説明

皮膚または毛髪に局所適用されたポリマーからの活性分子の持続放出

本発明は、生物活性成分の局所送達のためのポリマーに関する。前記ポリマーは、少なくとも1個の基:U-B-Aを有し、そこにおいて、Uは生理的に許容されるオリゴマーまたはポリマーの単位を表し、Aは生物活性成分を表し、BはAをUに結合する1個以上の結合であって、皮膚中で起こる生物学的、物理的または化学的プロセスにより開裂可能な結合を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所用組成物に関する。より具体的には、本発明は生物活性物質を皮膚および毛髪に送達するのに有用なポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素、薬物、保湿剤、芳香剤、および他の化粧品または医薬品分子の局所適用は、人間の歴史において何世紀も実施されてきた。局所アルファ-キモトリプシンは血腫を治療するために使用され(1)、局所サリチル酸は、高濃度ではたこを取り除くために使用され(2)、一方、低濃度では自然の落屑の過程を助けて滑らかな皮膚表面を作り出し(3)、また、局所ビタミンEは日光の望まれない効果を減少させるために使用することができる(4)。化粧品および医薬品において、非常にさまざまな材料を局所投与することにより得られる有益な効果に関して数え切れないほどの例を挙げることができる。
【0003】
最近、経皮送達は、化粧品および医薬品活性物質の投与経路として、灌流または全身投与の代替法として一般的になってきた。経皮送達は、送達より患者に与える外傷が少ないこと、ならびに特定の病気の治療には有効であるが消化系に対して毒性があるか、消化系により不活性化される薬物、または灌流経路には適さない薬物の使用を可能にすること等の多くの利点を有する。皮膚を通して活性物質を送達するこの方法は、それ自体が克服しなければならないいくつかの欠点および障害を有する。
【0004】
経皮送達に関する主要な困難の一つは、活性物質の有効な送達を達成するためには、活性物質がしばしば角質層、表皮および皮膚の基底膜を透過しなければならない点である。これを達成できるかどうかは送達すべき物質の親油性/親水性特性に依存する(5)。この困難を避ける一つの方法は、活性物質をリポソームに組み込んで送達することであって、リポソームを用いて、少なくとも表皮への送達に関して、いくらかの成功が得られた(6)。
【0005】
有効な経皮送達を達成する上での別の主要な問題は、治療効果を達成するために必要な大量の薬物をすべて同時に、すなわち、適用時にすべてを投与しなければならないことである。活性物質の化学的な性質によって、有効量の活性物質が、刺激、炎症、局所毒性、またはアポトーシスなどのいくつかの望まれない作用を起こす可能性がある。この作用は医薬品に限らない。同様に、化粧品成分を制御されない方式で皮膚または毛髪に適用した場合には、それらの最適とはいえない作用が生じる可能性がある。たとえば、過剰の保湿剤は乾燥肌に望まれる感触を与えず、大量の芳香剤は極端と感じられるか、ある特定の敏感なユーザーにアレルギーを誘発する可能性がある。
【0006】
したがって、依然として、望まれる結果が得られる、とりわけ、有害な作用および/または大量の遊離の成分を適用するという無駄を回避しつつ望まれる効果の持続時間を延長できる、局所適用される医薬品または化粧品成分の持続放出を達成するためのシステムの開発の必要性が存在する。本発明はその目標を達成するためのメカニズムを提供する。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、生物活性成分を局所送達するためのポリマーであって、少なくとも1つの部分:
U-B-A
[式中、Uは生理的に許容されるオリゴマーまたはポリマーの単位を表し、Bは皮膚中または皮膚上で生じる生物学的、物理的または化学的プロセスにより開裂可能な結合を表し、Aは生物活性成分を表す]
を含むポリマーに関する。皮膚上での結合の開裂の結果として、活性リガンドが、すべて同時に放出されるのではなく、制御された方式で皮膚上に放出されることにより、他の方法により達成されるよりも害がなく、効果の高い物質の送達が可能になる。本発明はさらに、本発明のポリマーを含む局所用組成物、ならびに成分として活性物質を含有する本発明のポリマーを皮膚に適用することを含む、皮膚に生物活性物質を送達する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
定義
本明細書において、種々の用語を下記のように定義する。
【0009】
「位置選択的反応」は、単一の反応物から少なくとも2個の構造異性体が生成し得るが、反応生成物として一方の異性体が優位に観察されるような反応である。位置選択的反応には、一方の異性体が排他的に形成される反応も含まれる。本発明において、これは、直接には、3個以上のヒドロキシル基を有するポリオール内に含まれる2個のヒドロキシル基の選択的重合を指す。
【0010】
「化学反応」は、公知の手段によるイオン、共有、または非共有構造の形成または解離を含む。化学反応は、pH、イオン強度、および温度などの環境条件の変化を含む。
【0011】
「ポリマー」は、平均鎖長が繰り返し単位2個以上であるホモポリマー、コポリマー、およびそれらの組合せである、またはそれらを含む。
【0012】
「オリゴマー」は、平均鎖長が繰り返し単位10個以下であるホモポリマー、コポリマー、およびそれらの組合せである、またはそれらを含む。
【0013】
「ポリオール」は、2個よりも多いヒドロキシル基を有するすべての化合物である。ポリオール化合物には、炭水化物などの化合物が含まれる。
【0014】
「ポリエステル」は1個よりも多いエステル結合を有するすべての化合物である。
【0015】
他に定義されない限り、本明細書において使用するすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施および試験に使用することが可能であるが、好適な方法および材料を下に記載する。さらに、材料、方法、および実施例は例示のみを目的とするものであって、限定を意図するものではない。
【0016】
発明の詳細な説明
哺乳類の皮膚は多くの異なる機能をおこなうことが可能な、生きている器官であって、それに接触して置かれた物質に対して非常に高い反応性を有し得る。本発明はこれらの皮膚の特性を、化粧品および医薬品の活性成分の皮膚細胞への持続放出を達成するために使用する。
【0017】
このコンセプトへの最も一般的なアプローチにおいて、本発明の送達システムは、結合により生物活性リガンドに連結された局所投与に許容されるポリマーを含む。ここで使用される「ポリマー」という用語は、平均鎖長が繰り返し単位11個以上であるホモポリマー、コポリマー、およびそれらの組合せを包含する。「ポリマー」という用語は、オリゴマー、すなわち繰り返し単位3〜10個の鎖長を有する短鎖ポリマーをも包含すると理解される。活性物質をポリマー鎖、または鎖中のモノマーと連結する結合は、イオン結合、共有結合、またはすべてのタイプの非共有結合であってよく、通常皮膚上で起こり得る化学的、生物学的または物理的プロセス、たとえば酵素活性により、または水の存在により開裂可能な性質を有するものでなくてはならない。本発明のポリマーは、少なくとも1個の部分:
U-B-A
[式中、Uは、生理的に許容されるオリゴマーまたはポリマーの単位を表し、Bは前記の皮膚上のプロセスの一つにより開裂可能な結合を表し、Aは、皮膚に送達しようとする目的の生物活性物質を表す]
を含むことを特徴とする。ある実施形態において、ポリマーは、平均して少なくとも2個以上のU単位を含有する。ポリマーの鎖長には決められた下限および上限は存在しないが、典型的には、ポリマーは2個から約40個の構成単位、より典型的には4〜30個の範囲の構成単位を含有する。ポリマーの平均分子量は、典型的には0.5〜15 kDAの間であり、好ましくは1〜5 kDAの間、より好ましくは3 kDAである。
【0018】
酵素の使用が、ラクトン、環状カーボネート、環状無水物、二酸(diacid)、ジエステル、ジオール、ポリ酸、ポリオール、アミノアルコール、ジアミン、およびヒドロキシ酸の穏やかな選択的重合反応を促進するために有効であることが証明されている(たとえば、US 20040019178参照、この文献の内容を参照により本明細書に組み入れる)。本発明のポリマーは、より典型的な、公知の化学触媒によっても合成することができるが、これらの方法はあまり好ましくない。酵素的反応は金属の不在下で低温でおこなうことができる。これに対して、化学的重合は、しばしば高温(>150℃)、およびヒトに接触すると危険な反応性の高い有機金属試薬または触媒の使用を伴う。さらに化学的方法に必要な厳しい反応条件により、しばしば活性物質の構造が変化するので、送達されるべき物質の生物活性の保持に不利である。したがって、酵素触媒による調製が非常に好ましい。それにより、毒性のある金属触媒の使用およびその最終生成物への混入を避けることができ、生物活性物質とモノマー/ポリマーの間に、水および/または皮膚の酵素の存在下で本質的に分解性である結合を形成することができ、穏やかな反応条件を使用するので成分を無傷で送達され、皮膚上に放出された時に完全な活性を有する。
【0019】
ポリマー分子は少なくとも1個の生物活性成分(要素A)を有する。最終生成物中の要素Aは、ポリマー鎖の末端に存在してもよく、ポリマー骨格内に組み込まれてもよく、および/またはポリマー骨格の側鎖またはその一部であってもよい。ポリマーは、異なる化学的同一性を有する複数の活性単位を、たとえば、一方の活性物質は鎖の末端に位置し、他方は側鎖として位置するという形で有してもよい。ある活性物質の位置は活性物質の性質、およびポリマーにおけるUの性質に依存する。言い換えれば、ポリマーにおける活性物質の最終的な位置は、活性物質上の利用できる反応性の基と反応するU単位上の利用できる反応性の基の性質に依存する。
【0020】
