説明

目地漏水阻止構造及びその施工方法

【課題】用水路を構成するように連設された一対の用水路構成部材が互いに異なる動きをして相対的に大きな変位が生じても、それらの目地からの漏水を阻止するようにする。
【解決手段】目地漏水阻止構造100は、用水路を構成するように連設された一対の用水路構成部材10と、一対の用水路構成部材10の目地11を内側から覆うように設けられた下地モルタル層20と、下地モルタル層20上に一対の用水路構成部材10の目地11に対応して覆うように設けられた防水層30と、下地モルタル層20上に防水層30を埋設するように積層された保護モルタル層40と、を備える。防水層30は、一対の用水路構成部材10の連設方向への伸張が可能な伸張可能部31〜34が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地漏水阻止構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用水、工業用水、或いは生活排水を流すための用水路として、各々、横断面略U字状に形成されたコンクリート製の複数の用水路構成部材が連設された構造のものが広く知られている。このような構造の用水路の場合、連設された一対の用水路構成部材の目地にシーリング材を埋め込んで漏水の阻止を図ったのでは、地盤沈下、車両の走行振動、或いは温度変化による膨張収縮等によってそれらの用水路構成部材が互いに異なる動きをして相対的な変位を生じ、そのためシーリング材がその変位に追従できずに破損し、目地から漏水が発生してしまうことがある。
【0003】
そこで、連設された一対の用水路構成部材の目地からの漏水を阻止する構造として、例えば、特許文献1には、用水路を構成するように連設された一対の用水路構成部材の目地を覆うように下地モルタル層を設け、次いで、この下地モルタル層上に板状のゴムを不織布で被覆した防水シート材を接着し、そして、その防水シート材を埋設するように保護モルタル層を設けた構造が開示され、この構造によれば、ゴムを不織布で被覆した防水シート材が下地モルタル層及び保護モルタル層から剥離するのが抑制され、その結果、仮に下地モルタル層或いは保護モルタル層にひび割れが発生しても、目地からの漏水を抑制することができると記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、モルタルとの接着性を有するゴムシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−198119号公報
【特許文献2】特開2007−291802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、用水路を構成するように連設された一対の用水路構成部材が互いに異なる動きをして相対的に大きな変位が生じても、それらの一対の用水路構成部材の目地からの漏水を阻止するようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目地漏水阻止構造は、
用水路を構成するように連設された一対の用水路構成部材と、
上記一対の用水路構成部材の目地を内側から覆うように設けられた下地モルタル層と、
上記下地モルタル層上に上記一対の用水路構成部材の目地に対応して覆うように設けられた防水層と、
上記下地モルタル層上に上記防水層を埋設するように積層された保護モルタル層と、
を備え、
上記防水層は、上記一対の用水路構成部材の連設方向への伸張が可能な伸張可能部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の目地漏水阻止構造の施工方法は、
用水路を構成するように一対の用水路構成部材を連設し、
上記一対の用水路構成部材の目地を内側から覆うように下地モルタル層を設け、
上記下地モルタル層上に上記一対の用水路構成部材の目地に対応して覆うように防水層を設け、
上記下地モルタル層上に上記防水層を埋設するように保護モルタル層を積層するものであって、
上記防水層として、上記一対の用水路構成部材の連設方向への伸張が可能な伸張可能部が設けられたものを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下地モルタル層及び保護モルタル層の間に埋設された防水層に、一対の用水路構成部材の連設方向への伸張が可能な伸張可能部が設けられているので、仮に一対の用水路構成部材が互いに異なる動きをして相対的に大きな変位が生じても、防水層が伸張してその破損が回避され、そのため、それらの一対の用水路構成部材の目地からの漏水を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】用水路を示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係る目地漏水阻止構造の断面図(図1におけるII-II断面図)である。
