説明

白金(II)イソキノリン−ピリジン−ベンゼン系錯体、その製造方法、及びそれから作成した有機発光ダイオード

三座配位のイソキノリン−ピリジン−ベンゼン系配位子、単座配位子、及び白金(II)中心を含む有機金属錯体は、高い発光量子効率と、良好な熱安定性を示す。有機金属錯体から作られた有機発光ダイオードも説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規な白金(II)錯体、有機発光ダイオード(OLED)におけるそれらの使用に関する。本発明の白金(II)錯体は高い発光量子効率と良好な熱安定性を有する。高効率の単一色及び白色OLED(WOLED)を作製することができる。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンスは1960年代に最初に観察され、研究された(米国特許第3,172,862号明細書)。1980年代には、二層構造OLED(有機発光デバイス)がタングによって開示された(米国特許第4,356,429号明細書;Appl. Phys. Lett. 1987, 51, 12, 913)。この発見は、適切な有機材料からなる発光性電子輸送層と正孔輸送層を含む多層構造を用いることに基づいていた。Alq(q=脱プロトン化された8−ヒドロキシキノリニル)がその発光性電子輸送材料として選択された。それ以来、OLEDに用いられる材料についての研究が続いている。OLEDはいくつかの利点をもたらし、それには(1)低い駆動電圧、(2)薄い一体型構造、(3)光を変調するのではない発光、(4)良好な発光効率、(5)フルカラーの可能性、及び(6)高コントラスト及び高解像度、が含まれる。これらの利点はフラットパネルディスプレイでのOLEDの活用可能性を示唆している。
【0003】
有機小分子の探索が、OLEDの性能を向上させるためになされてきている。一般に、蛍光及び燐光材料が、OLEDの発光層の発光体として用いられる。蛍光化合物からの発光はそのエレクトロルミネッセンスデバイスの発光層での一重項励起子の形成の結果として起こる。米国特許出願公開第2003/178619B2号公報は、理論的には25%の一重項励起子と75%の三重項励起子が、エレクトロルミネッセンスデバイスの発光層における正孔と電子の再結合の後で形成されることを開示した。一重項励起子はそのエネルギーを一重項励起状態に移す一方、三重項励起子はそのエネルギーを三重項励起状態に移す。ほとんどの有機小分子は蛍光を示し、したがって、生成した励起子のわずかに25%しか利用されず、その結果低い外部量子効率がもたらされる。
【0004】
共役ポリマーからのエレクトロルミネッセンスは、1990年にポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)の電気特性の研究時にケンブリッジ大学においてFriendらによって最初に発見された(Nature 1990, 347, 539)。2つの電極の間の電流の流れによって励起されたときに、551nmでの発光極大をもつ黄緑色の光が、この明るい黄色のポリマーから観測された。その溶解度の問題を解決するために、Heegerらは次に可溶性のPPV誘導体を用いてPLEDを作製した(Appl. Phys. Lett. 1991, 1982)。
【0005】
PLEDは大面積フラットパネルディスプレイのために用いることができ、比較的安価であるので、近年ますます注目を受けている。初期の段階では、PLEDは通常、スピンコーティングによって作製された。しかし、このスピンコーティングに伴う多くの欠点、例えば、溶液の浪費、側面のパターニング能力の欠如があり、そのためにPLEDの商業的用途を制限している。これらの欠点を解消するために、インクジェット印刷がYangらによって導入されており(Appl. Phys. Lett. 1998, 2561)、今はPLEDは市販されているインクジェットプリンターを使用して作製することができる。
【0006】
近年では、赤、緑、及び青色発光性ポリマーが、フルカラーパネルの作製のために活発に用いられている。しかし、現在公知のポリマー、例えばポリ(p−フェニレン)(PPP)、PPV、ポリチオフェン(PT)、及びポリフルオレン(PF)の商業的な応用は、それらの酸化に対する安定性及び/又は構造乃至電気的特性によって妨げられている。PPV系材料は高いPL及びEL効率を実証しており、それらの発光エネルギーは調節可能であるが、それらは、通常、ELデバイス中に組み込んだ場合に光酸化分解をうける(Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 403)。PPPの応用はその低い溶解性によって制限されている。PFは青色発光材料であって、良好な熱安定性と高いEL量子効率を示すが、そのポリマーにおける鎖の凝集とケト-欠陥部位がELデバイスの分解を引き起こすおそれがある(J. Mater. Chem. 2000, 10, 1471)。また、発光ポリマーは、色の不純度、不均衡な電荷注入、及び低いEL効率を含めて、LEDの作製における技術的問題がある。蛍光化合物とは対照的に、様々な色の発光をもつ一連の効率的な燐光イリジウム錯体が、サザンカリフォルニア大学のThompsonら及びプリンストン大学のForrestらによって共同で報告されている(米国特許第6,515,298号明細書、J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 4303、Adv. Mat. 2001, 12, 1245)。Cheらも、OLED発光体としての、様々な金属中心、例えば、白金(II)、銅(I)、金(I)、及び亜鉛(II)を用いた有機金属錯体の使用を実証した(米国特許出願公開第2005/244672A1号公報、Chem. Eur. J. 2003, 9, 1263、Chem. Commun., 2002, 206、New J. Chem. 1999, 263、Appl. Phys. Lett., 1999, 74, 1361、Chem. Commun. 1998, 2101、Chem. Commun. 1998, 2491)。
【0007】
最近、真空蒸着法によって高性能OLEDの開発における大きな成功を実証している燐光金属有機物質がポリマー骨格に結合され、新しい群の発光ポリマーが作られており、最近の例のいくつかは以下のもの:Holdcroftらによるスカイブルーの発光デバイス(Macromolecules 2006, 9157)及びCaoらによる赤色発光デバイス(Organometallics 2007, 26, 3699)、である。2006年には、Thompson及び共同研究者は、10.5%の最大外部量子効率(EQE)をもつ高効率緑色発光PLEDを報告した(Chem. Mater. 2006, 18, 386)。この方法を用いて、ほぼ白色の発光PLED(CIE:0.30,0.43)が、ポリマー上に青の発光ユニットと赤の発光ユニットの両方を結合させたポリマーを用いることによって作製されている(J. Am. Chem. Soc. 2004, 15388)。PLEDに用いられるポリマー材料は高分子量を有し、通常の溶媒に溶けるので、それらはインクジェット印刷のための可能性のある候補である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,172,862号明細書
【特許文献2】米国特許第4,356,429号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/178619B2号公報
【特許文献4】米国特許第6,515,298号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/244672A1号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett. 1987, 51, 12, 913
【非特許文献2】Nature 1990, 347, 539
【非特許文献3】Appl. Phys. Lett. 1991, 1982
【非特許文献4】Appl. Phys. Lett. 1998, 2561
【非特許文献5】Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 403
【非特許文献6】J. Mater. Chem. 2000, 10, 1471
【非特許文献7】J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 4303
【非特許文献8】Adv. Mat. 2001, 12, 1245
【非特許文献9】Chem. Eur. J. 2003, 9, 1263
【非特許文献10】Chem. Commun., 2002, 206
【非特許文献11】New J. Chem. 1999, 263
【非特許文献12】Appl. Phys. Lett., 1999, 74, 1361
【非特許文献13】Chem. Commun. 1998, 2101
【非特許文献14】Chem. Commun. 1998, 2491
【非特許文献15】Macromolecules 2006, 9157
【非特許文献16】Organometallics 2007, 26, 3699
【非特許文献17】Chem. Mater. 2006, 18, 386
【非特許文献18】J. Am. Chem. Soc. 2004, 15388
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[本発明のまとめ]
本発明は、下記構造Iの化学構造を有する有機金属錯体の調製と有機発光デバイス(OLED)での応用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
【化1】

