説明

目隠し用フィルム

【課題】目隠しフィルム表面のマット層は樹脂と、顔料の混合物であり、そのつや消し度は樹脂と顔料の混合比による。顔料の割合を多くするとつや消し度は上がるが室内が暗くなり、顔料の割合を少なくするとつや消し度が落ちるが室内は明るくなるという二律背反性がある。そこで、つや消し度と室内の明るさが両立する目隠しフィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】マット層塗料の体質顔料として大粒径顔料を選択し、少量の小粒径顔料を添加する。その際、樹脂に対する顔料の添加量および、顔料としての大粒径顔料と小粒径顔料の比を限定することにより、つや消し度と室内の明るさが両立する目隠しフィルムを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラスに貼合したときに優れた目隠し効果を有し、かつ室内の明るさを保つ、目隠し用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業施設の大面積透明窓ガラス等の下部等を目隠しするために装飾用フィルムを貼合することが行なわれている。この装飾用フィルム(例えば特許文献1参照)を貼ることにより、ガラス面が磨りガラス状になり、平行光線が遮光されるので外からの視界が妨げられるが、外光(拡散光線)は入ってくるので、室内はそれほど暗くならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−530147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、磨りガラス状にするためにガラスに貼るフィルムは、フィルム表面に微細な凹凸を施している。その凹凸を施す方法にはいくつかあり、代表的な方法として、フィルム表面に砂を打ち付けるサンドブラスト法、フィルム表面に塗料を塗布し乾燥する塗工法がある。近年は量産性に優れた後者の塗工法をとることが多い。
【0005】
この塗工法に用いる塗料による塗膜は主に、バインダーとなる樹脂と、顔料の混合物であり、そのつや消し度は樹脂と顔料の種類の選択、および樹脂と顔料の混合割合によるところが大きい。樹脂は通常透明なものを用い、顔料は、体質顔料および白色顔料のどちらかまたは双方の混合物を用いる。その場合、顔料の割合を多くするとつや消し度は上がるが、光線透過率は下がるので、その塗膜をもつフィルムを窓ガラスに貼った場合は室内が暗くなる。逆に、顔料の割合を少なくすると光線透過率は上がるがつや消し効果が不足し、外からの視界遮蔽性が落ちる。
【0006】
このようにフィルム面塗膜の樹脂と顔料の割合により、つや消し効果と室内の明るさが決まるので、双方の妥協点で塗料設計をしなければならなかった。
【0007】
そこで、発明者は、窓ガラスに貼ると、つや消し効果と室内の明るさが両立するつや消し粘着フィルムを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、マット層塗料の体質顔料として大粒径顔料を選択し、少量の小粒径顔料を添加した。そして、樹脂に対する顔料の添加量および、顔料としての大粒径顔料と小粒径顔料の比を一定の割合とすることにより、つや消し効果と室内の明るさが両立するつや消しフィルムを得ることができることを見出した。
【0009】
そして上記つや消しフィルム裏面に粘着層を塗布し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の目隠し用フィルムはプラスチックフィルムの一方の面にマット層を有するフィルムであって、前記マット層は、バインダー樹脂と顔料とを含み、前記顔料は平均粒径1μm以上の大粒径顔料および平均粒径100nm以下の小粒径顔料を含み、前記小粒径顔料の含有量が前記大粒径顔料100重量部に対し10重量部以下であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の目隠し用フィルムは、前記バインダー樹脂と顔料の割合が、バインダー100重量部に対し顔料が150〜220重量部であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、得られるフィルムを窓ガラスに貼ると、外部からの視界を十分妨げることができるので、優れた目隠し効果が得られる。また、そのガラス面は十分な拡散光透過性があるので、室内の明るさが不足することがない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目隠し用フィルムは、プラスチックフィルムの一方の面にマット層を有するもので、前記マット層は、バインダー樹脂と顔料とを含み、前記顔料は2種の粒径の顔料を含み、前記バインダー樹脂および前記2種の顔料の構成比を限定することを特徴とするものである。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明の目隠し用フィルムは、プラスチックフィルムの一方の面にマット層を有する構成となっている。
