説明

皮膚貼付用粘着剤組成物

【課題】 使用期間中、剥離を生じることなく、一定時間経過後の剥離に際しては、皮膚に刺激を与えることなく容易に剥離することができ、しかも貼付後短時間で剥離する際にも皮膚刺激を低く容易に剥離することのできる皮膚貼付用粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】 粘着剤、吸水剤、セラミド及び乳化剤を含有してなる皮膚貼付用粘着剤組成物。吸水剤、セラミド及び乳化剤の量が粘着剤100重量部に対して、それぞれ、10〜160重量部、0.01〜3重量部及び0.03〜10重量部である皮膚貼付用粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の皮膚に貼付するために使用される粘着剤組成物、更に詳しくは、皮膚の弱い人や小児を対象とする場合及び繰り返し長時間貼付する場合等に有用な粘着剤組成物に関する。また、本発明は、この皮膚貼付用粘着剤組成物をバッキング材に塗布してなる排泄物収容装具用面板にも関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚貼付用粘着剤組成物は、医療分野でパッド、薬剤、カテーテル類、排泄物収容容器等の固定、保持や創傷の保護等に多く使用されている。
【0003】
一般に、皮膚貼付用粘着剤組成物は、長時間適用することができるようにするためには粘着力を高くする事が行われるが、皮膚からの滲出液等を吸収して徐々に時間経過とともに低下していく傾向を有している。このため長時間経過後の剥離は比較的刺激が少なく行うことができる。しかしながら、貼付後1〜2時間程度の短時間で剥離をする必要がある場合も生じ、この場合には、大きな引きはがし粘着力を有していることが多く、剥離時に非常に大きな皮膚刺激を与えることとなるので、好ましくない。
従って、皮膚貼付用粘着剤組成物を貼付した後、1〜2時間程度でも、皮膚刺激を与えることがない一定のレベルに、引きはがし粘着力が低下していることが望ましい。
貼付後1〜2時間程度で剥離するときに皮膚刺激を与えないようにするには、初期引きはがし粘着力を低くすることが考えられるが、そうすると、使用途中に剥離してしまうという問題が起こる。
これまで、このような、貼付後短時間で剥離しても皮膚刺激がなく、長時間貼付していても使用途中で剥離することがないという相反する要求を満足させることのできる皮膚貼付用粘着剤組成物は報告されていない。
特に排泄物収容装具用面板に用いられる皮膚貼付用粘着剤において上記特性が必要とされている。
【0004】
特許文献1には、親水性成分と疎水性成分とよりなる皮膚保護剤に更に界面活性剤を添加してこれを粘着剤層とする排泄物収容装具用面板が開示されている。
しかし、ここで開示された粘着剤組成物は、引きはがし粘着力が貼付直後に大きく上昇することがなく、短時間で剥離する際の皮膚刺激の面からは好ましいが、経時後の引きはがし粘着力の絶対値が低く、排泄物収容装具の長期間使用という観点からは、まだ十分ではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−17765
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、適用期間中、意図しない剥離を生じることなく、また、剥離する際には、適用期間に左右されず、皮膚に刺激を与えることなく容易に剥離することができる皮膚貼付用粘着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして本発明によれば、粘着剤、吸水剤、セラミド及び乳化剤を含有してなる皮膚貼付用粘着剤組成物が提供される。
この皮膚保護剤組成物は吸水剤を粘着剤100重量部に対し10〜160重量部とすることが好ましい。
また、セラミドと乳化剤はそれぞれ粘着剤100重量部に対しセラミド0.01〜3重量部、乳化剤0.03〜10重量部であることが好ましい。
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物においては、吸水剤、セラミド及び乳化剤の量が、粘着剤100重量部に対して、それぞれ、10〜160重量部、0.01〜3重量部及び0.03〜10重量部であることが好ましい。
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物においては、セラミドが、2型、5型又は7型のセラミドであることが好ましい。
【0008】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物においては、乳化剤が、HLBの値が3〜7を有する非イオン性乳化剤であることが好ましい。
また、上記非イオン性乳化剤は3〜7のHLBを有するソルビタン脂肪酸エステルであることが好ましい。
