側に0.1V程度をポテンショスタットで設定する。
【0073】
上記のように、イオン液体α2中に白金族元素及び希土類元素を溶解することにより、イオン液体β2として得られる。このとき、イオン液体β2中に溶解した白金族元素及び希土類元素の各イオンを安定化するために、白金族イオンのハロゲン化物や希土類イオンのハロゲン化物をイオン液体α2又はイオン液体β2に溶解させておくことが好ましい。
【0074】
上記のように、陽極側で前記資源の陽極溶解を行う一方、陰極側では、イオン液体α2中への溶出が速く、希土類元素よりも電気化学的に貴な不純物が析出して回収除去される。
【0075】
イオン液体α2中に浸漬する資源55としては、自動車排ガス処理用の触媒等の使用済み資源であってもよいし、前処理によって白金族元素及び希土類元素の含有率を高めた資源であってもよい。
【0076】
前記工程Gにおいて、イオン液体β2に溶解している前記白金族元素及び希土類元素を電解析出により回収する方法を、図3で説明する。第一の槽51にはイオン液体β2が入れられており、電源(ポテンショスタット)に接続された陽極57及び陰極58がイオン液体β2に浸漬されている。このような構成を有する第一処理部において、陽極57と陰極58の間に白金族元素(白金族金属)が析出する電位を印加することにより、イオン液体β2から白金族元素を選択的に陰極58に析出して白金族金属59として回収することができる。
【0077】
前記白金族元素が析出する電位は、イオン液体α2及びβ2のサイクリックボルタンメトリー(CV)を予め測定し、白金族元素および希土類元素の各還元電位ピークに基づいて設定することができる。このとき、陰極電流効率を高める観点から、各還元電位ピークよりも−0.1V側に設定することが好ましい。
【0078】
上記のように、イオン液体β2中に溶解している白金族元素及び希土類元素から、白金族元素を選択的に電解析出して回収することにより、イオン液体β2は希土類元素を溶解しているイオン液体γ2として得られる。
【0079】
前記工程Hにおいて、イオン液体γ2に溶解している前記希土類元素を電気泳動により濃縮して回収する方法を、図3で説明する。第一の槽51にはイオン液体γ2が入れられており、電源(直流安定化電源)に接続された陽極61及び陰極62がイオン液体γ2に浸漬されている。陽極61の先端部がイオン液体γ2の液面付近に浸漬され、陽極61の腐食を防止するための非導電性の保護管65が陽極61の周りに設けられている。該液面下における保護管65はイオン液体γ2の深部まで延びた泳動管66となる。泳動管66は中空であり、内部はアルミナ等の非導電性のセラミックス製粒子が充填されている(図示略)。イオン液体γ2が泳動管66の内部へ浸透により流入する。
【0080】
保護管65は、陽極61の先端部が浸漬されている液面部において、導出管68が分岐している。図3には示していないが、導出管68にはポンプ等の送液装置が備えられており、陽極61近辺のイオン液体γ2を吸引して導出管68へ導いて、第二の槽69に適宜送液することができる。
【0081】
上記の構成を有する第二処理部の電気泳動用電極60において、陽極61と陰極62の間に直流で通電させることにより、希土類元素(希土類イオン)が泳動管66の先端67から泳動管66内部へ電気泳動により導かれて、陽極65付近へ濃縮される。濃縮された希土類元素は、泳動管66内部に充填された前記セラミックス製粒子があるので、泳動管66外へ拡散せず、泳動管66内で保持される。
【0082】
前記直流の電流密度は特に制限されないが、0.01〜10.0mA/mmが好ましく、0.05〜5.0mA/mmがより好ましく、0.1〜1.0mA/mmがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、効率の良い電気泳動を行うことができる。また、上記範囲の上限値以上であることにより、イオン液体γ2の温度を高めることなく、室温〜100℃以下というイオン液体が十分に安定な温度で電気泳動を行うことができる。
【0083】
このような電気泳動により、陽極61付近に濃縮された希土類元素(希土類イオン)を含むイオン液体ε2が得られる。
【0084】
イオン液体ε2を導出管68により適宜第二の槽69へ送液して、第二の槽69、並びに陽極71、陰極72を有する第二の電極70を備えた構成の第三処理部おいて、別途電解析出によりイオン液体ε2から希土類元素を回収することが、純度の高い希土類元素を得る観点から好ましい。
第一処理部においてイオン液体γ2に溶解されている希土類元素を第二処理部において濃縮したことにより、第三処理部における希土類元素の電解析出を効率的に行うことが可能になる。
【0085】
第三処理部において、イオン液体ε2に溶解している前記希土類元素を電解析出により回収する方法を、図3で説明する。第二の槽69にはイオン液体ε2が入れられており、電源(ポテンショスタット)に接続された陽極71及び陰極72がイオン液体ε2に浸漬されている。このような構成を有する第三処理部において、陽極71と陰極72の間に希土類元素が析出する電位を印加することにより、イオン液体ε2から希土類元素を選択的に陰極72に析出して希土類金属73として回収することができる。
【0086】
前記希土類元素が析出する電位は、イオン液体α2及びβ2若しくはγ2のサイクリックボルタンメトリー(CV)を予め測定し、希土類元素の還元電位ピークに基づいて設定することができる。このとき、陰極電流効率を高める観点から、還元電位ピークよりも−0.1V側に設定することが好ましい。
【0087】
上記のように、イオン液体ε2中に溶解している希土類元素を電解析出して回収することができる。
また、前記希土類元素が回収されたイオン液体ε2は、再びイオン液体α1として再利用することが可能である。
【0088】
<希土類元素の回収方法>
本発明の希土類元素の回収方法は、前記請求項6に記載の回収方法である。該回収方法に用いることができる希土類元素の回収装置の一例として、図4に示す電気泳動装置80、及び図5に示す電解析出装置100が挙げられる。
【0089】
本発明の希土類元素の回収方法では、まず、イオン液体α3中に希土類元素を含有する資源を溶解させたイオン液体β3を得る工程Jを行う。
次に、イオン液体γ3に溶解している前記希土類元素を電気泳動により濃縮して、希土類元素の濃度が濃縮により高められたイオン液体ε3を得る工程Kを行う。
【0090】
前記イオン液体α3、γ3、及びε3は、溶媒としてのイオン液体の種類は同一であり、溶解しているものが異なる。
前記イオン液体(イオン液体α3)は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成される。
【0091】
前記イオン液体の具体的な説明は、前述の白金族元素及び希土類元素の回収方法の第一態様におけるイオン液体の具体的な説明と同様である。
【0092】
前記工程Jにおいて、希土類元素を含有する資源を前記イオン液体(イオン液体α3)に溶解させる方法としては、前記資源から効率よくイオン液体α3へ希土類元素を溶解させられる方法であれば特に制限されない。例えば、前記資源を前記イオン液体α3中に浸漬して、該資源に含有される希土類元素をイオン液体α3中に溶出させる方法や、前記資源に電圧を印加して陽極溶解することにより、該資源に含有される希土類元素をイオン液体α3へ溶解させる方法が挙げられる。該陽極溶解する方法が、効率に優れるため好ましい。
【0093】
