説明

直接メタノール燃料電池システムおよびその運転管理方法

【課題】循環燃料中のメタノール濃度の調整精度を高める。
【解決手段】本発明は、下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時に測定した循環燃料量と原燃料ポンプの能力とに基づき原燃料ポンプの仮の駆動時間を算出する手段と、下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時より前の一定時間における循環燃料量の変動量と循環燃料中のメタノール濃度の変動量とに基づき単位時間当たりのメタノール減少量を算出する手段と、原燃料ポンプの仮駆動時間と単位時間当たりのメタノール減少量とから算出したメタノール減少量と原燃料の仮補給量とに基づき原燃料の実際の補給量を算出する手段と、原燃料の実際の補給量と原燃料ポンプの能力とに基づき原燃料ポンプの実際の駆動時間を算出する算出手段と、実際の駆動時間、原燃料ポンプを駆動させる制御手段と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車、輸送機器、携帯型電子機器の電源または充電装置等として用いることができる直接メタノール燃料電池システム、および直接メタノール燃料電池システムの運転管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直接メタノール燃料電池(DMFC)は、自動車、輸送機器、携帯型電子機器の電源や充電装置等としての用途が期待されており、現在、開発が進められている。例えば、直接メタノール燃料電池を搭載したシニアカー(電動車椅子)の開発が進められており、直接メタノール燃料電池の利用により、燃料(メタノール水溶液)の補給を簡単化でき、走行可能距離を延ばすことができる等の優れた性能を備えたシニアカーを実現するに至っている。
【0003】
直接メタノール燃料電池は、メタノールを燃料極で直接反応させる方式の燃料電池であり、直接メタノール燃料電池システムは、直接メタノール燃料電池を備えた発電システムである。この直接メタノール燃料電池システムは、例えば、メタノール水溶液である循環燃料を貯留する循環燃料タンクと、高濃度メタノール水溶液である原燃料を貯留する原燃料タンクと、原燃料タンクに貯留された原燃料を循環燃料タンクに供給する駆動源である原燃料ポンプと、燃料極と空気極との間に固体高分子膜を設けると共に燃料極の外側および空気極の外側にセパレータをそれぞれ設けたセルを複数積層することにより形成されたセルスタックと、循環燃料タンクに貯留された循環燃料をセルスタックの各燃料極に供給すると共に、電池反応後に各燃料極から排出された循環燃料を循環燃料タンクに戻す燃料循環経路と、燃料循環経路を介して循環燃料タンクからセルスタックの各燃料極へ循環燃料を送る循環ポンプと、燃料循環経路においてセルスタックの下流側に設けられ、電池反応後に各燃料極から排出される循環燃料を冷却する熱交換器と、セルスタックの各空気極に空気(酸素)を供給するコンプレッサと、電池反応後に各空気極から排出される水を貯留する水タンクと、電池反応後に各空気極から排出される水を水タンクに搬送する水排出経路と、水排出経路の途中に設けられ、電池反応後に各空気極から排出される水を冷却する熱交換器とを備えている。
【0004】
このような構成を有するにおいて、循環ポンプを駆動し、循環燃料タンクから各燃料極に循環燃料を供給すると共に、コンプレッサを駆動して各空気極に空気(酸素)を供給すると、各燃料極では、カーボンに担持された白金、ルテニウム触媒により、循環燃料に含まれるメタノールと水とが反応し、水素イオン、電子、および二酸化炭素が生成され、電子が燃料極より外部へ電力として出力される。また、水素イオンは、固体高分子膜を通り、空気極へ移動し、空気極において酸素と結合して水(生成水)になる。各燃料極および各空気極における反応についての化学反応式は、次の通りである。
【0005】
燃料極:CHOH+HO→6H+6e+CO (1)
空気極:6H+6e+3/2O→3HO (2)
そして、直接メタノール燃料電池システムにおいて、原燃料としては高濃度メタノール水溶液(例えば、54wt%)が使用され、該高濃度メタノール水溶液は純水および燃料電池の生成水により希釈され、循環燃料(例えば、3wt%メタノール水溶液)として燃料極に供給される。また、空気極において未利用空気が混入して気液状態で排出された生成水は、熱交換器により凝縮されて前記水タンクに貯留され、上記したように希釈水として再利用される。
【0006】
この時、発電によりメタノールが消費され、循環燃料中のメタノール濃度は徐々に低下するため、循環燃料中のメタノール濃度はモニタされて所定の濃度以下になると、原燃料ポンプが駆動し、高濃度メタノールを循環燃料タンクに供給して循環燃料中のメタノール濃度の低下を防止している。
【0007】
このような従来の直接メタノール燃料電池システムとしては、高濃度・低濃度・燃料蓄積用の3つのメタノール燃料タンクを備え、燃料電池の発電状態・温度、燃料蓄積タンク中のメタノール水溶液の液面高さやメタノール濃度をモニタして、高濃度メタノール水溶液および低濃度メタノール水溶液を燃料蓄積タンクに補給し、メタノール水溶液の濃度調整を行うエネルギー管理モジュール及び駆動装置が提案されている(例えは、特許文献1参照)。
【0008】
