説明

目地材及びガスケット

【課題】 耐火二層管連結部分に用いられるリング状目地材において、取り付け作業性、耐久性が良好で、且つ可撓性、防火性の優れた目地材の提供。
【解決手段】 加硫可能なゴムを有するベースゴムに、特定量の熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、無機充填剤、加硫剤及び加硫促進剤を含有させ加硫処理して得られる、難燃性を有し、火災発生時には熱膨張し、しかも燃焼後の残渣が充分な形状保持性を有する可撓性防火ゴムを使用した目地材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、該目地材からなるガスケットに関する。特に、内管及び内管を被覆する耐火性外管からなる耐火二層管を連結する際に、連結部に用いられる耐火二層管用目地材に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の防火区画体には給水・排水管、ガス管、配電管等が貫通しており、特に給水・配水管には硬質塩化ビニル管が広く使用されており、その接合部においてセメントモルタル、水ガラス、金属性バンド、不燃性の無機質繊維ガスケット等が用いられている。
しかしながら、セメント又は水ガラスを主原料とする、いわゆる湿式目地工法においては、接合部に施された目地材が経時硬化して亀裂及び剥離が発生して目地材の脱落を誘発することがあり、金属製目地カバーを使用する乾式目地工法では、寸法形状があらかじめ設定されていることから、管の寸法誤差等に基づく形状変形への対応が難しかった。
更にこれらの目地工法では建造物への配管作業が完了した後、実施することからその作業空間が制限され、作業性で劣る他、地震、建造物の振動及び湿潤、温度変化による管の伸縮に充分対応できないことがあった。
【0003】
ゴムと膨張性黒鉛、エポキシ樹脂及び無機充填剤からなる可撓性防火用ゴム目地材が開示されており(例えば特許文献1参照)、従来の問題点であった脆さ及び耐火性が改善されたものの、高温下で熱膨張性黒鉛をつなぎ止める機能を付与するために配合しているエポキシ樹脂が、混練時に混練機器内壁に固着し、この除去が極めて困難という問題があった。また高温時の形状保持性も必ずしも十分ではなかった。形状保持性を改良した組成物については既に開示されているが(例えば特許文献2参照)、成形性や材料強度はいまだ不十分であった。
【特許文献1】特開2002−181262号公報(第2頁:請求項1)
【特許文献2】特開2001−348487号公報(第2頁:請求項1〜4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、火災が発生した際に熱膨張後、固化して煙遮断及び延焼を防止するとともに、その固化状態で形状保持して長時間型崩れしないことで、延焼防止機能(以下、防火性能と称する。)を有する目地材およびガスケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、加硫可能なゴム、熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、無機充填剤並びに加硫剤および加硫促進剤を含み、酸素指数が40以上である目地材であって、加硫可能なゴム100質量部に対して、熱膨張性黒鉛が5〜100質量部、亜リン酸アルミニウムが10〜150質量部、無機充填剤が10〜200質量部、加硫剤0.1〜10質量部、加硫促進剤0.1〜10質量部である目地材であって、その無機充填剤が水酸化アルミニウムである目地材である。また、本発明はその目地材を用いたガスケットである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の目地材及び該目地材からなるガスケットは、火災時に熱膨張し固化した不燃性の防火層を形成し、長時間高温にさらされても、その防火層は脆弱化しにくく、優れた防火性能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いる加硫可能なゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等のジエン系ゴムや、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等の主鎖中に少量の二重結合を導入した、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴムが挙げられる。本発明の目地材にあっては、これらの単体だけでなく、混練性、成形性等を改善するために2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも特に、クロロプレンゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンゴムの少なくとも一方を用いると混練性、成形性が改善されて好ましい。
【0008】
熱膨張性黒鉛は、天然グラファイト、熱分解グラファイト等の粉末を、硫酸、硝酸等の無機酸と濃硝酸、過マンガン酸塩等の強酸化剤とで処理されたもので、グラファイト層状構造を維持した結晶化合物である。これらは200℃程度以上の温度に曝されると、100倍以上に熱膨張するものである。なお、これら天然グラファイト、熱分解グラファイト等の粉末は、脱酸処理に加え、更に中和処理したタイプ他、各種品種があるがいずれも使用できる。
熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜400メッシュ程度が好ましい。400メッシュより粒度が小さくなると熱膨張性黒鉛の膨張度が小さく、得られる目地材が火災時に充分熱膨張しない場合があり、また20メッシュより粒度が大きくなると分散性が悪くなり得られる目地材の弾性が低下する場合がある。
【0009】
