説明

直動軸受装置

【課題】直動軸受装置において、スリーブの強度低下を招くことなく、リテーナの位置ズレ補正を可能にする。
【解決手段】直動軸受装置1は、軸部2とスリーブ3との間隙Sに筒体のリテーナ5を配置し、リテーナ5に転動体4を保持する。リテーナ5の側壁50内には、コイルバネ6の配置空間となるポケット部53が設けられる。軸線方向におけるポケット部53の両側の側壁部位54a,54bには、側壁端面56a,56bからポケット部53に連通する軸線方向の挿通孔55a,55bが設けられる。ポケット部53内に配置するコイルバネ6の一端に押しピン7が係止される。押しピン7が挿通孔55bを通して側壁端面56bから突出される。押しピン7は、突出先端70がスリーブ3の開口部に取り付けた蓋部材35a,35bに当接可能に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動軸受装置、特に軸とこれに挿通するスリーブとの間に介装されるリテーナの位置ズレ補正に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図8に示すように、直動軸受装置100は、軸部120とこれに挿通するスリーブ110との間隙Sに、転動体131を保持した筒体のリテーナ130を介装し、転動体130を軸部外周面とスリーブ内周面とに転がり接触させて軸部120とスリーブ110との直動往復移動を円滑に行わせている。このとき、リテーナ130は、軸部120とスリーブ110との相対移動に伴って、例えば軸部120の移動量(L)の半分だけ移動するが(L/2)、実際には転動体131が微小なスリップを起こすため、徐々に軸線方向へ位置ずれを起こすことがある。
【0003】
そこで、従来の直動軸受装置100では、リテーナ130の側壁に外方へ向けてピン140を取り付け、スリーブ内周面に凹欠部111を形成し、この凹欠部111内にピン140を配置させると共にピン140を上下に付勢するバネ150を配設して、リテーナ130の直動方向への位置ズレを防止していた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−96298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の直動軸受装置100では、スリーブ110に凹欠部111を設けるため、スリーブ110の強度が弱くなるという問題があった。その結果、スリーブ内周面から各転動体131へ加わる押圧力(予圧)にバラツキが生じ、直動精度を高精度に維持するのが困難となる。
【0005】
また、例えば、バネ150の個数を増やすべく凹欠部111を周方向に増設したり、また、バネ150の長さを確保すべく凹欠部111を長くすると、スリーブ110が変形するおそれもある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて、スリーブの強度低下を招くことなく、リテーナの位置ズレ補正を可能にする直動軸受装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る直動軸受装置は、
軸部とこれに外嵌するスリーブとの間隙に筒体のリテーナを配置し、このリテーナに転動体を保持した直動軸受装置であって、
上記リテーナの側壁には、弾性体の配置空間が設けられ、
上記配置空間は、上記リテーナの両開口における側壁端面の少なくとも一方に連通して開放され、
上記配置空間内に配置する弾性体に押しピンが係止され、この押しピンが上記側壁端面から突出され、
上記押しピンの突出先端が上記スリーブの開口部に取り付けた蓋部材または上記軸部の外周面に設けた大径凸部に当接可能に配置されているものである。
【0008】
上記構成より、軸部とスリーブとの相対的な直動往復移動に伴って、リテーナが軸線方向に移動されると、押しピンの突出先端がスリーブの蓋部材または軸部の凸部に当接して上記配置空間内の弾性体が圧縮される。そして、リテーナへの外力が解除されてリテーナの軸線方向への移動が停止されると、弾性体の付勢力によってリテーナが元の位置に復帰される。従って、リテーナを自動的に元の基準位置に戻すように位置ズレ補正することができる。
【0009】
(2)本発明に係る直動軸受装置は、
軸部とこれに外嵌するスリーブとの間隙に筒体のリテーナを配置し、このリテーナに転動体を保持した直動軸受装置であって、
上記リテーナの側壁には、弾性体の配置空間が設けられ、
上記配置空間は、上記リテーナの両開口における側壁端面の少なくとも一方に連通して開放され、
上記配置空間内に配置する弾性体の一端側が上記側壁端面から突出され、
上記弾性体の突出先端が上記スリーブの開口部に取り付けた蓋部材または上記軸部の外周面に設けた大径凸部に当接可能に配置されているものである。