前記陽極溶解する方法を、図5に示す電解析出装置100で説明する。槽102にはイオン液体106(イオン液体α3)が入れられており、電源101(ポテンショスタット)に接続された陽極103、陰極108、及び参照極107がイオン液体α3に浸漬されている。陽極103の先端部には前記資源105が付けられている。陽極103の資源105以外の部位の周りと、陰極108の先端部以外の周りには、腐食を防ぐための絶縁管104、絶縁管109がそれぞれ設けられている。陽極103と陰極108の間に参照極107で設定した電位を印加することにより資源105から、希土類元素を陽極電解してイオン液体α3へ溶解させることができる。前記電位の設定は、溶解させる元素の酸化電位に相当する電極電位から貴な側に0.1V程度とすればよい。例えば、希土類元素(La)を溶解させる場合は、Laの酸化電位に相当する電極電位から貴な側に0.1〜0.2V程度をポテンショスタットで設定する。
【0094】
上記のように、イオン液体α3中に希土類元素を溶解することにより、イオン液体β3として得られる。このとき、イオン液体β3中に溶解した希土類元素のイオンを安定化するために、希土類イオンのハロゲン化物をイオン液体α3又はイオン液体β3に溶解させておくことが好ましい。
【0095】
上記のように、陽極103側で資源105の陽極溶解を行う一方、陰極108側では、イオン液体α3中への溶出が速く、希土類元素よりも電気化学的に貴な不純物が析出物110として回収除去される。
【0096】
イオン液体α3中に浸漬する資源105としては、自動車排ガス処理用の触媒等の使用済み資源であってもよいし、前処理によって希土類元素の含有率を高めた資源であってもよい。
【0097】
前記工程Kにおいて、イオン液体γ3に溶解している前記希土類元素を電気泳動により濃縮して回収する方法を、図4に示す電気泳動装置80で説明する。槽82にはイオン液体90(イオン液体γ3)が入れられており、電源81(直流安定化電源)及びクーロメーター87に接続された陽極83及び陰極88がイオン液体γ3に浸漬されている。陽極83の先端部がイオン液体γ3の液面付近に浸漬され、陽極83の腐食を防止するための非導電性の保護管84が陽極83の周りに設けられている。該液面下における保護管84はイオン液体γ3の深部まで延びた泳動管85となる。泳動管85は中空であり、内部はアルミナ等の非導電性のセラミックス製粒子が充填されている(図示略)。イオン液体γ3が泳動管85の内部へ浸透により流入する。
【0098】
上記の構成を有する電気泳動装置80において、陽極83と陰極88の間に直流で通電させることにより、希土類元素(希土類イオン)が泳動管85の先端86から泳動管85内部へ電気泳動により導かれて、陽極84付近へ濃縮される。濃縮された希土類元素は、泳動管85内部に充填された前記セラミックス製粒子があるので、泳動管85外へ拡散せず、泳動管85内で保持される。
【0099】
前記直流の電流密度は特に制限されないが、0.01〜10.0mA/mmが好ましく、0.05〜5.0mA/mmがより好ましく、0.1〜1.0mA/mmがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、効率の良い電気泳動を行うことができる。また、上記範囲の上限値以上であることにより、イオン液体γ3の温度を高めることなく、室温〜100℃以下というイオン液体が十分に安定な温度で電気泳動を行うことができる。
【0100】
このような電気泳動により、陽極83付近に濃縮された希土類元素(希土類イオン)を含むイオン液体ε3が得られる。
【0101】
泳動管85内のイオン液体ε3を適宜回収して、図5に示す電解析出装置100の槽102へ移し、槽102、陽極103、陰極108を有する構成の電解析出装置100において、電解析出によりイオン液体ε3から希土類元素を回収することにより、純度の高い希土類元素を得ることができる。
電気泳動装置80においてイオン液体γ3に溶解されている希土類元素を濃縮したことにより、電解析出装置100における希土類元素の電解析出を効率的に行うことが可能になる。
【0102】
電解析出装置100において、イオン液体ε3に溶解している前記希土類元素を電解析出により回収する方法を、図5で説明する。槽102にはイオン液体ε3が入れられており、電源101(ポテンショスタット)に接続された陽極103及び陰極108がイオン液体ε3に浸漬されている。陽極103の資源105以外の部位の周りと、陰極108の先端部以外の周りには、腐食を防ぐための絶縁管104、絶縁管109がそれぞれ設けられている。陽極103と陰極108の間に希土類元素が析出する電位を印加することにより、イオン液体ε3から希土類元素を陰極108に析出して希土類金属110として回収することができる。なお、図5では、陽極103の先端部には資源105が付けられているが、希土類元素を陰極108において単に電解析出する場合は、資源105を付けなくてもよい。
【0103】
前記希土類元素が析出する電位は、イオン液体α3及びβ3若しくはγ3のサイクリックボルタンメトリー(CV)を予め測定し、希土類元素の還元電位ピークに基づいて設定することができる。このとき、陰極電流効率を高める観点から、還元電位ピークよりも−0.1V側に設定することが好ましい。
【0104】
上記のように、イオン液体ε3中に溶解している希土類元素を電解析出して回収することができる。
また、前記希土類元素が回収されたイオン液体ε3は、再びイオン液体α3として再利用することが可能である。
【0105】
<白金族元素の回収方法>
本発明の白金族元素の回収方法は、前記請求項8に記載の回収方法である。該回収方法に用いることができる白金族元素の回収装置の一例として図5に記載の電解析出装置100が挙げられる。
【0106】
本発明の白金族元素の回収方法では、まず、イオン液体α4中に白金族元素を含有する資源を溶解させたイオン液体β4を得る工程Mを行う。
その後、イオン液体β4に溶解している前記白金族元素を電解析出により回収して得るとともに、該白金族元素の回収処理を経たイオン液体γ4を得る工程Nを行う。
【0107】
前記イオン液体α4、β4、及びγ4は、溶媒としてのイオン液体の種類は同一であり、溶解しているものが異なる。
前記イオン液体(イオン液体α4)は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成される。
【0108】
前記イオン液体の具体的な説明は、前述の白金族元素及び希土類元素の回収方法の第一態様におけるイオン液体の具体的な説明と同様である。
【0109】
前記工程Mにおいて、白金族元素を含有する資源を前記イオン液体(イオン液体α4)に溶解させる方法としては、前記資源から効率よくイオン液体α4へ白金族元素を溶解させられる方法であれば特に制限されない。例えば、前記資源を前記イオン液体α4中に浸漬して、該資源に含有される白金族元素をイオン液体α4中に溶出させる方法や、前記資源に電圧を印加して陽極溶解することにより、該資源に含有される白金族元素をイオン液体α4へ溶解させる方法が挙げられる。該陽極溶解する方法が、効率に優れるため好ましい。
【0110】
前記陽極溶解する方法を、図5で説明する。槽102にはイオン液体α4が入れられており、電源101(ポテンショスタット)に接続された陽極103、陰極108、及び参照極107がイオン液体α4に浸漬されている。陽極103の先端部には前記資源105が付けられている。陽極103の資源105以外の部位の周りと、陰極108の先端部以外の周りには、腐食を防ぐための絶縁管104、絶縁管109がそれぞれ設けられている。陽極103と陰極108の間に参照極107で設定した電位を印加することにより資源105から、白金族元素を陽極電解してイオン液体α4へ溶解させることができる。前記電位の設定は、溶解させる元素の酸化電位に相当する電極電位から貴な側に0.1V程度とすればよい。例えば、白金族元素(Pd)を溶解させる場合は、Pdの酸化電位に相当する電極電位から貴な側に0.1V程度をポテンショスタットで設定する。
