説明

直動案内装置

【課題】スライダ間の軸方向距離に対してストロークが長い場合であっても、転動体保持器がスライダから外れて荷重を受けることができなくなるおそれのない転動体非循環式の直動案内装置を提供する。
【解決手段】直動案内装置は、案内レール1と、軸方向に相対移動可能に案内レール1に取り付けられたスライダ2と、案内レール1の転動体軌道面10上に軸方向に沿って並べられた複数の転動体3からなりその一部が転動体軌道面10,11間に配された転動体列と、案内レール1の転動体軌道面10上に転動体列を転動自在に保持するとともにスライダ2の相対移動に伴ってスライダ2と同方向に移動する転動体保持器4と、転動体保持器4の移動量をスライダ2の移動量の1/2とし、転動体保持器4の移動量に誤差が生じることを防止する移動誤差防止手段と、を備えている。そして、転動体保持器4は案内レール1の転動体軌道面10に摺接するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動体非循環式の直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の転動体循環式の直動案内装置の構成を、一例をあげて説明する。直動案内装置は、軸方向に延びる断面略角形の案内レールと、この案内レールに取り付けられた断面略コ字状のスライダと、を備えており、前記案内レールの両側面には、合わせて2列,4列等の転動体軌道面が軸方向に形成されている。
また、スライダは、スライダ本体と、その軸方向の両端部に取り付けられたエンドキャップと、で構成されている。このスライダ本体は、その両袖部の内側面に案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに、袖部の肉厚部分を軸方向に貫通する直線路を有している。そして、対向する両転動体軌道面で転動体転動路が形成されている。
【0003】
エンドキャップは、転動体転動路とこれに平行な直線路とを連通させる湾曲路を有している。そして、直線路と両端の湾曲路とで、転動体を転動体転動路の終点から始点へ送る転動体戻し路が構成され、この転動体戻し路と転動体転動路とで転動体循環路が形成されている。この転動体循環路内には、鋼球等からなる多数の転動体が装填されている。
案内レールに取り付けられたスライダは、転動体転動路内の転動体の転動を介して案内レールに沿って滑らかに移動し、その移動中、転動体はスライダ内の前記転動体循環路内を転動しつつ無限循環する。
【0004】
上記のような転動体がスライダの内部を移動して循環する方式の直動案内装置、すなわちに転動体循環式の直動案内装置おいては、転動体が負荷圏に入ったり負荷圏から出たりする際に、転動体に作用する荷重のアンバランスによって微小変動(以降においては、転動体通過振動と記すこともある)が生じる。この微小変動は、極めて微小な変動であるものの、高精度が要求される金型加工機用直動案内装置等においては問題となる場合があった。
【0005】
一方、上記のような転動体戻し路を備えておらず、転動体が上記のように循環しない方式の直動案内装置(以降は、転動体非循環式の直動案内装置と記す)がある。例えば、THK株式会社製のEPFシリーズの直動案内装置があげられる。従来の転動体非循環式の直動案内装置においては、転動体が負荷圏から出ることがないので、転動体通過振動は基本的には発生しないと考えられる。しかしながら、この方式の直動案内装置においては、スライダの軸方向長さを、転動体からの荷重を受ける範囲とストロークの1/2との合計の長さとする必要があるので、装置が大型化するという問題と長ストロークを実現しにくいという問題とがあった。
【0006】
そこで、特許文献1に開示の転動体非循環式の直動案内装置は、スライダの軸方向長さの全体で転動体からの荷重を受け得る構造とすることにより、転動体循環式の直動案内装置と同様に長ストローク化が容易となっている。また、複数の転動体列の各転動体の軸方向位置を転動体保持器を用いて揃えることにより、転動体通過振動が発生しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−115921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、XYテーブル等の直動テーブルを直動案内装置を用いて構成する場合、テーブルの大きさや質量に応じて、複数のスライダを備える直動案内装置を採用する場合がある。例えば、2個のスライダを備える案内レールを2本用いて、直動テーブルを構成する場合がある。
転動体通過振動を考慮すると、スライダの個数は1個にして軸方向長さを長くした方が有利だが、スライダが長いと加工が困難となったり、スライダの転動体軌道面の形状精度(例えば真直度)をスライダの全長にわたって高精度とすることが困難となったりするので、テーブルが大きい場合は必ずしも得策とは言えない。
【0009】