上記(1)で述べた作用と同様に、上記弾性体によってリテーナを自動的に元の基準位置に戻すように位置ズレ補正することができる。加えて、上記(1)の如く、押しピンを用いないので、その分の部品点数を少なく構成することができる。
【0010】
(3)上記配置空間は、弾性体を配置するポケット部を有し、
上記弾性体は、コイルバネで構成され、
上記ポケット部内に配置されるコイルバネには、中芯が挿通されているものでもよい。
これにより、コイルバネが中芯にガイドされて座屈することなく圧縮される。従って、コイルバネの軸線方向への付勢力によってリテーナの位置ズレ補正を確実に行わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の直動軸受装置によれば、リテーナは、自動的に元の基準位置に戻るように位置ズレ補正されるので、スリーブ及び軸部に対して位置ズレすることがない。従って、このリテーナに保持する転動体と軸部及びスリーブとの位置関係にズレが生じることもなく、軸部とスリーブとの相対的な直動往復移動を安定して円滑に行わせることができる。しかも、スリーブには、従来のような凹欠部を形成する必要がないから、スリーブの強度低下を招くことなく、リテーナの位置ズレ補正を行うことができる。その結果、直動精度を高精度に維持しつつ、リテーナの位置ズレ補正を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(a)(b)に示すように、実施の形態に1よる直動軸受装置1は、多角形の軸部2に対して、多角形断面の軸挿通孔30を有する筒状のスリーブ3が挿通され、軸部2とスリーブ3との間隙S内に、多数のローラ(転動体)4を保持した多角形筒体からなるリテーナ5が配置された構成を備える。軸部2は、外周面が六角形となっており、また、スリーブ3の内周面も、軸部2の外周面に合わせて六角形に形成されている。スリーブ3の両開口部には、リング状の蓋部材35a,35bが取り付けられている。
【0013】
リテーナ5は、例えば樹脂等で作製され、軸部2とスリーブ3との間隙Sの形状に合わせて六角形の筒体で構成されており、その側壁50の各平面部には、ローラ4を保持するための孔部51が多数並設されている。従って、リテーナ5に保持された多数のローラ4は、軸部2外周面の各平面部21の位置に対応して直列配置され、軸部2外周面の各平面部21とスリーブ3内周面の各平面部31との間に転がり接触状態に対面される。なお、軸部2の平面部21とスリーブ3の平面部31との間隙Sの間隔が、ローラ4のローラ径よりも僅かに狭く形成されており、各ローラ4は、軸部2とスリーブ3との間隙S内では予圧がかかった状態で保持されている。
【0014】
そして、このリテーナ5は、軸線方向への位置ズレを補正する位置ズレ補正機構が側壁50に設けられている。すなわち、リテーナ5は、側壁50の6箇所の各屈曲部分52において、内外に貫通して切り欠いたポケット部53が形成されている。また、各ポケット部53の上下両側の側壁部位54a,54bには、軸線方向に貫通してポケット部53に連通する挿通孔55a,55bが設けられている。各ポケット部53内にはコイルバネ(弾性体)6が収容され、一方側の挿通孔55bにはリテーナ5の側壁端面56bから軸線方向に突出させた押しピン7が挿通配置されている(図1(b)の断面部分を参照)。
【0015】
そして、ポケット部53内に臨む押しピン7の端縁部には、コイルバネ6の一端が係止されている。すなわち、押しピン7は、ポケット部53内に配置する端縁部にEリング等の係止部材71が取り付けられており、この係止部材71にコイルバネ6の一端が当接されている。また、コイルバネ6の他端は、他方側の挿通孔55aを塞いだ栓部材72に当接されている。従って、係止部材71がコイルバネ6の付勢によってポケット部53の切り欠き端面531bに当接されることにより、リテーナ5の側壁端面56bからの押しピン7の突出長さが設定される(図1(b)の断面部分を参照)。なお、押しピン7の突出長さは、その突出先端70がスリーブ3に取り付けた蓋部材35a(35b)と予め当接される長さに設定されてもよいし、蓋部材35a(35b)から所定間隔空いた長さに設定されてもよい。そして、押しピン7は、リテーナ5の6箇所の各屈曲部分52において、周方向に交互に上下の側壁端面56a,56bから突出されている。
【0016】
押しピン7やコイルバネ6を配置するリテーナ5の各屈曲部分52は、側壁50の内側及び外側のそれぞれに凸部52a,52bが設けられて厚肉に形成されている(図1(a)中の拡大部分を参照)。上記の内側凸部52a及び外側凸部52bは、リテーナ5の軸線方向全長にわたって畝状に形成されている。各内側凸部52aの高さは、これらの頂部間を結んだ内径が軸部2外周面の各角部間を結んだ外径と略一致するように設定されている。また、各外側凸部52bの高さは、スリーブ3内周面に接触しない高さに設定されている。
