説明

監視装置および監視プログラム

【課題】段積みされる各箱について積載荷重の超過による変形が生じたり、吸湿による強度劣化で変形したりすることを防止する監視装置を実現する。
【解決手段】ステップSA2では、荷姿を撮像した画像データに画像認識を施して各箱の画像領域に箱IDを付与すると共に、それらの初期位置を取得する。ステップSA3では、積載数テーブルから箱ID毎の箱タイプに対応する最大積載数Maxを読み出し、さらに湿度変化テーブルに基づき現在の湿度データに応じて、読み出した各箱ID毎の最大積載数Maxを許容段数に変換し、この許容段数を超える過積載状態の箱IDが存在すると警報報知する。ステップSA4では、各箱ID毎の位置情報を取得して初期位置との差分から各箱IDの変形量を算出し、吸湿による強度劣化で規定値以上変形した箱IDが存在すると警報報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器等の製品を収納した箱を積み重ねて倉庫保管する場合に、積載荷重の超過による箱変形や吸湿による強度劣化で招致される箱変形を防止して保管製品の品質を確保する監視装置および監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像した画像に基づき状態認識する技術が各種実用化されている。例えば特許文献1には、基本情報として入力された箱状物体の寸法情報と基本積み付けパターン情報とに基づいて生成した3次元の荷姿を撮像条件に従って透視変換して得た認識モデルを予め記憶しておき、撮像装置によりパレット上の荷姿が撮像されると、その撮像画像と予め記憶される認識モデルとを積み荷の段毎に照合して箱の積み重ね状態を認識する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−293029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示の装置では、パレット上の荷姿から箱の積み重ね状態を認識することが可能になるが、段積みされる各箱について積載荷重の超過による変形(いわゆる胴ぶくれ変形)が生じたり、吸湿による強度劣化で変形したりすることを防止することが出来ないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、段積みされる各箱について積載荷重の超過による変形が生じたり、吸湿による強度劣化で変形したりすることを防止することができる監視装置および監視プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、荷姿を撮像した画像データから段積みされた各箱を認識してそれらの位置を取得する取得手段と、前記取得手段により認識された各箱の属性を入力する入力手段と、湿度を検出する湿度検出手段と、前記入力手段により入力された属性で定まる各箱の積み重ね可能な最大積載数を、前記湿度検出手段により検出される湿度に対応した許容段数に変換する変換手段と、前記取得手段により認識された各箱の内、前記変換手段により変換された許容段数を超えて積み重ねられた過積載状態の箱が存在する場合に警報報知する第1の報知手段と、前記取得手段により認識された各箱の初期位置と所定期間経過後の位置との差分から得られる各箱の変形量の内、吸湿による強度劣化で規定値以上変形した箱が存在する場合に警報報知する第2の報知手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
上記請求項1に従属する請求項2に記載の発明では、前記変換手段は、前記入力手段により入力された各箱の属性にそれぞれ対応する最大積載数を発生する積載数発生手段と、前記湿度検出手段により検出される湿度に応じて、前記積載数発生手段が発生する最大積載数を吸湿による強度劣化を加味した許容段数に変更する変更手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