本発明のポリマーの成分Uは、オリゴマーまたはポリマーの一部を形成することができ、活性物質と皮膚上で開裂可能な結合を形成することができるいかなる生理的に許容される単位であってもよい。本発明のポリマーにおいて最も有用な単位は、鎖の末端の一方または両方において、ペンダント基として、鎖の中の繰り返し単位として、または鎖の側鎖に位置して、共有結合により活性物質に結合することができるものである。好ましい実施形態において、単位は、ラクトン、環状カーボネート、環状無水物、脂肪酸、エポキシド、環状N-カルボキシ無水物、二酸、ジエステル、ヒドロキシ酸、ジオール、ポリ酸、ポリオール、アミノアルコール、ジアミン、またはそれらの組合せからなる群より選択される。ポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、および鎖中の単位のこれらの配列の組合せとして配列された、前記の単位の混合物から構成することができる。ポリマーは直鎖、分岐鎖、ブラシ状(櫛状とも呼ばれる)、デンドリマーまたは超分岐である形または構造を有してよい。便宜上、以下の文章において、ポリマー前駆体、およびそれらの単位をモノマーと呼ぶ。
【0021】
成分B、モノマー単位と活性部分との間に形成された結合(「皮膚開裂性結合」)は、皮膚中または皮膚上で自然に起こる物理的、化学的または生物学的プロセスにより開裂可能なものである。前記のプロセスには、皮膚細胞によりまたは皮膚上の微生物により作り出される皮膚上で通常生じる酵素作用、または通常皮膚上に存在する水による加水分解が含まれるが、これらに限定されない。天然に存在する皮膚上の酵素には、たとえば、リパーゼ、プロテアーゼ、クチナーゼ、およびエステラーゼが含まれる。酵素または水の天然の作用により皮膚上で容易に開裂可能な結合の例には、エステル、エーテル、無水物、カーボネート、アミド、アセタール、ケタール、およびシッフ塩基(アルデヒドまたはケトンと第一アミンとの非酵素的反応生成物)を介する結合が含まれるが、これらに限定されない。これらの結合を形成することができるモノマーの例は、ラクトン(たとえば、ε-カプロラクトン、パラ-ジオキサノン)、エポキシド(たとえば、エチレンオキシド)、環状無水物(たとえば、無水コハク酸)、環状カーボネート(たとえば、トリメチレンカーボネート)、N-カルボキシ無水物(たとえば、アミノ酸から形成されたもの)、アルデヒド(たとえば、ブチルアルデヒド)、ポリオール(たとえば、ペンタエリスリトール)、アミノアルコール(たとえば、1-アミノ-4-ブタノール)である。種々の異なる活性成分に対して広い適用性を有する特に有用な結合はエステルであり、本発明の好ましいポリマーはポリエステルである。
【0022】
成分Aは、皮膚用および/または一般化粧品または医薬品用の効果を有し、開裂性の結合を作るのに必要な触媒過程に対して化学的に反応性である生物活性物質から選択される。活性分子は、最も広い意味において、選択された縮合反応において、遊離の酸または遊離のアミン官能基を有する適用可能なモノマー単位と結合する、遊離のヒドロキシ、C=O、またはアミノ基を有するものであればよい。より特定的な実施形態において、活性成分は化学的にはアルコール、アルデヒド、ケトンまたはアミンであるか、少なくとも目的のモノマーと結合することが可能な前記のような部分を有する。明細書および特許請求の範囲の全体を通して使用される「活性物質」という用語は、抗酸化剤または化学ピーリング剤などの直接の生物活性を有する物質のみでなく、芳香剤もしくは保湿剤、または皮膚に適用した時に生物学的または物理的のいずれであれ、有益な効果を有する化粧品成分などの間接的または付随的生物活性を有する化合物をも含むものと解釈される。前記の化合物は厳密に美的な効果のために日常的に使用されるが、たとえば、保湿剤の場合、皮膚に対する、厳密に生物学的というよりも物理的な効果をも有し、または芳香剤の場合、アロマテラピーにより与えられる気分の調節などのより定量化しにくい効果をも有する。明細書全体を通して、「活性物質」または「生物活性物質」という用語をほぼ同じ意味で使用する。
【0023】
本発明のポリマーは、モノマーから直接組み立てても、またはエステル交換またはアミド交換反応によりあらかじめ形成されたポリマーから調製してもよい。これらの反応は、バルク中または溶媒中でおこなうことができる。触媒として使用する酵素は、通常リパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、およびプロテアーゼとして機能するものから選択することができる。リパーゼ、プロテアーゼおよびエステラーゼが好ましい。ポリマーの調製は一つのタイプの酵素に限定されず、多くの好適な酵素が市販されている。有用なリパーゼには、ノボザイム(Novozyme)-435(物理的に固定化されたCandida antarcticaリパーゼB)、Candida cylindreaceaリパーゼ(CCL)、Candida rugosaリパーゼ(CR)、Penicillium roquefortiリパーゼ(PR)、リパーゼIM (Mucor meihei)、PS-30 (Pseudomonas)、PA (Pseudomonas aeruginosa)、リパーゼPF (Pseudomonas fluorescence)、Pseudomonas cepacia由来の固定化リパーゼPC、Candida cylinderaceaeリパーゼ、ブタ膵臓リパーゼ(PPL)、および黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)リパーゼが含まれる。有用なプロテアーゼには、ウシ膵臓由来のα-キモトリプシンII型、パパイン、ブタ胃粘膜由来のペプシン、Aspergillus saitoi由来のプロテアーゼXIII型、Streptomyces griseus由来のプロテアーゼ(プロナーゼE)XIV型、Bacillus licheniformis由来のプロテアーゼVIII型(Subtilisin Carlsberg)、Bacillus thermoproteolyticus rokko由来のプロテアーゼX型(Thermolysin)およびプロテアーゼXXVII型(Nagarse)が含まれる。リパーゼは、本発明のポリマーを調製するための特に好ましい酵素である。特に好ましいリパーゼはCandida antarctica由来のリパーゼBである。
【0024】
生物活性物質が低い揮発性および高い化学的安定性を有する場合には、生物触媒の代わりに化学触媒を使用してもよい。ラクトンのオリゴマー形成およびポリマー形成ならびに二酸/ジオール系の縮合に使用することができる化学触媒の例には、ジメトキシジブチルスズ、オクタン酸スズ、チタンテトラブトキシド、トリアルキルアルミニウム、モノクロロジアルキルアルミニウム、ランタノイドおよびスカンジウムを含む有機金属、およびカリウムtert-ブトキシドなどのアニオン系が含まれる。けれども、この方法は、それらが機能する時の高い温度、形成された生成物の精製の難しさ、重合反応から水分および酸素を完全に排除する必要性、重合の制御が比較的困難である点、およびソルビトールなどの多官能基モノマーを使用した場合の分岐鎖または架橋生成物の形成のために、あまり好ましくない。
【0025】
一つの実施形態において、下にさらに詳細に記載するが、本発明のポリマーを調製する方法は、一般的に、ラクトン、環状カーボネート、環状無水物、二酸、ジエステル、ジオール、ポリ酸、ポリオール、アミノアルコール、エポキシド、炭水化物、ジアミン、ポリアミン、ジエステル、およびヒドロキシ酸の群から1個以上のモノマーを選択する段階、これらの反応物と適切な酵素を容器中で混合する段階、および反応物モノマーを結合するオリゴマー形成、ポリマー形成、エステル交換、またはアミド交換反応を実施する段階を含む。ラクトン、環状カーボネート、環状無水物、二酸、ジエステル、ジオール、ポリ酸、ポリオール、アミノアルコール、およびヒドロキシ酸を用いて実施されるオリゴマー形成、ポリマー形成およびエステル交換反応に適した酵素は、リパーゼ、エステラーゼまたはクチナーゼである。エポキシドまたは炭水化物を用いてオリゴマー形成およびポリマー形成反応をおこないエーテル結合を形成するのに適した酵素は、グリコシダーゼまたはエポキシドヒドロラーゼである。アミノアルコール、ジアミン、ジエステル、ポリ酸、およびポリアミンを用いて実施されるオリゴマー形成およびポリマー形成反応に適した酵素には、リパーゼおよびプロテアーゼが含まれる。一つの実施形態において、モノマー混合物は活性成分を含有せず、活性物質は、活性物質の性質に適した酵素または化学反応により、鎖の末端または側鎖に、後から結合させる。別の実施形態において、活性物質はモノマー混合物に混合され、重合反応の一部として、鎖の1つ以上の末端に、またはポリマーのペンダント基として直接組み込まれる。多くの場合、活性物質は、他のモノマーと異なり、反応部位を1個しか有しないので、この場合には活性物質は重合の開始剤(たとえば、1個のヒドロキシルを有する活性物質はリパーゼ触媒ラクトン重合を開始することにより、鎖のカルボキシル末端に位置する)、または鎖の伸長の停止剤(たとえば、1個のカルボキシル基を有する活性物質はリパーゼ触媒ラクトン重合を停止することにより、鎖のヒドロキシル末端に位置する)のいずれかとして作用する。
【0026】
1種以上の反応物が液体である場合には、反応は、反応容器に溶媒を加えずにおこなってもよい。酵素を使用する場合、固定化リパーゼをおよそ70℃に維持して使用するのが好ましい。反応は、望まれる生成物に応じて、1分から48時間の間進行させてよい。好ましくは反応混合物の約0.0001重量%〜約20重量%が固定化触媒からなり、より好ましくはおよそ10%の固定化触媒を含み、そこにおいて固定化触媒の約5重量%〜約20重量%が酵素であり、より好ましくは、およそ0.5%の触媒を含み、そこにおいて触媒の約10重量%の酵素を含有する。
【0027】
溶媒を使用する場合には、好適な溶媒には、トルエン、ジイソプロピルエーテルおよびイソオクタンが含まれる。使用する溶媒の範囲は、反応混合物の0.0重量%〜90重量%である。溶媒は必須ではないが、モノマーのおよそ2倍の体積の溶媒を使用すると満足できる結果が得られることが見出されている。
【0028】
本発明の方法の例として、カプロラクトン(CL)およびポリデカラクトン(PDL)のコポリエステルを調製する。コモノマーであるCLおよびPDLを、70℃で、固定化リパーゼ(ノボザイム-435)、生物活性物質、およびトルエンの入った反応バイアルに同時に入れる。反応物を撹拌し、1分〜48時間の間の反応時間で、反応を続ける。反応がアルコールと酸基の間の縮合を伴う場合には、生成物を形成するために減圧の適用が必要になる場合がある。
