説明

直動装置

【課題】進み角の差異によるメリットを有効活用した上で、進み角が小さいねじ部で回転動作している状態においてハウジングと駆動軸とを軸方向に沿って相対移動させるべく操作力が加わった場合に、この操作力によってハウジングと駆動軸とを軸方向に沿って相対移動させること。
【解決手段】回転体30が、駆動めねじ部34を介して駆動軸50の駆動おねじ部51に螺合する一方、駆動軸50の駆動ねじ部51よりも小さい進み角で形成した伝達おねじ部36を介してハウジング20に螺合している。このため、軸方向に操作力が加わった場合に、進み角が大きい駆動めねじ部34および駆動おねじ部51が回転動作することになり、ハウジング20と駆動軸50とを軸方向に沿って相対移動させることができる。これにより、バックドアDの開閉操作によって、車両の取り付け部分に負荷がかかる事態を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直動装置は、例えば、車両におけるバックドアの開閉作業の容易化を図るために用いられている。この直動装置は、互いに同一軸心上となる位置に配置されるケースとハウジングとを備えて構成されている。ケースは、同一軸心上となる位置に駆動軸を備えている。この駆動軸は、外周面におねじ部が形成されたもので、駆動モータの駆動によってケースに対して相対的に回転するように構成されている。ハウジングは、めねじ部を介して駆動軸に螺合されている。このような直動装置は、ケースとハウジングとのいずれか一方が車両に取り付けられ、他方がバックドアに取り付けられる。この直動装置では、駆動軸のおねじ部とハウジングのめねじ部とが螺合しているため、該駆動軸の回転動作に従ってケースとハウジングとが互いに軸方向に沿って相対移動することになる。これにより、直動装置を伸縮動作させることが可能となり、車両に対してバックドアを開閉することが可能となる。
【0003】
一般的に、おねじ部およびめねじ部は、進み角を小さくしていくと、軸方向に沿って移動する際の力が大きくなるものの、1回転当たりの軸方向に沿った移動量が小さくなり、逆に、進み角を大きくしていくと、1回転当たりの軸方向に沿った移動量を大きくすることができるものの、軸方向に沿って移動する際の力は小さくなるという相反する性質を持つ。
【0004】
従来の直動装置の中には、こうした進み角の差異によるメリットを有効活用すべく、駆動軸に進み角が異なる複数のおねじ部を形成したものも提供されている。この直動装置によれば、例えば伸長動作する際に、動作初期において進み角が小さい部分で大きな力を発生することができ、その後、進み角が大きい部分において1回転当たりの軸方向の移動量を大きくすることができようになる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0060463号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した直動装置では、駆動軸の回転動作に従って伸縮動作している状態においてバックドアが手動で開閉操作されても、この開閉操作が阻止される場合がある。例えば、上述した例では、伸長動作する際の動作初期においてバックドアが手動で開操作されても、進み角が小さいためハウジングに対して駆動軸が回転することができず、結局開操作によるハウジングと駆動軸との軸方向に沿った相対移動が阻止されることになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、進み角の差異によるメリットを有効活用した上で、進み角が小さいねじ部で回転動作している状態においてハウジングと駆動軸とを軸方向に沿って相対移動させるべく操作力が加わった場合に、この操作力によってハウジングと駆動軸とを軸方向に沿って相対移動させることのできる直動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る直動装置は、第1の進み角で形成した駆動ねじ部を有し、駆動源の駆動により軸心回りに回転する駆動軸と、前記駆動軸の軸心回りに該駆動軸と相対回転した場合に、前記駆動軸に対して該駆動軸の軸方向に沿って移動するように前記駆動ねじ部に係合する駆動係合部と、この駆動係合部と同一軸心上となる部位に、前記第1の進み角と異なる第2の進み角で形成した伝達ねじ部とを有した回転体と、前記回転体の軸心回りに該回転体と相対回転した場合に、前記回転体に対して該回転体の軸方向に沿って移動するように前記伝達ねじ部に係合する伝達係合部を有したハウジングとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転体が、駆動係合部を介して駆動軸の駆動ねじ部に係合する一方、駆動軸の駆動ねじ部と異なる第2の進み角で形成した伝達ねじ部を介してハウジングに係合している。