説明

皮膚貼付剤用フォームラバー及び皮膚貼付剤

【課題】 肌への追従性に優れ、肌へのストレスが低い皮膚貼付剤用基材を提供する。
【解決手段】 親水性ゴム系ポリマーを含む皮膚貼付剤用フォームラバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚貼付用フォームラバー、並びにこのフォームラバーを基材として使用した化粧用及び医療用の皮膚貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
美顔用の顔面パック材として、シート状の基材を化粧水に含浸させてから、適当な大きさに切り出したものが使用されている。
化粧水として、例えば、美白成分や保湿成分、栄養成分などを含有するものが使用されている。
シート状の基材として、不織布やゲルが使用されている。例えば、特許文献1には、コラーゲンフィルム又はコラーゲン発泡体シートの表面に薄葉材料を貼り合せてなる美顔用パック材が記載されている。特許文献2には、顔面に吸着可能な可撓性を有する吸水性シートに化粧水を含浸させた顔面パック用シートが記載されている。特許文献3には、強度、10%モジュラス、伸び、及び厚さが一定の範囲の特性値にある美容パック剤用シートが記載されている。特許文献5には、可撓性ポリウレタンフォームからなる支持体層と膏体層とからなる化粧用貼付材が記載されている。
【0003】
しかし、不織布は、伸縮性が小さいので皮膚への追従性が低く、また剥がれやすい。ゲルは、皮膚への粘着性がよい反面、乾燥すると大きく収縮してしまうため、皮膚を引っ張り、その結果肌に大きなストレスを与えやすい。
【特許文献1】特開昭63−196616号公報
【特許文献2】特開平2−1019号公報
【特許文献3】特開平3−11026号公報
【特許文献4】特許第3031040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、皮膚への追従性に優れ、皮膚に与えるストレスも低い皮膚貼付剤用基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル変性ゴムなどの親水性ゴム系高分子を含むフォームラバーを貼付剤用基材に使用することで上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、親水性ゴム系ポリマーを含む皮膚貼付剤用フォームラバーに関する。
また、本発明は、上記皮膚貼付剤用フォームラバーを、化粧品成分、医薬品成分、又はその両方を含有する液に含浸させて得られる、化粧用又は医療用の皮膚貼付剤にも関する。
【0006】
本発明の皮膚貼付剤用フォームラバーは、以下の製法1〜3のいずれか一つに従い製造できるが、これらの製法に限定されるわけではない。
(製法1)ラテックスからフォームラバーを製造する方法であって、ラテックス中のゴム系ポリマー100重量部に対して気泡安定剤を0.1〜3重量部加えることを特徴とする方法;
(製法2)2種以上のラテックスからフォームラバーを製造する方法であって、これらのラテックスを10〜10,000min-1の範囲に設定される最大剪断速度で30分以上混合させることを含む、上記の製法1。
(製法3)2種以上のラテックスが、1種以上の親水性ゴムラテックスと1種以上の疎水性ゴムラテックスとからなる、上記の製法1又は製法2。
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚貼付剤は、皮膚への吸着力及び追従性に優れ、皮膚に与えるストレスも低い。
また、本発明の皮膚貼付剤は、放湿性にも優れ、含有する化粧品成分又は医薬品成分を皮膚に良好に浸透させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、親水性ゴム系ポリマー以外に、さらに疎水性ゴム系ポリマーも含む皮膚貼付剤用フォームラバーにも関する。
本発明の疎水性ゴム系ポリマーとして、モノマー単位としてエチレン、スチレン、ブタジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル及びビニルピロリドンなどを1種以上含むポリマーが挙げられる。
そのような疎水性ゴム系ポリマーとして、例えば、天然ゴム(NR);ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、アクリレート−ブタジエンゴム、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム(MBR)及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などの合成ゴム(これらのゴムはラテックスの形態で供給されてもよい);並びにスチレン−ブタジエン−ビニルピリジン系ラテックス、DPL(解重合ラテックス)及びクロロスルホン化ポリエチレンラテックス中のポリマーなどが挙げられる。