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物においては、セラミドと乳化剤の含有合計量が粘着剤100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましい。
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、貼付後2〜72時間において2〜4N/25mmの引きはがし粘着力を有するものであることが好ましい。
また、本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物においては、貼付72時間後における引きはがし粘着力が貼付2時間後における引きはがし粘着力の40%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、適用期間中の引きはがし粘着力の変化が小さく、安定した引きはがし粘着力を有している。従って貼付後短時間であっても長時間経過後であっても、適切な一定の引きはがし粘着力の範囲で使用することができ、意図しない剥離を起こすことなく、また、引きはがし時に皮膚への刺激が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、粘着剤、吸水剤、セラミド及び乳化剤を含有してなる。
【0011】
粘着剤は、皮膚への粘着性と凝集性による形状の保持機能を有するものであれば特に限定されず、一般的にエラストマーといわれる下記のようなものを使用することができる。
エラストマーは、従来、この用途に用いられているものであれば特に限定されない。その具体例としては、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、シリコーンポリマー、ポリビニルアルキルエーテル等を挙げることができる。
これらのうち、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等のブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム(イソブチレン−イソプレン共重合体)等の合成ゴム系の粘着剤が好ましい。
これらのエラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
また、粘着剤は、粘着付与剤又は軟化剤を配合したものであってもよい。粘着付与剤としては、天然ロジン誘導体、クマロン−インデン樹脂、テルペンオリゴマー、脂肪族石油樹脂、アルキル変性フェノール樹脂等を用いることができる。
粘着付与剤の配合量は、添加対象の粘着剤の種類に応じて適宜選定すればよい。
【0013】
吸水剤は皮膚表面から出る汗等の排泄物の吸収を行うものであり、含有する成分によっては、貼付材表面のpHの維持、pHの緩衝作用等の機能を果たすものもある。
吸水剤は、吸水性を示す化合物であれば、水溶性であっても水不溶性であってもよい。
水溶性物質の具体例としては、コーンスターチ、グアーガム、ローカストビーンガム等の種子ガム;ジャガイモデンプン、葛デンプン等の塊茎及び根茎ガム;アルギン酸塩、カラギーナン、寒天等の海藻抽出物及びその加工物;ペクチン等の植物抽出物;カラヤガム、アラビアゴム等の分泌ガム;キサンタンガム、デキストラン等の発酵ガム;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、メチルセルロース、デンプンアセテート、デンプンフォスフェート、ヒドロキシエチル化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、デキストリン化デンプン等の半合成水溶性高分子;ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン等の合成水溶性高分子;等を挙げることができる。これらの水溶性吸水材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
水不溶性物質の例としては、カオリン、含硫ケイ酸アルミニウム、クオタニウム−18ヘクトライト、シリカ、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の鉱物系化合物を挙げることができる。これらの鉱物系吸水材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
吸水剤の使用量は、粘着剤100重量部に対して、通常10〜160重量部、好ましくは30〜140重量部である。吸水剤の量が10重量部未満では、貼付後、長時間を経過しても引きはがし粘着力が低下せず、剥離時に皮膚刺激が大きすぎる傾向がある。他方、160重量部を超えると、引きはがし粘着力が低すぎてしまう傾向がある。