上記請求項1に従属する請求項3に記載の発明では、前記取得手段により認識された各箱の保管期間に応じて、対応する箱の許容段数を補正する補正手段を更に備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、荷姿を撮像した画像データから段積みされた各箱を認識してそれらの位置を取得する取得ステップと、前記取得ステップにて認識された各箱の属性を入力する入力ステップと、湿度を検出する湿度検出ステップと、前記入力ステップにて入力された属性で定まる各箱の積み重ね可能な最大積載数を、前記湿度検出ステップで検出された湿度に対応した許容段数に変換する変換ステップと、前記取得ステップにて認識された各箱の内、前記変換ステップにより変換された許容段数を超えて積み重ねられた過積載状態の箱が存在する場合に警報報知する第1の報知ステップと、前記取得ステップにて認識された各箱の初期位置と所定期間経過後の位置との差分から得られる各箱の変形量の内、吸湿による強度劣化で規定値以上変形した箱が存在する場合に警報報知する第2の報知ステップとをコンピュータで実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、段積みされる各箱について積載荷重の超過による変形が生じたり、吸湿による強度劣化で変形したりすることを防止することができる。また、積載荷重の超過による変形や吸湿による強度劣化で招致される変形を防止する為、保管製品の品質を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】ROM11の記憶エリアの構成を示すメモリマップである。
【図3】ROM11に記憶される積載数テーブルTBL1の一例を示す図である。
【図4】ROM11に記憶される湿度変化テーブルTBL2の一例を示す図である。
【図5】RAM12の記憶エリアの構成を示すメモリマップである。
【図6】RAM12に設けられる箱データエリアBEのデータ構造の一例を示す図である。
【図7】箱IDと初期位置の関係について説明する為の図である。
【図8】メインルーチンの動作を示すフローチャートである。
【図9】位置情報取得処理の動作を示すフローチャートである。
【図10】積載段数判定処理の動作を示すフローチャートである。
【図11】箱変形判定処理の動作を示すフローチャートである。
【図12】出力処理の動作を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態のROM11に記憶される経時変化テーブルTBL3の一例を示す図である。
【図14】第2実施形態のRAM12に設けられる箱データエリアBEのデータ構造の一例を示す図である。
【図15】第2実施形態による積載段数判定処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[第1実施形態]
A.構成
図1は、本発明の第1実施形態による監視装置100の全体構成を示すブロック図である。この図において、CPU10は、後述するメインルーチンを実行して装置各部を制御するものであり、本発明の要旨に係わる特徴的な処理の動作については追って詳述する。
【0013】
ROM11は、図2に図示するように、プログラムエリアPE、積載数テーブルTBL1および湿度変化テーブルTBL2を備える。プログラムエリアPEには、CPU10が実行する後述のメインルーチン、位置情報取得処理、積載段数判定処理、箱変形判定処理および出力処理のプログラムを含む各種プログラムデータが記憶される。
【0014】
ROM11に記憶される積載数テーブルTBL1は、箱タイプを読み出しアドレスとして積み重ね可能な最大積載数Maxを出力するテーブルデータである。箱タイプとは、予め定められる箱の属性(大きさ(寸法)、材質および強度)を表す記号である。例えば図3に図示する一例の積載数テーブルTBL1では、箱タイプTP1を指定した場合に最大積載数Maxとして「10」が出力される。これは、箱タイプTP1の属性(大きさ(寸法)、材質および強度)を有する箱ならば最大10段分積み重ねられることを意味する。
【0015】
ROM11に記憶される湿度変化テーブルTBL2は、上述の積載数テーブルTBL1から読み出される最大積載数Maxを、吸湿による強度劣化を加味した許容段数LNに変換する。具体的には、温度・湿度検出部15(後述する)により検出される湿度データを読み出しアドレスとして、箱タイプに対応した湿度変化特性で決まる許容段数LNを読み出す。例えば図4に図示する一例の湿度変化テーブルTBL2において、箱タイプTP1の湿度変化特性は湿度50%までは最大積載数Maxと許容段数LNとが一致するが、湿度50%を超えると湿度増加に連れて吸湿による強度劣化が顕著になる為に許容段数LNが低下するようになっている。
【0016】
RAM12は、図5に図示するように、ワークエリアWE、画像エリアIE、温度・湿度データエリアTEおよび箱データエリアBEを備える。ワークエリアWEには、CPU10の処理に用いる各種レジスタ/フラグデータが一時記憶される。なお、ワークエリアWEが備える各種レジスタの中には時刻計時用のレジスタが設けられており、このレジスタの値を用いてカレンダ機能や期間計時機能を具現するようになっている。画像エリアIEには、CPU10の制御の下に、後述する撮像部14によって撮像される荷姿の画像データが一時記憶される。温度・湿度データエリアTEには、CPU10の制御の下に、後述する温度・湿度検出部15によって検出される温度データおよび湿度データが一時記憶される。
