説明

皮膚および爪の真菌感染症の局所治療に適した組成物

【課題】 皮膚、爪の真菌感染、例えば足部白癬、股部白癬などの局所治療に適した薬剤組成物を提供するものである。
【解決手段】 この組成物の活性成分は複数の低分子量有機酸およびその塩からなり、2種又はそれ以上の酸の組合せにより相乗的効果を奏する。この活性成分の抗菌作用が不揮発性吸湿性溶媒の使用を介して更に向上するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚(皮膚真菌症)および足指、手指の爪(爪甲真菌症)に発生する真菌感染症の局所治療に適した組成物に関する。これらの真菌感染症、すなわち足部白癬(足白癬又は水虫)、爪白癬(爪部感染症)、股部白癬(股間のたむし、いんきん)、体幹白癬(毛の生えていない部分に起る真菌感染症)、でん風、カンジダ症などとして知られている真菌感染症は、ほお部などでの真菌とは異なるタイプのもの、つまり白癬菌属の真菌、表皮菌属、小胞子菌属、カンジダ菌属によって発症する。
【背景技術】
【0002】
爪の真菌症(真菌感染症)は、爪床又は爪甲の最も一般的な症状の1つである。成人人口の6ないし8%のものは種々の程度でこのような真菌症を患っているものと推測されている。爪の真菌症(爪甲真菌症)は、しばしば皮膚糸状真菌により、又、より多くはトリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)(指間トリコフィトンとしても知られている)およびトリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)の1種により発症される。但し、他の多くの真菌もそのような感染を発症させることが知られている。足部白癬(足白癬又は水虫)、股部白癬(股間のたむし、いんきん)、体幹白癬などの皮膚の真菌感染症(皮膚真菌症)も一般にとりわけ、T.rubrum、T.mentagrophytesによって発症する。T.mentagrophytesはウェブ(指間の皮膚)又は小胞性感染を発症させ、一般に従来の売薬(OTC)薬物療法により容易に処置されている。しかし、T.rubrumは、より拡大した感染を生じさせ、従って治療がかなり困難である。
【0003】
皮膚および爪の真菌感染症の局所治療での使用のための多くの種類の薬剤組成物が当該分野で知られている。これらの局所治療用のものとしては、処方薬又は処方箋なしで買える一般用医薬品など種々の薬効成分を含有させたローション、スプレー、ゼリー状物、軟膏などがある。
【0004】
米国特許No.6,080,744(特許文献1)には、真菌感染症のためのクリームベースの局所治療薬が記載されており、これはケタコナゾール(ketaconazole)、ニスタチン(nystatin)、硝酸ミコナゾール(miconazole nitrate)、トルナフテート(tolnaftate)、クロトリマゾール(clotrimazole)、ウンデセン酸、ジンク・ウンデセノエート(zinc undecenoate)、プロピオン酸およびプロピオン酸ナトリウムなどを含む多数の有効成分のブレンドからなるものである。これらの組成物は、任意の付加的活性成分、例えば抗菌薬(例えばゲンタマイシン(gentamicin))、抗炎症薬(例えばジプロピオナート・ベタメタゾン(dipropionate betamethasone))を含むものであってもよいとしている。
【0005】
欧州特許出願No.1 787 652A1(特許文献2)には、メラルウカ・アルタニフォリア(Melaleuca alternifolia)精油(テルピネン-4-オールおよびシネオールとからなるもの)、ベンゾエート化合物(ベンゾイン酸およびその塩)および公知の抗真菌性化合物である硝酸ミコナゾールからなる抗真菌組成物が記載されている。
【0006】
米国特許No.5,512,200(特許文献3)には、2種類の無機酸(一方の酸は水中に完全に解離し、他方の酸はその一方の酸よりも酸性が弱い)と2種類の有機酸とを含む低pHの組成物が記載されている。これらの組成物の用途として、医薬、水処理剤、局所殺菌剤およびバッテリー液の代替物が記載されている。これらの組成物の低pHのため、局所投与した際に皮膚に特別の刺激を与え、それに患者が順応できるか否か、従って真菌感染を有効に根絶できるか否かの問題が生じることが予想される。
【0007】
米国特許No.6,664,292(特許文献4)には、低級アルコール(好ましくはメタノール)および低級カルボン酸を含有する爪の真菌感染症の治療のための組成物が記載されている。
【0008】
米国特許No.4,824,865(特許文献5)には、足部白癬などの種々の皮膚疾患の治療用として、2-ヒドロキシオクタン酸、2-ケトオクタン酸およびそれらの或る種のエステルを含有し、水性又は非水性エタノールのようなビヒクルに分散させた組成物が記載されている。
【0009】
米国特許No.6,214,889(特許文献6)には、悪性の皮膚疾患の治療用として、蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸カルシウム又は蟻酸セシウムから選択される1種又はそれ以上を蒸留水に好ましくは約50%の濃度で溶かしたものと、任意のゲル化剤とからなる液状又はゼリー状組成物が記載されている。
【0010】
米国特許No.6,921,529(特許文献7)には、弱有機酸をポリマー母材中に分散させて過飽和ヒドロゲルを形成してなる局所用組成物が開示されている。必要に応じて、他の公知の抗真菌製剤、例えばアゾール誘導体(ケタコナゾール、硝酸ミコンザオール、クロトリマゾールなど)、ウンデシレン酸、チャノキ油(Melaleuca alternifolia)又はサリチリ酸(salicyclic acid)を、このヒドロゲルに添加してもよいとしている。
【0011】