【0015】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、セラミドを含有することが必須である。
セラミドとしては、1型から7型のどのセラミドを用いても差し支えないが、好ましくは、2型、5型又は7型である。これらの型のものを用いると、剥離時に失われる角質細胞間脂質を補う効果が大きいと考えられる。
セラミドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、乳化剤を含有することが必須である。
乳化剤としては、非イオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤及び両イオン性乳化剤のいずれをも使用することができる。
【0017】
非イオン性乳化剤の具体例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪族アルカノールアミド等の脂肪酸系非イオン性乳化剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド等の高級アルコール系非イオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のアルキルフェノール系非イオン性乳化剤;等を挙げることができる。
【0018】
アニオン性乳化剤の具体例としては、高級脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩等の脂肪酸系アニオン性乳化剤;直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等の直鎖アルキルベンゼン系アニオン性乳化剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等の高級アルコール系アニオン性乳化剤、α−オレフィンスルホン酸塩等のα−オレフィン系アニオン性乳化剤、アルカンスルホン酸塩等のノルマルパラフィン系アニオン性乳化剤;等を挙げることができる。
【0019】
カチオン性乳化剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム系カチオン性乳化剤;N−メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩等のアミン塩系カチオン性乳化剤;等を挙げることができる。
【0020】
両イオン性乳化剤の具体例としては、アルキルアミノ脂肪酸塩等のアミノ酸系両イオン性乳化剤;アルキルベタイン等のベタイン系両イオン性乳化剤;アルキルアミンオキシド等のアミンオキシド系両イオン性乳化剤;等を挙げることができる。
【0021】
これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
乳化剤は、3〜7のHLBを有する非イオン性乳化剤であることが好ましい。このような乳化剤を使用すると、引きはがし粘着力の低下の程度を制御しやすい。
また、皮膚に対する刺激性の観点からは、ソルビタン脂肪酸エステルを用いるのが特に好ましい。
なお、これらのうち、皮膚への刺激を考慮すると、化粧品原料規格、粧配規等に記載の成分であることが望ましいが、安全性の確認があればこの限りではない。
【0022】
本発明において、セラミドと乳化剤とを併用することが必須である。いずれか一方のみを使用しても本発明の効果は得られない。
セラミドと乳化剤の合計量は、粘着剤100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましく、0.2〜3重量部であることが更に好ましい。この合計量がこの範囲内にあるときに、本発明の目的が効果的に達成される。
セラミドの配合量は使用目的により異なるが、粘着剤100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましい。より好ましくは0.07〜2重量部、更に好ましくは0.1〜1.5重量部である。
配合量が0.01重量部より少ない場合は、初期の引きはがし粘着力が高めになる傾向があり、一定時間を経過しても高い引きはがし粘着力を示す傾向がある。他方、3部より多い場合には、引きはがし粘着力が低めになる傾向があり、排泄物収容装具を皮膚に貼付する力が弱くなる傾向がある。
【0023】
乳化剤の使用量は使用目的により異なるが、粘着剤100重量部に対して、0.03〜10重量部が好ましい。より好ましくは0.05〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部である。
この量が0.03重量部よりも少ないと、経時で引きはがし粘着力が低めになる傾向がある。10重量部より多いと、引きはがし粘着力が低すぎて排泄物収容装具を皮膚に貼付する力が弱くなる傾向がある。