【0017】
箱データエリアBEには、箱IDに対応する「箱タイプ」、「初期位置」、「変形量ΔD」、「現在積載数」、「最大積載数Max」および「許容段数LN」が登録される。箱IDとは、撮像部14によって撮像される荷姿の画像データから画像認識により得られる各箱の画像領域に付与されて各箱を識別する識別子である。「箱タイプ」は、ユーザ操作に応じて入力される記号であり、箱IDに対応する箱の属性(大きさ(寸法)、材質および強度)を表す。「初期位置」とは、箱IDが付与された箱の位置情報である。
【0018】
ここで、図7を参照して箱IDと初期位置の関係について説明する。図7(a)に図示するように、パレットP上に箱が1つだけ載置されている場合には、撮像した画像データから箱の輪郭を抽出する画像認識を施して得られた箱の画像領域にB(1,1)の箱IDを付与すると共に、その箱の画像領域の上縁の位置を取得して「初期位置」として箱データエリアBEに登録する。なお、箱IDのB(1,1)とは、パレットP上の1段1列目の箱に相当する画像領域であることを表す。
【0019】
図7(a)に図示した荷姿(積荷状態)から図7(b)に図示する荷姿になった場合には、1段2列目のB(1,2)および2段1列目のB(2,1)の箱IDが付与されると共に、B(1,2)とB(2,1)との「初期位置」が取得されて箱データエリアBEに登録される。さらに、同図(c)の荷姿では2段2列目のB(2,2)、3段1列目および3段2列目のB(3,1)〜B(3,2)の箱IDが付与され、それらの「初期位置」が箱データエリアBEに登録される。以後、同様にして同図(d)に図示するように、新たに段積みされた時の撮像画像から抽出される新たな箱に箱IDを付与して「初期位置」を箱データエリアBEに登録する。
【0020】
箱データエリアBEの「変形量ΔD」は、積載荷重に応じた箱の変形を表す値であり、「初期位置」を取得してから所定期間経過した時点で検出される位置情報と「初期位置」との差分から算出される。「現在積載数」は、箱IDで指定される箱の上に何段積み重ねられているかを計数した値である。「最大積載数Max」は、上記「箱タイプ」に応じて積載数テーブルTBL1(図3参照)から読み出される。「許容段数LN」は、「箱タイプ」で定まる「最大積載数Max」と温度・湿度データエリアTEに格納される湿度データとに応じて湿度変化テーブルTBL2から読み出される。
【0021】
操作入力部13は、図示せぬコンソールパネル上に配設される各種スイッチや操作キーから構成され、入力操作に対応したイベントを発生する。このイベントはCPU10のキースキャンにより取込まれる。撮像部14は、CPU10の制御の下に、パレットP上に段積みされる各箱の高さを判定できる方向(正面又は側面方向)から荷姿を撮像した画像データを発生する。撮像部14が発生する画像データは、RAM12の画像エリアIEにストアされる。温度・湿度検出部15は、CPU10の制御の下に、パレットP上に段積みされる各箱近傍の温度および湿度を検出して温度データおよび湿度データを発生する。この温度データおよび湿度データは、RAM12の温度・湿度データエリアTEにストアされる。
【0022】
アラーム発生部16は、CPU10の指示に従って警報音を報知出力する。具体的には、許容段数LNを超えた過積載の箱が存在する場合や、吸湿による強度劣化で規定値を超えて変形した箱が存在する場合に警報音を報知出力する。表示部17は、例えばLCDパネル(図示略)と、CPU10から供給される表示制御信号に応じてLCDパネルを表示駆動する表示ドライバ(図示略)とから構成され、操作入力部13の操作に応じて設定される入力状態や装置動作状態などを画面表示する。
【0023】
B.動作
次に、図8〜図12を参照して上記構成による監視装置100の動作を説明する。なお、図8はCPU10が実行するメインルーチンの動作を示すフローチャート、図9はメインルーチンからコールされる位置情報取得処理の動作を示すフローチャート、図10はメインルーチンからコールされる積載段数判定処理の動作を示すフローチャート、図11はメインルーチンからコールされる箱変形判定処理の動作を示すフローチャートおよび図12はメインルーチンからコールされる出力処理の動作を示すフローチャートである。
【0024】
(1)メインルーチンの動作