上記の疎水性ゴム系ポリマーとして、好ましくは、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムであり、より好ましくは、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエンゴムである。
本発明において、疎水性ゴム系ポリマーを単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0009】
本発明の親水性ゴム系ポリマーとして、親水性基を含有するゴム系ポリマーが挙げられる。
【0010】
上記の親水性基として、例えば、水酸基、カルボニル基、アミノ基、スルホン酸基及びカルボキシル基などが挙げられる。好ましくはカルボキシル基及び水酸基である。本発明の親水性ゴム系ポリマーは、これらの親水性基を1種以上含有することができる。
【0011】
本発明の親水性ゴム系ポリマーとして、例えば、カルボキシ変性スチレン−ブタジエンゴム及びカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどが挙げられる。好ましくはカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムが挙げられる。
本発明では、親水性ゴム系ポリマーを、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0012】
本発明の親水性ゴム系ポリマーは、親水性基を有するモノマーを重合させることにより、又は前記の疎水性ゴム系ポリマーに親水性基を導入することにより得ることができる。
この親水性基を有するモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。
これら親水性ゴム系ポリマーはラテックスの形態で供給されてもよい。
【0013】
なお、本発明においてゴム系ポリマーは、特記されていない限り、疎水性ゴム系ポリマーと親水性ゴム系ポリマーの両方を含む。
【0014】
本発明の親水性ゴム系ポリマーの25℃における水に対する接触角は、良好な吸液性を発揮させる観点から、好ましくは70°以下、より好ましくは50°以下、特に好ましくは30°以下、最も好ましくは20°以下である。
なお、本発明において、接触角は、25℃において、親水性ゴム系ポリマー試験片の表面に水を滴下し、その水滴の接触角を慣用の接触角計を用いて求めることができる。
例えば、ゴム系ポリマー全量に対してエチレン性不飽和カルボン酸モノマー単位を、0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%含むゴム系ポリマーを挙げることができる。
【0015】
本発明のフォームラバーは、親水性ゴム系ポリマー以外に、疎水性ゴム系ポリマーを1種以上含むことができる。このような疎水性ゴム系ポリマーとして、前記に例示したNR及び合成ゴムなどが挙げられる。本発明のフォームラバーは、本発明の効果を損なわない限り、疎水性ゴム系ポリマーを任意の量、例えば、親水性ゴム系ポリマー100重量部に対して1重量部以上含むことができるが、良好な吸液性を発揮するために、親水性ゴム系ポリマー100重量部に対して、疎水性ゴム系ポリマーを、5重量部以下、特に3重量部以下、とりわけ2重量部以下含むことが好ましい。
【0016】
本発明のフォームラバーは、ラテックスを原料にして以下の工程1〜3を含む方法に従い製造されてもよいが、この方法に本発明のフォームラバーの製造方法が限定されるものではない。
なお、本発明において、親水性ゴム系ポリマーを含むラテックスのことを親水性ゴムラテックスといい、疎水性ゴム系ポリマーを含むラテックスのことを疎水性ゴムラテックスという。
【0017】
(工程1)
親水性ゴムラテックスに所要の副原料を充分に混合させて混合ラテックスフォーム原料を調製する。
ゴム系ポリマーを2種以上含むフォームラバー、例えば親水性ゴム系ポリマーを2種以上含むフォームラバー又は親水性ゴム系ポリマーと疎水性ゴム系ポリマーとを含むフォームラバーなどでは、フォームラバー中の各部の性質に偏りが生じるのを防ぐためにそれぞれのゴム系ポリマーがフォームラバー中で均一に存在することが好ましい。このため、副原料を混合させる前に、これらのゴム系ポリマーをそれぞれ含む2種以上のラテックスを、10〜10000min-1、好ましくは100〜10000min-1、より好ましくは3000〜7000min-1の範囲に設定される最大剪断速度で、30分以上、好ましくは40分以上、より好ましくは60分以上混合させることが望ましい。この混合に用いる手段は、上記の最大剪断速度を得られれば特に制限されず、攪拌羽根を備えた混合タンク、ホモジナイザー又はホモミキサーなどが挙げられるが、混合中における空気の混入を抑え次工程のフォーム密度の調整を容易にするため、攪拌羽根を備えた混合タンクが好適である。
