盛土の土留工法
【課題】安価で簡単な盛土の土留工法を提供する。
【解決手段】盛土地盤(16)の段差部近傍に盛土を含む粒状物を不透水性シートによって密封した粒状物密封体(6)を配設する。
【解決手段】盛土地盤(16)の段差部近傍に盛土を含む粒状物を不透水性シートによって密封した粒状物密封体(6)を配設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化防止のための地盤改良工法、築堤工事における漏水および流失防止工法、盛土の土留工法、及び地滑り防止のための地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した通り、本発明は液状化防止のための地盤改良工法、築堤工事における漏水・流失防止工法、盛土の土留工法、地滑り防止のための地盤改良工法の4つの目的が異なる工法に関する。ここでは、上記各工法の従来の技術についてそれぞれ説明する。
【0003】
最初に、液状化防止のための地盤改良工法について説明する。従来、液状化防止のためには(1) 地盤の強度増加を図る工法、(2) 過剰な間隙水圧を消散させる方法、(3) 地下水の水位を低下させる方法、(4) 構造物の設計によって構造物の地震時の変形を拘束する方法、等があった。
【0004】
(1) の地盤の強度増加を図る工法は、土そのものの強度を増加させる工法である。この工法にはサンドコンパクション等の締め固め工法、セメント系混合攪拌工法等がある。サンドコンパクションとは、地盤の土を締め固めるようにする工法をいう。サンドコンパクションによれば、図12(a)に示すように、改良前に間隙を多く含んだ土が、コンパクション後において土の粒子が密に並び、この結果粒子間の摩擦抵抗が増大し、液状化を防止することができる。
【0005】
セメント系混合攪拌工法とは、改良しようとする地盤の土にセメント等の結合剤を混ぜて固める工法をいう。このセメント系混合攪拌工法によれば、図12(b)に示すように、改良後において土の粒子間にセメントが入り込み、粒子間を結合し、これによって液状化を防止することができる。
【0006】
(2) の過剰な間隙水圧を消散させる方法は、液状化現象を引き起こす地下水の間隙水圧の過剰な上昇を、砕石ドレン管等のドレン管によって地盤外部に排出することにより間隙水圧を抑制する方法をいう。この方法を実現するには、図13に示すように、地盤の地下水位以下の深さに到達するようにドレン管を挿入し、ドレン管の内部に水のみを排出できるように砕石等のフィルター材を充填する。このような構造を設けることにより、地震等の強い衝撃があったときに、余剰の水分を素早く外部に排出することができる。この結果、間隙水圧が低く維持されるので、土の粒子の接触が失われず、液状化を防止することができる。
【0007】
(3) の地下水の水位を低下させる方法は、液状化が生じるのは地表より15m以内の浅い地盤であって、地下水が浸透している地盤で発生することに着目したものである。
【0008】
具体的には、図14に示すように、構造物の地下深くに管を挿入し、ポンプによって地下水を汲み上げ、地下水位を低く維持するのである。この方法により、構造物を支持する地盤が地下水によって浸透されないようになり、地震等の強い衝撃によっても構造物の支持地盤が液状化することを防止することができる。
【0009】
(4) の構造物の設計によって構造物の地震時の変形を拘束する方法とは、パイル等を液状化しない深層地盤に打ち込み、これらパイル等によって構造物を支えるようにしたもの等である。この工法によれば、浅層地盤で液状化が生じても構造物が傾斜、防止することができる。
【0010】
次に、従来の堤防の漏水防止または土砂の流失防止の方法について図15を用いて説明する。一般的に河川の堤防は土を盛り上げて形成する。この堤防の土は、水を通すことが可能であるため、徐々に水圧(浸透線の水圧)が低くなるものの、堤体の断面積が不足する場合は長い時間をかけて漏水が生じる。
【0011】
これに対し、従来では、浸透線の水圧が堤体の内部で河川外側の地下水の圧力と等しくなるように、堤体の断面積の増大を図っていた。堤体の断面積の増大は、図15に示すように、堤体に追加の層(図15において前小段、裏小段と示した部分)を設けることにより行われていた。この増大した堤体の断面積により、河川の水は、堤防の外部に漏れるのがなくなる。
【0012】
また、河川の水かさは、台風などの異常な気象により、予想を超えて上昇して堤防の上面を超えて流出することがある。このような場合は、堤防の上部の土が氾濫した水によって流失し、一部の決壊口が急速に大きくなって、大規模な堤防の決壊につながることがある。
【0013】
これに対して、従来では堤防上部の土の流失を防止すべく、土嚢を積み上げるようにしていた。これにより、堤防上部の土の流失を抑制することができ、ひいては大規模な堤防の決壊を防止するようにしていた。
【0014】
次に、従来の盛土の土留工法について説明する。図16に示すように、盛土は斜面の上に土を盛り上げられて形成される。この盛土の段差部では、安定のために法面を形成する。従来の盛土の法面は、コンクリートの保護壁や土留用パイル等の特別な土留工事を施す場合を除き、盛土の法面の傾斜を一定の法面傾斜角以下の緩い傾斜とし、さらに法面上に土砂の流失を防止するために植生を施していた。この法面の緩い傾斜と土砂の流失を防止する植生により、盛土の土留が実現される。
【0015】
次に、従来の地滑り防止のための地盤改良工法について説明する。従来の地滑り防止のための方法は、大きく排土と地表水処理によっていた。
【0016】
排土とは、地滑り斜面の荷重を減じ、滑動力を減殺するため、斜面の土塊の一部を切り取るか、地滑り斜面の滑動土塊を全て除去して斜面の安定を図る工法である。
【0017】
排土の量は、円弧滑りの場合は、図17に示すように、斜面の地滑り面上の土塊を分割し、各分割された土塊について下式に示す安定計算を行い、一定の安全率以上となるように決定する。
【数1】
【0018】
排土の位置は、地滑り斜面の頭部の切り取りが効果的である。適当な排土を行うことにより、地滑りの安全率が向上し、斜面が安定的になる。
【0019】
次に、もう一つの従来の地滑り防止のための地表水処理の方法について説明する。
【0020】
地滑り防止のための地表水処理の方法は、地滑りを誘発または助長する地表水を速やかに地滑り区域外に排出する方法である。図18に上記地表水排出のため地表排水路工の一例を示す。
【特許文献1】特開2002−088766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上記従来の液状化防止のための地盤改良工法、築堤工事における漏水・流失防止工法、盛土の土留工法、地滑り防止のための地盤改良工法は、それぞれ工事が大掛かりであり、したがって工事費も高騰せざるを得なかった。
【0022】
また、従来の地盤改良等では、元の地盤の土を良質な土やセメント等と入れ替えたりするため、元の地盤の土の廃棄、再利用等を考慮しなければならなかった。
【0023】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、安価で簡単な盛土の土留工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願発明による盛土の土留工法は、盛土地盤の段差部近傍に盛土を含む粒状物を不透水性シートによって密封した粒状物密封体を配設することを特徴とする。
【0025】
前記粒状物密封体は、盛土の段差部近傍に前記粒状物密封体の形状に凹部を形成し、前記凹部の底面に前記不透水性シートを敷き、前記凹部に盛土を盛った後に、前記不透水性シートを密閉してなるようにすることができる。
【0026】
前記粒状物密封体は、粒状物を内部に密封した複数の小密封体からなるようにすることができる。
【0027】
前記不透水性シートは、伸展性不透水性シート、あるいは非伸展性不透水性シートのいずれかからなるようにすることができる。
【0028】