このように、リテーナ5の各屈曲部分52は、凸部52a,52bが設けられて厚肉になっているので、リテーナ5の各屈曲部分52にポケット部53や挿通孔55a,55bを設けても、この屈曲部分52の強度が確保され、リテーナ5全体の強度を低下させることもない。
【0017】
以上の構成により、実施の形態1の直動軸受装置1によれば、軸部2とスリーブ3との相対的な直動往復移動に伴って、リテーナ5が軸線方向に移動されると、押しピン7の突出先端70がスリーブ3の蓋部材35a,35bに当接してポケット部53内のコイルバネ6が圧縮される。そして、リテーナ5への外力が解除されてリテーナ5の軸線方向への移動が停止されると、コイルバネ6の付勢力によってリテーナ5が元の位置に復帰される。従って、リテーナ5を自動的にスリーブ3の中立位置(基準位置)に戻すように位置ズレ補正することができる。
【0018】
この際、リテーナ5は、各内側凸部52aが軸部2外周面の各角部に当接して軸部2と同心状に保持されているので、リテーナ5の径方向への振動が規制されている。従って、蓋部材35a,35bに当接状態となった押しピン7は、傾くことなく真っ直ぐな姿勢に維持されるから、挿通孔55a,55b内に円滑に移動される。
【0019】
このように、リテーナ5は、スリーブ3及び軸部2に対して位置ズレすることがないから、リテーナ5に保持するローラ4と軸部2及びスリーブ3との位置関係にズレが生じることもなく、軸部2とスリーブ3との相対的な直動往復移動を安定して円滑に行わせることができる。しかも、スリーブ3には、従来のような凹欠部111(図8参照)を形成する必要がないから、スリーブ3の強度低下を招くことなく、リテーナ5の位置ズレ補正を確実に行うことができる。その結果、直動精度を高精度に維持しつつ、リテーナ5の位置ズレ補正を可能にすることができる。
【0020】
また、本実施の形態1では、コイルバネ6は、リテーナ5の側壁50内に収容され、押しピン7がリテーナ5の側壁端面56a,56bから軸線方向に延びるように突出されるので、スリーブ3の径サイズが大きくなることもない。よって、リテーナ5の位置ズレ補正機構を設けても、装置全体の大型化を招くこともない。
【0021】
なお、上記挿通孔55a,55bは、押しピン7が飛び出さない程度に側壁の外側(あるいは内側)が切り欠かれていてもよい。
また、図7に示すように、ポケット部53xは、外側に開放する凹欠によって形成してもよい。この場合、ポケット部53xが凹欠となっているので、このポケット部53xを形成するリテーナ5の側壁50xが内外に貫通されないから、リテーナ5の強度を確保することができる。
【0022】
(実施の形態2)
実施の形態2では、図2に示すように、リテーナ5において、上記押しピン7に代えて、ポケット部53内に配置するコイルバネ6の一端側を、一方側の挿通孔55bを通してリテーナ5の側壁端面56bから突出させるようにした。その他は上記実施の形態1(図1参照)と同様とする。
この場合も、リテーナ5から突出させた上記コイルバネ6によってリテーナ5の軸線方向における位置ズレ補正を行うことができる。この際、リテーナ5は、内側凸部52aが軸部2外周面の各角部に当接して径方向への振動が規制されているので、蓋部材35a,35bに当接状態となったコイルバネ6は、傾かないように真っ直ぐの姿勢に維持されるから、座屈することなく挿通孔55a,55b内に円滑に伸縮される。また、この位置ズレ補正機構には、上記押しピン7を用いない分、その部品点数を少なく構成できる。
【0023】
(実施の形態3)
実施の形態3では、図3(a)(b)に示すように、リテーナ5において、ポケット部53内にコイルバネ6を挿通させる中芯8を配置するようにした。
すなわち、図3(a)に示すものでは、リテーナ5から押しピン7を突出させる形式のものであり、この押しピン7に連設してポケット部53内のコイルバネ6を挿通させる中芯部80を形成する。その他は上記実施の形態1(図1参照)と同様とする。なお、中芯部80の長さは、好ましくは、押しピン7の突出部分が全て一方側の挿通孔55b内に没入されても、他方側の挿通孔55aからリテーナ5の外部へ中芯部80が突出されない長さとする。この場合、コイルバネ6が中芯部80にガイドされて座屈することなく圧縮され、これにより、コイルバネ6の軸線方向への付勢力によってリテーナ5の位置ズレ補正を確実に行わせることができる。
【0024】
また、図3(b)に示すものでは、リテーナ5からコイルバネ6を突出させる形式のものであり、ポケット部53内にコイルバネ6を挿通させる中芯8を配置する。その他は上記実施の形態2(図2参照)と同様とする。この場合も、コイルバネ6が中芯8にガイドされて座屈することなく圧縮される。