【0012】
式I中、R〜Rは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、非置換アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、非置換アリール、置換アリール、アシル、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ニトロ、アシルアミノ、アラルキル、シアノ、カルボキシル、チオ、スチリル、アミノカルボニル、カルバモイル、アリールオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、又はアルコキシカルボニル基であり;Xは、ハロゲン、
【化2】

であり、Aは炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、ヒ素、またはセレンであり、BはR17とR19を結合している化学結合、
【化3】

であり;
〜R15は独立に、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、及び置換アリール基であり;
16〜R23は独立に、炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、ヒ素、及びセレンであり;
〜Zは独立に、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール基であり、Z〜Zは隣接基と5〜7員環を形成してもよい。本発明は、そのような錯体を作るために有用な配位子も提供する。
【0013】
本発明は、そのような有機金属錯体を作る方法、それを組み込んだOLED、及びそのようなOLEDを作る方法をさらに提供する。
【0014】
本発明は、有機金属錯体を作るために有用な組成物、そのような錯体を作る方法、そのような錯体を含むOLED、及びそのようなOLEDを作る方法も提供する。
【0015】
本件出願の目的のためには、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、アシル、及びアルコキシの用語は以下の意味を有することができる。
【0016】
本明細書で用いるハロゲン又はハロには、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素、好ましくはF、Cl、Brが含まれ、特に好ましくはF又はClである。
【0017】
本明細書で用いるように、アリール基又はアリール部分には、6〜30の炭素原子、好ましくは6〜18の炭素原子を有するアリールが含まれ、芳香環又は複数の縮合した芳香環からなる。好適なアリールは、例えば、フェニル、ナフチル、アセナフテニル、アセナフチレニル、アントラセニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニルである。このアリールは非置換であるか(すなわち置換されうる全ての炭素原子が水素原子を有する)、又はそのアリールの全ての置換可能な位置の1つ、1つより多く、又は全てで置換されていることができる。好適な置換基は、例えば、ハロゲン、好ましくはF、Br、又はCl、アルキル基、好ましくは1〜8の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくは、メチル、エチル、i−プロピル、又はt−ブチル、アリール基、好ましくはCアリール基又はフルオレニル(これらはここでも置換又は非置換であることができる)、ヘテロアリール基、好ましくは少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロアリール基、特に好ましくはピリジル基、アルケニル基、好ましくは1つの二重結合を有するアルケニル基、特に好ましくは二重結合と1〜8の炭素原子を有するアルケニル基、あるいはドナー又はアクセプター作用を有する基、である。本発明の目的のためには、ドナー作用を有する基は+1及び/又は+M効果を示す基であり、アクセプター作用を有する基は、−I及び/又は−M効果を示す基である。ドナー又はアクセプター作用を有する好適な基は、ハロゲン基、好ましくはF、Cl、Br、特に好ましくはF、アルコキシ基、カルボニル基、エステル基、アミン基、アミド基、CHF基、CHF基、CF基、CN基、チオ基、又はSCN基である。アリール基は非常に好ましくは、メチル、F、Cl、及びアルコキシからなる群から選択される置換基を有するか、あるいはアリール基は非置換である。上述した置換基の少なくとも1つで置換されていてもよいCアリール基であるアリールラジカル又はアリール基であることが好ましい。このCアリール基は特に好ましくは上述した置換基をもたないか、その1つ又は2つを有し、その1つの置換基はそのアリール基のさらなる結合点に対してパラ位に配置されていることが好ましく、また2つの置換基の場合には、それらはそのアリール基のさらなる結合点に対してメタ位にそれぞれ配置されていることが好ましい。このCアリール基は非常に特に好ましくは非置換フェニル基である。本明細書で用いるように、アリール又はアリール部分は、好ましくはフルオレニル又はフェニルであり、これらは上述した置換基、好ましくはハロゲン、アルキル、又は非置換若しくは置換されたフルオレニルで置換されているか又は非置換であることができ、本明細書で用いているとおりである。
【0018】
本明細書で用いているアルキル又はアルキル部分には、1〜20の炭素原子、好ましくは1〜10の炭素原子、特に好ましくは1〜6の炭素原子を有するアルキルが含まれる。このアルキルは分枝しているか非分枝であることができ、1つ以上のヘテロ原子、好ましくはN、O、又はSが途中にあって中断されていてもよい。さらに、このアルキルは、アリール基に関して説明した置換基の1つ以上で置換されていることもできる。例えば、可能性のある置換されたアルキルには、トリフルオロメチル基が含まれる。同様に、アルキル基が1つ以上のアリール基を有することができる。全ての上述したアリール基がこの目的に適している。アルキル基は、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、i−ブチル、n−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、i−ペンチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、n−へキシル、i−へキシル、及びsec−へキシルからなる群から選択されることが特に好ましい。非常に特に好ましいのは、メチル、i−プロピル、及びn−へキシルである。
【0019】
本明細書で用いるようにシクロアルキルは、環状アルキル基を意図している。好ましいシクロアルキル基は、3〜7の炭素原子を含むものであり、それには、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシルなどが含まれる。さらに、シクロアルキル基は任意選択で、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環状アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0020】
本明細書で用いるようにアシルは、単結合によってCO基に結合している、本明細書で用いるアルキル基である。
【0021】
アルコキシは、酸素に結合している、本明細書で用いるアルキル基である。
【0022】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付した図面と関連させて、好ましい態様の以下の詳細な説明を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は有機発光ダイオードの構成の模式図である。
【図2】図2はデバイスAの電流密度、電圧、及び輝度(J−V−B)の相関図である。
【図3】図3はデバイスAの外部量子効率、電流密度の相関図である。
【図4】図4はデバイスAからのエレクトロルミネッセンススペクトルである。
【図5】図5はデバイスBの電流密度、電圧、及び輝度(J−V−B)の相関図である。
【図6】図6はデイバスBの外部量子効率、電流密度の相関図である。
【図7】図7はデバイスBのエレクトロルミネッセンススペクトルである。
【図8】図8はデバイスCの電流密度、電圧、及び輝度(J−V−B)の相関図である。
【図9】図9はデバイスCの外部量子効率、電流密度の相関図である。
【図10】図10はデバイスCのエレクトロルミネッセンススペクトルである。
【図11】図11はデバイスDの電流密度、電圧、及び輝度(J−V−B)の相関図である。
【図12】図12はデバイスDの外部量子効率、電流密度の相関図である。
【図13】図13はデバイスDのエレクトロルミネッセンススペクトルである。
【図14】図14はデバイスEの電流密度、電圧、及び輝度(J−V−B)の相関図である。
【図15】図15はデバイスEの外部量子効率、電流密度の相関図である。
【図16】図16はデバイスEのエレクトロルミネッセンススペクトルである。
【図17】図17はデバイスFの電流密度、電圧、及び輝度(J−V−B)の相関図である。
【図18】図18はデバイスFの外部量子効率、電流密度の相関図である。
【図19】図19はデバイスFのエレクトロルミネッセンススペクトルである。
【図20】図20はデバイスGの電流密度、電圧、及び輝度(J−V−B)の相関図である。
【図21】図21はデバイスGの外部量子効率、電流密度の相関図である。
【図22】図22はデバイスGのエレクトロルミネッセンススペクトルである。
【図23】図23はデバイスHの電流密度、電圧、及び輝度(J−V−B)の相関図である。
【図24】図24はデバイスHの外部量子効率、電流密度の相関図である。
【図25】図25はデバイスHのエレクトロルミネッセンススペクトルである。
【図26】図26はデバイスIの電流密度、電圧、及び輝度(J−V−B)の相関図である。
【図27】図27はデバイスIの外部量子効率、電流密度の相関図である。
【図28】図28はデバイスIのエレクトロルミネッセンススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[発明の詳細な説明]
構造Iの化学構造をもつ有機金属錯体はシクロメタル化錯体といわれる。構造I中の白金中心(上を参照されたい)は+2の酸化状態であり、平面四角形の幾何構造を有する。
【0025】
この白金中心の配位部位は1つの三座配位子と1つの単座配位子で占められている。三座配位子は2つの窒素供与結合と金属炭素結合を通して白金中心に配位しており、その窒素供与体はピリジン基及びイソキノリン基によるものであり、金属炭素結合はベンゼン又は置換ベンゼンと白金とによって形成されている。三座配位子は、金属−炭素結合の部位に局在化された形式的な負電荷を有する。
【0026】
三座配位子は下記構造IIで表される。
【0027】
【化4】