【0024】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物において、セラミドと乳化剤について単独配合の場合と併用した場合の効果を比較すると以下のように推定することができる。
即ち、粘着剤組成物中にセラミドを使用した場合、セラミドが脂質としての性質を持っているので皮膚に対する初期引きはがし粘着力がある程度低下する。皮膚からの汗及び水分が粘着剤組成物中に取り込まれ、皮膚側から徐々に水分量が増えていき、セラミドが粘着剤組成物中を移動しやすくなる。その後、セラミドは経時により粘着剤組成物の皮膚側表面側に移行し偏在するようになる。しかし、角層表面に皮脂膜が存在するのでセラミドは角層内には移行しにくく、粘着剤組成物の皮膚側表面付近へのセラミドの偏在化が進むようになる。そして経時により、粘着剤組成物の皮膚側表面に偏在するセラミドの量が増加する。これによって、セラミドを配合すると、配合しないときに比較して、引きはがし粘着力が低下し、使用中における剥がれ原因になる可能性がある。
また乳化剤のみを使用した場合も、皮膚からの汗及び水分が粘着剤組成物中に取り込まれ、乳化剤は分子レベルで粘着剤組成物中を移動しやすくなる。その後、乳化剤は粘着剤組成物の皮膚側表面側に偏在するようになり乳化剤中のアルキル基の存在により引きはがし粘着力は低下する。乳化剤により皮脂は乳化され角層上から除去されるが、これが角層へ浸透していくことはない。また、全体的に粘着力は低下するが、乳化剤は粘着力の低下割合にはあまり影響しない。
【0025】
セラミドと乳化剤とを併用した場合、両者を含む粘着剤組成物を皮膚に貼付した直後は、粘着剤組成物内にセラミドと乳化剤とが均一に分散しており、皮膚への粘着には粘着剤が主として寄与する。このため、セラミド及び乳化剤の配合により、初期の引きはがし粘着力が低下するが、その程度は大きくない。セラミド及び乳化剤は、貼付後数時間から12時間ぐらいの間に皮膚表面から出る汗、水分及び滲出液の影響、体温等による粘着剤組成物の温度上昇により、分子レベルで粘着剤組成物中を皮膚表面側に移動しやすくなる。これにより、経時による引きはがし粘着力の低下が進行する。
更に、時間が経過すると、乳化剤が角層表面を覆っている皮脂を乳化させ、その一部を粘着剤組成物中に吸収する。これにより、皮脂膜に隙間が形成される。この隙間からセラミドが角層へ浸入していき、粘着剤組成物の皮膚側表面のセラミド存在量が低下して、引きはがし粘着力の低下が抑制される。即ち、引きはがし粘着力を減少させる成分であるセラミドと乳化剤とのうち、セラミドのみが経時的に角層に吸収されて減少していく。これによって、貼付後数時間の最大粘着力の抑制と経時による引きはがし粘着力が低下しすぎることを防止することが可能となる。
【0026】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物には、皮脂吸収剤及び/又は皮脂分解剤を配合することができる。
皮脂吸収剤及び/又は皮脂分解剤を併用することにより、引きはがし粘着力を長時間に亘って好適な範囲に維持する効果を向上させることができる。これは、皮脂吸収剤及び/又は皮脂分解剤が、皮膚表面の皮脂を除去し、セラミドが粘着剤組成物から皮膚へ移動するのを容易にし、これにより粘着性が低下するのを抑えるためであると推測される。
皮脂吸収剤としては、セルロース、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウム、シクロデキストリン、カオリン、含硫ケイ酸アルミニウム、クオタニウム−18ヘクトライト、シリカ、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を例示することができる。皮脂分解剤としては、SB菌、酵母エキス等を例示することができる。
これらの皮脂吸収剤のうち、いくつかのものは、本発明において、吸水剤として使用した場合に、同時に皮脂吸収剤として働く。
【0027】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、貼付72時間後における引きはがし粘着力が貼付2時間後における引きはがし粘着力の40%以上であることが好ましい。
【0028】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、皮膚貼付後、2〜72時間の長時間に亘って、2〜4N/25mmの範囲に引きはがし粘着力を調整することができる。引きはがし粘着力がこの範囲内にあると、貼付部位から意図せず剥離することがなく、剥がす際も角層にダメージを少なくすることができる。
【0029】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、排泄物収容装具用面板に好適に使用することができる。