このラテックスの混合工程により、ゴム系ポリマーを2種以上含む、各部が均一な性質を有するフォームラバーを製造することができる。
このラテックスの混合工程を経てから又はその混合工程中に、所要の副原料を添加し、充分に混合させて、ゴム系ポリマーを2種以上含むフォームラバーを製造するための混合ラテックスフォーム原料を調製する。
【0018】
上記の剪断速度(min-1)は、例えば、攪拌羽根を備えた混合タンク中でラテックスを2種以上混合する場合、以下の式から求められる。
剪断速度=(P×円周率×S)/V
P:攪拌羽根の翼径(mm)、S:1分あたりの攪拌羽根の回転数、V:攪拌羽根と混合タンクの壁面との間の隙間(クリアランス)における最も狭い部分の距離(mm)
【0019】
前記の副原料として気泡安定剤が挙げられる。混合ラテックスフォーム原料中のゴム系ポリマー100重量部に対する気泡安定剤の配合量は、フォーム中の気泡の安定性を高めてフォームを形成しやすくするため、通常0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上であり、また、気泡安定剤のコストを減らしたり、ゲル化時間を短縮させたりするため、通常3重量部以下、好ましくは1.5重量部以下である。この工程により、従来製造することができなかった、親水性ゴム系ポリマーを含むフォームラバーを製造することができる。
【0020】
上記の気泡安定剤として、例えば、シリコーン整泡剤;塩化エチルなどの塩化アルキルをホルムアルデヒド及びアンモニアと反応させて得られる反応生成物、例えば、エチルクロリドホルムアルデヒドアンモニア反応生成物;アルキル第四級アンモニウムクロリド;アルキルアリールスルホン酸塩;並びに高級脂肪酸アンモニウムなどが用いられる。
本発明の気泡安定剤として、ラテックスとの相溶性に優れていることから、シリコーン整泡剤、例えば、メチルポリシロキサンコポリマー及びポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサンコポリマーなどのシロキサンコポリマーが好ましく、特にポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサンコポリマーが好ましい。ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサンコポリマーを主成分とするポリオキシアルキレンとの混合物が好適である。気泡安定剤を使用する場合の配合量は、混合ラテックスフォーム原料中のゴム系ポリマー100重量部あたり通常0.1〜3重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部である。
【0021】
気泡安定剤以外に、前記の副原料として、例えば、架橋剤、起泡剤及び老化防止剤などが使用できる。
【0022】
上記の架橋剤は、ゴム系ポリマーの種類及び架橋反応機構に応じて、硫黄、有機過酸化物又はフェノール化合物などが用いられる。硫黄による架橋の場合、コロイド状硫黄及び微粉末硫黄のほか;二塩化硫黄及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどの硫黄化合物などを用いることができる。また、2−メルカプトベンゾチアゾールなどの加硫促進剤を併用することがある。有機過酸化物による架橋の場合、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、m−トルイルペルオキシドなどのアシルペルオキシド;t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブトキシペルオキシ)ヘキサンなどのアルキルペルオキシド;t−ブトキシペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノアート、t−ブトキシペルオキシベンゾアートなどのペルオキシエステル;1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサなどのペルオキシケタール;t−ブトキシペルオキシイソプロピルカルボナート、t−ブトキシペルオキシ−2−エチルヘキシルカルボナートなどのペルオキシカルボナートなどの有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物は、そのまま配合してもよく、モレキュラーシーブなどの無機粉末に吸着させたり、炭化水素や可塑剤に溶解したり、ポリジメチルシロキサンなどの不活性の液体に混和したりして安定化したものを、配合に供してもよい。フェノール化合物による架橋の場合、アルキフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、硫化−p−第三ブチルフェノール樹脂及びアルキルフェノール・スルフィド樹脂を用いることができる。架橋剤及び加硫促進剤の配合量は、ゴム系ポリマーの種類、架橋機構及び架橋剤によっても異なるが、混合ラテックスフォーム原料中のゴム系ポリマー100重量部あたり通常0.02〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0023】