国際特許出願No.2006/042324(特許文献8)には、人体組織に付着する非水溶性フィルム形成組成物が記載されている。これはアルキル/ヒドロキシアルキルセルロース、極性プロトン性溶剤、抗真菌製剤(ナフチジン、シクロピロクス、テルビナフィン)、グリコールエーテル、抗掻痒剤並びに、可溶化剤、界面活性剤および湿潤剤から選択される1種又はそれ以上からなるものである。
【0012】
米国特許No.6,159,977(特許文献9)には、クロトリマゾール、トールナフテート、ニスタチン又はウンデシレン酸のような抗真菌製剤をジメチルスルフォキシドおよび抗炎症剤と組合せ、これをポリグリコールの無水溶液に溶解させた抗真菌組成物が記載されている。
【0013】
米国特許No.7,074,392(特許文献10)には、ナフチジン、ミコナゾール、クロトリマゾールなどから選択される一般的な抗真菌製剤と、任意成分としての角質溶解薬、湿潤剤、水、ポリマーフィルム形成剤(例えば、疎水性水不溶性ポリマー)、少なくとも1種の揮発性溶媒を含む溶媒システムとからなる抗真菌組成物が記載されている。この組成物は更に抗バクテリア剤、抗ウイルス剤又は抗乾癬剤のいずれか1種又はそれ以上を任意に含むものであってもよいとしている。
【0014】
米国特許No.6,231,875(特許文献11)には、活性成分、酸性化剤(塩酸、硫酸、グリコール酸、乳酸又は酢酸などの低pHを有する酸)および揮発性溶媒(例えば、アルコール、アセトン、酢酸エチル)を含有してなる組成物が記載されている。この活性成分の好ましいものとして、抗真菌薬、例えばアゾール(ケトコナゾール、フルコナゾール、クロトリマゾール)、アリルアミン(テルビナフィン又はナフチフィン)又はその混合物が記載されており、この組成物は更に抗バクテリア剤、抗乾癬薬、爪成長促進剤、栄養剤を含むものであってもよいとしている。
【0015】
当該分野において、これら組成物は局所抗真菌組成物として記載されているが、或る程度抗真特性を示すものとして知られている多くの薬剤は、米国食品医薬品局(FDA)により、OTC局所抗真菌調剤中の活性成分として使用される場合は安全でなく、且つ、有効でないと認定されている。これらの薬剤には、アルクロキサ(alcloxa)、明礬、硫酸アルミニウム、第2アミルトリクレゾール、塩基性フクシン、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンゾキシクイン、ホウ酸、カンファー、カンジシジン、クロロチモール、コールター、ジクロロフェン、メントール、メチルパラベン、オキシキノリン、オキシキノリンスルフェート、フェノール、石炭酸ナトリウム、フェニルサリチレート、プロピオン酸、プロピルパラベン、レゾルシノール、サリチル酸、ホウ酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、硫黄、タンニン酸、チモール、トリンダート(tolindate)、トリアセチン、カプリル酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛が含まれる。現在、FDAによって、OTC局所抗真菌調剤中の活性成分としての使用において安全、且つ、有効であると思われている抗真菌製剤は、クリオキノール、ハロプロギン、硝酸ミコナゾール、ポビドンヨウ素、トルナフテート、ウンデシレン酸およびその塩、およびクロトリマゾールのみである。処方箋なしで買える一般用医薬品に加えて、多くの処方薬(例えばテルビナフィン)も真菌感染症の治療用として入手可能である。テルビナフィンは種々の局所用OTC調剤において入手可能であるが、爪の感染症の治療としての使用については指示されておらず、経口投与用の形態としても指示されていない。
【0016】
上記成分の或る種のものを使用した薬剤組成物であって、現在、FDAによって安全で、有効であるとは認められていないものが、その有効性がFDAによって決定される前に処方箋なしで買える一般用医薬品として従前に販売されているが(最も顕著なものはWhitfield社の軟膏で乳化剤ベースに溶解させた安息香酸とサリチル酸との組合せからなるもの)、それらは一般に効果がないものと見られている。症状の幾らかの軽減をもたらすことが認められるものの、そのような組成物での治療を停止した後に感染症のぶり返しが殆どの場合、一般的に認められる。
【0017】
処方薬および処方箋なしで買える一般用医薬品の双方において、多数の種々の局所用調剤が真菌感染症の治療用として入手可能であるが、これらの調剤の殆どは、皮膚および爪に感染をもたらす種々のタイプのしつこい真菌感染の治療に有効な十分に広いスペクトルを有していない。特に、しばしば爪内部に深く居座り、そのため局所治療で到達することが困難な爪の真菌感染症にたいして十分に広いスペクトルを有していない。更に、現存する調剤の或るものは、毒性でアレルギー性の物質を含有し、その治療は患者にとって耐え難いものとなる。これらの要因の組合せにより、治療期間が可なり長引き、非有効性又は投与ガイドラインとの不整合のため真菌感染症を完全に根絶することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許No.6,080,744
【特許文献2】欧州特許出願No.1 787 652A1
【特許文献3】米国特許No.5,512,200
【特許文献4】米国特許No.6,664,292
【特許文献5】米国特許No.4,824,865
【特許文献6】米国特許No.6,214,889
【特許文献7】米国特許No.6,921,529
【特許文献8】国際特許出願No.2006/042324
【特許文献9】米国特許No.6,159,977
【特許文献10】米国特許No.7,074,392
【特許文献11】米国特許No.6,231,875
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