このため、駆動軸が回転すると、ハウジングと駆動軸とが軸方向に沿って相対移動する際に大きな力が必要な状態においては、駆動ねじ部および駆動係合部と、伝達ねじ部および伝達係合部とのいずれか進み角が小さい側が相対回転する一方、ハウジングと駆動軸とが軸方向に沿って相対移動する際に必要な力が小さくなった状態においては、いずれか進み角が大きい側が相対回転することになる。したがって、ハウジングと駆動軸とが軸方向に沿って相対移動する際に要する力の大きさに応じて、回転動作するねじ部が切り替わることになり、進み角の差異によるメリットを有効活用することができる。しかも、軸方向に操作力が加わった場合に、必ず進み角が大きいねじ部が回転動作することになり、ハウジングと駆動軸とを軸方向に沿って相対移動させることができる。これにより、例えば、従来のように、バックドアの開閉手段として直動装置を適用した場合に、該バックドアの開閉操作によって、車両の取り付け部分に負荷がかかる事態を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる直動装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1〜図3は、本発明の実施の形態である直動装置を示したものである。ここで例示する直動装置は、図4に示すような四輪自動車の車両本体Bにおいて、後端部に配置された上方ヒンジのバックドアDを開閉する開閉手段として適用されるもので、ケース10、ハウジング20および回転体30を備えて構成してある。
【0012】
ケース10は、図1に示すように、円筒状のケース本体11に一端部を閉塞する態様で連結体12を取り付けたものである。ケース本体11は、基部11a、収容端部11bおよび突設端部11cを有している。基部11aは、ケース本体11において内径を局部的に小さくした部分である。収容端部11bは、基部11aの一端部から軸方向の一方側に向けて突設した部分であり、基部11aと同一の外径を有する円筒状を成している。この収容端部11bは、内部に円柱状の第1収容空間13を画成している。突設端部11cは、基部11aの他端部から軸方向の他方側に向けて突設した部分であり、基部11aと同一の外径を有するように形成してある。この突設端部11cは、その一端部にカバー端部11dを有している。カバー端部11dは、突設端部11cの一端部から軸方向の他方側に向けて突設した部分であり、突設端部11cの外径よりも小さな外径を有する円筒状を成している。このカバー端部11dは、突設端部11cと同一の内径を有し、突設端部11cとともに、内部に円柱状の第2収容空間14を画成している。
【0013】
また、ケース本体11には、図1に示すように、基部11aの他端面に第1規制体15が設けてある。第1規制体15は、基部11aの内径よりも大きな内径を有し、かつ突設端部11cの内径よりも小さな外径を有する環状の部材である。この第1規制体15は、基部11aの他端面に同一軸心となる態様で取り付けてある。また、第1規制体15は、強度が高く、かつ可能な限り摩擦係数が小さい材料で構成することが好適である。
【0014】
連結体12は、栓部12aおよび連結部12bを有している。栓部12aは、ケース本体11における収容端部11bの内径とほぼ同一の外径を有する円盤状の部分である。連結部12bは、栓部12aの一端面から突出した突出部12cの突出端部に球状を成すピボット部12dを形成した部分である。
【0015】
ハウジング20は、図1に示すように、有底円筒状のハウジング本体21の底部に連結体22を取り付けたものである。ハウジング本体21は、筒部21aおよび蓋部21bを有している。筒部21aは、ハウジング本体21において円筒状を成す部分であり、ケース本体11におけるカバー端部11dの外径よりも大きく、該ケース本体11における突設端部11cの外径よりも小さな内径を有するように形成してある。蓋部21bは、筒部21aの一端部を閉塞する態様で設けた部分である。この蓋部21bは、その一端部に回転体係合部21cを有している。回転体係合部21cは、蓋部21bの一端部から軸方向において筒部21aの他端部側に向けて突設した部分であり、筒部21aよりも軸方向長さが短く、かつ該筒部21aと同一軸心となる円筒状を成している。この回転体係合部21cには、一端部に伝達凸部21dが形成してある。伝達凸部21dは、回転体係合部21cの一端部において内径を局部的に小さくした環状の凸部である。この伝達凸部21dの内壁面には、伝達めねじ部(伝達係合部)21eが形成してある。この伝達めねじ部21eは、例えば、1条のねじ溝で形成してある。