【0111】
上記のように、イオン液体α4中に白金族元素を溶解することにより、イオン液体β4として得られる。このとき、イオン液体β4中に溶解した白金族元素のイオンを安定化するために、白金族イオンのハロゲン化物をイオン液体α4又はイオン液体β4に溶解させておくことが好ましい。
【0112】
上記のように、陽極側で前記資源の陽極溶解を行う一方、陰極側では、白金族元素よりも電気化学的に貴な不純物が該イオン液体β4中に溶解している場合には、析出物101として回収除去される。
【0113】
イオン液体α4中に浸漬する資源105としては、自動車排ガス処理用の触媒等の使用済み資源であってもよいし、前処理によって白金族元素の含有率を高めた資源であってもよい。
【0114】
前記工程Nにおいて、イオン液体β4に溶解している前記白金族元素を電解析出により回収する方法を、図5で説明する。槽102にはイオン液体β4が入れられており、電源101(ポテンショスタット)に接続された陽極103及び陰極108がイオン液体β4に浸漬されている。陽極103と陰極108の間に白金族元素(白金族金属)が析出する電位を印加することにより、イオン液体β4から白金族元素を陰極108に析出して白金族金属110として回収することができる。
【0115】
前記白金族元素が析出する電位は、イオン液体α4及びβ4のサイクリックボルタンメトリー(CV)を予め測定し、白金族元素の還元電位ピークに基づいて設定することができる。このとき、陰極電流効率を高める観点から、該還元電位ピークよりも−0.1V側に設定することが好ましい。
【0116】
上記のように、イオン液体β4中に溶解している白金族元素を電解析出して回収することができる。
また、前記白金族元素が回収されたイオン液体γ4は、再びイオン液体α4として再利用することが可能である。
【実施例】
【0117】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0118】
[イオン液体の調製1]
トリエチル−n−ペンチルホスホニウムカチオン(P2225)の臭化物(日本化学工業株式会社製)と、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドアニオン(TFSI)のリチウム塩(関東化学株式会社製)とを蒸留水中で温度70℃で攪拌して反応させた。
前記反応で生成したイオン液体相をジクロロエタンで抽出し、エバポレーションにより溶媒を除去し、さらに真空乾燥することによって、P2225TFSI(トリエチル−n−ペンチルホスホニウム・ビストリフルオロメチルスルホニルイミド)と表記されるイオン液体を得た。
【0119】
[イオン液体の調製2]
トリエチル−n−ペンチルアンモニウムカチオン(N2225)の臭化物(日本化学工業株式会社製)と、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドアニオン(TFSI−)のリチウム塩(関東化学株式会社製)とを蒸留水中で温度70℃で攪拌して反応させた。
前記反応で生成したイオン液体相をジクロロエタンで抽出し、エバポレーションにより溶媒を除去し、さらに真空乾燥することによって、N2225TFSI(トリエチル−n−ペンチルアンモニウム・ビストリフルオロメチルスルホニルイミド)と表記されるイオン液体を得た。
【0120】
[希土類元素の調製]
過剰量のランタン酸化物(La;和光純薬工業株式会社製)にビス(トリフルオロメチル)スルホニルアミン(HTFSI;関東化学株式会社製)を加え、蒸留水中で温度70℃に保持して、反応させた。その後、未反応の酸化物をろ過し、ろ液をエバポレーションにより濃縮した。濃縮物を真空乾燥して希土類金属塩(LaTFSI)を調製した。
【0121】
[実施例1]
<白金族元素の回収試験1>
図5に示す陽極溶解装置(電解析出装置)を用いて、白金族元素を含む固体試料からイオン液体(P2225TFSI)へ白金族元素を溶解させて、ついで、該白金族元素をイオン液体中から回収した試験例を以下に示す。
【0122】
(白金族元素の陽極溶解)
P2225TFSIを満たした陽極溶解浴に、Pd金属からなる陽極、Pt金属からなる陰極、及び参照極を浸漬させた。参照極として、アセトニトリル/0.1Mのテトラブチルアンモニウムパークロレート(TBAP)/0.01Mの硝酸銀溶液を使用した。陽極溶解時のPd金属の溶出速度を高めるため、P2225TFSIに対応するブロミド塩(P2225Br)と臭化パラジウム(PdBr)を4:1のモル比で陽極溶解浴に添加した。その後、−0.9Vの定電位を印加して、Pd金属の陽極溶解を行った。陽極溶解時のPd金属の溶解は、Pd(II)イオン濃度の増加として、紫外可視分光スペクトルで確認した。その結果、波長480nm付近にPd(II)イオンに特有のピークが観測され(図6参照)、陽極溶解時間とともに増加していくことが確認された。
【0123】
(白金族元素の電解析出)
上述の陽極溶解後、Pd金属(陽極)とPt金属(陰極)を陽極溶解浴から引き出し、新たに陽極としてPt金属、陰極としてSUS基板を浸漬させた。温度27℃にて、−1.9Vの定電位を印加して、599分間の電解析出試験を行った。その結果、陰極に10.5mgのPd金属が析出した。析出量から計算した陰極電流効率(陰極電流効率(%)=実際の析出量(mg)/理論析出量(mg)×100%)は94.6%であった。この実験により、陽極溶解工程、電解析出工程という連続的な工程により、白金族元素(Pd)の回収が可能であることを確認できた。
【0124】
[実施例2]
<白金族元素の回収試験2>
(白金族元素の陽極溶解)
実施例1におけるP2225TFSIをN2225TFSIに換えて、実施例1と同様の方法で、白金族元素の陽極溶解試験及び電解析出試験を行った。
すなわち、N2225TFSIを満たした陽極溶解浴に、Pd金属からなる陽極、Pt金属からなる陰極、及び参照極を浸漬させた。参照極として、アセトニトリル/0.1Mのテトラブチルアンモニウムパークロレート(TBAP)/0.01Mの硝酸銀溶液を使用した。陽極溶解時のPd金属の溶出速度を高めるため、N2225TFSIに対応するブロミド塩(N2225Br)と臭化パラジウム(PdBr2)を4:1のモル比で陽極溶解浴に添加した。その後、−0.9Vの定電位を印加して、Pd金属の陽極溶解を行った。陽極溶解中のPd金属の溶解は紫外可視分光スペクトルによって確認した。
【0125】
ここで、P2225TFSIとN2225TFSI浴塩中へのPdの溶出濃度を陽極溶解時間に対してプロットした結果を図7に示す。
図7から明らかなように、陽極溶解時のPd溶出速度はP2225TFSI(図では「●」で示した)の方が大きく、溶解性に優れることがわかる。これはP2225TFSIの方がN2225TFSI(図では「○」で示した)に比べて、低粘性かつ高導電性であるため、Pd溶出時の拡散や分散速度が大きくなり、溶解性に反映していることが推測される。
【0126】
(白金族元素の電解析出)
この陽極溶解後、Pd金属(陽極)とPt金属(陰極)を陽極溶解浴から引き出し、新たに陽極としてPt金属、陰極としてSUS基板を浸漬させた。温度27℃にて、−1.9Vの定電位を印加して、584分間の電解析出試験を行った。その結果、陰極に9.8mgのPd金属が析出した。析出量から計算した陰極電流効率は90.6%であった。N2225TFSI中からのPd回収が可能であることを確認できた。