その結果、治療の停止後に再発するような一時的中休みを与えるのではなく、感染を根絶するのに十分な抗真菌作用を示すような新規、且つ安価な組成物の開発の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明の組成物は、皮膚および爪に発症する、あるいは皮膚および爪と接触する表面に存在し生育することがある様々な真菌感染症の治療のための、広範なスペクトルを示す局所抗真菌製剤として適したものである。その結果、本願発明の組成物は、先在する感染を治療したり、あるいは真菌が隠れているかも知れない表面を洗浄するための殺菌消毒剤として使用することができ、それにより感染の発症を防止したり抑制したりすることができる。本願発明の組成物は、低分子量有機酸又はその誘導体で湿気の存在により有機酸に戻るものの組合せからなる。ここで理想的には、これらの酸は不揮発性吸湿性キャリアに溶解する塩の形とする。
【0021】
本願発明の組成物で使用されるカルボン酸の多くは、様々な程度で殺菌作用を有することが公知であるが、処方箋なしで買える抗真菌製剤における活性成分としての使用に効果はないものと一般的に認識されていた。しかし、個々の薬剤としてではなく組合せで使用した場合に、各成分の個々の抗菌作用の相乗的向上がもたらされることが見出された。この相乗作用により、ミコナゾール、クロトリマゾール、テルビナフィンのような通常の合成抗真菌剤の存在を要することなく広範なスペクトルの抗菌作用を有する抗真菌製剤の製造が可能となり、それにより製造コストの削減を生じさせると共に処方薬の使用の必要性を回避することができる。
【0022】
以下に詳述するように、本願発明の好ましい組成物は、蟻酸ナトリウム、プロピオン酸亜鉛、プロピオン酸カルシウムおよび安息香酸ナトリウムの組合せを、グリセロール(液状処方の場合)又はヒドロキシエチルセルロース(ゼリー状処方の場合)と共に吸湿性キャリアであるプロピレングリコールに溶解させたものからなる。
【0023】
本願発明は、足および足指の真菌感染をフィットネスクラブ(この種の感染の一般的源である)で移された本発明者の個人的な経験の結果、達成されたものである。この足および足指の真菌感染は足部白癬(足白癬又は水虫)として診断され、幾つかの市販の粉状および液状の抗真菌製剤での治療が試みられた。真菌感染症を治療するために使用されたDr. Scholl’s(登録商標)を含む市販の薬品は症状を可なり軽減することができたが、長期間の治療でもこの感染を成功裏に根絶することができなかった。更に、現在、入手可能な治療において、しばしば皮膚のひび割れを生じさせ、症状の戻りに続いて、より深い感染を生じさせることがある。現在、これらの入手可能な市販の抗真菌製剤で感染を根絶することができないなどの失敗(その幾つかは周辺の組織に刺激や炎症をもたらす)の結果、より広範な抗菌スペクトルを示す別の治療薬が求められており、そのことが本発明に到達するに至った。
【0024】
本願発明の組成物で有用な活性成分は、低分子量有機酸およびその塩の2種以上の組合せからなる。この低分子量有機酸の典型例には、置換又は非置換脂肪酸(飽和および非飽和)並びに置換又は非置換芳香族酸が含まれる。理想的には、この有機酸は炭素原子数が15未満、好ましくは10未満を有するもので、最長炭素鎖の長さが炭素原子数8未満のものとする。本願発明の組成物で有用な有機酸は置換基として1又はそれ以上の官能基を有することができる。この官能基の例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボニル、カルボン酸、アルデヒド、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、エーテル、アミノ、シアノ、イソシアノ、オキシ、オクソ、チア、アゾ、アジド、イミン、ニトロ、ニトレート、ニトロソ、ニトロソオキシ、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、スルフィニル、スルフヒドリル、スルホニル、ホスフィノなどを挙げることができる。ここで、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアミノ基の夫々はそれ自体で前述の官能基の1又はそれ以上で適宜、置換されていてもよい。この中で特に関心のあるものは、この酸に湿潤特性を付与ないし増大させるヒドロキシなどの官能基である。更に本願発明の組成物において有用なのは複数のカルボン酸基を有する有機酸である。
【0025】
好ましくは、これら有機酸は、有枝鎖および無枝鎖アルカノン酸、ヒドロキシアルカノン酸、アルケノン酸、芳香族酸およびヒドロキシ芳香族酸から選択されるものである。これらの有機酸には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、グリセル酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、安息香酸、マンデル酸、サリチル酸、アクリル酸、アセト酢酸、ピルビン酸、アジピン酸、アルダル酸、フマル酸、グルタル酸、マレイン酸、ソルビン酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、琥珀酸、タルトロン酸、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、カルバリル酸およびそれらの有枝鎖および置換誘導体が含まれる。これらカルボン酸に加えて、対応するスルホン酸誘導体およびホスホン酸誘導体も本願発明の組成物中に使用することができる。本願発明の組成物中での使用に特に好ましい酸は蟻酸、プロピオン酸および安息香酸である。
【0026】
これらの遊離酸の使用に加えて、容易に加水分解可能な酸無水物、混合酸無水物およびこれら酸のエステル誘導体も使用することができる。なお、このような誘導体は処置の間において湿気に曝されることによりそれらの酸に逆戻りするということを理解されるべきである。
【0027】
これら有機酸の吸湿性並びにどちらかと言えば酸性組成物のpHを上昇させるため、これら酸を塩の形態で使用することが好ましい。
【0028】