装置電源がパワーオンされると、CPU10は図8に示すメインルーチンを実行してステップSA1に処理を進め、RAM12のワークエリアWEに格納される各種レジスタやフラグ類をリセットしたり初期値をセットしたりするイニシャライズを行う。イニシャライズが完了すると、CPU10はステップSA2に進み、位置情報取得処理を実行する。位置情報取得処理では、後述するように、撮像部14により撮像された荷姿の画像データから積み重ねられた各箱の輪郭を抽出する画像認識を施し、これにて得られた各箱の画像領域に箱IDを付与すると共に、各箱の画像領域の上縁の位置を表す位置情報(初期位置)を取得し、取得した初期位置を箱IDに対応付けてRAM12の箱データエリアBEに登録する。
【0025】
続いて、ステップSA3では、積載段数判定処理を実行する。この処理では、後述するように、ユーザ操作で箱ID毎の箱タイプを入力してRAM12の箱データエリアBEに登録すると、積載数テーブルTBL1を参照して箱タイプに対応する最大積載数Maxを箱ID毎に読み出して箱データエリアBEに登録した後、湿度変化テーブルTBL2を参照し、温度データに応じて各箱ID毎の最大積載数Maxを許容段数LNに変換して箱データエリアBEに登録する。そして、各箱ID毎に現在積載数(自己に積載される箱の数)を計数した後、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDが存在するか否か、つまり過積載の箱が存在するかどうかを判断し、該当する箱IDが存在すると、警報報知設定(フラグALM1に「1」をセットすると共に、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDをレジスタALM1(BID)にストア)を行う。
【0026】
次に、ステップSA4では、箱変形判定処理を実行する。この処理では、後述するように、前回箱変形判定を行ってから所定期間が経過していれば、撮像部14により撮像された荷姿の画像データから箱の輪郭を抽出する画像認識を施して各箱IDの位置情報を取得した後、RAM12の箱データエリアBE(図6参照)に登録された初期位置との差分から各箱ID毎の変形量ΔDを算出し、これら算出した変形量ΔDの中で吸湿による強度劣化によって規定値以上に変形した箱IDが存在すると、警報報知設定(フラグALM2に「1」をセットすると共に、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDをレジスタALM2(BID)にストア)を行う。
【0027】
次いで、ステップSA5では、出力処理を実行する。出力処理では、積載段数判定処理(図10参照)によって許容段数LNを超えた過積載の箱が存在する状況であると判定された場合には、アラーム発生部16から警報音を報知出力させる一方、許容段数LNを超えた過積載の箱を表示部17に画面表示してユーザに報知し、箱変形判定処理(図11参照)によって吸湿による強度劣化で規定値以上に変形した箱が存在する状況であると判定された場合には、アラーム発生部16から警報音を報知出力させる一方、変形量が規定値を超えた箱を表示部17に画面表示してユーザに報知する。以後、装置電源がオフされる迄、上述したステップSA2〜SA5を繰り返し実行する。
【0028】
(2)位置情報取得処理の動作
次に、図9を参照して位置情報取得処理の動作について説明する。上述したメインルーチンのステップSA2(図8参照)を介して本処理が実行されると、CPU10は図9に図示するステップSB1に進み、撮像部14に撮像開始を指示すると共に、その指示に応じて撮像部14から撮像出力される画像データをRAM12の画像エリアIEにストアする。続いて、ステップSB2では、画像エリアIEにストアされた画像データに対して各箱の輪郭を抽出する画像認識を施し、これにて得られた各箱の画像領域に箱IDを付与すると共に、各箱の画像領域の上縁の位置を表す位置情報(初期位置)を取得する。
【0029】
次いで、ステップSB3では、全ての箱の位置情報を取得し終えたか否かを判断する。例えば画像認識ミスが生じて輪郭を適正に抽出し得なかった箱が存在する場合には、判断結果は「NO」になり、上述のステップSB1に処理を戻し、再度撮像画像を取り込んで各箱の画像領域に箱IDを付与すると共に、各箱の画像領域の上縁の位置を表す位置情報(初期位置)を取得する処理を繰り返す。そして、全ての箱の位置情報を取得し終えると、上記ステップSB3の判断結果が「YES」になり、ステップSB4に進み、各箱IDに対応付けて位置情報(初期位置)をRAM12の箱データエリアBE(図6参照)に登録して本処理を終える。