【0127】
以上の結果から、P2225TFSIの方が、N2225TFSIよりも、白金族元素の溶解性に優れ、電解析出もより高効率であることが確認された。
【0128】
[実施例3]
<希土類元素の回収試験1>
(希土類元素の濃縮による回収)
図4に示す電気泳動装置を用いて、P2225TFSIへ溶解させた希土類元素(La)を濃縮して回収した試験例を以下に示す。
まず、P2225TFSIに、希土類イオン濃度が0.1mol%となるようにLaTFSIを溶解させた。
つぎに、減圧下、100℃で一昼夜乾燥した試料を電気泳動浴として使用した。
電気泳動は、浴塩温度25℃、電流密度0.1mA/mmの条件で、265分間の通電を行った。全電気量はCuクーロメーターにより測定した。通電電流を遮断後、電気泳動浴中の泳動管を引き上げて、急速に冷却し、泳動管中のP2225TFSIを固化させた。泳動管の陽極側から一定間隔で分画して順に番号を振ったフラクションごとのランタン濃度と第4級ホスホニウムカチオン(P2225)の濃度を、それぞれICP発光分析とイオンクロマトグラフ装置を用いた定量分析により決定した。
【0129】
その結果、図8に示すように、陽極に近いフラクションほどLaを高濃度で含むことが確認された。なお、図8は、電気泳動後の電気泳動浴に残存する陽イオン成分に対する、泳動管中の各フラクションに含まれるLaの濃度比を示すものであり、縦軸はLaの濃度比、横軸は陽極からの距離(cm)とフラクションナンバーである。例えば、フラクション1からフラクション5までの平均La濃度は約1.9mol%であり、約19倍に濃縮して回収できたことがわかる。
以上の結果より、低濃度で含まれる希土類元素であっても、電気泳動によって濃縮して回収できることが確認された。
【0130】
(希土類元素の電解析出による回収)
つぎに、La(III)イオンを前記フラクション4からフラクション5に相当する1.0mol%の濃度で溶解させたP2225TFSI(試料C)のサイクリックボルタンメトリ(CV)を測定した。
その結果、図9に示すように、La(III)イオンを含まない場合(図9の(a))と比較して、含む場合のサイクリックボルタモグラム(図9の(b))には、−2.8V付近にLa(III)から金属Laへの還元ピークが観察された。
【0131】
つぎに、前記CVの結果に基づき、図5に示す電解析出装置(陽極溶解装置)を用いて、試料Cに溶解されているLa(III)を電解析出して回収する試験を行った。
作用極(陰極)としてFe基板、対極(陽極)として白金線、参照極としてアセトニトリル/0.1MのTBAP/0.01Mの硝酸銀溶液、をそれぞれ使用した。前記La(III)の還元電位とほぼ同じ値の−2.9Vの定電位を印加して、温度27℃にて、572分間の定電位電解を行った。
【0132】
その結果、陰極に12.3mgのLaを析出させて、陰極電流効率94.9%で回収することができた。陰極基板上の析出物が金属Laであることは、EDX分析装置(エネルギー分散型X線分光分析装置)で確認した(図10)。
【0133】
[実施例4]
<希土類元素の回収試験2>
(希土類元素の濃縮による回収)
実施例3におけるP2225TFSIをN2225TFSIに換えて、実施例3と同様の方法で、希土類元素(La)を濃縮して回収した。
【0134】
その結果、図8に併記したように、P2225TFSIの方が、N2225TFSIよりも、高効率でLaを濃縮して回収できることが明らかである。すなわち、フラクション1で両者を比較した場合、P2225TFSIの方が約1.5倍の高濃度でLaを含有している。また、フラクション1〜10で両者を比較した場合、P2225TFSIの方が、Laの回収率が高いことが明らかである。
【0135】
このように、P2225TFSIの方が優れた希土類元素の回収効率を示す理由は次のように考えられる。P2225TFSIの方がN2225TFSIよりも低粘性であることは、P2225TFSIにおける有機カチオンとアニオン間の静電相互作用がより弱くなっていることを示唆している。そのため、P2225TFSI中では、希土類イオンとアニオン間に比較的強固な静電相互作用が形成されていると同時に、希土類錯体が安定化していると推測される。また、前記低粘性であることにより、電気泳動浴における希土類イオンの移動度が有機カチオンより遅くなるため、優れた回収効率を示すと考えられる。
【0136】
[実施例5]
<希土類元素の回収試験3>
(希土類元素の濃縮による回収)
図4に示す電気泳動装置を用いて、N2225TFSIへ溶解させた希土類塩(LaTFSI)を濃縮後、順次回収した試料を用いて、引き続き定電位電解を行うことにより希土類金属(La)を回収した試験例を以下に示す。
【0137】
まず、N2225TFSIに、La(III)イオンが0.1mol%となるようにLaTFSIを溶解させた。次に、減圧下、100℃で一昼夜真空乾燥した試料を電気泳動浴として使用した。1回目の電気泳動は、浴塩温度45℃、電流密度0.25mA/mmの条件で185分間の通電を行った。通電後、アノード分離管上部の希土類濃縮塩を取り出し、電気泳動浴とは異なる電解析出浴に移した。2回目の電気泳動については、浴塩温度と電流密度は1回目と同じ条件で、通電時間を200分間にて行った。2回目の通電終了後、希土類濃縮塩は1回目の濃縮物と同じ電解析出浴に移した。以下、同様の泳動操作にて、合計5回の電気泳動を行い、得られた希土類濃縮塩を全て電解析出浴に回収した。定量分析の結果、計5回の電気泳動により濃縮された希土類塩の濃度は、1.8mol%であった。
【0138】
(希土類元素の電解析出による回収)
次に、この濃縮された希土類塩を含む電解析出浴に、Pt金属からなる陽極、Fe金属からなる陰極、及び参照極を浸漬させた。参照極として、アセトニトリル/0.1Mのテトラブチルアンモニウムパークロレート(TBAP)/0.01Mの硝酸銀溶液を使用した。浴塩温度45℃において、−2.9Vの定電位を印加して、504分間の電解析出を行った。その結果、陰極に13.7mgのLa金属が析出した。析出量から計算した陰極電流効率は93.2%であった。
このように、電気泳動工程で得られた希土類濃縮塩を引き続く電解析出工程で使用し、希土類金属(La)の回収が可能であることを確認できた。
【0139】
[実施例6]
<希土類元素の回収試験4>
(希土類元素の濃縮による回収)
図4に示す電気泳動装置を用いて、P2225TFSIへ溶解させた希土類塩(CeTFSI)を濃縮後、順次回収した試料を用いて、引き続き定電位電解を行うことにより希土類金属(Ce)を電解析出により回収した試験例を以下に示す。
【0140】
まず、P2225TFSIに、Ce(III)イオンが0.1mol%となるようにCeTFSIを溶解させた。次に、減圧下、100℃で一昼夜真空乾燥した試料を電気泳動浴として使用した。1回目の電気泳動は、浴塩温度50℃、電流密度0.15mA/mmの条件で220分間の通電を行った。通電後、アノード分離管上部の希土類濃縮塩を取り出し、電気泳動浴とは異なる電解析出浴に移した。2回目の電気泳動については、浴塩温度と電流密度は1回目と同じ条件で、通電時間を245分間にて行った。2回目の通電終了後、希土類濃縮塩は、1回目の濃縮物と同じ電解析出浴に移した。以下、同様の泳動操作にて、3−5回目の電気泳動を行い、得られた希土類濃縮塩を全て電解析出浴に回収した。定量分析の結果、計5回の電気泳動により濃縮された希土類塩の濃度は、1.2mol%であった。
【0141】