本願発明の組成物で有用な有機酸の塩は、金属塩であることが好ましい。より好ましくは、それらの金属塩は、アルカリ金属のもの(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属のもの(例えば、マグネシウム、カルシウム)、および両性的特性を示す金属のもの(例えば、アルミニウム、亜鉛)である。本願発明の組成物で有用な特に好ましい塩の形態は、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび亜鉛である。その他、これら遊離酸を用いて本願発明の組成物を製剤することを望む場合は、緩衝剤(例えば重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム又は重炭酸カルシウム又はその他の類似物)を使用して現場でカルボン酸の塩を形成してもよい。
【0029】
本願発明の組成物のための好ましい活性成分は蟻酸ナトリウム、プロピオン酸亜鉛、プロピオン酸カルシウムおよび安息香酸ナトリウムである。
【0030】
本願発明の組成物の活性成分は、主として1種又はそれ以上の不揮発性吸湿性溶媒からなるキャリア中に溶解して用いられる。もちろん、この組成物はヒトに対して無毒性であり、且つ、皮膚との相容性を有するものである。そのような溶媒の好ましい例として、グリセリン、ジグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、低分子量ポリグリコール(とりわけ、500gmol-1未満の分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)およびそれらの誘導体、特にモノエーテル又はエステル誘導体を挙げることができる。溶媒として特に好ましいものは、グリセリンおよびプロピレングリコールである。水又は局所用抗真菌製剤において一般に使用されているメタノール、エタノールなどの低級モノアルコールではなく、むしろ前述の吸湿性溶媒は、その蒸発速度がより遅いため、感染領域との接触時間を延長させることが可能となり有益であることが見出された。溶媒の蒸発が余りにも即座であると、組成物の活性成分が析出し粉体を形成し、治療領域から容易に分散されてしまい、治療効果が減少してしまう。
【0031】
溶媒として、好ましくはより少ない量での補助溶媒として有用なものは、前述のヒドロキシ基含有溶媒のエステル誘導体、例えばジ‐およびトリグリセリドであり、この場合、その酸成分は前述のカルボン酸の1つである。
【0032】
本願発明の組成物で使用されるキャリアシステムは水分が少ない乃至極僅かであることが好ましい。そのような組成物は、より高い水分含量を有するキャリアを具備してなる組成物と比較して、薬効が増大することが実証されている。
【0033】
本願発明の組成物中の酸の組合せはキャリアに対し所望の割合で添加することができるが、理想的には酸の総含有量が組成物に対し約0.1重量%ないし約50重量%となるようにする。この下限値は意図する適用のための或る組合せについて十分な効果を与えるものであり、この上限値は或るキャリアシステムにおける飽和点である。好ましくは、総酸含有量が組成物に対し約5重量%ないし約30重量%となるようにする。より好ましくは、総酸含有量が組成物に対し約10重量%ないし約20重量%となるようにする。この総酸含有量の範囲内においては、個々の酸成分は任意の割合で分配することができるが、如何なる1種の酸においても、複合物の約75%よりも多くないことが好ましい。好ましくは、酸の夫々が総配合の約2重量%ないし約10重量%となるようにする。
【0034】
所望により、配合物の粘度を、酸/塩および溶媒からなる特定の混合物により示される特性に応じて、更に意図する治療方法に応じて変化させることができる。これは可溶性セルロース誘導体、オリゴ糖類、多糖類、分子量1000を超えるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの増粘剤を単独又は複数添加することにより、あるいは二酸化珪素、水和酸化アルミニウムなどのコロイド状懸濁液を用いることにより達成することができる。このような薬剤はゲル又はペースト状薬剤の製造に特に有用であり、それにより治療部位で薬剤を長期間保留させることができる。好ましい増粘剤はヒドロキシエチルセルロースおよびアエロジル(Aerosil)(登録商標)200(ヒュームドシリカ)である。
【0035】
本願発明の組成物は抗菌特性を示し、従って、爪白癬、足部白癬、股部白癬、体幹白癬、でん風、カンジダ症などの皮膚および爪での種々の感染を生じさせる真菌に対する局所治療において有益なものである。これらの白癬感染を生じさせる真菌として一般に知られているものには、白癬菌属の真菌、表皮菌属、小胞子菌属、カンジダ菌属などがある。本願発明の組成物は爪の感染の治療に特に有用である。この爪の感染はしばしばトリコフィトン・メンタグロフィテス(指間トリコフィトンとしても知られている)およびトリコフィトン・ルブルムによって発症する。足部白癬、股部白癬、体幹白癬などの皮膚の真菌感染は、一般にT.rubrum、T.mentagrophytesによって発症することが知られており、従って、これらも本願発明の組成物を用いて好ましく治療することができる。
【0036】
本願発明の組成物は、感染部位に直接適用することができると共に、包帯又は他の吸収材料に予め適用し、これを感染部位に適用してもよい。その他、その治療部位を包帯又は他の保護用カバリングで包むようにしてもよい。
【0037】
本願発明の組成物は、皮膚および爪の真菌感染の治療に加えて、感染性真菌が宿りそうな表面を洗浄するための殺菌消毒剤としても使用することができる。それにより感染の発症を防止ないし抑制することができる。本願発明の組成物(好ましくは低粘度のもの)は、皮膚の他、ドアノブ、ショッピングカートのハンドル、公衆シャワー、着替え室など、しばしば皮膚と接触する人体表面のための殺菌消毒剤として使用することができる。
【0038】