【0016】
また、ハウジング本体21には、図1に示すように、伝達凸部21dにおいて蓋部21bに対向する端面に第2規制体23が設けてある。第2規制体23は、伝達凸部21dの内径よりも大きな内径を有し、かつ回転体係合部21cの内径よりも小さな外径を有する環状の部材である。この第2規制体23は、伝達凸部21dの一端面に同一軸心となる態様で取り付けてある。また、第2規制体23は、強度が高く、かつ可能な限り摩擦係数が小さい材料で構成することが好適である。
【0017】
連結体22は、基部22aおよび連結部22bを有している。基部22aは、ハウジング本体21における筒部21aの内径とほぼ同一の外径を有する円盤状の部分であり、一端面が蓋部21bに対向配置してある。連結部22bは、基部22aの他端面から突出した突出部22cの突出端部に球状を成すピボット部22dを形成した部分である。
【0018】
回転体30は、図1に示すように、円筒状の係合部31の一端部に伝達部32を一体的に構成したものである。係合部31は、ハウジング本体21の回転体係合部21cよりも軸方向の長さが長く、かつケース本体11に設けた第1規制体15の外径よりも大きく、カバー端部11dの内径よりも小さな外径を有するように形成した部分である。この係合部31には、他端部に駆動凸部33が形成してある。駆動凸部33は、係合部31において内径を局部的に小さくした環状の凸部である。この駆動凸部33の内壁面には、駆動めねじ部(駆動係合部)34が形成してある。この駆動めねじ部34は、ハウジング本体21の伝達めねじ部21eよりも進み角を大きくした多条(例えば、2〜6条)のねじ溝で形成してある。
【0019】
伝達部32は、係合部31の一端部を閉塞する態様で設けた連結部35の一端面から該係合部31と同一軸心となる態様で突設した円柱状部分である。この伝達部32には、外周面に伝達おねじ部(伝達ねじ部)36が形成してある。この伝達おねじ部36は、ハウジング本体21の伝達めねじ部21eに螺合可能に形成してある。図1に示すように、この伝達おねじ部36の軸方向の長さは、伝達めねじ部21eの軸方向の長さよりも長くなるように構成してある。
【0020】
また、上記直動装置には、図1に示すように、ケース10におけるケース本体11の第1収容空間13に、カバー41、駆動モータ(駆動源)42および回転センサ43が収容してある。
【0021】
カバー41は、ケース本体11と同一軸心となる態様で、該ケース本体11における収容端部11bに固定した円筒状の部材である。駆動モータ42は、出力軸42aの軸心がケース本体11と同一軸心となる態様で、本体ケース42bがカバー41を介してケース本体11の収容端部11bに固定してある。この駆動モータ42は、電源が供給された場合に、出力軸42aを本体ケース42bに対して回転させるものである。回転センサ43は、駆動モータ42の出力軸42aの回転数を検出し、この検出結果を車両の制御部(図示せず)に出力するものである。
【0022】
また、駆動モータ42の出力軸42aには、図1に示すように、同一軸心上となる位置にクラッチ機構44および減速機構45を介して駆動軸50を支持させてある。クラッチ機構44は、駆動モータ42の出力軸42aと減速機構45との間に介在し、出力軸42aが回転する動作を減速機構45に伝達する伝達状態と、出力軸42aが回転する動作の減速機構45への伝達を断つ非伝達状態とに切り替え可能に構成してある。本実施の形態では、クラッチ機構44に、電源の供給によって伝達状態と非伝達状態とに切り替え可能に構成した電磁クラッチを適用している。減速機構45は、クラッチ機構44と駆動軸50との間に介在し、クラッチ機構44を介して駆動モータ42の出力軸42aの回転動作が伝達された場合に、これを所定の速度に減速させて駆動軸50に伝達するものである。
【0023】
駆動軸50は、減速機構45を介して駆動モータ42の出力軸42aの回転動作が伝達された場合に回転するように、一端部を介して減速機構45に連係させた円柱状の部材である。この駆動軸50には、外周面に駆動おねじ部(駆動ねじ部)51が形成してある。この駆動おねじ部51は、回転体30の駆動めねじ部34に螺合可能に形成してある。図1に示すように、この駆動おねじ部51の軸方向の長さは、駆動めねじ部34における軸方向の長さよりも長くなるように構成してある。さらに、図1に示すように、この駆動おねじ部51の軸方向の長さは、伝達おねじ部36の軸方向の長さよりも長くなるように構成してある。
【0024】