熱膨張性黒鉛の含有量は、ゴムの種類や所望の膨張倍率等によって適宜設定することができ特に制限するものではないが、通常はベースゴム100質量部に対して5〜100質量部の使用が好ましく、更に好ましくは20〜80質量部である。熱膨張性黒鉛の含有量が5質量部より少ないと得られた目地材が火災時に充分熱膨張しない場合があり、100質量部を超えると熱膨張倍率は大きくなるものの、得られる目地材の強度等の物性も低下する傾向がある。
【0010】
本発明では、目地材の型崩れ防止の形状安定化剤として亜リン酸アルミニウムを用いることが必要である。本発明で用いられる亜リン酸アルミニウムは、分散性の観点から平均粒径は、レーザー回折法の測定値で1〜100μmが好ましい。
【0011】
亜リン酸アルミニウムの含有量は、所望の熱膨張倍率等によって適宜設定することができ特に制限されるものではないが、ゴム100質量部に対して10〜150質量部が好ましい。10質量部より少ないと得られる目地材の形状安定化性能が、150質量部を超えると得られる目地材の可撓性が低下する傾向がある。
【0012】
本発明では、目地材の難燃性をより向上させるために無機充填剤を用いる。無機充填剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ベントナイト、活性白土、セピオライト、ガラス繊維、ガラスビーズ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、カーボンブラック、グラファイト等があげられる。これらは単体で使用してもよく、また2種以上を併用しても良い。これらの中では、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムは、加熱時の脱水反応による吸熱反応で温度上昇が抑えられるという点で好ましい。中でも水酸化アルミニウムが特に好ましい。
また、分散性の観点からこれらの充填剤の平均粒径は、レーザー回折法の測定値で1〜50μmが好ましい。
本発明の目地材は、酸素指数が40以上であることを特徴とする。40未満では、火災時の難燃性が不十分である。
【0013】
無機充填剤の含有量は、特に制限されるものではないが、ゴム100質量部に対して10〜200質量部が好ましく、更に好ましくは50〜100質量部である。10質量部より少ないと難燃性を向上効果が小さくなる傾向があり、200質量部を超えると目地材の可撓性や強度等が低下する傾向がある。
【0014】
本発明に使用される加硫剤及び加硫促進剤は、加硫可能なゴムの架橋度を向上させ、ゴム自体の強度を向上させるものである。なお、ゴムの強度は、硬度にて評価できるものである。
【0015】
加硫剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、硫黄、ポリスルフィド、塩化硫黄等の含硫黄化合物からなる硫黄系、p−キノンジオキシム、p−p’−ジベンゾイルキノンオキシム等のオキシム系、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系があげられる。加硫剤は、硫黄系のものか、それと複数種のものを組み合わせて使用することが推奨される。これら加硫剤の使用量は、特に制限されるものではないが、ゴム100質量部あたり0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部が好ましい。
【0016】
本発明では、加硫処理の促進を目的に加硫促進剤が使用される。加硫促進剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィドやテトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系、2−メルカプトベンゾチアゾールやジベンゾチアゾールジスルフィド等のチアゾール系、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛やジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系、n−ブチルアルデヒドアニリン等のアルデヒドアミン系、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系、ジオルソトリルグアニジンやジオルソニトリルグアニジン等のグアニジン系、チオカルバニリドやジエチルチオユリア、トリメチルチオユリア等のチオユリア系、亜鉛華などの化合物があげられる。加硫促進剤は、これらの単体だけでなく、2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。これら加硫促進剤の使用量は、特に制限されるものではないが、ベースゴム100質量部あたり0.1〜10質量部で、特に0.2〜5質量部が好ましい。
【0017】
更に本発明では、その効果を阻害しない範囲で、通常の加硫系のゴム配合物に使用される可塑剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、粘着付与剤等を併用しても良いものである。成形性の調整に有効な軟化剤や可塑剤の例としては、パラフィン系やナフテン系等のプロセスオイル、流動パラフィンやその他のパラフィン類、ワックス類、シリコーンオイルや液状ポリブテン等の合成高分子系軟化剤、フタル酸系やアジピン酸系、セバシン酸系やリン酸系等のエステル系可塑剤類、ステアリン酸やそのエステル類、アルキルスルホン酸エステル類や粘着付与剤などがあげられる。
【0018】
本発明の目地材は、上記各成分をバンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等公知の混練装置を用いて混練されたものを、例えば、プレス成形、ロール成形、押し出し成形、カレンダー成形等の従来公知の成形方法でシート状に成形することで得ることが出来る。更にこのシートから、従来公知の打ち抜き刃を有した装置を用いてリング状に打ち抜き、ガスケットが得られる。この目地材はリング状のガスケットに成形され、施工時に二層管等に組み込んで使用される挿入タイプが一般的だが、二層管製造時にテープ状成形品を塩化ビニル製内管に予め巻きつけて、セメントモルタル製外管と一体化成形した耐火二層管等を製造することも可能である。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。なお、以下の説明における部及び%は質量基準に基づく。