【0025】
(実施の形態4)
実施の形態4では、図4に示すように、リテーナ5において、ポケット部53を設けることなく側壁50には軸線方向に貫く貫通孔(配置空間)57を設け、この貫通孔57内にコイルバネ6を配置し、このコイルバネ6の一端側をリテーナ5の一方の側壁端面56bから軸線方向に突出させ、貫通孔57の一方の口部をネジ栓(閉栓)Fで塞ぎ、このネジ栓Fにコイルバネ6の他端を当接させて係止する。
【0026】
この場合、コイルバネ6は、大半が貫通孔57内に収容されるので、リテーナ5の移動によってコイルバネ6が座屈し難く貫通孔57内に圧縮収容される。従って、コイルバネ6の突出部分が押さえ込まれて圧縮されることで、このコイルバネ6の軸線方向への付勢力によってリテーナ5の位置補正を行わせることができる。また、上述の押しピン7や中芯8が不要となり、部品点数を少なくすることができる。
【0027】
(実施の形態5)
実施の形態5では、図5(a)(b)に示すように、リテーナ5において、ポケット部53の上下両方の挿通孔55a,55bから押しピン7またはコイルバネ6を突出させるようにした。
すなわち、図5(a)に示すものは、リテーナ5の軸線長さよりも長い押しピン7を、両端がリテーナ5の側壁端面56a,56bからそれぞれ突出するように上下の挿通孔55a,55bを通して配置し、この押しピン7の中央位置にEリング等の係止部材71を取り付けて、2個のコイルバネ6a,6bをこの係止部材71を跨いだ両側にそれぞれ挿通させてポケット部53内に配置させる。この場合、押しピン7を配置するすべての箇所で、リテーナ5の往き方向または戻り方向における位置ズレ補正を行うことができる。その他は上記実施の形態1(図1参照)と同様とする。
【0028】
また、図5(b)に示すものは、リテーナ5の側壁50に挿通孔(配置空間)55a,55bを上下に形成し、これら挿通孔55a,55bのそれぞれにコイルバネ6a,6bを配置して側壁端面56a,56bからそれぞれ突出させる。この場合も、コイルバネ6a,6bを配置するすべての箇所で、リテーナ5の往き方向または戻り方向における位置ズレ補正を行うことができる。
【0029】
(実施の形態6)
実施の形態6では、図6に示すように、リテーナ5において、側壁50外周面に軸線方向に対向する上下一対の鍔部9a,9bが形成され、これら鍔部9a,9b間の空間がコイルバネ6を配置するポケット部53となるものである。また、上下の鍔部9a,9bには、軸線方向に貫く挿通孔55a,55bが設けられている。そして、図6には示していないが、これら鍔部9a,9b間のポケット部53にコイルバネ6を配置し、一方の鍔部9a(9b)の挿通孔55a(55b)から、このコイルバネ6と係止する押しピン7を突出させるか(例えば、図1参照)、または、このポケット部53のコイルバネ6の一端を延設して突出させ(例えば、図2参照)、上述の位置ズレ補正機構を構成する。その他は上記実施の形態1〜3、上記実施の形態5(図5(a))と同様とする。
【0030】
なお、これら鍔部9a,9bは、六角形筒体のリテーナ5の屈曲部分52に形成され、六角形断面となったスリーブ3内周面の屈曲部分における凹所32(図1(a)参照)に配置される。そして、鍔部9a,9bの外形も、スリーブ3内周面の凹所32の形状に合わせて円弧状となっている。従って、これら鍔部9a,9bがスリーブ3内周面に接触することはない。
また、上下の鍔部9a,9bの位置は、リテーナ5の開口部に沿って形成してもよいし、また、途中の中間位置(同図6中に点線で示す。)に形成してもよいし、さらには、開口部と中間位置との両方に形成するようにしてもよい。
【0031】
この実施の形態6の場合、リテーナ5の側壁50を切り欠いたりせずに、ポケット部53を形成するので、リテーナ5の強度を確保したままコイルバネ6のポケット部53を形成することができる。また、このリテーナ5を射出成形等で作製するに際して複雑な金型を用いることなく、上記ポケット部53を簡単に形成することができる。
【0032】
(その他)
なお、本発明は、上記実施の形態に限らず、種々の設計変更を施すことが可能である。
例えば、コイルバネ6と押しピン7、またはコイルバネ6等による位置ズレ補正機構は、リテーナ5の1箇所または任意の複数個所に設けることでもよい。例えば、位置ズレ補正機構は、リテーナ5の周方向において、等間隔に3箇所設けることでもよいし、対向位置の2箇所に設けることでもよいし、また、1箇所だけ設けることでもよい。
【0033】