【0030】
(3)積載段数判定処理の動作
次に、図10を参照して積載段数判定処理の動作について説明する。前述したメインルーチンのステップSA3(図8参照)を介して本処理が実行されると、CPU10は図10に図示するステップSC1に進み、ユーザ操作により箱ID毎の箱タイプを入力してRAM12の箱データエリアBEに登録する。なお、箱タイプとは、箱の属性(大きさ(寸法)、材質および強度)を表す記号である。
【0031】
次いで、ステップSC2では、箱ID毎に入力された箱タイプに対応する最大積載数Maxを積載数テーブルTBL1(図3参照)から読み出してRAM12の箱データエリアBEに登録する。例えば図6に図示する一例において、B(1,1)の箱IDでは、箱タイプTP1に対応する最大積載数Maxとして値「10」が積載数テーブルTBL1から読み出されて箱データエリアBEに登録される。
【0032】
そして、ステップSC3に進むと、温度・湿度検出部15が発生する温度データをRAM12の温度・湿度データエリアTEにストアする。続いて、ステップSC4では、上記ステップSC3にて取り込んだ湿度データに応じて、各箱ID毎の最大積載数Maxを許容段数LNに変換する。すなわち、湿度データを読み出しアドレスとして、湿度変化テーブルTBL2(図4参照)から箱タイプに対応した湿度変化特性で決まる許容段数LNを読み出して箱データエリアBEに登録する。
【0033】
ステップSC5では、各箱ID毎に現在積載数(自己に積載される箱の数)を計数して箱データエリアBEに登録する。次いで、ステップSC6では、箱データエリアに登録された各箱IDの内、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDが存在するか否かを判断する。該当する箱IDが存在しなければ、判断結果は「NO」となり、本処理を終える。一方、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDが存在すると、上記ステップSC6の判断結果は「YES」となり、ステップSC7に進み、フラグALM1に「1」をセットすると共に、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDをレジスタALM1(BID)にストアして本処理を終える。
【0034】
このように、積載段数判定処理では、ユーザ操作により箱ID毎の箱タイプを入力してRAM12の箱データエリアBEに登録すると、積載数テーブルTBL1を参照して箱タイプに対応する最大積載数Maxを箱ID毎に読み出して箱データエリアBEに登録する。さらに、湿度変化テーブルTBL2を参照し、温度・湿度検出部15から取り込んだ温度データに応じて各箱ID毎の最大積載数Maxを許容段数LNに変換して箱データエリアBEに登録する。そして、各箱ID毎に現在積載数(自己に積載される箱の数)を計数した後、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDが存在するか否かを判断し、該当する箱IDが存在すると、フラグALM1に「1」をセットすると共に、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDをレジスタALM1(BID)にストアする。
【0035】
(4)箱変形判定処理の動作
次に、図11を参照して箱変形判定処理の動作について説明する。前述したメインルーチンのステップSA4(図8参照)を介して本処理が実行されると、CPU10は図11に図示するステップSD1に進み、前回箱変形判定を行ってから所定期間が経過したか否かを判断する。所定期間が経過していなければ、判断結果は「NO」になり、本処理を終えるが、所定期間経過していると、判断結果は「YES」になり、ステップSD2に進む。
【0036】
ステップSD2では、撮像部14に撮像開始を指示すると共に、その指示に応じて撮像部14から撮像出力される画像データをRAM12の画像エリアIEにストアする。そして、ステップSD3に進み、画像エリアIEにストアされた画像データに対して各箱の輪郭を抽出する画像認識を施して各箱IDに対応する位置情報を取得する。この位置情報とは、前述した初期位置と同様、画像認識で得られた箱の画像領域の上縁の位置を表す。
【0037】