ここで、上述したケース10は、図1に示すように、ケース本体11の第2収容空間14に回転体30の係合部31を収容する態様で、駆動軸50の駆動おねじ部51を回転体30の駆動めねじ部34に螺合してある(多条ねじ)。これにより、回転体30と同一軸心上となる位置にケース10が配置されることになる。
【0025】
また、駆動軸50は、図1に示すように、他端部側となる部位に第1軸受部材52を備えている。第1軸受部材52は、回転体30における係合部31の内径と略同一の外径を有する環状の部材である。この第1軸受部材52は、駆動軸50とともに一体となって軸方向に移動可能となるように、該駆動軸50に同一軸心となる態様で取り付けてある。
【0026】
さらに、回転体30と駆動軸50との間には、図1に示すように、第1スプリング53が設けてある。第1スプリング53は、係合部31の内周面と駆動軸50の外周面との相互間に収容してある。この第1スプリング53は、駆動凸部33と駆動軸50に取り付けた第1軸受部材52とを、駆動軸50の軸方向に沿って互いに離反する方向に向けて常時押圧するものである。
【0027】
ここで、上述したハウジング20は、図1に示すように、ハウジング本体21の内部にケース本体11のカバー端部11dおよび回転体30の伝達部32を収容する態様で、ハウジング本体21の伝達めねじ部21eを回転体30の伝達おねじ部36に螺合してある(1条ねじ)。これにより、ケース10および回転体30と同一軸心上となる位置にハウジング20が配置されることになる。
【0028】
また、回転体30は、図1に示すように、伝達部32の先端部側となる部位に第2軸受部材61を備えている。第2軸受部材61は、ハウジング本体21における回転体係合部21cの内径と略同一の外径を有する環状の部材である。この第2軸受部材61は、回転体30とともに一体となって軸方向に移動可能となるように、伝達部32に同一軸心となる態様で取り付けてある。
【0029】
さらに、ケース10とハウジング20との間には、図1に示すように、第2スプリング62が設けてある。第2スプリング62は、ケース本体11におけるカバー端部11dの内周面と、回転体30における係合部31の外周面およびハウジング20における回転体係合部21cの外周面との相互間に収容してある。この第2スプリング62は、基部11aと蓋部21bの一端面とを、ハウジング20の軸方向に沿って互いに離反する方向に向けて常時押圧するものである。また、第2スプリング62は、基部11aと蓋部21bの一端面とを互いに離反する方向に向けて押圧する押圧力を、第1スプリング53が駆動凸部33と駆動軸50に取り付けた第1軸受部材52とを互いに離反する方向に向けて押圧する押圧力よりも大きくなるように構成してある。
【0030】
ここで、上述した直動装置は、図には明示していないが、車両本体Bの後端部において、該車両本体Bの室内の左右両端に一対配設してある。この一対の直動装置は、図4に示すように、連結体12のピボット部12dを、車両本体Bの室内の上方となる部位に形成された装着部(図示せず)にそれぞれ取り付けてある。一方、この一対の直動装置は、図4に示すように、連結体22のピボット部22dを、バックドアDを閉成した状態において、該バックドアDにおける連結体12のピボット部12dよりも下方、かつ車両本体Bの室内側となる部位に形成された装着部(図示せず)にそれぞれ取り付けてある。これにより、一対の直動装置が、それぞれピボット部12d,22dを中心として車両本体Bの左右方向に沿った軸心回りに揺動可能、かつケース10の軸心回りに回転不能に支持される。
【0031】
上記のように構成した直動装置では、図1に示す状態において、回転体30における係合部31の他端部が、ケース本体11の基部11aに設けた第1規制体15に当接している。また、この図1に示す状態においては、回転体30の伝達部32に取り付けた第2軸受部材61が、ハウジング本体21の伝達凸部21dに設けた第2規制体23から離隔した位置に配置されている。この状態においては、図4に示すように、車両本体Bに対してバックドアDが閉成されており、この閉成状態が車両本体Bに設けられたストライカ(図示せず)と、バックドアDに設けられたラッチ(図示せず)との係合で保持されている。
【0032】
図1に示す状態から開閉スイッチ(図示せず)が操作されると、車両の制御部(図示せず)からの開成指令によって、車両本体Bに設けられたストライカ(図示せず)と、バックドアDに設けられたラッチ(図示せず)との係合関係が解除され、その後駆動モータ42が駆動されることになる。駆動モータ42の駆動によって出力軸42aが回転されると、この回転動作が伝達状態にあるクラッチ機構44、および減速機構45を介して駆動軸50に伝達され、該駆動軸50が回転することになる。