排泄物収容装具は、消化器系や泌尿器系器官の疾患のため外科的手術を行い腸管や尿管を体表まで導き体表面にストーマ等の排泄孔を造設した場合等において、これらの排泄孔から排泄される便、尿、体液等の排泄物を一時的に貯留するために、排泄孔に装着するものである。
【0030】
この排泄物収容装具は、一般的に収容器部(袋部)とこれを皮膚に取り付けるための排泄物収容装具用面板(以下、単に「面板」ということがある。)とから構成され、面板に設けられた粘着剤組成物層で体表面の排泄孔に固定される。排泄物収容装具は、使用期間中は、体表面に確実に固定されていることが必要である。
一方、これらの排泄物収容装具の使用に際して、排泄物がある程度収容器部内に溜まったら排泄物を捨て、洗浄した後再度使用するか、新しいものと付け替える。付け替えに際しては、面板と収容器部とを一体化したワンピース型のものは装具全体を、面板と収容器部とを粘着や嵌合により着脱可能にしたツーピース型のものは装具全体又は収容器部のみを廃棄し、全体又は収容器部のみを新しいものと付け替える。付け替えの頻度は、通常、ワンピース型の場合約1日、ツーピース型の場合2〜4日である。
この付け替えの際には、皮膚への刺激がないこと、皮膚外層の角層細胞が除去されて皮膚障害を起こす危険性がないこと等が必要である。
従って、排泄物収容装具を皮膚に貼付するための面板に用いられる粘着剤には、貼付期間中必要な引きはがし粘着力を保つことと、付け替えの為の剥離時には皮膚刺激性がないことが求められる。
【0031】
本発明の排泄物収容装具(以下、単に「収容装具」ということがある。)に使用した一例を図3に示す。
収容装具は、排泄物収容装具用面板1を有している。
面板1は、粘着機能でこれを人体皮膚上に固定するための粘着剤組成物層2と粘着剤組成物層2を支持するバッキング材3とからなり、収容装具と面板1とは、開口4を有し、粘着剤組成物層2は保管時にはセパレータ5に覆われ、粘着面を保護されている。面板1のバッキング材側には開口4の周りに収容器部としての袋部6が固定されている。この排泄部収容装具は、面板1の粘着剤組成物層2により、人体に造設された排泄孔の周りに固定され、排泄孔から排泄される便、尿、体液等の排泄物を袋部6内に収容する。
【0032】
面板1の粘着剤組成物層2は、本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物で構成される。
バッキング材3は、エチレン/酢酸ビニル共重合体製フィルム、メタクリル酸エチル製フィルム、ポリエチレン製フィルム、ポリプロピレン製フィルム、ポリビニルアルコール製フィルム、ポリエチレン製不織布、ポリプロピレン製不織布、エチレン/酢酸ビニル共重合体製不織布等から構成することができる。
【実施例】
【0033】
以下に参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、各例中の部及び%は特に断りのない限り、重量基準である。
なお、各特性は、以下の方法により評価した。
【0034】
[引きはがし粘着力]
試験品を25mm×100mmの大きさの長方形にカットしたものを試験片とし、被験者の腹部に体軸方向に沿って貼付する。所定時間経過後に、23℃、65%RHの室内で、被験者を仰臥位で引張試験機(インストロン5564)の前に寝かせ、試験片の短辺の片側にチャックをつけ、その端部を180度折り返した状態にし、ワイヤーの一端を試験片のチャックに取り付ける。そのワイヤーを引張試験機上で滑車を通して垂直方向に立ち上げ、もう一方の端部を引張試験機のロードセルに取り付けたチャックに挟む。試験片から引張試験機上の滑車までのワイヤーが水平、体軸と平行になるように被験者の位置、高さを調整する。引張試験機を用いて、試験片を折り返した方向に1,000mm/分の引張速度で剥離を行い、引きはがし粘着力(単位:N/25mm)を測定する。
【0035】
[72時間後保持率]
(貼付72時間後の引きはがし粘着力/貼付2時間後の引きはがし粘着力)×100(%)で示す。
【0036】
(実施例1)
ポリイソブチレン(分子量50,000、新日本石油化学社製、商品名「ハイモール5H」)90部及び粘着付与剤(脂環族飽和炭化水素樹脂、荒川化学工業社製、商品名「アルコンP−100」)10部からなる粘着剤100部、カラヤガム50部、ペクチン40部、ゼラチン40部及びシリカ(日本シリカ社製、商品名「ニプシールVN−3」)10部からなる吸水性材料140部、2型セラミド(花王社製、商品名「ソフケアセラミドSL−E」)0.1部並びに乳化剤としてのHLB4.7のソルビタン脂肪酸エステル(花王社製、商品名「レオドールSP−S10V」)0.1部を、加圧ニーダーで均一に混合して粘着剤組成物1を得た。粘着剤組成物1を圧延して厚さ1mmのシートを形成し、その片面にバッキング材としてポリエチレン製不織布を貼り合わせて、試験品を作製した。なお、バッキング材を貼付したのとは反対側の面には、剥離紙を貼り合わせた。
