説明

皮膚化粧料

【課題】美白効果を有し、べたつきがなく使用性に優れた皮膚化粧料を提供すること。
【解決手段】次の成分(A),(B)及び(C):
(A)カミツレをSP値15〜21の油剤で抽出することで得られたカミツレ抽出物
(B)アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸エステル及びアスコルビン酸エーテルから選ばれるアスコルビン酸類
(C)次の一般式(1)で表される化合物
−O−R (1)
(式中、R及びRはそれぞれ炭素数6〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示す)
を含有する皮膚化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のシミやソバカスは、一般に、紫外線暴露による刺激やホルモンの異常又は遺伝的要素を原因としてメラノサイトが活性化され、その結果メラノサイトにて合成されたメラニン色素が皮膚内に異常沈着することにより発生する。
【0003】
このようなシミ・ソバカスの治療には、従来、エラグ酸類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、カミツレ抽出物等のメラニン抑制効果を有するものが使用されている(特許文献1〜4)。そして、これらの化合物の中でも、水溶性のアスコルビン酸類と油溶性のカミツレ抽出物を含有する化粧料は、肌への浸透および美白作用機構が異なることから十分な美白作用とシミ・ソバカス防止作用とを示すことが見出されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01-79103号公報
【特許文献2】特開平05-139950号公報
【特許文献3】特開2002-104919公報
【特許文献4】特開2000-302661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定の油剤で抽出されたカミツレ抽出物と、アスコルビン酸類とを併用することで、良好な美白効果を奏することができる。
しかしながら、特定の油剤で抽出されたカミツレ抽出物と、アスコルビン酸類とを化粧料に配合すると、独特のべたつき感が伴い、使用感にも満足できるものが得られにくいということがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の油剤で抽出されたカミツレ抽出物とアスコルビン酸類の混合物に特定構造のエーテル化合物を含有させることにより、べたつきがなく使用性が著しく向上することを見出した。
すなわち、本発明は、下記成分(A)、(B)及び(C):
(A)カミツレをSP値15〜21の油剤で抽出することで得られたカミツレ抽出物
(B)アスコルビン酸及びその塩,アスコルビン酸エステル及びアスコルビン酸エーテルから選ばれるアスコルビン酸類
(C)次の一般式(1)で表される化合物
−O−R (1)
(式中、R及びRはそれぞれ炭素数6〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示す)
を含有する皮膚化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、美白効果を有し、べたつきがなく使用性に優れた皮膚化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<成分(A)>
本発明で使用されるカミツレ抽出物は、キク科植物であるカミツレ〔Matricaria chamomilla L.(Compositae)〕の花を、上記SP値15〜21の油剤で抽出することにより得られたものである。
SP値(溶解度パラメーター)15〜21の油剤としては、例えばミリスチン酸イソプロピル(SP値 17.0)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値 17.7)、流動パラフィン(SP値 16.4)、スクワラン(SP値 16.2)等が挙げられ、これらの混合溶剤を用いても良い。
本明細書において溶解度パラメーターとは、物質間の相溶性の尺度をいい、次式(i)を用いてHansenの3次元溶解度パラメーターを計算することにより求めたものである。また、式中、右辺の各項は、Van Krevelenのモル引力定数に基づく計算式(ii)〜(iv)により求めることができる。(SP値基礎応用と計算方法 山本秀樹 情報機構出版)
【0009】
(数1)
δ=(δd2 +δp2 +δh21/2 (i)
δ;溶解度パラメーター
δd;Londonの分散力(ファンデルワールス力)による項(分散項)
δp;分子の極性による項(極性項)
δh;水素結合による項(水素結合項)
【0010】
(数2)
δd=ΣFdi /ΣVi (ii)
δp=(ΣFpi 21/2 /ΣVi (iii)
δh=(ΣFhi /ΣVi )1/2 (iv)
【0011】
Fdi 、Fpi 、Fhi ;モル引力定数、Vi ;モル体積
【0012】
なお、δd、δp、δhは上述のように原子団のモル引力定数(Fdi ,Fpi ,Fhi )に基づいて上記式(ii)〜(iv)を用いて計算できるが、本明細書においては、モル引力定数に関しては、Van Krevelenらより定められた値を用い、モル体積(Vi )は、Fedorにより定められた原子団の体積値を用いた。
【0013】
抽出方法は、粉砕した乾燥カミツレ花に、カミツレ花に対して1〜100重量倍の油剤を加え、10〜90℃で1〜96時間攪拌抽出を行う方法である。温度は、油剤の種類により適宜設定する。
一般に、抽出に用いる油剤によって、抽出物に含まれる成分の種類と量が異なる。SP値15〜21の油剤で抽出することで、美白効果の高いカミツレ抽出物を得ることができる。なかでも、スクワランを用いた抽出物が、特に優れた美白効果を与えるので好ましい。カミツレ抽出物の量は、抽出する油剤の量、あるいは濃縮により適宜設定することができる。