従って、本発明によれば、皮膚および爪の真菌感染の治療方法が提供される。その場合、上述の組成物の治療有効量が感染領域に適用される。同じく、皮膚および爪の真菌感染の局所治療のための上記組成物の使用が提供される。更に、皮膚および爪の真菌感染の局所治療のための薬剤の製造における上記組成物の使用も提供される。
【0039】
(本発明の抗真菌組成物の調合例)
本発明の抗真菌組成物の調合は当業者にとって公知の手段により実施することができる。本発明の2つの調合例(限定されない)、つまり液状処方およびゼリー状処方を以下に記載する。これらの調合例のほか、他の局所用調合(当業者にとって公知の方法を用いて製造される)も本発明の抗真菌組成物の投与のために利用することができる。
【0040】
実施例1(液状調合例)
好ましい液状調合として以下の成分を含有する。
成分 重量%
プロピレングリコール 72
安息香酸ナトリウム 5
プロピオン酸カルシウム 5
プロピオン酸亜鉛 5
蟻酸ナトリウム 3
グリセロール 10
【0041】
この調合は、とりわけ、最初にプロピレングリコールを温め、その中に安息香酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸亜鉛および蟻酸ナトリウムを溶解する。これら塩の夫々を溶解させた後、グリセロールを添加する。その後、その混合物を室温まで冷却する。
【0042】
実施例2(ゼリー状調合例)
好ましいゼリー状調合として以下の成分を含有する。
成分 重量%
プロピレングリコール 80
安息香酸ナトリウム 5
プロピオン酸カルシウム 5
プロピオン酸亜鉛 5
蟻酸ナトリウム 3
ヒドロキシエチルセルロース 2
【0043】
この調合は、とりわけ、最初にプロピレングリコールを温め、その中に安息香酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸亜鉛および蟻酸ナトリウムを溶解する。これら塩の夫々を溶解させた後、ヒドロキシエチルセルロースをゆっくり添加し、凝集を防止する。その後、その混合物を室温まで冷却する。
【0044】
ここに記載した製剤例の他、これらの製剤を、最初にカルボン酸及び/又はその塩および誘導体を水あるいは他の比較的低い沸点の水性又は非水性溶媒に溶解させたのち、この最初の混合物をキャリアシステムに添加し、その組成物を加熱又は乾燥を介して水あるいは低沸点溶媒の全て又は殆どを除去することにより製造することができる。この手法はカルボン酸成分の最初の溶解を助けるものである。
【0045】
(本発明の抗真菌組成物の使用および効能)
一般に、抗真菌製剤は例えば実施例1および2に記載した液状又はゼリー状製剤を感染部位に直接適用することにより皮膚および爪の真菌感染を治療するのに適したものである。液状製剤は皮膚のひだ又は狭い裂け目の下に、例えば爪床に拡散した感染を治療するのに特に有益である。ゼリー状製剤は開放した皮膚および爪の真菌感染を治療するのに特に有用であり、それを更に保護フィルム、例えば布、手袋、包帯、巻きつけテープなどで覆うことができる。
【0046】
(抗真菌組成物の感染した爪への適用)
水虫の感染で、後に爪まで拡大したものの治療のための薬剤の開発途上において、本発明の抗菌効能が本発明者によって最初に実証された。本発明者を含め他のヒトについて本発明の抗真菌組成物のテストを行った結果、治療の完了後に再発を生じさせることなく感染の根絶がなされた。
【0047】
両方の足の全ての爪が真菌感染を患っている2人の被験者に対し、損傷した爪部を除去するため創面切除を最初におこなった。この創面切除の後、液状製剤(実施例1に記載したもの)を各爪および周囲の皮膚に毎日2回(朝、晩)適用した。2週間以内に双方の被験者において爪での炎症の感覚の顕著な減少が認められた。この治療を8週間継続し、その時点において、一人の被験者から採取した培養組織をテストしたところ爪の真菌感染はマイナスであった。この治療を止めた後も、感染の再発について、夫々の被験者からの報告はなかった。本発明の抗真菌組成物の適用による刺激又は他の不快について、夫々の被験者からの報告はなかった。
【0048】
親指の爪に真菌感染を患っている2人の被験者に対し、液状製剤(実施例1に記載したもの)を毎日2回(朝、晩)8週間継続して適用した。その時点において、この感染は消失した。この治療に際し、事前の爪の創面切除は行わなかった。この治療を止めた後も、感染の再発について、夫々の被験者からの報告はなかった。本発明の抗真菌組成物による刺激又は他の不快について、夫々の被験者からの報告はなかった。この2人の被験者のうちの一人は足の上面および下面の皮膚および足指間にも真菌感染を患っていた。液状製剤(実施例1に記載したもの)をこの炎症部位に毎日2回適用した。この治療を炎症した爪の治療との関連で8週間継続したが、この炎症部位の赤みおよび刺激状態は2日以内にきれいに改善した。
【0049】
双方の足の指間にも真菌感染を患った被験者に対し、液状製剤(実施例1に記載したもの)を毎日2回(朝、晩)1週間継続して適用した。この治療の終りにおいて、感染は根絶され、その再発についての報告はなかった。この治療の間において、本発明の抗真菌組成物の適用による刺激又は他の不快について、被験者からの報告はなかった。
【0050】
腕の下および肘の後ろ側に真菌感染を患った被験者に対し、液状製剤(実施例1に記載したもの)を毎日2回(朝、晩)5日間継続して適用した。この治療の終りにおいて、両方の感染が完全に根絶され、その再発についての報告はなかった。この治療の間において、本発明の抗真菌組成物の適用による刺激又は他の不快について、被験者からの報告はなかった。
【0051】
上記実施例においては、感染した爪の治療を8週間継続して適用したが、これは爪の感染の成功裏の根絶に要する最小時間として認識されるべきではない。8週間の期間は、爪の真菌感染の治療で一般に指示されている治療期間に基づいて選択されたものである。本発明の抗真菌組成物を使用した場合の最小の効果的治療期間は、そのような結果を得るために設計された形式化医療試験プログラムにおいて決定することができる。
【0052】