【0033】
ここで、図4に示すようなバックドアDが略鉛直に沿った姿勢である場合には、バックドアDの自重、および車両本体Bに対して直動装置が僅かに前傾姿勢となることから、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動する際に必要な力が大きい。また、回転体30における係合部31の駆動凸部33が第1スプリング53によって駆動軸50に取り付けた第1軸受部材52から離反する方向に押圧されているため、駆動軸50に対する回転体30の軸方向に沿った移動、つまり駆動軸50に対する回転体30の回転が規制されている。そのため、回転体30が駆動軸50とともに一体となって回転することになる。
【0034】
一方、この状態においては、ハウジング20に対して回転体30が回転することになる。すなわち、ハウジング20の伝達めねじ部21eおよび回転体30の伝達おねじ部36は、該回転体30の駆動めねじ部34および駆動軸50の駆動おねじ部51と比較して進み角が小さいため、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動する際に大きな力が必要な場合にも、ケース10に対してハウジング20を移動することができる。この結果、伝達おねじ部36に螺合したハウジング20が、図2に示すように、軸方向に沿ってケース10および回転体30に対して離反する方向に移動することになる。
【0035】
上述したようにハウジング20が軸方向に沿ってケース10および回転体30に対して離反する方向に移動すると、直動装置の軸方向長さが長くなる。つまり、この直動装置の伸長動作によって、車両本体Bに取り付けた連結体12のピボット部12dと、バックドアDに取り付けた連結体22のピボット部22dとの相互間距離が長くなる。
【0036】
上述した動作の間、直動装置が、ピボット部12dを中心として車両本体Bの左右方向に沿った軸心回りに適宜揺動しながら、車両本体Bに対してバックドアDを押圧することになる。また、上述した動作の間、進み角を駆動めねじ部34および駆動おねじ部51と比較して小さくした伝達めねじ部21eおよび伝達おねじ部36の回転動作により、直動装置を伸長動作している。これにより、図4に示すようなバックドアDが略鉛直に沿った姿勢であって、開動作に必要な力が大きい場合にも、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動することができる。
【0037】
また、上述した動作の間、例えば、バックドアDが手動で開操作された場合、ハウジング20は、伝達めねじ部21eを介して回転体30の伝達おねじ部36に螺合しているが、軸方向に沿ってケース10に対して離反する方向に移動することができる。すなわち、この移動の間、回転体30が、進み角を伝達おねじ部36と比較して大きくした駆動めねじ部34を介して駆動軸50の駆動おねじ部51に螺合しているため、該駆動軸50を適宜相対回転させながら、ハウジング20とともに軸方向に沿ってケース10に対して離反する方向に移動することになる。したがって、従来のように、伸長動作する際の動作初期においてバックドアDが手動で開操作されても、この開操作によって車両本体Bにおけるピボット部12dの装着部(図示せず)に負荷がかかる事態を防止することができる。
【0038】
上述したように伸長動作すると、やがて直動装置は、図1に示した状態に対して駆動軸50の軸方向の長さが15mm伸長した状態となる。これにより、車両本体Bに設けられたストライカ(図示せず)と、バックドアDに設けられたラッチ(図示せず)とが係合可能な領域から、バックドアDが退避することになる。
【0039】
さらに、図1に示した状態に対して駆動軸50の軸方向の長さが15mm伸長した状態では、図2に示すように、回転体30の伝達部32に取り付けた第2軸受部材61が、ハウジング本体21の伝達凸部21dに設けた第2規制体23に当接することになる。
【0040】
この図2に示す状態では、バックドアDが前傾姿勢になり、かつ第2スプリング62がケース本体11の基部11aとハウジング本体21の蓋部21bとを互いに離反する方向に向けて押圧するため、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動する際に必要な力が図1に示す初期段階と比較して小さくなる。そのため、引き続き駆動軸50が回転すると、回転体30は、進み角を伝達おねじ部36と比較して大きくした駆動めねじ部34を介して駆動軸50の駆動おねじ部51に螺合しているため、第1スプリング53の押圧力に抗して駆動軸50に対して回転することになる。この結果、図3に示すように、回転体30が、軸方向に沿ってケース10に対して離反する方向に移動することになり、伝達おねじ部36に螺合したハウジング20が、回転体30とともに軸方向に沿ってケース10に対して離反する方向に移動することになる。
