説明

直動案内装置

【課題】静圧軸受に供給する圧縮空気を清浄にするための多大な装置を不要にすることで、直動案内装置の小型化及び製造コストの削減をすることができる直動案内装置を提供する。
【解決手段】固定部材4と、この固定部材4に両端が回転自在に支持された回転軸3と、この回転軸3の軸心方向に沿って直線的に移動するガイド部材2とを備える。このガイド部材2は、ハウジング5と、このハウジング5に取り付けられかつ前記回転軸3が同軸心状に挿通されたスリーブ6とを有する。前記回転軸3の回転によって動圧を発生させる動圧溝6bを前記スリーブ6の内周面6aに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密位置決めに用いられる直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野及び真空環境等において精密位置決めに用いられる直動案内装置101は、例えば、図4に示すようなものが知られている。即ち、スライド方向に平行に配置されるとともに、基台105上に両端を固定部材104により支持された一対の支持軸103と、この支持軸103が挿通されたガイド部材102とを有し、前記ガイド部材102の内壁102aに圧縮空気106を吹出すオリフィス102bを形成し、前記ガイド部材102の内壁102aと支持軸103との間に環状の隙間107を設けて静圧軸受を構成してガイド部材102をスライド自在に支持している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実公平5−18497号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の直動案内装置101において、ガイド部材102の内壁102aに供給する圧縮空気106が油等で汚れている場合、内壁102aと支持軸103との間に適正な静圧が発生しない。よって、適正な静圧軸受を構成するためには常に清浄な圧縮空気106を供給する必要がある。しかし、清浄な圧縮空気106を供給するためには、直動案内装置101の外部に別途、圧縮空気106を清浄にするための多大な装置が必要になり、且つ多大な製造コストを必要とするという問題点があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、静圧軸受に供給する圧縮空気を清浄にするために必要な多大な装置を不要にすることで、直動案内装置の小型化及び製造コストの削減をすることができる直動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための本発明の直動案内装置は、固定部材と、この固定部材に両端が回転自在に支持された回転軸と、この回転軸の軸心方向に沿って直線的に移動するガイド部材とを備えている直動案内装置であって、前記ガイド部材は、前記回転軸が貫通された貫通孔を有しており、前記回転軸の回転によって動圧を発生させる動圧溝が前記貫通孔の内周面に形成されていることを特徴としている。
【0006】
このように構成された直動案内装置によれば、前記回転軸が回転することで前記貫通孔の内周面と当該回転軸の外周面との間に動圧を発生させるための動圧溝が当該貫通孔の内周面に形成されている。即ち、ガイド部材内部に前記貫通孔と前記回転軸とが非接触状態になる動圧軸受が構成されている。このため、前述した静圧軸受を構成する従来の直動案内装置に比べ、当該静圧軸受に供給する圧縮空気を清浄化するために必要な多大な装置が不要となるため、当該直動案内装置を小型化することができるとともに、当該直動案内装置の製造コストを削減することができる。
【0007】
また、前記ガイド部材は、ハウジングと、このハウジングに取り付けられかつ前記回転軸が同軸心状に挿通されたスリーブとを有しており、前記回転軸の回転によって動圧を発生させる動圧溝が前記スリーブの内周面に形成されていてもよい。
このような構造であれば、前記スリーブとして、既存の動圧ベアリングを利用することができるので、前記直動案内装置をより安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の直動案内装置によれば、静圧軸受に供給する圧縮空気を清浄にするために必要な多大な装置を不要にすることで、直動案内装置の小型化及び製造コストの削減をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の直動案内装置の実施の形態を説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る直動案内装置を示す斜視説明図である。図2は、図1におけるガイド部材を示す断面説明図である。図3は、本発明の第二実施形態に係る直動案内装置を示す斜視説明図である。図1において、直動案内装置1は、固定部材4と、この固定部材4に両端を回転自在に支持されるとともに同じ高さで水平且つ平行に支持される一対の回転軸3と、この回転軸3が挿通されたガイド部材2とを備えている。
【0010】
ガイド部材2は、図2に示すように、回転軸3の外周に設けられたハウジング5と、このハウジング5の内周に取り付けられたスリーブ6とを有している。
なお、ハウジング5は、プレス成形により鉄等の金属板から形成されたハウジング円筒部5bを有しており、このハウジング円筒部5bの内周面5cに円環状のスリーブ6が固定されている。
【0011】
また、スリーブ6には回転軸3が同軸心状に挿通されており、この回転軸3は、図示しないが例えば、回転軸3の外部に設けた整流子電動機や誘導電動機等により回転駆動する。