前記粒状物密封体は、粒状物密封体の内外部を連通させ、内部にフィルター材を有するドレン管を有し、前記ドレン管は前記粒状物密封体の内部の間隙水圧が所定の値より大きくなったときに、前記粒状物密封体内部の水を排出するように配設されているようにすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本願発明による盛土の土留工法によれば、盛土の段差部に粒状物密封体が形成される。この粒状物密封体は、不透水性シートによって密封されているので、水による流動化や、土砂の流出を防止することができる。このため、盛土の段差部近傍に粒状物密封体を設けることにより、この粒状物密封体によって盛土の段差部の崩壊を防止でき、また、段差部の法面を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明による液状化防止のための地盤改良工法、築堤工事における漏水・流失防止工法、盛土の土留工法、および地滑防止のための地盤改良工法の実施の形態について添付の図面を用いて以下に説明する。
【0031】
最初に液状化防止のための地盤改良工法について説明する。図1に、地上構造物に対する液状化防止のための地盤改良工法を概念的に示す。
【0032】
図1の(a)部は、改良前の地盤を示している。図1において、符号1は地表、2は地下水位、3は液状化が生じる深さを示している。液状化が生じる深さ3は、液状化が生じる最深の深さをいい、地盤の土質によって変化するが、液状化を生じ易い土質の場合では約15mである。液状化現象は、地下水位2以下であって、液状化が生じる深さ3以上の地盤で生じることが知られている。
【0033】
ここで、上記「地下水位2以下」の“以下”とは地下水位2と等しいあるいはより深いの意味であり、上記「深さ3以上」の“以上”とは深さ3と等しいあるいはより浅いの意味である。この明細書で“以上”と“以下”は上記の使い方をする。
【0034】
本実施形態の液状化防止のための地盤改良工法では、好ましくは液状化現象が生じる地盤を全部掘削して、その掘削した孔4の内面に不透水性シート5を敷き、孔4に土を埋戻した後に、不透水性シート5を密閉して粒状物密封体6を形成する。上記工程は図1の(b),(c)部に示されている。粒状物密封体6は、埋戻し後に地下水などが進入しないように不透水性シート5で密閉する。
【0035】
掘削は、上記実施形態のように液状化が生じる範囲の土をすべて掘削するのが好ましいが、構造物の緩い設計条件により、液状化が生じる深さ3に達しない深さの孔を掘削し、粒状物密封体6を形成してもよい。
【0036】
上記不透水性シート5は、ゴムシート、ポリエチレンシートの他、耐腐食性を有する柔軟な任意の不透水性材料からなるシートである。さらに、粒状物密封体6を変形させて孔4に密着させたい場合は、伸展性を有する伸展性不透水性シートを用いる。反対に、地中において粒状物密封体6の形状を保持させたい場合は、伸展性を有しない非伸展性不透水性シートを用いる。
【0037】
不透水性シート5の密閉方法としては、接着剤による接着と、熱による熱溶着、圧力による圧着等がある。
【0038】
粒状物密封体6の内部を埋戻し土によって充足するのは、埋戻し土を利用できて工事上最も合理的であるためであるが、本願発明は埋戻し土によって粒状物密封体6を形成することに限られず、粒状物であって適度な内部摩擦あるいは粘着力があるものであればよい。
【0039】
上述したように粒状物密封体6を形成した後は、粒状物密封体6の上方に通常の土を埋め戻し(図1(d)部)、その上に地上構造物を建設することができる(図1(e)部)。
【0040】
なお、粒状物密封体6は、その大きさ、形状は図1の実施形態のものに限られない。図2に粒状物密封体6の変形例を示す。図2(a)の粒状物密封体6は、層状に形成した場合を示している。図2(b)の粒状物密封体6は、多数の土嚢状の小密封体を形成し、全体を一つに拘束したものである。これらの粒状物密封体6の変形例は、粒状物密封体6を予め所定の規格で製造して使用する場合に便利である。
【0041】
図1(e)部のように、地盤の液状化する部分の土を粒状物密封体6に置き換えることにより、液状化を防止することができる。
【0042】
液状化は、土の粒子の間に地下水などが入り込み、通常の状態では土の粒子同士の摩擦力によって堆積を維持しているが、地震などの強い衝撃によって間隙水圧が上昇して土の粒子同士の接触が失われ、水の内部に土の粒子が均等に分散し、それらの土の粒子再配列した場合に水が分離して地盤の体積が減少することによって生じる。このような発生のメカニズムにより、液状化は地下水位以下であって液状化が生じる深さ以上の地盤で生じる。
【0043】
本実施形態によれば、粒状物密封体6内部では埋戻し土が適当な含水量で含まれ、埋戻し後もそれ以上の地下水の進入はない。つまり、粒状物密封体6により地盤中に乾燥した(適度な含水量を有するという意である)土の塊を有し、上述した地下水位以下で液状化が発生するという条件を排除することができる。これにより、液状化が防止される。
【0044】
図3に本発明の第2の実施形態を示す。図3において図1と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本発明の第2実施形態による液状化防止のための地盤改良工法は、図1の第1実施形態の地盤改良工法で使用する粒状物密封体6に対して、漏れ対策を講じたものである。
【0046】
この第2実施形態による液状化防止のための地盤改良工法では、粒状物密封体6の内外部を連通させ、内部に砕石7を有するドレン管8を有している。このドレン管8は、下端が粒状物密封体6の底部に連通し、上端は地表1より所定の高さ突出し、逆流防止用の逆止弁9を有している。
【0047】
ドレン管8の内部は、砕石7に限られず、樹脂等からなる繊維状のフィルターの他、公知の任意のフィルター材を使用することができる。
【0048】
第2実施形態による液状化防止のための地盤改良工法によれば、粒状物密封体6の密封状態が不測の原因によって将来的に浸水した場合でも、液状化を防止することができる。
【0049】
粒状物密封体6は、不透水性シート5の破損、密閉接合部の剥離によって内部に水が浸入し飽和状態になることが考えられる。しかし、この第2実施形態の液状化防止のための地盤改良工法によれば、ドレン管8が挿通されているので、地震などの強い衝撃のみによって間隙水圧が上昇した時に、過剰な間隙水圧を速やかに外部に排出することができる。このように、間隙水圧の上昇が速やかに抑制されるので、土の粒子の摩擦が失われず、液状化を防止することができるのである。なお、ドレン管8のフィルター材により、泥水のうち水のみが排出される。
【0050】
なお、図3において、水を排出するようになる間隙水圧は、ドレン管8上端までの揚程にほぼ相当するが、この揚程の調整により、水を排出するようになる間隙水圧を調整することができる。
【0051】
次に、地下構造物を建設する場合の液状化防止のための地盤改良工法について説明する。図4に本発明の第3実施形態による地下構造物を建設する場合の液状化防止のための地盤改良工法を概念的に示す。図4において図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
図4(a)部は、改良前の地盤を示している。地下構造物を建設する場合は、図4(b)部に示すように、液状化が生じる深さ3以下の深さまで掘削する。この孔の周面にはシートパイル等の山留材10を設置する。
【0053】
この孔の底部の地下構造物の下部に相当する部分には、図1で説明したように、不透水性シート5を敷き、地下構造物の底面以下の深さまで埋戻し、不透水性シート5を密閉して粒状物密封体6を形成する(図4(b)部参照)。
【0054】
次に、図4(c)部に示すように、上記粒状物密封体6上に地下構造物11を建設する。
【0055】
地下構造物11が建設された後に、図4(d)部に示すように、地下構造物11の周囲であって、山留材10との間の空間に不透水性シート5を敷き詰め、埋戻しをする。埋戻しが完了した後は、不透水性シート5を上部で密閉して粒状物密封体6を形成する。
【0056】
最後に、山留材10を撤去すれば、図4(e)部に示すように、地下構造物11の周囲と下部に粒状物密封体6が設置された状態になる。
【0057】