また、別の従来の直接メタノール燃料電池システムとしては、高濃度・燃料極供給用メタノール水溶液・水用の3つのユニットを備え、燃料電池の発電電流をモニタしてメタノール消費量を計算し、該消費量が設定値を超えたと判断した時に、高濃度メタノール水溶液を燃料極供給用ユニットに補給して濃度調整を行う燃料電池システム及びその燃料補充方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
さらに別の従来の直接メタノール燃料電池システムとしては、高濃度・燃料極供給用メタノール水溶液・水用の3つのタンクを備え、あらかじめ燃料電池の発電で消費されるメタノール消費量を見込んだ上で高濃度メタノール水溶液を補給する直接型メタノール燃料電池システム及びその制御方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−170405号公報
【特許文献2】特開2011−023346号公報
【特許文献3】特開2006−286239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したように特許文献1に記載の発明では、高濃度メタノール水溶液および低濃度メタノール水溶液の補給トリガが燃料蓄積タンク中のメタノール水溶液の液面高さと濃度であり、液面高さが設定範囲内にあるか否かが液面センサによって監視され、循環燃料の液量はモニタされない。すなわち、燃料の液量は、燃料蓄積タンクの最低液面高さと最高液面高さの範囲内に保たれる様に制御され、高濃度メタノールあるいは低濃度メタノールが定量補給される。したがって、最低液面高さの時と最高液面高さの時とでは燃料蓄積タンク内のメタノール水溶液の量が異なるため、高濃度メタノールあるいは低濃度メタノールを補給した後の循環燃料のメタノール濃度が所定の数値にならない可能性がある。また、燃料電池を高効率あるいは高出力で持続運転するには、循環燃料の濃度範囲を狭く設定する必要があるため、循環燃料の濃度調整の精度は高い方が好ましいが、このシステムでは循環燃料量によって補給後のメタノール濃度に違いが出てしまうため、循環燃料の濃度調整の精度を高めることができないといった問題がある。
【0012】
仮に、上記した特許文献1に記載の発明と同等のシステムが、例えば、循環燃料量を最低液面高さの時で870g、最高液面高さの時で940g、循環燃料の流量を600mL/min、空気流量を30L/min、スタック電圧を12Vの定電圧とした条件下で、循環燃料濃度が2.8〜3.5wt%の範囲となるように運転された場合、循環燃料中のメタノール濃度が2.6wt%に低下して原燃料が補給されると、循環燃料量が最低液面高さの時の870gであると設定され、54%メタノール水溶液が補給され、3.5wt%(発電によるメタノール消費をあらかじめ見込んだ数値)になるよう、次式により原燃料の補給量Aが算出される。すなわち、(870×0.026+0.054×A)/(870+A)=0.035から、A=15.5gとなる。
【0013】
この場合、循環燃料の液量を測定していないので、実際の液量が最高液面高さの時の940gであったとしても、原燃料の補給量は最低液面高さの時の循環燃料量である870gを基に算出され、原燃料の補給量は15.5gとなってしまうため、原燃料補給後の循環燃料中のメタノール濃度は3.5wt%に到達しない。すなわち、この場合、実際には、図5に示すように、循環燃料中のメタノール濃度は最低値2.7wt%〜最高値3.3wt%の幅で変動し、メタノール濃度の最高値が設定した数値(3.5wt%)よりも低くなってしまうことが分かる。
【0014】
また、上記した特許文献2に記載の発明では、循環燃料に対する高濃度メタノール水溶液の補給トリガが燃料電池出力から得た燃料中のメタノール消費量であり、このメタノール消費量にはクロスオーバーによるメタノール消費量が反映されない。そのため、メタノール水溶液を循環して使用する場合、計算で得たメタノール消費量と実際のメタノール消費量とが合致せず、高濃度メタノールの補給量が不足する結果、発電の停止や燃料不足による電池破損等の不具合が生じる虞がある。
【0015】
さらに、上記した特許文献3に記載の発明では、高濃度メタノール水溶液を補給した時の循環燃料の液量が反映されていないため、適切な補給量を計算することができないといった問題がある。
【0016】
このように上記した各従来技術に共通した問題点としては、燃料極に供給するメタノール水溶液の濃度が低下して高濃度メタノール水溶液を補給する必要が生じた場合に、高濃度メタノール水溶液の補給量を算出する際に、メタノールのクロスオーバーによる損失が反映されないことや、循環燃料の液量が反映されないことにより、濃度調整の精度が悪くなる可能性があることが挙げられる。