【0012】
そして、回転軸3が回転することでスリーブ6の内周面6aと回転軸3の外周面3aとの間に動圧を発生させるための動圧溝6bがスリーブ6の内周面6aに形成されている。 なお、動圧溝6bは図示したヘリングボーンの形状であることが好ましい。この構造により、回転軸3が一定速度以上で回転した場合、スリーブ6の内周面6aと回転軸3の外周面3aとの間に動圧が発生し、スリーブ6の内周面6aと回転軸3の外周面3aとが非接触状態となる。このため、スリーブ6の内周面6aと回転軸3の外周面3aとの間に隙間8が形成されるため、スリーブ6が回転軸3に沿ってスライドすることが可能となる。即ち、回転軸3に動圧溝6bを形成することにより、ガイド部材2が回転軸3に沿って直動的に移動することが可能となる。
【0013】
なお、前述したガイド部材2の回転軸3に沿ったスライド移動は、ガイド部材2の外部に別途設置した図示しない制御装置を用いて行う。この制御装置としては、例えばボールねじ構造により直動移動させる装置やリニアモータにより直動移動させる装置等がある。なお、当該制御装置としてリニアモータを使用すれば、ガイド部材2と当該制御装置が非接触となり発塵を防止できるため、本発明の直動案内装置を半導体製造分野或いは真空環境等の精密環境で用いることができる。
【0014】
また、回転軸3が一対となりガイド部材2に水平且つ平行に挿通されているため、前述した回転軸3の回転に伴って、ガイド部材2も共に回転するというおそれはない。
なお、固定部材4には、回転軸3の両端を回転自在に支持するための図示しない軸受装置が内蔵されているが、この軸受装置は動圧軸受装置であることが好ましい。この動圧軸受装置を用いた場合は発塵を防止できるため、前述と同様に、半導体製造分野或いは真空環境等で使用することができる。
【0015】
図3に本発明の他の実施形態に係る直動案内装置について示す。ここで示した直動案内装置10は、半導体製造分野で用いられる半導体ウエハー17を直線的に搬送するための装置であり、基台15に設けられた固定部材13と、この固定部材13に両端を回転自在に支持されるとともに水平且つ平行に支持される一対の回転軸12と、この一対の回転軸12がそれぞれ挿通されたガイド部材11とを備えている。そして、ガイド部材11には搬送テーブル16が設置されており、図示しない電動機の回転運動を直線運動に変換するボールねじ14の働きにより搬送テーブル16が直線的に移動し、半導体ウエハー17の直線的な搬送を可能としている。
【0016】
なお、ガイド部材11は図2で示したガイド部材2と同様の構造を有しているためその詳細な説明は省略するが、その内部に動圧軸受を構成し、回転軸12に沿って直線的に移動することが可能となっている。
また回転軸12についても、前述と同様に外部に別途設置された図示しない電動機等により回転駆動する。
【0017】
なお、本発明の直動案内装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、スリーブ6の内周面6aに形成された溝6bがヘリングボーンの形状をしているが、多円弧形状であってもよい。また、一対の回転軸3が同じ高さで水平且つ平行に配置されているが、直動案内装置1が稼働する状況に応じて例えば、異なる高さで水平かつ平行に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る直動案内装置を示す斜視説明図である。
【図2】図1におけるガイド部材を示す断面説明図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る直動案内装置を示す斜視説明図である。
【図4】従来の直動案内装置を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1、10、101 直動案内装置
2、11、102 ガイド部材
3、12 回転軸
4、13、104 固定部材
5 ハウジング
6 スリーブ
6a 内周面
6b 動圧溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、この固定部材に両端が回転自在に支持された回転軸と、この回転軸の軸心方向に沿って直線的に移動するガイド部材とを備えている直動案内装置であって、
前記ガイド部材は、前記回転軸が貫通された貫通孔を有しており、前記回転軸の回転によって動圧を発生させる動圧溝が前記貫通孔の内周面に形成されていることを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
固定部材と、この固定部材に両端が回転自在に支持された回転軸と、この回転軸の軸心方向に沿って直線的に移動するガイド部材とを備えている直動案内装置であって、
前記ガイド部材は、ハウジングと、このハウジングに取り付けられかつ前記回転軸が同軸心状に挿通されたスリーブとを有しており、前記回転軸の回転によって動圧を発生させる動圧溝が前記スリーブの内周面に形成されていることを特徴とする直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−19934(P2008−19934A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191200(P2006−191200)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】