ここで、図11は、バッチ処理により実施した電気泳動結果の一例である。図11では、電気泳動浴に残存する陽イオン成分に対する泳動管中の各フラクションに含まれるCeの濃度比を示しており、縦軸はCeの濃度比、横軸は陽極からの距離(cm)とフラクションナンバーである。図11から明らかなようにP2225TFSI中で電気泳動を行うことにより、特に1フラクション目において、希土類元素(Ce)が濃縮されていることがわかる。また、N2225TFSI中でもCeは濃縮されているが、その濃縮効果は低粘性のP2225TFSIの方が顕著であることは、Laの場合と同じ理由に基づくものと推測される。
【0142】
以上の結果から、陽極に近いフラクションほどCeを高濃度で含むことが確認された。例えば、フラクション1からフラクション5までの平均Ce濃度は約1.4mol%であり、約14倍に濃縮して回収できた。
また、低濃度で含まれる希土類元素であっても、電気泳動によって濃縮して回収できることが確認された。
【0143】
(希土類元素の電解析出による回収)
次に、この濃縮された希土類塩を含む電解析出浴に、Pt金属からなる陽極、Fe金属からなる陰極、及び参照極を浸漬させた。参照極として、アセトニトリル/0.1Mのテトラブチルアンモニウムパークロレート(TBAP)/0.01Mの硝酸銀溶液を使用した。浴塩温度50℃において、−2.9Vの定電位を印加して、460分間の電解析出を行った。その結果、陰極に12.6mgのCe金属が析出した。析出量から計算した陰極電流効率は95.3%であった。
このように、電気泳動工程で得られた希土類濃縮塩を引き続く電解析出工程で使用し、希土類金属(Ce)の回収が可能であることを確認できた。
【0144】
[実施例7]
<希土類元素の回収試験5>
また、Ce(III)イオンを1.0mol%の濃度で溶解させたP2225TFSI(以下、試料Dという。)のサイクリックボルタンメトリ(CV)を測定した。
その結果、図12に示すように、Ce(III)イオンを含まない場合(図12の(a))と比較して、含む場合のサイクリックボルタモグラム(図12の(b))には、−0.5V付近にCe(III)とCe(IV)との価数変化に伴う酸化還元ピークが観察された。また、−2.75V付近にCe(III)から金属Ceへの還元ピークが観察された。
【0145】
(希土類元素の電解析出による回収)
つづいて、前記CVの結果に基づき、図5に示す電解析出装置(陽極溶解装置)を用いて、試料Dに溶解されているCe(III)を電解析出して回収する試験を行った。
作用極(陰極)としてFe基板、対極(陽極)として白金線、参照極としてアセトニトリル/0.1MのTBAP/0.01Mの硝酸銀溶液、をそれぞれ使用した。前記Ce(III)の還元電位とほぼ同じ値の−2.9Vの定電位を印加して、温度27℃にて、476分間の定電位電解を行った。
【0146】
その結果、陰極に10.7mgのCeを析出させて、陰極電流効率92.1%で回収することができた。陰極基板上の析出物が金属Ceであることは、EDX分析装置(エネルギー分散型X線分光分析装置)で確認した。
【0147】
[実施例8]
<白金族元素及び希土類元素の選択的回収試験1>
P2225TFSI中に白金族元素(Pd)と希土類元素(La)とを含む溶液は、PdBr(PdBr:P2225Br=1:4)を0.5mol%、LaTFSIを0.1mol%になるようにそれぞれ溶解させて、試料Eとして、調製した。
【0148】
(白金族元素の電解析出による選択的回収)
試料EからPdを選択的に分離する電解析出試験を行った。
まず、試料EのCVを測定したところ、図13に示すように、Pd(II)イオン及びLa(III)イオンを含まない場合(図13の(a))と比較して、これらを含む場合のサイクリックボルタモグラム(図13の(b))には、−1.8V付近にPd(II)から金属Pdへの還元ピークが観察された。また、−2.8V付近にLa(III)から金属Laへの還元ピークが観察された。
【0149】
つぎに、前記CVの結果に基づき、図3に示す回収装置を用いて、試料Eに溶解されているPd(II)を選択的に電解析出して回収する試験を行った。
まず、試料Eを減圧下、100℃で72h真空乾燥して、電解析出浴として使用した。1回目の電解析出回収では、陽極に白金電極、陰極にSUS基板を用いて、浴塩温度45℃、−1.9Vにて660分間の定電位電解を行った。その結果、陰極に11.8mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は96.5%であった。
続く2回目の定電位電解では、陰極を新しいSUS基板に取り替えて、1回目と同じ浴塩温度、設定電位にて540分間の定電位電解を行った。その結果、陰極に9.6mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は95.9%であった。さらに、陰極を交換後、3回目の定電位電解では、440分間の電解を実施した結果、7.8mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は95.7%であった。
陰極基板上の析出物が金属Pdであることは、XRD分析装置(X線回折装置)で確認した(図14)。
【0150】
合計3回の電解析出実験で回収できたPdは29.2mgであった。全回収量と仕込み濃度から計算した結果、電解回収率:96.6%(電解回収率(%)=実際の電解回収量(mg)/イオン液体中の初期仕込み量(mg)×100%)であり、P2225TFSI中のPdは概ね全量を回収できた。
【0151】
以上の結果より、白金族元素及び希土類元素の両方を溶解したイオン液体から、白金族元素を選択的に電解析出させて回収できることが確認できた。
【0152】
(希土類元素の電気泳動および電解析出による選択的回収)
次の段階では、P2225TFSI中に残存する希土類元素(La)を回収するため、引き続き、同じ浴槽中に電気泳動用の分離管(陽極)とタングステン線(陰極)を浸漬させて、希土類元素の電気泳動実験を実施した。1回目の電気泳動では、浴塩温度45℃、電流密度:0.15mA/mmの条件で、175分間の通電を行った。電気泳動後の希土類濃縮物は順次、系外に取り出した。同様の電気泳動実験を合計5回実施し、平均通電時間:216分間の電気泳動後に回収したLa濃度を定量分析した結果、La濃度は1.7mol%まで高められていることが確認できた。
この希土類濃度を高めた電解析出浴中に、陽極に白金線、陰極にFe基板を浸漬させて、浴塩温度45℃、−2.9Vにて620分間の定電位電解を行った。その結果、9.4mgのLaの析出を確認した。これは陰極電流効率で94.0%に相当することを確認した。
【0153】
このように、白金族元素(Pd)と希土類元素(La)を含むイオン液体中から電解析出工程により白金族元素(Pd)を選択的に回収できることを確認した。また、白金族元素(Pd)を回収後にイオン液体中に残存する希土類元素に対して、電気泳動工程により希土類元素(La)の濃縮を行った後、電解析出工程により希土類金属(La)を回収できることを確認した。
【0154】
[実施例9]
<白金族元素及び希土類元素の選択的回収試験2>
P2225TFSIをN2225TFSIに換えて、実施例8と同様の試験を行った。
N2225TFSIに白金族元素(Pd)及び希土類元素(La)を含む溶液は、PdBr2(PdBr:N2225TFSI=1:4)を0.5mol%、LaTFSIを0.1mol%になるようにそれぞれ溶解させて、試料Fとして、調製した。
【0155】
(白金族元素の電解析出による選択的回収)
試料FからPdを選択的に分離する電解析出試験を行った。