図4(e)部に示すような構造を有する地下構造物は、第1実施形態で説明したように、周囲の地盤が粒状物密封体6によって水の進入を防止するので、地下水位が上昇した場合でも適度な含水量を有し、水の飽和状態になることがない。これにより、地震等の衝撃を受けても、土の接触が失われず、液状化することがない。この結果、地下構造物11を安定的に保持することができる。
【0058】
なお、上述した本発明の第3実施形態では、地下構造物11の底面が液状化が生じる深さ3より浅い場合について説明したが、地下構造物11の底面が液状化が生じる深さ3より深い場合には、地下構造物11下部の粒状物密封体6を省略することができる。地下構造物11の底面が液状化しない深層地盤によって支持されるからである。
【0059】
なお、この実施形態においても、粒状物密封体6を複数の小密封体とすること、粒状物密封体6内部に土に代わる粒状物を充填すること、不透水性シート5に伸展性不透水性シートあるいは非伸展性不透水性シートを使用すること、ドレン管を設けること、等は第1、第2実施形態と全く同様にすることができる。
【0060】
次に、本発明による築堤工事における漏水・流失防止工法について説明する。
【0061】
本発明の第4実施形態である築堤工事における漏水防止工法を図5に概念的に示す。図5において、図1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施形態の漏水防止工法は、堤体の浸透線に当たる部分に粒状物密封体を設けることものである。このため、本実施形態の漏水防止工法では、図5(a)部に示すように、築堤の盛土工程中に粒状物密封体6の形状に凹部12を形成し、その凹部12の内面に不透水性シート5を敷き、凹部6に土を入れた後に、不透水性シート5を密閉し、粒状物密封体6を形成する。
【0063】
粒状物密封体6を形成した後は、堤体13を予定の高さまで築き、水の進入を防止するために設けられていたシートパイル14を撤去する。これにより、図5(b)部に示すように、堤防の中心部の水の浸透線に当たる部分に粒状物密封体6が設けられることになる。
【0064】
上記堤体13中の粒状物密封体6は、水を通すことがないので、河川等から浸透した水は、粒状物密封体6によって遮られる。図5(b)部に水の浸透線の浸透圧を図示する。水の浸透圧は堤体13を通過することによって自然に低下するが、粒状物密封体6の後方では、粒状物密封体6の下端の水圧になる。その粒状物密封体6を過ぎた後は、再び低下して堤防外側の地下水と同一の水圧になってそれ以上の流出がなくなる。この水圧の低下と平衡により、堤防の漏水を防止することができる。
【0065】
なお、上記第4実施形態では、盛土工程中に粒状物密封体6の形状に凹部12を形成し、それに不透水性シート5を敷いて埋め戻すようにしていたが、この工程には変形例がある。この変形例では、最初に図5(b)の点線Xに示した高さまで盛土を行い、粒状物密封体6を形成した後に、残る土を盛るようにする。この場合、粒状物密封体6は堤防の上で形成してもよいし、工場や現場近くのプレハブ場で所定の形状に形成して堤防上に配設するようにしてもよい。この盛土工程における変形例は、本発明の他の実施形態についても共通して採用することができる。
【0066】
次に、本発明の第5実施形態である築堤工事における土砂等の流失防止工法について説明する。
【0067】
本発明の第5実施形態による築堤工事における土砂等の流失防止工法を図6に概念的に示す。図6において、図5と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
この第5実施形態による築堤工事における土砂等の流失防止工法は、上述した第4実施形態による漏水防止工法と、粒状物密封体6の設置位置のみ異なる。
【0069】
すなわち、第4実施形態による漏水防止工法が粒状物密封体6を浸透線上、すなわち堤体13の中心部に設けるのに対し、第5実施形態による築堤工事の土砂等の流失防止工法では、堤体13の上部に設置する。
【0070】
本工法では、図6(a)部に示すように、築堤工事の盛土工程で堤体の上部に凹部12を設け、その凹部12の内面に不透水性シート5を敷き、土を埋め戻す。土を埋め戻した後は、不透水性シート5を密閉する。これにより、図6(b)部に示すように堤体13の上部に粒状物密封体6が形成される。この粒状物密封体6は、土を内部に封入し、水の進入を防止するので、万一水が堤防の上端を超えた場合でも、その水の流れによって、土砂が流失し、堤防の決壊につながることを防止することができるのである。
【0071】
なお、上記第4,5実施形態においても、粒状物密封体6を複数の小密封体とすること、粒状物密封体6内部に土に代わる粒状物を充填すること、不透水性シート5に伸展性不透水性シートあるいは非伸展性不透水性シートを使用すること、等は第1ないし第3実施形態と全く同様にすることができる。
【0072】
また、上記第4,5実施形態において、粒状物密封体6は、堤防の構造に適した形状にすることができ、さらに、漏水防止用の粒状物密封体と土砂流失防止用の粒状物密封体とを組み合わせることもできる。図7に上記漏水防止用の粒状物密封体と土砂流失防止用の粒状物密封体とを組み合わせた例を示す。
【0073】
次に、本発明による盛土の土留工法について説明する。本発明による盛土の土留工法は、盛土地盤の段差部近傍に粒状物密封体を配設するものである。図8に本発明の第6実施形態である盛土の土留工法を概念的に示す。なお、図5においては、図1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
図5に示すように、この実施形態の盛土は、原地盤15上に盛土16を盛り上げたものである。この実施形態では、盛土16の最も大きな段差部に粒状物密封体6を設けている。
【0075】
このように、盛土16の段差部に粒状物密封体6を設けることにより、地下水位17が上昇した場合でも、粒状物密封体6の内部は水の進入を防止することができる。これにより、盛土段差部の土砂の流失による、崩壊、侵食等を防止することができる。
【0076】
なお、図8の例では、粒状物密封体6は断面台形としているので、最初に粒状物密封体6を形成した後に、その内側に盛土を盛るようにして工事を行う。
【0077】
また、この実施形態においても、粒状物密封体6を複数の小密封体とすること、粒状物密封体6内部に土に代わる粒状物を充填すること、不透水性シート5に伸展性不透水性シートあるいは非伸展性不透水性シートを使用すること、ドレン管を設けること、等は第1ないし第3実施形態と全く同様にすることができる。
【0078】
次に本発明による地滑防止のための地盤改良工法について説明する。本発明の第7実施形態である地滑防止のための地盤改良工法を図9に概念的に示す。
【0079】
この第7実施形態による地滑防止のための地盤改良工法は、地滑り斜面の安定計算上間隙水圧を排除して安定性を維持する深さ範囲内の土を粒状物密封体に置き換えるものである。
【0080】
図9において、斜面18に沿って地下水位19があるとする。この斜面の地滑り面は、円弧地滑り面20であるとする。
【0081】
この斜面の安定計算は、すでに説明したように、地滑り面上の土塊を図9に示すように細片に分割して、下式によってそれぞれの細片のせん断応力に対する垂直応力および内部摩擦角の比を計算し、その分子と分母の総計の比率で安定性の安全率を計算する。
【数2】
上式から分かるように、分子の垂直荷重は地下水等の間隙水圧によって減少するので、地下水が浸透する部分では、安定性が低下する。また、安定性の計算のほかにも、地表水は地滑りの誘因となることも知られている。
【0082】
これに対して、本実施形態の地滑防止のための地盤改良工法は、地下水が浸透する地盤を粒状物密封体6によって置換する。
【0083】
この粒状物密封体6は、上述した通り、地下水等の進入を防止することができる。したがって、粒状物密封体6の設置により、その粒状物密封体6に該当する細片の安定性の計算では、間隙水圧Uが0となる。これにより、斜面の安定性が向上し、地滑りの防止を計算設計することができる。また、地滑りの要因、誘因となる地表水が粒状物密封体6によって排除されるので、地滑りし難い地盤を得ることができる。