【図3】実施形態1に係る目地漏水阻止構造の施工方法の説明図である。
【図4】実施形態1に係る目地漏水阻止構造の漏水阻止作用の説明図である。
【図5】実施形態2に係る目地漏水阻止構造の断面図である。
【図6】実施形態2に係る目地漏水阻止構造の漏水阻止作用の説明図である。
【図7】実施形態3に係る目地漏水阻止構造の断面図である。
【図8】実施形態3に係る目地漏水阻止構造の漏水阻止作用の説明図である。
【図9】実施形態4に係る目地漏水阻止構造の断面図である。
【図10】実施形態4に係る目地漏水阻止構造の漏水阻止作用の説明図である。
【図11】実施形態5に係る目地漏水阻止構造の断面図である。
【図12】実施形態5に係る目地漏水阻止構造の漏水阻止作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る目地漏水阻止構造100が設けられた用水路Aを示す。
【0013】
この用水路Aは、複数の用水路構成部材10(図1にはそのうち一対の用水路構成部材10のみを示す。)が連設されて構成されており、例えば、農業用水、工業用水、或いは生活排水を流すために使用されるものである。
【0014】
複数の用水路構成部材10のそれぞれは上方に開口した横断面略U字状に形成されている。複数の用水路構成部材10のそれぞれは例えばコンクリートで形成されている。このコンクリート材からなる用水路構成部材10は、プレキャストで予め成形したものを用意しておき、現場で組み立てるタイプのものや、現場でコンクリートを流し込んで成形する、所謂現場打ちと称するタイプが使用される。複数の用水路構成部材10のそれぞれは、例えば、長さが0.5〜20m程度、幅が0.3〜10m程度、及び高さが0.3〜3m程度、並びに肉厚が30〜300mm程度である。
【0015】
複数の用水路構成部材10のうち連設された一対の用水路構成部材10の接合部には目地11が形成され、その部分に実施形態1に係る目地漏水阻止構造100が設けられている。接合部の目地11の隙間は例えば0〜50mm程度である。なお、一対の用水路構成部材10の接合部は、突き合わせ構造であってもよく、また、嵌め込み構造であってもよい。
【0016】
図2は実施形態1に係る目地漏水阻止構造100を示す。
【0017】
実施形態1に係る目地漏水阻止構造100は、一対の用水路構成部材10の目地11を内側から覆うように目地11の延びる方向(用水路Aの幅方向)に沿って帯状に下地モルタル層20が設けられている。下地モルタル層20を形成するモルタルは、セメント及び砂を水で練った単純モルタルであってもよく、また、それに樹脂エマルジョンを混合した樹脂モルタルであってもよい。下地モルタル層20は、例えば、幅が100〜500mm程度、及び厚さが1〜10mm程度である。なお、一対の用水路構成部材10の目地11には、その隙間を埋めるように樹脂系やゴム系のシーリング材21が充填されていてもよい。また、下地モルタル層20の下層には、目地11を覆うように樹脂系やゴム系のテープ材22が設けられていてもよい。さらに、下地モルタル層20の下層には、モルタルの接着性を向上させるため樹脂系やゴム系のプライマー層23が設けられていてもよい。
【0018】
実施形態1に係る目地漏水阻止構造100は、下地モルタル層20上に一対の用水路構成部材10の目地11に対応して覆うように防水層30が接着して設けられている。
【0019】
防水層30は、一対の用水路構成部材10の連設方向の一方側(図2の左側)に延びるように設けられた第1シート部材31、その第1シート部材31と重複部分34を有して一対の用水路構成部材10の連設方向の他方側(図2の右側)に延びるように設けられた第2シート部材32、並びにそれらの第1及び第2シート部材31,32の重複部分34でそれらの間に挟まれるように設けられた連結シール部材33により構成されている。
【0020】
第1及び第2シート部材31,32のそれぞれは、例えば、原料ゴムに種々の配合剤等が配合されたゴム組成物で形成されている。第1及び第2シート部材31,32のそれぞれは、例えば、幅が50〜400mm程度、及び厚さが0.5〜5mm程度であり、また、それらの重複部分34の幅が5〜50mm程度である。
【0021】
第1及び第2シート部材31,32のそれぞれを形成するゴム組成物の原料ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム(U)等が挙げられる。なお、これらの原料ゴムにおいて、特開2007−291802号公報に開示された処方でモルタルとの接着性を向上させることができる。原料ゴムは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種がブレンドされて構成されていてもよい。原料ゴムとしては、これらのうちブチルゴム(IIR)が好ましく、特に、タイヤチューブ等から得られた再生ブチルゴムが好ましい。