【0028】
式中、R〜Rは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、非置換アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、非置換アリール、置換アリール、アシル、アルコキシ、アシロキシ、アミノ、ニトロ、アシルアミノ、アラルキル、シアノ、カルボキシル、チオ、スチリル、アミノカルボニル、カルバモイル、アシルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、又はアルコキシカルボニル基である。
【0029】
三座配位子の代表的な例を以下に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
構造Iに基づく白金(II)錯体の代表的な例(錯体1〜16)を以下に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
好ましい態様では、代表的な例における対応する配位子(配位子1〜13)をもつ白金(II)錯体を調製する一般的方法がある。これらの白金(II)錯体を調製するためには、氷酢酸中のテトラクロロ白金酸カリウム(KPtCl)と配位子(配位子1〜13)の混合物を24時間還流させて黄色懸濁液を得た。その黄色固体を水及びアセトンで洗い、CHCl又はDMF中で再結晶した。以下の反応Iは、中性白金錯体の形成における溶媒としての酢酸の好ましい使用を示している。
【0038】
【化5】

【0039】
本発明は、式Iの化学構造をもつ有機金属錯体を含む少なくとも1つの発光層を含むOLEDにも関する。本発明の有機発光デバイスは、以下のものを(好ましくは順に)含んでいてよい:透明基板;透明電極;正孔輸送層;本発明の有機金属錯体の少なくとも1つでドープされたホスト材料を含む発光層;正孔阻止層;電子輸送層;電荷注入層;及び電極。本発明の有機発光デバイスは、(好ましくは順に)以下のものを含んでいてよい:透明基板;透明電極;正孔輸送層;本発明の有機金属錯体の少なくとも1つでドープしたホスト材料を含む発光層;正孔輸送層;ブルーからスカイブルーの発光材料を含む発光層;正孔阻止層;電荷注入層;及び電極。図1に示したように、典型的なデバイス100は、透明アノード層120;カソード層170;発光層140;任意選択で場合によっては正孔輸送層130;任意選択で場合によっては正孔阻止層150;及び任意選択で場合によっては電子輸送層160を有する。層110は透明基板である。本明細書で用いられる透明基板は、ガラス又はプラスチック;剛性の又は柔軟な基板である。
【0040】
本発明の有機金属錯体は、発光層140に用いられる。層140は本発明の有機金属錯体を純粋に含む(100質量%の有機金属錯体)か、あるいは所定の質量%でホスト材料と混合される。ホスト材料は正孔及び/又は電子を輸送し、本発明の有機金属錯体よりも広いバンドギャップを有することが好ましい。ホスト材料はポリマー材料、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリシラン、及びポリフルオレンであるがこれらに限定されない。それは小分子、例えば、CBP(4,4′−N,N′−ジカルバゾールビフェニル)又は三級芳香族アミンであることもできるがこれらに限定されない。
【0041】
本明細書で用いる透明アノード層、例えば、層120は、金属、合金、金属酸化物、又は混合金属酸化物、例えば、インジウム錫オキシドを含む材料を含むか、それから作ることができる。
【0042】
本明細書で用いる正孔輸送層、例えば、層130は、有機材料、例えば、TPD(N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン)、NPB(N,N′−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン)、TAPC(1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン)、ETPD(N,N′−ビス(4−メチルフェニル)−N,N′−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1′−(3,3′−ジメチル)ビフェニル]4,4′−ジアミン)、CuPc(銅フタロシアニン)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、及びPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))など(但しこれらに限定されない)を含むか、あるいはこれらから作ることができる。
【0043】
本明細書で用いる正孔阻止層、例えば、層150は、高い電子移動度と低いHOMO(最高被占軌道)準位をもつ有機材料、例えば、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、バソキュプロイン)及びBAlq(ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム)など(但しこれらに限定されない)を含むか、あるいはこれらから作ることができる。
【0044】
本明細書で用いる電子輸送層、例えば、層160は高い電子移動度をもつ有機材料、例えばAlq(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)、BAlq(ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム)、PBD(2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、及びTAZ(3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール)を含むか又はそれによって作成することができる。
【0045】
本明細書で用いるカソード、例えば、層170は小さな仕事関数の金属、例えば、Ca、Al、及びBa(但しこれらに限定されない)を含むか、あるいはこれらから作成することができる。本明細書で用いる電極は、本明細書で用いるカソード及び/又は本明細書で用いるアノードを含むことができる。
【実施例】
【0046】
本発明をさらに説明するために、多くの例を以下に挙げる。それらは決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0047】
[例1]
下記配位子1の合成手順
【化6】

【0048】
1.00g(2.64 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、0.60g(2.81 mmol)の3-ジメチルアミノ-1-(2′-ピリジニル)-プロパノン塩酸塩、及び5.00g(64.9 mmol)の酢酸アンモニウムのメタノール(100 mL)の溶液を24時間還流させて懸濁液を得た。粗生成物をその溶液混合物から濾過し、水及び冷メタノールで洗い、カラムクロマトグラフィーによって精製した。収量:0.64g(86.0 %)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3)δ= 7.45 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.55(t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.63 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.65 (t, J = 7.8 Hz 1H), 7.78 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.93 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 8.02 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 8.21 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 8.49 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 9.01 (s, 1H), 9.34 (s, 1H). EI-MS (+ve, m/z): 282 [M+]。
【0049】
[例2]
下記配位子2の合成手順
【化7】

【0050】
THF(30 ml)中の3-アセチルイソキノリン(0.84 g, 4,94 mmol)及びカリウムtert-ブトキシド(0.83 g, 7.40 mmol)の溶液を室温で2時間撹拌して黄色の懸濁液を得た。THF(20 ml)中の1-N,N-ジメチルアミノ-3-(2′,4′-ジフルオロフェニル)-3-オキソ-1-プロペン(1.04 g, 4.94 mmol)を次に添加し、混合物を12時間室温で撹拌して暗赤色溶液を得た。酢酸(100 ml)中の酢酸アンモニウム(26.0 g, 0.34 mol)の溶液をその混合物に添加した。THFを2時間にわたって蒸留によって除去し、残留物を減圧下で乾燥させた。ジクロロメタン(50 ml)を添加して赤色溶液を得て、これを飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、次にCHClで抽出した。有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。精製はn-ヘキサン:酢酸エチル(9:1)を溶離液として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって行い、淡黄色固体を得た。収量:0.94g(60 %)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ = 7.09 (m, 1H), 7.11 (m, 1H), 7.62 (t, J = 5.51 Hz, 1H), 7.71 (t, J = 8.05 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 7.78 Hz, 1H), 7.92 (t, J = 7.83 Hz, 1H), 8.00 (d, J = 8.30 Hz, 1H), 8.01 (d, 8.2 Hz, 1H), 8.26 (m, 1H), 8.50 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.90 (s, 1H), 9.34 (s, 1H)。 EI-MS (+ve, m/z): 319.2[M+]。
【0051】
[例3]
下記配位子3の合成手順
【化8】