【0084】
次に、本発明の他の方法による地滑防止のための地盤改良工法について説明する。
【0085】
本発明の第8実施形態である地滑防止のための地盤改良工法を図10に概念的に示す。なお、図10において、図9と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
この第8実施形態では、上述した斜面の安定計算で地下水による間隙水圧の影響の排除に代えて、滑り面のせん断応力を減少させることにより地滑りの防止を図る。
【0087】
すなわち、図10に示すように、地滑り面20を階段状に掘削してその上に粒状物密封体6を形成する。このように、下面が階段状の粒状物密封体6が形成されることにより、地滑り斜面20上の土塊であって粒状物密封体6に相当する部分は、上記した安定計算の式の計算において、各細片における滑り面でのせん断応力Tは小さくなる。
【0088】
これにより、斜面の安定性が向上し、地滑りの防止を計算設計することができる。また、地滑りの要因、誘因となる地表水が粒状物密封体6によって排除され、地滑りの発生を防止することができる点は第7実施形態と同様である。
【0089】
なお、上記第7、第8実施形態においても、粒状物密封体6を複数の小密封体とすること、粒状物密封体6内部に土に代わる粒状物を充填すること、不透水性シート5に伸展性不透水性シートあるいは非伸展性不透水性シートを使用すること、ドレン管を設けること、等は第1ないし第3実施形態と全く同様にすることができる。
【0090】
最後に、傾斜した斜面上に盛土工事を行った場合の土留と地滑りの双方を防止するために、上述した盛土の土留工法と地滑防止のための地盤改良工法とを組み合わせた例を説明する。
【0091】
図11に上記盛土工事をした場合の地盤の断面を示す。この図において、図8と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
図11に示すように、このように土留と地滑り防止をする場合は、最初に盛土16の段差部に土留用の粒状物密封体6aを形成する。次に、好ましくは原地盤15の斜面を少し掘削して階段状に形成し、その上に地滑り防止用の粒状物密封体6bを形成する。粒状物密封体6bを形成した後は、その上に盛土を盛り、表面をひな壇上に造成する。これにより、上述した将来的に地下水位17が上昇しても、この地下水による法面の崩壊、地滑りを防止することができる。
【0093】
以上の説明から明らかなように、本発明の液状化防止のための地盤改良工法によれば、従来のセメント等を地盤に混ぜたり、サンドコンパクション等に比べて、埋戻し土を不透水性シートによって密封する等、工事簡単かつ安価であり、埋戻し土の処理に困ることもない。また、このようにして形成された粒状物密封体は、地下水の進入を防止することができるので、その内部は地下水によって飽和されることがない。これにより、地震等の強い衝撃を受けても、土の粒子が水分の中に拡散することによって生じる液状化現象を防止することができる。
【0094】
本発明の築堤工事における漏水・流失防止工法によれば、堤防の盛土の一部を不透水性シートによって密封することにより、堤防の上部または浸透線に当たる中心部分に粒状物密封体が形成される。この粒状物密封体は、不透水性シートによって密封されているので、水を通すこと、および内部の土砂が流出するのを防止することができる。本発明の工法によれば、従来の前小段、裏小段を設ける方法や土砂流失防止のために土嚢を積み上げる方法より、はるかに簡単に堤防の漏水や土砂の流失を防止することができる。
【0095】
本発明の盛土の土留工法によれば、盛土の一部に段差部に粒状物密封体が形成される。この土留用の粒状物密封体により、盛土の段差部の崩壊を防止でき、また、段差部の法面を保護することができる。
【0096】
本発明の地滑防止のための地盤改良工法によれば、地滑り面付近の地層を粒状物密封体によって置換し、この粒状物密封体によって水の浸透を防止し、斜面の安定性を向上させる。また、粒状物密封体の形状により、地滑り面のせん断応力を減少させ、より安定的な地盤を得ることができる。この工法は、特に斜面に盛土をする場合には、盛土の工程の中で簡単に粒状物密封体を形成することができるので、従来の地表水排出のための地表排路工に比べて簡単、廉価に地滑り防止の施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態による液状化防止のための地盤改良工法が概念的に示した図。
【図2】本発明の第1実施形態による液状化防止のための地盤改良工法の変形例を示した図。
【図3】本発明の第2実施形態による液状化防止のための地盤改良工法が概念的に示した図。
【図4】本発明の第3実施形態による地下構造物を建設する場合の液状化防止のための地盤改良工法を概念的に示した図。
【図5】本発明の第4実施形態による築堤工事における漏水防止工法を概念的に示した図。
【図6】本発明の第5実施形態による築堤工事における土砂等の流失防止工法を概念的に示した図。
【図7】本発明による築堤工事における漏水防止工法と土砂等の流失防止工法とを組み合わせた例を示した図。
【図8】本発明の第6実施形態による盛土の土留工法を概念的に示した図。
【図9】本発明の第7実施形態による地滑防止のための地盤改良工法を概念的に示した図。
【図10】本発明の第8実施形態による地滑防止のための地盤改良工法を概念的に示した図。
【図11】本発明の盛土の土留工法と地滑防止のための地盤改良工法とを組み合わせた例を示した図。
【図12】従来の液状化防止のための地盤の強度増加を図る工法を概念的に示した図。
【図13】従来の液状化防止のための過剰な間隙水圧を消散させる方法を概念的に示した図。
【図14】従来の液状化防止のための地下水の水位を低下させる方法を概念的に示した図。
【図15】従来の堤防の漏水防止または土砂の流失防止の方法を概念的に示した図。
【図16】従来の盛土の土留工法を概念的に示した図。
【図17】地滑り斜面の安定性計算を説明した説明図。
【図18】従来の地滑り防止のための地表水処理の方法を概念的に示した図。
【符号の説明】
【0098】
1 地表
2 地下水位
3 液状化が生じる深さ
4 孔
5 不透水性シート
6 粒状物密封体
7 砕石
8 ドレン管
9 逆止弁
10 山留材
11 地下構造物
12 凹部
13 堤体
14 シートパイル
15 原地盤
16 盛土
17 地下水位
18 斜面
19 地下水位
20 円弧地滑り面
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化防止のための地盤改良工法、築堤工事における漏水および流失防止工法、盛土の土留工法、及び地滑り防止のための地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した通り、本発明は液状化防止のための地盤改良工法、築堤工事における漏水・流失防止工法、盛土の土留工法、地滑り防止のための地盤改良工法の4つの目的が異なる工法に関する。ここでは、上記各工法の従来の技術についてそれぞれ説明する。
【0003】
最初に、液状化防止のための地盤改良工法について説明する。従来、液状化防止のためには(1) 地盤の強度増加を図る工法、(2) 過剰な間隙水圧を消散させる方法、(3) 地下水の水位を低下させる方法、(4) 構造物の設計によって構造物の地震時の変形を拘束する方法、等があった。
【0004】
(1) の地盤の強度増加を図る工法は、土そのものの強度を増加させる工法である。この工法にはサンドコンパクション等の締め固め工法、セメント系混合攪拌工法等がある。サンドコンパクションとは、地盤の土を締め固めるようにする工法をいう。サンドコンパクションによれば、図12(a)に示すように、改良前に間隙を多く含んだ土が、コンパクション後において土の粒子が密に並び、この結果粒子間の摩擦抵抗が増大し、液状化を防止することができる。
【0005】
セメント系混合攪拌工法とは、改良しようとする地盤の土にセメント等の結合剤を混ぜて固める工法をいう。このセメント系混合攪拌工法によれば、図12(b)に示すように、改良後において土の粒子間にセメントが入り込み、粒子間を結合し、これによって液状化を防止することができる。