【0029】
1つのタイプの結合を有するポリマー、たとえば、ポリエステルに加えて、本発明には、エステル/エーテル、エステル/カーボネート、およびエーテル/カーボネートなどの結合が混在するコポリマーのリパーゼ触媒合成が含まれる。前記結合はモノマー間の結合、またはモノマーと活性物質間の結合であってよく、そこにおいて、活性物質は鎖の末端に存在するか、繰り返し単位であるか、ペンダント基としてポリマーに結合するかのいずれかである。リパーゼ触媒オリゴマー形成またはポリマー形成反応を、ランダム、ジブロック、マルチブロック、ブラシ、超分岐、デンドリマーまたは他のコポリマー鎖上の繰り返し単位の配列であるコポリマーを形成するために使用することができる。たとえば、リパーゼを、構造的に異なる部分の組合せ:i) ラクトン、ii) ラクトンと環状カーボネート、iii) ラクトンと環状無水物、iv) 二酸とジオール、v) 二酸とポリオール、vi) 二酸、ジオールおよびポリオール、vii) 二酸、ジオールおよびポリ酸、viii) アミノ、カルボニルまたはヒドロキシル末端基を有する鎖セグメントと上記のいずれかのモノマーの組み合わせ、の間の重合反応を触媒するために使用することができる。活性物質は鎖の末端基を形成する開始剤であってよい。あるいは、活性物質は鎖内の繰り返し単位であってもよく、または官能性の側鎖基を通して鎖に結合してもよい。上記の通り、ポリマー内の活性物質の位置は、活性物質の反応性部位の性質および数、および他の成分であるモノマーの反応性部位の性質および数、ならびに活性物質をモノマー混合物に組み入れるか、あらかじめ形成されたポリマーに加えるかのいずれを選択するかに依存する。
【0030】
基質、温度、時間、溶媒(または溶媒が存在しないこと)、触媒、好ましくは酵素の種類、および触媒活性化の方法などの反応パラメーターはすべて所望の分子量およびポリマー組成を調節するために使用することができる。たとえば、モノマーの反応混合物中に1個の反応部位を有する生物活性成分を、成分の比が5対1よりも小さくなるように加えると反応時間が短くなり、それにより平均鎖長が短くなる可能性がある。あるいは、異なる構成モノマーの比を制御することにより最終的なポリマーの基本的性質が決定される。一例として、重合をリパーゼ触媒による開環および逐次縮合反応により実施する。開環重合に好適なモノマーはε-カプロラクトン(ε-CL)である。開環重合に好ましいモノマー対には、ε-CL/トリメチレンカーボネートおよびε-CL/ω-ペンタデカラクトンが含まれる。逐次縮合重合に好適な二酸には、次の物:アジピン酸、セバシン酸、およびドデカン酸が含まれる。酸の代わりにそれらの対応するエステルを使用することも可能である。好適なエステルの例には、メチルおよびエチルエステルが含まれる。たとえば電子求引性であってオリゴマー形成およびポリマー形成反応を促進する他の多くの二酸のエステルも使用することができる。逐次縮合重合に好適なジオールには、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、および1,12-ドデカンジオールが含まれる。逐次縮合重合に好適なポリオールには、グリセロール、ソルビトール、およびトリメチロールプロパンが含まれる。好適な触媒はノボザイム-435であり、好適な溶媒はトルエンである。上記のすべての反応の結果、それらの溶解度が実質的に異なるコポリマーが形成される。たとえば、ε-CLおよびω-ペンタデカラクトンなどの疎水性モノマーを使用すると、より油溶性の高い(疎水性の高い)選択された分子が作られる。あるいは、ソルビトールおよびコハク酸などの親水性モノマーを使用すると、より水溶性の高い(親水性の高い)分子が得られる。皮膚上における活性物質の放出速度の制御は、分子の設計において、皮膚上の酵素または水によりより速くまたはより遅く分解される結合を選択することにより調節することもできる。たとえば、モノマーとしてω-ペンタデカラクトンの代わりにパラ-ジオキサンを使用すると、加水分解によりより迅速に分解されて生物活性物質を放出するような生物活性物質とオリゴマーまたはポリマーとの複合体が得られる。
【0031】
本発明のポリマーは、オリゴマーまたはポリマーに、その遊離のカルボン酸、アミン、またはエステル側鎖(たとえば、ポリアクリル酸、ポリビニルアミン、ポリ[メチルアクリレート]またはこれらのモノマーを含有するコポリマー)の修飾により、ポリエステル、ポリ(エステル/カーボネート)、ポリ(エステル/無水物)および他の生物吸収性ポリマーの鎖の末端に、そのA成分として、上で一般的に定義した通りの、アルコール、アルデヒド(好ましくはアセタールまたはシッフ塩基として保護されたもの)、アミンまたはカルボン酸官能基を有するすべての生物活性物質(すなわち、遊離のヒドロキシ、アミノまたはカルボン酸基を有する分子)を結合することができる。あるいは、A成分は、鎖内の繰り返し単位として組み込まれてもよい。大まかに言えば、活性成分として有用であると認められる群は、ピーリング剤、ビタミン、生物活性ペプチド、レチノイド、抗酸化剤、抗炎症薬、メラニン前駆体、ヒドロキシ酸、ニューロメディエーター、抗微生物薬、保存剤、芳香剤、酵素アクチベーターまたは阻害剤(反応の酵素触媒または活性物質を放出するために皮膚上で必要とされる酵素と共存可能な範囲で)を包含する。前記の化合物のより具体的な例には、アルコール、たとえばレチノール、オールトランスレチノールなどのビタミン;3,4-ジデヒドロレチノール;カルシフェロールおよびビタミンD2およびD3の他の形;レゾルシノールまたはレゾルシノール誘導体などのホワイトニング剤;レスベラトロールなどの抗酸化剤およびソルビトールなどのジオール;ビタミンレチンアルデヒドなどのアルデヒド;ビタミンKまたはビタミンB12などのアミン、またはアミノ酸、カテコールアミン、またはドパミン;およびピーリング作用を有するアルファおよびベータ-ヒドロキシ酸(たとえば、乳酸、グリコール酸、サリチル酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシプロピオン酸)などの酸;ニコチン酸またはレチノイン酸などのビタミン;コジック酸またはアスコルビン酸などのホワイトニング剤;ウルソル酸などのテルペノイド;プロスタグランジンおよびプロスタン酸などの毛髪成長促進剤;カフェ酸、キナ酸、フェルラ酸、ロスマリン酸、シキミ酸、エラグ酸および没食子酸などのタンニン;およびゲニステイン、アピゲニン、およびエピガロカテキンなどのフラボンが含まれるが、これらに限定されない。他の例は当業者には明らかであろう。本明細書および特許請求の範囲に皮膚への適用について記載される場合、これは、角質層、表皮、真皮、毛包、毛幹、毛球、および脂腺、ならびに関連する微小植物相および微小動物相への効果のための、すべての皮膚の部分および緊密に結合する構造への適用を包含することを意図することも理解されるであろう。
【0032】
特に好ましい実施形態において、A成分は芳香剤成分である。天然および合成の両方の、多くの広く使用される芳香剤成分は、アルコールまたはアルデヒドのいずれかである。芳香剤を送達するために本発明のポリマーを使用すると、多くの有益な効果が得られる。まず、芳香剤のユーザーのよくある不満は、彼らの芳香剤が十分に長く持続しないことである。本発明のオリゴマーまたはポリマーにより、芳香剤は、伝統的な芳香剤に典型的であるように一度に全部ではなく、より長時間にわたって放出されるので、より長い期間にわたって効果が得られる。また、芳香剤の遅延放出は、ある芳香剤成分に対して感受性である個体においてアレルギー反応を引き起こす可能性を小さくするという別の効果を有する。そのため、芳香剤成分を本発明のオリゴマーまたはポリマーの一部として組み入れることにより、芳香剤工業にとって大きな恩恵である、低アレルギー性芳香剤を作ることが可能になる。この点で、シンナミルアルコール、アミルシンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、イソオイゲノール、オイゲノール、ゲラニオール、ベンジルアルコール、アルファ-アミルシンナムアルデヒド、シトラール、アルファ-ヘキシルシンナムアルデヒド、シトロネロール、ファルネソール、アニスアルコール、リナロール、サリチル酸ベンジル、クマリン、ヒドロキシイソヘキシル3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒド、ケイ皮酸ベンジル、ブチルフェニルメチルプロピオナール、安息香酸ベンジル、2-オクタン酸メチル、アルファ-イソメチルイオノン、ならびにこれらの1種以上を含有する精油または植物抽出物などのしばしばアレルゲンの可能性が認められる芳香剤成分を組み入れたオリゴマーまたはポリマーを作ることが特に望ましい。
【0033】
芳香剤分子と共に使用するために、好ましいポリマー基剤は、皮膚への適用の前に活性物質とオリゴマーまたはポリマーの間の結合の早すぎる加水分解を避けるために、水または求核性成分をほとんど用いなくても油様媒体に溶解するものである。これにより、高い保存安定性を有するが、たとえば皮膚上に適用した時には分解および活性物質の放出が誘発されるような製剤が得られる。
【0034】
好ましいオリゴマーまたはポリマー
環状モノマーに対して - 種々の活性物質の成分と、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン(ε-CL)、ω-オクタノリド、ω-デカノリド、ω-ドデカノリド、パラ-ジオキサノン、ラクチド、グリコリド、β-メチル-β-ブチロラクトン、トリメチレンカーボネート、およびそれらの混合物とを用いることにより得られるオリゴマーまたはポリマー。上記のラクトンの代わりにそれらの対応するω-ヒドロキシ酸であってもよい。好ましい生成物は低分子量(Mnが約2000 g/mol)のものである。モノマーの混合物を使用し、分子量を限定することにより、得られる生成物は、結晶化度をほとんどまたは全く有しない、非極性疎水性送達媒体に溶解するオイルとなる。上記のモノマーおよびその混合物はすべてこの目的に使用することができる。最も好ましい系は、ε-カプロラクトン(ε-CL)を単独で、またはトリメチルカーボネート、パラ-ジオキサノンまたはω-ドデカノリドなどの他のモノマーと共に含有する。
【0035】
好ましいジオール/二酸系