このような複数のスライダを備える転動体非循環式の直動案内装置においては、スライダ間のスパン(軸方向距離)に対してストロークが長い場合に、問題が生じる場合があった。例えば、2個のスライダを備える直動案内装置において、各スライダそれぞれに転動体保持器を用いた場合には、2個のスライダの間に両転動体保持器の軸方向端部が位置することになるが、スライダの移動量が大きくなると、2つの転動体保持器の向かい合う軸方向端部に一方のスライダが到達することとなる。そして、転動体保持器の軸方向端部が負荷圏に入ると、軸方向端部以降には転動体が存在しないので、荷重を受けることができなくなる。さらにスライダが移動すると、転動体保持器はスライダから外れ、荷重を受ける転動体が1個も存在しなくなってしまうとともに、転動体保持器はスライダから大きく離れた位置に移動可能となってしまう。
【0010】
このような問題が生じないようにするには、各スライダのストローク範囲をカバーするように各転動体保持器の長さを設定する必要があるが、両転動体保持器が接触する位置まで転動体保持器の長さを延長したとしても、2個のスライダ間の軸方向距離は大きくとる必要がある。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、複数のスライダを備える転動体非循環式の直動案内装置において、スライダ間の軸方向距離に対してストロークが長い場合であっても、転動体保持器がスライダから外れて荷重を受けることができなくなるおそれのない直動案内装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の態様は、次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係る直動案内装置は、軸方向に延びる転動体軌道面を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体軌道面上に軸方向に沿って並べられた複数の転動体からなりその一部が前記両転動体軌道面間に配された転動体列と、前記案内レールの転動体軌道面上に前記転動体列を転動自在に保持するとともに前記スライダの相対移動に伴って前記スライダと同方向に移動する転動体保持器と、前記転動体保持器の移動量を前記スライダの移動量の1/2とし、前記転動体保持器の移動量に誤差が生じることを防止する移動誤差防止手段と、を備えた直動案内装置において、前記転動体保持器は前記案内レールに接触していることを特徴とする。
このような構成であれば、転動体保持器が案内レールに案内されて移動することとなるので、移動誤差防止手段により発生する力を転動体保持器が受けても、その力を案内レールとの滑りで受けることができる。
【0012】
また、本発明の他の態様に係る直動案内装置は、軸方向に延びる転動体軌道面を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体軌道面上に軸方向に沿って並べられた複数の転動体からなりその一部が前記両転動体軌道面間に配された転動体列と、前記案内レールの転動体軌道面上に前記転動体列を転動自在に保持するとともに前記スライダの相対移動に伴って前記スライダと同方向に移動する転動体保持器と、前記転動体保持器の移動量を前記スライダの移動量の1/2とし、前記転動体保持器の移動量に誤差が生じることを防止する移動誤差防止手段と、を備えた直動案内装置において、前記転動体保持器は、前記転動体をインサートとしたインサート成形によって製造されたものであることを特徴とする。
このような転動体保持器は、転動体を包み込んで保持する構造を有しており、転動体によって案内されて移動することとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の直動案内装置は、スライダ間の軸方向距離に対してストロークが長い場合であっても、転動体保持器がスライダから外れて荷重を受けることができなくなるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る直動案内装置の第一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1の直動案内装置を軸方向から見た正面図である。
【図3】転動体保持器を構成する小保持器の側面図である。
【図4】小保持器の上面図である。
【図5】小保持器の下面図である。
【図6】小保持器の正面図である。
【図7】図3のX−X断面図である。
【図8】フタ部材の側面図である。
【図9】複雑タイプの金型を説明する図である。
【図10】分割された置きゴマを備える金型を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る直動案内装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明に係る直動案内装置の第一実施形態を示す側面図である。また、図2は、図1の直動案内装置を軸方向から見た正面図である。
軸方向に延びる横断面略角形の案内レール1上に、スライダ2が軸方向に相対移動可能に組み付けられている。スライダ2の横断面形状は略コ字状で、その内面の横断面形状は、案内レール1の外面の横断面形状に沿う形状とされている。この案内レール1の両側面1a,1aには、軸方向に延びる2条の転動体軌道面10,10がそれぞれ形成されている。
【0016】
また、スライダ2の両袖部6,6の内側面には、案内レール1の転動体軌道面10,10に対向する2条の転動体軌道面11,11がそれぞれ形成されている。そして、案内レール1の転動体軌道面10,10,10,10と両袖部6,6の転動体軌道面11,11,11,11とで4つの転動体転動路が形成されていて、これらの転動体転動路は軸方向に延びている。なお、案内レール1及びスライダ2が備える転動体軌道面10,11の数は、片側二条に限らず、例えば片側一条又は三条以上などであってもよい。