【0015】
プラスチックフィルムとしては、各種透明プラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、フッ素系樹脂などからなるプラスチックフィルムを用いることができる。これらプラスチックフィルムの厚みは特に制限されないが、6μm〜2mm程度とすることが好ましく、さらには12μm〜200μm程度とすることが好ましい。また、これらプラスチックフィルムは全光線透過率が90%以上のものが好ましい。紫外線吸収剤や光安定剤を含有しているものでも良い。
【0016】
マット層に含まれるバインダー樹脂としてはアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などがあげられる。これらの樹脂の中から、使用するフィルム基材への接着性、透明性、使用する顔料の分散性等を考慮し、選択することができる。
【0017】
マット層に含まれる顔料としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム等を使用することができる。
【0018】
マット層は粒径の異なる2種の顔料を含み、一方は大粒径顔料、もう一方は小粒径顔料とする。大粒径顔料は平均粒径が1μm以上、好ましくは2μm以上とし、小粒径顔料は平均粒径が100nm以下、好ましくは50nm以下にする。
【0019】
小粒径顔料の含有量は、大粒径顔料100重量部に対し10重量部以下にするのが好ましい。大粒径顔料と小粒径顔料の比をこのようにすると、小粒径顔料を加えないとき、または10重量部を超えて加えたときと比較して、このフィルムを透過する光のうちの拡散光線の透過率が上がるので、全光線透過率も上がり、明るいマットフィルムが得られる。
【0020】
これは塗膜中の顔料充填が大粒径顔料だけのときと比較してある程度細密になるため平行光線透過はやや減少するものの、拡散光線透過が増加するので、全体としてはヘイズが高く明るいマットフィルムとなる。しかし、小粒径顔料の割合がある量を超えると塗膜自体の隠蔽性が増加し拡散光線透過も減少するので全光線透過率も下がり、暗いマットフィルムになると考えられる。
【0021】
また、前記2種の顔料の合計含有量は、バインダー樹脂100重量部に対して150〜220重量部にするのが好ましく、170〜210重量部とすることがさらに好ましい。バインダー樹脂100重量部に対して、前記2種の顔料の合計含有量を150重量部以上とすることにより、目隠し効果が十分なものとなり、220重量部以下とすることにより、明るさを保つことができる。
【0022】
大粒径顔料に用いる顔料は前記使用可能な顔料群の中でも、汎用品の粒度および価格などの点から硫酸バリウムが好適である。また、上記小粒径顔料に用いる顔料は前記顔料群の中でも、同様の理由でシリカが好適である。
【0023】
この際、マット層の厚みは、5〜15μmが好ましい。マット層の厚みが5μm以上であると塗膜は顔料を保持する力があり、顔料が脱落しにくい。また、マット層の厚みが15μm以下であれば塗膜にひびが入る等の塗膜欠陥が発生し難い。さらにマット層の厚みが15μm以下であれば塗布液コストは低く、塗布後の乾燥時間は比較的短いので生産工程上でもコスト高になることはない。
【0024】
プラスチックフィルムのマット層とは反対側の面には、被着体に貼り合わせるための接着層を設けることが好ましい。接着層としては、アクリル系感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤などの感圧接着剤、ホットメルト接着剤などの接着剤の他、熱圧着可能な熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることができる。感圧接着剤を用いる場合、接着層上には、目隠し用フィルムの取り扱い性を損なわないようにセパレータを貼り合わせておくことが好ましい。セパレータとしては、各種合成樹脂フィルムに離型処理を施したものなどを使用することができる。
【0025】
なお、マット層、および接着層には、紫外線吸収剤、または紫外線遮蔽剤を添加しても良い。そうすることによって、目隠し用フィルムを貼合した被着体の内側にある物の紫外線劣化を防ぐことができる。
【0026】
上述したマット層、接着層中には、硬化剤、レベリング剤などの添加剤を添加してもよい。
【0027】
以上のようなマット層、接着層を設ける方法としては、各層を構成する材料を、適宜必要に応じて添加剤や希釈溶剤等を加えて塗布液として調整して、当該塗布液を従来公知のコーティング方法により塗布、乾燥する方法があげられる。