i) グリセロール、ii) 1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールまたは1,12-ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、iii) コハク酸、アジピン酸、スベリン酸または他の鎖長の酸などの脂肪族二酸、およびiv)遊離のアルコール基を有する活性物質からなるグリセロールターポリマー。たとえば、ある芳香剤分子のモノアルコール基が、縮合ポリマーの鎖の末端の1個以上の酸基とエステルを形成する。縮合ポリマーとエステル結合を形成するために使用される活性物質の他の形は、i) ポリオールとアルデヒド活性物質を反応させることにより合成される、遊離のヒドロキシル基を有するアセタール(たとえば、グリセロールおよびシトロネラールを反応させることにより形成されるアセタール)、ii) 活性物質のアルデヒドをアミノアルコールと反応させることにより形成される1個以上の遊離のヒドロキシル基を有するシッフ塩基である。グリセロールのジオールおよび二酸に対する比を、酸末端基の数を変化させるために使用する。モノマー供給原料における酸のヒドロキシル基に対する比を増加させることにより、カルボン酸末端基の数を増加することができることは当業者には周知である。これは、グリセロールコポリマーが分岐を作ることができ、分岐の末端基がカルボン酸を有し得るので特に真実である。好ましい生成物は低分子量(Mnが約2000 g/mol)のものである。上記の通り、モノマーの混合物を使用し、分子量を限定することにより、縮合重合によるコポリマーは非極性の疎水性送達媒体に溶解するオイルの形となる。上記のモノマーおよびその混合物はすべてこの目的に使用することができる。好ましい系はグリセロールおよび6個以上の炭素を有するジオール/二酸を含有する。最も好ましいのはセバシン酸、ドデカノールまたはグリセロールターポリマーである。二酸含有量が高いモノマー供給原料から形成されたターポリマーは多くの末端酸基を有し、この末端酸基が、アルコール、1個以上の「遊離の」ヒドロキシル基を有するアルデヒド活性物質のアセタール、1個以上の「遊離の」ヒドロキシル基を有するアルデヒド活性物質のシッフ塩基である芳香剤と結合する。
【0036】
皮膚上における活性物質の放出速度の制御は、分子の設計において、皮膚上の酵素または水によりより速くまたはより遅く分解されるような結合を選択することによりおこなうことも可能である。たとえば、モノマーとしてε-カプロラクトンの代わりにパラ-ジオキサノンを使用すると、加水分解によりより迅速に分解されて、生物活性物質を放出するような生物活性物質とオリゴマーまたはポリマーとの複合体が得られる。シッフ塩基およびアセタールの構造を変えて、それらがより速くまたは遅く加水分解されるように調節することができる。
【0037】
オリゴマーまたはポリマーに結合することができる芳香剤の例は、1) シトロネロール、2) アニソール、3) ゲラニオール、4) シトロネラール、および5) シンナムアルデヒドである。縮合重合において、シトロネロール、アニソール、およびゲラニオールのアルコールは、二酸モノマーと、成長する鎖の末端においてカルボキシル末端基と、または上記のモノマーおよび反応を用いてあらかじめ形成された直鎖もしくは分岐鎖ポリエステルのカルボキシル末端基と反応する。さらに、シトロネロール、アニソール、およびゲラニオールのアルコールは、ラクトンなどの環状モノマーおよびカーボネートの開環重合の開始剤として使用することができる。あるいは、シトロネラールおよびシンナムアルデヒドなどのアルデヒド基を有する活性物質を、それぞれポリオールまたはアミノアルコールとの反応により、まずそれらの対応するアセタールまたはシッフ塩基誘導体に変換する。シッフ塩基またはアセタール誘導体の遊離のアルコールが、シトロネロール、アニソール、およびゲラニオールについて記載したものと同じようにしてポリマー中に組み込まれる。この目的に適したポリオールの例には、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトールおよびマルチトールが含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0038】
A. 一般法の材料および方法
以下に実施例において使用する材料および方法を一般的に開示する。
【0039】
(i) 化粧品物質が鎖の末端に存在する場合、繰り返し単位である場合、またはペンダント基としてポリマーに結合する場合のいずれかにおける酵素重合の一般的なプロトコール
反応は溶媒中またはバルク(溶媒なし)の状態で、ジオールと二酸の間の直接の反応、ラクトンなどの環状モノマーの開環のいずれかにより、および場合により、ポリオール、ヒドロキシ酸、ラクトン、カーボネート、無水物、およびそれらの組合せからなる群より選択される別の化合物を加えて実施する。選択された化合物の混合物を、加水分解酵素および1種以上の活性物質の存在下、バルク流動条件下で反応させて、エステル結合を有するポリマーを調製する。反応は同時重合として進行し、選択された化合物間の直接の反応の経路を提供することができる。活性物質は、鎖の末端に位置する、鎖の開始剤または停止剤として作用し得る。あるいは、活性物質は、酵素触媒によりポリマーの側基または側鎖に形成された共有結合により結合することができる。さらに、活性物質は反応する複数の基を有し、鎖の中の繰り返し単位を形成することができる。
【0040】
リパーゼはそれらが通常使用される通りの酵素の代表的なファミリーとして選択され、多くの異なる反応に容易に応用される。リパーゼ(モノマーの0.001〜1% wt/wt)を減圧デシケーター中で乾燥し(0.1 mmHg、25℃、24時間)、アルコールまたはアルデヒド活性物質/ポリオール/ジオール/二酸を含有する混合物の均一な溶融物の入った50 mLの丸底フラスコに移す。あるいは、混合物は活性物質およびε-カプロラクトンなどの環状モノマーの均一な液体を含有する。二酸の代わりに対応するメチルまたはエチルエステルなどのジエステルを使用することができる。カルボン酸の反応性ヒドロキシ基に対する比はそれらが等モル(1:1)になるように調節する。これは反応物質であるポリオールの第一級ヒドロキシル基のみを考慮しておこなう。一方、カルボン酸のヒドロキシル基に対する比を変えることにより、側鎖形成および活性物質との反応に使用できる遊離のカルボキシルおよびヒドロキシル基のアベイラビリティーを変えることができる。フラスコをゴムの隔膜により閉じる。次にフラスコを一定温度のオイルバス(50〜100℃)に入れ、マグネティックスターラーなどの種々の手段により撹拌する。縮合重合の場合には、系からの水の除去速度を制御するために、混合物を減圧(0.1〜100 mmHg)にする。
【0041】
別の実施形態において、本方法により製造されるポリエステルは、ラクトンなどの環状モノマーの重合;2種以上のラクトン;ラクトンと環状カーボネートとの共重合;二酸およびジオール;二酸およびポリオール;二酸、ジオールおよびポリオール;二酸、ジオールおよびヒドロキシ酸;二酸、ポリオールおよびヒドロキシ酸;二酸、ジオール、ポリオールおよびヒドロキシ酸;二酸、ジメチルエステル、ジオール、およびヒドロキシルアミン;二酸、ジオール、ヒドロキシルアミン、および無水物;二酸、ジオール、ポリオール、ヒドロキシルアミン、および無水物;または他の好適なモノマーの組合せ、たとえば、二酸をそのメチルエステルまたはエチルエステル誘導体に置き換えた組合せから作られる繰り返し単位を含む、またはそれらからなる。縮合重合の場合には、好ましい組合せの例には、アジピン酸/1,6-ヘキサンジオール/グリセロール、アジピン酸/1,6-ヘキサンジオール/ソルビトール、アジピン酸/1,4-ブタンジオール/アジピン酸ジメチル/エタノールアミン、アジピン酸/1,4-ブタンジオール/無水コハク酸/エタノールアミン、アジピン酸ジメチル/1,4-ブタンジオール、アジピン酸/エタノールアミン、エタノールアミン/アジピン酸、ジエタノールアミン/アジピン酸、エタノールアミン/アジピン酸ジメチル、N-メチルエタノールアミン/アジピン酸ジメチル、ジエタノールアミン/アジピン酸ジメチル、アジピン酸/グリセロール、アジピン酸/ソルビトール、アジピン酸/スクロース、アジピン酸/1,4-ブタンジオール/ソルビトール、アジピン酸/ジエチレングリコール、アジピン酸/ジエチレングリコール/グリセロール、アジピン酸/ジエチレングリコール/ソルビトール、アジピン酸/ジエチレングリコール/トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール/アジピン酸/ジメチロールプロパン、アジピン酸/1,6-ヘキサンジオールが含まれる。他の好ましい組合せの例において、グリセロールまたはソルビトールの代わりにスクロースまたは他の炭水化物(たとえば、例示のみを目的とするが、キシリトールまたはラクトース);アジピン酸の代わりにより長い鎖長の二酸(たとえば、例示のみを目的とするが、8〜32個の炭素を有する直鎖α-,ω-二酸);1,4-ブタンジオールの代わりにより長い鎖長を有するジオール(たとえば、例示のみを目的とするが、8〜32個の炭素を有する直鎖α-,ω-ジオール);無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸などの無水コハク酸以外の無水物;エタノールアミン以外の異なる鎖長のアルコールアミン(たとえば、例示のみを目的とするが、ブタノールアミン、またはヘキサノールアミン);および1,4-ブタノールアミンなどのアルコールアミンの代わりに1,4-ジアミノブタンなどのジアミンを使用することができる。
【0042】
本方法において使用する酵素は遊離の形で使用してもよいし、不活性担体、たとえばアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、シリカ樹脂、またはポリウレタン樹脂に結合していてもよい。酵素を不活性担体に結合すると、それは複雑な精製の段階を必要とせず、簡単に反応混合物から除去することができる(たとえば、濾過により)。好ましくは、酵素は反応混合物から回収し、再使用する。好ましくは酵素は単離された形で存在する。不活性担体に結合した酵素はある程度脱着し、または担体から分離して、反応混合物中に拡散する。