【0017】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、循環燃料中のメタノール濃度の調整精度を高めることのできる直接メタノール燃料電池システムおよびその運転管理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記した目的を達成するため、本発明は、メタノール水溶液である循環燃料を貯留する循環燃料タンクと、高濃度メタノール水溶液である原燃料を貯留する原燃料タンクと、前記原燃料タンクに貯留された原燃料を前記循環燃料タンクに供給する駆動源である原燃料ポンプと、燃料極、空気極および前記燃料極と前記空気極との間に配置された固体高分子膜を備えたセルと、前記循環燃料タンクに貯留された前記循環燃料を前記燃料極に供給すると共に、電池反応後に前記燃料極から排出される前記循環燃料を前記循環燃料タンクに戻す燃料循環手段と、を備えた直接メタノール燃料電池システムであって、前記循環燃料中のメタノール濃度を測定するメタノール濃度測定手段と、前記循環燃料の循環燃料量を測定する循環燃料量測定手段と、前記メタノール濃度測定手段が所定の下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時に前記循環燃料量測定手段が測定した循環燃料量と、前記原燃料ポンプの能力と、に基づき、前記循環燃料のメタノール濃度を所定の上限濃度に到達させるために必要な仮の補給量の原燃料を前記循環燃料タンクに供給するのに要する前記原燃料ポンプの仮の駆動時間を算出する仮駆動時間算出手段と、前記メタノール濃度測定手段が下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時より前の一定時間における循環燃料量の変動量と、前記循環燃料中のメタノール濃度の変動量と、に基づき、単位時間当たりのメタノール減少量を算出するメタノール減少量算出手段と、前記駆動時間算出手段が算出した前記原燃料ポンプの仮駆動時間と前記メタノール減少量算出手段が算出した単位時間当たりのメタノール減少量とから算出した前記原燃料ポンプによる前記原燃料の補給開始から完了までの間に減少するメタノール減少量と、前記原燃料の仮補給量と、に基づき、前記原燃料の実際の補給量を算出する実補給量算出手段と、該実補給量算出手段が算出した前記原燃料の実際の補給量と、前記原燃料ポンプの能力と、に基づき、前記原燃料の実際の補給量を前記循環燃料タンクに供給するのに要する前記原燃料ポンプの実際の駆動時間を算出する実駆動時間算出手段と、該実駆動時間算出手段が算出した実際の駆動時間、前記原燃料ポンプを駆動させる制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、メタノール水溶液である循環燃料を貯留する燃料タンクと、高濃度メタノール水溶液である原燃料を貯留する原燃料タンクと、前記原燃料タンクに貯留された原燃料を前記循環燃料タンクに供給する駆動源である原燃料ポンプと、燃料極、空気極および前記燃料極と前記空気極との間に配置された固体高分子膜を備えたセルと、前記循環燃料タンクに貯留された前記循環燃料を前記燃料極に供給すると共に、電池反応後に前記燃料極から排出される前記循環燃料を前記循環燃料タンクに戻す燃料循環手段と、を備えた直接メタノール燃料電池システムにおいて、前記循環燃料中のメタノール濃度を調整する運転管理方法であって、前記循環燃料中のメタノール濃度を測定するメタノール濃度測定工程と、前記循環燃料の循環燃料量を測定する循環燃料量測定工程と、前記メタノール濃度測定工程において所定の下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時の循環燃料量と、前記原燃料ポンプの能力と、に基づき、前記循環燃料のメタノール濃度を所定の上限濃度に到達させるために必要な仮の補給量の原燃料を前記循環燃料タンクに供給するのに要する前記原燃料ポンプの仮の駆動時間を算出する仮駆動時間算出工程と、前記メタノール濃度測定工程において下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時より前の一定時間における循環燃料量の変動量と、前記循環燃料中のメタノール濃度の変動量と、に基づき、単位時間当たりのメタノール減少量を算出するメタノール減少量算出工程と、前記駆動時間算出工程において算出した前記原燃料ポンプの仮駆動時間と前記メタノール減少量算出工程において算出した単位時間当たりのメタノール減少量とから算出した前記原燃料ポンプによる前記原燃料の補給開始から完了までの間に減少するメタノール減少量と、前記原燃料の仮補給量と、に基づき、前記原燃料の実際の補給量を算出する実補給量算出工程と、該実補給量算出工程において算出した前記実際の補給量の原燃料と、前記原燃料ポンプの能力と、に基づき、前記原燃料の実際の補給量を前記循環燃料タンクに供給するのに要する前記原燃料ポンプの実際の駆動時間を算出する実駆動時間算出工程と、該実駆動時間算出工程において算出した実際の駆動時間、前記原燃料ポンプを駆動させる制御工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、循環燃料中のメタノール濃度の調整精度を高めることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による直接メタノール燃料電池システムの全体的構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態による直接メタノール燃料電池システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による直接メタノール燃料電池システムにおいて、循環燃料中のメタノール濃度を調整処理する手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態による直接メタノール燃料電池システムにおいて、循環燃料中のメタノール濃度を調整処理した結果を示す図である。