かかるカミツレ抽出物には、種々の成分が含まれるが、カマズレン、ウンベリフェロン、7 − メトキシクマリン、マトリシン、マトリカリン、タラキサステロール、ウペオール、アピイン、下記式(1)で表されるスピロエーテル化合物等が含まれている。これら各種成分のうち、特にスピロエーテル化合物の含有量が、美白効果に影響を与えると考えられる。
【0014】
【化1】

【0015】
本発明の皮膚化粧料中成分(A)のカミツレ抽出物の含有量は、0.00001〜5質量%が好ましい。0.00001質量%以上とすることで、実際に実感できる美白効果があり、5質量%以下とすることで製剤の安定性を容易にできるという効果がある。
なかでも、本発明の皮膚化粧料中成分(A)のカミツレ抽出物の含有量は、0.0004質量%以上、0.02質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明の皮膚化粧料中スピロエーテル化合物量が、10〜500ppmであることが好ましい。10ppm以上とすることで、確実に美白効果を得ることができ、500ppm以下とすることで、皮膚化粧量中での保存安定性の確保という効果がある。
【0016】
<成分(B)>
成分(B)は、アスコルビン酸及びその塩,アスコルビン酸エステル及びアスコルビン酸エーテルから選ばれるアスコルビン酸類である。
アスコルビン酸塩としては、アルカリ金属、アンモニウム、アルカノールアミン等の塩基との塩が挙げられ、具体的には、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸アンモニウムなどが挙げられる。
アスコルビン酸エステルとしては、アスコルビン酸脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸ステアリン酸エステルなどが挙げられる。
アスコルビン酸エーテルとしては、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸アルキルエーテルが挙げられ、具体的にはアスコルビン酸エチルエーテルなどが挙げられる。
これらの中で、安定性の点から、2-O-α-D-グルコシルアスコルビン酸や3−O−エチルアスコルビン酸が好ましい。
成分(B)は、以上のようなアスコルビン酸類を1種類使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
本発明の皮膚化粧料における成分(B)の含有量は合計で0.01質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、なかでも0.1質量%以上、10質量%以下が好ましい。
0.01質量%以上とすることで、美白効果を確実に得ることができ、20質量%以下とすることで、皮膚化粧料の保存安定性を確保することができ、さらに、べたつきも抑制できる。
【0017】
<成分(C)>
成分(C)は、一般式(1)で表されるエーテル化合物である。
−O−R (1)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数6〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示す)
【0018】
エーテル化合物(C)を示す一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数6〜16の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を示す。このうちR、R2の少なくとも一方が、2ケ所以上、特に2ケ所分岐したものであることが好ましい。
及びRの具体例としては、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、3−メチルヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルペンチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
ここで、エーテル化合物(C)は、Rと、Rとが異なるアルキル基からなる非対称エーテル化合物が好ましい。特に、Rがn-ヘキサデシル基とRが1,3−ジメチルブチル基の組み合わせが使用時のべたつき改善の観点から最も好ましい。
エーテル化合物(C)は、公知の方法に従って製造することができる。例えば対応するアルコールとアルキルハライドとの直接エーテル化法、ルイス酸触媒存在下における対応するアルコールとオレフィンとの付加反応、アルカリ触媒下における対応するアルコールとアルキルハライドとの付加反応で得られるアリルエーテルを還元する方法、対応するアルコールとアルデヒド又はケトンから生成するアセタール又はケタールを還元する方法等により製造することができる。
エーテル化合物(C)を含有することにより、カミツレ抽出物とアスコルビン酸類の組み合わせで生じるべたつきが効果的に改善できる。
エーテル化合物(C)としては、一般式(1)で示される化合物を1種使用してもよく、2種以上使用してもよい。
成分(C)の含有量は、皮膚化粧料全体に対し、べたつき改善の点から、合計で1質量%以上であることが好ましく、皮膚化粧量の保存安定性の観点から、合計で10質量%以下であることが好ましい。なかでも、2〜5質量%が特に好ましい。
【0019】
ここで、成分(A)〜(C)において、((A)+(B))/(C)で示される質量比が0.03以上、3.5以下であることが好ましい。((A)+(B))/(C)を0.03以上とすることで、特に化粧料のべたつき改善効果が顕著に現れると考えられる。また、3.5以下とすることで、成分Cの油性感から感じるべたつきを抑えるという効果がある。