前記の起泡剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸などの脂肪酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウムなどのサルコシン塩;やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどの硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン性界面活性剤などが例示される。起泡剤の配合量は、混合ラテックスフォーム原料中のゴム系ポリマー100重量部あたり通常1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部である。
【0024】
前記の老化防止剤としては、N−フェニル−N'−(p−トルエンスルホニル)−p−フェニレンジアミンなどのジフェニルアミン系化合物;芳香族アミンと脂肪族ケトンの縮合物;2−メルカプトベンゾイミダゾールやその亜鉛塩などのイミダゾール系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのモノ−フェノール系;ビス−、トリス、ポリフェノール系などが例示される。老化防止剤の配合量は、混合ラテックスフォーム原料中のゴム系ポリマー100重量部あたり1〜10量部が好ましく、2〜6重量部がさらに好ましい。
【0025】
(工程2)
例えばダンロップ法などに準じて、前記の混合ラテックスフォーム原料に所要の空気及びゲル化剤を添加し、充分に混合させて気泡状態にさせると共にゲル化させ、ゲル状物を得る。
【0026】
上記のゲル化剤としては、例えば、ケイフッ化ナトリウム(SSF)、ケイフッ化カリウム若しくはケイフッ化カルシウムなどのヘキサフルオロケイ酸塩;又はシクロヘキシルアミンの酢酸塩若しくはスルファミン酸塩などのシクロヘキシルアミン塩などを水溶液状態とした液状物が使用され、その量としては、前記の混合ラテックスフォーム原料中のゴム系ポリマー100重量部に対して1〜10重量部程度が好適である。ゲル化剤としては、特に上記のヘキサフルオロケイ酸塩、特にケイフッ化ナトリウムがゲル化開始時間等の反応制御が容易であることから好適に使用される。
あるいは、亜鉛アンモニウム錯塩、2−メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩、ポリプロピレングリコール又はポリメチルビニルエーテルなどの感熱剤を、前記の混合ラテックスフォーム原料中のゴム系ポリマー100重量部に対して1〜10重量部添加して、40〜100℃に加熱することにより、ラテックスを凝固させることもできる。
【0027】
(工程3)
前記のゲル状物を、流延、注型又は押出し成形などの方法によって所望の形状に加工し、次いで、架橋剤の種類に応じて50〜200℃に加熱して充分に架橋反応を進行させ、次いで適宜加工を加えて、所望の形状のフォームラバーを得ることができる。ここでの加熱方法は、ゲル化原料を架橋させ得るものであれば、特に制限されない。
なお、架橋反応をフィルム上で進行させて、所望の形状のフォームラバーを得てから、該フィルムを剥離することにより、フォームラバーを得てもよい。このフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び剥離性のある紙などが例示される。
【0028】
このようにして本発明のフォームラバーを得てもよい。本発明のフォームラバーは連通気孔構造を有する多孔体であり、外表面に開口部が存在する。
【0029】
上記のフォームラバーを、化粧品成分又は医薬品成分の含有液に含浸させることにより、該化粧品成分又は医薬品成分が該フォームラバーの連通気孔構造にしみ込んでいき、本発明の化粧用又は医療用皮膚貼付剤を得ることができる。
例えば、化粧品成分又は医薬品成分を適切な溶媒に溶解、懸濁又は乳化させて、これら成分の含有液を得、この含有液に、本発明のフォームラバーを浸漬したり、あるいはこの含有液を本発明のフォームラバーに塗布又は噴霧したりして含浸させ、その後、溶媒のフォームラバー中の含量が約5質量%以下になる程度まで乾燥させることによって、本発明の化粧用又は医療用皮膚貼付剤を得ることができる。
【0030】
上記化粧品成分は、化粧品に通常使用されているものであれば特に制限されず、油性原料、酸・アルカリ、湿潤剤、収れん剤、アルコール、界面活性剤、香料、色素、紫外線遮断剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、高分子化合物、肌荒れ防止剤、ニキビ用薬剤、止痒剤、角質軟化剥離剤、清涼化剤、ビタミン剤、ホルモン剤、アミノ酸などの栄養剤、美白剤、保湿剤、及び界面活性剤が例示される。