【0052】
THF(30 ml)中の3-アセチルイソキノリン(1.00 g, 5.84 mmol)とカリウムtert-ブトキシド(0.98 g, 8.76 mmol)の溶液を2時間室温で撹拌して黄色の懸濁液を得た。THF(20 ml)中の1-N,N-ジメチルアミノ-3-(3′,4′-ジフルオロフェニル)-3-オキソ-1-プロペン(1.23 g, 5.84 mmol)を次に添加し、混合物を12時間室温で撹拌して暗赤色溶液を得た。酢酸(100 ml)中の酢酸アンモニウム(26.0 g, 0.34 mol)の溶液をその混合物に添加した。THFを2時間にわたって蒸留によって除去し、残留物を減圧下で乾燥させた。ジクロロメタン(50 ml)を添加して赤色溶液を得て、これを飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、次にCHClで抽出した。有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。精製はn-ヘキサン:酢酸エチル(9:1)を溶離液として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって行い、淡黄色固体を得た。収量:0.93g(50 %)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 25℃). δ = 7.32 (q, 1H), 7.65 (t, 1H), 7.72 (d, 1H), 7.75 (t, 1H), 7.90 (m, 1H), 8.00 (t, 2H), 8.11 (t, 1H), 8.51 (d, 1H), 8.96 (s, 1H), 9.34 (s, 1H)。13C NMR (150 MHz, CDCl3, 25℃): δ = 156.3, 154.4, 152.1, 149.7, 140.0, 136.6, 130.6, 128.9, 127.8, 127.7, 127.6, 122.9(3), 122.8, 120.0, 119.6, 117.8, 117.4 (d, J = 17.25 Hz), 116.1 (d, J = 18.15 Hz) EI-MS (+ve, m/z): 319.1 [M+]。
【0053】
[例4]
配位子4〜10の一般的合成手順
ヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、過剰の酢酸アンモニウム、及び相当するα,β-不飽和ケトンのメタノール混合物を24時間還流させて、懸濁液混合物を得た。粗生成物をその溶液混合物から濾過し、水及び冷メタノールで洗い、カラムクロマトグラフィーによって精製した(シリカゲル、溶離液としてn-ヘキサン/EtO=8:1)。
【0054】
[例5]
下記配位子4の合成手順
【化9】

【0055】
1.00g(2.64 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、0.85g(2.65 mmol)の3′,5′-ジ-tert-ブチルベンジリデン-2-アセトフェノン、5.00g(64.9 mmol)の酢酸アンモニウム、及び100mLのメタノールを用いて、例4の一般手順によって配位子4を合成した。配位子4を黄色固体として得た。収量1.11g(89.0 %)
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 25℃) δ = 1.47 (s, 18H), 7.51 (m, 1H), 7.58 (m, 3H), 7.65 (t, J = 7.8 Hz, 3H), 7.75 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.90 (s, 1H), 8.01 (m, 2H), 8.23 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 8.80 (s, 1H), 9.10 (s, 1H), 9.32 (s, 1H)。13C NMR (500 MHz, CDCl3, 25℃): δ = 31.6, 35.1, 118.1, 118.3, 118.9, 121.7, 123.1, 127.3, 127.5, 127.6, 127.8, 128.3, 128.6, 128.8, 129.0, 130.5, 133.1, 136.7, 138.7, 139.9, 150.3, 151.9, 152.0, 156.5。EI-MS (+ve, m/z):471 [M+]。
【0056】
[例6]
下記配位子5の合成手順
【化10】

【0057】
0.75g(1.97 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、0.69g(1.97 mmol)の3′,5′-ジ-tert-ブチルベンジリデン-2-(1-アセト-3-メトキシフェノン)、5.00g(64.9 mmol)の酢酸アンモニウム、及び100mLのメタノールを用いて、例4の一般手順によって配位子5を合成した。配位子5は黄色固体として得られた。収量0.81g(82.0 %)。
1H NMR (500MHz, CDCl3, 25℃) δ = 1.47 (s, 18H), 3.97 (s, 3H), 7.10 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 7.52 (t, J = 7.8 Hz,1H), 7.61 (s, 1H), 7.65 (s, 2H), 7.68 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.79 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.87 (s, 1H), 7.97 (s, 1H) , 8.04 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 8.72 (s, 1H), 9.00 (s, 1H), 9.35 (s, 1H)。13C NMR (500 MHz, CDCl3, 25℃): δ = 31.6, 35.1 , 55.5, 113.2, 114.3, 118.1 , 118.5, 119.1 , 119.8, 121.7, 123.1, 127.5, 127.6, 127.8, 128.8, 129.8, 130.5, 136.7, 138.7, 141.5, 150.3, 151.6, 151.9, 152.0。EI-MS (+ve, m/z):501 [M+]。
【0058】
[例7]
下記配位子6の合成手順
【化11】

【0059】
1.32g(3.51 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、1.28g(3.5 mmol)の(E)-3-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-1-(3-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン、5.00g(64.9 mmol)の酢酸アンモニウム、及び100mLのメタノールを用いて、例4の一般手順によって配位子6を合成した。配位子6は黄色固体として得られた。収量:1.12g(62 %)。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, 25℃) δ = 1.44 (s, 18H), 7.59 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.61 (d, J = 1.62 Hz, 2H), 7.66 (t, J = 7.80 Hz), 7.75 (m, 2H), 7.98 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 8.10 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 8.16 Hz, 1H), 8.34 (d, J = 6.12 Hz, 1H), 8.60 (d, J = 7.68 Hz, 1H), 8.81 (s, 1H), 9.04 (s, 1H), 9.12 (t, J = 1.62 Hz, 1H), 9.38 (s, 1H)。FAB-MS (+ve, m/z):516.4[M+]。
【0060】
[例8]
下記配位子7の合成手順
【化12】

【0061】
0.87g(2.3 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、0.89g(2.3 mmol)の3′,5′-ジ-tert-ブチルベンジリデン-2-(1-アセト-3-トリフルオロメチルフェノン)、5.00g(64.9 mmol)の酢酸アンモニウム、及び100mLのメタノールを用いて、例4の一般手順によって配位子7を合成した。配位子7は黄色固体として得られた。収量1.05g(85.0 %)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 25℃) δ= 1.47 (s, 18H), 7.60 (s, 1H), 7.63 (s, 2H), 7.68 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.72 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.80 (m, 2H), 8.00 (s, 1H), 8.10 (t, J = 8.4 Hz 2H), 8.47 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.55 (s, 1H), 8.80 (s, 1H), 9.00 (s, 1H), 9.35 (s, 1H)。13C NMR (500 MHz, CDCl3, 25℃):δ = 31.6, 35.1, 118.2, 119.0, 121.7, 123.3, 124.1, 124.2, 125.4, 125.5, 127.6, 127.7, 127.9, 128.9, 129.2, 130.5, 130.6, 130.9, 131.1, 131.4, 131.6, 136.7, 138.5, 140.7, 150.0, 152.1, 151.6。EI-MS (+ve, m/z):539 [M+]。
【0062】
[例9]
下記配位子8の合成手順
【化13】