【0043】
使用する酵素の量は決定的ではないが、酵素は重合を触媒するのに十分な量で存在しなければならない。酵素が少なすぎると反応時間が長くなり、一方、多すぎる酵素は不要であるが反応時間は短くなる可能性がある。Candida antarctica由来のリパーゼ(Novo Industries AS カタログ番号SP 435)を用いる場合、モノマーの総重量に基づいて0.1〜1.5重量%の支持された酵素、好ましくは0.1〜0.6%、および最も好ましくは0.15〜0.3%の支持された酵素を使用するのが便利であることが見出されている。他の酵素については、当業者は必要以上の実験をしなくても適切な酵素の量を決定することができる。さらに、当業者は、酵素を共有結合、または他の物理的相互作用(疎水性-疎水性、イオン等)のいずれかにより固定することができる好適なマトリックスを決定することができる。
【0044】
この方法は10〜120℃の範囲の温度で実施することができる。好ましくは、この方法は50℃〜100℃の間の温度で実施する。最も好ましくは、この方法は65℃〜90℃の間の温度で実施する。ある酵素は90℃よりも有意に高い温度で変性する可能性があり、ある酵素は10℃よりも低い温度では反応が比較的遅くしか進行しない点に留意すべきである。
【0045】
本方法は大気圧または大気圧よりも低い気圧で進行する。縮合重合では、水の除去の速度が反応速度に影響を与える。当業者には、すべての重合に対して反応における最適な水含有量があることが理解される。
【0046】
本方法の反応は、当業者に公知の多くの手段により停止することができる。たとえば、反応の停止は濾過により酵素を除去することにより実施することができる。十分に低い分子量および粘度を有する生成物については、これは溶媒を加えずに実施することが可能である。高い溶融粘度を有するポリマーの場合には、濾過を促進するために少量の溶媒をポリマー溶融物に加えることができる。あるいは、酵素の除去および再使用を促進するために、酵素を反応容器に固定化することができる(たとえば、反応容器の壁、バッフル、羽根車)。
【0047】
総反応時間は一般的に2〜48時間、好ましくは12〜24時間である。反応はサンプルを取り出して試験することによりモニターすることができる。
【0048】
(i) 一般的分析技術
(a) 核磁気共鳴(NMR)
プロトン(1H)およびカーボン(13C)NMRスペクトルは、Bruker Instruments, Inc. DPX300スペクトロメーターにより、それぞれ300および75.13 MHzで記録した。1H-および13C-NMRスペクトルの100万分の1 (ppm)により表された化学シフトは、内部標準のテトラメチルシラン(TMS)を0.00とした相対位置で示す。高分解能1H-および13C- 一および二次元FT-NMR、異核1H-13C相関の実験をおこなった。一および二次元NMRスペクトルを酵素的ポリエステル形成反応の位置選択性を決定するために使用した。
【0049】
プロトンNMR(CDCl3中)は生物活性物質-ポリ(カプロラクトン)複合体の数平均分子量(Mn)を測定するために使用された一つの方法である。プロトンNMRのシグナルは、δ5.34および5.09 (CH=)、4.07 (O=COCH2)、3.64 (CH2OH)、2.32 (O=CCH2)、1.66 (他のすべてのメチレン)および1.40 (ゲラニオールのCH3)に観察された。1H NMRによる末端基の分析により、4.07および3.64 ppmのシグナルの相対強度から鎖長が決定された。生成物中のゲラニオールのモル含有量は、5.09および4.07のシグナルの相対強度から決定することができる。末端ヒドロキシルおよびカルボキシル基の比を決定するために、生成物を塩化オキサリルにより誘導体化すると、3.64のシグナルが4.21にシフトし、2.9に新しいシグナルが現れた。これらのシグナルは、それぞれ塩化オキサリルにより誘導体化された鎖の末端のヒドロキシルおよびカルボキシル基の隣のメチレン炭素によるものである。2つのシグナルの比を鎖のヒドロキシル末端のカルボキシル末端に対する相対的な量を決定するために使用した。
【0050】
(b) 分子量の測定
分子量を、150型ポンプ、Waters 717型オートサンプラー、410型屈折率検出器、およびViscotek CorporationのT-50/T-60型検出器を装備した、500、103、104および105Åウルトラスタイラジェル(ultrastyragel)カラムを連続して有するWaters HPLCシステムを用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。Trisec GPCソフトウェア、バージョン3を計算に使用した。溶離液として、クロロホルムを、毎分1.0 mLの流速で使用した。0.2 % wt/volのサンプル濃度および100μLのインジェクション体積を使用した。分子量は、Aldrich chemical companyから入手した狭い分子量のポリスチレン標準品により得られた従来の較正曲線に基づいて決定した。いくつかのポリマー生成物については、それらの分子量を絶対光散乱法により分析した。また、光散乱法は、旋回半径などの流体力学定数を決定するためにも使用した。これらの研究は、紫外線-可視光光度計、干渉屈折計(Wyatt OptiLab DSP)、およびマルチアングルレーザー光散乱光度計(Wyatt Dawn DSP光散乱装置)を用いて実施した。
【0051】
(c) 材料
(i) 二酸
スキーム1 : HOOC-R-COOH
[式中、
R = (CH2)nCHx(R1)(R2)(CH2)mであって、そこにおいて、
R1 = 水素、ケト、ニトリル、ハロゲン、チオール、二置換アミン、三置換アミン、四置換アミン、カルボン酸、ヒドロキシル基、アセタール、エーテル、アルケン、アルキン、イソニトリル、ニトレート、スルフェート、ホスフェート、リン酸エステル、およびシリコーンファミリーの一般的なメンバーであり、そこにおいて、R1は、鎖の一部であるか、鎖の一部である炭素に直接結合するペンダント基であるか、スペーサー基を介して主鎖に間接的に結合し;
R2 = 水素、ケト、ニトリル、ハロゲン、チオール、二置換アミン、三置換アミン、四置換アミン、カルボン酸、ヒドロキシル基、アセタール、エーテル、アルケン、アルキン、イソニトリル、ニトレート、スルフェート、ホスフェート、リン酸エステル、およびシリコーンファミリーの一般的なメンバーであり;
n = 0〜32、m = 0〜32、x = 0〜2であり;
R = CH=CH、CH2CH=CHCH2であり、および
R = (CH2)x(-Si[R']2-O-)n(CH2)xであり、そこにおいて、
x = 1〜10、n = 1〜1000、R' = メチル、フェニル、エチル、プロピル、ブチルまたはこれらの基が混合したものである]。
【0052】
本発明に関連する脂肪族二酸には、R = (CH2)nであって、n = 0〜30であるものが含まれる。R1基は側基もしくはペンダント基または主鎖の一部であってよい。R1基には、炭素二重結合または三重結合、ケトン、エステル、ニトリル、イソニトリル、ニトレート、スルフェート、ホスフェート、リン酸エステル、ハロゲン、チオール、二置換アミン、三置換アミン、四置換アミン、カルボン酸、ヒドロキシル基、アセタール、エーテル、シリコーン化合物のファミリーのメンバー(たとえば、{-Si[R]2-O-}n)が含まれる。本発明において使用される二酸の例には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸(azealic acid)、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸が含まれるが、これらに限定されない。最も好ましい例では、アジピン酸が使用される。
【0053】
(ii) 無水物およびヒドロキシ酸
好適な脂肪族無水物には、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水フタル酸が含まれるが、これらに限定されない。好適なヒドロキシ酸には、2〜22個の炭素を含有するものが含まれる。好ましくは、それらはω-ヒドロキシル基を有するが、それらは第二級ヒドロキシル基を有してもよい。好適な脂肪族ヒドロキシル酸には、グリコール酸、乳酸、4-ヒドロキシ酪酸、6-ヒドロキシカプロン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシオレイン酸、17-ヒドロキシオレイン酸、およびコール酸が含まれるが、これらに限定されない。他の好適なヒドロキシル酸ビルディングブロックには、一般にABx (x = 2〜7) として表され、そこにおいて、AおよびBがそれぞれカルボキシルおよびヒドロキシル基であるものが含まれる。好適なAB2ビルディングブロックには、クエン酸、マレイン酸、ビス-2,2-ヒドロキシメチルプロパン酸、マロン酸、および最も好ましくはマレイン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
(iii) ジオール
スキーム2 : HOH2C-R-CH2OH
[式中、
R = (CH2)nCHx(R1)(R2)(CH2)mであり、そこにおいて、
R1 =水素、ケト、ニトリル、ハロゲン、チオール、二置換アミン、三置換アミン、四置換アミン、カルボン酸、ヒドロキシル基、アセタール、エーテル、アルケン、アルキン、イソニトリル、ニトレート、スルフェート、ホスフェート、リン酸エステル、およびシリコーンファミリーの一般的なメンバーであり、そこにおいて、R1は、鎖の一部であるか、鎖の一部である炭素に直接結合するペンダント基であるか、スペーサー基を介して主鎖に間接的に結合し;
R2 = 水素、ケト、ニトリル、ハロゲン、チオール、二置換アミン、三置換アミン、四置換アミン、カルボン酸、ヒドロキシル基、アセタール、エーテル、アルケン、アルキン、イソニトリル、ニトレート、スルフェート、ホスフェート、リン酸エステル、およびシリコーンファミリーの一般的なメンバーであり;
n = 0〜32、m = 0〜32、x = 0〜2であり;
R = CH=CH、CH2CH=CHCH2であり;
R = C=C、CH2CH=CHCH2であり;および
R = HO(CH2)x(-Si[R']2-O-)n(CH2)xOHであり、