上記医薬成分は、皮膚外用の医薬品に通常使用されているものであれば特に制限されず、ステロイド剤、消炎鎮痛剤、高血圧剤、麻酔剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、降圧剤、抗生物質、抗菌性物質、ビタミン類、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、抗真菌物質などの薬効成分、並びに賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素、及び乳化剤などの添加剤が例示される。
【0031】
上記化粧品成分又は医薬品成分を溶解、懸濁又は乳化させる溶媒として、化粧品や医薬品の分野で通常使用されているものであれば特に制限されず、水、エタノールなどのアルコール、グリセリン、アルカリ性水溶液、油分、及びこれらの混合物などが例示されるが、溶解、懸濁又は乳化させるべき化粧品成分又は医薬品成分によって適宜変更される。水は精製水が好ましい。
【0032】
本発明の皮膚貼付剤を皮膚に貼付させた際、該貼付剤の皮膚表面側の反対側面、つまり外側の面から化粧品成分、医薬品成分、又は溶媒が放出するのを低下させるため、このような外側の面に放出防御層を設けてもよい。このような放湿防御層として片面スキン層が例示される。
【0033】
前記工程(3)において、ゲル状物の架橋反応をフィルム上で進行させて、所望の形状のフォームラバーを得てから、該フィルムを剥離することにより、フォームラバーを得る場合、フォームラバーの剥離面にある開口部の大部分が塞がれて、そこからの放出が抑制されるので、上記のように放出防御層を特に設ける必要もなく好都合である。もっとも、この場合も放出湿防御層を設けてもよい。
【0034】
本発明の皮膚貼付剤の適用部位としては、顔、首、胸部、腕部、腹部、足部、背中、及び頭部などが例示されるが、本発明の皮膚貼付剤は貼付する部位によって貼付するのに適切な形状にするのが好ましい。
例えば、本発明の皮膚貼付剤は、皮膚に貼付する上でシート状であることが好ましい。シート状にした場合の厚さは、特に制限されないが、通常0.5〜3.0mmである。
また、顔面全部に貼付する場合は、貼付の際、目、鼻、及び口に相当する位置に、これら目、鼻、及び口が露出するように、皮膚貼付剤に孔を設けてもよい。
これらの貼付剤の成形は、本発明のフォームラバーを上記化粧品成分又は医薬品成分の含有液に含浸させてから行ってもよいが、含浸させる前に成形してから、上記含有液に含浸させるのが作業効率上好ましい。
【0035】
以下、本発明を、実施例によってさらに詳細に説明する。本発明は、実施例によって限定されるものではない。なお、以下の例で、特にことわらない限り、親水性ゴムラテックス及び疎水性ゴムラテックスの重量部は、それぞれのラテックスに含まれるゴム系ポリマーの重量部を表す。
【実施例】
【0036】
1.基材製造例
基材例1〜7
表1に示す配合に従い、親水性ゴムラテックス(カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、商品名Nipol 550L、日本ゼオン株式会社製)に、又はそれと疎水性ゴムラテックス(アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、商品名Nipol 531、日本ゼオン株式会社製)との混合物に、架橋剤含有エマルション(硫黄40%及び分散剤(カゼイン)10%を、水50%中に乳化させたもの、株式会社軽井沢精錬所製)1重量部、加硫促進剤(ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、商品名ノクセラーBZ、大内新興化学工業株式会社製)1.5重量部、起泡剤(オレイン酸カリウム石鹸、FR14、花王株式会社製)2.5重量部、気泡安定剤(ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、東レ・ダウコーニング株式会社製)1.0重量部及び老化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、商品名スミライザーBHT、住友工業株式会社製)2重量部とを混合させて混合ラテックスフォーム原料を得た。これに、ゲル化剤(ケイフッ化ナトリウム、三井化学株式会社製)3重量部及び空気を加えてゲル化させ、注型により成形してから140℃、40時間加熱処理をして、フォームラバーの基材(100×100×1mm)を作製した。
【0037】
【表1】

【0038】
基材例8
市販のコットンマスク製品(アベンヌコットンマスク、アベンヌウォーター用、株式会社ピエールファーブルジャポン製)を成形して、綿の不織布からなる基材(100×100×1mm)を作製した。