【0063】
0.62g(1.62 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、0.52g(1.62 mmol)の(E)-3-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オン、5.00g(64.9 mmol)の酢酸アンモニウム、及び100mLのメタノールを用いて、例4の一般手順によって配位子8を合成した。配位子8は黄色固体として得られた。収量:0.50g(60.0 %)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 1.42 (s, 18H), 3.90 (s, 3H), 6.76 (d, J = 13 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 6.68 Hz), 7.54 (s, 1H), 7.62 (m, 3H), 7.72 (t, J = 7.25 Hz, 1H), 8.00 (m, 3H), 8.27 (t, J = 8.9 Hz, 1H), 8.70 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.98 (s, 1H), 9.37 (s, 1H)。 13C NMR (500 MHz, CDCl3):δ = 31.7, 35.1, 55.7, 101.9, 102.1, 110.7, 117.9, 120.4, 121.8, 122.2, 123.0, 127.5, 127.8, 128.8, 130.5, 131.9, 132.0, 136.7, 138.6, 150.3, 151.4, 152.0, 153.1, 156.4, 160.6, 161.4, 161.5, 162.6。EI-MS (+ve, m/z):519.4 [M+]。
【0064】
[例10]
下記配位子9の合成手順
【化14】

【0065】
1.00g(2.66 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、0.95g(2.66 mmol)の3-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-(3,4-ジフルオロフェニル)プロパン-2-エン-1-オン、5.00g(64.9 mmol)の酢酸アンモニウム、及び100mLのメタノールを用いて、例4の一般手順によって配位子9を合成した。配位子9は黄色固体として得られた。収量:1.35g(70 %)。
【0066】
[例11]
下記配位子10の合成手順
【化15】

【0067】
1.48g(3.93 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、1.40g(3.93 mmol)の3-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-(3,4-ジフルオロフェニル)プロパン-2-エン-1-オン、5.00g(64.9 mmol)の酢酸アンモニウム、及び100mLのメタノールを用いて、例4の一般手順によって配位子10を合成した。配位子10は黄色固体として得られた。収量:1.60g(80.0 %)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ= 1.43 (s, 18H), 7.30-7.36 (m, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.59 (s, 2H), 7.63 (t, J = 7.2 Hz, H), 7.77 (t, J = 8.0 Hz, H), 7.86 (s, 1 H, H), 7.94-7.97 (m, 1H), 8.03 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.14-8.18 (m, 1H), 8.74 (s, 1H), 9.00 (s, 1H, H), 9.37 (s, 1H, H)。13C NMR (126 MHz, CDC13, 25℃):δ= 31.7, 35.1, 116.3, 116.4, 117.4, 117.5, 118.1, 118.4, 118.8, 121.7, 123.0, 123.2, 127.6, 128.9, 130.6, 136.6, 137.0, 138.4, 149.8, 151.7, 151.8, 152.0, 152.2, 154.9, 156.7。19F NMR (376 MHz, CDCl3, 25℃):δ = -137.4, -137.7。FAB-MS (+ve, m/z):507 [M+]。
【0068】
[例12]
下記配位子11の合成手順
【化16】

【0069】
3.83g(8.97 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、4.20g(8.89 mmol)の(E)-3-(9,9-ジへキシル-9H-フルオレン-2-イル)-1-フェニルプロパン-2-エン-1-オン、7.1g(91 mmol)の酢酸アンモニウム、及び550mLのメタノール/ジクロロメタン(体積比10:1)を用いて、例4の一般手順によって配位子11を合成した。配位子11は黄色オイルとして得られた。収量:4.35g(82 %)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 9.39 (s, 1H), 9.07 (s, 1H), 8.82 (s, 1H), 8.28 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 8.03-8.06 (m, 3H), 7.84 (s, 2H), 7.73-7.79 (m, 3H), 7.64 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 7.58 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.49 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.35-7.39 (m, 3H), 2.04-2.12 (m, 4H), 1.11-1.23 (m, 12H), 0.73-0.89 (m, 10H)。FAB-MS (m/z): 614 [M+]。
【0070】
[例13]
下記配位子12の合成手順
【化17】

【0071】
3.83g(8.97 mmol)のヨウ化1-(2-オキソ-2-(3′-イソキノリニル)エチル)ピリジニウム、4.88g(8.97 mmol)の(E)-3-(7-ブロモ-9,9-ジへキシル-9H-フルオレン-2-イル)-1-フェニルプロパン-2-エン-1-オン、15.4g(0.20 mmol)の酢酸アンモニウム、及び100mLのメタノール/クロロホルム(体積比10:1)混合物を用いて、例4の一般手順によって配位子12を合成した。配位子12は黄色オイルとして得られた。収量:4.52g(73 %)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 9.39 (s, 1H), 9.08 (s, 1H), 8.81 (s, 1H), 8.28 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.05 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 8.01 (s, 1H), 7.74-7.86 (m, 4H), 7.61-7.67 (m, 2H), 7.59 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.49-7.51 (m, 3H), 2.01-2.10 (m, 4H), 1.06-1.18 (m, 12H), 0.65-0.86 (m, 10H)。FAB-MS (m/z):694 [M+]。
【0072】
[例14]
下記配位子13の合成手順
【化18】

【0073】
1.03g(1.48 mmol)の配位子12、0.17g(0.154 mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、及び0.68g(1.48 mmol)の9,9-ジ-n-へキシルフルオレン-2-イル-4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロランの脱気したトルエン溶液(150 mL)に、2MのNaCO水溶液(15 mL)をシリンジで注入した。反応混合物を80℃で12時間撹拌した。生成物をジクロロメタン(3 x 100 mL)で抽出し、水で洗い、MgSO上で乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、残留物を溶離液としてCHClを用いるシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、淡黄色オイルとして配位子13を得た。収量:0.89g(64 %)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 9.40 (s, 1H), 9.09 (s, 1H), 8.85 (s, 1H), 8.30 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 8.04-8.06 (m, 3H), 7.63-7.88 (m, 12H), 7.59 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.50 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.30-7.38 (m, 3H), 2.12-2.17 (m, 4H), 2.02-2.07 (m, 4H), 1.02-1.18 (m, 24H),0.72-0.83 (m, 20H)。FAB-MS (m/z):947 [M+]。
【0074】
[例15]
錯体1〜14の一般合成手順
氷酢酸(100 ml)中のKPtCl及び配位子1〜14の混合物を48時間還流させて、黄色懸濁液として錯体1〜14を得た。その黄色固体を濾過し、水及びアセトンで洗い、DMF中で再結晶した。
【0075】
[例16]
下記錯体1の合成手順
【化19】

【0076】
0.42g(1.01 mmol)のKPtCl、0.23g(0.82 mmol)の配位子1、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体1を合成した。黄色結晶固体として錯体1を得た。収量:0.34g(80.0 %)。
1H NMR (400 MHz, DMF, 25℃):δ = 7.12 (t, J = 6.9 Hz, 1H), 7.20 (t, J = 6.9 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.97 (m, 1H), 8.11 (t, J = 7.3 Hz 1H), 8.22 (m, 4H), 8.54 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 9.15 (S, 1H), 9.75 (s, 1H)。13C NMR (500 MHz, CDCl3, 25℃):δ = 119.4, 123.1, 124.4, 125.2, 128.8, 130.0, 130.3, 130.7, 130.9, 131.4, 134.5, 135.3, 136.7, 140.1, 143.7, 148.0, 151.0, 152.7, 155.6, 163.2。FAB-MS (+ve, m/z):512 [M+]。
【0077】
[例17]
下記錯体2の合成手順
【化20】