【0041】
上述したようにハウジング20および回転体30が軸方向に沿ってケース10に対して離反する方向に移動すると、直動装置の軸方向長さが長くなる。つまり、この直動装置の伸長動作によって、車両本体Bに取り付けた連結体12のピボット部12dと、バックドアDに取り付けた連結体22のピボット部22dとの相互間距離が長くなる。
【0042】
上述した動作の間も引き続き、直動装置が、ピボット部12dを中心として車両本体Bの左右方向に沿った軸心回りに適宜揺動しながら、車両本体Bに対してバックドアDを押圧することになる。さらに、上述した動作の間、進み角を伝達めねじ部21eおよび伝達おねじ部36と比較して大きくした駆動めねじ部34および駆動おねじ部51の回転動作により、直動装置を伸長動作している。これにより、バックドアDの開動作の初期段階よりも、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動する場合に、駆動おねじ部51の1回転当りに対するケース10とハウジング20との相対移動距離を長くすることができる。
【0043】
また、上述した動作の間、例えば、バックドアDが手動で開操作された場合、ハウジング20は、伝達めねじ部21eを介して回転体30の伝達おねじ部36に螺合しているが、軸方向に沿ってケース10に対して離反する方向に移動することができる。すなわち、この移動の間、回転体30が、進み角を伝達おねじ部36と比較して大きくした駆動めねじ部34を介して駆動軸50の駆動おねじ部51に螺合しているため、該駆動軸50を適宜相対回転させながら、ハウジング20とともに軸方向に沿ってケース10に対して離反する方向に移動することになる。したがって、このような伸長動作においてバックドアDが手動で開操作されても、この開操作によって車両本体Bにおけるピボット部12dの装着部(図示せず)に負荷がかかる事態を防止することができる。
【0044】
上述したように伸長動作すると、やがて、直動装置は、図3に示す状態まで伸長動作することになり、図5に示すように、車両本体Bに対してバックドアDが最も開成されることになる。このバックドアDの全開状態は、第2スプリング62がケース本体11の基部11aとハウジング本体21の蓋部21bとを互いに離反する方向に向けて押圧することにより、これを保持することができる。
【0045】
図3に示す状態では、例えば、バックドアDが手動で閉操作された場合、ハウジング20は、伝達めねじ部21eを介して回転体30の伝達おねじ部36に螺合しているが、軸方向に沿ってケース10に対して近接する方向に移動することができる。すなわち、この移動の間、回転体30が、進み角を伝達おねじ部36と比較して大きくした駆動めねじ部34を介して駆動軸50の駆動おねじ部51に螺合しているため、該駆動軸50を適宜相対回転させながら、ハウジング20とともに軸方向に沿ってケース10に対して近接する方向に移動することになる。したがって、このような状態においてバックドアDが手動で閉操作されても、この閉操作によって車両本体Bにおけるピボット部12dの装着部(図示せず)に負荷がかかる事態を防止することができる。
【0046】
この図3に示す状態から開閉スイッチ(図示せず)が操作されると、車両の制御部(図示せず)からの閉成指令によって、駆動モータ42が駆動されることになる。駆動モータ42の駆動によって出力軸42aが上述したバックドアDの開成動作とは逆に回転されると、この回転動作が伝達状態にあるクラッチ機構44、および減速機構45を介して駆動軸50に伝達され、該駆動軸50が回転することになる。
【0047】
ここで、図5に示すようなバックドアDが略水平に沿った姿勢である場合には、バックドアDの自重、および車両本体Bに対する直動装置の姿勢から、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動する際に必要な力が図1に示す初期段階と比較して小さくなる。また、回転体30における係合部31の駆動凸部33が第1スプリング53によって駆動軸50に取り付けた第1軸受部材52から離反する方向に押圧されているため、駆動軸50に対する回転体30の軸方向に沿った移動を助長している。そのため、回転体30は、進み角を伝達おねじ部36と比較して大きくした駆動めねじ部34を介して駆動軸50の駆動おねじ部51に螺合しているため、駆動軸50に対して回転することになる。この結果、図2に示すように、回転体30が、軸方向に沿ってケース10に対して近接する方向に移動することになり、伝達おねじ部36に螺合したハウジング20が、回転体30とともに軸方向に沿ってケース10に対して近接する方向に移動することになる。
