説明

皮膚化粧料

【課題】皮膚表面の水分を保ち、常に皮膚に潤いを与える保水機能が良好であると共に、油性感やベタベタ感が無く使用面上にも優れた皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】水酸基価から算出した平均重合度2〜15のポリグリセリンと、炭素数8〜22の分枝脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、そのエステル化率が60%以上であるエステル化反応生成物を0.10〜30.0重量%含有する皮膚化粧料を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面の水分を保ち、常に皮膚に潤いを与える保水機能が良好であると共に、使用面上にも優れた皮膚化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に冬期の空気が乾燥した時期に、皮膚より分泌する脂質の減退により、皮膚を保護する機能が減少し、経皮蒸散水分量(以下、TEWLと略す)が増す事で、表皮内水分量が減少し、ひびやあかぎれ等の症状が発生する。これらの症状に対処するには、TEWLを減少させ、表皮内水分量の低下を防ぎ、皮膚機能を正常に維持する事が必要であり、種々の対処方法が研究されてきた。TEWLを減少させる方法としては、ワセリン等の皮膚閉塞性が高く、且つ密着性が良い油分を皮膚に塗布する事で、TEWLを減少させる方法があるが、使用面上、油性感が強く、ベタベタする等の不快感を伴うものであった。また、ソルビトール、マルチトール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールや、ピロリドンカルボン酸ソーダ、乳酸ソーダ等の有機酸塩類等は、吸湿力及び保湿力に優れた代表的な保湿剤であるが、効果を高める為には、これらの物質を多量に配合しなければならず、それによって、ベタベタ感やヌメリ感等の不快感を伴うものであった。この問題点を改善したものとして、特許文献1にトリメチルグリシンが報告されているが、このものは水溶性物質である為、発汗等で容易に皮膚上より除去され、保湿効果を維持出来るものではなかった。この事から、TEWLが減少出来、且つ使用面上不快感を伴わない油性原料を開発し、それを含有する皮膚化粧料の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平8−20520号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、皮膚表面の水分を保ち、常に皮膚に潤いを与える保水機能が良好であると共に、使用面上にも優れた皮膚化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のポリグリセリン分枝脂肪酸エステルを含有する皮膚化粧料が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、水酸基価から算出した平均重合度2〜15のポリグリセリンと、炭素数8〜22の分枝脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、そのエステル化率が60%以上であるエステル化反応生成物を0.10〜30.0重量%含有する皮膚化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の皮膚化粧料は、皮膚表面の水分を保ち、常に皮膚に潤いを与える保水機能が良好であると共に、油性感やベタベタ感が無く使用面上にも優れた皮膚化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細にする。
【0007】
本発明では、水酸基価から算出した平均重合度2〜15のポリグリセリンと、炭素数8〜22の分枝脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、そのエステル化率が60%以上であるエステル化反応生成物を用いる。尚、ここで言うエステル化率について以下に述べる。ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応により得たエステル化反応生成物について、そのケン化価(SV)、酸価(AV)、水酸基価(OHV)を「基準油脂物性試験法」(日本油化学協会制定)により測定する。エステル化率とは、エステル化された水酸基を含む、エステル化反応生成物中の全水酸基数からエステル化された水酸基数を除したものであり、次式より算出した。
エステル化率(%)={(SV−AV)×100}/(OHV+SV−AV)
SV:ケン化価、AV:酸価、OHV:水酸基価を表す。
本発明ではエステル化率が60%以上のエステル化反応生成物を用いる。60%未満の場合は、エステル化反応生成物の水溶性が上がり、発汗等で容易に皮膚上より除去され、保湿効果を維持出来ない。上記条件を満たすエステル化反応生成物としては、トリイソパルミチン酸ジグリセリル(理論エステル化率:75%)、テトライソステアリン酸ジグリセリル(理論エステル化率:100%)、テトライソステアリン酸テトラグリセリル(理論エステル化率:67%)、ヘキサイソステアリン酸ヘキサグリセリル(理論エステル化率:75%)、デカ2−エチルヘキサン酸デカグリセリル(理論エステル化率:83%)等が挙げられ、その中でも、水酸基価から算出した平均重合度10のデカグリセリンと、炭素数18の分枝脂肪酸であるイソステアリン酸とをエステル化反応させ得た、イソステアリン酸デカグリセリルがより好ましい。より好ましくは、デカグリセリン1モルに対して、8〜10モルのイソステアリン酸をエステル化したイソステアリン酸デカグリセリル(理論エステル化率:67〜83%)が挙げられる。
【0008】
本発明の皮膚化粧料には、上記エステル化反応生成物を0.10〜30.0重量%、好ましくは5.0〜15.0重量%含有させる。0.10重量%未満の配合では、皮膚表面の水分を保ち、常に皮膚に潤いを与える保水機能が不十分となり、本発明の目的を達成する事が出来ない。逆に30.0重量%を超えて配合すると、のびが重くなる、油性感が発現する等の使用面上での問題が発生する。
【0009】