【0006】
(2) の過剰な間隙水圧を消散させる方法は、液状化現象を引き起こす地下水の間隙水圧の過剰な上昇を、砕石ドレン管等のドレン管によって地盤外部に排出することにより間隙水圧を抑制する方法をいう。この方法を実現するには、図13に示すように、地盤の地下水位以下の深さに到達するようにドレン管を挿入し、ドレン管の内部に水のみを排出できるように砕石等のフィルター材を充填する。このような構造を設けることにより、地震等の強い衝撃があったときに、余剰の水分を素早く外部に排出することができる。この結果、間隙水圧が低く維持されるので、土の粒子の接触が失われず、液状化を防止することができる。
【0007】
(3) の地下水の水位を低下させる方法は、液状化が生じるのは地表より15m以内の浅い地盤であって、地下水が浸透している地盤で発生することに着目したものである。
【0008】
具体的には、図14に示すように、構造物の地下深くに管を挿入し、ポンプによって地下水を汲み上げ、地下水位を低く維持するのである。この方法により、構造物を支持する地盤が地下水によって浸透されないようになり、地震等の強い衝撃によっても構造物の支持地盤が液状化することを防止することができる。
【0009】
(4) の構造物の設計によって構造物の地震時の変形を拘束する方法とは、パイル等を液状化しない深層地盤に打ち込み、これらパイル等によって構造物を支えるようにしたもの等である。この工法によれば、浅層地盤で液状化が生じても構造物が傾斜、防止することができる。
【0010】
次に、従来の堤防の漏水防止または土砂の流失防止の方法について図15を用いて説明する。一般的に河川の堤防は土を盛り上げて形成する。この堤防の土は、水を通すことが可能であるため、徐々に水圧(浸透線の水圧)が低くなるものの、堤体の断面積が不足する場合は長い時間をかけて漏水が生じる。
【0011】
これに対し、従来では、浸透線の水圧が堤体の内部で河川外側の地下水の圧力と等しくなるように、堤体の断面積の増大を図っていた。堤体の断面積の増大は、図15に示すように、堤体に追加の層(図15において前小段、裏小段と示した部分)を設けることにより行われていた。この増大した堤体の断面積により、河川の水は、堤防の外部に漏れるのがなくなる。
【0012】
また、河川の水かさは、台風などの異常な気象により、予想を超えて上昇して堤防の上面を超えて流出することがある。このような場合は、堤防の上部の土が氾濫した水によって流失し、一部の決壊口が急速に大きくなって、大規模な堤防の決壊につながることがある。
【0013】
これに対して、従来では堤防上部の土の流失を防止すべく、土嚢を積み上げるようにしていた。これにより、堤防上部の土の流失を抑制することができ、ひいては大規模な堤防の決壊を防止するようにしていた。
【0014】
次に、従来の盛土の土留工法について説明する。図16に示すように、盛土は斜面の上に土を盛り上げられて形成される。この盛土の段差部では、安定のために法面を形成する。従来の盛土の法面は、コンクリートの保護壁や土留用パイル等の特別な土留工事を施す場合を除き、盛土の法面の傾斜を一定の法面傾斜角以下の緩い傾斜とし、さらに法面上に土砂の流失を防止するために植生を施していた。この法面の緩い傾斜と土砂の流失を防止する植生により、盛土の土留が実現される。
【0015】
次に、従来の地滑り防止のための地盤改良工法について説明する。従来の地滑り防止のための方法は、大きく排土と地表水処理によっていた。
【0016】
排土とは、地滑り斜面の荷重を減じ、滑動力を減殺するため、斜面の土塊の一部を切り取るか、地滑り斜面の滑動土塊を全て除去して斜面の安定を図る工法である。
【0017】
排土の量は、円弧滑りの場合は、図17に示すように、斜面の地滑り面上の土塊を分割し、各分割された土塊について下式に示す安定計算を行い、一定の安全率以上となるように決定する。
【数1】
【0018】
排土の位置は、地滑り斜面の頭部の切り取りが効果的である。適当な排土を行うことにより、地滑りの安全率が向上し、斜面が安定的になる。
【0019】
次に、もう一つの従来の地滑り防止のための地表水処理の方法について説明する。
【0020】
地滑り防止のための地表水処理の方法は、地滑りを誘発または助長する地表水を速やかに地滑り区域外に排出する方法である。図18に上記地表水排出のため地表排水路工の一例を示す。
【特許文献1】特開2002−088766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上記従来の液状化防止のための地盤改良工法、築堤工事における漏水・流失防止工法、盛土の土留工法、地滑り防止のための地盤改良工法は、それぞれ工事が大掛かりであり、したがって工事費も高騰せざるを得なかった。
【0022】
また、従来の地盤改良等では、元の地盤の土を良質な土やセメント等と入れ替えたりするため、元の地盤の土の廃棄、再利用等を考慮しなければならなかった。
【0023】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、安価で簡単な盛土の土留工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願発明による盛土の土留工法は、盛土地盤の段差部近傍に盛土を含む粒状物を不透水性シートによって密封した粒状物密封体を配設することを特徴とする。
【0025】
前記粒状物密封体は、盛土の段差部近傍に前記粒状物密封体の形状に凹部を形成し、前記凹部の底面に前記不透水性シートを敷き、前記凹部に盛土を盛った後に、前記不透水性シートを密閉してなるようにすることができる。
【0026】
前記粒状物密封体は、粒状物を内部に密封した複数の小密封体からなるようにすることができる。
【0027】
前記不透水性シートは、伸展性不透水性シート、あるいは非伸展性不透水性シートのいずれかからなるようにすることができる。
【0028】
前記粒状物密封体は、粒状物密封体の内外部を連通させ、内部にフィルター材を有するドレン管を有し、前記ドレン管は前記粒状物密封体の内部の間隙水圧が所定の値より大きくなったときに、前記粒状物密封体内部の水を排出するように配設されているようにすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本願発明による盛土の土留工法によれば、盛土の段差部に粒状物密封体が形成される。この粒状物密封体は、不透水性シートによって密封されているので、水による流動化や、土砂の流出を防止することができる。このため、盛土の段差部近傍に粒状物密封体を設けることにより、この粒状物密封体によって盛土の段差部の崩壊を防止でき、また、段差部の法面を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明による液状化防止のための地盤改良工法、築堤工事における漏水・流失防止工法、盛土の土留工法、および地滑防止のための地盤改良工法の実施の形態について添付の図面を用いて以下に説明する。
【0031】
最初に液状化防止のための地盤改良工法について説明する。図1に、地上構造物に対する液状化防止のための地盤改良工法を概念的に示す。
【0032】
図1の(a)部は、改良前の地盤を示している。図1において、符号1は地表、2は地下水位、3は液状化が生じる深さを示している。液状化が生じる深さ3は、液状化が生じる最深の深さをいい、地盤の土質によって変化するが、液状化を生じ易い土質の場合では約15mである。液状化現象は、地下水位2以下であって、液状化が生じる深さ3以上の地盤で生じることが知られている。
【0033】
ここで、上記「地下水位2以下」の“以下”とは地下水位2と等しいあるいはより深いの意味であり、上記「深さ3以上」の“以上”とは深さ3と等しいあるいはより浅いの意味である。この明細書で“以上”と“以下”は上記の使い方をする。
【0034】
本実施形態の液状化防止のための地盤改良工法では、好ましくは液状化現象が生じる地盤を全部掘削して、その掘削した孔4の内面に不透水性シート5を敷き、孔4に土を埋戻した後に、不透水性シート5を密閉して粒状物密封体6を形成する。上記工程は図1の(b),(c)部に示されている。粒状物密封体6は、埋戻し後に地下水などが進入しないように不透水性シート5で密閉する。