また、押しピン7またはコイルバネ6を突出させる側は、リテーナ5が一方向側に位置ズレを起こす場合、この位置ズレを起こす側に対してのみ突出させる構成でもよい。例えば、直動軸受装置1を鉛直方向に立てて配置し、リテーナ5が重力によって下方側に位置ズレする場合などは、押しピン7またはコイルバネ6を下方側にのみ突出させるようにすればよい。
【0034】
また、リテーナ5において、ポケット部53およびこれに連通する挿通孔55a,55bは、ローラ4等の転動体を配置しない軸線位置であれば、側壁50の適宜位置に形成してもよい。
【0035】
また、スリーブ3には蓋部材35a,35bを取り付けず、軸部2に大径凸部を設けてこの大径凸部に対して押しピン7またはコイルバネ6の突出先端70を当接させるようにしてもよい。
【0036】
また、コイルバネ6に代えて、伸縮自在の細長い弾性体を使用してもよい。
また、リテーナ5の形は、六角形以外に、軸部2及びスリーブ3の形状に合わせて八角形等の各種の多角形形状や、円形等でもよい。
また、転動体であるローラ4は、円柱形、鼓形、太鼓形、ニードルローラ4等の各種のローラ4を使用でき、さらに、転動体には、ローラ4に限らず、ボールを使用したものでもよい。
その他、本発明の直動軸受装置1は、金型のダイセット装置やテーブル搬送装置等、直動案内機構を備えた各種装置の直動ガイドに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施の形態1による直動軸受装置の構成を示す図であり、同図(a)はスリーブの蓋部材を取り外した状態の上面図、同図(b)はスリーブ及びリテーナの一部を切り欠いた一部断面図である。
【図2】実施の形態2による直動軸受装置のリテーナにおける構成を示す断面模式図である。
【図3】実施の形態3による直動軸受装置のリテーナにおける構成を示す断面模式図である。
【図4】実施の形態4による直動軸受装置のリテーナにおける構成を示す断面模式図である。
【図5】実施の形態5による直動軸受装置のリテーナにおける構成を示す断面模式図である。
【図6】実施の形態6による直動軸受装置のリテーナにおける構成を示す断面模式図である。
【図7】ポケット部の変形例を示す断面模式図である。
【図8】従来の直動軸受装置の構成を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 直動軸受装置
2 軸部
3 スリーブ
4 ローラ
5 リテーナ
6 コイルバネ
7 押しピン
8 中芯
9a,9b 鍔部
35a,35b スリーブの蓋部材
50 側壁
52 屈曲部分
53 ポケット部
54a,54b 側壁部位
55a,55b 挿通孔
56a,56b 側壁端面
57 貫通孔
70 突出先端
80 中芯部
F ネジ栓(閉栓)
S 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部とこれに外嵌するスリーブとの間隙に筒体のリテーナを配置し、このリテーナに転動体を保持した直動軸受装置であって、
上記リテーナの側壁には、弾性体の配置空間が設けられ、
上記配置空間は、上記リテーナの両開口における側壁端面の少なくとも一方に連通して開放され、
上記配置空間内に配置する弾性体に押しピンが係止され、この押しピンが上記側壁端面から突出され、
上記押しピンの突出先端が上記スリーブの開口部に取り付けた蓋部材または上記軸部の外周面に設けた大径凸部に当接可能に配置されている直動軸受装置。
【請求項2】
軸部とこれに外嵌するスリーブとの間隙に筒体のリテーナを配置し、このリテーナに転動体を保持した直動軸受装置であって、
上記リテーナの側壁には、弾性体の配置空間が設けられ、
上記配置空間は、上記リテーナの両開口における側壁端面の少なくとも一方に連通して開放され、
上記配置空間内に配置する弾性体の一端側が上記側壁端面から突出され、
上記弾性体の突出先端が上記スリーブの開口部に取り付けた蓋部材または上記軸部の外周面に設けた大径凸部に当接可能に配置されている直動軸受装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の直動軸受装置において、
上記配置空間は、弾性体を配置するポケット部を有し、
上記弾性体は、コイルバネで構成され、
上記ポケット部内に配置されるコイルバネには、中芯が挿通されている直動軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−291854(P2008−291854A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135094(P2007−135094)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000100838)アイセル株式会社 (62)
【Fターム(参考)】