【0078】
0.49g(1.17 mmol)のKPtCl、0.31g(0.98 mmol)の配位子2、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体2を合成した。黄色結晶固体として錯体2を得た。収量:0.43g(80.0 %)。
1H NMR (500 MHz, DMF) δ = 7.37 (t, J = 8.44 Hz, 1H), 7.44 (t, J = 9.98 Hz, 1H), 8.03 (d, J = 7.75 Hz, 1H), 8.11 (m, 1H)1 8.32 (t, J = 7.6 Hz), 8.44 (d, J = 8.15 Hz, 1H), 8.67 (t, J = 7.85 Hz, 1H), 8.73 (d, J = 7.95 Hz, 1H), 8.92 (d, J = 8.13 Hz), 9.44 (s, 1H), 10.39 (s, 1H)。13C NMR (500 MHz, CDCl3):δ = 103.9, 104.0, 111.5, 121.8, 123.4, 128.4, 129.6, 130.2, 131.5, 134.0, 134.6, 135.9, 140.3, 151.2, 153.2, 157.4, 159.9, 162.7, 163.0, 164.1。
【0079】
[例18]
下記錯体3の合成手順
【化21】

【0080】
0.78g(1.88 mmol)のKPtCl、0.50g(1.57 mmol)の配位子3、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体3を合成した。黄緑色結晶固体として錯体3を得た。収量:0.69g(80.0 %)。
FAB-MS (+ve, m/z):512 [M-Cl+]。
【0081】
[例19]
下記錯体4の合成手順
【化22】

【0082】
0.31g(0.75 mmol)のKPtCl、0.29g(0.62 mmol)の配位子4、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体4を合成した。黄色結晶固体として錯体4を得た。収量:0.39g(90.0 %)。
1H NMR (400 MHz, DMF, 25℃):δ =1.47 (s, 18H), 7.10 (m, 2H), 7.67 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.79 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 7.92 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.97 (s, 2H), 8.08 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 8.12 (d, J = 4.2 Hz, 2H), 8.39 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.54 (s, 1H), 9.27 (s, 1H), 9.65 (s, 1H)。13C NMR (500 MHz, CDCl3, 25℃):δ = 31.5, 35.7, 117.4, 117.8, 122.7, 123.3, 123.4, 124.2, 124.7, 125.5, 128.7, 129.9, 130.2, 130.4, 131.2, 134.3, 135.2, 136.7, 137.9, 143.7, 148.2, 151.2, 152.5, 152.9, 155.5, 162.3。FAB-MS (+ve, m/z):700 [M+]。
【0083】
[例20]
下記錯体5の合成手順
【化23】

【0084】
0.37g(0.90 mmol)のKPtCl、0.28g(0.54 mmol)の配位子5、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体5を合成した。黄色結晶固体として錯体5を得た。収量:0.28g(70.0 %)。
1H NMR (500 MHz, DMF, 25℃):δ = 1.47 (s, 18H), 3.93 (s, 3H), 6.90 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.60 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.95 (m, 3H), 8.12 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.33 (s, 1H), 8.52 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.58 (s, 1H), 9.32 (s, 1H), 9.75 (s, 1H)。13C NMR (500 MHz, DMF, 25℃):δ = 31.6, 35.7, 111.6, 116.7, 117.7, 118.0, 122.8, 123.4, 124.7, 128.7, 129.9, 130.3, 131.3, 133.5, 134.3, 135.8, 136.6, 138.0, 148.7, 151.2, 152.3, 152.4, 153.1 , 155.6, 158.1, 162.5。FAB-MS (+ve, m/z):730 [M+]。
【0085】
[例21]
下記錯体6の合成手順
【化24】

【0086】
0.17g(0.45 mmol)のKPtCl、0.18g(0.35 mmol)の配位子6、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体6を合成した。黄色結晶固体として錯体6を得た。収量:0.23g(90.0 %)。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2, 25℃):δ = 1.50 (s, 18H), 7.12 (s, 1H), 2.93 (m, 2H), 7.44 (d, J = 7.55 Hz, 1H), 7.55 (t, J = 6.85 Hz, 1H), 7.66 (s, 2H), 7.70 (m, 3H), 7.76 (t, J = 7.15 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 8.05 Hz, 1H), 8.13 (s, 1H), 8.91 (s, 1H)。FAB-MS (+ve, m/z):745.2[M+]。
【0087】
[例22]
下記錯体7の合成手順
【化25】

【0088】
0.19g(0.46 mmol)のKPtCl、0.20g(0.38 mmol)の配位子7、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体7を合成した。黄色結晶固体として錯体7を得た。収量:0.20g(70.0 %)。
1H NMR (500 MHz, DMF, 25℃):δ = 1.47 (s, 18H), 7.37 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.80 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.90 (t, J = 7.1 Hz, 1H), 7.98 (s, 2H), 8.10 (m, 2H), 8.30 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.40 (s, 2H), 8.60 (s, 1H), 9.25 (s, 1H), 9.50 (s, 1H)。13C NMR (500 MHz. DMF, 25℃):δ = 31.5, 35.7, 117.6, 118.4, 118.7, 121.4, 121.7, 121.9, 122.1, 122.9, 123.3, 123.7, 124.9, 125.6, 126.4, 127.1, 128.8, 130.0, 131.4, 134.1, 134.5, 135.3, 136.7, 137.7, 142.3, 146.2, 146.9, 162.7。FAB-MS (+ve, m/z):768 [M+]。
【0089】
[例23]
下記錯体8の合成手順
【化26】

【0090】
0.17g(0.45 mmol)のKPtCl、0.44g(0.86 mmol)の配位子8、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体8を合成した。橙色結晶固体として錯体8を得た。収量:0.52g(80.0 %)。
1H NMR (500 MHz, DMF, 25℃):δ= 1.64 (s, 18H), 3.73 (s, 3H), 6.59 (d, J = 14.1 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.90 (t, J = 1.6 Hz, 1H), 8.00 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 1.7 Hz, 2H), 8.21 (m, 1H), 8.27 (d, J = 4.05 Hz, 1H), 8.29 (d, J = 4.3 Hz, 1H), 8.49 (s, 1H), 9.28 (s, 1H), 9.59 (s, 1H)。13C NMR (126 MHz, DMF, 25℃):δ= 30.0, 35.2, 97.4, 115.6, 116.7, 119.2, 119.3, 122.2, 123.0, 124.2, 126.7, 128.3, 129.2, 129.5, 130.7, 133.8, 136.2, 137.9, 145.9, 151.0, 152.0, 152.1, 155, 160.1, 162.1, 162.4, 162.6, 163.2, 163.8。FAB-MS (+ve, m/z):748.2[M+]。
【0091】
[例24]
下記錯体9の合成手順
【化27】

【0092】
0.49g(1.18 mmol)のKPtCl、0.50g(0.99 mmol)の配位子9、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体9を合成した。橙色結晶固体として錯体9を得た。収量:0.58g(80.0 %)。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2, 25℃):δ = 1.48 (s, 18H), 6.39-6.44 (m, 1H), 6.97 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.63-7.67 (m, 5H), 7.73 (d, J = 8.2 Hz), 7.80-7.83 (m, 2H), 7.91 (d, J = 8.2 Hz, H), 8.33 (s, 1H), 9.24 (s, 1H)。13C NMR (126 MHz, CD2Cl2, 25℃):δ = 31.4, 35.2, 99.0, 99.2, 116.7, 116.8, 120.1, 120.3, 121.8, 121.9, 124.3, 127.9, 128.7, 129.2, 130.2, 133.2, 135.7, 137.4, 150.6, 152.1, 152.2, 152.6, 154.4。19F NMR (400 MHz, CD2Cl2, 25℃):δ= -105.9, -111.3。
【0093】
[例25]
下記錯体10の合成手順
【化28】

