説明

皮膚貼付剤

【課題】皮膚貼付剤とは、皮膚のニキビ、シワ、肌荒れ、しみ、そばかす、その他の治療や軽減用に用いられるものである。一般には、不織布や発泡プラスチック等に一定量塗布された貼付シートが用いられている。例えば、ハイドロゲルと呼ばれる基剤を不織布に塗布したものが用いられている。しかしながら、ハイドロゲルタイプでは乾燥しやすいため、長時間貼付しておくことが難しい。また、
【解決手段】スチレンとジエン化合物との共重合体、炭化水素、炭素数10〜25のエステル、及び薬効成分が混合された基剤を剥離シートに塗布したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚貼付剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚貼付剤とは、皮膚のニキビ、シワ、肌荒れ、しみ、そばかす、その他の治療や軽減用に用いられるものである。
皮膚の治療は、従来から軟膏やクリームを塗布する方法が主流であった。この軟膏やクリーム中に薬効成分が混合されているのである。
【0003】
しかし、このような塗布剤は、手や衣服に付着したり、またその部分にゴミ等他のものが付着するという欠点がある。更に、一定量塗布するということが事実上困難である。
【0004】
そこで、不織布や発泡プラスチック等に一定量塗布された貼付シートが用いられている。これは予め必要量が塗布されているため、必要以上に塗布することもなく、また不織布等によってカバーされているため、衣服に付着したり、他のものが付着する欠点もない。
【0005】
この種の貼付シートであっても、薬効部分がそのまま接着力を有するものと、薬効以外の部分が接着力を有するものがある。しかし、薬効以外の部分が接着力を有するものは全面積が大きくなるため問題である。よって、主流は薬効部分がそのまま接着力を有するものである。
【0006】
例えば、ハイドロゲルと呼ばれる基剤を不織布に塗布したものが用いられている。ハイドロゲルとは、ポリアクリル酸とポリアクリル酸塩を架橋させたものであり、この中に薬効成分が含有されており、これ自体が接着力を有するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ハイドロゲルタイプでは乾燥しやすいため、長時間貼付しておくことが難しい。
更に、基剤を不織布等に塗布したものでは、透明性がないため、皮膚は見えない。即ち、皮膚の状態や変化が不織布等を剥離するまで不明である。これでは、効き目の程度や剥離時期等がわかりにくい。
また、不織布が存在するため、非常に目立つことになる。これも1種の欠点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明皮膚貼付剤を完成したものであり、その特徴とするところは、スチレンとジエン化合物との共重合体、炭化水素、炭素数10〜25のエステル、及び薬効成分が混合された基剤を剥離シートに塗布した点にある。
【0009】
スチレンとジエン化合物との共重合体とは、イソプレンやブタジエンのようなジエン化合物とスチレンとのブロック共重合体をいう。また、残存する二重結合は水添して飽和してもしなくてもよい。特に、スチレン・ブタジエン・ブロック共重合体の水添物(SEBS)や、スチレン・イソプレン・ブロック共重合体の水添物が優れていた。これは、常温で固体であり、水には不溶で油脂類に可溶である。
【0010】
炭化水素は、液状のものが普通であるが、常温で固体のものも使用できる。
例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等である。
なかでも、比較的粘性の小さい液体(流動パラフィン)のものが好適である。例えば、粘度としては、動粘度で40〜350mm2/s 程度である。これは、前記したスチレンとジエン化合物との共重合体を溶解し、接着性(粘着性)と薬効成分溶解性を持たせるためのものである。
【0011】
炭素数10〜25のエステルは、例えば、パルミチン酸イソプロピル(C1531COOCH(CH32)、ミリスチン酸イソプロピル(C1327COOCH(CH32)等である。常温で液体であり、水に溶けず、油脂類に可溶なものである。これを混合したのが、本発明の特徴であり、これを混合することによって皮膚からの剥離がスムースになることを見出したのである。中でも、ミリスチン酸イソプロピルがよかった。エステルのの添加量によって、粘着力の調整が非常に容易である。
【0012】
薬効とは、この皮膚貼付用シートの機能そのものであり、貼付する目的である。即ち、美白、抗しわ、老化防止、坑炎症、坑菌、保湿、坑酸化、スリミング、クレンジング、血行促進等の効果をである。
薬効成分の例としては次のようなものが挙げられる。