【0022】
原料ゴムとしてのブチルゴムは非加硫であることが好ましい。再生ブチルゴムは、下地モルタル層20及び後述の保護モルタル層40を形成するモルタルに含まれる金属イオンとイオン反応して下地モルタル層20及び保護モルタル層40のそれぞれに強固に接着することとなる。
【0023】
配合剤としては、カーボンブラックなどの補強材、老化防止剤、軟化剤等が挙げられる。
【0024】
第1及び第2シート部材31,32を形成するゴム組成物のゴム物性は、JIS K6251に基づいて測定される引張強さが0.3MPa以上、伸び率が400%以上であることが好ましい。
【0025】
第1及び第2シート部材31,32のそれぞれは、ゴム製の部材本体に芯材が埋設された構成であってもよい。芯材としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属材や樹脂材であってもよく、また、金属や樹脂やゴムの複合材であってもよい。また、複合材の芯材としては、ゴムに比べて耐クリープ変形性の高いポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂で形成された薄肉な中間シートの保護モルタル層40側に補強用のアルミニウム等の金属が蒸着され、一方、中間シートの下地モルタル層20側に、各々、ポリプロピレン樹脂等で形成された複数の第1の帯状材が相互に間隔をおいて並設され、さらにその下地モルタル層20側に第1の帯状材と非接着で且つ直交するように、各々、ポリプロピレン樹脂等で形成された複数の第2の帯状材が相互に間隔をおいて並設され、第1及び第2の帯状材によってメッシュ構造が構成されたものが挙げられる。このものは、保護モルタル層40側において、蒸着した上記金属面がゴムに接着され、下地モルタル層20側において、第1及び第2の帯状材並びに中間シートの第1及び第2の帯状材間の部分がゴムに接着される。そして、このような複合材の芯材によれば、ゴムに比べて耐クリープ変形性の高い中間シートが設けられていることにより植物の根が用水路構成部材10の外側から内側に向けて目地11を通って延びるのを阻止することができる。また、下地モルタル層20側で発生したひび割れを中間シートに達したところで抑止することが出来る。
【0026】
連結シール部材33は、一対の用水路構成部材10の目地11の延びる方向に沿った帯状に形成されている。連結シール部材33は、第1及び第2シート部材31,32のそれぞれに対して、接着剤等により接着されて一体化されていてもよく、また、非接着であってもよいが、その場合、粘着密着していることが好ましい。連結シール部材33は、その材質が特に限定されるものではないが、非加硫ゴム等の可塑変形可能なゴム粘弾性体で構成されていることが好ましく、ブチルゴム系、ウレタン系、アクリルゴム系等の可塑変形可能な材質で形成されていることがより好ましい。また、連結シール部材33は、ゴム製の部材本体に金属や樹脂の芯材が埋設された構成であってもよい。連結シール部材33は、例えば、幅が3〜50mm程度、及び厚さが0.5〜10mm程度である。
【0027】
連結シール部材33が設けられた第1及び第2シート部材31,32の重複部分34は、一対の用水路構成部材10の連設方向のどの位置に設けられていてもよいが、一対の用水路構成部材10の目地11に対応して設けられていることが好ましい。
【0028】
実施形態1に係る目地漏水阻止構造100は、下地モルタル層20上に防水層30を埋設するように保護モルタル層40が積層されている。保護モルタル層40を形成するモルタルは、セメント及び砂を水で練った単純モルタルであってもよく、また、それに樹脂エマルジョンを混合した樹脂モルタルであってもよい。保護モルタル層40を形成するモルタルは、下地モルタル層20を形成するモルタルと同一であってもよく、また、異なっていてもよい。保護モルタル層40は、下地モルタル層20よりも幅広であって幅が例えば100〜500mm程度であり、及び下地モルタル層20よりも厚肉であってもよく、また、薄肉であってもよく、厚さが例えば1〜10mm程度であるが、水の流れを阻害しない厚さが好ましい。
【0029】
以上の構成の実施形態1に係る目地漏水阻止構造100は、図3(a)に示すように、用水路Aを構成するように複数の用水路構成部材10を連設し、連設された一対の用水路構成部材10の目地11の部分を清掃し、また、必要に応じて目地11にシーリング材21を充填すると共にテープ材22やプライマー層23を設け、そして、図3(b)に示すように、それらの一対の用水路構成部材10の目地11を内側から覆うように下地モルタル層20を設け、また、図3(c)に示すように、下地モルタル層20上に一対の用水路構成部材10の目地11に対応して覆うように防水層30を設け、さらに、下地モルタル層20上に防水層30を埋設するように保護モルタル層40を積層することにより得ることができる。