本発明で使用される複数の有機酸の組合せは相乗作用を示すものと信じられる。これはプロピオン酸カルシウムおよびプロピオン酸ナトリウム(食品保存剤として一般に使用されている公知の抗真菌剤であるMycoban(登録商標)の成分)の水溶液を使用した真菌感染の治療の最初の試みに基づいている。この治療により皮膚の真菌感染の最初の清浄化がもたらされたが、治療の停止後2週間以内に感染が再発した。これとは対照的に、僅か2種類の有機酸、特にプロピオン酸および安息香酸の塩をプロピレングリコールに溶解した組合わせからなる本発明の抗真菌組成物を使用した場合、この感染を根絶することができる。この増大した効果は、第3の有機酸を添加することにより更に向上させることができた。
【0053】
(抗真菌組成物の抗真菌活性の確認‐液体培地効力検定)
本発明の抗真菌組成物の抗真菌活性を、侵襲性感染を生じさせる繊維状真菌の抗菌感受性の測定に使用される抗菌微量希釈法を用いてin vitroテストを介して確認した。真菌コロニーをジャガイモグルコース寒天(PGA)に成長させた。1つのコロニーを取り上げ、サブローグルコース液体培地(Sabouraud glucose broth)(SGB)を用い、テスト化合物の存在下24℃で3日間成長させた。微量希釈トレイは24℃で培養され、培養の5日後に読み込んだ。微量希釈ウェル内の濁り度は、読取りミラーを用いて評点をつけ、生育対照物のものと比較した。各ウェルに対し0から4の数値スコアを以下のスケールで与えた。すなわち、0=光学的に透明又は生育無し;1=僅かな生育(生育対照物の25%);2=生育の顕著な減少(生育対照物の50%);3=生育の僅かな減少(生育対照物の75%);4=生育減少が認められない。
【0054】
テスト化合物の異なる濃度(又は希釈)で5日間行なったT.rubrum、T.mentagrophytesについての濁り度スコア(3つのテストの平均)は以下の通りであった。
【0055】
T.rubrum
純度(%) 0 0.625 1.25 2.5 5 10
実施例1の液状製剤 4 0 0 0 0 0
キャリア 4 4 4 4 2.67 1
【0056】
T.mentagrophytes
純度(%) 0 0.625 1.25 2.5 5 10
実施例1の液状製剤 4 1 1 0.67 0 0
キャリア 4 4 4 4 3 2
【0057】
このテストにより、テストした組成物はT.rubrum、T.mentagrophytesの双方に対し活性を示したが、一般にT.mentagrophytesよりも更に治療が困難とされたT.rubrumに対する抗菌効能がより大きいことが実証された。
【0058】
本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更を上記実施例に対し行うことが可能であり、従って此処に記載された全ての物質は本発明を単に説明するためのものであり本発明を制限するものではないものと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚との適合性を有する非毒性組成物であって、2種又はそれ以上の低分子量有機酸、その塩又はその有機酸誘導体であって湿気の存在により有機酸に戻るものの組合せからなり、かつ、キャリアに溶解されたものからなり、ここで、
前記低分子量有機酸は、
飽和又は非飽和、環式又は非環式、分岐又は非分岐の脂肪族カルボン酸で炭素原子数が15未満であり、最長炭素鎖の長さが炭素原子数8未満のもの、
炭素原子数が15未満の芳香族カルボン酸、および
前記脂肪族又は芳香族カルボン酸の対応するスルホン酸誘導体およびホスホン酸誘導体、
の中から選択されたものであり;
これら有機酸の夫々は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボニル、カルボン酸、アルデヒド、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、エーテル、アミノ、シアノ、イソシアノ、オキシ、オクソ、チア、アゾ、アジド、イミン、ニトロ、ニトレート、ニトロソ、ニトロソオキシ、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、スルフィニル、スルフヒドリル、スルホニル、ホスフィノ官能基などの内の1又はそれ以上で適宜置換されていてもよく、更に、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアミノ基の夫々はそれ自体で前述の官能基の1又はそれ以上で適宜、置換されていてもよく;
前記キャリアは1種又はそれ以上の不揮発性吸湿性溶媒からなり;
前記低分子量有機酸の組合せが該組成物に対し0.1重量%ないし50重量%であり、前記酸又は塩の如何なる1種も酸成分総量の75%よりも多くないことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記有機酸の夫々は炭素原子数が10未満である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機酸が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、グリセル酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、安息香酸、マンデル酸、サリチル酸、アクリル酸、アセト酢酸、ピルビン酸、アジピン酸、アルダル酸、フマル酸、グルタル酸、マレイン酸、ソルビン酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、琥珀酸、タルトロン酸、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、カルバリル酸およびそれらの誘導体又は置換誘導体であって湿気の存在により有機酸に戻るものから選択されたものである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機酸の1種又はそれ以上が塩の形態で使用される請求項1,2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記有機酸が金属塩の形態で使用される請求項1,2又は3に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機酸がアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムおよび亜鉛から選択される塩の形態で使用される請求項1,2又は3に記載の組成物。