【0048】
上述したようにハウジング20および回転体30が軸方向に沿ってケース10に対して近接する方向に移動すると、直動装置の軸方向長さが短くなる。つまり、この直動装置の短縮動作によって、車両本体Bに取り付けた連結体12のピボット部12dと、バックドアDに取り付けた連結体22のピボット部22dとの相互間距離が短くなる。
【0049】
上述した動作の間、直動装置が、ピボット部12dを中心として車両本体Bの左右方向に沿った軸心回りに適宜揺動しながら、車両本体Bに対してバックドアDを引張することになる。さらに、上述した動作の間、進み角を伝達めねじ部21eおよび伝達おねじ部36と比較して大きくした駆動めねじ部34および駆動おねじ部51の回転動作により、直動装置を短縮動作している。これにより、バックドアDの開動作の初期段階よりも、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動する場合に、駆動おねじ部51の1回転当りに対するケース10とハウジング20との相対移動距離を長くすることができる。
【0050】
また、上述した動作の間、例えば、バックドアDが手動で閉操作された場合、ハウジング20は、伝達めねじ部21eを介して回転体30の伝達おねじ部36に螺合しているが、軸方向に沿ってケース10に対して近接する方向に移動することができる。すなわち、この移動の間、回転体30が、進み角を伝達おねじ部36と比較して大きくした駆動めねじ部34を介して駆動軸50の駆動おねじ部51に螺合しているため、該駆動軸50を適宜相対回転させながら、ハウジング20とともに軸方向に沿ってケース10に対して近接する方向に移動することになる。したがって、このような短縮動作においてバックドアDが手動で閉操作されても、この閉操作によって車両本体Bにおけるピボット部12dの装着部(図示せず)に負荷がかかる事態を防止することができる。
【0051】
上述したように短縮動作すると、やがて、直動装置は、再び図2に示す状態まで短縮動作することになり、回転体30における係合部31の一端部が、再びケース本体11の基部11aに設けた第1規制体15に当接することになる。
【0052】
この図2に示す状態では、バックドアDが再び前傾姿勢になり、かつ第2スプリング62がケース本体11の基部11aとハウジング本体21の蓋部21bとを互いに離反する方向に向けて押圧するため、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動する際に必要な力が図3に示す状態と比較して大きくなる。そのため、引き続き駆動軸50が回転すると、回転体30は、駆動軸50とともに一体となって回転することになる。
【0053】
一方、この状態においては、ハウジング20に対して回転体30が回転することになる。すなわち、ハウジング20の伝達めねじ部21eおよび回転体30の伝達おねじ部36は、該回転体30の駆動めねじ部34および駆動軸50の駆動おねじ部51と比較して進み角が小さいため、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動する際に大きな力が必要な場合にも、ケース10に対してハウジング20を移動することができる。この結果、伝達おねじ部36に螺合したハウジング20が、図1に示すように、軸方向に沿ってケース10および回転体30に対して近接する方向に移動することになる。
【0054】
上述したようにハウジング20が軸方向に沿ってケース10および回転体30に対して近接する方向に移動すると、直動装置の軸方向長さが短くなる。つまり、この直動装置の短縮動作によって、車両本体Bに取り付けた連結体12のピボット部12dと、バックドアDに取り付けた連結体22のピボット部22dとの相互間距離が短くなる。
【0055】
上述した動作の間も引き続き、直動装置が、ピボット部12dを中心として車両本体Bの左右方向に沿った軸心回りに適宜揺動しながら、車両本体Bに対してバックドアDを引張することになる。また、上述した動作の間、進み角を駆動めねじ部34および駆動おねじ部51と比較して小さくした伝達めねじ部21eおよび伝達おねじ部36の回転動作により、直動装置を短縮動作している。これにより、図4に示すようなバックドアDが略鉛直に沿った姿勢へと閉動作する場合に大きな力が必要となっても、ケース10に対してハウジング20を軸方向に沿って移動することができる。