【0030】
ところで、用水路Aは、完成から長期間経過すると、周辺の地盤沈下、車両走行の振動、温度変化による膨張収縮等により、連設された一対の用水路構成部材10が互いに異なる動きをして、例えば、一対の用水路構成部材10の連設方向、横方向、縦方向、及び捻れ方向に相対的に変位することがある。かかる場合に、実施形態1に係る目地漏水阻止構造100によれば、下地モルタル層20及び保護モルタル層40にひび割れが生じ、このひび割れから用水路Aの水が進入しても、下地モルタル層20及び保護モルタル層40に接着した防水層30がゼロスパンテンションに耐久して一対の用水路構成部材10の目地11からの漏水を阻止することができる。しかも、図4に示すように、下地モルタル層20及び保護モルタル層40の間に埋設された防水層30に、第1及び第2シート部材31,32の重複部分34に連結シール部材33が挟持された構造が設けられており、仮に一対の用水路構成部材10が互いに異なる動きをして相対的に大きな変位が生じても、連結シール部材33が剪断変形可能であることから連結シール部材33が伸張してその破損が回避され、そのため、それらの一対の用水路構成部材10の目地11からの漏水を阻止することができる。つまり、第1及び第2シート部材31,32の重複部分34に連結シール部材33が挟持された構造が一対の用水路構成部材10の連設方向への伸張が可能な伸張可能部を構成している。
【0031】
(実施形態2)
図5は実施形態2に係る目地漏水阻止構造100を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は実施形態1と同一符号を用いて示す。
【0032】
実施形態2に係る目地漏水阻止構造100では、防水層30は、一対の用水路構成部材10の連設方向の一方側に延びるように設けられた第1シート部材31、その第1シート部材31と重複部分34を有して一対の用水路構成部材10の連設方向の他方側に延びるように設けられた第2シート部材32、並びにそれらの第1及び第2シート部材31,32の重複部分34でそれらの間に挟まれるように設けられた連結シール部材33により構成されている。また、第1及び第2シート部材31,32のうち少なくとも一方は、それらの重複部分34において連結シール部材33側に折り返された部分を有する(図5では第2シート部材32が折り返された部分を有する。)。
【0033】
この実施形態2に係る目地漏水阻止構造100によれば、図6に示すように、下地モルタル層20及び保護モルタル層40の間に埋設された防水層30に、第1及び第2シート部材31,32の重複部分34に連結シール部材33が挟持された構造が設けられており、第1及び第2シート部材31,32のうち少なくとも一方がそれらの重複部分34において連結シール部材33側に折り返された部分を有するので、仮に一対の用水路構成部材10が互いに異なる動きをして相対的に大きな変位が生じても、連結シール部材33が剪断変形可能であり、また、第1及び/又は第2シート部材32の折り返された部分が連結シール部材33から剥離するように挙動し、しかも連結シール部材33が伸張してその破損が回避され、そのため、それらの一対の用水路構成部材10の目地11からの漏水を阻止することができる。
【0034】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0035】
(実施形態3)
図7は実施形態3に係る目地漏水阻止構造100を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は実施形態1と同一符号を用いて示す。
【0036】
実施形態3に係る目地漏水阻止構造100では、防水層30は、一対の用水路構成部材10の連設方向の一方側に延びるように設けられた第1シート部材31、その第1シート部材31と重複部分34を有して一対の用水路構成部材10の連設方向の他方側に延びるように設けられた第2シート部材32、並びにそれらの第1及び第2シート部材31,32の重複部分34でそれらの間に挟まれるように設けられた連結シール部材33により構成されている。そして、連結シール部材33は、一対の用水路構成部材10の連設方向に半分に折られて層間で摺動可能な二重層に構成された部材である。具体的には、連結シール部材33は、例えば、非加硫のブチルゴム組成物で形成された厚さ0.5〜5mmのシート状ゴムの一方側をポリエチレンやポリプロピレン等の厚さ0.01〜1mmの樹脂フィルムで被覆したシート材を、樹脂フィルム側を内側にして半分に折った部材で構成される。