【0035】
掘削は、上記実施形態のように液状化が生じる範囲の土をすべて掘削するのが好ましいが、構造物の緩い設計条件により、液状化が生じる深さ3に達しない深さの孔を掘削し、粒状物密封体6を形成してもよい。
【0036】
上記不透水性シート5は、ゴムシート、ポリエチレンシートの他、耐腐食性を有する柔軟な任意の不透水性材料からなるシートである。さらに、粒状物密封体6を変形させて孔4に密着させたい場合は、伸展性を有する伸展性不透水性シートを用いる。反対に、地中において粒状物密封体6の形状を保持させたい場合は、伸展性を有しない非伸展性不透水性シートを用いる。
【0037】
不透水性シート5の密閉方法としては、接着剤による接着と、熱による熱溶着、圧力による圧着等がある。
【0038】
粒状物密封体6の内部を埋戻し土によって充足するのは、埋戻し土を利用できて工事上最も合理的であるためであるが、本願発明は埋戻し土によって粒状物密封体6を形成することに限られず、粒状物であって適度な内部摩擦あるいは粘着力があるものであればよい。
【0039】
上述したように粒状物密封体6を形成した後は、粒状物密封体6の上方に通常の土を埋め戻し(図1(d)部)、その上に地上構造物を建設することができる(図1(e)部)。
【0040】
なお、粒状物密封体6は、その大きさ、形状は図1の実施形態のものに限られない。図2に粒状物密封体6の変形例を示す。図2(a)の粒状物密封体6は、層状に形成した場合を示している。図2(b)の粒状物密封体6は、多数の土嚢状の小密封体を形成し、全体を一つに拘束したものである。これらの粒状物密封体6の変形例は、粒状物密封体6を予め所定の規格で製造して使用する場合に便利である。
【0041】
図1(e)部のように、地盤の液状化する部分の土を粒状物密封体6に置き換えることにより、液状化を防止することができる。
【0042】
液状化は、土の粒子の間に地下水などが入り込み、通常の状態では土の粒子同士の摩擦力によって堆積を維持しているが、地震などの強い衝撃によって間隙水圧が上昇して土の粒子同士の接触が失われ、水の内部に土の粒子が均等に分散し、それらの土の粒子再配列した場合に水が分離して地盤の体積が減少することによって生じる。このような発生のメカニズムにより、液状化は地下水位以下であって液状化が生じる深さ以上の地盤で生じる。
【0043】
本実施形態によれば、粒状物密封体6内部では埋戻し土が適当な含水量で含まれ、埋戻し後もそれ以上の地下水の進入はない。つまり、粒状物密封体6により地盤中に乾燥した(適度な含水量を有するという意である)土の塊を有し、上述した地下水位以下で液状化が発生するという条件を排除することができる。これにより、液状化が防止される。
【0044】
図3に本発明の第2の実施形態を示す。図3において図1と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本発明の第2実施形態による液状化防止のための地盤改良工法は、図1の第1実施形態の地盤改良工法で使用する粒状物密封体6に対して、漏れ対策を講じたものである。
【0046】
この第2実施形態による液状化防止のための地盤改良工法では、粒状物密封体6の内外部を連通させ、内部に砕石7を有するドレン管8を有している。このドレン管8は、下端が粒状物密封体6の底部に連通し、上端は地表1より所定の高さ突出し、逆流防止用の逆止弁9を有している。
【0047】
ドレン管8の内部は、砕石7に限られず、樹脂等からなる繊維状のフィルターの他、公知の任意のフィルター材を使用することができる。
【0048】
第2実施形態による液状化防止のための地盤改良工法によれば、粒状物密封体6の密封状態が不測の原因によって将来的に浸水した場合でも、液状化を防止することができる。
【0049】
粒状物密封体6は、不透水性シート5の破損、密閉接合部の剥離によって内部に水が浸入し飽和状態になることが考えられる。しかし、この第2実施形態の液状化防止のための地盤改良工法によれば、ドレン管8が挿通されているので、地震などの強い衝撃のみによって間隙水圧が上昇した時に、過剰な間隙水圧を速やかに外部に排出することができる。このように、間隙水圧の上昇が速やかに抑制されるので、土の粒子の摩擦が失われず、液状化を防止することができるのである。なお、ドレン管8のフィルター材により、泥水のうち水のみが排出される。
【0050】
なお、図3において、水を排出するようになる間隙水圧は、ドレン管8上端までの揚程にほぼ相当するが、この揚程の調整により、水を排出するようになる間隙水圧を調整することができる。
【0051】
次に、地下構造物を建設する場合の液状化防止のための地盤改良工法について説明する。図4に本発明の第3実施形態による地下構造物を建設する場合の液状化防止のための地盤改良工法を概念的に示す。図4において図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
図4(a)部は、改良前の地盤を示している。地下構造物を建設する場合は、図4(b)部に示すように、液状化が生じる深さ3以下の深さまで掘削する。この孔の周面にはシートパイル等の山留材10を設置する。
【0053】
この孔の底部の地下構造物の下部に相当する部分には、図1で説明したように、不透水性シート5を敷き、地下構造物の底面以下の深さまで埋戻し、不透水性シート5を密閉して粒状物密封体6を形成する(図4(b)部参照)。
【0054】
次に、図4(c)部に示すように、上記粒状物密封体6上に地下構造物11を建設する。
【0055】
地下構造物11が建設された後に、図4(d)部に示すように、地下構造物11の周囲であって、山留材10との間の空間に不透水性シート5を敷き詰め、埋戻しをする。埋戻しが完了した後は、不透水性シート5を上部で密閉して粒状物密封体6を形成する。
【0056】
最後に、山留材10を撤去すれば、図4(e)部に示すように、地下構造物11の周囲と下部に粒状物密封体6が設置された状態になる。
【0057】
図4(e)部に示すような構造を有する地下構造物は、第1実施形態で説明したように、周囲の地盤が粒状物密封体6によって水の進入を防止するので、地下水位が上昇した場合でも適度な含水量を有し、水の飽和状態になることがない。これにより、地震等の衝撃を受けても、土の接触が失われず、液状化することがない。この結果、地下構造物11を安定的に保持することができる。
【0058】
なお、上述した本発明の第3実施形態では、地下構造物11の底面が液状化が生じる深さ3より浅い場合について説明したが、地下構造物11の底面が液状化が生じる深さ3より深い場合には、地下構造物11下部の粒状物密封体6を省略することができる。地下構造物11の底面が液状化しない深層地盤によって支持されるからである。
【0059】
なお、この実施形態においても、粒状物密封体6を複数の小密封体とすること、粒状物密封体6内部に土に代わる粒状物を充填すること、不透水性シート5に伸展性不透水性シートあるいは非伸展性不透水性シートを使用すること、ドレン管を設けること、等は第1、第2実施形態と全く同様にすることができる。
【0060】
次に、本発明による築堤工事における漏水・流失防止工法について説明する。
【0061】
本発明の第4実施形態である築堤工事における漏水防止工法を図5に概念的に示す。図5において、図1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施形態の漏水防止工法は、堤体の浸透線に当たる部分に粒状物密封体を設けることものである。このため、本実施形態の漏水防止工法では、図5(a)部に示すように、築堤の盛土工程中に粒状物密封体6の形状に凹部12を形成し、その凹部12の内面に不透水性シート5を敷き、凹部6に土を入れた後に、不透水性シート5を密閉し、粒状物密封体6を形成する。
【0063】
粒状物密封体6を形成した後は、堤体13を予定の高さまで築き、水の進入を防止するために設けられていたシートパイル14を撤去する。これにより、図5(b)部に示すように、堤防の中心部の水の浸透線に当たる部分に粒状物密封体6が設けられることになる。