【請求項7】
前記低分子量有機酸の塩が蟻酸塩、プロピオン酸塩および安息香酸塩である請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記低分子量有機酸の塩が蟻酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸亜鉛および安息香酸ナトリウムである請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記有機酸又はその塩の夫々が3乃至7重量%の量で存在する請求項1ないし8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記キャリアが分子量500gmol-1未満のポリヒドロキシ化溶媒およびポリグリコールから選択される吸湿性溶媒からなる請求項1ないし9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記キャリアがグリセリン、ジグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、低分子量ポリグリコール、例えば500gmol-1未満の分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、からなる群から選択される吸湿性溶媒からなる請求項1ないし9のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記キャリアがプロピレングリコールである請求項1ないし9のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記キャリアが更にグリセロールを含む請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記キャリアが更に増粘剤を含む請求項1ないし12のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
可溶性セルロース誘導体、オリゴ糖類、多糖類、分子量1000 g/mol-1を超えるポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、ヒュームドシリカまたは酸化アルミニウムからなる群から選択される増粘剤を更に含む請求項1ないし12のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
ヒドロキシエチルセルロースおよびヒュームドシリカから選択される増粘剤を更に含む請求項1ないし12のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
ヒドロキシエチルセルロースを増粘剤として更に含む請求項1ないし12のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記有機酸の1種又はそれ以上が湿気の存在により酸に戻る誘導体として存在する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項19】
皮膚又は爪の真菌感染の治療のための請求項1ないし18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項20】
前記真菌感染が爪の感染である請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記真菌感染が皮膚の真菌感染である請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記真菌感染が爪白癬、足部白癬、股部白癬、体幹白癬、でん風又はカンジダ症である請求項19に記載の使用。
【請求項23】
前記真菌感染がTrichophyton rubrum又はTrichophyton interdigitaleによって発症するものである請求項19ないし22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
真菌殺菌消毒剤としての請求項1ないし18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項25】
真菌により感染された皮膚又は爪に適用される包帯又はその他の材料に含浸ないし適用された請求項1ないし18のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
皮膚との適合性を有する非毒性組成物であって、2種又はそれ以上の低分子量有機酸、その塩又はその有機酸誘導体であって湿気の存在により有機酸に戻るものの組合せからなり、かつ、キャリアに溶解されたものを、皮膚、爪の真菌感染の局所治療に使用することを目的として、皮膚との適合性を有する非毒性組成物の製造のための使用であって、ここで、
前記低分子量有機酸は、
飽和又は非飽和、環式又は非環式、分岐又は非分岐の脂肪族カルボン酸で炭素原子数が15未満であり、最長炭素鎖の長さが炭素原子数8未満のもの、
炭素原子数が15未満の芳香族カルボン酸、および
前記脂肪族又は芳香族カルボン酸の対応するスルホン酸誘導体およびホスホン酸誘導体、
の中から選択されたものであり;