【0037】
この実施形態3に係る目地漏水阻止構造100によれば、図8に示すように、下地モルタル層20及び保護モルタル層40の間に埋設された防水層30に、第1及び第2シート部材31,32の重複部分34に連結シール部材33が挟持された構造が設けられているので、仮に一対の用水路構成部材10が互いに異なる動きをして相対的に大きな変位が生じても、連結シール部材33の二層間にずれ変位が生じることから連結シール部材33のずれ変位によりその破損が回避され、そのため、それらの一対の用水路構成部材10の目地11からの漏水を阻止することができる。
【0038】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0039】
(実施形態4)
図9は実施形態4に係る目地漏水阻止構造100を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は実施形態1と同一符号を用いて示す。
【0040】
実施形態4に係る目地漏水阻止構造100では、防水層30は、一対の用水路構成部材10の連設方向の一方側に延びるように設けられた第1シート部材31、その第1シート部材31と重複部分34を有して一対の用水路構成部材10の連設方向の他方側に延びるように設けられた第2シート部材32、並びにそれらの第1及び第2シート部材31,32の重複部分34でそれらの間に挟まれるように設けられた連結シール部材33により構成されている。そして、連結シール部材33は、長尺の筒状体を側方から押し潰して層間で摺動可能な二重層に構成された部材である。具体的には、連結シール部材33は、例えば、非加硫のブチルゴム組成物で形成された厚さ0.5〜5mmの筒状ゴムの内周側をポリエチレンやポリプロピレン等の厚さ0.01〜1mmの樹脂フィルムで被覆した長尺の筒状体を側方から押し潰した部材で構成される。なお、かかる連結シール部材33は、押出成形により容易に得ることができる。
【0041】
この実施形態4に係る目地漏水阻止構造100によれば、図10に示すように、下地モルタル層20及び保護モルタル層40の間に埋設された防水層30に、第1及び第2シート部材31,32の重複部分34に連結シール部材33が挟持された構造が設けられているので、仮に一対の用水路構成部材10が互いに異なる動きをして相対的に大きな変位が生じても、連結シール部材33がエンドレスベルトのように回転しながら二層間にずれ変位が生じ動きに追従することから連結シール部材33の破損が回避され、そのため、それらの一対の用水路構成部材10の目地11からの漏水を阻止することができる。
【0042】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0043】
(実施形態5)
図11は実施形態5に係る目地漏水阻止構造100を示す。
【0044】
実施形態5に係る目地漏水阻止構造100では、防水層30は、単一のシート部材35で構成されており、一対の用水路構成部材10の連設方向に折り返されて厚さ方向に重畳された重畳部分36を有する。防水層30を構成するシート部材35は、その材質が特に限定されるものではないが、非加硫のブチルゴム組成物で形成されていることが好ましい。シート部材35は、実施形態1等の第1及び第2シート部材31,32と同様に、ゴム製の部材本体に芯材が埋設された構成であってもよい。シート部材35の重畳部分36の層間には、層間で摺動可能となるように樹脂フィルム等が介設されていてもよい。シート部材35は、例えば、幅が100〜500mm程度、及び厚さが0.5〜5mm程度であり、また、それらの重畳部分36の幅が10〜100mm程度、重畳部分36の層数が約3〜5層である。
【0045】
この実施形態5に係る目地漏水阻止構造100によれば、図12に示すように、下地モルタル層20及び保護モルタル層40の間に埋設された防水層30に、シート部材35の重畳部分36が設けられているので、仮に一対の用水路構成部材10が互いに異なる動きをして相対的に大きな変位が生じても、重畳部分36の層間にずれ変位が生じることから破損が回避され、そのため、それらの一対の用水路構成部材10の目地11からの漏水を阻止することができる。つまり、シート部材35の重畳部分36が一対の用水路構成部材10の連設方向への伸張が可能な伸張可能部を構成している。
【0046】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0047】
(その他の実施形態)
上記実施形態1〜5では、防水層30に単一の伸張可能部が設けられた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、複数の伸張可能部が設けられた構成であってもよい。
【0048】