まず、試料FのCVを測定したところ、Pd(II)イオン及びLa(III)イオンを含まない場合と比較して、これらを含む場合のサイクリックボルタモグラムには、−1.8V付近にPd(II)から金属Pdへの還元ピークが観察された。また、−2.8V付近にとLa(III)から金属Laへの還元ピークが観察された。
【0156】
つぎに、前記CVの結果に基づき、図3に示す回収装置を用いて、試料Fに溶解されているPd(II)を選択的に電解析出して回収する試験を行った。
まず、試料Fを減圧下、100℃で72h真空乾燥して、電解析出浴として使用した。1回目の電解回収では、陽極に白金電極、陰極にSUS基板を用いて、浴塩温度45℃、−1.9Vにて600分間の定電位電解を行った。その結果、陰極に10.6mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は95.3%であった。
続く2回目の定電位電解では、陰極を新しいSUS基板に取り替えて、1回目と同じ浴塩温度、設定電位にて525分間の定電位電解を行った。その結果、陰極に9.1mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は93.5%であった。さらに、陰極を交換後、3回目の定電位電解では、425分間の電解を実施した結果、7.4mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は94.0%であった。
陰極基板上の析出物が金属Pdであることは、XRD分析装置(X線回折装置)で確認した。
【0157】
合計3回の電解析出実験で回収されたPdは、27.1mgであった。全回収量と仕込み濃度から計算した結果、電解回収率:86.4%であった。ここで、P2225TFSIを用いたPd電解回収率(96.6%)の方が,N2225TFSIを用いた電解回収率よりも高い理由は、P2225TFSIがN2225TFSIに比べて、低粘性・高導電性であるため、白金族錯イオン、希土類錯イオンの拡散係数が大きいことに起因すると推測される。
【0158】
(希土類元素の電気泳動および電解析出による選択的回収)
次の段階で、N2225TFSI中に残存する希土類元素(La)を回収するため、引き続き、同じ浴槽中に電気泳動用の分離管(陽極)とタングステン線(陰極)を浸漬させて、希土類元素の電気泳動実験を実施した。合計5回の電気泳動では、浴塩温度45℃、平均電流密度:0.15mA/mm、平均通電時間:264分間の条件で行った。電気泳動によって濃縮された希土類濃縮物は順次、系外に取り出した。この濃縮後のLa濃度を定量分析した結果、1.3mol%まで高められていることが確認できた。この希土類濃度を高めた電解析出浴に、陽極に白金線、陰極にFe基板を浸漬させて、浴塩温度45℃、−2.9Vにて600分間の定電位電解を行った。その結果、8.8mgのLaの析出を確認した。これは陰極電流効率で91.0%に相当することを確認した。
【0159】
[実施例10]
<白金族元素及び希土類元素の選択的回収試験3>
P2225TFSIに0.1mol%の割合で希土類元素(La)を含有するように、LaTFSIを溶解させた。この希土類元素を希薄に含む陽極溶解浴に、Pd金属からなる陽極、Pt金属からなる陰極、及び参照極を浸漬させた。参照極として、アセトニトリル/0.1Mのテトラブチルアンモニウムパークロレート(TBAP)/0.01Mの硝酸銀溶液を使用した。その後、−0.9Vの定電位を印加して、Pd金属の陽極溶解を行った。陽極溶解時のPd金属の溶解は紫外可視分光スペクトルで確認した。このようにして得られた白金族元素(Pd)および希土類元素(La)を溶解したイオン液体試料を調製し、つぎに該イオン液体試料から、PdおよびLaを選択的に回収した。
【0160】
(白金族元素の電解析出による選択的回収)
まず、白金族元素(Pd)を回収するため、陽極に白金電極、陰極にSUS基板を用いて、浴塩温度40℃、−1.9Vにて575分間の定電位電解を行った。その結果、陰極に10.3mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は96.7%であった。続く2回目の定電位電解では、陰極を新しいSUS基板に取り替えて、1回目と同じ浴塩温度、設定電位にて545分間の定電位電解を行った。その結果、陰極に9.7mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は96.1%であった。さらに、陰極を交換後、3回目の定電位電解では、495分間の電解を実施した結果、8.8mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は95.9%であった。合計3回の白金族元素の電解析出実験で回収できたPdは28.8mgであった。全回収量と仕込み濃度から計算した結果、電解回収率:95.3%であり、P2225TFSI中のPdは概ね回収できたことを確認した。
【0161】
(希土類元素の電気泳動および電解析出による選択的回収)
次の段階では、P2225TFSI中に残存する希土類元素(La)を回収するため、引き続き、同じ浴槽中に電気泳動用の分離管(陽極)とタングステン線(陰極)を浸漬させて、希土類元素の電気泳動実験を実施した。1回目の電気泳動では、浴塩温度40℃、電流密度:0.15mA/mmの条件で、180分間の通電を行った。電気泳動後の希土類濃縮物は順次、系外に取り出した。同様の電気泳動実験を合計5回実施し、平均通電時間:206分間の電気泳動後に回収したLa濃度を定量分析した結果、La濃度は1.4mol%まで高められていることが確認できた。
【0162】
この希土類濃度を高めた電解析出浴中に、陽極に白金線、陰極にFe基板を浸漬させた。1回目の電解析出実験では、浴塩温度40℃、−2.9Vにて895分間の定電位電解を行った。その結果、13.6mgのLaの析出を確認した。これは陰極電流効率で94.2%に相当する。引き続き、2回目の電解析出実験では、1回目と同じ浴塩温度、設定電位にて、800分間の定電位電解を行った。その結果、12.3mgのLaの析出を確認した。析出量から計算した結果、陰極電流効率で95.4%に相当する。さらに、3回目の電解析出実験においても、1回目と同じ浴塩温度、設定電位にて、760分間の定電位電解を行った。その結果、11.4mgのLaの析出を確認し、析出量から陰極電流効率は93.0%であった。合計3回の希土類元素の電解回収実験で回収できたLaは37.3mgであった。全回収量と仕込み濃度から計算した結果、電解回収率:94.5%であり、P2225TFSI中に残存するLaを概ね回収できたことを確認した。
【0163】
このように、陽極溶解工程と電解析出工程で希土類元素が含有するイオン液体中から白金族元素を溶出させ、高効率で選択的に回収できることを確認した。また、白金族元素を取り除いた後、残存する希土類元素を電気泳動工程で濃縮させ、引き続く電解析出工程で希土類元素を高効率で回収できることを確認した。
【0164】
[実施例11]
<白金族元素及び希土類元素の選択的回収試験4>
実施例10と同様にして得られた白金族元素(Pd)および希土類元素(La)を溶解したイオン液体試料を調製し、つぎに該イオン液体試料から、以下の方法でPdおよびLaを選択的に回収した。
【0165】
(白金族元素の電解析出による選択的回収)