これら有機酸の夫々は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボニル、カルボン酸、アルデヒド、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、エーテル、アミノ、シアノ、イソシアノ、オキシ、オクソ、チア、アゾ、アジド、イミン、ニトロ、ニトレート、ニトロソ、ニトロソオキシ、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、スルフィニル、スルフヒドリル、スルホニル、ホスフィノ官能基などの内の1又はそれ以上で適宜置換されていてもよく、更に、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアミノ基の夫々はそれ自体で前述の官能基の1又はそれ以上で適宜、置換されていてもよく;
前記キャリアは1種又はそれ以上の不揮発性吸湿性溶媒からなり;
前記低分子量有機酸の組合せが該組成物に対し0.1重量%ないし50重量%であり、上記酸又は塩の如何なる1種も酸成分総量の75%よりも多くないことを特徴とする。
【請求項27】
前記有機酸が蟻酸、プロピオン酸、安息香酸又はそれらの塩である請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記有機酸の塩が蟻酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸亜鉛および安息香酸ナトリウムである請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記キャリアがプロピレングリコールを含む請求項26ないし28のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
前記キャリアが更にグリセロールを含む請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記組成物が更に増粘剤を含む請求項26ないし29のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
前記増粘剤がヒドロキシエチルセルロースである請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記真菌感染が爪白癬、足部白癬、股部白癬、体幹白癬、でん風又はカンジダ症である請求項26ないし32のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
前記真菌感染がTrichophyton rubrum又はTrichophyton interdigitaleによって発症するものである請求項26ないし32のいずれかに記載の使用。
【請求項35】
皮膚との適合性を有する非毒性抗真菌組成物であって、蟻酸、プロピオン酸および安息香酸の夫々の金属塩の組合せを含有してなり、かつ、これら金属塩がリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムおよび亜鉛からなる群から選択されたものであり、更に該塩はプロピレングリコールおよびグリセロールから選択される1種又はそれ以上の吸湿性溶媒からなるキャリアに溶解されたものであり、更に前記金属塩の組合せは該組成物に対し0.1重量%ないし50重量%であり、上記塩の如何なる1種も酸成分総量の75%よりも多くないことを特徴とするもの。
【請求項36】
各塩は該組成物に対し3重量%ないし7重量%含まれる請求項35に記載の抗真菌組成物。
【請求項37】
前記塩が蟻酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸亜鉛および安息香酸ナトリウムである請求項35又は36に記載の抗真菌組成物。
【請求項38】
前記キャリアがプロピレングリコールを含む請求項35又は36に記載の抗真菌組成物。
【請求項39】
前記キャリアが更にグリセロールを含む請求項38に記載の抗真菌組成物。
【請求項40】
プロピレングリコールを少なくとも70重量%含む請求項39に記載の抗真菌組成物。
【請求項41】
更に増粘剤を含む請求項35ないし38のいずれかに記載の抗真菌組成物。
【請求項42】
前記増粘剤がヒドロキシエチルセルロースおよびヒュームドシリカから選択されるものである請求項41に記載の抗真菌組成物。
【請求項43】
前記増粘剤がヒドロキシエチルセルロースである請求項42に記載の抗真菌組成物。
【請求項44】
皮膚又は爪の真菌感染の治療のための請求項35ないし43のいずれかに記載の抗真菌組成物の使用。
【請求項45】
Trichophyton rubrum又はTrichophyton interdigitaleによって発症する前記真菌感染の治療における請求項35ないし43のいずれかに記載の抗真菌組成物の使用。
【請求項46】
真菌殺菌消毒剤としての請求項35ないし43のいずれかに記載の抗真菌組成物の使用。
【請求項47】
真菌により感染された皮膚又は爪に適用される包帯又はその他の材料に含浸ないし適用された請求項35ないし43のいずれかに記載の抗真菌組成物。

【公表番号】特表2012−526727(P2012−526727A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510077(P2012−510077)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000685
【国際公開番号】WO2010/130028
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511276219)バイオセプタ コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】bioCEPTA Corporation
【住所又は居所原語表記】120 Eglinton Avenue East,Suite 1100,Toronto,Ontario,M4P 1E2 Canada
【Fターム(参考)】