【0020】
表1および表2の配合Aに示した成分を、容量3リットルのニーダーミキサーを用いて120℃で2分間混練した。次いで、得られた混練物を二本ロールで練りながら表1および表2の配合Bに示した成分を添加して5分間混練し、更に熱プレス機で170℃・4分間加硫処理を行い、厚さ5mmの目地材を得た。
【0021】
本実施例において使用した材料は、それぞれ以下に示したものである。
(1)ゴム:ブチルゴム(JSR(株)製、「ブチル268」)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(DSMジャパン(株)製、「ケルタン778Z」)
(2)熱膨張性黒鉛:(エア・ウォーター・ケミカル(株)製「SS−3」、膨張開始温度260℃)
(3)亜リン酸アルミニウム:(太平化学産業(株)製、「APA―100」)
(4)無機充填剤:水酸化アルミニウム(河合石灰工業(株)製、「ALH」)
(5)加硫剤:粉末硫黄(細井化学工業(株)製)
(6)加硫促進剤:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(大内新興(株)製、「ノクセラーCZ」)、テトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興(株)製、「ノクセラーTT」)、酸化亜鉛(堺化学(株)製、「亜鉛華3号」)
(7)加工助剤:エステル潤滑剤(花王(株)製、「カオーワックス220」)
(8)老化防止剤:N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン(大内新興(株)製、「ノクラック6C」)
(9)カーボンブラック:旭カーボン(株)製、「#60」
(10)軟化剤:プロセスオイル(日本サン石油(株)製、「サンパー150」)
【0022】
「実施例1〜3」 「比較例1〜5」
実施例及び比較例において下記の各特性を評価し、表1および表2にまとめた。
各特性の測定方法を以下に示す。
引張り応力:プレス成形した厚さ5mmのシートから、3号ダンベルに打ち抜き、速度500mm/分で引張り、最大応力を求めた。
硬度:上記シートについて、デュロメーターA硬度計を使用し、押し当て直後の値を読み取った。
可撓性:ロールでシート成形した厚さ5mmのシートから1号ダンベルに打ち抜き、両端を45度の角度に持ち上げ、曲がった時の亀裂発生の程度を、亀裂なしの場合を「良」、亀裂ありの場合を「不可」として評価した。
熱膨張性:厚さ50mm、幅100mm、長さ210mmの耐火煉瓦を隙間10mm空けて並べその間に厚さ5mm、高さ70mm、幅50mmの試験片を、上部20mmが煉瓦上端より突き出るように挿入し設置し、この状態のままギアオーブン中にて、300℃で1時間熱処理した。耐火煉瓦の10mmの隙間が完全に閉塞した場合は「良」、隙間が残った場合には「不可」と評価した。
形状保持性:熱膨張性を評価後、煉瓦上端より突き出た試験片部分の形状安定性と変形度合いを、目視と指触で評価した。型崩れにくく変形が小さい場合は「良」、指蝕ですぐ崩れ変形する場合は「不可」、その中間を「可」と評価した。
酸素指数:JIS K7201に準じて燃焼試験装置(スガ試験機(株)製,ON−1D型)を用いて測定した。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
目地材としての物性は、引張り応力が2.8MPa以上で、硬度が65以上、可撓性と熱膨張性、形状保持性が良であることが好ましい。
【0026】
なお、亜リン酸アルミニウムの変わりにホウ酸を用いた比較例2の目地材を用いた場合、ホウ酸が加硫挙動を阻害する性質があるため硬度向上が図れない。また、ホウ酸は水溶性であるため、これを用いた目地材を長期間、水と接触する部位に用いられると、ホウ酸が目地材から溶出し、火災の際に充分な形状保持性が得られないが、亜リン酸アルミニウムは水に難溶性であるため、その心配が少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫可能なゴム、熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、無機充填剤、加硫剤および加硫促進剤を含み、酸素指数が40以上である目地材。
【請求項2】
加硫可能なゴム100質量部に対して、熱膨張性黒鉛が5〜100質量部、亜リン酸アルミニウムが10〜150質量部、無機充填剤が10〜200質量部、加硫剤0.1〜10質量部、加硫促進剤0.1〜10質量部である請求項1に記載した目地材。
【請求項3】
無機充填剤が水酸化アルミニウムである請求項1又は請求項2に記載の目地材。
【請求項4】
耐火二層管の外管の開口端縁とこれに対向する管継手の外管の開口端縁との間に装着使用される請求項1〜請求項3の目地材からなる耐火二層管用目地材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の目地材からなるガスケット。

【公開番号】特開2006−274134(P2006−274134A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97633(P2005−97633)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【出願人】(591129771)シー・アール・ケイ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】