【図5】従来の直接メタノール燃料電池システムにおいて、メタノール濃度を調整した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
(燃料電池システムの構成・基本動作)
図1において、本発明の実施形態による直接メタノール燃料電池システム1(以下、「燃料電池システム1」という。)は、直接メタノール燃料電池を備えた発電システムである。燃料電池システム1は、例えば、シニアカーに搭載され、シニアカーの二次電池の充電装置として用いられる。
【0024】
燃料電池システム1は、循環燃料タンク11、原燃料タンク12および水タンク13を備えている。循環燃料タンク11には、セルスタック31の各セルの燃料極に供給される循環燃料が貯留される。循環燃料は、例えばメタノールの濃度が所定の設定範囲(例えば、2.8wt%〜3.5wt%)となるように制御されるメタノール水溶液である。原燃料タンク12には原燃料が貯留される。原燃料は、例えばメタノールの濃度が54wt%の高濃度メタノール水溶液である。水タンク13には希釈水が貯留される。希釈水は、例えば純水および燃料電池生成水からなる。
【0025】
循環燃料タンク11に貯留された循環燃料のメタノール濃度が所定の上限濃度(例えば、3.5wt%)よりも高くなったときには、水ポンプ14が駆動され、水タンク13に貯留された希釈水が水供給経路15を介して循環燃料タンク11に供給される。また、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料のメタノール濃度が所定の下限濃度(例えば、2.8wt%)よりも低くなったときには、原燃料ポンプ16が駆動され、原燃料タンク12に貯留された原燃料が原燃料供給経路17を介して循環燃料タンク11に供給される。また、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料の量が所定量以下となったときには、原燃料ポンプ16および水ポンプ14が駆動され、原燃料タンク12に貯留された原燃料が原燃料供給経路17を介して循環燃料タンク11に供給されると共に、水タンク13に貯留された希釈水が水供給経路15を介して循環燃料タンク11に供給され、これら供給された原燃料と希釈水とにより循環燃料が生成される。循環燃料タンク11、原燃料タンク12および水タンク13には、液面センサ18がそれぞれ設けられ、これら液面センサ18と各タンク11,12,13の形状とにより、循環燃料の量、原燃料の量および希釈水の量がそれぞれ算出される。
【0026】
また、燃料電池システム1は、循環燃料のメタノール濃度および導電率を測定するSAWセンサ21と、循環燃料のpHを測定するpH測定手段としてのpH計22とを備えている。SAWセンサ21およびpH計22は、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料を流通させる送液経路23に設けられ、送液ポンプ24の駆動により送液経路23を流通する循環燃料のメタノール濃度、導電率およびpHを測定する。
【0027】
ここで、SAWセンサ21は、圧電体上に形成されたすだれ状の電極に高周波信号を印加し、圧電効果によって発生する弾性表面波の伝播状態が被検出液体の性状によって異なることを利用するセンサである。メタノール水溶液である循環燃料の密度粘度積(静粘度)、比誘電率、導電率がメタノール濃度によって変化すると、これに応じて弾性表面波の位相、振幅が変化するので、この弾性表面波の位相、振幅の変化を検出することで、メタノール水溶液のメタノール濃度を測定することができる。さらに、弾性表面波の位相、振幅の変化により、循環燃料の導電率を測定することができる。なお、SAWセンサ21による循環燃料のメタノール濃度および導電率の測定精度を高めるために、温度センサを追加し、温度センサにより測定された温度に基づいてSAWセンサ21による循環燃料のメタノール濃度および導電率の各測定値を補正してもよい。一方、pH計22としては、例えば温度補償式のガラス電極法を用いたpHセンサを使用することができる。
【0028】
また、循環燃料タンク11と水タンク13との間には、循環燃料タンク11から水タンク13へ二酸化炭素を排気する排気経路26が設けられ、排気経路26の途中には、二酸化炭素の逆流を防止する逆止弁27が設けられている。また、水タンク13には、空気、水および二酸化炭素を外部に排出する排出経路28が設けられ、排出経路28の途中には排ガス触媒29が設けられている。
【0029】
さらに、燃料電池システム1はセルスタック31を備えている。セルスタック31は、複数のセルを積層することにより形成されている。各セルは、燃料極と空気極との間に固体高分子膜を設けると共に、燃料極の外側および空気極の外側にセパレータをそれぞれ設けることにより形成されている。また、セルスタック31には、セルスタック31の出力電力を測定する電力測定手段としての電力計32が設けられている。また、セルスタック31と循環燃料タンク11との間には、両者間で循環燃料を循環させる燃料循環手段としての燃料循環経路33が設けられている。燃料循環経路33の途中に設けられた循環燃料ポンプ34が駆動されると、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料が燃料循環経路33を流通してセルスタック31の各セルの燃料極に供給されると共に、電池反応後に各燃料極から排出された循環燃料が燃料循環経路33を流通して循環燃料タンク11に戻される。また、燃料循環経路33においてセルスタック31の下流側には、電池反応後に各燃料極から排出される循環燃料を冷却する熱交換器35が設けられている。