【0039】
基材例9
市販のコットンパッドを成形して、脱脂綿からなる基材(100×100×1mm)を作製した。
【0040】
基材例10
グリセリンのオキシプロピレン付加物(平均分子量3,000のポリオキシプロピレントリオール;水で洗浄して、不純物として存在する低分子量アルデヒドなどを除去し、次いで恒温槽中で120℃に5時間加熱して水分を除去したもの)100重量部、N,N−ジメチルアミノヘキサノール0.4重量部、オクタン酸スズ(II)0.1重量部、水4重量部及びポリジメチルシロキサン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体1重量部を、加熱溶融し、混合しつつ脱水・脱泡して、均一なポリオールプレミックスを調製した。このポリオールプレミックスと、別に調製しておいたトルエンジイソシアネート混合物(2,6−:2,4−=8:2)52.5重量部とを、混合し、注型よって成形し、次いで加熱し、硬化させて、ウレタンフォームからなる基材(100×100×1mm)を作製した。
【0041】
基材例11
市販のスポンジ製品(ベルイーターD、アイオン株式会社製)を成形して、ポリビニルアルコール(PVA)からなる基材(100×100×1mm)を作製した。
【0042】
2.基材の試験例1
基材例1の基材について、下記の方法に従い測定を行い、得られた結果を表2及び3に示した。
(1)耐薬品性
基材を各薬品に70℃、24時間浸漬させた後、取り出して自然乾燥させた。そして、浸漬前後の基材の引張強さ及び長さを測定して、以下の式から強度保持率及び線膨張率を求めた。
強度保持率(%)=I/I×100
(I:浸漬後の基材の引張強さ、I:浸漬前の基材の引張強さ)
線膨張率(%)=(L−L)/L×100
(L:浸漬後の基材の長さ、L:浸漬前の基材の長さ)
なお、引張強さはJIS K6400に従い測定した。
(2)吸水量
基材を3分間水没させ、水没前後の基材の重さを測定して、吸水量を以下の式から求めた。
吸水量=(W−W)/W×100
(W:水没後の基材の重量、W:水没前の基材の体積)
(3)通気性
JIS L1004に準拠して、エアーバーミアメータ(フラジール型通気度試験機、株式会社東洋精機製作所製)により測定した。
(4)密度、硬さ、引張強さ、破断伸び
JIS K6400に従い、測定した。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
表2から、本発明のフォームラバーは良好な耐薬品性を有することが認められ、種々の溶媒を使用した化粧品成分又は医薬品成分の含有液に含浸させることが可能といえる。
表3から、本発明のフォームラバーは、柔軟性があって伸びが良く、吸水速度に優れていることが認められ、皮膚への追従性に優れていることがわかる。
【0046】
3.基材の試験例2
上記で作成した基材例1と基材例8〜11の各基材について、下記に示す方法に従い測定を行い、得られた結果を表4及び図1に示した。
(1)吸水速度
水道水0.5mlを基材に滴下して、完全にしみ込むまでの時間を測定した。
(2)体積吸水量
基材の重量及び体積を測定してから、これを水道水に室温にて2時間浸漬させた後に取り出し、その重量を測定した。そして、以下の式から体積吸水量を求めた。
体積吸水量(g/cm3)=(W−W)/V
(W:浸漬後の基材の重量、W:浸漬前の基材の重量、V:浸漬前の基材の体積)
(3)膨張率
基材の体積を測定してから、これを水道水に室温にて3時間浸漬させた後に取り出し、その体積を測定した。そして、以下の式から膨張率を求めた。
膨張率(%)=(V−V)/V×100
(V:浸漬後の基材の体積、V:浸漬前の基材の体積)
(4)密度
JIS K6400に従い、測定した。
(5)通気性
JIS L1004に準拠して、エアーバーミアメータ(フラジール型通気度試験機、株式会社東洋精機製作所製)により測定した。
(6)放湿性
基材の重量を測定してから、これを水道水に室温にて1時間浸漬させた後に取り出し、その重量を測定した。次いで、30℃のオーブンに入れ、10分おきに重量を測定した。そして、以下の式から保湿性を求めた。
保湿性(%)=(W−W)/(W−W)×100
(W:浸漬後の基材の重量、W:浸漬前の基材の重量、W:30℃のオーブンに入れて10分おきに測定した基材の重量)
(7)密度、硬さ、引張強さ、破断伸び
JIS K6400に従い、測定した。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
表4から、本発明のフォームラバー(基材例1)は、不織布(基材例8)、脱脂綿(基材例9)、ウレタン(基材例10)、PVA(基材例11)よりも吸水速度に優れていることが認められた。
表5から、本発明のフォームラバーは、不織布、脱脂綿よりも柔軟性があって伸びが良く、皮膚への追従性に優れていることが認められる。