まず、白金族元素(Pd)を回収するため、陽極に白金電極、陰極にSUS基板を用いて、浴塩温度50℃、−1.9Vにて580分間の定電位電解を行った。その結果、陰極に10.4mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は96.8%であった。続く2回目の定電位電解では、陰極を新しいSUS基板に取り替えて、1回目と同じ浴塩温度、設定電位にて530分間の定電位電解を行った。その結果、陰極に9.4mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は95.7%であった。さらに、陰極を交換後、3回目の定電位電解では、510分間の電解を実施した結果、8.7mgのPd析出を確認し、陰極電流効率は92.1%であった。合計3回の白金族元素の電解析出実験で回収できたPdは28.5mgであった。全回収量と仕込み濃度から計算した結果、電解回収率:94.3%であり、P2225TFSI中のPdは概ね回収できたことを確認した。
【0166】
(希土類元素の電解析出による選択的回収)
つぎに、Pdが回収されたイオン液体試料に、陽極として白金線、陰極としてFe基板を浸漬させて、予めCV測定によって調べたLaの還元電位(−2.8V)に基づいて定電位電解を行った。電解析出実験では、浴温度50℃で−2.95Vを電極に印加して、360分間の定電位分解を行った。その結果、4.9mgのLaの析出を確認した。これは陰極電流効率で84.4%に相当する。
【0167】
(希土類元素の電気泳動および電解析出による選択的回収)
次の段階では、P2225TFSI中に残存する希土類元素(La)を回収するため、引き続き、同じ浴槽中に電気泳動用の分離管(陽極)とタングステン線(陰極)を浸漬させて、希土類元素の電気泳動実験を実施した。電気泳動では、浴塩温度50℃、電流密度:0.18mA/mmの条件で、平均通電時間:245分間にて、合計3回実施した。電気泳動後の希土類濃縮物は順次、系外に取り出し、電気泳動後に回収したLa濃度を定量分析した結果、La濃度は1.2mol%まで高められていることが確認できた。
【0168】
この希土類濃度を高めた電解析出浴中に、陽極に白金線、陰極にFe基板を浸漬させた。電解析出実験では、浴塩温度50℃、−2.95Vにて320分間の定電位電解を行った。その結果、4.7mgのLaの析出を確認した。これは陰極電流効率で.91.1%に相当する。
【0169】
このように、陽極溶解工程と電解析出工程で希土類元素が含有するイオン液体中から白金族元素を溶出させ、高効率で選択的に回収できることを確認した。また、白金族元素を取り除いた後、電解析出工程により希土類の一部を回収し、残存する希土類元素を電気泳動工程で濃縮させ、引き続く電解析出工程で希土類元素を高効率で回収できることを確認した。
【0170】
[実施例12]
<白金族元素の回収試験3>
図5に示す陽極溶解装置(電解析出装置)を用いて、白金族元素を含む固体試料からイオン液体(P2225FSA)へ白金族元素を溶解させて、ついで、該白金族元素をイオン液体中から回収した試験例を以下に示す。
【0171】
[イオン液体の調製3]
トリエチル-n-ペンチルホスホニウムカチオン(P2225)の臭化物(日本化学工業株式会社製)とビスフルオロスルホニルアミドアニオン(FSA)のカリウム塩(三菱マテリアル電子化成株式会社製)とを蒸留水中で温度70〜75℃で攪拌して反応させた。
前記反応で生成したイオン液体相をジクロロエタンで抽出し、エバポレーションにより溶媒を除去した。その後、100℃で72時間以上の真空乾燥を行い、水分量50ppm以下のP2225FSA(別名:P2225FSI)と表記されるイオン液体を得た。
【0172】
(白金族元素の陽極溶解)
P2225FSAを満たした陽極溶解浴に、P2225FSAに対応するブロミド塩(P2225Br)と臭化パラジウム(PdBr2)を4:1のモル比で0.1mol%となるように陽極溶解浴に溶解した。これは、陽極溶解時のPd金属の溶出速度を高めるためである。
次に、Pd金属からなる陽極、Pt金属からなる陰極(Pt線)、及び参照極を陽極溶解浴に浸漬させた。参照極として、EMITFSA(エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド)中に0.1MのAgCF3SO3(トリフロオロメタンスルホン酸銀)を溶解させて銀線を浸漬させた構造の電極を使用した。その後、−1.05Vの定電位を印加して、Pd金属の陽極溶解を行った。陽極溶解浴から一定時間ごとにサンプリングして、ICP/MSによってPd(II)イオン濃度を定量分析した。その結果、定電位の印加時間とともに、Pd(II)イオン濃度が増加していくことが確認された。
【0173】
(白金族元素の電解析出)
上述の陽極溶解後、Pd金属(陽極)とPt金属(陰極)を陽極溶解浴から引き出し、新たに陽極としてPd金属、陰極としてSUS基板を浸漬させた。温度100℃にて、−1.9Vの定電位を印加して、204分間の電解析出試験を行った。なお、定電位の設定値は、実施例9と同様のCVを行った結果を参考に設定した。
その結果、陰極に3.5mgの電解析出物が生じた。この電解析出物を酸に溶解させて、ICP/MS分析を行った結果、Pd(II)であることを確認した。また、電解析出量から計算した陰極電流効率は92.4%であった。
この実験により、陽極溶解工程、電解析出工程という連続的な工程により、白金族元素(Pd)の回収が可能であることを確認できた。
【0174】
[実施例13]
<白金族元素の回収試験4>
実施例12でP2225FSAを得た方法と同様に、P2225N(CN)2(トリエチル-n-ペンチルホスホニウムジシアナミド)を得た。
【0175】
(白金族元素の電解析出)
イオン液体浴P2225N(CN)2に対して、ブロミド塩(P2225Br)と臭化パラジウム(PdBr2)を4:1のモル比で0.3mol%となるように溶解させた。
次に、陽極としてPd金属、陰極としてCu基板、を前記イオン液体浴に浸漬させた。参照極は、実施例12と同じものを用いた。温度100℃にて、−1.95Vの定電位を印加して、180分間の電解析出試験を行った。なお、定電位の設定値は、実施例9と同様のCVを行った結果を参考に設定した。
その結果、陰極に1.9mgの電解析出物が生じた。この電解析出物を酸に溶解させて、ICP/MS分析を行った結果、Pd(II)であることを確認した。また、電解析出量から計算した陰極電流効率は91.1%であった。
この実験により、TFSA型イオン液体に限らず、FSA型イオン液体及びジシアナミド型イオン液体を電析媒体に適用することで白金族元素の回収が可能であることを確認できた。
【0176】
[実施例14]
<白金族元素及び希土類元素の選択的回収試験5>
前述のP2225FSAに対して、ブロミド塩(P2225Br)と臭化パラジウム(PdBr2)を4:1のモル比で0.3mol%となるように溶解させた。さらに、LaFSA3を0.3mol%になるように溶解させた。
Pd及びLaを溶解したP2225FSAのイオン液体浴に、陽極としてPt電極、陰極としてSUS基板を設置し、浴塩温度100℃、定電位−1.9Vにて355分間の電解析出実験を行った。なお、定電位の設定値は、実施例9と同様のCVを行った結果を参考に設定した。
その結果、陰極に6.2mgの電解析出物を確認し、この析出物が全てPdであると想定した場合の陰極電流効率は94.3%であった。同様の電解析出実験を同じイオン液体浴に対して繰り返し行った。合計3回の電解析出実験で回収できたPdは17.2mgであった。全回収量と仕込み組成比から計算した結果、電解回収率:94.8%であり、P2225FSA中のPd(II)は概ね回収できた。
【0177】