【0020】
本発明の皮膚化粧料は、さらに、成分(E)として油剤を含むことができる。成分(E)は、成分(A)の抽出で用いた油剤を含むことができる。成分(E)の油剤としては、例えば流動パラフィン、ワセリン、スクワラン、ミツロウ、カルナウバロウ、オリーブ油、ラノリン、高級アルコール、と脂肪酸の合成エステル油、シリコーン油等が挙げられる。これらの中で、感触の点からスクワランを皮膚化粧料全体に対して0.1〜10質量%含むことが好ましい。
【0021】
更に成分(F)として、界面活性剤を含むことができる。成分(F)としては、非イオン界面活性剤が好ましく、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中で、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。成分(A),(B),(C)の水分散性の観点から0.1〜0.5%含有することが好ましい。
【0022】
本発明の皮膚化粧料は、更に成分(G)として、水を含むことが好ましい。水は本化粧料の溶媒となる。成分(G)水は、60〜90質量%含むことが好ましい。
本発明の皮膚化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記必須成分の他に通常化粧品や医薬部外品、医薬品等に用いられる各種任意成分を必要に応じて適宜配合することができる。このような任意成分としては、例えばエタノール、保湿剤、増粘剤、防腐剤、薬効成分、粉体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0023】
<皮膚化粧料の形態>
本発明の皮膚化粧料の形態は、クリーム状、軟膏状、乳液状、ローション状、溶液状、ゲル状、パック状、パウダー状、スティック状等とすることができる。
本発明の美白化粧料は、一般に皮膚に塗布する形の化粧料であれば特に限定されず、通常の皮膚化粧料の他、下地化粧料としても利用可能である。剤型としては、一般に用いられる、水溶液、O/W型エマルション、が考えられ、具体的には、乳液、化粧水、パック、ジェル、が挙げられる。
【実施例】
【0024】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。配合量は質量%である。
【0025】
(実施例1〜9及び比較例1〜3)
表1に示す配合割合で以下に記載する製法で化粧料を調製した。その後、以下に記載する評価方法を用いて使用感について評価した。
【0026】
(実施例・比較例に用いた成分(A)について)
実施例・比較例に用いた成分(A)は抽出溶剤がスクワランである、カミツレエキスKSQ(丸善製薬)を用いた。本製品でのカミツレ抽出物は、カミツレ抽出物とスクワランとの混合物中0.4質量%含有され、370ppmのスピロエーテルを含む。
【0027】
(製法)
油層成分(I)を80℃で加熱溶解し攪拌しながら、80℃に加熱した水層成分(II)を加え乳化した。乳化終了後、攪拌しながら、室温まで冷却して調製した。
【0028】
(使用感)
専門パネラー5名の手の甲を洗顔料で洗った後、皮膚化粧料を0.15mL塗布し、手をこすり合わせた際の使用感(べたつき感)を下記基準にて3段階評価した。べたつきは、皮膚化粧料を塗布した後乾きはじめ〜乾いた直後30秒後の間で、手の甲に指、手のひらを押し付けたり、なでたりすることで、手にくっつく感じで評価する。べたつきがない場合を3点、ある場合を1点と3段階で評価してもらい、その平均点(少数点以下四捨五入)を求めた。
【0029】
(評価)
3:べたつかない
2:わずかにべたつくが、使用上問題ない範囲である
1:べたつく
【0030】
実施例1〜8では、べたつきが抑制されていた。さらに、実施例1〜8の皮膚化粧料は、美白効果が非常に高いものであった。
これに対し、成分(C)を含まない比較例1〜3はべたつくものとなった。
また、実施例1〜8の皮膚化粧料はいずれも美白効果があり、さらには、保存安定性に優れていた。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A),(B)及び(C):
(A)カミツレをSP値15〜21の油剤で抽出することで得られたカミツレ抽出物
(B)アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸エステル及びアスコルビン酸エーテルから選ばれるアスコルビン酸類
(C)次の一般式(1)で表される化合物
−O−R (1)
(式中、R及びRはそれぞれ炭素数6〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示す)
を含有する皮膚化粧料。
【請求項2】
成分(C)が、R及びRが異なるアルキル基からなる非対称エーテルである請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
成分(A)を0.0004〜0.02質量%,成分(B)を0.1〜10質量%,成分(C)を2〜5質量%含む請求項1または2記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
次の成分(A)〜(C)において
((A)+(B))/(C)で示される質量比が0.03〜3.5である請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚化粧料。

【公開番号】特開2011−168538(P2011−168538A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34021(P2010−34021)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】