【0030】
さらに、燃料電池システム1はイオン交換樹脂装置36を備えている。イオン交換樹脂装置36は、循環燃料に含まれるアルミニウムイオン等の金属イオンを、イオン交換樹脂を用いて吸着除去する装置である。イオン交換樹脂装置36はバイパス経路37の途中に設けられている。バイパス経路37は、セルスタック31の上流側において燃料循環経路33をバイパスする経路である。すなわち、バイパス経路37は、燃料循環経路33の一部であって、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料をセルスタック31の各セルの燃料極に供給する経路(循環燃料供給経路33A)から分岐し、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料をイオン交換樹脂装置36に供給する。また、バイパス経路37は、イオン交換樹脂装置36の下流側とセルスタック31の上流側とを接続するように燃料循環経路33に結合し、イオン交換樹脂装置36から排出された循環燃料をセルスタック31の各セルの燃料極に供給する。また、燃料循環経路33において、イオン交換樹脂装置36の上流側であって燃料循環経路33からバイパス経路37が分岐する部位には切換弁38が設けられている。切換弁38は、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料をセルスタック31の各セルの燃料極に循環燃料供給経路33Aを介して直接供給するかバイパス経路37を介して供給するか選択する三方弁である。
【0031】
さらに、燃料電池システム1は、セルスタック31の各セルの空気極に空気(酸素)を供給する酸素供給手段としてのコンプレッサ41と、コンプレッサ41の流入口に取り付けられたエアフィルタ42と、空気が流通する空気供給経路43と、電池反応後に各セルの空気極から排出される水を水タンク13に搬送する水排出手段としての水排出経路44と、水排出経路44の途中に設けられ、電池反応後に各セルの空気極から排出される水を冷却する熱交換器45とを備えている。熱交換器45の内面は、防食のため、ベーマイト処理が施されている。
【0032】
さらに、図2に示すように、燃料電池システム1はコントローラ51および記憶手段としてのメモリ52を備えている。コントローラ51は例えば演算処理回路を備えている。コントローラ51には、燃料電池システム1における水ポンプ14、原燃料ポンプ16、送液ポンプ24、循環燃料ポンプ34、切換弁38、コンプレッサ41、各液面センサ18、SAWセンサ21、pH計22、電力計32およびメモリ52が接続されている。
【0033】
コントローラ51は、燃料電池システム1に関する種々の制御および処理を行う。すなわち、コントローラ51は、各ポンプ14、16、24、34およびコンプレッサ41等の駆動、停止を制御する。また、コントローラ51は、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料のメタノール濃度の測定値をSAWセンサ21から取得し、当該メタノール濃度の測定値に基づいて水ポンプ14または原燃料ポンプ16を駆動して希釈水または原燃料を循環燃料タンク11に供給し、循環燃料のメタノール濃度を所定の設定範囲(例えば、2.8wt%〜3.5wt%)に保つ処理を行う。また、コントローラ51は、各液面センサ18からの出力に基づいて、循環燃料、希釈水、原燃料の量を管理する。また、コントローラ51は、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料の導電率およびpHのそれぞれの測定値をSAWセンサ21およびpH計22から取得し、当該導電率およびpHの各測定値と、メモリ52に記憶されたpH基準値算定式とを用いて、循環燃料へのアルミニウムイオンの溶出を検出する処理を行う。さらに、コントローラ51は、セルスタック31の出力電力の測定値を電力計32から取得し、当該電力の測定値と、アルミニウムイオン溶出検出の結果とに基づいて、切換弁38を切換制御し、循環燃料をバイパス経路37を介してイオン交換樹脂装置36に供給して循環燃料からアルミニウムイオンを除去する処理を行う。また、コントローラ51は、燃料電池システム1が搭載されたシニアカーに関する制御および処理をも行う。例えば、コントローラ51は、セルスタック31から出力される電力をシニアカーの二次電池に供給する処理や、シニアカーの走行用モータの駆動、停止制御等を行う。
【0034】