次いで、ステップSD4では、RAM12の箱データエリアBE(図6参照)に登録された初期位置と、上記ステップSD3にて取得した位置情報との差分から各箱ID毎の変形量ΔDを算出して当該箱データエリアBEに登録する。続いて、ステップSD5では、箱データエリアBEに登録した変形量ΔDの内、規定値を超える変形量ΔDの箱IDが有るか否か、つまり吸湿による強度劣化で変形した箱の箱IDが存在するかどうかを判断する。該当する箱IDが存在しなければ、判断結果は「NO」になり、本処理を終える。一方、吸湿による強度劣化で変形した箱の箱IDが存在すると、上記ステップSD5の判断結果は「YES」となり、ステップSD6に進み、フラグALM2に「1」をセットすると共に、吸湿による強度劣化で変形した箱の箱IDをレジスタALM2(BID)にストアして本処理を終える。
【0038】
このように、箱変形判定処理では、前回箱変形判定を行ってから所定期間が経過していれば、撮像部14により撮像された荷姿の画像データから箱の輪郭を抽出する画像認識を施して各箱IDに対応する位置情報を取得した後、RAM12の箱データエリアBE(図6参照)に登録された初期位置との差分から各箱ID毎の変形量ΔDを算出し、その中で規定値を超える変形量ΔDの箱ID、つまり吸湿による強度劣化で変形した箱の箱IDが存在すると、フラグALM2に「1」をセットすると共に、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDをレジスタALM2(BID)にストアする。
【0039】
(5)出力処理の動作
次に、図12を参照して出力処理の動作について説明する。前述したメインルーチンのステップSA5(図8参照)を介して本処理が実行されると、CPU10は図12に図示するステップSE1に進み、フラグALM1が「1」、すなわち許容段数LNを超えた過積載の箱が存在するか否かを判断する。許容段数LNを超えた過積載の箱が存在する場合には、判断結果は「YES」になり、ステップSE2に進み、アラーム発生部16に警報報知を指示する。これにより、アラーム発生部16は許容段数LNを超えた過積載の箱が存在する旨を報知する警報音を発生する。続いて、ステップSE3では、レジスタALM1(BID)にストアされた箱IDで指定される箱が許容段数LNを超えた過積載状態であることを表示部17に画面表示してユーザに報知する。この後、ステップSE4に進み、フラグALM1およびレジスタALM1(BID)をゼロリセットして本処理を終える。
【0040】
一方、上記ステップSE1において、フラグALM1が「0」の場合、つまり許容段数LNを超えた過積載の箱が存在しなければ、判断結果は「NO」になり、ステップSE5に進み、フラグALM2が「1」、すなわち吸湿による強度劣化で規定値以上に変形した箱が存在するか否かを判断する。規定値以上に変形した箱が存在しなければ、判断結果は「NO」となり、ステップSE9に進み、「異常無し」を表示部17に画面表示して本処理を終える。
【0041】
これに対し、吸湿による強度劣化で規定値以上に変形した箱が存在すると、上記ステップSE5の判断結果は「YES」になり、ステップSE6に進み、アラーム発生部16に警報報知を指示する。これにより、アラーム発生部16は吸湿による強度劣化で規定値以上に変形した箱が存在する旨を報知する警報音を発生する。次いで、ステップSE7では、レジスタALM2(BID)にストアされた箱IDで指定される箱の変形量が規定値を超えた状態であることを表示部17に画面表示してユーザに報知する。そして、ステップSE8に進み、フラグALM2およびレジスタALM2(BID)をゼロリセットして本処理を終える。
【0042】
このように、出力処理では、前述した積載段数判定処理(図10参照)によってフラグALM1に「1」がセットされ、許容段数LNを超えた過積載の箱が存在する状況であると、アラーム発生部16から警報音を報知出力させる一方、レジスタALM1(BID)にストアされた箱IDで指定される箱が許容段数LNを超えた過積載状態であることを表示部17に画面表示してユーザに報知する。また、前述した箱変形判定処理(図11参照)によってフラグALM2に「1」がセットされ、吸湿による強度劣化で規定値以上に変形した箱が存在する状況であると、アラーム発生部16から警報音を報知出力させる一方、レジスタALM2(BID)にストアされた箱IDで指定される箱の変形量が規定値を超えた状態であることを表示部17に画面表示してユーザに報知するようになっている。
【0043】
以上のように、第1実施形態では、荷姿を撮像した画像データから箱の輪郭を抽出する画像認識を施し、これにて得られた各箱の画像領域に箱IDを付与すると共に、各箱の画像領域の上縁の位置を表す位置情報(初期位置)を取得して各箱IDに対応付けてRAM12の箱データエリアBEに登録した後、ユーザ操作で入力される箱ID毎の箱タイプを箱データエリアBEに登録する。