【0056】
上述したように短縮動作すると、やがて、直動装置は、再び図1に示す状態まで短縮動作することになり、図4に示すように、車両本体Bに対してバックドアDが再び閉成され、車両本体Bに設けられたストライカ(図示せず)と、バックドアDに設けられたラッチ(図示せず)とが係合する。
【0057】
図1に示す状態では、例えば、バックドアDが手動で開操作された場合、ハウジング20は、伝達めねじ部21eを介して回転体30の伝達おねじ部36に螺合しているが、軸方向に沿ってケース10に対して離反する方向に移動することができる。すなわち、この移動の間、回転体30が、進み角を伝達おねじ部36と比較して大きくした駆動めねじ部34を介して駆動軸50の駆動おねじ部51に螺合しているため、該駆動軸50を適宜相対回転させながら、ハウジング20とともに軸方向に沿ってケース10に対して離反する方向に移動することになる。したがって、このような状態においてバックドアDが手動で開操作されても、この開操作によって車両本体Bにおけるピボット部12dの装着部(図示せず)に負荷がかかる事態を防止することができる。
【0058】
上記のように構成した直動装置によれば、回転体30が、駆動めねじ部34を介して駆動軸50の駆動おねじ部51に螺合する一方、駆動軸50の駆動おねじ部51よりも小さい進み角で形成した伝達おねじ部36を介してハウジング20に螺合している。このため、駆動軸50が回転すると、ハウジング20と駆動軸50とが軸方向に沿って相対移動する際に大きな力が必要な状態においては、進み角が小さい伝達めねじ部21eおよび伝達おねじ部36が相対回転する一方、ハウジング20と駆動軸50とが軸方向に沿って相対移動する際に必要な力が小さくなった状態においては、進み角が大きい駆動めねじ部34および駆動おねじ部51が相対回転することになる。したがって、ハウジング20と駆動軸50とが軸方向に沿って相対移動する際に要する力の大きさに応じて、回転動作するねじ部が切り替わることになり、進み角の差異によるメリットを有効活用することができる。しかも、軸方向に操作力が加わった場合に、進み角が大きい駆動めねじ部34および駆動おねじ部51が回転動作することになり、ハウジング20と駆動軸50とを軸方向に沿って相対移動させることができる。これにより、例えば、従来のように、バックドアDの開閉手段として直動装置を適用した場合に、該バックドアDの開閉操作によって、車両本体Bの取り付け部分に負荷がかかる事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態である直動装置を示した縦断面図である。
【図2】図1に示した直動装置を伸長動作した状態を示す縦断面図である。
【図3】図2に示す状態において引き続き直動装置を伸長動作した状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態である直動装置を適用する車両の側面概念図である。
【図5】図4に示した車両においてバックドアを開成した状態を示す側面概念図である。
【符号の説明】
【0060】
10 ケース
11 ケース本体
20 ハウジング
21 ハウジング本体
21c 回転体係合部
21d 伝達凸部
21e 伝達めねじ部(伝達係合部)
30 回転体
31 係合部
32 伝達部
33 駆動凸部
34 駆動めねじ部(駆動係合部)
36 伝達おねじ部(伝達ねじ部)
42 駆動モータ(駆動源)
42a 出力軸
50 駆動軸
51 駆動おねじ部(駆動ねじ部)
52 第1軸受部材
53 第1スプリング
61 第2軸受部材
62 第2スプリング
B 車両本体
D バックドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の進み角で形成した駆動ねじ部を有し、駆動源の駆動により軸心回りに回転する駆動軸と、
前記駆動軸の軸心回りに該駆動軸と相対回転した場合に、前記駆動軸に対して該駆動軸の軸方向に沿って移動するように前記駆動ねじ部に係合する駆動係合部と、この駆動係合部と同一軸心上となる部位に、前記第1の進み角と異なる第2の進み角で形成した伝達ねじ部とを有した回転体と、
前記回転体の軸心回りに該回転体と相対回転した場合に、前記回転体に対して該回転体の軸方向に沿って移動するように前記伝達ねじ部に係合する伝達係合部を有したハウジングとを備えた
ことを特徴とする直動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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