また、コントローラ51は、SAWセンサ21が所定の下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時に液面センサ18が測定した循環燃料量と、原燃料ポンプ16の能力と、に基づき、循環燃料のメタノール濃度を所定の上限濃度に到達させるために必要な仮の補給量の原燃料を循環燃料タンク11に供給するのに要する原燃料ポンプ16の仮の駆動時間を算出する仮駆動時間算出手段として機能する。また、コントローラ51は、SAWセンサ21が下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時より前の一定時間における循環燃料量の変動量と、循環燃料中のメタノール濃度の変動量と、に基づき、単位時間当たりのメタノール減少量を算出するメタノール減少量算出手段として機能する。また、コントローラ51は、前記算出された原燃料ポンプ16の仮駆動時間と前記算出された単位時間当たりのメタノール減少量とから算出した原燃料ポンプ16による原燃料の補給開始から完了までの間に減少するメタノール減少量と、原燃料の仮補給量と、に基づき、原燃料の実際の補給量を算出する実補給量算出手段として機能する。また、コントローラ51は、前記算出された原燃料の実際の補給量と、原燃料ポンプ16の能力と、に基づき、原燃料の実際の補給量を循環燃料タンク11に供給するのに要する原燃料ポンプ16の実際の駆動時間を算出する実駆動時間算出手段や、該算出された実際の駆動時間、原燃料ポンプ16を駆動させる制御手段として機能する。
【0035】
このような構成を有する燃料電池システム1の基本的な発電動作については、周知の直接メタノール燃料電池システムと同様である。すなわち、循環燃料ポンプ34が駆動されると、循環燃料タンク11に貯留された循環燃料が、燃料循環経路33(循環燃料供給経路33A)を介してセルスタック31の各セルの燃料極に供給される。一方、コンプレッサ41が駆動され、セルスタック31の各セルの空気極に空気(酸素)が供給される。これにより、各燃料極において、循環燃料に含まれるメタノールと水とが反応し、水素イオン、電子、および二酸化炭素が生成される。この反応により生じた電子により出力電力がつくられる。そして、水素イオンは、固体高分子膜を通り、空気極へ移動し、空気極において酸素と結合して水になる。このような電池反応を経て、セルスタック31の各セルの燃料極から排出された循環燃料は、燃料循環経路33を介して循環燃料タンク11に戻る。この間、循環燃料が熱交換器35により冷却される。一方、電池反応を経て、セルスタック31の各セルの空気極から排出された水および空気は水排出経路44を介して水タンク13に搬送される。この間、水および空気が熱交換器45により冷却される。
【0036】
この発電過程において、微量のメタノール、ギ酸等の反応副生成物が燃料極側から空気極側にクロスオーバーすることが知られている。クロスオーバーしたメタノールと反応副生成物は、空気極の触媒により燃料極と同様の過程を経て酸化されるが、この反応は燃料電池の発電には関与しないため、燃料電池の電流・電圧から算出したメタノール消費量には反映されない。また、燃料極出口からは、未反応のメタノール水溶液と二酸化炭素、反応副生成物が排出され、循環燃料タンク11に流入するため、循環燃料の濃度は常に変動している。
【0037】
以下、図3を参照しながら、燃料電池システム1において、循環燃料中のメタノール濃度を調整処理する手順を具体的に説明する。
【0038】
(循環燃料量およびメタノール濃度測定工程)
燃料電池システムが運転されている間は、常時、コントローラ51は、液面センサ18から送信される循環燃料タンク11の液面高さに関する情報と予めメモリ52に格納されている循環燃料タンク11の容器形状に関する情報とに基づき、循環燃料量を算出し、その算出結果をメモリ52に格納すると共に、SAWセンサ21から送信される循環燃料中のメタノール濃度をモニタする(ステップS1)。
【0039】
そして、コントローラ51は、循環燃料中のメタノール濃度が前記下限濃度の2.8wt%より少ないか否かを判断し(ステップS2)、その結果、メタノール濃度が2.8wt%より少ないと判断した場合には、原燃料ポンプ16の駆動時間を算出する次の駆動時間算出工程に進む。
【0040】
(原燃料ポンプ16の仮駆動時間算出工程)
コントローラ51は、前記ステップS1において前記下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時に算出された循環燃料量と、原燃料ポンプ16の送出能力と、に基づき、循環燃料のメタノール濃度を前記上限濃度の3.5wt%に到達させるために必要な仮の補給量A1の原燃料を原燃料タンク12から循環燃料タンク11に供給するのに掛かる原燃料ポンプ16の仮の駆動時間(すなわち、原燃料の仮の補給時間)T1を算出する(ステップS3)。
【0041】
例えば、2.7wt%の循環燃料濃度を測定した時の循環燃料量が922g、原燃料濃度が54wt%という条件下では、循環燃料濃度を3.5wt%の調整濃度にするために必要な原燃料の仮の補給量A1は、次式により算出され、14.6gとなる。
【0042】
A1=(循環燃料量×(調整濃度−循環燃料濃度)/(原燃料濃度−調整濃度)
=922×(0.035−0.027)/(0.54−0.035)=14.6g
そして、この時の原燃料ポンプ16の送出能力を100g/minとすると、仮の補給量の原燃料を原燃料タンク12から循環燃料タンク11に供給するのに要する原燃料ポンプ16の仮の駆動時間(すなわち、原燃料の仮の補給時間)T1は、次式により算出され、約9秒となる。
【0043】
T1=A1/原燃料ポンプ能力=14.6÷100×60=8.8秒
(単位時間当たりのメタノール減少量算出工程)
次いで、コントローラ51は、前記ステップS1において前記下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時より前の一定時間における循環燃料量の変動量と、循環燃料中のメタノール濃度の変動量と、に基づき、単位時間当たりのメタノール減少量DMを算出する(ステップS4)。
【0044】