【0044】
そうすると、先ず積載数テーブルTBL1を参照して箱タイプに対応する最大積載数Maxを箱ID毎に読み出して箱データエリアBEに登録し、次に湿度変化テーブルTBL2を参照し、現在の湿度データに応じて各箱ID毎の最大積載数Maxを許容段数LNに変換して箱データエリアBEに登録する。
【0045】
こうして、各箱ID毎の許容段数LNが箱データエリアBEに登録されると、各箱ID毎に現在積載数(自己に積載される箱の数)を計数し、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDが存在するか否か、つまり過積載の箱の有無を判断し、該当する箱が存在すると、アラーム発生部16から警報音を報知出力させる一方、許容段数LNを超えた過積載状態にある箱を表示部17に画面表示してユーザに報知するので、パレット上に段積みされる各箱について積載荷重の超過による変形が生じるのを防止することが出来る。
【0046】
また、撮像部14により撮像された荷姿の画像データから箱の輪郭を抽出する画像認識を施して各箱ID毎の位置情報を取得し、取得した各箱ID毎の位置情報と箱データエリアBEに登録済みの各箱ID毎の初期位置との差分から各箱IDの変形量ΔDを算出し、算出した各箱IDの変形量ΔDの中で吸湿による強度劣化によって規定値以上変形した箱IDが存在するか否かを判断し、該当する箱が存在すると、アラーム発生部16から警報音を報知出力させる一方、変形量が規定値を超えた箱を表示部17に画面表示してユーザに報知するので、パレット上に段積みされる各箱について吸湿による強度劣化で変形が生じるのを防止することが出来る。また、積載荷重の超過による変形や吸湿による強度劣化で招致される変形を防止する為、結果的に保管製品の品質を確保することが出来るという効果も奏する。
【0047】
[第2実施形態]
第2実施形態の構成は、上述した第1実施形態と共通するので、その説明については省略する。上述した第1実施形態では、箱タイプで定まる最大積載数Maxを、吸湿による強度劣化を加味した許容段数LNに変換したのに対し、第2実施形態ではさらに許容段数LNを箱の保管月数に応じて補正する。以下、こうした第2実施形態について説明する。
【0048】
先ず図13は、ROM11に記憶される経時変化テーブルTBL3の一例を示す図である。経時変化テーブルTBL3は、前述した湿度変化テーブルTBL2から読み出される許容段数LNを保管月数に応じて補正する。すなわち段積みされたまま保管される箱の強度は、保管月数が経つほど強度低下するので、その強度低下を表す経時変化特性に従い、許容段数LNを保管月数に応じて補正する。
【0049】
経時変化テーブルTBL3では、図13に図示する一例のように、箱タイプに対応した経時変化特性を有し、保管月数を読み出しアドレスとして、対応する箱タイプの経時変化特性により補正される許容段数LNを読み出す。第2実施形態では、こうした経時変化テーブルTBL3を用いるのに対応して、RAM12の箱データエリアBEには図14に図示するように各箱ID毎の保管開始年月日が登録される。
【0050】
次に、図15は第2実施形態による積載段数判定処理の動作を示すフローチャートである。前述した第1実施形態と同様、メインルーチンのステップSA3(図8参照)を介して第2実施形態による積載段数判定処理が実行されると、CPU10は図15に図示するステップSF1に進み、ユーザ操作により箱ID毎の箱タイプと保管開始年月日とを入力してRAM12の箱データエリアBEに登録する。なお、箱タイプとは、箱の属性(大きさ(寸法)、材質および強度)を表す記号である。
【0051】
続いて、ステップSF2では、箱ID毎に入力された箱タイプに対応する最大積載数Maxを積載数テーブルTBL1(図3参照)から読み出してRAM12の箱データエリアBEに登録する。例えば図14に図示する一例において、B(1,1)の箱IDでは、箱タイプTP1に対応する最大積載数Maxとして値「10」が積載数テーブルTBL1から読み出されて箱データエリアBEに登録される。
【0052】
次いで、ステップSF3では、温度・湿度検出部15が発生する温度データをRAM12の温度・湿度データエリアTEにストアし、続くステップSF4では、上記ステップSF3にて取り込んだ湿度データに応じて、各箱ID毎の最大積載数Maxを許容段数LNに変換する。すなわち、湿度データを読み出しアドレスとして、湿度変化テーブルTBL2(図4参照)から箱タイプに対応した湿度変化特性で決まる許容段数LNを読み出して箱データエリアBEに登録する。
【0053】