x = 1〜10、n = 1〜1000であり、
R' = メチル、フェニル、エチル、プロピル、ブチルまたはこれらの基が混合したものである]。
【0055】
本発明に好適なジオールには、C-2〜C-22炭素原子を有するα,ω-ジオール(スキーム2参照)が含まれるが、これらに限定されない。ジオールは側基として、または主鎖中に、炭素-炭素二重結合または三重結合、ケトン、エステル、ニトリル、イソニトリル、ニトレート、スルフェート、リン酸エステル、ハロゲン、チオール、二置換アミン、三置換アミン、四置換アミン、カルボン酸、アセタール、エーテル、およびシリコーン化合物のファミリーのメンバー(たとえば、{-Si[R]2-O-}n)を含んでもよい。好適なジオールの例は、エチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)(たとえば分子量200 Da)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、および1,12-ドデカンジオールである。これらの発明中で最も好ましい例は1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,8-オクタンジオールである。
【0056】
(iv) ポリオール
本発明におけるポリオールは少なくとも3個のヒドロキシル基を有し、そのうちの少なくとも2個は第一級または反応性の高い第二級ヒドロキシル基でなければならない。好適なポリオールには、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、リビトール、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、マルトース、スクロース、およびラクトースが含まれ、ソルビトールが特に有用である。1,2,6-ヘキサントリオールおよび1,2,4-ブタントリオールを除いて、前の文のポリオールは炭水化物の大きいファミリーに含まれる。
【0057】
多くのポリオールモノマーを、純粋な形で、または他のポリオールとの混合物として、本方法に使用することができる。前記のモノマーは、本明細書において、一般的に式Rp(OH)n [式中、Rpはポリオールモノマーの骨格であり、nはポリオールモノマー上のヒドロキシル基の数である]により表すことができる。好ましくは、Rpは、ポリオールモノマーが、少なくとも2個の第一級または第二級ヒドロキシル基であるリパーゼ活性ヒドロキシル基、および反応性がないか、リパーゼ活性ヒドロキシル基と比較して非常にゆっくりと反応する第二級または第三級ヒドロキシル基を有するように選択する。好ましくは、リパーゼ活性ヒドロキシル基は、不活性またはゆっくり反応する第二級/第三級ヒドロキシル基と比べて少なくとも5倍の速度で反応する。より好ましくは、リパーゼ活性ヒドロキシル基は、不活性またはゆっくり反応する第二級/第三級ヒドロキシル基と比べて少なくとも10倍の速度で反応する。
【0058】
Rp基はフレキシブルで、一連の構造から選択することができる。Rp基は、1〜10個の炭素を有する炭素を基本とする構造であり得る。Rp基は、アルカン、アルケン、アルキンを含む群より選択することができる。Rp基は、複数のヒドロキシル基を有することができ、環式、分岐鎖、および非分岐鎖であってよい。さらに、Rp基は、ケトン、エステル、ニトリル、イソニトリル、ニトレート、スルフェート、リン酸エステル、ハロゲン、チオール、二置換アミン、三置換アミン、四置換アミン、カルボン酸、アセタール、エーテル、およびシリコーン化合物のファミリーのメンバー(たとえば、{-Si[R]2-O-}n)を有してもよい。Rp基は置換されていても無置換であってもよいと理解される。
【0059】
多くの炭水化物は、本発明において、鎖の末端または分岐した位置で生物活性物質を有するポリエステルを合成するためのビルディングブロックとして有用なポリオールである。さらに、ポリオールはアルデヒド生物活性物質と反応して遊離のヒドロキシル基を有するアセタールを形成することができる(たとえば、アルデヒド生物活性物質とグリセロールまたはマンニトールとの反応)。アセタール形成の後まで残ったアセタールの遊離のヒドロキシル基は、上記のような縮合または開環反応のいずれかにより生じるオリゴマー形成またはポリマー形成の間に反応させるために使用することができる。天然由来のポリオールの使用は、それらが安全であることが知られているので、特に重要である。本方法に使用するのに適した糖を基本とするポリオールの例には、マンニトール、グリセロール、単糖(たとえば、グルコース)、二糖(たとえば、ラクトース、スクロース、マルトース)、三糖(たとえば、マルトトリオース)、ポリ(n-アルキルグルコシド)および他の炭水化物オリゴマーが含まれる。好ましい天然のポリオールはグリセロールである。
【0060】
(v) ラクトン
本発明のラクトンには、4〜16員環を有するものが含まれる。好適なラクトンには、β-またはδ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、8-オクタノリド、ω-ドデカノリド、ω-ペンタデカラクトン、ラクチド、ジオキサノンおよびグリコリドが含まれる。好ましいラクトンはカプロラクトンである。
【0061】
(vi) 環状カーボネート
本発明の環状カーボネートには、トリメチレンカーボネート、1-メチルトリメチレンカーボネート、1,3-ジメチルトリメチレンカーボネート、2,2-ジメチルトリメチレンカーボネート、2-メチル-2-カルボキシトリメチレンカーボネート、2-カルボキシトリメチレンカーボネート、1,2-O-イソプロピリデン-[D]-キシロフラノース-3,5-環状カーボネート、1,2-イソプロピリデングルコフラノース-4,4-bis-ヒドロキシメチル環状カーボネートが含まれる。好ましい環状カーボネートはトリメチレンカーボネートである。
【0062】
(vii) 酵素
リパーゼ、プロテアーゼおよびエステラーゼは、本発明において、酸基の活性化なしにバルク中で糖/ジオール/二酸の位置選択的重縮合をおこなうための触媒として使用することができる好ましい酵素ファミリーである。多くの酵素は市販されており、本明細書に記載される重合に使用するのに好適な選択である。それらには、ノボザイム-435 (Novozyme-435) (物理的に固定化されたCandida antarcticaリパーゼB)、リパーゼIM (Mucor meihei)、PS-30 (Pseudomonas cepacia)、PA (Pseudomonas aeruginosa)、リパーゼPF (Pseudomonas fluorescence)、Candida cylinderacea由来のリパーゼ、ブタ膵臓リパーゼおよび黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)由来のリパーゼが含まれる。ウシ膵臓由来のα-キモトリプシンII型、パパイン、ブタ胃粘膜由来のペプシン、Aspergillus saitoi由来のプロテアーゼXIII型、Streptomyces griseus 由来のプロテアーゼ(プロナーゼE)XIV型、Bacillus lichenifomis由来のプロテアーゼVIII型(Subtilisin Carlsberg)、Bacillus thermoproteolyticus rokko由来のプロテアーゼX型(Thermolysin)、およびプロテアーゼXXVII型(Nagarse)などのプロテアーゼが含まれる。
【0063】
本発明において使用できる他のリパーゼおよび上記のリパーゼの改良型は、エラープローンPCRおよび遺伝子シャッフリングなどの通常使用される遺伝子組換え法により得ることができる。さらに、他の好適なリパーゼは、土壌などの種々の環境からのDNAの採掘により入手してもよい。本発明において好ましい酵素は、Candida antarctica由来のリパーゼBの固定化型である。Candida antarctica由来のリパーゼBは、非固定化型で反応混合物に加えることによっても使用することができる。市販の固定化型のCandida Antarctica由来のリパーゼBの例は、ノボザイム-435 (Novozymesより入手可能)である。Candida antarctica由来のリパーゼBの固定化に使用することができる他のマクロ多孔性樹脂には、さまざまな修飾を加えたシリカ、Accurrel (Akzo Nobel)、プロライト(purolite)、QDE、Amberliteが含まれる。固定化は、酵素とマトリックスの間の共有結合の形成を伴ってもよい。あるいは、固定化は、酵素のマトリックスへの、疎水性-疎水性、イオン等などの相互作用による物理的な吸着を伴ってもよい。
【0064】
B. 実施例
実施例1
鎖のカルボキシル末端がゲラニオールによりエステル化されたオリゴ(カプロラクトン)のリパーゼ触媒合成:ノボザイム-435 (モノマーの1/10 wt/wt)を減圧デシケーター中で乾燥して(0.1 mmHg、25℃、24時間)、窒素雰囲気下で、ε-カプロラクトンおよびゲラニオールを5:1 mol/molの比で含有するオーブン乾燥した10 mLパイレックス(登録商標)培養管に移す。バイアルをゴムの隔膜により閉じて、さらにテフロン(登録商標)テープにより密閉する。次に無水トルエン(モノマーの2:1 vol/wt)を反応バイアルに加える。次にバイアルを一定温度(70℃)の油浴に入れ、2〜4時間攪拌する。過剰な冷クロロホルムを加えて反応を止め、濾過(ガラスフリットフィルター、中程度の細孔多孔度)により酵素を除去する。不溶性の物質を熱クロロホルムにより数回洗浄する。濾液を合わせて、クロロホルムをロータリーエバポレーターにより除去し、残渣をクロロホルム:エーテル(1:2 v/v)に溶かし、n-ヘキサンに加えることにより2回沈殿させる。得られた生成物を減圧オーブン中で乾燥する(0.1 mmHg、50℃、24時間)。生成物が62%の収率で得られる。Mn 2170、多分散性(Mw/Mn) 1.7、ゲラニオールの含有量は 4 mol%であった。プロトンNMR (CDCl3中): シグナルは、δ5.34 (1H,CH=), 5.09 (1H,CH=), 4.08-4.04 (2H, t, J=6.9, O=COCH2), 3.67-3.62 (2H, t, J=1.3, CH2OH), 2.33-2.28 (2H, t. J=14.7, O=CCH2), 2.09-2.04 (4H. t, J=15, ゲラニオールのCH2), 1.70-1.60 (6H, m, J=29.4, オリゴ(ε-カプロラクトン)のCH2), 1.41-1.39 (9H, d, J=6.9, ゲラニオールのCH3)に観察された。