例えば、上記した条件下において、2.7wt%の循環燃料濃度を測定した時の2分前のメタノール濃度および循環燃料量がそれぞれ3.3wt%、930g、また、2.7wt%の循環燃料濃度を測定した時の1分前のメタノール濃度および循環燃料量がそれぞれ3.1wt%、925gであったと仮定すると、1分間当たりのメタノール減少量DMは、次式により算出され、約2.01g/minとなる。
【0045】
DM=濃度測定2分前の循環燃料中のメタノール量−濃度測定1分前の循環燃料中のメタノール量
=(930×0.033)−(925×0.031)=2.01g/min
このように算出されたメタノール減少量DMには、燃料電池の電流値や電圧値に現れないクロスオーバーによるメタノールの損失量も含まれているため、直近のメタノール消費量を反映した値となる。
【0046】
(原燃料の実補給量算出工程)
次いで、ステップS5では、前記ステップS3において算出した原燃料の仮の補給量A1には発電およびクロスオーバーによるメタノール消費量が反映されていないため、コントローラ51は、前記ステップS3において算出した原燃料ポンプ16の仮の駆動時間T1と、前記ステップS4において算出した単位時間当たりのメタノール減少量と、から原燃料ポンプ16による原燃料の補給開始から完了までの間に減少するメタノール減少量DM1を算出し、このメタノール減少量DM1と、前記ステップS3において算出した原燃料の仮の補給量A1と、に基づき、該仮の補給量A1を補正し、原燃料の実際の補給量A2を算出する。
【0047】
例えば、上記した条件下では、前記原燃料ポンプ16の仮の駆動時間T1が9秒、1分間当たりのメタノール減少量DMが約2.01g/minであるため、その間のメタノール減少量DM1は、次式により算出され、約0.3gとなる。
【0048】
DM1=2.01×9÷60=0.3g
また、この場合、原燃料の仮の補給量A1が14.6gであるから、原燃料の実際の補給量A2は、次式により算出され、約15.2となる。
【0049】
A2=A1+DM1/原燃料濃度=14.6+0.3/0.54=15.2g
(原燃料ポンプ16の実駆動時間算出工程)
次いで、ステップS6では、コントローラ51は、前記ステップS5において算出した原燃料の実際の補給量A2と、原燃料ポンプ16の送出能力と、に基づき、前記仮の駆動時間T1を補正し、原燃料の実際の補給量A2を循環燃料タンク11に供給するのに要する原燃料ポンプ16の実際の駆動時間(すなわち、原燃料の実際の補給時間)T2を算出する。
【0050】
例えば、この場合、原燃料の実際の補給量A2が15.2gであるため、原燃料ポンプ16の実施の駆動時間T2は、次式により算出され、約9.1秒となる。
【0051】
T2=A2/原燃料ポンプ能力=15.2÷100×60=9.1秒
(原燃料ポンプ制御工程)
次いで、ステップS7では、コントローラ51は、前記ステップS6において算出した原燃料ポンプ16の実際の駆動時間T2、原燃料ポンプ16を駆動させる。
【0052】
図4は、循環燃料流量を600mL/min、空気流量を30L/min、スタック電圧を12Vの定電圧に設定し、本発明の実施の形態に係る燃料電池システム1を図3に示す手順に従って運転させた時の循環燃料中のメタノール濃度の変動状態を示している。この図4から、本発明の実施の形態に係る燃料電池システム1によれば、循環燃料中のメタノール濃度が、2.7wt%〜3.5wt%の幅で変動し、良好な結果を得られることが分かる。
【0053】
また、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1によれば、循環燃料の上限濃度(例えば、3.5wt%)を設定した上で循環燃料タンク1に対する原燃料の補給量を設定しているため、暖気のために敢えて燃料濃度を濃くして(例えば5wt%)クロスオーバーによるメタノール燃焼を促進することで電池昇温を早くする場合や、空気極側への水の移動や燃料循環ライン中での蒸発等により循環燃料中の水分が減った場合を除いて、燃料濃度が高くなり過ぎて水タンク13から循環燃料タンク11に希釈水を補給することはない。したがって、燃料電池の性能の低下や破損を防止することができる。
【0054】
なお、燃料電池の起動直後等、燃料電池の温度が低い場合には、メタノール濃度の調整範囲を変更することで、燃料電池の早期暖気が可能となる。例えば、燃料電池内部の温度あるいは燃料電池出口の循環燃料温度、空気温度等をモニタし、50℃以下の場合には、循環燃料の濃度が5wt%程度になるように、原燃料の補給量を設定することも可能である。
【0055】
また、上記した実施の形態では、燃料電池システム1をシニアカーの二次電池の充電装置として用いる場合を例に挙げたが、本発明は例えば自動二輪車、自動四輪車、その他の輸送機器、あるいは電子機器の電源または充電装置等にも適用することができる。
【0056】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う直接メタノール燃料電池システムおよびその運転管理方法もまた本発明の技術思想に含まれることは言う迄もない。
【符号の説明】
【0057】
1 燃料電池システム
11 循環燃料タンク
12 原燃料タンク
16 原燃料ポンプ
18 液面センサ(循環燃料量測定手段)
21 SAWセンサ(メタノール濃度測定手段)
33 燃料循環経路(燃料循環手段)