そして、ステップSF5に進むと、箱データエリアBEに登録される保管開始年月日と現在年月日とから算出される各箱ID毎の保管月数に応じて、経時変化テーブルTBL3から対応する箱タイプの経時変化特性で補正される許容段数LNを読み出す。次のステップSF6では、各箱ID毎に現在積載数(自己に積載される箱の数)を計数して箱データエリアBEに登録する。
【0054】
次いで、ステップSF7では、箱データエリアBEに登録された各箱IDの内、上記ステップSF5において補正された許容段数LNを超える現在積載数の箱IDが存在するか否かを判断する。該当する箱IDが存在しなければ、判断結果は「NO」となり、本処理を終える。一方、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDが存在すると、上記ステップSC6の判断結果は「YES」となり、ステップSC7に進み、フラグALM1に「1」をセットすると共に、許容段数LNを超える現在積載数の箱IDをレジスタALM1(BID)にストアして本処理を終える。
【0055】
以上のように、第2実施形態では、経時変化テーブルTBL3を参照して許容段数LNを箱の保管月数に応じて補正し、補正された許容段数LNを超える現在積載数の箱IDが存在する場合に、警報報知設定(フラグALM1に「1」をセットすると共に、補正した許容段数LNを超える現在積載数の箱IDをレジスタALM1(BID)にストア)を行うので、長期保管により強度低下した箱が積載荷重の超過で変形するのを防止することが出来る。
【符号の説明】
【0056】
10 CPU
11 ROM
12 RAM
13 操作入力部
14 撮像部
15 温度・湿度検出部
16 アラーム発生部
17 表示部
100 監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷姿を撮像した画像データから段積みされた各箱を認識してそれらの位置を取得する取得手段と、
前記取得手段により認識された各箱の属性を入力する入力手段と、
湿度を検出する湿度検出手段と、
前記入力手段により入力された属性で定まる各箱の積み重ね可能な最大積載数を、前記湿度検出手段により検出される湿度に対応した許容段数に変換する変換手段と、
前記取得手段により認識された各箱の内、前記変換手段により変換された許容段数を超えて積み重ねられた過積載状態の箱が存在する場合に警報報知する第1の報知手段と、
前記取得手段により認識された各箱の初期位置と所定期間経過後の位置との差分から得られる各箱の変形量の内、吸湿による強度劣化で規定値以上変形した箱が存在する場合に警報報知する第2の報知手段と
を具備することを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記変換手段は、
前記入力手段により入力された各箱の属性にそれぞれ対応する最大積載数を発生する積載数発生手段と、
前記湿度検出手段により検出される湿度に応じて、前記積載数発生手段が発生する最大積載数を吸湿による強度劣化を加味した許容段数に変更する変更手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載の監視装置。
【請求項3】
前記取得手段により認識された各箱の保管期間に応じて、対応する箱の許容段数を補正する補正手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の監視装置。
【請求項4】
荷姿を撮像した画像データから段積みされた各箱を認識してそれらの位置を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて認識された各箱の属性を入力する入力ステップと、
湿度を検出する湿度検出ステップと、
前記入力ステップにて入力された属性で定まる各箱の積み重ね可能な最大積載数を、前記湿度検出ステップで検出された湿度に対応した許容段数に変換する変換ステップと、
前記取得ステップにて認識された各箱の内、前記変換ステップにより変換された許容段数を超えて積み重ねられた過積載状態の箱が存在する場合に警報報知する第1の報知ステップと、
前記取得ステップにて認識された各箱の初期位置と所定期間経過後の位置との差分から得られる各箱の変形量の内、吸湿による強度劣化で規定値以上変形した箱が存在する場合に警報報知する第2の報知ステップと
をコンピュータで実行させることを特徴とする監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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