【0094】
0.93g(2.37 mmol)のKPtCl、1.00g(1.97 mmol)の配位子10、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体10を合成した。黄色結晶固体として錯体10を得た。収量:0.87g(60.0 %)。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2, 25℃):δ= 1.49 (s, 18H), 6.97-7.01 (m, 1H), 7.06-7.10 (m, 2H), 7.60-7.68 (m, 5H), 7.74 (S, 1H), 7.83 (t, J = 8.1 Hz, H), 7.92 (d, J = 8.1 Hz, H), 8.25 (s, 1H), 9.17 (s, 1H)。13C NMR (126 Hz, CD2Cl2, 25℃):δ= 31.4, 35.2, 112.3, 112.4, 116.5, 117.1, 121.7, 121.9, 122.0, 124.4, 127.8, 127.9, 128.6, 129.1, 130.2, 133.2, 135.5, 137.2, 139.1, 150.4, 152.0, 152.3, 152.4, 154.6, 163.0。19F NMR (400 MHz, CDCl3, 25℃):δ= -134.3, -146.0。FAB-MS (+ve, m/z):700 [M-Cl]+
【0095】
[例26]
下記錯体11の合成手順
【化29】

【0096】
0.93g(2.37 mmol)のKPtCl、1.00g(1.97 mmol)の配位子11、及び100mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体11を合成した。黄色固体として錯体11を得た。収量:0.44g(30.0 %)。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2, 25℃):δ= 1.54 (s, 18H), 6.80 (m, 1H), 7.18 (m, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.65 (s, 2H), 7.68 (s, 1H), 7.69 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.87 (m, 2H), 7.98 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.36 (s, 1H), 9.59 (s, 1H)。13C NMR (126 MHz, CD2Cl2, 25℃):δ= 31.4, 35.2, 112.1, 112.3, 116.9, 117.3, 120.8, 121.6, 121.7, 124.5, 127.9, 129.0, 129.1, 130.4, 133.6, 135.7, 137.2, 150.7, 151.3, 152.3, 152.7, 154.7, 163.9。19F NMR (376 MHz, CDCl3, 25℃):-121.9, -132.5。FAB-MS (+ve, m/z):700 [M-Cl]+
【0097】
[例27]
錯体12の合成手順
【化30】

【0098】
0.71g(1.71 mmol)のKPtCl、1.05g(1.71 mmol)の配位子11、及び50mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体12を合成した。黄色固体として錯体12を得た。収量:1.3g(86 %)。
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2):δ 9.70 (s, 1H), 8.51 (s, 1H), 8.11 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.98 (s, 1H), 7.92-7.96 (m, 2H), 7.785-7.85 (m, 3H), 7.69 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.39-7.45 (m, 3H), 7.18 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 7.13 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 2.08-2.16 (m, 4H), 1.08-1.39 (m, 12H), 0.69-0.89 (m, 10H)。FAB-MS (m/z): 844 [M+]。
【0099】
[例28]
錯体13の合成手順
【化31】

【0100】
0.71g(1.71 mmol)のKPtCl、1.19g(1.71 mmol)の配位子12、及び50mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体13を合成した。黄色固体として錯体13を得た。収量:1.3g(86 %)。
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2):δ 9.33 (S, 1H), 8.39 (s, 1H), 7.86-7.93 (m, 5H), 7.82 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.72-7.76 (m, 2H), 7.55-7.63 (m, 3H), 7.47 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.30 (s, 1H), 7.23 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 6.99 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 6.94 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 2.19-2.25 (m, 2H), 2.02-2.13 (m, 2H), 2.02-2.09 (m, 4H), 1.11-1.22 (m, 12H), 0.72-0.81 (m, 10H)。FAB-MS (m/z):923 [M+]。
【0101】
[例29]
錯体14の合成手順
【化32】

【0102】
0.71g(1.71 mmol)のKPtCl、1.62g(1.71 mmol)の配位子13、及び50mlの氷酢酸を用い、例15の一般手順によって錯体14を合成した。橙色固体として錯体14を得た。収量:1.3g(86 %)。
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 9.56 (s, 1H), 8.48 (s, 1H), 7.83-8.02 (m, 8H), 7.64-7.77 (m, 6H), 7.60-7.63 (m, 2H), 7.57 (s, 1H), 7.49 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.42 (m, 1H), 7.37 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.08 (m, 2H), 2.23-2.33 (m, 2H), 2.06-2.15 (m, 2H), 1.01-1.38 (m, 12H), 0.76-0.87 (m, 10H)。FAB-MS (m/z): 1177 [M+]。
【0103】
[例30]
錯体15の合成手順
【化33】

【0104】
錯体4(0.17 g, 0.24 mmol)、1-エチニル-4-メチルベンゼン(0.18 ml, 1.43 mmol)、及びトリエチルアミン(1 ml, 6.68 mmol)をアセトニトリル:ジクロロメタン(3:1)(30 ml)の溶液に溶かした。CuI(5 mg)を触媒として反応混合物へ添加した。黄色混合物を窒素下で48時間室温で混合した。橙色固体を次に濾過し、冷たいアセトニトリル及びジエチルエーテルで洗った。次に、その固体を乾燥させて橙色錯体15を得た。収量:0.16g(84 %)。FAB-MS (+ve, m/z):779 [M+]。
【0105】
[例30a]
下記錯体16の合成
【化34】

【0106】
CHCl/CHCN溶液中(v:v, 1:1)の錯体14(100 mg, 0.085 mmol)、2,6-ジメチルフェニルイソシアニド(12 mg, 0.086 mmol)、及び過剰のNHPF(500 mg, 3.06 mmol)の混合物を12時間撹拌し、黄色溶液として錯体16を得た。溶媒を減圧下で除去して橙色固体を得た。得られた橙色固体を集め、多量のHO、CHCN、及びEtOで洗い、次に乾燥させた。濃縮したCHCl溶液上にn-ヘキサンを層にすることによって純粋な生成物(108 mg, 収率90 %)を橙色結晶として単離した。
FAB-MS (+ve m/z): 1270 [M-PF6]+1H NMR (CD2Cl2):δ 0.70-0.72 (m, 4H, -CH2-), 0.76-0.79 (m, 16H, -CH2-及び-CH3), 1.08-1.26 (m, 24H, -CH2-), 2.06-2.11 (m, 4H, -CH2-), 2.22-2.42 (m, 4H, -CH2-), 2.62 (s,6H), 7.21 (t, J = 8.9 Hz, 1H), 7.27-7.42 (m, 7H), 7.44-7.51 (m, 1H), 7.68-7.71 (m, 3H), 7.45-7.77 (m, 3H), 7.82-7.85 (m, 2H), 7.89-7.93 (m, 3H), 7.95-8.03 (m, 3H), 8.15 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.20 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.30 (s, 1H), 9.80 (s, 1H), 9.48 (s, 1H)。
【0107】
[例31]
例31は本発明のOLEDの一般的な作成方法を説明している。このOLEDは20Ω/□のシート抵抗をもつパターン形成したインジウム錫オキシド(ITO)ガラス上に作成した。材料の熱真空蒸着を、薄膜蒸着システム(Edwards Auto 306 蒸着システムを一体化したMBraunスリーグローブボックスシステム)中で1×10−6Torrの減圧下で順次行った。デバイスは陽極酸化したアルミニウム蓋を用いて封止し、その性能をフォトリサーチ(Photoresearch)PR−650を使用して評価した。電流-電圧特性は、キースレイ(Keithley)2400電源測定器を使用して試験をした。錯体1〜6及び14を用いたOLEDは以下の構成を有する:ITO(インジウム錫オキシド)/NPB(4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、40nm)/CBP(4,4′−N,N′−ジカルバゾールビフェニル):錯体1〜6及び14、X%、30nm)/BCP(バソキュプリン(Bathocuprine)、15nm)/Alq(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)。
【0108】
【化35】