【0064】
上記堤体13中の粒状物密封体6は、水を通すことがないので、河川等から浸透した水は、粒状物密封体6によって遮られる。図5(b)部に水の浸透線の浸透圧を図示する。水の浸透圧は堤体13を通過することによって自然に低下するが、粒状物密封体6の後方では、粒状物密封体6の下端の水圧になる。その粒状物密封体6を過ぎた後は、再び低下して堤防外側の地下水と同一の水圧になってそれ以上の流出がなくなる。この水圧の低下と平衡により、堤防の漏水を防止することができる。
【0065】
なお、上記第4実施形態では、盛土工程中に粒状物密封体6の形状に凹部12を形成し、それに不透水性シート5を敷いて埋め戻すようにしていたが、この工程には変形例がある。この変形例では、最初に図5(b)の点線Xに示した高さまで盛土を行い、粒状物密封体6を形成した後に、残る土を盛るようにする。この場合、粒状物密封体6は堤防の上で形成してもよいし、工場や現場近くのプレハブ場で所定の形状に形成して堤防上に配設するようにしてもよい。この盛土工程における変形例は、本発明の他の実施形態についても共通して採用することができる。
【0066】
次に、本発明の第5実施形態である築堤工事における土砂等の流失防止工法について説明する。
【0067】
本発明の第5実施形態による築堤工事における土砂等の流失防止工法を図6に概念的に示す。図6において、図5と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
この第5実施形態による築堤工事における土砂等の流失防止工法は、上述した第4実施形態による漏水防止工法と、粒状物密封体6の設置位置のみ異なる。
【0069】
すなわち、第4実施形態による漏水防止工法が粒状物密封体6を浸透線上、すなわち堤体13の中心部に設けるのに対し、第5実施形態による築堤工事の土砂等の流失防止工法では、堤体13の上部に設置する。
【0070】
本工法では、図6(a)部に示すように、築堤工事の盛土工程で堤体の上部に凹部12を設け、その凹部12の内面に不透水性シート5を敷き、土を埋め戻す。土を埋め戻した後は、不透水性シート5を密閉する。これにより、図6(b)部に示すように堤体13の上部に粒状物密封体6が形成される。この粒状物密封体6は、土を内部に封入し、水の進入を防止するので、万一水が堤防の上端を超えた場合でも、その水の流れによって、土砂が流失し、堤防の決壊につながることを防止することができるのである。
【0071】
なお、上記第4,5実施形態においても、粒状物密封体6を複数の小密封体とすること、粒状物密封体6内部に土に代わる粒状物を充填すること、不透水性シート5に伸展性不透水性シートあるいは非伸展性不透水性シートを使用すること、等は第1ないし第3実施形態と全く同様にすることができる。
【0072】
また、上記第4,5実施形態において、粒状物密封体6は、堤防の構造に適した形状にすることができ、さらに、漏水防止用の粒状物密封体と土砂流失防止用の粒状物密封体とを組み合わせることもできる。図7に上記漏水防止用の粒状物密封体と土砂流失防止用の粒状物密封体とを組み合わせた例を示す。
【0073】
次に、本発明による盛土の土留工法について説明する。本発明による盛土の土留工法は、盛土地盤の段差部近傍に粒状物密封体を配設するものである。図8に本発明の第6実施形態である盛土の土留工法を概念的に示す。なお、図5においては、図1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
図5に示すように、この実施形態の盛土は、原地盤15上に盛土16を盛り上げたものである。この実施形態では、盛土16の最も大きな段差部に粒状物密封体6を設けている。
【0075】
このように、盛土16の段差部に粒状物密封体6を設けることにより、地下水位17が上昇した場合でも、粒状物密封体6の内部は水の進入を防止することができる。これにより、盛土段差部の土砂の流失による、崩壊、侵食等を防止することができる。
【0076】
なお、図8の例では、粒状物密封体6は断面台形としているので、最初に粒状物密封体6を形成した後に、その内側に盛土を盛るようにして工事を行う。
【0077】
また、この実施形態においても、粒状物密封体6を複数の小密封体とすること、粒状物密封体6内部に土に代わる粒状物を充填すること、不透水性シート5に伸展性不透水性シートあるいは非伸展性不透水性シートを使用すること、ドレン管を設けること、等は第1ないし第3実施形態と全く同様にすることができる。
【0078】
次に本発明による地滑防止のための地盤改良工法について説明する。本発明の第7実施形態である地滑防止のための地盤改良工法を図9に概念的に示す。
【0079】
この第7実施形態による地滑防止のための地盤改良工法は、地滑り斜面の安定計算上間隙水圧を排除して安定性を維持する深さ範囲内の土を粒状物密封体に置き換えるものである。
【0080】
図9において、斜面18に沿って地下水位19があるとする。この斜面の地滑り面は、円弧地滑り面20であるとする。
【0081】
この斜面の安定計算は、すでに説明したように、地滑り面上の土塊を図9に示すように細片に分割して、下式によってそれぞれの細片のせん断応力に対する垂直応力および内部摩擦角の比を計算し、その分子と分母の総計の比率で安定性の安全率を計算する。
【数2】
上式から分かるように、分子の垂直荷重は地下水等の間隙水圧によって減少するので、地下水が浸透する部分では、安定性が低下する。また、安定性の計算のほかにも、地表水は地滑りの誘因となることも知られている。
【0082】
これに対して、本実施形態の地滑防止のための地盤改良工法は、地下水が浸透する地盤を粒状物密封体6によって置換する。
【0083】
この粒状物密封体6は、上述した通り、地下水等の進入を防止することができる。したがって、粒状物密封体6の設置により、その粒状物密封体6に該当する細片の安定性の計算では、間隙水圧Uが0となる。これにより、斜面の安定性が向上し、地滑りの防止を計算設計することができる。また、地滑りの要因、誘因となる地表水が粒状物密封体6によって排除されるので、地滑りし難い地盤を得ることができる。
【0084】
次に、本発明の他の方法による地滑防止のための地盤改良工法について説明する。
【0085】
本発明の第8実施形態である地滑防止のための地盤改良工法を図10に概念的に示す。なお、図10において、図9と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
この第8実施形態では、上述した斜面の安定計算で地下水による間隙水圧の影響の排除に代えて、滑り面のせん断応力を減少させることにより地滑りの防止を図る。
【0087】
すなわち、図10に示すように、地滑り面20を階段状に掘削してその上に粒状物密封体6を形成する。このように、下面が階段状の粒状物密封体6が形成されることにより、地滑り斜面20上の土塊であって粒状物密封体6に相当する部分は、上記した安定計算の式の計算において、各細片における滑り面でのせん断応力Tは小さくなる。
【0088】
これにより、斜面の安定性が向上し、地滑りの防止を計算設計することができる。また、地滑りの要因、誘因となる地表水が粒状物密封体6によって排除され、地滑りの発生を防止することができる点は第7実施形態と同様である。
【0089】
なお、上記第7、第8実施形態においても、粒状物密封体6を複数の小密封体とすること、粒状物密封体6内部に土に代わる粒状物を充填すること、不透水性シート5に伸展性不透水性シートあるいは非伸展性不透水性シートを使用すること、ドレン管を設けること、等は第1ないし第3実施形態と全く同様にすることができる。
【0090】
最後に、傾斜した斜面上に盛土工事を行った場合の土留と地滑りの双方を防止するために、上述した盛土の土留工法と地滑防止のための地盤改良工法とを組み合わせた例を説明する。
【0091】
図11に上記盛土工事をした場合の地盤の断面を示す。この図において、図8と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