さらに、案内レール1の各転動体軌道面10上には、軸方向に沿って並べられた複数の転動体3が転動自在に配されていて、これら転動体3により転動体列が形成されている。なお、図1,2においては、転動体3は玉とされているが、ころを用いてもよい。
【0017】
さらに、スライダ2の内面と案内レール1の外面との間には、案内レール1の転動体軌道面10上に転動体3を転動自在に保持する転動体保持器4が配されている。転動体保持器4の横断面形状は、スライダ2の内面の横断面形状及び案内レール1の外面の横断面形状に沿う略コ字状であり、その両側部(案内レール1の側面1aとスライダ2の袖部6の内側面とに挟まれる部分)には、転動体3を収容して転動自在に保持する複数のポケットが軸方向に沿って一定間隔で並んで形成されている。そして、転動体軌道面10上に配された転動体3の軸方向位置が、他条の転動体軌道面10上に配された転動体3の軸方向位置と揃うように、ポケットが形成されている。したがって、スライダ2の移動に伴って転動体3が転動体転動路から出たり入ったりするタイミングは、各列の転動体軌道面10で揃うことになる。
【0018】
転動体保持器4の軸方向長さは、スライダ2の軸方向長さよりも十分に長いため、前記転動体列の一部は両転動体軌道面10,11間(すなわち転動体転動路)に配されているが、前記転動体列の残部は両転動体軌道面10,11間には配されておらず、図1のように露出している。
このような直動案内装置においては、案内レール1に組みつけられたスライダ2は、転動体転動路内の転動体3の転動を介して、案内レール1に沿って軸方向に滑らかに移動することができる。このとき、転動体保持器4は、スライダ2の移動に伴ってスライダ2と同方向に移動する。スライダ2が移動しても、移動した所には転動体保持器4に保持された転動体3が存在するので、その転動体3の転動を介して移動を続けることができる。よって、本実施形態の直動案内装置は、転動体通過振動が抑制され、且つ、スライダ2の長いストロークが確保される。
【0019】
このような直動案内装置においては、転動体保持器4の移動量に誤差が生じることを防止する移動誤差防止手段が設けられている。図1,2の直動案内装置における移動誤差防止手段は、ラックアンドピニオン5で構成されている。すなわち、軸方向に沿うように転動体保持器4に取り付けられた第一のラック21と、軸方向に沿うように案内レール1に取り付けられた第二のラック22と、スライダ2に回転自在に取り付けられ両ラック21,22に噛み合うピニオン23と、からなるラックアンドピニオン5で構成されている。第一のラック21の軸方向長さは転動体保持器4の軸方向長さと同一とし、第二のラック22の軸方向長さは案内レール1の軸方向長さと同一とするとよい。図2においては、案内レール1の側面1aに第二のラック22を取り付け、スライダ2の袖部6の外側面にピニオン23を取り付けてある。
【0020】
このピニオン23は、第一のラック21に噛み合う第一の歯車23aと第二のラック22に噛み合う第二の歯車23bとが同心軸に固定された二段歯車である。そして、第二の歯車23bのピッチ円直径(PCD)が第一の歯車23aのピッチ円直径(PCD)の2倍となっている。
このような構成であれば、ピニオン23は第一のラック21及び第二のラック22に常に噛み合うことができるので、スライダ2及び転動体保持器4が移動した際に、第一のラック21及び第二のラック22からピニオン23が外れて噛み合わなくなってしまうおそれがない。よって、設けるピニオン23の個数は1個で十分となり、部品点数の削減が達成されるとともに、直動案内装置の組み立ての手間や時間を低減することができるので、直動案内装置の製造コストを低減することができる。
【0021】
なお、転動体保持器4と第一のラック21とを別部材とし、転動体保持器4に第一のラック21を取り付けてもよいが、転動体保持器4の一部分にピニオン23と噛み合う歯を成形又は加工により形成して、第一のラック21としてもよい。転動体保持器4と第一のラック21とを別部材とすれば、例えば転動体保持器4よりも軸方向長さの長い第一のラック21を用いることにより、第一のラック21を継ぎ目の少ない又は無い構造とすることができる。第一のラック21に継ぎ目があると、そこに段差ができて、ピニオン23が段差を通過する際に引っかかりが生じるおそれがあるが、継ぎ目が少ない又は無いと、そのようなトラブルが抑制される。
【0022】
一方、第一のラック21を転動体保持器4に形成すれば、部品点数を少なくすることができるので、コスト低減に寄与する。ただし、この場合は、第一のラック21の継ぎ目に段差が生じないようにすることが好ましい。段差を防止する方法としては、例えば、第一のラック21の一端面に凸部を設け、他端面に前記凸部と嵌合する凹部を設け、この凸部と凹部とを嵌合することにより第一のラック21を連結する方法があげられる。また、第一のラック21の両端面にフックを設け、フック同士を引っかけることにより第一のラック21を連結してもよい。さらに、第一のラック21の下側や裏側に、別部材のバックプレートを設けてもよい。
【0023】