51 コントローラ(仮駆動時間算出手段、メタノール減少量算出手段、実補給量算出手段、実駆動時間算出手段、制御手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノール水溶液である循環燃料を貯留する循環燃料タンクと、
高濃度メタノール水溶液である原燃料を貯留する原燃料タンクと、
前記原燃料タンクに貯留された原燃料を前記循環燃料タンクに供給する駆動源である原燃料ポンプと、
燃料極、空気極および前記燃料極と前記空気極との間に配置された固体高分子膜を備えたセルと、
前記循環燃料タンクに貯留された前記循環燃料を前記燃料極に供給すると共に、電池反応後に前記燃料極から排出される前記循環燃料を前記循環燃料タンクに戻す燃料循環手段と、
を備えた直接メタノール燃料電池システムであって、
前記循環燃料中のメタノール濃度を測定するメタノール濃度測定手段と、
前記循環燃料の循環燃料量を測定する循環燃料量測定手段と、
前記メタノール濃度測定手段が所定の下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時に前記循環燃料量測定手段が測定した循環燃料量と、前記原燃料ポンプの能力と、に基づき、前記循環燃料のメタノール濃度を所定の上限濃度に到達させるために必要な仮の補給量の原燃料を前記循環燃料タンクに供給するのに要する前記原燃料ポンプの仮の駆動時間を算出する仮駆動時間算出手段と、
前記メタノール濃度測定手段が下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時より前の一定時間における循環燃料量の変動量と、前記循環燃料中のメタノール濃度の変動量と、に基づき、単位時間当たりのメタノール減少量を算出するメタノール減少量算出手段と、
前記駆動時間算出手段が算出した前記原燃料ポンプの仮駆動時間と前記メタノール減少量算出手段が算出した単位時間当たりのメタノール減少量とから算出した前記原燃料ポンプによる前記原燃料の補給開始から完了までの間に減少するメタノール減少量と、前記原燃料の仮補給量と、に基づき、前記原燃料の実際の補給量を算出する実補給量算出手段と、
該実補給量算出手段が算出した前記原燃料の実際の補給量と、前記原燃料ポンプの能力と、に基づき、前記原燃料の実際の補給量を前記循環燃料タンクに供給するのに要する前記原燃料ポンプの実際の駆動時間を算出する実駆動時間算出手段と、
該実駆動時間算出手段が算出した実際の駆動時間、前記原燃料ポンプを駆動させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする直接メタノール燃料電池システム。
【請求項2】
メタノール水溶液である循環燃料を貯留する燃料タンクと、高濃度メタノール水溶液である原燃料を貯留する原燃料タンクと、前記原燃料タンクに貯留された原燃料を前記循環燃料タンクに供給する駆動源である原燃料ポンプと、燃料極、空気極および前記燃料極と前記空気極との間に配置された固体高分子膜を備えたセルと、前記循環燃料タンクに貯留された前記循環燃料を前記燃料極に供給すると共に、電池反応後に前記燃料極から排出される前記循環燃料を前記循環燃料タンクに戻す燃料循環手段と、を備えた直接メタノール燃料電池システムにおいて、前記循環燃料中のメタノール濃度を調整する運転管理方法であって、
前記循環燃料中のメタノール濃度を測定するメタノール濃度測定工程と、
前記循環燃料の循環燃料量を測定する循環燃料量測定工程と、
前記メタノール濃度測定工程において所定の下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時の循環燃料量と、前記原燃料ポンプの能力と、に基づき、前記循環燃料のメタノール濃度を所定の上限濃度に到達させるために必要な仮の補給量の原燃料を前記循環燃料タンクに供給するのに要する前記原燃料ポンプの仮の駆動時間を算出する仮駆動時間算出工程と、
前記メタノール濃度測定工程において下限濃度未満のメタノール濃度を測定した時より前の一定時間における循環燃料量の変動量と、前記循環燃料中のメタノール濃度の変動量と、に基づき、単位時間当たりのメタノール減少量を算出するメタノール減少量算出工程と、
前記駆動時間算出工程において算出した前記原燃料ポンプの仮駆動時間と前記メタノール減少量算出工程において算出した単位時間当たりのメタノール減少量とから算出した前記原燃料ポンプによる前記原燃料の補給開始から完了までの間に減少するメタノール減少量と、前記原燃料の仮補給量と、に基づき、前記原燃料の実際の補給量を算出する実補給量算出工程と、
該実補給量算出工程において算出した前記原燃料の実際の補給量と、前記原燃料ポンプの能力と、に基づき、前記実際の補給量の原燃料を前記循環燃料タンクに供給するのに要する前記原燃料ポンプの実際の駆動時間を算出する実駆動時間算出工程と、
該実駆動時間算出工程において算出した実際の駆動時間、前記原燃料ポンプを駆動させる制御工程と、
を備えていることを特徴とする直接メタノール燃料電池システムの運転管理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8569(P2013−8569A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140758(P2011−140758)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】