また、本発明の皮膚化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で通常の皮膚化粧料に使用される成分、例えば流動パラフィン、固形パラフィン、スクワラン等の炭化水素類、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル等のトリグリセライド類、オリブ油、ヒマワリ油等の植物油類、ミツロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油類、セチルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸類等の油性成分、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体等の非イオン界面活性剤、N−アシルグルタミン酸塩等のアニオン界面活性剤、各種ビタミン、アミノ酸、生薬、消炎剤、細胞賦活剤、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩類及びアスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等の有機塩類、グリセリン、プロピレングリコール等のポリオール類、アルコール類、防腐剤、香料等を適宜配合することができる。
【0010】
本発明の皮膚化粧料は、油相に水相を徐々に添加していき乳化し得られる、所謂W/Oエマルションや、水相に油相を徐々に添加し得られるO/Wエマルションのどちらであっても本発明の効果である皮膚表面の水分を保ち、常に皮膚に潤いを与える保水機能が良好であると共に、油性感やベタベタ感が無く使用面上にも優れた皮膚粧料を得ることが出来る。また製法としては、特に限定はなく常法に従って製造することが出来る。
【0011】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
<実施例1>
エステル化生成物は以下の様に合成した。
デカグリセリン100gとイソステアリン酸337gを反応容器に入れ、0.2gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において250℃、4時間の条件で反応しエステル化反応生成物395gを得た。このエステル化反応生成物について、そのケン化価(SV)、酸価(AV)、水酸基価(OHV)を「基準油脂物性試験法」(日本油化学協会制定)により測定し、次式よりエステル化率を算出した。その結果を表1に示す。
エステル化率(%)={(SV−AV)×100}/(OHV+SV−AV)
SV:ケン化価、AV:酸価、OHV:水酸基価を表す。
【0013】
<実施例2>
デカグリセリン100gと2−エチルヘキサン酸171gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応しエステル化反応生成物237gを得た。また、実施例1記載の算出式により、エステル化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0014】
<比較例1>
デカグリセリン100gとステアリン酸328gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応しエステル化反応生成物385gを得た。また、実施例1記載の算出式により、エステル化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0015】
<比較例2>
デカグリセリン100gとイソステアリン酸200gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応しエステル化反応生成物260gを得た。また、実施例1記載の算出式により、エステル化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0016】
<実施例3〜4、比較例3〜4>
表1に示すエモリエントクリームを調製し、恒温恒湿室内で30分以上安静にしていた健常女性パネラー30名の上腕内側部4×4cmの範囲に対し、実施例及び比較例で調製したエモリエントクリーム0.03gを塗布した。その部位をTEWL測定装置(Mobile Tewameter、Courage+Khazaka Electronics GmbH製)にて経皮蒸散水分量を測定した。その結果を表1に示す。
【0017】
同様に健常女性パネラー30名に実施例及び比較例で調製したエモリエントクリームを全顔に適量塗布し、その時の「しっとり感の持続性」、「べたつき感のなさ」、「油性感のなさ」の各項目を100点満点として採点し、その平均点より以下の評価基準に従い評価した。
(評価基準)
評 価 平 均 点 判 定
良 好: 75点以上 :◎
やや良好: 50点以上75点未満:○
やや不良: 25点以上50点未満:△
不 良: 25点未満 :×
【0018】
【表1】

【0019】
実施例3〜4に示したエモリエントクリームは、全評価項目について良好な結果であった。一方、比較例3〜4に示したものについては、評価項目のいずれかの項目で不十分な評価結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の皮膚化粧料は、皮膚表面の水分を保ち、常に皮膚に潤いを与える保水機能が良好であると共に、油性感やベタベタ感が無く、使用面上にも優れた皮膚化粧料に利用が可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価から算出した平均重合度2〜15のポリグリセリンと、炭素数8〜22の分枝脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、そのエステル化率が60%以上であるエステル化反応生成物を0.10〜30.0重量%含有する皮膚化粧料。

【公開番号】特開2007−91609(P2007−91609A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280648(P2005−280648)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】