ここで、転動体保持器4の構造について説明する。転動体保持器4は、一体的に形成された部材からなるものでもよいが、本実施形態の直動案内装置においては、図1に示すように、軸方向長さの短い小保持器4Aを軸方向に複数連結して1つの転動体保持器4を構成している。このような構成であれば、小保持器4Aを樹脂の射出成形により安価に大量生産して、直動案内装置の使用条件やストロークに応じて小保持器4Aを連結し、所望の軸方向長さの転動体保持器4を構成することができる。
【0024】
転動体保持器4を構成する小保持器4Aの側面図を図3に、上面図を図4に、下面図を図5に、正面図を図6に、X−X断面図を図7に示す。小保持器4Aは、軸方向に沿って等間隔に並べられ互いに平行をなす複数の板状部材と、これら板状部材を連結して固定する天板43及び側板44と、で構成される略直方体形状の部材である。この板状部材として、小保持器4Aの軸方向両端に配された端板42,42と、両端板42,42の間に配され隣り合う転動体3同士を隔てて各列の転動体3の軸方向位置を揃える複数の中間板41と、がある。また、天板43は板状部材の上部、側板44は板状部材の両側部に配されており、天板43及び側板44はいずれも軸方向に延びて全ての板状部材を連結している。また、各小保持器4Aの両端板42,42間を連結するように、ラック取付部45が設けられている。さらに、小保持器4Aには、小保持器4A同士を互いに連結するための連結部46が設けられている。
【0025】
端板42には、転動体3を下方から支持してその落下を防ぐ棒状のフタ部材47(図8を参照)を取り付けるための貫通孔42aが形成されており、フタ部材47の端部に設けられた突起を貫通孔42aに嵌め込むことにより、フタ部材47が両端の端板42,42間に軸方向に沿うように取り付けられている。天板43と側板44との間に形成される隙間、及び、側板44とフタ部材47との間に形成される隙間は、いずれも転動体3の直径よりも小さくなっている。これにより、転動体3が案内レール1とスライダ2との間に拘束されていない場合でも、転動体保持器4に保持された転動体3が脱落するおそれはない。
【0026】
また、図6から分かるように、端板42の横断面形状は、スライダ2の内面の横断面形状及び案内レール1の外面の横断面形状に沿う略コ字状となっている。端板42のうち案内レール1の転動体軌道面10に対向する部分は、転動体軌道面10に摺接するようになっている。この端板42の摺接部42bと案内レール1の転動体軌道面10とが滑り接触することにより、転動体保持器4は案内レール1に案内されて移動することとなる。これにより、第一のラック21とピニオン23とが噛み合うことにより発生する力を転動体保持器4が受けても、その力を案内レール1との滑りで受けることができる。
【0027】
転動体保持器4と案内レール1との接触箇所は、転動体軌道面10に限定されるものではなく、例えば、案内レール1の上面や側面1aのうち転動体軌道面10以外の部分と接触してもよいし、転動体軌道面10を含む案内レール1の上面及び側面1aの全体と接触してもよい。そして、転動体保持器4の摺接部42bには、シールやスクレーパーの役割を付与してもよい。そうすれば、案内レール1に付着した異物を容易に取り除くことができる。また、転動体保持器4と案内レール1との間に僅かな隙間を設け、ラビリンスシールを構成してもよい。
【0028】
なお、本実施形態においては、端板42と中間板41とではその形状は異なっており、端板42のみに転動体軌道面10に摺接する摺接部42bが設けられている。これは、小保持器4Aを樹脂の射出成形により安価に大量生産することを狙ったものである。射出成形において用いる金型としては、例えば、小保持器4Aの上下方向及び軸方向両方向の4方向に開く4つの型からなる金型が好ましい。このような金型を用いれば、いくつかに分けられたキャビティに樹脂を射出した後に金型をスライドしてキャビティを繋ぎ合わせて製品にする複雑タイプの金型を用いなくても、安価に小保持器4Aを製造することができる。
【0029】
上記複雑タイプの金型は構造が非常に複雑で高価であるため、このような複雑タイプの金型を用いると小保持器4Aの製造コストが上昇してしまうが、コストが許すのであれば上記複雑タイプの金型を使用しても差し支えない。そうすれば、中間板41にも、転動体軌道面10に摺接する摺接部を設けることができる。また、4列の転動体軌道面10のうち上方の2列のみに摺接する摺接部を、中間板41に設けてもよい(これは、上記複雑タイプの金型を使用しなくても可能である)。
【0030】
〔第二実施形態〕
第二実施形態の直動案内装置の構成及び作用は、第一実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
第一実施形態においては、転動体保持器と案内レールとが滑り接触することにより、転動体保持器が案内レールに案内されて移動するようになっていたが、第二実施形態においては、転動体保持器と案内レールとは接触せず、転動体保持器は転動体によって案内されて移動するようになっている。そのためには、転動体保持器は、転動体を包み込んで保持する構造を有している必要がある。
【0031】