【0028】
以上説明した本発明の目隠し用フィルムは、主として、窓ガラスなどの外側、または内側に貼り付けて使用されるが、接着層のないマットフィルムを透明ガラス窓の外側、または内側に吊るしても同様の効果が得られる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例により本発明を更に説明する。なお「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0030】
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の面に、表1の組成のマット層塗布液を乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布乾燥してマット層を形成、実施例1〜6および比較例1〜5の目隠し用フィルムを得た。
【0031】
【表1】

バインダー樹脂/ポリエステル樹脂(バイロン#200:東洋紡績社)
大粒径顔料/硫酸バリウム(BMH:堺化学工業社、平均粒径2.5μm)
小粒径顔料/シリカ(アエロジル#200:日本アエロジル社、平均粒径12nm)
有機溶剤/メチルエチルケトン40%、トルエン60%
【0032】
実施例1〜6および比較例1〜5で得られた目隠し用フィルムのマット層塗布面の裏面に、下記粘着層塗布液を塗布乾燥し、粘着層を設けた。得られたフィルムを透明窓ガラス表面に貼り、目隠し性能および貼合面の明るさおよび塗膜密着性を評価した結果を表2に示す。
【0033】
<粘着層塗布液>
・アクリル系粘着剤(アロンタックM-300:東亜合成社) 10部
・有機溶剤 20部
【0034】
1.目隠し性能
実施例1〜6および比較例1〜5の目隠し用フィルムのヘーズ(JIS K7136:2000)の値を測定し、この値を不透明性の指標とした。
【0035】
2.明るさ
実施例1〜6および比較例1〜5の目隠し用フィルムの全光線透過率(JIS K7361−1:1997)を測定し、この値を明るさの指標とした。
【0036】
3.塗膜密着性
実施例1〜6および比較例1〜5の目隠し用フィルム塗膜面に碁盤目状の切り込みを入れ、JIS K5400:1990に基づき碁盤目テープ剥離法により評価した。評価は剥離が全くなかったものを○、剥離が40%未満であったものを△、剥離が40%以上のものを×とした。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例1〜3および5は小粒径顔料が大粒径顔料100重量部に対し10重量部以下であり、バインダー樹脂100重量部に対し、2種の顔料の合計含有量が150〜220重量部であるので目隠し用フィルムとしてつや消し効果と室内の明るさ、および塗膜密着性がいずれも良好なものとなった。
【0039】
実施例4は小粒径顔料が大粒径顔料100重量部に対し10重量部以下であるが、バインダー樹脂100重量部に対し、2種の顔料の合計含有量が150重量部未満であるので目隠し度がやや不足ぎみではあるが良好の範囲であった。
【0040】
実施例6は小粒径顔料が大粒径顔料100重量部に対し10重量部以下であり、バインダー樹脂100重量部に対し、2種の顔料の合計含有量が220重量部を超えているので塗膜密着性が不足ぎみではあるが良好の範囲であった。
【0041】
比較例1は大粒径顔料のみで、小粒径顔料が入っていないので目隠し効果、および室内の明るさ共にやや不足し、目隠し用フィルムとして不適当なものとなった。
【0042】
比較例2〜5は小粒径顔料が大粒径顔料100重量部に対し10重量部を越えているので目隠し用フィルムとしては暗くなり、目隠し用フィルムとして不適当なものとなった。中でも比較例4、5は小粒径顔料の添加量が多いので塗膜密着性も下がり、さらに不適当なものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムの一方の面にマット層を有するフィルムであって、前記マット層は、バインダー樹脂と顔料とを含み、前記顔料は平均粒径1μm以上の大粒径顔料および平均粒径100nm以下の小粒径顔料を含み、前記小粒径顔料の含有量が前記大粒径顔料100重量部に対し10重量部以下であることを特徴とする目隠し用フィルム。
【請求項2】
前記バインダー樹脂100重量部に対し、前記2種の顔料の合計含有量が150〜220重量部であることを特徴とする請求項1記載の目隠し用フィルム。

【公開番号】特開2012−139950(P2012−139950A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−415(P2011−415)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】