図11に示すように、このように土留と地滑り防止をする場合は、最初に盛土16の段差部に土留用の粒状物密封体6aを形成する。次に、好ましくは原地盤15の斜面を少し掘削して階段状に形成し、その上に地滑り防止用の粒状物密封体6bを形成する。粒状物密封体6bを形成した後は、その上に盛土を盛り、表面をひな壇上に造成する。これにより、上述した将来的に地下水位17が上昇しても、この地下水による法面の崩壊、地滑りを防止することができる。
【0093】
以上の説明から明らかなように、本発明の液状化防止のための地盤改良工法によれば、従来のセメント等を地盤に混ぜたり、サンドコンパクション等に比べて、埋戻し土を不透水性シートによって密封する等、工事簡単かつ安価であり、埋戻し土の処理に困ることもない。また、このようにして形成された粒状物密封体は、地下水の進入を防止することができるので、その内部は地下水によって飽和されることがない。これにより、地震等の強い衝撃を受けても、土の粒子が水分の中に拡散することによって生じる液状化現象を防止することができる。
【0094】
本発明の築堤工事における漏水・流失防止工法によれば、堤防の盛土の一部を不透水性シートによって密封することにより、堤防の上部または浸透線に当たる中心部分に粒状物密封体が形成される。この粒状物密封体は、不透水性シートによって密封されているので、水を通すこと、および内部の土砂が流出するのを防止することができる。本発明の工法によれば、従来の前小段、裏小段を設ける方法や土砂流失防止のために土嚢を積み上げる方法より、はるかに簡単に堤防の漏水や土砂の流失を防止することができる。
【0095】
本発明の盛土の土留工法によれば、盛土の一部に段差部に粒状物密封体が形成される。この土留用の粒状物密封体により、盛土の段差部の崩壊を防止でき、また、段差部の法面を保護することができる。
【0096】
本発明の地滑防止のための地盤改良工法によれば、地滑り面付近の地層を粒状物密封体によって置換し、この粒状物密封体によって水の浸透を防止し、斜面の安定性を向上させる。また、粒状物密封体の形状により、地滑り面のせん断応力を減少させ、より安定的な地盤を得ることができる。この工法は、特に斜面に盛土をする場合には、盛土の工程の中で簡単に粒状物密封体を形成することができるので、従来の地表水排出のための地表排路工に比べて簡単、廉価に地滑り防止の施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態による液状化防止のための地盤改良工法が概念的に示した図。
【図2】本発明の第1実施形態による液状化防止のための地盤改良工法の変形例を示した図。
【図3】本発明の第2実施形態による液状化防止のための地盤改良工法が概念的に示した図。
【図4】本発明の第3実施形態による地下構造物を建設する場合の液状化防止のための地盤改良工法を概念的に示した図。
【図5】本発明の第4実施形態による築堤工事における漏水防止工法を概念的に示した図。
【図6】本発明の第5実施形態による築堤工事における土砂等の流失防止工法を概念的に示した図。
【図7】本発明による築堤工事における漏水防止工法と土砂等の流失防止工法とを組み合わせた例を示した図。
【図8】本発明の第6実施形態による盛土の土留工法を概念的に示した図。
【図9】本発明の第7実施形態による地滑防止のための地盤改良工法を概念的に示した図。
【図10】本発明の第8実施形態による地滑防止のための地盤改良工法を概念的に示した図。
【図11】本発明の盛土の土留工法と地滑防止のための地盤改良工法とを組み合わせた例を示した図。
【図12】従来の液状化防止のための地盤の強度増加を図る工法を概念的に示した図。
【図13】従来の液状化防止のための過剰な間隙水圧を消散させる方法を概念的に示した図。
【図14】従来の液状化防止のための地下水の水位を低下させる方法を概念的に示した図。
【図15】従来の堤防の漏水防止または土砂の流失防止の方法を概念的に示した図。
【図16】従来の盛土の土留工法を概念的に示した図。
【図17】地滑り斜面の安定性計算を説明した説明図。
【図18】従来の地滑り防止のための地表水処理の方法を概念的に示した図。
【符号の説明】
【0098】
1 地表
2 地下水位
3 液状化が生じる深さ
4 孔
5 不透水性シート
6 粒状物密封体
7 砕石
8 ドレン管
9 逆止弁
10 山留材
11 地下構造物
12 凹部
13 堤体
14 シートパイル
15 原地盤
16 盛土
17 地下水位
18 斜面
19 地下水位
20 円弧地滑り面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛土地盤の段差部近傍に盛土を含む粒状物を不透水性シートによって密封した粒状物密封体を配設することを特徴とする盛土の土留工法。
【請求項2】
前記粒状物密封体は、盛土の段差部近傍に前記粒状物密封体の形状に凹部を形成し、前記凹部の底面に前記不透水性シートを敷き、前記凹部に盛土を盛った後に、前記不透水性シートを密閉してなることを特徴とする請求項1に記載の盛土の土留工法。
【請求項3】
前記粒状物密封体は、粒状物を内部に密封した複数の小密封体からなることを特徴とする請求項1に記載の盛土の土留工法。
【請求項4】
前記不透水性シートは、伸展性不透水性シート、あるいは非伸展性不透水性シートのいずれかからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の盛土の土留工法。
【請求項5】
前記粒状物密封体は、粒状物密封体の内外部を連通させ、内部にフィルター材を有するドレン管を有し、前記ドレン管は前記粒状物密封体の内部の間隙水圧が所定の値より大きくなったときに、前記粒状物密封体内部の水を排出するように配設されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の盛土の土留工法。
【請求項1】
盛土地盤の段差部近傍に盛土を含む粒状物を不透水性シートによって密封した粒状物密封体を配設することを特徴とする盛土の土留工法。
【請求項2】
前記粒状物密封体は、盛土の段差部近傍に前記粒状物密封体の形状に凹部を形成し、前記凹部の底面に前記不透水性シートを敷き、前記凹部に盛土を盛った後に、前記不透水性シートを密閉してなることを特徴とする請求項1に記載の盛土の土留工法。
【請求項3】
前記粒状物密封体は、粒状物を内部に密封した複数の小密封体からなることを特徴とする請求項1に記載の盛土の土留工法。
【請求項4】
前記不透水性シートは、伸展性不透水性シート、あるいは非伸展性不透水性シートのいずれかからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の盛土の土留工法。
【請求項5】
前記粒状物密封体は、粒状物密封体の内外部を連通させ、内部にフィルター材を有するドレン管を有し、前記ドレン管は前記粒状物密封体の内部の間隙水圧が所定の値より大きくなったときに、前記粒状物密封体内部の水を排出するように配設されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の盛土の土留工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−2662(P2007−2662A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230990(P2006−230990)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【分割の表示】特願平9−355470の分割
【原出願日】平成9年12月24日(1997.12.24)
【出願人】(591028108)安藤建設株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【分割の表示】特願平9−355470の分割
【原出願日】平成9年12月24日(1997.12.24)
【出願人】(591028108)安藤建設株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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