【0065】
実施例2:セバシン酸、1,8-オクタンジオール、およびアニシルのリパーゼ触媒縮合重合による、鎖のカルボキシル末端にアニシルエステルを有する対応するポリエステルの形成
セバシン酸(Aldrich、2.02 g、1当量)を、135℃で、オクタンジオール(Aldrich、1.32g、0.9当量)の溶融物に懸濁する。次に、反応混合物の温度を90〜95℃に下げた。アニシルアルコール(0.14 g、0.1当量)およびノボザイム-435 (347 mg、モノマーの10% w/w)をフラスコに入れ、2時間反応を続けた。次に、反応物を減圧(10 mmHg)にして、系から水を除去する。他のすべての詳細については上記の一般法を参照されたい。48時間後、反応混合物をメタノール中で沈殿させて分別した。その結果、生成物が72%の収率で得られた。MnおよびMw/Mnはそれぞれ608および6.5であった(SECによる)。分別した生成物のプロトンNMR (CDCl3中)をポリマー末端基の構造を分析するために使用した(上記の一般的分析技術、NMRを参照されたい)。この分析により、アニシルアルコールのモル含有量がオリゴ(ε-カプロラクトン)に対して4 mol%であることが示された。さらに、27 mol%の鎖の末端基がアニシルエステルであり、38 mol%がカルボキシル末端であり、35%がヒドロキシル末端基であった。平均重合度は8.8である。
【0066】
実施例3:アジピン酸、ソルビトールおよびアニシルアルコールのリパーゼ触媒縮合重合による、鎖のカルボキシル末端にアニシルを有する対応するポリエステルの形成
アジピン酸(Aldrich、1.46 g、1当量)を、130℃で、ソルビトール(Aldrich、1.64 g、0.9当量)の溶融物に懸濁する。反応混合物の温度を90〜95℃にした後、アニシルアルコール(0.14 g、0.1当量)およびノボザイム-435 (324 mg、モノマーの10% w/w)を反応フラスコに加えた。反応物を48時間90〜95℃の間に維持した。さらに最初の2時間の後に、反応物を減圧下(20〜50 mmHg)に置いて、これを残りの46時間維持した。他のすべての詳細については上記の一般法を参照されたい。48時間後に得られた反応生成物をクロロホルムに溶解し、溶液を濾過して酵素を除去し、濃縮した後、メタノール中に加えることにより沈殿させた。生成物が77%の収率で得られた。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるMnおよびMw/Mnはそれぞれ140および2.9であり、アニシルアルコールのモル含有量はアジピン酸エステルに対して12 mol%であった。
【0067】
実施例4:アジピン酸、ソルビトール、1,6-ヘキサンジオール、およびアニシルアルコールのリパーゼ触媒縮合共重合による、鎖のカルボキシル末端にアニシルエステルを有するポリ(1,6-ヘキサノイルアジペート-コ-ソルビトールアジペート)の形成
100 mLの丸底フラスコに、アジピン酸(14.63 g、1当量)、1,6-ヘキサンジオール(3.54 g、0.3当量)、およびソルビトール(10.9 g、0.6当量)を加えた。反応物を撹拌しながら115℃に加熱して、混合物を融解した。次に反応混合物の温度を90℃に下げて、アニシルアルコール(1.38 g、0.1当量)およびノボザイム-435 (3.04 g)をフラスコに加えた。反応の最初の2時間の後、これを減圧下(20 mm Hg)に置いて系から水を除去した。24時間後に重合を停止した。反応混合物をクロロホルム-メタノール(3:1)に溶解し、ジエチルエーテル中で沈殿させた。生成物が62%の収率で得られた。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるMnおよびMw/Mnは、それぞれ329および4.0であり、アニシルアルコールのモル含有量はアジピン酸エステルに対して10 mol%であった。1H-NMR (CD3OD)δ7.31-7.22 (2H, d, J=27, ArH), 6.92-6.89 (2H, d, J=12.2, ArH), 4.25-4.92 (3H,m,J=50, O=COCH2 + OCOCH), 4.092-3.47 (3H, m, J=120, HOCH2 + CHOH), 2.42-2.33 (2H, dd, J=24, OCCH2), 1.7 (4H, brs, J=9, CH2CH2CO), 1.41 (3H, s, アニシルアルコールのOCH3), 1.21-1.16 (他のすべてのメチレンプロトン)。生成物中のアニシルアルコールの含有量は、6.8および4.32のシグナルの相対強度から決定した。
【0068】
実施例5:アジピン酸、グリセロール、1,6-ヘキサンジオール、およびアニシルアルコールのリパーゼ触媒縮合共重合による、鎖のカルボキシル末端にアニシルエステルを有するポリ(1,6-ヘキサノイルアジペート-コ-グリセロール)の形成
アジピン酸(Aldrich、1.46 g、0.1 mole、1当量)およびヘキサンジオール(Aldrich、0.47 g、0.4当量)を125℃に加熱した。反応混合物の温度を90〜95℃にした後、グリセロール(0.46 g、0.5当量)、アニシルアルコール(0.14 g、0.1当量)およびノボザイム-435 (371 mg)を反応フラスコに加えた。反応物を48時間70〜75℃の間に維持した。最初の2時間の後に、反応物を減圧下(20-50 mmHg)に置いて、これを残りの46時間維持した。使用した方法の他の詳細は、上で一般法という表題の節において記載した通りである。48時間の反応の後に形成された生成物をクロロホルムに溶解し、メタノール/n-ヘキサン(1:2)中で沈殿させた。沈殿した生成物は、61%の収率で得られた。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるMnおよびMw/Mnはそれぞれ 374および6.9であった。アニシルアルコールのモル含有量はアジピン酸に対して16 mol%であった。H-NMR (CDCl3中)δ6.89 (2H,ArH), 7.27 (2H, ArH), 4.21(4H, OCH2+OCOCH2), 3.79 (1H,CHOHグリセロール), 3.5 (2H,CH2OH), 2.35 (2H,OCCH2), 1.67, 1.40および1.2 (16H)。
【0069】
実施例6:鎖のカルボキシル末端にエステルにより結合するフローラルオゾンのシッフ塩基誘導体を有するオリゴ(ε-カプロラクトン)のリパーゼ触媒合成
フローラルオゾン(1.9 g、1当量)、2-(4-アミノフェニル)エチルアルコール(1.38 g、1当量)および0.1 gの酢酸の6 mLのTHF中の混合物を10時間還流した。溶液を室温に冷却した後濾過し、溶媒を除去した。次に、残渣をエーテルに溶かして、ガラスフリットフィルター(中程度の細孔多孔度)により濾過した。濾液を減圧エバポレーターにより乾燥して対応するシッフ塩基生成物を94%の収率で得た。次に、シッフ塩基(3.1 g、1当量)を、触媒としてノボザイム-435 (0.88 g、10重量%)を用いる4 mLのトルエン中でのε-カプロラクトン(5.7 g、5当量)の開環重合を開始するために使用した。反応温度は70℃で、時間は4時間であった。4時間後に反応混合物をクロロホルムに溶解し、メタノール中で沈殿させた。生成物が収率65%で得られた。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるMnおよびMw/Mnはそれぞれ1810および1.52であった。生成物中のフローラルオゾンのモル含有量はε-カプロラクトン単位に対して4 mol%であった。1H-NMR (CDCl3中)δ7.67 (1H,m,CH=N), 7.00 (2H,ArH), 6.62 (2H,ArH), 4.06 (2H,OCH2), 3.61 (2H,HOCH2), 2.61 (2H,COCH2), 1.65および1.39 ppm(他のすべてのメチレンプロトン), 1.056 (9H, CH3, フローラルオゾン)
実施例7:鎖のカルボキシル末端にエステルにより結合するフローラルオゾングリセロールアセタールを有するオリゴ(ε-カプロラクトン)のリパーゼ触媒合成
A) フローラルオゾングリセロールモノアセタールの合成
フローラルオゾン(1.9 g、1当量)、グリセロール(1.2 g、1.3当量)、およびp-トルエンスルホン酸の少量の結晶のトルエン(40 mL)中の混合物を、50 mLの二口丸底フラスコに加え、水を除去するためにディーンスタークトラップを付けて、窒素雰囲気下で24時間加熱還流した。混合物を冷却し、洗浄し(炭酸水素溶液および飽和NaCl溶液)、硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮した。残ったオイルを高真空で温めて、未反応のフローラルオゾンを除去した。収率は72%であった。1H-NMR (CDCl3中)δ7.17-7.08 (4H,m,J=27.1Hz, ArH), 4.73 (s,1H, 1,3-ジオキサンのCH), 4.19-3.32(5H,m, 1,3-ジオキサンのCH2CHCH2), 2.72-2.58 (4H,m,J=42Hz, フローラルオゾンのCH2), 2.02 (brs,1H,グリセロールのCHOH),1.25-1.16 (3H,m,J=27Hz, フローラルオゾンのArCH2CH3), 0.92-081 (6H,m,J=33Hz, フローラルオゾンのCH3)。
【0070】
B) 鎖のカルボキシル末端にエステルにより結合するフローラルオゾングリセロールアセタールを有するオリゴ(ε-カプロラクトン)のリパーゼ触媒合成