上記実施形態1〜5において、下地モルタル層20及び/又は保護モルタル層40には、目地11の位置に対応して、ひび割れを誘発するためのひび割れ誘発部が設けられていてもよい。ひび割れ誘発部は、下地モルタル層20及び/又は保護モルタル層40への溝加工、スポンジ等の脆弱材の埋設により構成することができる。かかるひび割れ誘発部が設けられていることにより、漏水阻止機能の高い防水層30が埋設された位置において下地モルタル層20及び/又は保護モルタル層40のひび割れを生じさせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は目地漏水阻止構造及びその施工方法について有用である。
【符号の説明】
【0050】
A 用水路
100 目地漏水阻止構造
10 用水路構成部材
11 目地
20 下地モルタル層
21 シーリング材
22 テープ材
23 プライマー層
30 防水層
31 第1シート部材
32 第2シート部材
33 連結シール部材
34 重複部分
35 シート部材
36 重畳部分
40 保護モルタル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用水路を構成するように連設された一対の用水路構成部材と、
上記一対の用水路構成部材の目地を内側から覆うように設けられた下地モルタル層と、
上記下地モルタル層上に上記一対の用水路構成部材の目地に対応して覆うように設けられた防水層と、
上記下地モルタル層上に上記防水層を埋設するように積層された保護モルタル層と、
を備え、
上記防水層は、上記一対の用水路構成部材の連設方向への伸張が可能な伸張可能部が設けられていることを特徴とする目地漏水阻止構造。
【請求項2】
請求項1に記載された目地漏水阻止構造において、
上記防水層の上記伸張可能部は上記一対の用水路構成部材の目地に対応して設けられていることを特徴とする目地漏水阻止構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された目地漏水阻止構造において、
上記防水層は、上記一対の用水路構成部材の連設方向の一方側に延びる第1シート部材と、該第1シート部材と重複部分を有して該一対の用水路構成部材の連設方向の他方側に延びる第2シート部材と、該第1及び第2シート部材の重複部分でそれらの間に設けられた連結シール部材と、を有し、該第1及び第2シート部材の重複部分に該連結シール部材が挟持された構造によって上記伸張可能部が構成されていることを特徴とする目地漏水阻止構造。
【請求項4】
請求項3に記載された目地漏水阻止構造において、
上記連結シール部材は上記一対の用水路構成部材の目地の延びる方向に沿った帯状に形成されていることを特徴とする目地漏水阻止構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載された目地漏水阻止構造において、
上記連結シール部材は可塑変形可能なゴム粘弾性体で構成されていることを特徴とする目地漏水阻止構造。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載された目地漏水阻止構造において、
上記第1及び第2シート部材のうち少なくとも一方は、それらの重複部分において上記連結シール部材側に折り返された部分を有することを特徴とする目地漏水阻止構造。
【請求項7】
請求項3又は4に記載された目地漏水阻止構造において、
上記連結シール部材は層間で摺動可能な二重層に構成されていることを特徴とする目地漏水阻止構造。
【請求項8】
請求項1又は2に記載された目地漏水阻止構造において、
上記防水層は、上記一対の用水路構成部材の連設方向に折り返されて厚さ方向に重畳された部分を有し、該重畳部分によって上記伸張可能部が構成されていることを特徴とする目地漏水阻止構造。
【請求項9】
用水路を構成するように一対の用水路構成部材を連設し、
上記一対の用水路構成部材の目地を内側から覆うように下地モルタル層を設け、
上記下地モルタル層上に上記一対の用水路構成部材の目地に対応して覆うように防水層を設け、
上記下地モルタル層上に上記防水層を埋設するように保護モルタル層を積層する目地漏水阻止構造の施工方法であって、
上記防水層として、上記一対の用水路構成部材の連設方向への伸張が可能な伸張可能部が設けられたものを用いることを特徴とする目地漏水阻止構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−111803(P2011−111803A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269171(P2009−269171)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】