油分としては、アボガド油、ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、流動パラフィン、スクワレン、パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等があり、保湿剤としては、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ヒアルロン酸等があり、血行促進剤としてはカプサイシン、カフェイン、ニコチン酸トコフェロール等がある。また、その他、ビタミンA、レチノール、パルミチン酸レチノール、テトラへキシルデカン酸アスコルビン酸、トコフェロール、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、L−メントール、カンフル、イオウ、塩化ピリドキシンが挙げられる。
また種々の薬効があるエキスとして、オウバクエキス、カンゾウエキス、ユキノシタエキス、アロエエキス、海草エキス、ニンジンエキス、クワエキス、甘草エキス等がある。
また、肩こりに効果のある成分や、解熱剤、その他の湿布薬、さらには心臓の薬等のように薬剤を皮膚に塗布するものであればどのようなものでもよい。
この薬効成分は、前記した成分に溶解してもしなくてもよい。よって、水溶性の液体や固体、油溶性の液体や固体が使用できる。
【0013】
更に、保存安定性のために、酸化防止剤を混合してもよい。例えば、BHT等である。これは、3,5−ジ・ターシャリブチル−4−ヒドロキシトルエンである。また、香料や精油等を混合してもよい。このようにすると、香水のようにも使用でき、アロマテラピー効果も期待できるものである。例えば、ローズ油、ペパーミント油、ラベンダー油等がある。
【0014】
これらの成分の混合量(含有量)は、スチレンとジエン化合物との共重合体が25〜60重量%、炭化水素が40〜70重量%、エステルが0.5〜15重量%、薬効成分が0.5〜20重量%が好適である。どれも複数存在する場合にはその合計値である。
【0015】
剥離シートとは、プラスチックシート、プラスチックフィルム等どのようなものでもよい。材質としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)のような合成樹脂製が好ましい。シート状体には印刷や着色を施してもよい。
この剥離シートは、皮膚に皮膚貼付剤を塗布した後は剥離除去するもので1種の台紙である。これは透明でも着色したものでもよいが、剥離する時に皮膚への粘着程度がよくわかるように透明が望ましい。
基剤の塗布厚みは、限定はしないが0.05〜1mm程度である。
【0016】
このように、台紙を除去して皮膚には基剤のみを残す方法にしたことが本発明の大きな特徴である。また、瓶やチューブ入りの塗布剤と比較して、塗布量や塗布厚が一定する。
【0017】
更に、この剥離シートを剥離除去すると、基剤が露出するのであるが、このとき表面の粘性を押さえるため、表面剤を設けておいてもよい。表面剤とは、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の剥離処理剤が好ましい。この表面剤を剥離シートと基剤の間にあれば、基剤表面に粘着性がほとんどなく衣服等に付着せず、また汚れ等も付かない。
【0018】
また、貼付する前に基剤面が汚染されないようにカバー材(フィルムやシート)を設けておくのが好ましい。このカバー材は、貼付する前に剥離除去するものである。
【0019】
本発明皮膚貼付剤の製造方法は、上記の基剤を前記剥離シートに塗布して製造する。塗布の方法は、粘度を調整(加熱等により)して塗布するのが簡単である。勿論、常温でも粘着性が残っていなければ皮膚に貼付できない。また、カバー材を用いる場合には、カバー材に基剤を塗布し、その上に剥離シートを貼付してもよい。
【0020】
また、表面剤を用いる場合には、次のような製造方法が有用である。
まず、カバー材に薬効成分を塗布し、その薬効成分の上から表面剤を塗布し、最後に剥離シートを貼付する方法である。
【0021】
皮膚への貼付方法は、カバー材が設けられている場合には、それを剥離し皮膚に貼付する。数十秒〜3分程度(1例)放置した後、剥離シートを剥離する。これで完成である。
【発明の効果】
【0022】
本発明皮膚貼付剤には、次のような効果がある。
(1) スチレンブロック共重合体、炭化水素に、炭素数10〜25のエステルを混合しているため、粘着力が適度であり、不用意に剥がれて落ちることはなく、剥離するときには比較的容易に皮膚を痛めずに剥離できる。
(2) 本皮膚貼付剤は、基剤のみであり、不織布等の担体がなく透明であるため、目で皮膚の状態が見える。よって、貼る場所が分かりやすい。