合成したフローラルオゾングリセロールアセタール(2.6 g、1当量)、ε-カプロラクトン(5.7 g、5当量 )、トルエン(10 mL)、およびノボザイム-435 (400 mg)を70℃で4時間攪拌した。冷クロロホルムを加えて反応を止めた。次に、酵素を濾過により除去し、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを除去し、残渣をクロロホルムに溶解し、メタノール中で沈殿させ、沈殿をエーテルにより2回洗浄して、生成物を68%の収率で得た。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるMnおよびMw/Mnはそれぞれ675および7.7であった。生成物中のフローラルオゾンのモル含有量は、オリゴ(ε-カプロラクトン)に対して15 mol%である。1H-NMR (CDCl3中)δ7.17-7.08 (4H,m,ArH), 4.66 (1H,s,1,3-ジオキサンのCH), 4.11-3.35 (2H,m, OCH2), 3.95-3.44 (5H,m, グリセロールのCH2CHCH2 + 2H, オリゴ(ε-カプロラクトン)のHOCH2), 2.73-2.58 (2H, m, オリゴ(ε-カプロラクトン)のOCOCH2), 2.30-2.24(4H,t, フローラルオゾンのCH2), 1.70-1.53 (4H,t, オリゴ(ε-カプロラクトン)のCH2),1.35-1.18 (6H, m, フローラルオゾンの2 CH3 + 2H, オリゴ(ε-カプロラクトン)のCH2), 0.92-0.87 (3H,m,フローラルオゾンのCH3)。
【0071】
実施例8:鎖のカルボキシル末端がレチノールによりエステル化されたオリゴ(カプロラクトン)のリパーゼ触媒合成
ノボザイム-435 (モノマーに対して1/10 wt/wt)を減圧デシケーター中で乾燥して (0.1mmHg、25℃、24時間)、窒素雰囲気下で、ε-カプロラクトンおよびレチノールを5:1 mol/molの比で含有するオーブン乾燥した10 mLパイレックス(登録商標)培養管に移す。バイアルをゴムの隔膜により閉じて、さらにテフロン(登録商標)テープにより密閉する。バイアルを一定温度(70℃)の油浴に入れて2〜4時間撹拌する。反応温度を25℃に下げた後、テトラヒドロフランを反応混合物に加える。懸濁した酵素触媒を濾過により除去する(ガラスフリットフィルター、中程度の細孔多孔度)。次に、THFを除去して、鎖のカルボキシル末端がレチノールによりエステル化されたオリゴマーを含む生成物を得る。
【0072】
実施例9
組み込まれた活性物質の遅延放出の達成における本発明のポリマーの有用性を証明するために、多くの異なる芳香化合物のより長時間のアベイラビリティーを証明する実験をおこなう。特に、適切な製剤で皮膚に局所適用されたポリマーからの芳香剤の遅延放出を観察する。
【0073】
それぞれの場合に、50μLの下に示すポリマーを、手の甲の3〜4 cm2の区画の皮膚に適用する。局所適用されたポリマーの匂いを5分ごとに嗅いで、芳香剤のアベイラビリティーの速度論ならびに感じられた芳香の強度を記録するためには、訓練された鼻が必要である(アベイラビリティーおよび強度の相対的な程度を、表に「+」の数により表す)。
【0074】
製剤は、芳香剤-ポリマーを20 mlの基剤中に1 gの量で含有し、基剤はイソプロパノール-40%;ホホバ油-30%;およびオリーブ油-30%を含む。
【0075】
実施例の結果を表1に記載する。
【0076】
表1
【表1】

【0077】
これらの結果は、本発明のポリマー内に結合された芳香剤の遅延放出を証明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、鎖のカルボキシル末端においてエステル化されたゲラニオールを有するオリゴ(ε-カプロラクトン)のリパーゼ触媒合成を表す図である。
【図2】図2は、セバシン酸、1,8-オクタンジオール、およびアニシルのリパーゼ触媒縮合重合による、鎖のカルボキシル末端にアニシルエステルを有するポリ(1,8-オクタニルセバケート)の形成を表す図である。
【図3】図3は、アジピン酸、ソルビトールおよびアニシルアルコールのリパーゼ触媒縮合重合による、鎖のカルボキシル末端にアニシルエステルを有する対応するポリエステルの形成を表す図である。
【図4】図4は、鎖のカルボキシル末端にフローラルオゾンの2-(4-アミノフェニル)エチルアルコールシッフ塩基誘導体を有するオリゴ(ε-カプロラクトン)のリパーゼ触媒合成を表す図である。
【図5】図5は、フローラルオゾングリセロールアセタール誘導体の合成、およびそれがオリゴ(ε-カプロラクトン)のリパーゼ触媒合成中に鎖のカルボキシル末端にエステル結合により複合化する反応を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性成分の局所送達のためのポリマーであって、少なくとも1個の部分:
U-B-A
[式中、Uは生理的に許容されるオリゴマーまたはポリマーの単位を表し、Aは生物活性成分を表し、BはAをUに結合する1個以上の結合であって、皮膚中または皮膚上で起こる生物学的、物理的または化学的プロセスにより開裂可能な結合を表す]
を含むポリマー。
【請求項2】
基U-B-Aがポリマー鎖の1つ以上の末端に位置する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
基U-B-Aがポリマー内の1つ以上の部位に位置する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
Aが、アルコール、アルデヒド、ケトンまたはアミン部分である、またはこれらを含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
Aが、アルコールまたはアルデヒド部分である、またはこれらを含む、請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
Bが、エステル、エーテル、無水物、カーボネート、アミド、アセタール、ケタールまたはシッフ塩基結合である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
Bがエステル結合である、請求項5に記載のポリマー。
【請求項8】
Uが、ラクトン、環状カーボネート、環状無水物、脂肪酸、エポキシド、環状N-カルボキシ無水物、二酸、ジエステル、ヒドロキシ酸、ジオール、ポリ酸、ポリオール、アミノアルコール、ジアミン、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
Uが、ラクトン、二酸、ポリ酸、ジオール、ポリオール、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
Uが、ラクトン、環状カーボネート、環状無水物、脂肪酸、エポキシド、環状N-カルボキシ無水物、二酸、ジエステル、ヒドロキシ酸、ジオール、ポリ酸、ポリオール、アミノアルコール、ジアミン、およびそれらの組合せからなる群より選択され;Bが、エステル、エーテル、無水物、カーボネート、アミド、アセタール、ケタールまたはシッフ塩基結合であり;Aが、アルコール、アルデヒド、ケトンまたはアミン部分である、またはこれらの部分を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項11】
請求項1に記載のポリマーを、化粧品製造上または製薬上許容される担体と組み合わせて含む局所用組成物。
【請求項12】
請求項10に記載のポリマーを含有する局所用組成物。
【請求項13】
生物活性成分の局所送達用のオリゴマーまたはポリマーを皮膚に適用することを含み、前記オリゴマーまたはポリマーが少なくとも1個の部分:
U-B-A
[式中、Uは生理的に許容されるオリゴマーまたはポリマーの単位を表し、Aは生物活性成分を表し、BはAをUに結合する1個以上の結合であって、皮膚中または皮膚上で起こる生物学的、物理的または化学的プロセスにより開裂可能な結合を表す]
を含む、皮膚に生物活性成分を送達する方法。
【請求項14】
Aが、アルコール、アルデヒド、ケトンまたはアミン部分である、またはこれらを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Uが、ラクトン、二酸、ポリ酸、ジオール、ポリオール、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
Bが、エステル、エーテル、無水物、カーボネート、アミド、アセタール、ケタールまたはシッフ塩基結合である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
(a) 皮膚中または皮膚上でおこる生物学的、物理的または化学的プロセスにより開裂可能な結合Bの形成を触媒することができる少なくとも1種の触媒;少なくとも1種の生物活性物質A;およびポリマーの一部を形成することができ、且つ活性物質Aと結合Bを形成することができる少なくとも1種の生理的に許容される単位Uを反応容器中で混合する段階、および(b) 反応容器をAとUの間に結合Bを形成するのに適した条件下に維持することにより、少なくとも1個の部分U-B-Aを含むポリマーを製造する段階を含む、生物活性物質を有する遅延放出ポリマーを製造する方法。
【請求項18】
触媒が、リパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、およびプロテアーゼからなる群より選択される酵素である、請求項に記載の方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法により製造される遅延放出ポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−520757(P2008−520757A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539147(P2007−539147)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/038857
【国際公開番号】WO2006/047714
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【出願人】(507139247)ポリテクニック ユニバーシティー (3)
【Fターム(参考)】