【0109】
[例32]
例32は、発光材料として錯体1〜6、14を用いて例31に記載した方法で作成したOLEDデバイスのデバイス性能を示している。
【0110】
【表7】

【0111】
[例33]
例33は本発明のOLEDの一般的な作成方法を説明している。このOLEDは20Ω/□のシート抵抗をもつパターン形成したインジウム錫オキシド(ITO)ガラス上に作成した。材料の熱真空蒸着を、薄膜蒸着システム(Edwards Auto 306 蒸着システムを一体化したMBraunスリーグローブボックスシステム)中で1×10−6Torrの減圧下で順次行った。デバイスは陽極酸化したアルミニウム蓋を用いて封止し、その性能をフォトリサーチ(Photoresearch)PR−650を使用して評価した。電流-電圧特性は、キースレイ(Keithley)2400電源測定器を使用して試験をした。錯体13を用いたOLEDは以下の構成を有する:ITO(インジウム錫オキシド)/NPB(4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、40nm)/CBP(4,4′−N,N′−ジカルバゾールビフェニル):錯体13、3.5%、20nm)/BCP(バソキュプリン(Bathocuprine)、40nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)(デバイスH)。図21は、デバイスHのJ−V−B曲線を示している。しきい電圧は1cd/mに対して54V未満である。デバイスHは14Vで8270cdm−2の最大輝度を示す。
【0112】
[例34]
例34は本発明のWOLED(デバイスI)を作成する一般手順を示している。このWOLEDは、20Ω/□のシート抵抗をもつパターン形成したインジウム錫オキシド(ITO)ガラス上に作成した。材料の熱真空蒸着を、薄膜蒸着システム(Edwards Auto 306 蒸着システムを一体化したMBraunスリーグローブボックスシステム)中で1×10−6Torrの減圧下で順次行った。デバイスは陽極酸化したアルミニウム蓋を用いて封止し、その性能をフォトリサーチ(Photoresearch)PR−650を使用して評価した。電流-電圧特性は、キースレイ(Keithley)2400電源測定器を使用して試験をした。錯体を用いたこのWOLEDは以下の構成を有する:ITO(インジウム錫オキシド)/NPB(4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、40nm)/CBP(4,4′−N,N′−ジカルバゾールビフェニル):錯体12、4.2%、20nm)/NPB(2nm)/9,10−ビス−(2−ナフチル)−アントレン(DNA、1nm)/BCP(バソキュプリン(Bathocuprine)、40nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)(デバイスI)。図24は、デバイスIのJ−V−B曲線を示している。しきい電圧は1cd/mに対して5V未満である。デバイスHは13Vで7996cdm−2の最大輝度及び(0.32,0.31)のCIEを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造Iの化学構造を有する有機金属錯体:
【化1】

(式I中、R〜Rは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、非置換アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、非置換アリール、置換アリール、アシル、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ニトロ、アシルアミノ、アラルキル、シアノ、カルボキシル、チオ、スチリル、アミノカルボニル、カルバモイル、アリールオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、又はアルコキシカルボニル基であり;Xは、ハロゲン、
【化2】

であり、Aは炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、ヒ素、またはセレンであり、BはR17とR19を結合している化学結合、
【化3】

であり;
〜R15は独立に、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、及び置換アリール基であり;
16〜R23は独立に、炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、ヒ素、又はセレンであり;
〜Zは独立に、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール基であり、Z〜Zは隣接基と5〜7員環を形成してもよい。)
【請求項2】
構造Iが以下の構造のうちの一つである、請求項1に記載の有機金属錯体。
【表1】

【表2】

【表3】

【請求項3】
請求項1に記載の有機金属錯体のうちの1つ以上を含む発光材料を含んでいる有機発光デバイス。
【請求項4】
前記錯体が下記の構造のうちの一つを有する、請求項3に記載の有機発光デバイス。
【表4】

【表5】

【表6】

【請求項5】
前記有機金属錯体が熱蒸着によってデバイス中の層として適用されている、請求項3又は4に記載の有機発光デバイス。
【請求項6】
前記有機金属錯体がスピンコーティングによってデバイス中の層として適用されている、請求項3〜5のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項7】
前記有機金属錯体がインクジェットプリンティングによってデバイス中の層として適用されている、請求項3〜6のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項8】
電流を層に流した場合に単一色を発光する、請求項3〜7のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の有機金属錯体を1種以上含む層に電流を流し、且つその他の発光材料からの1つ以上の発光成分に電流を流した場合に白色光を発光する、請求項3〜8のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項10】
透明基板;透明電極;正孔輸送層;請求項1又は2に記載の有機金属錯体の少なくとも1つでドープされたホスト材料を含む発光層;正孔阻止層;電子輸送層;電荷注入層;及び電極を含む有機発光デバイス。
【請求項11】
透明基板;透明電極;正孔輸送層;請求項1又は2に記載の有機金属錯体の少なくとも1つでドープされたホスト材料を含む発光層;正孔輸送層;ブルーからスカイブルーの発光材料を含む発光層;正孔阻止層;電荷注入層;及び電極を含む有機発光デバイス。
【請求項12】
下記構造II:
【化4】

(式中、R〜Rは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、非置換アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、非置換アリール、置換アリール、アシル、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ニトロ、アシルアミノ、アラルキル、シアノ、カルボキシル、チオ、スチリル、アミノカルボニル、カルバモイル、アリールオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、又はアルコキシカルボニル基である。)
で特定される対応する配位子を、溶媒として酢酸を用いて、テトラクロロ白金酸カリウム(KPtCl)と反応させて、構造Iの化学構造を有する有機金属錯体を形成させることを含む、請求項1に記載の有機金属錯体の製造方法。
【請求項13】
下記構造:
【化5】

(式中、R〜Rは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、非置換アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、非置換アリール、置換アリール、アシル、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ニトロ、アシルアミノ、アラルキル、シアノ、カルボキシル、チオ、スチリル、アミノカルボニル、カルバモイル、アリールオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、又はアルコキシカルボニル基である。)
を有する化合物。
【請求項14】
下記構造のうちの1つを有する化合物。
【表7】

【表8】

【請求項15】
下記構造:
【化6】

(式中、R〜Rは独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、非置換アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、非置換アリール、置換アリール、アシル、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ニトロ、アシルアミノ、アラルキル、シアノ、カルボキシル、チオ、スチリル、アミノカルボニル、カルバモイル、アリールオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、又はアルコキシカルボニル基である。)
を有する配位子を、テトラクロロ白金酸カリウム(KPtCl)と反応させて白金錯体を得る工程;及び
前記錯体の層を有機発光デバイスの発光層として適用するか、あるいは前記錯体を発光デバイスの発光層中にドーピングする工程を含む、有機発光デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2012−530077(P2012−530077A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515315(P2012−515315)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000696
【国際公開番号】WO2010/145190
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511278279)ヴァーシテック・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】