図1から、本発明のフォームラバーは、脱脂綿、ウレタン、PVAよりも放湿性に優れていることが認められ、本発明の皮膚貼付剤は化粧品成分又は医薬品成分を皮膚に良好に浸透させることがわかる。
【0050】
4.皮膚貼付剤の製造例
貼付剤例1
前記で製造した基材例1を、市販化粧水(ピュアナチュラルエッセンスローションライト、ポーラーデイリーコスメ社製)200mlに、室温にて10分間浸漬して、フォームラバーの皮膚貼付剤を製造した。
【0051】
貼付剤例2
前記で製造した基材例9を、上記貼付材例1と同様に化粧水に浸漬して、脱脂綿の皮膚貼付剤を製造した。
【0052】
貼付剤例3〜6
以下の表6に示すとおり、市販の美顔用シートパック製品をシート状(100×100×1mm)に成形して使用した。
【0053】
【表6】

【0054】
5.皮膚貼付剤の試験例
上記で作成した貼付剤例1〜6の各貼付剤について、下記に示す方法に従い測定を行い、得られた結果を図2及び3に示した。
(1)吸着性
貼付剤をヒトの肌に張りつけ、この貼付剤をオートグラフ(AGS-5kNB、株式会社島津製作所製)にて水平方向に引っ張り、その時に発生する吸着力を測定した。
(2)顔表面温度
貼付剤をヒトの顔の頬部に張りつけ、温度レコーダー(NR-1000、株式会社キーエンス製)にて、該部位の表面温度を測定した。
【0055】
図2から、本発明のフォームラバーの貼付剤(貼付剤例1)は、脱脂綿の貼付剤(貼付剤例2)や不織布の貼付剤(貼付剤例3及び4)よりも吸着力に優れていることが認められた。また、本発明のフォームラバーの貼付剤は、ゲルの貼付剤(貼付剤例5)よりも、吸着力の経時的変化が小さく長時間にわたり一定の吸着力を維持することが認められ、皮膚に与えるストレスは小さいものと判断できる。さらに、本発明のフォームラバーの貼付剤は、時間が経過して該貼付剤が乾燥するに至っても良好な吸着力を示した。
図3から、本発明のフォームラバーの貼付剤は、従来の市販の美顔用シートパック製品(貼付剤例3〜6)と比較して、顔表面温度をより大きく低下させることが認められた。この試験に参加した被験者も心地よさを感じると回答した。
また、本発明の貼付剤は、容易に皮膚から剥がすことができ、また該貼付剤が破損したり、その一部が皮膚表面上に残ったりすることもなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のフォームラバーは、皮膚貼付剤用の基材に使用できる。
本発明の皮膚貼付剤は、化粧目的又は医療目的に、皮膚に貼付して使用される。例えば、化粧用パックシート、湿布剤、成型パッブ剤、パッチ剤、粘着プラスターなどである。
なお、上記の化粧目的には、皮膚を清潔に保ったり洗浄したりすることも含まれる。
本発明の皮膚貼付剤は化粧品成分又は医薬品成分を予め含有させたものを使用してもよく、また、使用する際に、本発明のフォームラバーに、化粧品成分又は医薬品成分を含有させて使用してもよい。
したがって、本発明の皮膚貼付剤には、本発明のフォームラバーの基材と、該基材に染み込ませるべき化粧品又は医薬品を含む、キット製品も包含される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】各基材例の保湿性の経時変化を示す図である。
【図2】各貼付剤例の吸着力の経時変化を示す図である。
【図3】各貼付剤例を使用した際の顔表面温度の経時変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ゴム系ポリマーを含む、皮膚貼付剤用フォームラバー。
【請求項2】
親水性ゴム系ポリマーが、ヒドロキシル基、カルボニル基、アミノ基、スルホン酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される基を1種以上含有するゴム系ポリマーである、請求項1記載のフォームラバー。
【請求項3】
さらに疎水性ゴム系ポリマーも含む、請求項1又は2記載のフォームラバー。
【請求項4】
親水性ゴム系ポリマー100重量部に対して疎水性ゴム系ポリマーを5重量部以下含む、請求項3記載のフォームラバー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のフォームラバーと、医薬品成分とを含有する、医療用皮膚貼付剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載のフォームラバーと、化粧品成分とを含有する、化粧用皮膚貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−306749(P2006−306749A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128957(P2005−128957)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【Fターム(参考)】