この試験品について、引きはがし粘着力を測定した。結果を表1及び図1に示す。
【0037】
(実施例2〜6、比較例1〜3)
粘着剤組成物の配合を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして、粘着剤組成物2〜6、C1〜C3を得た。これらの粘着剤組成物から試験片を作製した。この試験片について、実施例1と同様にして、引きはがし粘着力を測定した。結果を表1及び表2並びに図1及び図2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
表1及び表2並びに図1及び図2から、以下のことが分かる。
セラミド及び乳化剤のいずれをも配合しない場合(比較例1)は、72時間経過後も2Nの引きはがし粘着力が維持されているが、貼付2時間後の引きはがし粘着力が高く、24時間経過後でも4.5Nであり、短時間で剥離する場合には、粘着力が高すぎる。乳化剤を配合せず、セラミドだけを配合した場合(比較例2)は、初期引きはがし粘着力が高く、12時間後にようやく4Nを下回るが、その後、経時とともに急速に引きはがし粘着力が低下して、72時間経過後では2Nを下回ってしまう。従って、短時間での剥離では粘着力が高すぎ、他方、長時間貼付を続けると粘着力が低くなりすぎ好ましくない。
【0041】
乳化剤のみを配合してセラミドを全く配合しない場合(比較例3)は、初期の引きはがし粘着力は比較的低く抑えられるものの、72時間経過後の引きはがし粘着力が低すぎて、長時間貼付させることができないことが分かる。
【0042】
これらに対して、本発明の要件を満足する粘着剤組成物を使用した場合は、初期引きはがし粘着力が4Nか、それを僅かに下回る程度であり、しかも、72時間経過後においても2.5Nを超える引きはがし粘着力を示しており、長時間の貼付を継続しても貼付部位から脱落するようなことがなく、更に、剥離時の皮膚刺激が少ないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の実施例の皮膚貼付用粘着剤組成物の引きはがし粘着力の経時変化を示す図である。
【図2】図2は、本発明の比較例の皮膚貼付用粘着剤組成物の引きはがし粘着力の経時変化を示す図である。
【図3】図3(a)は、本発明の排泄物収容装具の一例の正面図である。 図3(b)は、本発明の排泄物収容装具の一例の縦断側面図である。 図3(c)は、本発明の排泄物収容装具用面板の一例の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 面板
2 粘着剤組成物層
3 バッキング材
4 開口
5 セパレータ
6 袋部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤、吸水剤、セラミド及び乳化剤を含有してなる皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項2】
吸水剤、セラミド及び乳化剤の量が粘着剤100重量部に対して、それぞれ、10〜160重量部、0.01〜3重量部及び0.03〜10重量部である請求項1に記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項3】
セラミドが2型、5型又は7型のセラミドである請求項1又は2に記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項4】
乳化剤が3〜7のHLBを有する非イオン性乳化剤である請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項5】
乳化剤がソルビタン脂肪酸エステルである請求項4に記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項6】
セラミドと乳化剤の合計含有量が粘着剤100重量部に対し、0.1〜10重量部である請求項1〜5のいずれかに記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項7】
貼付後2〜72時間において2〜4N/25mmの引きはがし粘着力値を有する請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項8】
貼付72時間後における引きはがし粘着力が貼付2時間後における引きはがし粘着力の40%以上である請求項1〜7のいずれかに記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−263042(P2006−263042A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83404(P2005−83404)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】