次に、P2225FSA中に残存するLa(III)を回収するため、電解析出に使用した電極を全て引き抜いて、陽極としてPt電極、陰極としてCu基板を新たに浸漬させた。浴塩温度100℃、−2.95Vにて200分間の定電位電解を行った。なお、定電位の設定値は、実施例9と同様のCVを行った結果を参考に設定した。
その結果、陰極に3.1mgの電解析出物を確認した。この電解析出物を酸に溶解させ、ICP/MS分析を行った結果La(III)であることを確認した。また、この析出物が全てLaであると想定した場合の陰極電流効率は96.1%であった。
このような一連の実験からFSA型イオン液体中で白金族元素を回収後、希土類元素の一部を回収できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の白金族元素及び希土類元素の回収方法は、自動車排ガスの触媒等から白金族元素及び希土類元素を回収するために広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0179】
10…回収装置、11…第一の槽、12…陽極電解用電極(部)、13…陽極、14…陰極、15…資源、16…第一の電極(部)、17…陽極、18…陰極、19…析出物、20…第二の電極(部)、21…陽極、22…陰極、24…析出物、26…電気泳動用電極(部)、27…陽極、28…陰極、29…保護管、30…泳動管、31…先端部、32…導出管、34…イオン液体、36…第三の電極(部)、37…陽極、38…陰極、39…第二の槽、40…イオン液体、43…析出物、50…回収装置、51…第一の槽、52…陽極電解用電極(部)、53…陽極、54…陰極、55…資源、56…第一の電極(部)、57…陽極、58…陰極、59…析出物、60…電気泳動用電極(部)、61…陽極、62…陰極、64…イオン液体、65…保護管、66…泳動管、67…先端部、68…導出管、69…第二の槽、70…第二の電極(部)、71…陽極、72…陰極、73…析出物、74…イオン液体、80…電気泳動装置、81…電源、82…槽、83…陽極、84…保護管、85…泳動管、86…先端部、87…クーロメーター、88…陰極、89…析出物受け皿、90…イオン液体、100…電解析出装置、101…電源、102…槽、103…陽極、104…絶縁管、105…資源、106…イオン液体、107…参照極、108…陰極、109…絶縁管、110…析出物、111…析出物受け皿。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体中に白金族元素及び希土類元素を含有する資源を溶解させた後、該イオン液体から該白金族元素を電解析出により回収し、該白金族元素の回収処理を経たイオン液体から該希土類元素を電解析出により回収した後、該希土類元素の回収処理を経たイオン液体に残存する希土類元素を電気泳動により濃縮する白金族元素及び希土類元素の回収方法であり、
前記イオン液体は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成されることを特徴とする白金族元素及び希土類元素の回収方法。
[上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。また、上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、アンモニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。nは0〜5の整数を表す。]
【請求項2】
前記濃縮された希土類元素を含むイオン液体から希土類元素を電解析出により回収することを特徴とする請求項1記載の白金族元素及び希土類元素の回収方法。
【請求項3】
第一の槽内において、白金族元素及び希土類元素を含む資源を溶解させたイオン液体から白金族元素を電解析出により回収する第一の電極、及び該第一の電極による処理を経たイオン液体から希土類元素を電解析出により回収する第二の電極を有する第一処理部と、
第一の槽内において、前記第二の電極による処理を経たイオン液体に残存する希土類元素を電気泳動により濃縮する第二処理部と、
第二の槽内において、前記第二処理部で濃縮された希土類元素を含むイオン液体から希土類元素を電解析出により回収する第三の電極を有する第三処理部と、
を少なくとも備える白金族元素及び希土類元素の回収装置。
【請求項4】
イオン液体中に白金族元素及び希土類元素を含有する資源を溶解させた後、該イオン液体から該白金族元素を電解析出により回収し、該白金族元素の回収処理を経たイオン液体から該希土類元素を電気泳動により濃縮する白金族元素及び希土類元素の回収方法であり、
前記イオン液体は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成されることを特徴とする白金族元素及び希土類元素の回収方法。
[上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。また、上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、アンモニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。nは0〜5の整数を表す。]
【請求項5】
前記濃縮された希土類元素を含むイオン液体から希土類元素を電解析出により回収することを特徴とする請求項4記載の白金族元素及び希土類元素の回収方法。
【請求項6】
イオン液体中に希土類元素を含有する資源を溶解させた後、該イオン液体から該希土類元素を電気泳動により濃縮する希土類元素の回収方法であり、
前記イオン液体は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成されることを特徴とする希土類元素の回収方法。
[上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。]
【請求項7】
前記濃縮された希土類元素を含むイオン液体から希土類元素を電解析出により回収することを特徴する請求項6記載の希土類元素の回収方法。
【請求項8】
イオン液体中に白金族元素を含有する資源を溶解させた後、該イオン液体から該白金族元素を電解析出により回収する白金族元素の回収方法であり、
前記イオン液体は、式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオンと、(SOF)、N(CN)、[CF(CFSO、CFSO、PF、及びBFからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成されることを特徴とする白金族元素の回収方法。
[上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。また、上記オニウムカチオンの式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、RとRとは互いに異なる基であり、アンモニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。nは0〜5の整数を表す。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−122242(P2011−122242A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255080(P2010−255080)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】