(3) 透明であるため、角栓の溶解状態、皮脂の浸出程度、気泡の程度等が目で確認できる。
(4) 透明であるため目立たない。これは例え家の中でも女性にとっては大きな問題である。
(5) 透明であるため、逆に着色が可能である。
(6) 不織布等がないため捨てるものが少ない。またコストダウンになる。
(7) 不織布のような担体(支持体)がないため、皮膚に違和感やつっぱり感がない。
(8) 水性ゲルのもののように使用する前に密閉する必要がない。
(9) 粘稠な液状であるためえ、毛穴等に自由に浸透して溶解する。
(10) 不織布等がなく基剤のみであるため、揮発面積が大きい。よって、揮発成分はよく蒸発する。そのため、香料等が少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
実施例1
次の成分を混合器内で混合する。
1 SEBS(スチレン・ブタジエンブロック共重合体
の水添物スチレン分約35% 20.0 重量%
2 流動パラフィン 71.5 重量%
3 パルミチン酸イソプロピル 3.0 重量%
4 ビタミンE 5.0 重量%
5 BHT 0.5 重量%
粘度が高い場合には、50℃〜100℃に加熱してもよい。
【0025】
この基剤を、剥離シート(プラスチックシート)上に薄く(0.5mm程度)塗布して、その上にカバーフィルムを載置して完成である。これを実施例1とする。
【0026】
同様の方法で混合量の異なるもの(実施例2〜5)を表1に示した。表中の数字は重量%である。
また、スチレンブロック共重合体、炭化水素、エステルを含まないものを比較例として挙げた。
【表1】

【0027】
表1からスチレンブロック共重合体、炭化水素、エステルのどれか1つ欠けても発明としての効果を発揮しないことが分かる。
【0028】
図1は、本発明皮膚貼付剤の1例を示す断面図である。剥離シート2に基剤3が塗布され、基剤3上に剥離紙カバーフィルム4が貼付されてdいる。これの使用法は、カバーフィルム4を剥離し、皮膚に貼付する。しばらく置いて剥離シート2を剥離する。これで完了である。
【0029】
図2は、本発明皮膚貼付剤1を皮膚5に貼付し、剥離シート2を剥がしているところを示す。
【0030】
図3は、表面剤6が存在する例である。表面剤は、剥離シート2と基剤3の間に存在している。製造方法は、カバー材4に薬効成分3を塗布し、その薬効成分の上から表面剤6を塗布し、最後に剥離シート2を貼付する方法である。
【0031】
図4は、図3の例を皮膚5に貼付し、剥離シート2を剥がしているところを示す。剥離シート2を剥がすと、表面剤6が基剤3をカバーしているため、手で触っても粘着性はない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明皮膚貼付剤の1例を示す断面図である。
【図2】本発明皮膚貼付剤の使用例を示す断面図である。
【図3】本発明皮膚貼付剤の他の例を示す断面図である。
【図4】図3の例の使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 本発明皮膚貼付剤
2 剥離シート
3 基剤
4 カバーフィルム
5 皮膚
6 表面剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンとジエン化合物との共重合体、炭化水素、炭素数10〜25のエステル、及び薬効成分が混合された基剤を剥離シートに塗布したことを特徴とする皮膚貼付剤。
【請求項2】
剥離シートと薬効成分との間に表面剤存在するものである請求項1記載の皮膚貼付剤。
【請求項3】
薬効成分の剥離シートと反対側にカバー材を設けたものである請求項1又は2記載の皮膚貼付剤。
【請求項4】
スチレンとジエン化合物との共重合体が25〜60重量%、炭化水素が40〜70重量%、エステルが0.5〜15重量%、薬効成分が0.5〜20重量%である請求項1〜3記載の皮膚貼付剤。
【請求項5】
請求項1記載の皮膚貼付剤を、薬効成分が皮膚に付着するよう貼付し、一定時間経過後、剥離シートを剥離し、薬効成分を皮膚に残存させることを特徴とする皮膚貼付剤の貼付方法。
【請求項6】
カバー材に薬効成分を塗布し、その薬効成分の上から表面剤を塗布し、最後に剥離シートを貼付することを特徴とする皮膚貼付剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−119405(P2007−119405A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314406(P2005−314406)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(391027929)三粧化研株式会社 (17)
【Fターム(参考)】