このような構造の転動体保持器は、非常に複雑な形状となるので、一般的な射出成形法のような安価な製造方法で製造することは困難であり、前述した複雑タイプの金型を用いた射出成形法により製造することができる。また、転動体を包み込んで保持する部分と、その部分以外の部分とを分割して別々に製造し、後に組み立てることにより、上記構造の転動体保持器を製造することもできる。さらに、上記複雑タイプの金型又は分割された置きゴマ(金型の一部であるが、射出成形の際に製品と共に金型本体から外れるようになっている)を備える金型を用いて、転動体をインサートとしたインサート成形により上記構造の転動体保持器を製造することもできる。
【0032】
上記複雑タイプの金型の例を図9に示す。なお、以下の説明における上下左右等の方向を示す用語は、特に断りがない限り、説明の便宜上、各図におけるそれぞれの方向を意味する。
この例では、3つの型51,52,53で金型が構成されている。型51と型52との間、及び、型51と型53との間に転動体を介装しておき、樹脂を射出後に型51を右方に引き抜き、型52を上方に移動させて型53と合わせ、転動体保持器を構成する2つの部材を繋ぐことにより、転動体保持器を製造することができる。
【0033】
また、分割された置きゴマを備える金型の例を図10に示す。この例では、2つの型54,55と3つの置きゴマ56,57,58とで金型が構成されている。型54と置きゴマ56との間、及び、型55と置きゴマ58との間に転動体を介装しておき、樹脂を射出後に型54を左方に引き抜くとともに型55を右方に引き抜く。すると、3つの置きゴマ56,57,58が付いたまま製品が取り出される。置きゴマ57を下方に引き抜くと、置きゴマ56,58も外れるので、製品が得られる。
なお、転動体保持器が転動体によって案内されて移動する際に、案内レールとの滑りが問題となる場合には、例えば案内レールの側面を転動するローラフォロア等を転動体保持器に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 案内レール
2 スライダ
3 転動体
4 転動体保持器
4A 小保持器
5 ラックアンドピニオン
10 転動体軌道面
11 転動体軌道面
21 第一のラック
22 第二のラック
23 ピニオン
23a 第一の歯車
23b 第二の歯車
42b 摺接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる転動体軌道面を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体軌道面上に軸方向に沿って並べられた複数の転動体からなりその一部が前記両転動体軌道面間に配された転動体列と、前記案内レールの転動体軌道面上に前記転動体列を転動自在に保持するとともに前記スライダの相対移動に伴って前記スライダと同方向に移動する転動体保持器と、前記転動体保持器の移動量を前記スライダの移動量の1/2とし、前記転動体保持器の移動量に誤差が生じることを防止する移動誤差防止手段と、を備えた直動案内装置において、
前記転動体保持器は前記案内レールに接触していることを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
軸方向に延びる転動体軌道面を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体軌道面上に軸方向に沿って並べられた複数の転動体からなりその一部が前記両転動体軌道面間に配された転動体列と、前記案内レールの転動体軌道面上に前記転動体列を転動自在に保持するとともに前記スライダの相対移動に伴って前記スライダと同方向に移動する転動体保持器と、前記転動体保持器の移動量を前記スライダの移動量の1/2とし、前記転動体保持器の移動量に誤差が生じることを防止する移動誤差防止手段と、を備えた直動案内装置において、
前記転動体保持器は、前記転動体をインサートとしたインサート成形によって製造されたものであることを特徴とする直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−255556(P2012−255556A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186380(P2012−186380)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2008−329788(P2008−329788)の分割
【原出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年10月29日掲載,http://www.jp.nsk.com/jp/index.html http://www.jp.nsk.com/jp/press/index.html http://www.jp.nsk.com/jp/press/08/pre08102901.html (刊行物等)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 「JIMTOF2008(第24回日本国際工作機械見本市)」,社団法人日本工作機械工業会 株式会社東京ビッグサイト(共催),平成20年10月30日〜平成20年11月4日開催
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】